説明

ロボットシステム及び被作業物の製造方法

【課題】特異点の回避による不都合を生じさせることなく被作業物に対して作業を行うこと。
【解決手段】ロボットは、第1の回転軸A1を中心としてエンドエフェクタ(切断器具100)を回転可能に支持する第1アーム部と、第1の回転軸A1と直交する第2の回転軸を中心として第1アーム部を回転可能に支持する第2アーム部と、第2の回転軸と直交する第3の回転軸A3を中心として第2アーム部を回転可能に支持する第3アーム部とを備え、第1アーム部が、第2アーム部からの延在方向d1に対して垂直な向きに第1の回転軸A1を備える。そして、制御装置は、被作業物に対する連続的な作業をあらかじめ定められた軌跡に沿って行うようにロボットに対して指示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被作業物に対して作業を行うロボットシステム及び被作業物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の関節軸を備える多関節ロボットには、特異点と呼ばれる位置が存在する。具体的には、特異点とは、ロボット先端部の位置および姿勢から各関節軸の角度を求める逆キネマティクス演算の解が不定となる位置である。ロボットが特異点姿勢を取った場合、各関節軸を駆動させるモータへの指令値が求まらず、ロボットを動作させることができなくなってしまう。
【0003】
そこで、ロボットが特異点姿勢となることを回避するための手法が種々提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−272883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような特異点回避手法を用いた場合、特異点を回避する必要からロボットの動作の自由度が低下したり、作業速度が低下したりするといった不都合が生じる可能性がある。
【0006】
特に、近年では、ロボットの利用用途の拡大に伴い、ロボットが特異点に近い姿勢で作業を行わざるを得ない状況が増えつつある。このため、特異点の回避による不都合をなるべく生じさせないことが望ましい。
【0007】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、特異点の回避による不都合を生じさせることなく被作業物に対して作業を行うことができるロボットシステム及び被作業物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の開示するロボットシステムは、所定の作業を行うロボットと、前記ロボットを制御する制御装置とを備えるロボットシステムであって、前記ロボットは、第1の回転軸を中心としてエンドエフェクタを回転可能に支持する第1アーム部と、前記第1の回転軸に対して垂直な第2の回転軸を中心として前記第1アーム部を回転可能に支持する第2アーム部と、前記第2の回転軸に対して垂直な第3の回転軸を中心として前記第2アーム部を回転可能に支持する第3アーム部とを備え、前記第1の回転軸は、前記第3の回転軸に対しても垂直であり、前記制御装置は、被作業物に対する連続的な作業をあらかじめ定められた軌跡に沿って行うように前記ロボットに対して指示することを特徴とするロボットシステム。
【0009】
また、本願の開示する被作業物の製造方法は、第1の回転軸を中心としてエンドエフェクタを回転可能に支持する第1アーム部と、前記第1の回転軸に対して垂直な第2の回転軸を中心として前記第1アーム部を回転可能に支持する第2アーム部と、前記第2の回転軸に対して垂直な第3の回転軸を中心として前記第2アーム部を回転可能に支持する第3アーム部とを備え、前記第1の回転軸が前記第3の回転軸に対しても垂直であるロボットを用いて被作業物を製造する方法であって、前記ロボットの動作範囲に前記被作業物を搬入する過程と、前記ロボットが前記被作業物に対する連続的な動作をあらかじめ定められた軌跡に沿って実行する過程とを含むことを特徴とする被作業物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本願の開示するロボットシステムの一つの態様によれば、特異点の回避による不都合を生じさせることなく被作業物に対して作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施例1に係るロボットの構成を示す側面図である。
【図2】図2は、第1アーム部の延在方向と第1の回転軸との関係を示す図である。
【図3A】図3Aは、従来のロボットの特異点姿勢を示す図である。
【図3B】図3Bは、実施例1に係るロボットの特異点姿勢を示す図である。
