説明

ロボット

【課題】ロボットにおける小型化を実現するとともに、電気ケーブルにおいてロボット伸縮動作に伴う不都合の発生を抑制する。
【解決手段】ロボット10において、昇降動作部11は固定部14と昇降部15とを備え、回動動作部12は回動アーム17と回動動作用モータ18とを備えている。それら固定部14と昇降部15とにFPCケーブル51の一端側と他端側とがそれぞれ接続されている。昇降部15には、回動動作部12を回動可能に支持する回動支持部16が設けられている。回動支持部16には、昇降部15の昇降動作に際して生じるFPCケーブル51の余り分を巻き取る巻き取り部が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットに係り、例えば工場等で使用される産業用ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の可動部を有し、そのうちいずれかが伸縮軸方向に沿って伸縮動作可能な可動部であるロボットが実用化されており、その伸縮軸方向に延びる伸縮軸ケース内には電気ケーブルが収容配置されている。電気ケーブルとして、一般には複数の電線を束ねたハーネスや、複数の配線の集合体である被覆付き配線が用いられる。この場合、電気ケーブルには、ロボットの伸縮動作を考慮して余長分があらかじめ付与される。
【0003】
ケーブル配置に関する技術としては、伸縮軸ケース内において電気ケーブルをケーブル保護具内に収容して配置する技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載されたものは、プラスチック製の折曲自在な構成要素からなり内部にケーブル収容空間が形成されたケーブル保護具を用い、伸縮軸ケース内においてケーブル保護具をS字状をなす状態で配置するものとなっている。かかる技術では、伸縮軸ケース内においてケーブル保護具の変形により、伸縮動作に際しての電気ケーブルの可動代が確保されている。
【0004】
また、こうして伸縮軸ケース内にS字状に配置されるケーブル保護具として、一対のリンクプレートとそれらを連結する連結体とからなる複数のリンク枠体を有するとともに、それら各リンク枠体が互いに回動可能に連結される構造を有し、ケーブル保護具においてリンク枠体の連結により形成されたケーブル収容空間内に電気ケーブルを挿通して案内するものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平3−65689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のとおりS字状に配置されたケーブル保護具に電気ケーブルが収容されている技術では、伸縮軸ケース内においてケーブル保護具の曲がり部分の曲率に依存して、ケーブル収容寸法(必要最小寸法)が大きくなってしまう。したがって、ロボットとしての小型化に対して妨げとなっている。
【0007】
この点、伸縮軸ケース内においてケーブル収容寸法の低減を図るべく、電気ケーブルをケーブル保護具を使わずに単体で配置することも考えられるが、ロボットにおいて高速に伸縮動作がなされることを想定すると、伸縮軸ケース内で電気ケーブルが暴れるおそれがあり、それに起因して電気ケーブルの摩耗や破損が生じるといった不都合が懸念される。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ロボットにおける小型化を実現するとともに、電気ケーブルにおいてロボット伸縮動作に伴う不都合の発生を抑制することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。
【0010】
第1の発明は、ロボット伸縮方向に相対移動可能な第1ユニットと第2ユニットとを備えるとともに、前記第2ユニットに対して回動可能な第3ユニットを備え、
それら第1ユニット及び第2ユニットに電気ケーブルの一端側と他端側とがそれぞれ接続されており、
前記第2ユニットには前記第3ユニットを回動可能に支持する回動支持部が設けられており、前記第1ユニット及び前記第2ユニットの相対移動に伴い、前記回動支持部が前記第1ユニットに対して近づく又は遠ざかる方向に移動するロボットであって、
前記電気ケーブルはFPCケーブルよりなり、
前記回動支持部には、前記第1ユニット及び前記第2ユニットの相対移動に際して生じる前記FPCケーブルの余り分を巻き取る巻き取り部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
