説明

ロボットコントローラー

【課題】拡張回路基板とその接続先となる制御回路基板との接続構造の複雑化を抑えつつ、ロボットコントローラーが制御回路基板の面方向に大きくなることを抑えることの可能なロボットコントローラーを提供する。
【解決手段】制御回路基板30に対して立てられた状態で制御回路基板30に連結され、第2外部装置からの入力信号を制御回路基板30に入力する拡張回路基板40と、拡張回路基板40の周縁のうちで筐体の正面壁1Fと向い合う第2接続縁40Fに配設され、正面壁1Fを貫通して第2外部装置に接続される拡張I/Oコネクター19とを備え、拡張回路基板40は、LANコネクター16の上側に配置され、該LANコネクター16との接触を避ける切り欠き42を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの動きを制御するロボットコントローラーに関するものであって、特に外部装置とのインターフェースを拡張する拡張回路基板が筐体内に配置されるロボットコントローラーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に記載のように、ロボットコントローラーにおける筐体の内部には、ロボットの動きを制御するための複数の回路基板が配置されている。図4は、ロボットコントローラーの内部を例示するロボットコントローラーの分解斜視図である。なお、図4は、ロボットコントローラーの一側壁である開閉板51Fが筐体51から取り外された状態を制御対象である水平多関節ロボットとともに示す図である。
【0003】
図4に示されるように、ロボットコントローラーにおける筐体51の底面壁には、該底面壁と平行な矩形板状の指令生成基板52が固定され、また筐体51の背面壁には、これもまた背面壁と平行な矩形板状の駆動制御基板53が固定されている。さらに、駆動制御基板53には、該駆動制御基板53に対して直立する4つのモータードライバー基板54が、コネクター53cを介して連結されている。
【0004】
一方、筐体1の正面壁55には、上記指令生成基板52に接続されて左右方向に延びる複数の通信用のコネクターが嵌め込まれている。位置検出器用コネクター56は、モーターMの回転位置を検出するエンコーダーに接続されて、エンコーダーが検出した位置を示す位置検出信号を指令生成基板52に入力する。また、TP用コネクター57は、ティーチングペンダントに接続されて、ロボットRの教示に用いられるデータをティーチングペンダントから指令生成基板52に入力する。さらに、I/Oコネクター58は、例えばロボットの動きを撮像するカメラやロボットの位置を検出するセンサーなどの外部装置に接続されて、該外部装置が出力する各種のデジタル信号を指令生成基板52に入力する。
【0005】
そして、ティーチングペンダントや外部装置からのトリガー信号が、TP用コネクター57やI/Oコネクター58を介して指令生成基板52に入力されると、指令生成基板52では、ロボットRの現在位置が把握されるべく、位置検出器用コネクター56を介してエンコーダーの検出信号が取得される。次いで、指令生成基板52では、モーターMの回転位置やロボットの構造を示すデータなどに基づき、ロボットRの移動先やロボットRの移動速度などの指令値が算出される。他方、駆動制御基板53では、指令生成基板52が出力する指令値に基づき、モーターMに対する電圧指令値が生成され、該電圧指令値に応じたパルス信号がPWMなどの変調方式で出力される。そして、4つのモータードライバー基板54の各々では、駆動制御基板53が出力するパルス信号に基づき、モーターMに出力される多相交流電圧が生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−175856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、ロボットコントローラーの正面壁55に対しては、上述したコネクターの他、ロボットコントローラー内のデータを外部装置に出力するためのUSBボートやLANボートなど、指令生成基板52が接続先となる数多くのインターフェースを集約することが検討されている。このような構成であれば、ロボットコントローラーと外部装置との接続やその切断の全てが正面壁55と介して実施されるため、ロボットコントローラーの操作性やメンテナンス性を高めることが可能になる。
【0008】
一方、ロボットコントローラーに接続される外部装置は、他のロボットコントローラーを含め、通常、ロボットが設置される施設やロボットが行う作業の内容に応じて変わるものである。そこで、ロボットコントローラーのなかには、外部装置とのインターフェースを拡張するための拡張回路基板を搭載することの可能なものが少なくない。
【0009】
この点、外部装置からの入力信号や外部装置への出力信号を取り扱う拡張回路基板も、その接続先は外部装置と指令生成基板52とであって、それゆえに、こうした拡張回路基板に実装される各種コネクターも正面壁55に集約されるべき対象ではある。しかしながら、数多くのインターフェースが指令生成基板52の一辺に並んで配列されるとなれば、指令生成基板52における一辺の大きさをこれらのインターフェースの大きさに合わせて大きくする必要がある。その結果、ロボットコントローラーの大型化が不可避なものとなってしまう。他方、数多くのインターフェースが指令生成基板52の上側に積み重ねられるとなれば、数多くのインターフェースと指令生成基板52とをケーブルで接続することが余儀なくされる。その結果、回路基板間を接続する構造の複雑化を招くことになってしまう。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、拡張回路基板とその接続先となる制御回路基板との接続構造の複雑化を抑えつつ、ロボットコントローラーが制御回路基板の面方向に大きくなることを抑えることの可能なロボットコントローラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、直方体形状をなす筐体内の底面に固定され、ロボットが有するモーターの駆動電圧を複数の外部装置からの入力信号に基づき制御する制御回路基板と、前記制御回路基板の周縁のうちで前記筐体の正面壁と向い合う第1接続縁に配列され、前記正面壁を貫通して複数の第1外部装置の各々に接続される複数の第1コネクターとを備えるロボットコントローラーであって、前記制御回路基板に対して立てられた状態で前記制御回路基板に連結され、第2外部装置からの入力信号を前記制御回路基板に入力する拡張回路基板と、前記拡張回路基板の周縁のうちで前記筐体の正面壁と向い合う第2接続縁に配設され、前記正面壁を貫通して第2外部装置に接続される第2コネクターとを備え、前記拡張回路基板は、少なくとも1つの前記第1コネクターの上側に配置されており、該第1コネクターとの接触を避ける切り欠きを有することを要旨とする。
【0012】
この発明によれば、複数の第1外部装置と複数の第1コネクターとが、筐体の正面壁側で互いに接続され、且つ第2外部装置と第2コネクターとが、これもまた筐体の正面壁側で互いに接続されることになる。このような構成であれば、ロボットコントローラーと外部装置との接続やその切断が筐体の正面壁側で行われるため、ロボットコントローラーの操作性やメンテナンス性を高めることが可能になる。