【図4】図4は、実施例2に係るロボットおよび制御装置の構成を示す側面図である。
【図5】図5は、実施例2に係るロボットシステムのレイアウト例を示す図である。
【図6】図6は、実施例2に係るロボットの動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、本願の開示するロボット及び被作業物の製造方法のいくつかの実施例を詳細に説明する。ただし、これらの実施例における例示で本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0013】
まず、実施例1に係るロボットの全体構成について図1を用いて説明する。図1は、実施例1に係るロボットの構成を示す側面図である。
【0014】
図1に示すように、実施例1に係るロボット1は、単腕型の7軸ロボットである。具体的には、ロボット1は、床や天井といった設置面に固定された基台10(第7アーム部に相当)および第1アーム部11〜第6アーム部16を備える。
【0015】
第1アーム部11は、基端部が第2アーム部12によって支持され、先端部においてエンドエフェクタ(図示せず)を支持する。第2アーム部12は、基端部が第3アーム部13によって支持され、先端部において第1アーム部11を支持する。第3アーム部13は、基端部が第4アーム部14によって支持され、先端部において第2アーム部12を支持する。
【0016】
第4アーム部14は、基端部が第5アーム部15によって支持され、先端部において第3アーム部13を支持する。第5アーム部15は、基端部が第6アーム部16によって支持され、先端部において第4アーム部14を支持する。第6アーム部16は、基端部が基台10によって支持され、先端部において第5アーム部15を支持する。
【0017】
また、ロボット1は、図示しないエンドエフェクタ、第1アーム部11〜第6アーム部16および基台10の各連結部分である関節部に、それぞれ第1アクチュエータ11a〜第7アクチュエータ17aを備える。
【0018】
具体的には、図示しないエンドエフェクタと第1アーム部11とは、第1アクチュエータ11aを介して連結されており、第1アクチュエータ11aの駆動により、図示しないエンドエフェクタが第1アクチュエータ11aの回転軸A1(以下、「第1の回転軸A1」と記載する)を中心に回転する。
【0019】
第1アーム部11と第2アーム部12とは、第2アクチュエータ12aを介して連結されており、第2アクチュエータ12aの駆動により、第1アーム部11が第2アクチュエータ12aの回転軸A2(以下、「第2の回転軸A2」と記載する)を中心に回転する。第2アーム部12と第3アーム部13とは、第3アクチュエータ13aを介して連結されており、第3アクチュエータ13aの駆動により、第2アーム部12が第3アクチュエータ13aの回転軸A3(以下、「第3の回転軸A3」と記載する)を中心に回転する。
【0020】
第3アーム部13と第4アーム部14とは、第4アクチュエータ14aを介して連結されており、第4アクチュエータ14aの駆動により、第3アーム部13が第4アクチュエータ14aの回転軸A4(以下、「第4の回転軸A4」と記載する)を中心に回転する。第4アーム部14と第5アーム部15とは、第5アクチュエータ15aを介して連結されており、第5アクチュエータ15aの駆動により、第4アーム部14が第5アクチュエータ15aの回転軸A5(以下、「第5の回転軸A5」と記載する)を中心に回転する。
【0021】
第5アーム部15と第6アーム部16とは、第6アクチュエータ16aを介して連結されており、第6アクチュエータ16aの駆動により、第5アーム部15が第6アクチュエータ16aの回転軸A6(以下、「第6の回転軸A6」と記載する)を中心に回転する。第6アーム部16と基台10とは、第7アクチュエータ17aを介して連結されており、第7アクチュエータ17aの駆動により、第6アーム部16が第7アクチュエータ17aの回転軸A7(以下、「第7の回転軸A7」と記載する)を中心に回転する。
【0022】
これら第1アクチュエータ11a〜第7アクチュエータ17aは、隣り合うアクチュエータと回転軸の向きが垂直(直角)となるように設けられている。具体的には、第1の回転軸A1は、第2の回転軸A2に対して垂直であり、第2の回転軸A2は、第1の回転軸A1および第3の回転軸A3に対して垂直である。
【0023】
同様に、第3の回転軸A3は、第2の回転軸A2および第4の回転軸A4とに対して垂直でありし、第4の回転軸A4は、第3の回転軸A3および第5の回転軸A5に対して垂直であり、第5の回転軸A5は、第4の回転軸A4および第6の回転軸A6に対して垂直であり、第6の回転軸A6は、第5の回転軸A5および第7の回転軸A7に対して垂直であり、第7の回転軸A7は、第6の回転軸A6に対して垂直である。