上記構成のロボットでは、電気ケーブルとしてFPCケーブルを用いている。この場合、電気ケーブルとして複数の電線を束ねたハーネスや配線の集合体である被覆付き配線を用いる構成と比較して、ケーブル収容に要する容積の削減が可能となる。また、ケーブル保護具を用いる従来構成と比べても大幅な収容容積の縮小が可能となる。
【0012】
また、上記のとおり第1〜第3の各ユニットを備える構成において、第1ユニット及び第2ユニットで相対移動が生じる際には、その相対移動に伴い、第2ユニットに設けられた回動支持部(第3ユニットを回動可能に支持する回動支持部)が第1ユニットに対して近づく又は遠ざかる方向に移動する。そしてその際、その相対移動に際して生じるFPCケーブルの弛み(余り分)が、第2ユニットの回動支持部に設けられた巻き取り部により巻き取られる。つまり、例えば、縮み方向への第1,第2の両ユニットの相対移動が生じることに伴いFPCケーブルに弛み(余り分)が生じても、その余り部が巻き取り部にて巻き取られ、ひいてはFPCケーブルを適度に突っ張らせた状態で維持できる。
【0013】
こうしてFPCケーブルを突っ張らせた状態で維持できることにより、第1,第2の両ユニットの相対移動に際し、ケーブル保護具を用いずとも、FPCケーブルの暴れやそれに伴うケーブルの摩耗、破損等の不都合を抑制できる。この場合、ロボットとして高速に伸縮動作がなされることを想定しても、やはりケーブルの摩耗、破損等の不都合を抑制できる。以上により、ロボットにおける小型化を実現できるとともに、電気ケーブルについてロボット伸縮動作に伴う不都合の発生を抑制できる。
【0014】
第2の発明は、前記巻き取り部には、前記FPCケーブルをケーブル巻き取り方向に引張付勢する付勢手段が設けられていることを特徴とする。
【0015】
FPCケーブルの弛み(余り分)の長さは、ロボットの伸縮状態に応じて変わりうると考えられる。この点、上記のとおり、付勢手段によりFPCケーブルがケーブル巻き取り方向に引張付勢される構成とすることにより、ロボットの伸縮状態にかかわらず常にFPCケーブルを適度に突っ張らせた状態で維持できる。
【0016】
第3の発明は、前記回動支持部は、モータにより前記第2ユニットに対して前記第3ユニットを回動させるものであり、前記モータの出力軸が前記FPCケーブルの幅方向と同じ方向に延びるように前記モータが配置されており、
前記巻き取り部は、前記出力軸をケーブル巻き取りの中心軸として前記FPCケーブルの巻き取りを実施することを特徴とする。
【0017】
上記構成では、第1ユニット及び第2ユニットの相対移動時に回動支持部が第1ユニットに対して近づく又は遠ざかる方向に移動すること、及びモータ配置の状況を上手く利用して、FPCケーブルの巻き取りを好適に実施できる。すなわち、第1ユニットに対する回動支持部の移動によりFPCケーブルの弛み(余り分)が大きくなる場合には、モータの出力軸の周りにFPCケーブルを巻き取らせて弛みを解消することができる。また、第1ユニットに対する回動支持部の移動によりFPCケーブルの弛み(余り分)が小さくなる場合には、モータの出力軸からFPCケーブルを引き出させることができる。
【0018】
第4の発明は、前記第1ユニットには、前記FPCケーブルのケーブル表面の一面側に当接する第1当接部が設けられ、前記第2ユニットには、前記FPCケーブルのケーブル表面の他面側に当接する第2当接部が設けられており、
それら各当接部により、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間のケーブル収容部において前記伸縮方向に前記FPCケーブルが折り返されていることを特徴とする。
【0019】
第1当接部及び第2当接部によりFPCケーブルが折り返されている場合、第1ユニット及び第2ユニットで伸長方向に相対移動が生じると両当接部間の折り返し量が変わることから、FPCケーブルに弛み(余り分)が生じることが懸念される。この点、上記のとおりFPCケーブルの余り分が巻き取り部により巻き取られるため、FPCケーブルが弛んだままとなる不都合が解消される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】2軸ロボットの外観を示す斜視図。
【図2】回動支持部による回動アームの回動支持構造を示す断面図。