【0013】
また、拡張回路基板が制御回路基板に対して立てられた状態で拡張回路基板と制御回路基板とが連結されるため、こうした拡張回路基板の占有する制御回路基板上の領域が、該拡張回路基板の厚さ相当に抑えられる。そのため、複数の第1コネクターと第2コネクターとが第1接続縁に配列される構成と比較して、第1接続縁が大きくなること、ひいてはロボットコントローラーが制御回路基板の面方向に大きくなることを抑えることが可能でもある。
【0014】
なお、制御回路基板の上側に拡張回路基板が積み重ねられる構成では、制御回路基板と拡張回路基板との間に熱が籠もることを抑えるために、また制御回路基板上の実装部品と拡張回路基板との接触を抑えるために、制御回路基板と拡張回路基板とを所定の距離だけ離間させる必要がある。それゆえに、制御回路基板と拡張回路基板との接続には、別途ケーブルが用いられることとなる。この点、制御回路基板と拡張回路基板とが連結される上記構成であれば、制御回路基板と拡張回路基板とを接続するケーブルの数量が少なくなる。そのため、拡張回路基板と制御回路基板との接続構造が複雑になることを抑えることが可能でもある。
【0015】
ここで、上述のように、制御回路基板に対して拡張回路基板が立てられる構成であっても、拡張回路基板の周縁のうちで制御回路基板と連結される縁が、例えば制御回路基板の第1接続縁と重なる構成となれば、拡張回路基板の配置可能な領域は、第1接続縁のうちで第1コネクターを除く部分に自ずと制約される。この点、上述した構成であれば、拡張回路基板が、少なくとも1つの第1コネクターの上側に配置され、且つ第1コネクターとの接触を避ける切り欠きを有している。そのため、第1コネクターの数量や位置にかかわらず、拡張回路基板が制御回路基板に対して立てられた状態で、これら拡張回路基板と制御回路基板とを連結することが可能となる。
【0016】
この発明は、前記複数の第1外部装置が、入出力装置を含み、前記複数の第1コネクターが、前記入出力装置に信号を入出力する入出力コネクターを含み、前記第2外部装置が、前記入出力装置とは異なる他の入出力装置であり、前記第2コネクターが、前記他の入出力装置に信号を入出力するコネクターであり、前記拡張回路基板が、前記入出力コネクターの上側に配置されることを要旨とする。
【0017】
外部装置に信号を入出力する入出力コネクターには、入力に用いられる複数の端子と出力に用いられる複数の端子とが含まれるため、こうした入出力コネクターのサイズは、入力専用のコネクターのサイズや出力専用のコネクターのサイズと比較して大きくなることが少なくない。そして、拡張回路基板の周縁のうちで制御回路基板と連結される縁が、例えば制御回路基板の第1接続縁と重なる構造となれば、拡張回路基板の配置可能な領域は、こうした入出力コネクターを避けるために大幅に制約されることになる。この点、この発明によれば、拡張回路基板が入出力コネクターの上側に配置され、且つ入出力コネクターとの接触を避ける切り欠きを有している。そのため、上述した効果が、より顕著なものとなる。
【0018】
また、制御回路基板においては、入出力処理用の入出力コネクターの近くに、同じく入出力処理用の拡張回路基板が配設されるため、入出力処理用の入出力回路を集約することが容易なものとなる。
【0019】
この発明は、複数の前記拡張回路基板を備え、前記複数の拡張回路基板の各々が互いに平行であることを要旨とする。
【0020】
この発明によれば、複数の拡張回路基板の各々が互いに平行となるように配置されているため、複数の拡張回路基板の各々が互いに交差するように配置される場合と比較して、筐体内における連続空間が小さくなることを抑えることが可能である。ひいては、ロボットコントローラーの大型化がさらに抑えられることとなる。
【0021】
この発明は、交流電圧を直流電圧に変換して出力する電源回路基板を備え、前記電源回路基板の出力電圧を多相交流電圧に変換して前記モーターに出力するモータードライバー基板を備え、制御回路基板は、前記モータードライバー基板の出力電圧を前記モーターの回転位置に基づいて制御するための制御信号を前記モータードライバー基板に出力し、前記電源回路基板と前記制御回路基板とが、前記筐体内の底面に並んで配置され、前記制御回路基板は、前記電源回路基板に対して前記正面壁側に配置されていることを要旨とする。
【0022】
上記多相交流電圧を制御するための制御信号の生成される過程では、モーターの回転位置に基づく高速演算が必要とされるため、こうした制御信号を生成する制御回路基板では、その基板構造が自ずと多層構造になる。一方、交流電圧の出力電圧を直流電圧に変換する電源回路基板では、上述のような高速演算が必要とされないため、こうした電源回路基板に対しては、多層構造が必要とされない。
【0023】
この発明によれば、互いに異なる機能を有した制御回路基板と電源回路基板とが各別に構成されるため、各々の要請に応じた積層構造を各回路基板で採用することが可能になる。制御回路基板と電源回路基板とが一つの回路基板として構成される場合には、これらの互いに異なる要請を一つの回路基板が満たすために、該回路基板の多層化や複雑化が必要となるが、上述した構成によれば、筐体内に配置される回路基板の積層構造を簡素化することが可能となる。
【0024】
そのうえ、制御回路基板と電源回路基板とが筐体の底面に並んで配置され、且つ制御回路基板が電源回路基板の正面壁側に配置される。それゆえに、制御回路基板の第1接続縁に複数の第1コネクターが配列され、これら第1コネクターが正面壁を貫通して複数の第1外部装置の各々に接続されるという構成を容易に実現することが可能である。
【0025】
この発明は、前記モータードライバー基板が、前記電源回路基板と前記制御回路基板とに対して立てられた状態で前記電源回路基板と前記制御回路基板とに架設されていることを要旨とする。
【0026】
この発明によれば、モータードライバー基板が制御回路基板に対して立てられた状態でモータードライバー基板と制御回路基板とが連結される。そのため、制御回路基板上の空間が、拡張回路基板とモータードライバー基板とによって有効的に利用されることになる。それゆえに、ロボットコントローラーの大型化がさらに抑えられることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態におけるロボットコントローラーの外部構造を示す斜視図。
【図2】同じく一実施形態におけるロボットコントローラーの内部構造を示す平面図。
【図3】同じく一実施形態におけるロボットコントローラーの側面構造について拡張回路基板を中心に示す部分断面図。
【図4】従来例におけるロボットコントローラーの内部構造を制御対象であるロボットとともに示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明のロボットコントローラーを具体化した一実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。なお、本実施形態におけるロボットコントローラーの制御対象は、先の図4にて説明されたロボットであって、4つのモーターMが搭載された水平多関節ロボットである。そのため、以下では、ロボットコントローラーの制御対象に関し、先に説明されたロボットRと同じ構成には同一の符号を付して、その重複した説明を省略する。