【0024】
ここで、従来のロボットにおいては、第1アーム部〜第3アーム部が一直線状に並ぶ姿勢をロボットが取った場合に、第1の回転軸と第3の回転軸とが平行となるように構成されることが一般的である。
【0025】
このため、従来のロボットは、たとえば被作業物に対して側面から作業を行うような場合に、第1の回転軸と第3の回転軸とが平行になる姿勢、すなわち、特異点姿勢を取る可能性がある。したがって、特異点回避を行うことで、ロボットの動作の自由度が低下したり、作業速度が低下したりするといった不都合が生じる可能性がある。
【0026】
また、ロボットが特異点回避動作を行った場合、ロボットは、あらかじめ定められた軌跡とは異なる軌跡を描いて移動することとなる。このため、ピックアンドプレイスのように始点および終点の位置のみに正確性が求められる作業であれば大きな問題は生じないが、たとえば切断作業や塗装作業のように、被作業物に対する連続的な作業をあらかじめ定められた軌跡に沿って行う場合には問題となる可能性がある。
【0027】
そこで、本実施例1に係るロボット1は、第1アーム部11の延在方向に対して垂直な向きに第1の回転軸A1を設けることとした。すなわち、図1に示すように、第1アーム部11〜第3アーム部13が一直線状に並ぶ姿勢をロボット1が取った場合に、第3の回転軸A3に対して垂直な向きに第1の回転軸A1を設けることとした。このようにすることで、特異点の位置をずらすことができ、特異点回避による不都合を生じさせることなく被作業物に対する作業を行うことが可能となる。
【0028】
以下では、第1の回転軸A1の配置について具体的に説明する。図2は、第1アーム部11の延在方向と第1の回転軸A1との関係を示す図である。なお、図2では、理解を容易にするために、図1に示す第1アーム部11〜第3アーム部13の構成を模式的にあらわしている。
【0029】
図2に示すように、第1の回転軸A1は、第1アーム部11の第2アーム部12からの延在方向d1に対して90度の角度を成して設けられる。すなわち、第3の回転軸A3と第1アーム部11の延在方向d1とが平行である場合に、第1の回転軸A1が第3の回転軸A3に対して垂直なように第1アクチュエータ11aが設けられている。このように、第1の回転軸A1の配置を従来のロボットと異ならせることにより、ロボット1の特異点姿勢は、従来のロボットの特異点姿勢とは異なるものとなる。
【0030】
つづいて、実施例1に係るロボット1と従来のロボットとの特異点姿勢の違いについて図3Aおよび図3Bを用いて説明する。図3Aは、従来のロボットの特異点姿勢を示す図であり、図3Bは、実施例1に係るロボット1の特異点姿勢を示す図である。
【0031】
なお、図3Aでは、従来のロボットが備えるアクチュエータをそれぞれ第1アクチュエータ21a〜第3アクチュエータ23aとして示している。これら第1アクチュエータ21a〜第3アクチュエータ23aは、それぞれ実施例1に係るロボット1の第1アクチュエータ11a〜第3アクチュエータ13aに対応する。
【0032】
また、図3Aでは、第1アクチュエータ21aの回転軸をB1、第2アクチュエータ22aの回転軸をB2、第3アクチュエータ23aの回転軸をB3として示している。さらに、図3Aでは、従来のロボットにおける第1アーム部の延在方向をd2として示している。
【0033】
図3Aに示すように、従来のロボットは、第1アーム部の延在方向d2が第3の回転軸B3と平行となった場合に、第1の回転軸B1と第3の回転軸B3とが平行となり、特異点姿勢となる。
【0034】
したがって、従来のロボットは、第1アーム部〜第3アーム部が一直線上に並ぶ等の特異点姿勢を回避する軌道を取る必要があるため、特異点姿勢を含む連続的な動作を行なうことが困難であった。
【0035】
なお、従来のロボットは、第1アーム部の可動範囲がたとえば−110度〜+110度とすると、−110度〜0度の範囲もしくは0度〜+110度の範囲において、特異点姿勢となることなく被作業物に対する連続的な作業を行うことができる。
【0036】
一方、図3Bに示すように、実施例1に係るロボット1は、第1アーム部11の延在方向d1が第3の回転軸A3に対して90度の角度を成した場合に特異点姿勢となる。これは、延在方向d1と第3の回転軸A3とが90度の角度を成した場合に、第1の回転軸A1が第3の回転軸A3と平行になるためである。
【0037】
したがって、ロボット1は、延在方向d1と第3の回転軸A3とのなす角度が−90〜+90度すなわち180度の範囲において、特異点姿勢となることなく被作業物に対する連続的な作業を行うことができる。
