説明

ロボットシステムおよび加工品の製造方法

【課題】スループットの向上を図ること。
【解決手段】上記した課題を解決するために、把持機構を含むロボットと、指示部とを備えるようにロボットシステムを構成する。上記のロボットは、被加工品の加工に用いる複数種類の供給材のうち1つを把持し、上記の指示部は、同一の被加工品の加工に複数の供給材を用いる場合に、前回の被加工品の加工の最後に把持した供給材を、次回の被加工品の加工の最初に用いる動作を上記のロボットへ指示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、ロボットシステムおよび加工品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人によってなされていた作業をロボットに行わせることで、加工品の製造ラインを自動化するための技術が種々提案されている。たとえば、特許文献1には、組立作業用ロボットに対する組立作業の教示を自動で行う自動教示システムが開示されている。
【0003】
かかる自動教示システムは、任意に寄せ集められた各種の部品(以下、「ワーク」と記載する)をカメラの撮像画像などを用いて個別に特定し、あらかじめ登録されたワーク相互の関連情報とすりあわせて加工品1個あたりの所定の組立作業手順を自動生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−9899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のロボットシステムには、スループットの向上を図るうえでさらなる改善の余地がある。たとえば、上述の自動教示システムが生成する所定の手順中に、ロボットが把持する工具や原材料などの交換が含まれた場合、かかる交換に要するロボットの動作は、製造する加工品の個数が増すほど大きなオーバヘッドとなりやすい。
【0006】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、スループットの向上を図ることができるロボットシステムおよび加工品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係るロボットシステムは、ロボットと、指示部とを備える。ロボットは、被加工品の加工に用いる複数の供給材のうち1つを把持する。指示部は、同一の前記被加工品の加工に複数の前記供給材を用いる場合に、前回の被加工品の加工の最後に把持した前記供給材を、次回の被加工品の加工の最初に用いる動作を前記ロボットへ指示する。
【発明の効果】
【0008】
実施形態の一態様によれば、スループットの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施形態に係るロボットシステムの全体構成を示す上面模式図である。
【図2】図2は、実施形態に係るロボットの要部を示す正面模式図である。
【図3A】図3Aは、実施形態に係る右ハンドユニットおよび左ハンドユニットの要部を示す正面模式図である。
【図3B】図3Bは、実施形態に係る右ハンドユニットおよび左ハンドユニットの要部を示す斜視模式図である。
【図4】図4は、右ハンドユニットの先端部を示す模式図である。
【図5A】図5Aは、巻ローラ機構が左ハンドユニットから取り外された状態を示す模式図である。
【図5B】図5Bは、巻ローラ機構を示す模式図である。
【図6】図6は、実施形態に係るロボットシステムにおける一連の動作を示す模式図その1である。
【図7A】図7Aは、実施形態に係るロボットシステムにおける一連の動作を示す模式図その2である。
【図7B】図7Bは、実施形態に係るロボットシステムにおける一連の動作を示す模式図その2である。
【図8】図8は、実施形態に係るロボットシステムの構成例を示すブロック図である。
【図9A】図9Aは、基板の種別による違いの一例を示す図である。
【図9B】図9Bは、基板別教示情報の一例を示す図である。
【図9C】図9Cは、テープ残量情報の一例を示す図である。
【図10】図10は、実施形態に係るロボットシステムにおける指示制御シーケンスの一例を示す図である。
【図11】図11は、実施形態に係るロボットシステムが実行する処理手順を示すフローチャートである。
【図12】図12は、図11に示す不要テープ返却処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図13】図13は、図11に示す必要テープ取出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図14】図14は、図11に示すテープ貼付処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するロボットシステムおよび加工品の製造方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
また、以下では、マスキングテープを供給材とし、電子機器用の基板を被加工品として、かかる基板の所定位置に対しマスキングテープを貼り付ける加工を施すロボットシステムを例に挙げて説明を行う。
【0012】
なお、ここで、基板について述べておく。本ロボットシステムにおいては、基板は、電子部品が実装される前の基板が取り扱われ、本ロボットシステムにおいて所定位置にマスキングテープを貼り付けられた後、後工程であるはんだ付処理工程において、マスキングされていない部分にはんだを塗布される。以下では、かかる基板について、「ワーク」と記載する場合がある。
【0013】
[全体構成]
図1は、実施形態に係るロボットシステム100の全体構成を示す上面模式図である。なお、図1には、説明を分かりやすくするために、鉛直上向きを正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、以下の説明に用いる他の図面においても示す場合がある。また、以下では、X軸の正方向が、ロボット101の前方を指すものとする。
【0014】
図1に示すように、ロボットシステム100は、仕切り壁100Aの内部に配設されたロボット101と、ステージ102と、加工前ワークカセット103と、加工後ワークカセット104と、メインストッカ105と、サブストッカ107と、カメラ109とを備える。
【0015】
また、仕切り壁100Aには、ゲート100Bが設けられており、かかるゲート100Bを介して、仕切り壁100Aの内外に搬入搬出路106が配設される。また、仕切り壁100Aの外側には制御装置108が配設されており、ロボット101と情報伝達可能に接続される。
【0016】
[ロボットの構成]
ここで、ロボット101の構成について、図2を用いて説明しておく。図2は、実施形態に係るロボット101の要部を示す正面模式図である。
【0017】
図2に示すように、ロボット101は、基台1が図示しないアンカーボルトでフロアに固定され、かかる基台1の上には、胴部2が、図示しないアクチュエータを介して基台1に対して旋回自在に設けられる。