【0029】
[ロボットコントローラーの外部構造]
まず、ロボットコントローラーの外部構造について図1を参照して説明する。図1に示されるように、水平方向に延びる直方体形状に形成された筐体1の正面壁1Fには、該正面壁1Fにおける右側端部に、外部電源コネクター2が配設されている。外部電源コネクター2は、ロボットコントローラーが設置される設備の外部電源プラグに接続されて、外部電源プラグから供給される200Vの外部交流電圧を筐体1の内部に供給する。正面壁1Fにおいて外部電源コネクター2の上側には、サーキットプロテクター3の操作レバー3aが配設されている。サーキットプロテクター3の操作レバー3aは、筐体1の内部にて外部電源コネクター2に接続されて、外部電源プラグが供給する200Vの交流電圧に対し、ロボットコントローラーへの供給と遮断とを強制的に切り替える。
【0030】
一方、正面壁1Fにおける左側端部には、上下方向に延びる矩形状の多相交流電圧コネクター4が嵌め込まれている。多相交流電圧コネクター4では、4つのモーターMに接続される複数の接続端子の各々が、上下方向に配列されている。多相交流電圧コネクター4は、上述した4つのモーターMの各々に接続されて、該4つのモーターMの各々に多相交流電圧を出力する。
【0031】
正面壁1Fにおける下側端部のうち、正面壁1Fの左側半分を占める部分には、第1コネクターを構成する左右方向に延びる外部通信用の3つのコネクターが嵌め込まれている。3つのコネクターを構成する位置検出器用コネクター11、非常停止用コネクター12、TP用コネクター13の各々は、正面壁1Fの下辺に沿って、正面壁1Fの左側端部からこの順に、且つ各コネクターの接続端子が左右方向に並ぶかたちに配設されている。
【0032】
位置検出器用コネクター11は、4つのモーターMの各々の回転位置を検出して第1外部装置を構成するレゾルバやエンコーダーなどの4つの回転角センサーに接続されている。この位置検出器用コネクター11には、4つの回転角センサーの各々から該回転角センサーが検出した位置を示す位置検出信号が入力される。非常停止用コネクター12は、ロボットコントローラーの外部に設けられた非常停止回路や安全扉回路など、ロボットコントローラーの設置された環境が非常時であるか否かを検出する第1外部装置を構成する設備装置に接続されて、該設備装置から非常停止信号が入力される。TP用コネクター13は、第1外部装置を構成するティーチングペンダントに接続されて、ロボットRの教示に用いられるデータがティーチングペンダントから入力される。
【0033】
正面壁1Fにおける下側端部のうち、TP用コネクター13の右側には、第1コネクターを構成するシリアル通信用の2つのコネクターである第1USBコネクター14、及び第2USBコネクター15と、LANコネクター16が、右側端部に向けてこの順に嵌め込まれている。
【0034】
第1USBコネクター14は、第1外部装置を構成する外部コンピューターにUSBを経由して接続されて、例えば外部コンピューターからの要求に応じ、ロボットコントローラーにおけるI/Oの状態など、ロボットコントローラーにおける処理の状態を示す信号を出力する。第2USBコネクター15は、第1外部装置を構成するUSBメモリーに接続されて、ロボットコントローラーに格納されたログをUSBメモリーに出力する。LANコネクター16は、例えばロボットコントローラーが設置される設備のネットワークにイーサネット(登録商標)を経由して接続されて、例えばネットワークに接続された第1外部装置を構成する外部コンピューターからの要求に応じ、これもまたロボットコントローラーにおける処理の状態を示す信号を出力する。正面壁1Fにおける下側端部のうち、第2USBコネクター15とLANコネクター16との間には、トリガースイッチ15aが配設されている。トリガースイッチ15aは、該トリガースイッチ15aが押されるたびに、上記第2USBコネクター15からのログの出力を許容する。
【0035】
正面壁1Fの下側端部のうちで右側端部には、各種のデジタル信号の入力及び出力を取り扱う入出力コネクターとしてのI/Oコネクター17が嵌め込まれている。I/Oコネクター17は、正面壁1Fに配設されたコネクターのうち、左右方向の幅及び前後方向の幅が最も大きいコネクターである。I/Oコネクター17は、例えば入出力装置としての他のロボットコントローラーやロボットの動きを撮像するカメラなど、第1外部装置を構成してロボットを動かすために必要とされる周辺機器やロボットの動きに合わせて駆動される周辺機器に接続されている。そして、I/Oコネクター17は、ロボットそのものの状態やロボットの周辺状態を示す信号を周辺機器から入力されるとともに、ロボットの動きを示す信号を周辺機器に対して出力する。
【0036】
正面壁1FのうちTP用コネクター13の上側には、シーケンサーコネクター18が嵌め込まれ、シーケンサーコネクター18の上側には、冷却用ファンFが交換可能に挿着されている。シーケンサーコネクター18は、例えばRS−232Cを経由してシーケンサーに接続されて、ロボットを動かすための制御信号が該シーケンサーから入力される。冷却用ファンFは、筐体1の外部から筐体1の内部に向けて外気を吹き込むファンであって、該冷却用ファンFの外側ケースと正面壁1Fとの間には、外気に含まれる埃や塵を捕獲するための外気フィルターFaが交換可能に挟まれている。
【0037】
正面壁1Fのうち、第2USBコネクター15、LANコネクター16、及びI/Oコネクター17の上側には、上下方向に延びる矩形孔であるスロット孔が形成され、該スロット孔には、矩形板状をなす拡張パネル1Pが嵌め込まれている。また、拡張パネル1Pには、第2コネクターを構成する2つの拡張I/Oコネクター19が左右方向に並んで配設されている。2つの拡張I/Oコネクター19の各々は、上下方向に延びるコネクターであって、例えば入出力装置としての他のロボットコントローラーやロボットの動きを撮像するカメラなど、第2外部装置を構成してロボットを動かすために必要とされる周辺機器やロボットの動きに合わせて駆動される周辺機器に接続されている。そして、拡張I/Oコネクター19は、ロボットそのものの状態やロボットの周辺状態を示す信号を周辺機器から入力されるとともに、ロボットの動きを示す信号を周辺機器に対して出力する。
【0038】
このように、ロボットコントローラーの正面壁1Fには、筐体1の内部が開放されることなく行われる下記作業に対し、該作業に必要とされるインターフェースの全てが配設されている。
・ロボットコントローラーに対する電源の投入、及び該電源の遮断。
・ロボットコントローラーとその制御対象となるロボットRとの接続、及び切断。
・ロボットコントローラーと外部装置との接続、及び切断。
・冷却用ファンF及び外気フィルターFaの保守、及び点検。
【0039】