【図3】昇降動作部の内部構造を示す断面図。
【図4】昇降動作部の内部構造を示す斜視図。
【図5】昇降動作部の内部構造を示す斜視図。
【図6】昇降動作部の内部構造を示す斜視図。
【図7】折り返し状態のFPCケーブルの挙動を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、昇降機構と回動機構とを有する2軸ロボットについて具体化しており、図1はその外観を示す斜視図である。
【0022】
図1に示すように、ロボット10は概要として、上下方向に延びる軸J1に沿って昇降動作を行う昇降動作部11と、軸J1に直交する方向に延びる軸J2を回動中心として正逆両方向に回動動作を行う回動動作部12とを備えている。昇降動作部11及び回動動作部12はそれぞれ、昇降用、回動用の駆動部(モータ)を有している。昇降動作部11は、軸J1を伸縮方向として伸縮する伸縮動作部に相当する。
【0023】
昇降動作部11は、所定のロボット設置場所に固定される固定部14と、その固定部14に対して昇降する昇降部15とを有している。昇降部15の上部には、回動動作部12に連結されてこれを回動可能に支持する回動支持部16が設けられている。この場合、昇降部15の昇降動作時には、回動支持部16が固定部14に対して近づく又は遠ざかる方向に移動することとなる。回動支持部16は、円盤状のベース部16aと、そのベース部16aから上方に延びる2つの突出部16b,16cとを有している。
【0024】
また、回動動作部12は、昇降動作部11の回動支持部16に回動可能に支持されている回動アーム17と、その回動アーム17を回動動作させる回動動作用モータ18とを有している。回動アーム17はその回動基端側に一対の張出部17aを有し、その一対の張出部17aの間に、回動支持部16の各突出部16b,16cが配置されている。回動動作用モータ18は、一方の張出部17aに固定されており、そのモータ18の駆動に伴い回動アーム17が軸J2を回動中心として回動する。なお、回動アーム17の回動先端側には、例えば搬送用ハンド等からなる操作ツールが設けられている。
【0025】
本実施形態では、固定部14が「第1ユニット」に、昇降部15が「第2ユニット」に、回動動作部12(回動アーム17)が「第3ユニット」にそれぞれ相当する。
【0026】
回動支持部16による回動アーム17の回動支持構造を図2を用いて説明する。
【0027】
図2に示すように、回動動作用モータ18は、駆動ソレノイド部を含むモータ本体18aと、そのモータ本体18aによる回転出力を所定の減速比で減速する減速部18bと、減速部18bの出力側に設けられる出力軸18cとを有する。そして、回動動作用モータ18のモータ本体18aと減速部18bとが回動アーム17の張出部17aに固定され、出力軸18cが回動支持部16の突出部16bに固定されている。突出部16bはベース部16aに一体化されて設けられており、その突出部16bに形成された孔部に出力軸18cが貫通させた状態で固定されている。本構成では、出力軸18cは固定軸となっている。この場合、回動動作用モータ18が通電されて駆動されると、回動支持部16に対してモータ本体18aが回動することになり、それに伴い、軸J2を回動中心として回動支持部16に対して回動アーム17が回動する。
【0028】
回動動作用モータ18の出力軸18cは、突出部16bを貫通して突出部16cに達する位置まで延びている。突出部16cは内部スペースを有するケース体により構成されており、その内部スペースが、後述するFPCケーブル51の巻き取りスペースとして利用されるものとなっている。ただし、その詳細については後述する。
【0029】
次に、昇降動作部11について詳細な構成を図3〜図6を用いて説明する。図3は、昇降動作部11の内部構造を示す断面図であり、図4、図5は、昇降動作部11の内部構造を異なる2方向から見た斜視図である。なお、図4、図5では、昇降動作部11の外周のケース部を省略して図示している。また、図6は、昇降動作部11の内部構造について電気ケーブル(FPCケーブル)等、一部構成を省略して示す斜視図である。
【0030】