【0018】
かかる胴部2の左右には、それぞれ第1アーム3Lおよび第2アーム3Rが設けられる。第1アーム3Lには、左肩部4Lが、水平面(図中のXY平面参照)に沿って旋回可能に設けられる。また、左肩部4Lには、左上腕A部5Lが揺動可能に設けられる。
【0019】
また、左上腕A部5Lの先端には、左上腕B部6Lが設けられる。なお、かかる左上腕B部6Lには、旋回する捻り動作が付与される。また、左上腕B部6Lの先端には、左下腕部7Lが揺動可能に設けられる。かかる左下腕部7Lの先端には、左手首A部8Lが設けられ、左手首A部8Lの先端には、左手首B部9Lが設けられる。
【0020】
なお、かかる左手首A部8Lには、旋回する捻り動作が、左手首B部9Lには、曲げ動作を行う旋回動作が、それぞれ付与される。そして、左手首B部9Lの先端には、左フランジ10Lが設けられ、左フランジ10Lには、左ハンドユニット(以下、「第1ハンド機構」と記載する場合あり)12が取り付けられる。
【0021】
第2アーム3Rは、第1アーム3Lと左右対称であり、第2アーム3Rは、右肩部4R、右上腕A部5R、右上腕B部6R、右下腕部7R、右手首A部8R、右手首B部9R、右フランジ10Rから構成される。また、右フランジ10Rには、右ハンドユニット(以下、「第2ハンド機構」と記載する場合あり)11が取り付けられる。
【0022】
なお、ロボット101の旋回部、揺動部などの各可動部には、それぞれサーボモータを有するアクチュエータ(図示せず)が内蔵されている。また、かかるアクチュエータには、エンコーダが内蔵されており、エンコーダは、各可動部の回転位置を制御装置108に対して通知する。
【0023】
なお、右ハンドユニット11および左ハンドユニット12の詳細な構成については後述する。また、図2に示すように、以下では、かかる右ハンドユニット11および左ハンドユニット12を、まとめて「ハンド10」と記載する場合がある。
【0024】
図1の説明に戻り、ステージ102について説明する。ステージ102は、ロボット101の前方に配置されており、ワークを載置する平坦な作業台を有している。作業台の隅部には直角をなす位置決め壁102Aが立設される。
【0025】
また、ステージ102には、図示しないアクチュエータの駆動により、図中の矢印202に示すY軸方向(以下、左右方向ともいう)にスライド移動する移動部材102Bが設けられる。同様に、図中の矢印201に示すX軸方向(以下、前後方向ともいう)にスライド移動する移動部材102Cが設けられる。
【0026】
加工前ワークカセット103は、加工前の基板を積層して収納するスロットが複数設けられた収納ケースである。また、加工後ワークカセット104は、加工後の基板を収納するスロットが複数設けられた収納ケースである。なお、「加工前ワークカセット」を「第1収納部」と、「加工後ワークカセット」を「第2収納部」と、それぞれ言い換えてもよい。
【0027】
ここで、図1に示すように、加工前ワークカセット103は、左ハンドユニット12(図2参照)を含む第1アーム3Lの近傍に配置される。また、加工後ワークカセット104は、右ハンドユニット11(図2参照)を含む第2アーム3Rの近傍に配置される。
【0028】
すなわち、左ハンドユニット12を用いて加工前の基板を加工前ワークカセット103からステージ102へ移載し、右ハンドユニット11を用いて加工後の基板をステージ102から加工後ワークカセット104へ移載することができる。したがって、ロボット101およびハンド10を効率的に動作させることができるので、オーバヘッドを小さくでき、スループットを向上させることができる。また、ロボット101およびハンド10を動作させる範囲を大きくとる必要がないので、作業スペースの省スペース化を図ることができる。
【0029】
なお、ここで説明した加工前の基板および加工後の基板を移載させる動作のほか、ロボット101およびハンド10の動作は、後述する制御装置108の指示部108ae(図8参照)によって指示される。かかる指示部108aeについては、図8以降を用いて詳しく説明する。
【0030】
メインストッカ105は、ロボット101が把持可能な範囲、たとえば、加工前ワークカセット103の上方などに配置される。また、メインストッカ105は、複数のホルダーを有しており、複数種類の巻ローラ機構38(後述)を、各ホルダーに1つずつ収容することができる。巻ローラ機構38には、幅寸法、材質等が異なる複数種類のマスキングテープの巻ローラ36(後述)がそれぞれ装着される。
【0031】
サブストッカ107は、メインストッカ105よりもロボット101に近い位置(図1の例示では、ロボット101とステージ102との間)に配置される。また、サブストッカ107は、複数のホルダーを有しており、各ホルダーには、基板の種別に応じて必要となる巻ローラ機構38があらかじめメインストッカ105から優先して取り出され、収容される。かかるサブストッカ107への収容を行うことにより、貼り付け作業時においてロボット101およびハンド10を動作させる範囲を小さくできるので、オーバヘッドを低減することができる。
【0032】
制御装置108は、記憶装置、演算処理装置、入力装置(いずれも図示せず)などを有するコンピュータにより構成されており、ロボット101と相互通信可能に接続される。
【0033】
なお、制御装置108には、あらかじめ、入力装置(たとえば、プログラミングペンダントなど)を介して、基板に施す加工動作の態様(具体的には、どの種類のマスキングテープを基板のどの位置に貼り付けるかといった情報など)が教示データとして登録される。
【0034】
そして、制御装置108は、かかる登録された教示データに基づいてロボット101の各可動部を動作させる動作信号を生成し、出力する。かかる制御装置108の詳細な構成については、図8を用いて後述する。
【0035】
なお、説明を簡略化するため、本実施形態では1つの制御装置108を示したが、制御装置108を、ロボット101やハンド10を個別に制御する複数の独立した装置としたうえで、各装置が相互に通信するように構成してもよい。
【0036】
カメラ109は、ロボット101の上方に吊設され、ステージ102に載置された基板を撮像する撮像デバイスである。なお、図1には、カメラ109が、ロボット101の肩口に配置されている様子を示しているが、配置位置を限定するものではない。また、吊設することなく、他の設置手法を用いてもよい。
【0037】
[第2ハンド機構の構成]
次に、右ハンドユニット11のより詳細な構成について、図3A、図3Bおよび図4を用いて説明する。図3Aは、実施形態に係る右ハンドユニット11および左ハンドユニット12の要部を示す正面模式図であり、図3Bは、実施形態に係る右ハンドユニット11および左ハンドユニット12の要部を示す斜視模式図である。また、図4は、右ハンドユニット11の先端部を示す模式図である。