このような構成であれば、ロボットコントローラーと外部装置との接続やその切断が筐体の正面壁1F側で行われるため、ロボットコントローラーの操作性やメンテナンス性を高めることが可能になる。
【0040】
[ロボットコントローラーの内部構造]
次に、ロボットコントローラーの内部構造について、図2を参照して説明する。なお、図2では、ロボットコントローラーの内部構造を説明する便宜上、ロボットコントローラーの筐体1のうち天面壁が省略され、さらに正面壁1Fに配設された多相交流電圧コネクター4、及び冷却用ファンFが省略されている。また、各回路基板における機能とその配置とを説明する便宜上、回路基板間を接続するケーブル、回路基板と電子部品とを接続するケーブル、及び電子部品間を接続するケーブルが省略されている。
【0041】
図2に示されるように、筐体1の右側壁1Rには、サーキットプロテクター3に接続されて、200Vの交流電圧を直流電圧に変換して出力する電源供給系が配置されている。また、筐体1の底面壁1Bには、電源回路基板としての主電源回路基板20と制御回路基板30とが各別に配置され、そして筐体1の左側壁1Lには、2つのモータードライバー基板33が配置されている。
【0042】
筐体1の右側壁1Rにおける上側中央には、ノイズフィルターNFが固定されている。ノイズフィルターNFは、入力ケーブルを介してサーキットプロテクター3に接続され、出力ケーブルを介して主電源回路基板20に接続されている。そして、200Vの交流電圧がサーキットプロテクター3からノイズフィルターNFに入力されると、ノイズフィルターNFは、該交流電圧からノイズを除去し、該ノイズの除去された交流電圧を主電源回路基板20に出力する。
【0043】
主電源回路基板20は、底面壁1Bの背面側に固定された矩形板状のプリント回路基板であって、底面壁1Bの背面側の殆どを占める大きさに形成されている。主電源回路基板20は、底面壁1Bと平行な2層のプリント板が積層されてなるリジッド基板を有し、該リジッド基板の上面には、200Vの交流電圧を駆動電圧である280Vの直流電圧に変換するための各種の電子部品が実装されている。この主電源回路基板20は、入力ケーブルを介してノイズフィルターNFに接続され、出力ケーブルを介して、第1電源回路基板PS1、第2電源回路基板PS2、及び第3電源回路基板PS3に各別に接続されている。また、主電源回路基板20は、交流電圧出力コネクターを介してモータードライバー基板33に接続されている。そして、ノイズフィルターNFから主電源回路基板20に交流電圧が入力されると、主電源回路基板20は、該交流電圧を第1電源回路基板PS1、第2電源回路基板PS2、及び第3電源回路基板PS3に分配する。さらに、主電源回路基板20は、ノイズフィルターNFから入力された交流電圧を280Vの直流電圧である駆動電圧に変換し、該駆動電圧をモータードライバー基板33に出力する。
【0044】
主電源回路基板20の上面のうち、正面側の左端部には、前後方向に延びる図示されない2つの出力コネクターが、2つのモータードライバー基板33と重なるように、左右方向に併設されている。これら2つの出力コネクターの各々には、モータードライバー基板33が接続され、主電源回路基板20で生成される駆動電圧と第1電源回路基板PS1で生成される15Vの直流電圧とが入力される。
【0045】
第1電源回路基板PS1は、右側壁1Rの背面側上方に固定された矩形板状の回路基板であって、200Vの交流電圧を15Vの直流電圧に変換するための各種の電子部品が実装された実装基板である。この第1電源回路基板PS1は、入力ケーブルを介して主電源回路基板20に接続され、出力ケーブルを介して主電源回路基板20に接続されている。そして、主電源回路基板20から第1電源回路基板PS1に交流電圧が分配されると、第1電源回路基板PS1は、該交流電圧を15Vの直流電圧に変換し、該変換された直流電圧を主電源回路基板20に出力する。
【0046】
第2電源回路基板PS2は、右側壁1Rの背面側下方に固定された矩形板状の回路基板であって、200Vの交流電圧を5Vの直流電圧に変換するための各種の電子部品が実装された実装基板である。この第2電源回路基板PS2は、入力ケーブルを介して主電源回路基板20に接続され、出力ケーブルを介して制御回路基板30に接続されている。そして、主電源回路基板20から第2電源回路基板PS2に交流電圧が分配されると、第2電源回路基板PS2は、該交流電圧を5Vの直流電圧に変換し、該変換された直流電圧を制御回路基板30に出力する。
【0047】
第3電源回路基板PS3は、底面壁1Bのうち、主電源回路基板20の右側に固定された矩形板状の回路基板であって、200Vの交流電圧を24Vの直流電圧に変換するための各種の電子部品が実装された実装基板である。この第2電源回路基板PS2は、入力ケーブルを介して主電源回路基板20に接続され、出力ケーブルを介して制御回路基板30に接続されている。そして、主電源回路基板20から第3電源回路基板PS3に交流電圧が分配されると、第3電源回路基板PS3は、該交流電圧を24Vの直流電圧に変換し、該変換された直流電圧を制御回路基板30に出力する。
【0048】
制御回路基板30は、底面壁1Bの正面側に固定された矩形板状のプリント回路基板であって、底面壁1Bの正面側の全体を占める大きさに形成されている。制御回路基板30は、底面壁1Bと平行な6層のプリント基板が積層されてなるリジッド基板を有し、該リジッド基板の上面には、モータードライバー基板33の出力電圧を制御するための制御信号を外部装置から入力される入力信号に基づいて生成するための各種の電子部品が実装されている。この制御回路基板30は、該制御回路基板30の周縁のうちで筐体1の正面壁1Fと向い合う直線状の第1接続縁30Fを有し、該第1接続縁30Fには、正面壁1Fの下側端部に配列された各コネクターが連結されている。そして、制御回路基板30には、上述した各種の外部装置からの入力信号が、上記各コネクターを介して入力される。
【0049】
詳述すると、第1接続縁30Fには、上記位置検出器用コネクター11が接続されて、4つの回転角センサーの各々からの検出信号が、位置検出器用コネクター11を介して制御回路基板30に入力される。また、第1接続縁30Fには、非常停止用コネクター12が接続されて、設備装置からの非常停止指令が、非常停止用コネクター12を介して制御回路基板30に入力される。さらに、第1接続縁30Fには、TP用コネクター13が接続されて、ティーチングペンダントからの教示指令が、TP用コネクター13を介して制御回路基板30に入力される。
【0050】
また、第1接続縁30Fには、第1USBコネクター14が接続されて、外部コンピューターからの指令やデータが、第1USBコネクター14を介して制御回路基板30に入力される。また、第1接続縁30Fには、第2USBコネクター15が接続されて、ロボットコントローラーにおける処理の状態を示す信号が、トリガースイッチ15aからの入力信号に応じて制御回路基板30から出力される。さらに、第1接続縁30Fには、LANコネクター16が接続され、ロボットコントローラーにおける処理の状態を示す信号が、LANコネクター16と該LANコネクター16に接続されたネットワークとを介して制御回路基板30から出力される。また、第1接続縁30Fには、I/Oコネクター17が接続されて、周辺機器からの指令や検出信号が、I/Oコネクター17を介して制御回路基板30に入力される。また、周辺機器への指令や演算結果が、I/Oコネクター17を介して制御回路基板30から出力される。