図3〜図6に示すように、昇降動作部11において、固定部14は、略円盤状をなす固定部ベース21と、その固定部ベース21から上方に延びる固定部ケース22とを有している。固定部ベース21は、ねじ等により互いに連結された下ベース21aと上ベース21bとを有し、それら両ベース21a,21bを囲むようにカバー21cが取り付けられている。下ベース21aには、ロボット設置場所にねじ等により固定される固定フランジ部21dが設けられている。また、固定部ケース22は、固定部ベース21と略同一の外径寸法を有する円筒状をなしており、固定部ベース21(詳しくは上ベース21b)に対して固定されている。
【0031】
固定部ベース21の上方であって固定部ケース22の内側となるスペースは昇降用アクチュエータの設置スペースとなっており、この設置スペースに、ロボット昇降動作のための昇降用モータ25と、昇降用モータ25の回転駆動に伴い回転して上下方向、すなわちロボット昇降方向に伸縮動作する伸縮機構部26とが設置されている。
【0032】
伸縮機構部26は、ボールねじ伸縮機構を用いて構成されており、固定部ベース21を上下方向に貫通して設けられるボールねじ31を有している。ボールねじ31は、上下方向に昇降移動することなく(すなわち、固定部ベース21に対して昇降移動することなく)回転するようにして設けられており、昇降部15側に設けられるボールナット32に螺合している。この場合、ボールねじ31が回転するとそれに合わせてボールナット32が回転しながら昇降方向に移動する。
【0033】
また、固定部ベース21において、下ベース21aにはその下方に開口するベース内スペースが形成されており、そのベース内スペースには、昇降用モータ25の回転をボールねじ31に伝達するための動力伝達機構が設けられている。動力伝達機構は、昇降用モータ25の出力軸に一体回転可能に設けられた入力側プーリ35と、ボールねじ31に一体回転可能に設けられた出力側プーリ36とを有し、これら両プーリ35,36にベルト37が掛け渡されている。したがって、昇降用モータ25が回転駆動されると、それに伴い両プーリ35,36が回転しその回転によりボールねじ31が回転する。なお、動力伝達機構は、モータ回転を減速する減速機能を有していてもよい。また、動力伝達機構は、複数の動力伝達ギア(減速ギア)からなるギア機構により構成されていてもよい。さらに、昇降用モータ25がベース内スペースに設けられる構成であってもよい。
【0034】
一方、昇降部15は、略円盤状をなし固定部ベース21に対向配置される昇降部ベース41と、その昇降部ベース41から下方に延びる円筒状の昇降部ケース42とを有している。昇降部ケース42は、その上板部42aが昇降部ベース41の底面に固定されている。昇降部ケース42は、固定部ケース22に対してその外側に被せるようにして設けられ、固定部ケース22に対して上下方向に昇降移動する。
【0035】
また、昇降部ケース42の上板部42aには、その下方に延びる板状のフレーム43が設けられている。フレーム43は、上下方向に延びる鉛直板部43aと、その上下両端部において鉛直板部43aに直交する向きに設けられた一対のフランジ部43b,43cとを有し、上側のフランジ部43bが昇降部ケース42の上板部42aに固定されている。また、下側のフランジ部43cには、連結プレート44が固定され、その連結プレート44にボールナット32が固定されている。
【0036】
この場合、ボールナット32は、フレーム43や連結プレート44を介して昇降部ベース41に一体化されており、ボールねじ31の回転によりボールナット32が上下方向に移動すると、それに合わせて昇降部ベース41及び昇降部ケース42が上下方向に移動する(昇降移動する)。
【0037】
フレーム43は、鉛直板部43aが概ね昇降部ベース41の中心部を通る位置となるように設けられている。この場合、フレーム43は、固定部ケース22及び昇降部ケース42により形成されるケース内部空間Sにおいて、昇降用モータ25を収容するモータ収容空間と、伸縮機構部26を収容する伸縮機構収容空間との境界部に設けられている。
【0038】
また、昇降動作部11には、固定部14に対する昇降部15の昇降移動を案内するための案内機構が設けられている。案内機構について具体的な構成を説明する。図6に示すように、昇降部15側に固定されているフレーム43には、その下端部にフレーム43と共に昇降移動する一対のスライダ46が設けられている。各スライダ46は、フレーム43の幅方向端部となる位置にそれぞれ設けられている。一方で、固定部ベース21には、その上面から上方に延びる一対の案内レール47が設けられている。各案内レール47は、一対のスライダ46を横方向両側から挟む位置に設けられている。上記構成では、固定部14に対して昇降部15が昇降移動する際(フレーム43が昇降移動する際)には、案内レール47に案内されながらスライダ46とフレーム43とが移動することになり、これにより昇降部15の安定動作が可能となっている。なお、図3〜図5では便宜上、案内機構の図示を省略している。