【0038】
図3Aおよび図3Bに示すように、右ハンドユニット11は、押し付け機構20と、第2把持機構21と、アクチュエータ22と、加工前ワーク用把持機構23と、加工後ワーク用把持機構24と、ブラケット25とを備える。
【0039】
ブラケット25は、右フランジ10Rに固定されており、押し付け機構20、第2把持機構21、アクチュエータ22、加工前ワーク用把持機構23、加工後ワーク用把持機構24はそれぞれ、かかるブラケット25に取り付けられる。
【0040】
押し付け機構20は、押し付け爪20Aおよび基部20Cから構成されており、ブラケット25に固定された基部20Cは右フランジ10Rの回転軸と略同じ方向に延在して設けられる。
【0041】
基部20Cの先端には、押し付け爪20Aが基部20Cの延長方向向きに配設される。押し付け爪20Aは、先端が鋭角となる三角柱状に形成されており、基端は基部20Cに固定される。
【0042】
なお、基部20Cは、金属などの硬質素材により、押し付け爪20Aは、樹脂などの軟質素材により、それぞれ形成される。
【0043】
また、図4に示すように、押し付け爪20Aには、従動ローラ20Dが、押し付け爪20Aのマスキングテープと接触する側にややせり出すように枢支される。かかる従動ローラ20Dは、後述するように、右ハンドユニット11がマスキングテープを基板に押し付けて移動する際に、基板あるいはマスキングテープとの相対位置の変化に応じて従動回転する。
【0044】
第2把持機構21は、押し付け機構20の基部20Cと並行して設けられ、先端部が略直角に屈曲して形成された鉗子状の部材である。また、第2把持機構21は、その基端部がアクチュエータ22に連結されており、アクチュエータ22の駆動により把持および把持解除を切り替えてマスキングテープを挟み込んで把持したり放したりできるようになっている。
【0045】
また、図3Aに示すように、加工前ワーク用把持機構23は、複数個(ここでは3個)の吸盤部材23Aを有しており、かかる吸盤部材23Aによって基板の上面を吸着および吸着解除することで、基板の保持および保持解除を行う。
【0046】
また、図3Bに示すように、加工後ワーク用把持機構24は、ブラケット25に固定された平板状の部材であり、先端部に曲げ加工された係合部24Aが形成されている。なお、基板には穴部が設けられており、第2アーム3Rを動作させてかかる係合部24Aに基板の穴部を係合させることで、加工後の基板を保持することができる。
【0047】
これにより、マスキングテープが貼り付けられた基板の表面に接触することなく基板を保持することができるので、加工後の基板に貼り付けられたマスキングテープの汚損などを防止することができる。
【0048】
[第1ハンド機構の構成]
次に、左ハンドユニット12のより詳細な構成について、既に示した図3Aおよび図3Bと、あらたに示す図5Aおよび図5Bとを用いて説明する。なお、図5Aは、巻ローラ機構38が左ハンドユニット12から取り外された状態を示す模式図であり、図5Bは、巻ローラ機構38を示す模式図である。
【0049】
図3Aに示すように、左ハンドユニット12は、第1把持機構31と、切断機構32と、ブラケット35と、着脱機構37と、巻ローラ機構38と、カセット把持部39とを備える。
【0050】
第1把持機構31は、マスキングテープの繰り出し方向と並行して設けられ、先端部が略直角に屈曲して形成された鉗子状の部材である。また、第1把持機構31は、その基端部がアクチュエータ(図示せず)に連結されており、アクチュエータの駆動により把持および把持解除を切り替えてマスキングテープを挟み込んで把持したり放したりできるようになっている。
【0051】
切断機構32は、先端部にカッター刃32Aが取り付けられており、切断機構32を上下にスライドさせてカッター刃32Aを第1把持機構31よりも下流側(マスキングテープの繰り出し側)でマスキングテープに進入させ、マスキングテープを切断する。
【0052】
巻ローラ機構38は、上述したように、巻ローラ36が取り付けられる部材である。また、巻ローラ機構38は、かかる巻ローラ36からマスキングテープを所定の繰り出し方向へ繰り出す機構である。
【0053】
なお、図5Aに示すように、巻ローラ機構38は、着脱機構37により、左ハンドユニット12に対して着脱可能である。
【0054】
ここで、巻ローラ機構38についてさらに詳しく説明する。図5Bに示すように、巻ローラ機構38は、回転可能に取り付けられた巻ローラ36と、ガイドローラ33と、ガイドローラ34とを備え、上述の第1把持機構31と連動して動作するように設けられる。
【0055】
巻ローラ36は、芯材にマスキングテープTが巻回されており、巻ローラ36から繰り出されるマスキングテープTは、従動するガイドローラ33およびガイドローラ34によって、適切な張力を付与されつつ第1把持機構31側に案内される。すなわち、巻ローラ36と、ガイドローラ33およびガイドローラ34とによって、マスキングテープTの繰り出し機構が形成されている。
【0056】
また、図3Aに示すように、カセット把持部39は、ブラケット35に固定された平板状の部材であり、先端部に曲げ加工された係合部39Aを有する。
【0057】
[一連の動作の説明]
次に、これまで示してきた各図と、図6、図7Aおよび図7Bとを用いて、実施形態に係るロボットシステム100における一連の動作を詳しく説明する。なお、図6は、実施形態に係るロボットシステム100における一連の動作を示す模式図その1である。また、図7Aおよび図7Bは、実施形態に係るロボットシステム100における一連の動作を示す模式図その2である。
【0058】
本実施形態に係るロボットシステム100は、制御装置108にあらかじめ登録された教示データにしたがって、以下のように動作する。まず、作業開始前には、図示しない搬送装置によって、加工前ワークカセット103および加工後ワークカセット104が、ゲート100Bに搬入される。
【0059】
そして、作業開始時には、ロボットシステム100は、搬入された加工前ワークカセット103および加工後ワークカセット104を、係合部24A(図3B参照)と係合部39A(図3A参照)とで把持して図1に示す所定の位置に配置する。
【0060】
そして、ロボットシステム100は、第1アーム3Lを駆動して加工前ワークカセット103の最上段の基板に吸盤部材23A(図3A参照)を押しつけて取り出し、基板の被加工面が上向きとなるようにステージ102へ載置する。
【0061】
そして、ロボットシステム100は、移動部材102Bおよび移動部材102C(図1参照)を作動させて基板を位置決め壁102A(図1参照)へ押しつけ、ステージ102における基板の位置決め動作を完了させる。このとき、基板は、カメラ109(図1参照)によって撮像され、その種別が識別される。
【0062】