【0051】
このように、主電源回路基板20と制御回路基板30とが筐体1の底面に並んで配置され、且つ制御回路基板30が主電源回路基板20の正面壁1F側に配置される。そのため、第1接続縁30Fに複数のコネクターが配列され、これら各コネクターが正面壁1Fを貫通して外部装置に接続されるという構成を容易に実現することが可能である。
【0052】
制御回路基板30の上面における背面側には、上述した冷却用ファンFと前後方向で向い合うように、CPUの搭載されたCPUボード31が積み重ねられている。CPUボード31は、ロボットRに教示位置を教示するための教示プログラムをティーチングペンダントからの入力信号に応じて解釈して実行する。また、CPUボード31は、ロボットRを所定の作業位置へ動かすためのプログラムを外部装置からの入力信号に応じて解釈して実行する。この際、CPUボード31は、まずティーチングペンダントから入力される教示位置や予め設定される作業位置と、各回転角センサーから入力される検出結果とを用い、ロボットRが教示位置や作業位置へ移動するための軌道を生成し、ロボットRの移動先を示す位置指令を生成する。続いて、制御回路基板30は、位置指令が示す位置へロボットRを動かすためのモーターMの駆動量を算出するとともに、算出された駆動量に応じた各相の電圧指令を生成する。次いで、CPUボード31は、生成された電圧指令に応じたパルス信号をPWMなどの変調方式で制御信号として出力する。そして、CPUボード31は、回転角センサーから検出結果が入力される度に、こうした軌道の生成と、軌道に応じた駆動量の算出と、駆動量に応じた制御信号の出力とを行う。
【0053】
制御回路基板30の上面における正面側には、通信用インターフェース基板32が積み重ねられている。通信用インターフェース基板32には、シーケンサーコネクター18が接続されて、ロボットを動かすための制御信号が該シーケンサーから入力される。
【0054】
制御回路基板30の上面のうち、背面側の左端部には、前後方向に延びる図示されない出力コネクターが、2つのモータードライバー基板33と重なるように、左右方向に併設されている。これら2つの出力コネクターの各々には、モータードライバー基板33が接続され、制御回路基板30で生成される制御信号が出力される。
【0055】
2枚のモータードライバー基板33の各々は、主電源回路基板20と制御回路基板30とに対して直立した状態で、これら主電源回路基板20と制御回路基板30とに架設されている。2枚のモータードライバー基板33は、冷却用ファンFの吹き込み方向である前後方向に延びる矩形板状に形成されて、左右方向において互いに向かい合い、且つ互いに平行に配置されている。
【0056】
モータードライバー基板33は、筐体1の左側壁1Lから右側に延びる3つの支持プレート1Sによって3辺が支持される矩形板状のプリント回路基板であって、左側壁1Lの凡そ半分を占める大きさに形成されている。モータードライバー基板33は、左側壁1Lと平行な4層のプリント板が積層されてなるリジッド基板を有し、主電源回路基板20から出力される駆動電圧を多相交流電圧に変換するための各種の電子部品が実装されている。これらモータードライバー基板33の各々の側面のうち筐体1に向かう側面には、2つのパワーモジュール34が、前後方向に並んで配設されている。また、2つのパワーモジュール34の内側面には、これらの全体が覆われるように、2つのパワーモジュール34を冷却するための1つのヒートシンク35が固着されている。
【0057】
2つのパワーモジュール34の各々には、主電源回路基板20から入力される駆動電圧と15Vの直流電圧とが入力される。また、2つのパワーモジュール34の各々には、該パワーモジュール34の駆動対象に対応した制御信号が、制御回路基板30から入力される。2つのパワーモジュール34の各々には、主電源回路基板20が出力する駆動電圧を昇降圧する昇降圧コンバーターがパッケージングされており、主電源回路基板20から入力される280Vの駆動電圧が、該パワーモジュール34の駆動対象に適した電圧に昇圧される。また、パワーモジュール34の各々には、制御回路基板30から入力される制御信号によってオン/オフ制御される複数のスイッチング素子からなるインバーター回路がパッケージングされている。
【0058】
そして、2つのパワーモジュール34の各々は、主電源回路基板20が出力する15Vの直流電圧によって駆動される。また、2つのパワーモジュール34の各々では、制御回路基板30から入力される制御信号によってスイッチング素子がオン/オフ制御される。これにより、昇降圧コンバーターにて昇圧された電圧が、多相交流電圧として例えば3相交流電圧に変換される。そして、2つのパワーモジュール34の各々では、該パワーモジュール34に接続された出力コネクター36から上記多相交流電圧コネクター4を介して各モーターMに出力される。
【0059】
制御回路基板30の上面のうち、背面側の右側端部には、カード型記憶媒体37の装着されるメモリースロット38が配設されている。カード型記憶媒体37には、ロボットRが有するアームの長さ、ロボットRが有する駆動軸とモーターMとを連結する減速機の減速比など、ロボットコントローラーがロボットRを動かすために必要とされる各種のデータが記憶されている。そして、CPUボード31は、カード型記憶媒体37に格納された各種のデータを読み出し、該データを参照して上述した軌道の生成を実行する。
【0060】
制御回路基板30の上面のうち、CPUボード31の右側であって、上記LANコネクター16、及びI/Oコネクター17の背面側には、前後方向に延びる3つの拡張基板用コネクター39が配設されている。3つの拡張基板用コネクター39の各々には、ピンの嵌め込まれる複数のピン嵌合孔が、上方に開口するように前後方向に配列されている。3つの拡張基板用コネクター39のうちCPUボード31に近い2つの拡張基板用コネクター39には、上記拡張I/Oコネクター19の実装された2つの拡張回路基板40が、制御回路基板30に対して立てられた状態で連結されている。2つの拡張回路基板40の各々は、LANコネクター16の上側に配置され、且つ互いに平行となるように制御回路基板30に立設されている。
【0061】
このような構成によれば、2つの拡張回路基板40が、制御回路基板30に対して立てられた状態で該制御回路基板30に連結されるため、こうした拡張回路基板40の占有する制御回路基板30上の領域が、該拡張回路基板40の厚さ相当に抑えられる。そのため、拡張I/Oコネクター19が他のコネクターと同様に第1接続縁30Fに配列される構成と比較して、第1接続縁30Fが大きくなることを抑えることが可能である。また、2つの拡張回路基板40の各々が互いに平行となるように配置されているため、2つの拡張回路基板40が互いに交差するように配置される構成と比較して、筐体1内における連続空間が小さくなることを抑えることが可能である。ひいては、ロボットコントローラーが制御回路基板30の面方向に大きくなることを抑えることが可能でもある。