【0038】
このように、実施例1に係るロボット1は、第1アーム部11の可動範囲の上限(たとえば+110度)または下限(たとえば−110度)に近い位置に特異点をずらすことにより、従来のロボットと比較して、特異点姿勢となることなく被作業物に対する連続的な作業を行うことができる範囲を広げることができる。
【0039】
特に、実施例1に係るロボット1は、第1アーム部11、第2アーム部12および第3アーム部13が一直線上に並ぶ動作を含む作業を行う場合であっても、特異点姿勢となることなく作業を行うことができる。
【0040】
上述してきたように、本実施例1では、第1の回転軸A1を中心として図示しないエンドエフェクタを回転可能に支持する第1アーム部11と、第1の回転軸A1に対して垂直な第2の回転軸A2を中心として第1アーム部11を回転可能に支持する第2アーム部12と、第2の回転軸A2に対して垂直な第3の回転軸A3を中心として第2アーム部12を回転可能に支持する第3アーム部13とを備え、第1の回転軸A1が、第3の回転軸A3に対しても垂直であることとした。すなわち、第1アーム部11が、第2アーム部12からの延在方向d1に対して垂直な向きに第1の回転軸A1を備えることとした。
【0041】
したがって、特異点の回避による不都合を生じさせることなく被作業物に対して作業を行うことができる。
【実施例2】
【0042】
次に、実施例1に係るロボット1の適用例として、豚肉等の食肉の切断作業をロボットを用いて自動的に行い被作業物(被加工品)としての食肉を製造するロボットシステムに対して実施例1に係るロボット1を適用した場合の例について説明する。ただし、実施例1に係るロボット1の適用用途は、これに限ったものではない。
【0043】
まず、実施例2に係るロボットおよび制御装置の構成について図4を用いて説明する。図4は、実施例2に係るロボットおよび制御装置の構成を示す側面図である。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同様の部分については、既に説明した部分と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0044】
図4に示すように、実施例2に係るロボット1は、エンドエフェクタとしてナイフ等の切断器具100を備える。かかる切断器具100は、第1アーム部11によって第1の回転軸A1を中心として回転可能に支持される。また、図4に示すように、切断器具100は、第3の回転軸A3と平行に、言い換えれば、第1アーム部11の延在方向と同一方向を向けて支持される。
【0045】
また、ロボット1は、ケーブル30を介してロボットコントローラ2と接続する。ロボットコントローラ2は、ロボット1の駆動制御を行う制御装置である。ロボットコントローラ2としては、たとえば、記憶装置、電子演算器および入力装置を備えるコンピュータ等を用いることができる。
【0046】
かかるロボットコントローラ2は、ケーブル30を介してロボット1の第1アクチュエータ11a〜第7アクチュエータ17aとそれぞれ接続されており、ケーブル30を介して第1アクチュエータ11a〜第7アクチュエータ17aの駆動を指示する。ロボット1は、ロボットコントローラ2からの指示に従って第1アクチュエータ11a〜第7アクチュエータ17aを個別に任意の角度だけ回転させることで、切断器具100を任意の場所へ移動させる。
【0047】
ケーブル30は、たとえば、ロボット1とロボットコントローラ2との信号通信ラインおよび図示しない電源から第1アクチュエータ11a〜第7アクチュエータ17aへ電力を供給する給電ラインが束ねられ被覆されたケーブルである。
【0048】
つづいて、実施例2に係るロボットシステムのレイアウト例について図5を用いて説明する。図5は、実施例2に係るロボットシステムのレイアウト例を示す図である。なお、以下では、図5に示すZ方向を上下方向として説明する。また、図5では、ロボットコントローラ2およびケーブル30を省略して示している。
【0049】
図5に示すように、実施例2に係るロボットシステムでは、レール40に沿って複数台のロボット1が所定間隔で配置される。なお、図5では、3台のロボット1が配置される場合の例を示しているが、ロボット1の配置数はこれに限ったものではない。
【0050】
また、レール40では、食肉Mを吊り下げた搬送台車50が所定間隔を空けて順次搬送される。ここでは、図5に示すX方向に向かって食肉Mが搬送されるものとする。すなわち、食肉Mは搬送台車50によりそれぞれのロボット1の動作範囲に搬入され、ロボット1により作業が行われたのちロボット1の動作範囲から搬出される。
【0051】