また、位置決め動作と並行して第1アーム3Lが駆動され、基板の種別に応じて必要となる巻ローラ機構38が、メインストッカ105(図1参照)から着脱機構37(図5A参照)を介して取り出される。そして、取り出された巻ローラ機構38は、サブストッカ107(図1参照)に収容される。
【0063】
このとき、サブストッカ107には、必要な種別分の複数個の巻ローラ機構38をあらかじめ収容することができる。なお、以下では、基板の種別に応じて必要となる巻ローラ機構38のことを「必要テープ」と記載する場合がある。
【0064】
そして、ロボットシステム100は、第1アーム3Lと第2アーム3Rとを、あらかじめ設定された待機位置に所定の待機姿勢で待機させる。ここで、待機位置は、右ハンドユニット11と左ハンドユニット12とが互いに干渉しない位置に、たとえば、右ハンドユニット11が左ハンドユニット12よりもX軸の正方向側にオフセットされた位置に設定される(図3B参照)。
【0065】
つづいて、ロボットシステム100は、第2アーム3Rを動作させ、図6に示すように、第2把持機構21を開いた状態で第1把持機構31とガイドローラ33との間に進入させた後、第2把持機構21を閉じてマスキングテープTを挟み込み、把持する。
【0066】
そして、かかる把持動作が完了した後、ロボットシステム100は、第1把持機構31を開き、第1把持機構31によるマスキングテープTの把持を解除する。そして、第1アーム3Lの位置を保持した状態で、第2アーム3RをマスキングテープTの先端側へ向けて移動させ、マスキングテープTを所定長分だけ繰り出させる。
【0067】
このとき、第2把持機構21の先端部は、第1把持機構31の開かれた把持部の間を接触することなく通過する。なお、繰り出されるマスキングテープTの所定長は、あらかじめ登録された教示データに基づく。かかる点の詳細については、図9Aおよび図9Bを用いて後述する。
【0068】
そして、マスキングテープTが所定長分繰り出されると、ふたたび第1把持機構31によってマスキングテープTが把持される一方、第2把持機構21によるマスキングテープTの把持は解除される。
【0069】
つづいて、ロボットシステム100は、第1アーム3Lを所定のマスキング開始位置へ移動させる。そして、図7Aに示すように、第2アーム3Rを動作させて、繰り出されたマスキングテープTの先端部分の粘着面側を、押し付け爪20Aで基板へ押し付ける。なお、所定のマスキング開始位置もまた、あらかじめ設定された教示データに基づく。
【0070】
そして、かかるマスキングテープTの押し付け動作が完了すると、ロボットシステム100は、図7Aに示すように、第1アーム3Lおよび第2アーム3Rの双方を、あらかじめ設定された長さだけ左右方向へ移動させる。
【0071】
このとき、第1アーム3Lの移動に伴って、巻ローラ36からマスキングテープTが繰り出される。そして、繰り出されたマスキングテープTは、第2アーム3Rの移動に伴って、押し付け爪20Aおよび従動ローラ20Dにより基板へ押し付けられる。すなわち、マスキングテープTは、一定の張力を加えられつつ基板へ貼り付けられることとなるので、マスキングテープTへの皺などの発生を効果的に防止することができる。
【0072】
そして、かかる第1アーム3Lおよび第2アーム3Rの移動が完了すると、ロボットシステム100は、第1把持機構31を閉じさせるとともに、切断機構32にマスキングテープTを切断させる。そして、第1アーム3Lを左右方向に、たとえば、図7Aの矢印203に示す方向に退避させる。
【0073】
そして、マスキングテープTが切断されると、ロボットシステム100は、図7Bの矢印204に示すように、第2アーム3Rをあらかじめ設定された長さだけ左右方向に移動させ、マスキングテープTの切断された端部までを基板へ押し付ける。
【0074】
その後、ロボットシステム100は、第2アーム3Rを、押し付け爪20AによりマスキングテープTに所定の押圧力を付与した状態で少なくとも前述のマスキング開始位置まで移動させ、マスキングテープTを基板へ十分に固定する。
【0075】
そして、マスキングテープTの貼り付けが完了すると、ロボットシステム100は、第1アーム3Lおよび第2アーム3Rを前述の待機位置に移動させる。ここで、巻ローラ機構38の交換が必要である場合には、サブストッカ107に収容されている別の必要テープに対応する巻ローラ機構38との持ち替え動作を行う。そして、持ち替えた巻ローラ機構38についてあらかじめ設定されたマスキング位置へマスキングテープTの貼り付けを行う。
【0076】
そして、基板の全マスキング位置への貼り付けが完了すると、ロボットシステム100は、第2アーム3Rを駆動して加工後の基板の穴部に係合部24A(図3B参照)を係合させ、かかる加工後の基板を加工後ワークカセット104の空きスロットに移載して収納するように指示する。以降、加工前ワークカセット103からあらたな加工前の基板を取り出してマスキングテープTを貼り付ける作業を、未処理の加工前の基板がなくなるまで繰り返すこととなる。
【0077】
[指示制御の説明]
ところで、1枚の基板について貼り付け作業を終えた際、左ハンドユニット12に装着中の巻ローラ機構38のマスキングテープTを、次の基板では最初に貼り付けることとすれば、巻ローラ機構38の持ち替えで生じるオーバヘッドを低減することが可能である。
【0078】
そこで、本実施形態に係るロボットシステム100では、常に所定の順序で貼り付け作業を行うのではなく、左ハンドユニット12に装着中の巻ローラ機構38のマスキングテープTから貼り付ける指示制御を行うこととした。かかる点について、以下、図8〜図14を用いて説明する。
【0079】
なお、以下の説明を分かりやすくするため、用語の定義として、左ハンドユニット12に装着中の巻ローラ機構38を、現在把持中であるとの意味で「把持テープ」と記載する場合がある。
【0080】
図8は、実施形態に係るロボットシステム100の構成例を示すブロック図である。なお、図8では、ロボットシステム100の指示制御の説明にあたり必要な構成要素のみを示しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0081】
図8に示すように、ロボットシステム100は、ハンド10と、ロボット101と、サブストッカ107と、制御装置108と、カメラ109とを備える。なお、図1に示した他の構成要素は、ここでの記載を省略している。
【0082】
また、制御装置108は、制御部108aと、記憶部108bとを備える。また、制御部108aは、基板識別部108aaと、貼付準備部108abと、把持状況取得部108acと、指示決定部108adと、指示部108aeと、テープ減算部108afとをさらに備える。
【0083】
そして、記憶部108bは、基板識別情報108baと、基板別教示情報108bbと、テープ残量情報108bcとを記憶する。
【0084】
なお、ハンド10と、ロボット101と、サブストッカ107と、カメラ109とについては既に説明済みであるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0085】