【0062】
また、制御回路基板30においては、入出力処理用のI/Oコネクター17の近くに、同じく入出力処理用の拡張回路基板40が配設されるため、入出力処理用の入出力回路を制御回路基板30の右側に集約することが容易なものとなる。そのうえ、拡張回路基板40の他、モータードライバー基板33も、制御回路基板30に対して立てられた状態で該制御回路基板30に連結されるため、制御回路基板30上の空間が、拡張回路基板40とモータードライバー基板33とによって有効的に利用されることになる。それゆえに、ロボットコントローラーの大型化がさらに抑えられることとなる。
【0063】
なお、制御回路基板30と拡張回路基板40とが互い平行となるようにこれらが積み重ねられる構成では、制御回路基板30と拡張回路基板40との間に熱が籠もることを抑えるために、制御回路基板30と拡張回路基板40とを所定の距離だけ離間させる必要がある。また、こうした構成では、制御回路基板30上の実装部品、例えば通信用インターフェース基板32と拡張回路基板40との接触を抑えるためにも、制御回路基板30と拡張回路基板40とを所定の距離だけ離間させる必要がある。それゆえに、制御回路基板30と拡張回路基板40との接続には、別途ケーブルが用いられることとなる。この点、拡張回路基板40が制御回路基板30に対して立てられた状態で制御回路基板30に連結される構成であれば、制御回路基板30と拡張回路基板40とを接続するケーブルの数量が少なくなる。そのため、拡張回路基板40と制御回路基板30との接続構造が複雑になることを抑えることが可能でもある。
【0064】
[拡張回路基板の構造]
次に、拡張回路基板40の構造について図3を参照して説明する。なお、上述した2つの拡張回路基板40の各々は、接続先となる拡張基板用コネクター39の位置が互いに異なる一方、その他の構成については互いに同じである。そのため、以下では2つの拡張回路基板40のうち左側の拡張基板用コネクター39に接続された拡張回路基板40について説明し、右側の拡張基板用コネクター39についてはその説明を割愛する。
【0065】
図3に示されるように、拡張回路基板40の周縁のうちで制御回路基板30側の縁である底縁には、前後方向に延びる制御基板用コネクター41が配設されている。制御基板用コネクター41は、拡張回路基板40の底縁における背面側に配置され、その下面には、拡張基板用コネクター39に差し込まれるピンが前後方向に配列されている。そして、この制御基板用コネクター41と上記拡張基板用コネクター39とが連結されることによって、制御回路基板30と拡張回路基板40とが電気的に接続される。
【0066】
拡張回路基板40の底縁のうちでLANコネクター16と向い合う部位には、正面壁1Fに向けて延びる切り欠き42が形成されている。切り欠き42は、該切り欠き42の上下方向における幅が該切り欠き42の前後方向の全体にわたり一定となるかたちに形成され、且つ拡張回路基板40の下方に配置されるLANコネクター16と拡張回路基板40との接触を避ける大きさに形成されている。詳述すると、切り欠き42の大きさは、下記条件A及び条件Bが満たされるように設定されている。
・条件A:切り欠き高さHs>コネクター高さHp
・条件B:切り欠き幅Ds>コネクター幅Dp
【0067】
なお、切り欠き高さHsとは、切り欠き42の上下方向における幅であって、切り欠き42における天面側の縁と制御基板用コネクター41における底面側の縁との距離である。また、切り欠き幅Dsとは、切り欠き42の前後方向における幅であって、切り欠き42における背面側の縁と拡張回路基板40における正面側の縁との距離である。
【0068】
また、コネクター高さHpとは、I/Oコネクター17の上下方向における幅であって、I/Oコネクター17における天面側の縁とI/Oコネクター17における底面側の縁との距離である。また、コネクター幅Dpとは、I/Oコネクター17が筐体1内に占める前後方向の幅であって、I/Oコネクター17における背面側の縁と正面壁1Fの内側面との距離である。
【0069】
ここで、上述のように、制御回路基板30に対して拡張回路基板40が立てられる構成であっても、拡張回路基板40の底縁が正面壁1Fまで直線的に延びる構成となれば、拡張回路基板40の配置可能な領域は、第1接続縁30Fで各コネクターを除く部分に自ずと制約される。この点、拡張回路基板40が切り欠き42を有する構成であれば、LANコネクター16の有無にかかわらず、拡張回路基板40が制御回路基板30に対して立てられた状態で拡張回路基板40と制御回路基板30と連結することが可能となる。
【0070】
また、周辺機器に信号を入出力するI/Oコネクター17には、入力に用いられる複数の端子と出力に用いられる複数の端子とが含まれる。そのため、こうしたI/Oコネクター17のサイズは、外部通信用のコネクターやシリアル通信用のコネクターと比較して大きく、上述したように、正面壁1Fに配設されたコネクターのうち、左右方向の幅及び前後方向の幅が最も大きいコネクターである。この点、上記条件A及び条件Bが満たされる切り欠き42であれば、拡張回路基板40の下側に配置されるコネクターが、第1接続縁30Fに配列されたいずれのコネクターであっても、拡張回路基板40を制御回路基板30に対して立てた状態で配置することが可能である。
【0071】
拡張回路基板40の周縁のうちで正面壁1F側の縁である第2接続縁40Fには、上記拡張I/Oコネクター19が連結され、該拡張I/Oコネクター19には、拡張回路基板40に実装された入出力回路43が接続されている。そして、拡張基板用コネクター39に制御基板用コネクター41が嵌め込まれると、拡張対象となる周辺機器からの指令や検出信号が、拡張I/Oコネクター19、及び入出力回路43を介して、該周辺機器から制御回路基板30に入力される。また、拡張対象となる周辺機器への指令や演算結果が、入出力回路43、及び拡張I/Oコネクター19を介して、制御回路基板30から該周辺機器へ出力される。
【0072】
次に、上述した構成からなるロボットコントローラーの作用について以下に説明する。
外部電源プラグから200Vの交流電圧が、サーキットプロテクター3を介して、ノイズフィルターNFに入力されると、ノイズフィルターNFによってノイズの除去された交流電圧が、ノイズフィルターNFから主電源回路基板20に出力される。次いで、主電源回路基板20に入力された交流電圧は、第1電源回路基板PS1、第2電源回路基板PS2、及び第3電源回路基板PS3に分配され、第1電源回路基板PS1、第2電源回路基板PS2、及び第3電源回路基板PS3では、互いに異なる直流電圧に変換される。また、主電源回路基板20では、ノイズフィルターNFからの交流電圧が、駆動電圧である280Vの直流電圧に変換される。そして、第1電源回路基板PS1で生成される15Vの直流電圧と、主電源回路基板20で生成される駆動電圧とが、2つのモータードライバー基板33の各々に入力される。