各ロボット1は、たとえば食肉Mを肉と骨とに分離するために、ロボットコントローラ2からの指示に従い、搬送台車50によって搬送される食肉Mをあらかじめ定められた軌跡(たとえば、骨に沿った軌跡)に沿って上下方向に切断する作業を行う。
【0052】
ここで、かかるロボット1の動作例について図6を用いて説明する。なお、図6では、レール40およびロボットコントローラ2を省略して示している。
【0053】
図6に示すように、ロボット1は、被作業物である食肉Mを、あらかじめ定められた軌跡に沿って上から下に向かって切断する。
【0054】
このとき、実施例1において既に説明したように、ロボット1の特異点は、第1アーム部11の可動範囲の上限(たとえば+110度)または下限(たとえば−110度)に近い位置にある(図3B参照)。このため、食肉Mに対する作業中において、第1の回転軸A1が第3の回転軸A3と平行になることがなく、したがって、ロボット1の姿勢が特異点姿勢となることがない。
【0055】
これにより、特異点回避動作によってロボット1があらかじめ定められた軌跡とは異なる軌跡を描いて移動するといった不都合が生じることがないため、本実施例2のように被作業物に対する連続的な作業をあらかじめ定められた軌跡に沿って行う場合であっても、かかる作業を容易に行うことができる。
【0056】
上述してきたように、実施例2では、ロボット1が、実施例1と同様に第1アーム部11の第2アーム部12からの延在方向d1に対して垂直な向きに第1の回転軸A1を備え、ロボットコントローラ2が、被作業物に対する連続的な作業をあらかじめ定められた軌跡に沿って行うようにロボット1に対して指示することとした。したがって、特異点の回避による不都合を生じさせることなく被作業物に対して作業を行うことができる。
【0057】
特に、被作業物に対する作業が、第1アーム部11〜第3アーム部13が一直線上に並ぶ動作を含むものである場合であっても、あらかじめ定められた軌跡に沿って作業を行うことができる。
【0058】
また、本実施例2では、エンドエフェクタである切断器具100を、第1アーム部11の延在方向と同一方向を向けて支持することとした。したがって、第1アーム部11の延在方向に対して垂直な向きに第1の回転軸A1を設けた場合であっても、被作業物に対する作業を容易に行うことができる。
【0059】
また、本実施例2では、ロボット1が、第1アクチュエータ11a〜第3アクチュエータ13aに加えて、第4アクチュエータ14a〜第7アクチュエータ17aを備える7軸ロボットであるとしたため、被作業物に対する作業をより高い自由度で行うことができる。
【0060】
なお、上述した各実施例では、単腕型の7軸ロボットを用いて説明してきたが、ロボットは、少なくとも第1アーム部11〜第3アーム部13までを備えていればよく、双腕型や6軸以下の軸数のロボット等の他の構成のロボットであっても構わない。
【0061】
例えば、軸数を6軸とする場合には、図1に示すロボット1から第5の回転軸A5を除外し、第4アーム部14と第5アーム部15とを一体化させた構成とすればよい。具体的には、軸数を6軸とした場合のロボットは、第4の回転軸に対して平行な第6の回転軸を中心として第4アーム部(図1に示す第4アーム部14と第5アーム部15とを一体化させたものに相当)を回転可能に支持する第6アーム部と、第6の回転軸に対して垂直な第7の回転軸を中心として第6アーム部を回転可能に支持する第7アーム部とを備える。
【0062】
また、第1アーム部11〜第3アーム部13の構造をパラレルリンクロボットに対して適用してもよい。パラレルリンクロボットとは、一般的に、所定の間隔を空けて対向配置された一対の部材(ここでは、基端側の部材を「基礎部材」と呼び、先端側の部材を「可動部材」と呼ぶ)を複数のリンクによって並列的に連結するパラレルリンク機構を備えるロボットである。すなわち、かかるパラレルリンクロボットの可動部材に対して、上述してきた第1アーム部11〜第3アーム部13を用いることとしてもよい。
【0063】
また、上述した実施例2では、本願の開示するロボットシステムの一例として、豚肉等の食肉の切断作業をロボットを用いて自動的に行うロボットシステムについて説明した。しかし、これに限ったものではなく、本願の開示するロボットシステムは、被作業物に対する連続的な作業をあらかじめ定められた軌跡に沿って行うものであれば他のシステムであってもよい。
【0064】
たとえば、本願の開示するロボットシステムは、塗装作業や溶接作業、あるいは、文字やイラスト等を描く作業等をロボットが行うロボットシステムに対して適用してもよい。また、本願の開示するロボットシステムは、ロボットがピックアンドプレイス型の作業を行うロボットシステムであってもよい。