制御部108aは、制御装置108の全体制御を行う。基板識別部108aaは、カメラ109から基板の撮像データを受け取り、受け取った撮像データと基板識別情報108baとをマッチングして、被加工品である基板の種別の識別を行う。
【0086】
ここで、基板識別情報108baは、基板の形状や、基板が有する穴部の位置ならびに個数といった、基板の種別を識別するための情報である。かかる基板識別情報108baは、あらかじめ記憶部108bに記憶される。
【0087】
また、基板識別部108aaは、識別した基板の種別を、貼付準備部108abに対して通知する。
【0088】
貼付準備部108abは、通知された基板の種別と基板別教示情報108bbとに基づく貼り付け準備作業を行う。具体的には、基板の種別に応じた必要テープをメインストッカ105(図1参照)から取り出してサブストッカ107に収容する指示を後述する指示部108aeに対して通知する。かかる際、必要テープに対して不要な「不要テープ」がある場合には、不要テープをメインストッカ105へ返却する指示をあわせて通知する。
【0089】
なお、基板別教示情報108bbには、基板の種別に応じた必要テープの種別が定義されている。かかる基板別教示情報108bbの詳細については、図9Bを用いて後述する。
【0090】
また、貼付準備部108abは、貼り付け準備作業の完了後、完了通知を把持状況取得部108acに対して通知する。かかる完了通知には、把持テープの有無や、把持テープ有りの場合の把持テープの種別、必要テープのサブストッカ107への収容状況などを含んでもよい。
【0091】
把持状況取得部108acは、把持テープの有無など把持テープに関する状況をハンド10から、必要テープの収容状況などサブストッカ107に関する状況をサブストッカ107からそれぞれ取得し、指示決定部108adに対して通知する。かかる把持状況の取得は、ハンド10およびサブストッカ107に押圧センサなどの検出デバイスを搭載することで実現可能であるが、手法を限定するものではない。
【0092】
指示決定部108adは、把持状況取得部108acから受け取った把持状況を示す通知と基板別教示情報108bbとテープ残量情報108bcとに基づき、マスキングテープTの貼り付けに関するロボット101およびハンド10への指示を決定する。そして、指示決定部108adは、決定した指示を指示部108aeに対して通知する。
【0093】
ここで、図9A〜図9Cと、図10とを用いて、指示決定部108adが決定する指示の内容について詳しく説明する。なお、図9Aは、基板の種別による違いの一例を示す図であり、図9Bは、基板別教示情報108bbの一例を示す図であり、図9Cは、テープ残量情報108bcの一例を示す図である。また、図10は、実施形態に係るロボットシステム100における指示制御シーケンスの一例を示す図である。
【0094】
まず、図9Aに示すように、種別の異なる基板αおよび基板βがあるものとする。基板αには、a〜eの5つのマスキングテープTの貼り付け指示点(以下、「教示点」と記載する)があるものとする。同様に、基板βには、f〜hの3つの教示点があるものとする。
【0095】
なお、図9Aに示す基板αおよび基板βには、各教示点のほかに、隅部に切り欠きがあるかないかという形状の違いがあるものとする。したがって、前述の基板識別情報108baには、基板αの隅部には切り欠きがなく、基板βの隅部には切り欠きがあるといった識別情報が定義されることとなる。
【0096】
次に、図9Bに示すように、基板別教示情報108bbには、基板の種別ごとに教示に関する情報が定義される。たとえば、ここでは、基板別教示情報108bbに、基板の種別ごとの必要テープの種別、ならびに、かかる必要テープの種別ごとの教示データセットが含まれている例を示している。
【0097】
たとえば、基板αについては、必要テープの種別としてテープAおよびテープBが定義される。ここで、テープAに関しては、教示点aから教示点bを経て教示点cにいたる順序での、かかるテープAを用いた貼り付けを教示する教示データセットが定義される。
【0098】
なお、かかる教示データセットには、貼り付けの順序だけでなく、各教示点の位置や所定長、貼り付けの方向などが含まれる。
【0099】
また、同じ基板αに用いるテープBに関しては、教示点dから教示点eにいたる順序での、かかるテープBを用いた貼り付けを教示する教示データセットが定義される。
【0100】
また、基板βについても、同様の定義がなされることとなる。たとえば、図9Bに示すように、基板βはテープAおよびテープCの2種別のテープを必要テープとして要することが定義される。そして、テープAについては教示点fから教示点gの順の教示データセットが、テープCについては教示点hのみの教示データセットが、それぞれ定義される。
【0101】
なお、図9Bに示す一例は、基板別教示情報108bbの構成を限定するものではない。たとえば、「テープ種別」と「教示データセット」とを関連付けた情報を「教示情報」として記憶し、かかる「教示情報」を「基板種別」と関連付けた情報を「基板別情報」あるいは「被加工品別情報」としてさらに記憶することで基板別教示情報108bbと同等の構成をとってもよい。
【0102】
また、以下の説明では、図9Bに示す教示データセットに「基板種別+テープ種別」の規則からなる符号を付与することとする。したがって、たとえば、図9Bに示す基板αのテープAの教示データセットについては、「αA」の符号が付与される。
【0103】
次に、図9Cに示すように、テープ残量情報108bcには、マスキングテープTの残量がテープ種別ごとに格納される。たとえば、図9Cには、メインストッカ105が有するホルダーの識別子を示す「ストッカホルダーNo.」ごとに、「テープ種別」、「残量」および「閾値」などを関連付けたテープ残量情報108bcの一例を示している。なお、ここでは、「残量」および「閾値」を「mm」単位としているが、これに限定されるものではない。
【0104】
かかるテープ残量情報108bcの「残量」は、後述するテープ減算部108afによって適宜更新される。また、「閾値」は、「残量」の下限閾値であり、かかる「閾値」を「残量」が下回ったテープは、メインストッカ105のより「残量」の多い同一種別のものと交換される。
【0105】
これらを前提として、ロボットシステム100の貼り付け作業における指示制御シーケンスについて述べる。なお、図10には、基板αを被加工品とした場合のシーケンスを示している。
【0106】
図10に示すように、ロボットシステム100は、まず1枚目の基板αについて所定の必要テープを把持テープとして把持させる。このとき、前工程の作業などであらかじめハンド10に把持テープがあり、かかる把持テープが基板αの必要テープであるならば、ロボットシステム100は、かかる把持テープを継続して把持させる。なお、ここでは、最初の把持テープとしてテープAが用いられるものとする。