【0073】
一方、ロボットRを作業位置に動かすべく、周辺機器からの入力信号がI/Oコネクター17や拡張I/Oコネクター19を介して制御回路基板30に入力されると、制御回路基板30では、位置検出器用コネクター11を介して各回転角センサーの検出信号が取得される。次いで、制御回路基板30では、作業位置を示す位置指令と各回転角センサーの検出結果とに基づいて、ロボットRが作業位置へ移動するための軌道が生成され、該軌道に沿ってロボットRを動かすためのモーターMの駆動量が算出される。そして、制御回路基板30では、算出された駆動量に応じた各相の電圧指令が生成され、該電圧指令に応じた制御信号が、出力コネクター36を介して制御回路基板30から2つのモータードライバー基板33の各々に入力される。
【0074】
続いて、モータードライバー基板33では、主電源回路基板20から入力される駆動電圧が、モーターMの駆動に適した電圧に昇圧され、制御回路基板30から入力される制御信号のオン/オフ制御により、該昇圧された電圧が多相交流電圧に変換される。そして、ロボットコントローラーでは、モータードライバー基板33に入力される制御信号の周波数を制御回路基板30が制御することによって、モーターMの駆動量に応じた電流が該モーターMの各相に供給される。
【0075】
ここで、例えばロボットRが行う作業の内容が変わり、ロボットコントローラーに接続される外部装置が増える場合には、これに合わせて外部装置とのインターフェースが拡張される。この際、筐体1における天面が取り外された後、制御回路基板30に取り付けられた2つの拡張回路基板40が取り外され、次いで、2つの拡張回路基板40用の拡張パネル1Pが正面壁1Fから取り外される。そして、3つの拡張回路基板40用の拡張パネル1Pが正面壁1Fに新たに取り付けられた後、先に取り付けられていた2つの拡張回路基板40と新たに追加される拡張回路基板40とが制御回路基板30に取り付けられる。
【0076】
この際、新たに取り付けられる拡張回路基板40にも、先に取り付けられた拡張回路基板40と同じく、上記条件A及び条件Bが満たされる切り欠き42が形成されている。それゆえに、新たに取り付けられる拡張回路基板40の取り付け位置がI/Oコネクター17の上側であっても、拡張回路基板40を制御回路基板30に対して立てた状態で配置することが可能である。
【0077】
なお、多相交流電圧を制御するための制御信号の生成される過程では、モーターMの回転位置に基づく高速演算が必要とされるため、こうした制御信号を生成する制御回路基板30では、その基板構造として自ずと多層構造が必要とされる。一方、交流電圧の出力電圧を駆動電圧に変換する主電源回路基板20では、上述のような高速演算が必要とされないため、こうした主電源回路基板20に対しては、多層構造が必要とされない。上述した構成であれば、互いに異なる機能を有した主電源回路基板20と制御回路基板30とが各別に構成されるため、各々の要請に応じた積層構造を各回路基板で採用することが可能になる。なお、主電源回路基板20と制御回路基板30とが一つの回路基板として構成される場合には、これらの互いに異なる要請を一つの回路基板が満たすために、該回路基板の多層化や複雑化が必要となるが、上述した構成によれば、筐体1内に配置される回路基板の積層構造を簡素化することが可能となる。
【0078】
以上説明したように、本実施形態のロボットコントローラーによれば、以下に列記する効果を得ることができる。
(1)2つの拡張回路基板40が制御回路基板30に対して立てられた状態で該2つの拡張回路基板40と制御回路基板30とが連結されるため、拡張I/Oコネクター19が他のコネクターと同様に第1接続縁30Fに配列される構成と比較して、第1接続縁30Fが大きくなることを抑えることが可能である。
【0079】
(2)2つの拡張回路基板40の各々が互いに平行となるように配置されているため、2つの拡張回路基板40が互いに交差するように配置される構成と比較して、筐体1内における連続空間が小さくなることを抑えることが可能である。
【0080】
(3)拡張回路基板40が切り欠き42を有するため、LANコネクター16の有無にかかわらず、拡張回路基板40が制御回路基板30に対し立てられた状態で拡張回路基板40と制御回路基板30と連結することが可能となる。
【0081】
(4)切り欠き42の大きさが上記条件A及び条件Bを満たすため、拡張回路基板40の下側に配置されるコネクターが、第1接続縁30Fに配列されたいずれのコネクターであっても、拡張回路基板40が制御回路基板30に対し立てられた状態で拡張回路基板40と制御回路基板30とを連結することが可能である。
【0082】
(5)制御回路基板30においては、入出力処理用のI/Oコネクター17の近くに、同じく入出力処理用の拡張回路基板40が配設されるため、入出力処理用の入出力回路を制御回路基板30の右側に集約することが容易なものとなる。
【0083】
(6)モータードライバー基板33が制御回路基板30に対して立てられた状態でモータードライバー基板33と制御回路基板30とが連結されるため、制御回路基板30上の空間が、拡張回路基板40とモータードライバー基板33とによって有効的に利用されることになる。
【0084】
(7)筐体1の底面にて制御回路基板30が正面壁1F側に配置されるため、第1接続縁30Fに複数のコネクターが配列され、これら各コネクターが正面壁1Fを貫通して外部装置に接続されるという構成を容易に実現することが可能である。
【0085】
(8)互いに異なる機能を有した主電源回路基板20と制御回路基板30とが各別に構成されるため、各々の要請に応じた積層構造を各回路基板で採用することが可能になる。ひいては、筐体1内に配置される回路基板の積層構造を簡素化することが可能となる。
【0086】
なお、上記実施の形態は、以下のような態様によって実施することも可能である。
・主電源回路基板20と制御回路基板30とが、1枚の基板で構成されてもよく、制御回路基板は、ロボットが有するモーターの駆動電圧を複数の外部装置からの入力信号に基づき制御する回路基板であればよい。このような構成であっても、上記(1)〜(6)に準じた効果を得ることは可能である。
【0087】
・モータードライバー基板33は、該モータードライバー基板33の主面が筐体1内の底面と互いに平行となるように、制御回路基板30と主電源回路基板20とに架設される構成であってもよい。このような構成であっても、上記(1)〜(5)に準じた効果を得ることは可能である。
【0088】
・拡張回路基板40の数量は、1枚、あるいは3枚以上であってもよい。また、拡張回路基板40の位置は、左側壁1Lの内側面であってもよく、あるいは、左側壁1Lと右側壁1Rとの中間であってもよい。例えば、拡張回路基板40が、位置検出器用コネクター11、停止用コネクター12、あるいはTP用コネクター13の上側に配置される構成であってもよい。このような構成であっても、上記(1)〜(4)に準じた効果を得ることは可能である。
【0089】