【0065】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施の形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 ロボット
10 基台
11 第1アーム部
12 第2アーム部
13 第3アーム部
14 第4アーム部
15 第5アーム部
16 第6アーム部
11a 第1アクチュエータ
12a 第2アクチュエータ
13a 第3アクチュエータ
14a 第4アクチュエータ
15a 第5アクチュエータ
16a 第6アクチュエータ
17a 第7アクチュエータ
2 ロボットコントローラ
30 ケーブル
40 レール
50 搬送台車
100 切断器具(エンドエフェクタ)
A1 第1の回転軸
A2 第2の回転軸
A3 第3の回転軸
A4 第4の回転軸
A5 第5の回転軸
A6 第6の回転軸
A7 第7の回転軸
d1 第1アーム部の延在方向
M 食肉(被作業物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の作業を行うロボットと、前記ロボットを制御する制御装置とを備えるロボットシステムであって、
前記ロボットは、
第1の回転軸を中心としてエンドエフェクタを回転可能に支持する第1アーム部と、
前記第1の回転軸に対して垂直な第2の回転軸を中心として前記第1アーム部を回転可能に支持する第2アーム部と、
前記第2の回転軸に対して垂直な第3の回転軸を中心として前記第2アーム部を回転可能に支持する第3アーム部とを備え、前記第1の回転軸は、前記第3の回転軸に対しても垂直であり、
前記制御装置は、被作業物に対する連続的な作業をあらかじめ定められた軌跡に沿って行うように前記ロボットに対して指示することを特徴とするロボットシステム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記第1アーム部、前記第2アーム部および前記第3アーム部が一直線上に並ぶ動作を含む作業を行うように前記ロボットに対して指示することを特徴とする請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記第3の回転軸に対して垂直な第4の回転軸を中心として前記第3アーム部を回転可能に支持する第4アーム部と、
前記第4の回転軸に対して平行な第6の回転軸を中心として前記第4アーム部を回転可能に支持する第6アーム部と、
前記第6の回転軸に対して垂直な第7の回転軸を中心として前記第6アーム部を回転可能に支持する第7アーム部と
をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記第4の回転軸に対して垂直な第5の回転軸を中心として前記第4アーム部を回転可能に支持する第5アーム部
を備え、
前記第5アーム部は、前記第4アーム部と前記第6アーム部との間に設けられることを特徴とする請求項3に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記エンドエフェクタは、前記第3の回転軸と平行に支持されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のロボットシステム。
【請求項6】
第1の回転軸を中心としてエンドエフェクタを回転可能に支持する第1アーム部と、
前記第1の回転軸に対して垂直な第2の回転軸を中心として前記第1アーム部を回転可能に支持する第2アーム部と、
前記第2の回転軸に対して垂直な第3の回転軸を中心として前記第2アーム部を回転可能に支持する第3アーム部とを備え、前記第1の回転軸が前記第3の回転軸に対しても垂直であるロボットを用いて被作業物を製造する方法であって、
前記ロボットの動作範囲に前記被作業物を搬入する過程と、
前記ロボットが前記被作業物に対する連続的な動作をあらかじめ定められた軌跡に沿って実行する過程と
を含むことを特徴とする被作業物の製造方法。
【請求項7】
前記ロボットが前記被作業物に対して作業する際に、前記第1アーム部、前記第2アーム部および前記第3アーム部が一直線上に並ぶ姿勢を含む動作を連続的に行うことを特徴とする請求項6に記載の被作業物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−228761(P2012−228761A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99679(P2011−99679)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】