【0107】
そして、1枚目の基板αにつき、指示決定部108adは、基板別教示情報108bbに基づいてまず教示データセットαAを指示として決定し、指示部108aeへ通知して実行させる。
【0108】
つづいて、指示決定部108adは、かかる教示データセットαAに基づく貼り付け作業が実行された後、把持テープをテープBへ持ち替えさせる指示を指示部108aeへ通知して実行させる。そして、かかる持ち替えが完了した後、指示決定部108adは、次に教示データセットαBを指示として決定のうえ指示部108aeに実行させる。
【0109】
ここで、図10に示すように、1枚目の基板αに対する貼り付け作業を終えた段階では、ハンド10は、テープBを把持テープとして把持している。そこで、指示決定部108adは、2枚目の基板αにつき、まず教示データセットαBを指示として決定し、指示部108aeへ通知して実行させる。そして、教示データセットαBの実行の完了後は、把持テープをテープAへ持ち替えさせ、教示データセットαAを実行させる。
【0110】
以降、同様のシーケンスで、指示決定部108adは、ロボット101およびハンド10に対する指示を把持テープの種別に応じて切り替えつつ決定し、指示部108aeはかかる指示に基づいてロボット101およびハンド10を動作させてゆくこととなる。
【0111】
すなわち、本実施形態に係るロボットシステム100は、同一の基板の加工に複数のマスキングテープを用いる場合に、前回の基板の加工の最後に把持したマスキングテープを、次回の基板の加工の最初に用いる動作をロボット101およびハンド10へ指示する指示制御を行う。
【0112】
このような指示制御を行うことで、たとえば、図10に示した例では、把持テープの持ち替えタイミングexTを、1枚の基板αにつき、1回とすることができる。すなわち、1枚の基板αごとに、教示データセットαA、教示データセットαBの順で実行させる場合と比較して、持ち替えタイミングexTの回数を減らすことができる。これにより、把持テープの持ち替えに要するロボット101およびハンド10の動作によるオーバヘッドを小さくでき、スループットを向上させることができる。
【0113】
なお、ここでは、基板の種別ごとに用いられる必要テープが2種別である場合について示したが(図9B参照)、3種別以上である場合に適用できることはいうまでもない。かかる場合、たとえば、基板別教示情報108bbに実行済みフラグを含むこととし、指示決定部108adは、把持テープの種別とかかる実行済みフラグのオン/オフとによって次に指示する教示データセットを決定することとしてもよい。
【0114】
図8の説明に戻り、制御装置108の指示部108aeについて説明する。図10を用いた説明でも触れたが、指示部108aeは、指示決定部108adによって決定されたマスキングテープTの貼り付けに関する指示に基づいてロボット101およびハンド10を実際に動作させる。また、指示部108aeは、実際に貼り付けられたマスキングテープTの分量を、テープ減算部108afに対して通知する。
【0115】
テープ減算部108afは、指示部108aeから通知されたマスキングテープTの分量を、対応するテープ残量情報108bcの残量から減算し、かかるテープ残量情報108bcの残量を更新する。すなわち、残量を算出することから、「テープ減算部」を「残量算出部」と言い換えてもよい。
【0116】
記憶部108bは、ハードディスクドライブや不揮発性メモリといった記憶デバイスであり、基板識別情報108ba、基板別教示情報108bbおよびテープ残量情報108bcを記憶する。なお、基板識別情報108ba、基板別教示情報108bbおよびテープ残量情報108bcの内容については、既に説明したため、ここでの説明を省略する。
【0117】
また、図8に示した各構成要素は、制御装置108単体に配置されなくともよい。たとえば、記憶部108bの記憶する基板識別情報108ba、基板別教示情報108bbおよびテープ残量情報108bcのいずれかまたは全部をロボット101の内部メモリに記憶させることによって、スループットの向上およびオーバヘッドの低減を図ることとしてもよい。
【0118】
[処理手順の説明]
次に、実施形態に係るロボットシステム100が実行する処理手順について、図11を用いて説明する。図11は、実施形態に係るロボットシステム100が実行する処理手順を示すフローチャートである。なお、以下のフローチャートは、基板1種別分の処理手順を示している。
【0119】
図11に示すように、基板識別部108aaは、カメラ109の撮像データと基板識別情報108baとに基づき、被加工品である基板の種別の識別を行う(ステップS101)。そして、貼付準備部108abは、基板の種別に基づき、「不要テープ返却処理」(ステップS102)および「必要テープ取出処理」(ステップS103)を実行する。
【0120】
なお、「不要テープ返却処理」および「必要テープ取出処理」は、基板1種別ごとに行われる貼り付け準備処理である。かかる「不要テープ返却処理」については図12を用いて、「必要テープ取出処理」については図13を用いて、それぞれ後述する。
【0121】
つづいて、把持状況取得部108acは、ハンド10およびサブストッカ107から把持状況を取得する(ステップS104)。そして、取得された把持状況に基づき、指示決定部108ad、指示部108aeおよびテープ減算部108afは「テープ貼付処理」を実行する(ステップS105)。なお、「テープ貼付処理」の処理手順については、図14を用いて後述する。
【0122】
そして、基板1種別分について未処理の基板があるか否かを判定し(ステップS106)、未処理の基板がある場合には(ステップS106,Yes)、ステップS104以降の処理を繰り返す。また、未処理の基板がない場合には(ステップS106,No)、処理を終了する。
【0123】
次に、図11において示した「不要テープ返却処理」の処理手順について図12を用いて説明する。図12は、図11に示す不要テープ返却処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0124】
なお、図12では、サブストッカ107の各ホルダーを一意に示す変数Mを用いることとする。そして、「サブストッカM」と記載した場合、サブストッカ107のM番目のホルダーを指すものとする。
【0125】
図12に示すように、貼付準備部108abは、現在の把持テープが不要であるか否かを判定する(ステップS201)。ここで、ステップS201の判定条件を満たす場合(ステップS201,Yes)、貼付準備部108abは、把持テープを返却させる(ステップS202)。なお、ステップS201の判定条件を満たさない場合(ステップS201,No)、ステップS203へ制御を移す。
【0126】