・切り欠き42の大きさは、上記条件Aのみを満たす大きさであってもよく、あるいは条件Bのみを満たす構成であってもよい。また、切り欠き42の形状は、側面視方向において、円弧形状や階段状であってもよい。要は、拡張回路基板40における切り欠き42は、拡張回路基板40の下側に配設されたコネクターと該拡張回路基板40との接触を避ける大きさと形状とを有するものであればよい。このような構成では、複数の拡張回路基板40の各々の形状がその取り付けられる位置ごとに互いに異なるため、拡張回路基板40の共通化を図り難くはなる。
【0090】
ただし、拡張回路基板40では、切り欠き42の大きさに関わらず、所定の実装面積が必要とされる。それゆえに、切り欠き42の大きさが前後方向及び上下方向に大きくなるほど、拡張回路基板40は前後方向及び上下方向に拡大される。この点、上述したように、コネクターの形状及び大きさに応じて最小の切り欠き42が形成される構成であれば、拡張回路基板40の占有する空間が大きくなることを抑えることが可能となる。
【0091】
・2つの拡張回路基板40の各々は、互いに交差するように配置されてもよく、要は、制御回路基板30に対して立てられた状態で拡張回路基板40と制御回路基板30とが連結され、該拡張回路基板40が、少なくとも1つのコネクターの上側に配置されて該コネクターとの接触を避ける切り欠きを有する構成であればよい。
・拡張回路基板40の下側に配設されるコネクターの数量は、2以上であってもよい。
・拡張回路基板40が接続される外部装置は、入力専用の外部装置、あるいは出力専用の外部装置であってもよい。また、拡張回路基板40が有するコネクターは、入力専用のコネクターであってもよく、あるいは出力専用のコネクターであってもよい。そして、拡張回路基板40には、シリアルI/O回路基板やパラレルI/O回路基板の他、RS−232Cやフィールドバス等のシリアル通信用の基板を適用することも可能である。
【0092】
・主電源回路基板20とモータードライバー基板33とが、接続ケーブルを介して接続される構成であってもよく、また制御回路基板30とモータードライバー基板33とが、接続ケーブルを介して接続される構成であってもよい。
【0093】
・ロボットコントローラーは、上述した回路基板や電子部品とは異なる他の部材を筐体1の内部に収容することも可能である。例えば、ロボットRが減速するときにロボットコントローラーに戻ってくる電圧である回生エネルギーを熱に変換して消費するための回生抵抗が筐体の内部に収容される構成であってもよい。また、例えば、上述した回生エネルギーが上昇したときに、所定の電圧値で回生エネルギーを回生抵抗に供給するコンパレーター機能を有したコンパレーター基板が筐体の内部に収容される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0094】
F…冷却用ファン、M…モーター、R…ロボット、Dp…コネクター幅、Ds…切り欠き幅、Fa…外気フィルター、Hp…コネクター高さ、Hs…切り欠き高さ、NF…ノイズフィルター、PS1…第1電源回路基板、PS2…第2電源回路基板、PS3…第3電源回路基板、A,B…条件、1…筐体、1B…底面壁、1F…正面壁、1L…左側壁、1P…拡張パネル、1R…右側壁、1S…支持プレート、2…外部電源コネクター、3…サーキットプロテクター、3a…操作レバー、4…多相交流電圧コネクター、11…位置検出器用コネクター、12…停止用コネクター、13…TP用コネクター、14…第1USBコネクター、15…第2USBコネクター、15a…トリガースイッチ、16…LANコネクター、17…I/Oコネクター、18…シーケンサーコネクター、19…拡張I/Oコネクター、20…主電源回路基板、30…制御回路基板、30F…第1接続縁、31…CPUボード、32…通信用インターフェース基板、33…モータードライバー基板、34…パワーモジュール、35…ヒートシンク、36…出力コネクター、37…カード型記憶媒体、38…メモリースロット、39…拡張基板用コネクター、40…拡張回路基板、40F…第2接続縁、41…制御基板用コネクター、42…切り欠き、43…入出力回路、51…筐体、51F…開閉板、52…指令生成基板、53…駆動制御基板、53c…コネクター、54…モータードライバー基板、55…正面壁、56…位置検出器用コネクター、57…TP用コネクター、58…I/Oコネクター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状をなす筐体内の底面に固定され、ロボットが有するモーターの駆動電圧を複数の外部装置からの入力信号に基づき制御する制御回路基板と、
前記制御回路基板の周縁のうちで前記筐体の正面壁と向い合う第1接続縁に配列され、前記正面壁を貫通して複数の第1外部装置の各々に接続される複数の第1コネクターと
を備えるロボットコントローラーであって、
前記制御回路基板に対して立てられた状態で前記制御回路基板に連結され、第2外部装置からの入力信号を前記制御回路基板に入力する拡張回路基板と、
前記拡張回路基板の周縁のうちで前記筐体の正面壁と向い合う第2接続縁に配設され、前記正面壁を貫通して第2外部装置に接続される第2コネクターとを備え、
前記拡張回路基板は、
少なくとも1つの前記第1コネクターの上側に配置されており、該第1コネクターとの接触を避ける切り欠きを有する
ことを特徴とするロボットコントローラー。
【請求項2】
前記複数の第1外部装置が、入出力装置を含み、
前記複数の第1コネクターが、前記入出力装置に信号を入出力する入出力コネクターを含み、
前記第2外部装置が、前記入出力装置とは異なる他の入出力装置であり、
前記第2コネクターが、前記他の入出力装置に信号を入出力するコネクターであり、
前記拡張回路基板が、前記入出力コネクターの上側に配置される
請求項1に記載のロボットコントローラー。
【請求項3】
複数の前記拡張回路基板を備え、
前記複数の拡張回路基板の各々が互いに平行である
請求項1又は2に記載のロボットコントローラー。
【請求項4】
交流電圧を直流電圧に変換して出力する電源回路基板を備え、
前記電源回路基板の出力電圧を多相交流電圧に変換して前記モーターに出力するモータードライバー基板を備え、
制御回路基板は、前記モータードライバー基板の出力電圧を前記モーターの回転位置に基づいて制御するための制御信号を前記モータードライバー基板に出力し、
前記電源回路基板と前記制御回路基板とが、前記筐体内の底面に並んで配置され、
前記制御回路基板は、前記電源回路基板に対して前記正面壁側に配置されている
請求項1〜3のいずれか一項に記載のロボットコントローラー。
【請求項5】
前記モータードライバー基板が、前記電源回路基板と前記制御回路基板とに対して立てられた状態で前記電源回路基板と前記制御回路基板とに架設されている
請求項4に記載のロボットコントローラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−206241(P2012−206241A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75828(P2011−75828)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】