そして、貼付準備部108abは、変数Mへ初期値1をセットし(ステップS203)、サブストッカMのテープが不要であるか否かを判定する(ステップS204)。ここで、ステップS204の判定条件を満たす場合(ステップS204,Yes)、貼付準備部108abは、把持テープがないか否かを判定する(ステップS205)。なお、ステップS204の判定条件を満たさない場合(ステップS204,No)、ステップS210へ制御を移す。
【0127】
そして、貼付準備部108abは、ステップS205の判定条件を満たす場合(ステップS205,Yes)、ステップS206へ制御を移す。また、ステップS205の判定条件を満たさない場合(ステップS205,No)、貼付準備部108abは、サブストッカ107のホルダーに空きがあるか否かを判定する(ステップS207)。
【0128】
ここで、ステップS207の判定条件を満たす場合(ステップS207,Yes)、貼付準備部108abは、把持テープをサブストッカ107の空きホルダーに収容する(ステップS208)。また、ステップS207の判定条件を満たさない場合(ステップS207,No)、貼付準備部108abは、把持テープをメインストッカ105へ返却させる(ステップS209)。
【0129】
そして、貼付準備部108abは、サブストッカMのテープをメインストッカ105へ返却させる(ステップS206)。
【0130】
つづいて、貼付準備部108abは、変数Mに1を足し込み(ステップS210)、変数Mがサブストッカ107の有するホルダー数を上回るか否かを判定する(ステップS211)。ここで、ステップS211の判定条件を満たす場合(ステップS211,Yes)、貼付準備部108abは、処理を終了する。また、ステップS211の判定条件を満たさない場合(ステップS211,No)、貼付準備部108abは、ステップS204からの処理を繰り返す。
【0131】
次に、図11において示した「必要テープ取出処理」の処理手順について図13を用いて説明する。図13は、図11に示す必要テープ取出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0132】
なお、図13では、基板1種別分につき必要となる必要テープの種別を一意に示す変数Nを用いることとする。そして、「必要テープN」と記載した場合、N番目に取り出される必要テープを指すものとする。
【0133】
図13に示すように、変数Nへ初期値1をセットし(ステップS301)、必要テープNが手元にないか否かを判定する(ステップS302)。なお、ここにいう手元とは、ハンド10およびサブストッカ107の双方を指す。
【0134】
ここで、ステップS302の判定条件を満たす場合(ステップS302,Yes)、貼付準備部108abは、把持テープがないか否かを判定する(ステップS303)。なお、ステップS302の判定条件を満たさない場合(ステップS302,No)、ステップS311へ制御を移す。
【0135】
そして、貼付準備部108abは、ステップS303の判定条件を満たす場合(ステップS303,Yes)、ステップS307へ制御を移す。また、ステップS303の判定条件を満たさない場合(ステップS303,No)、貼付準備部108abは、サブストッカ107のホルダーに空きがあるか否かを判定する(ステップS304)。
【0136】
ここで、ステップS304の判定条件を満たす場合(ステップS304,Yes)、貼付準備部108abは、把持テープをサブストッカ107の空きホルダーに収容する(ステップS305)。また、ステップS304の判定条件を満たさない場合(ステップS304,No)、貼付準備部108abは、アラーム報知を行うとともに状況変化待ちを行い(ステップS306)、ステップS304からの処理を繰り返す。
【0137】
そして、貼付準備部108abは、必要テープNがメインストッカ105にあるか否かを判定する(ステップS307)。ここで、ステップS307の判定条件を満たす場合(ステップS307,Yes)、貼付準備部108abは、メインストッカ105から必要テープNを取り出させる(ステップS309)。また、ステップS307の判定条件を満たさない場合(ステップS307,No)、貼付準備部108abは、アラーム報知を行うとともに状況変化待ちを行い(ステップS310)、ステップS307からの処理を繰り返す。
【0138】
つづいて、貼付準備部108abは、変数Nに1を足し込み(ステップS311)、変数Nが必要テープ数を上回るか否かを判定する(ステップS312)。ここで、ステップS312の判定条件を満たす場合(ステップS312,Yes)、貼付準備部108abは、処理を終了する。また、ステップS312の判定条件を満たさない場合(ステップS312,No)、貼付準備部108abは、ステップS302からの処理を繰り返す。
【0139】
次に、図11において示した「テープ貼付処理」の処理手順について図14を用いて説明する。図14は、図11に示すテープ貼付処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0140】
図14に示すように、指示決定部108adは、把持状況取得部108acの取得した把持状況に基づいて把持テープがないか否かを判定する(ステップS401)。ここで、ステップS401の判定条件を満たす場合(ステップS401,Yes)、指示決定部108adは、指示部108aeを介して所定の必要テープを把持させる(ステップS402)。なお、ステップS401の判定条件を満たさない場合(ステップS401,No)、ステップS403へ制御を移す。
【0141】
そして、指示決定部108adは、指示部108aeを介して把持テープについての貼り付けを行わせる(ステップS403)。かかる把持テープについての貼り付けを終えた後、テープ減算部108afは、貼り付けられたテープの分量(すなわち、「貼付分」)を減算し(ステップS404)、テープ残量情報108bcを更新する。
【0142】
つづいて、指示決定部108adは、テープ残量情報108bcに基づき、把持テープの残量が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS405)。ここで、ステップS405の判定条件を満たす場合(ステップS405,Yes)、指示決定部108adは、ステップS407へ制御を移す。なお、ステップS405の判定条件を満たさない場合(ステップS405,No)、指示決定部108adは、指示部108aeを介して把持テープを返却させる(ステップS406)。
【0143】
そして、指示決定部108adは、把持テープとは別の必要テープがあるか否かを判定する(ステップS407)。ここで、ステップS407の判定条件を満たす場合(ステップS407,Yes)、指示決定部108adは、指示部108aeを介して把持テープを持ち替えさせ(ステップS408)、ステップS403からの処理を繰り返す。また、ステップS407の判定条件を満たさない場合(ステップS407,No)、処理を終了する。
【0144】
上述してきたように、実施形態に係るロボットシステムは、ロボットと、指示部とを備える。ロボットは、被加工品の加工に用いる複数種類の供給材のうち1つを把持する。指示部は、同一の被加工品の加工に複数の供給材を用いる場合に、前回の被加工品の加工の最後に把持した供給材を、次回の被加工品の加工の最初に用いる動作をロボットへ指示する。
【0145】
したがって、実施形態に係るロボットシステムによれば、スループットの向上を図ることができる。
【0146】
ところで、上述した実施形態では、被加工品が電子機器用の基板であり、かかる基板の所定位置に対して供給材であるマスキングテープを貼り付ける加工を施す例を示したが、被加工品や供給材、加工の態様などを限定するものではない。たとえば、被加工品をウェハとし、供給材を接着剤として、ウェハに接着剤を塗布する加工を施す場合などに適用してもよい。
【0147】
また、上述した実施形態では、マスキングテープという同じ種類の供給材を持ち替える例を示したが、これに限られるものではない。たとえば、マスキングテープと接着剤とを持ち替える場合でもよい。
【0148】
また、上述した実施形態では、いわゆる双腕ロボットを例示したが、これに限られるものではなく、たとえば、単腕ロボットが、供給材を持ち替えつつ、被加工品に対する加工を施す場合に適用してもよいし、3つ以上の腕を備えるロボットに適用してもよい。
【0149】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0150】
1 基台
2 胴部
3R 第2アーム
3L 第1アーム
4R 右肩部
4L 左肩部
5R 右上腕A部
5L 左上腕A部
6R 右上腕B部
6L 左上腕B部
7R 右下腕部
7L 左下腕部
8R 右手首A部
8L 左手首A部
9R 右手首B部
9L 左手首B部
10 ハンド
10R 右フランジ
10L 左フランジ
11 右ハンドユニット
12 左ハンドユニット
20 押し付け機構
20A 押し付け爪
20C 基部
21 第2把持機構
22 アクチュエータ
23 加工前ワーク用把持機構
24 加工後ワーク用把持機構
25 ブラケット
31 第1把持機構
32 切断機構
32A カッター刃
33、34 ガイドローラ
35 ブラケット
36 巻ローラ
37 着脱機構
38 巻ローラ機構
39 カセット把持部
100 ロボットシステム
100A 仕切り壁
100B ゲート
101 ロボット
102 ステージ
102A 位置決め壁
102B、102C 移動部材
103 加工前ワークカセット
104 加工後ワークカセット
105 メインストッカ
106 搬入搬出路
107 サブストッカ
108 制御装置
108a 制御部
108aa 基板識別部
108ab 貼付準備部
108ac 把持状況取得部
108ad 指示決定部
108ae 指示部
108af テープ減算部
108b 記憶部
108ba 基板識別情報
108bb 基板別教示情報
108bc テープ残量情報
109 カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工品の加工に用いる複数の供給材のうち1つを把持するロボットと、
同一の前記被加工品の加工に複数の前記供給材を用いる場合に、前回の被加工品の加工の最後に把持した前記供給材を、次回の被加工品の加工の最初に用いる動作を前記ロボットへ指示する指示部と
を備えることを特徴とするロボットシステム。
【請求項2】
前記被加工品の加工に複数の前記供給材を用いる場合に、前記供給材の種別と当該種別に対応してあらかじめ用意された前記ロボットへの教示データとを関連付けた教示情報を記憶する記憶部と、
前記ロボットが把持中の前記供給材の種別を取得する取得部と
をさらに備え、
前記指示部は、
前記取得部によって取得された前記供給材の種別に対応する前記教示データを前記教示情報から取得し、取得した前記教示データに基づく動作を指示することを特徴とする請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記ロボットの把持可能範囲に設けられ、前記供給材を収容するメインストッカと、
前記メインストッカよりも前記ロボットに近い位置に設けられるサブストッカと
をさらに備え、
前記記憶部は、
前記教示情報を前記被加工品の種別と関連付けた被加工品別情報をさらに記憶し、
前記指示部は、
前記被加工品の種別に対応する前記供給材の種別を前記被加工品別情報から取得し、取得した前記供給材の種別に対応する前記供給材の収容先として前記メインストッカよりも前記サブストッカを優先する動作を指示することを特徴とする請求項2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
使用された前記供給材の分量に基づいて当該供給材の残量を算出する算出部
をさらに備え、
前記指示部は、
前記ロボットが把持中の前記供給材の前記残量が所定の閾値を下回った場合に、当該供給材を前記メインストッカに収容された同一種別の前記供給材と交換する動作を指示することを特徴とする請求項3に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記ロボットは、
第1ハンド機構および第2ハンド機構を有する双腕ロボットであり、
前記第1ハンド機構の近傍に配置され、加工前の前記被加工品を収納する第1収納部と、
前記第2ハンド機構の近傍に配置され、加工後の前記被加工品を収納する第2収納部と、
加工に際して前記被加工品が載置されるステージと
をさらに備え、
前記指示部は、
前記第1ハンド機構を用いて加工前の前記被加工品を前記第1収納部から前記ステージへ移載し、前記第2ハンド機構を用いて加工後の前記被加工品を前記ステージから前記第2収納部へ移載する動作を指示することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記被加工品は、
電子機器用の基板であり、
前記供給材は、
前記基板の表面に貼り付けられるマスキングテープであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のロボットシステム。
【請求項7】
被加工品の加工に用いる複数の供給材のうち1つをロボットへ把持させる把持工程と、
同一の前記被加工品の加工に複数の前記供給材を用いる場合に、前回の被加工品の加工の最後に把持した前記供給材を、次回の被加工品の加工の最初に用いる動作を前記ロボットへ指示する指示工程と
を含むことを特徴とする加工品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−91137(P2013−91137A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235203(P2011−235203)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】