【0039】
昇降部ベース41は、昇降動作部11の上部に回動支持部16を固定するための連結中間部材でもあり、図示は略すが、昇降部ベース41の上面側には回動支持部16のベース部16aが固定されるようになっている。
【0040】
また、昇降動作部11には、電気ケーブルとしてのFPCケーブル51が設けられている。FPCケーブル51は、所定幅の長尺状をなし合成樹脂等の絶縁性フィルム上に銅箔等により電気回路が形成された薄板状のフレキシブルプリント基板からなるフラットケーブルであり、固定部ベース21と昇降部ベース41との間に設けられている。つまりこの場合、ケーブル収容部であるケース内部空間Sは上下方向に伸縮変化する空間であり、その空間内にFPCケーブル51が配設されている。FPCケーブル51は、その一端側(下端側)が図示しない固定部材により固定部ベース21に固定され、固定部14の外周部(例えば固定部ケース22)に形成された貫通孔を介して固定部14の外側に引き出されている。なお、FPCケーブル51と固定部ベース21との接続に着脱可能なコネクタが用いられる構成でもよい。
【0041】
また、FPCケーブル51の他端側(上端側)は、昇降部ベース41よりも上方に引き出されるようになっている。すなわち、図2に示すように、昇降部ベース41とベース部16aとにはそれぞれケーブル挿通孔41a,16dが形成されており、そのケーブル挿通孔41a,16dは回動支持部16の突出部16cの内部スペースに連通している。この場合、FPCケーブル51は、ケーブル挿通孔41a,16dを通じて突出部16cの内部スペースに導かれている。
【0042】
FPCケーブル51により、本ロボット10における各駆動部(前段側の昇降動作部11の駆動部、及び後段側の回動動作部12の駆動部)に対して駆動電力や制御信号が送出される。つまり、図示しない電源装置からの電力供給やロボットコントローラからの信号送信がこのFPCケーブル51を介して実施される。また、各動作部11,12でロボット動作状態が検出される場合に、その検出信号も同様に、FPCケーブル51を介して送出される。
【0043】
本実施形態では特に、FPCケーブル51の取付構造として、ケース内部空間SにおいてFPCケーブル51をS字状に折り返して配置するための折り返し手段を用いており、その折り返しのための構成として、固定部14に設けられた第1折り返しバー52と、昇降部15に設けられた第2折り返しバー53とを有している。本実施形態では、これら各折り返しバー52,53が第1当接部、第2当接部にそれぞれ相当する。各折り返しバー52,53はいずれも棒状の長尺材である。第1折り返しバー52は、固定部ベース21から上方に延びる一対の取付ロッド54の先端部に、そのロッド長手方向に直交する方向に取り付けられ、第2折り返しバー53は、昇降部ベース41から下方に延びる一対の取付ロッド55の先端部に、そのロッド長手方向に直交する方向に取り付けられている。なお、固定部14では、一対の取付ロッド54の間のスペースを利用して昇降用モータ25が配設されている。
【0044】
この場合、第1折り返しバー52は、FPCケーブル51のケーブル表面の一面側に当接し、第2折り返しバー53は、FPCケーブル51のケーブル表面の他面側に当接するものとなっている。そして、ケース内部空間Sにおいて第2折り返しバー53が第1折り返しバー52よりも固定部ベース21寄りに配置されることで、各折り返しバー52,53によりFPCケーブル51が上下方向に折り返されている。なお、固定部ベース21と第1折り返しバー52との間には、FPCケーブル51と昇降用モータ25との接触を避けるべく、折り返しバー52,53とは異なる別の当接バーが設けられている。
【0045】
図6に示すように、第2折り返しバー53は、各取付ロッド55に連結される一対の連結部53aと、その一対の連結部53aの間に設けられる中間部53bとを有しており、中間部53bはその軸心周りに回転自在となっている。中間部53bは、FPCケーブル51の幅寸法よりも大きい長さを有しており、この中間部53bにFPCケーブル51が引っ掛けられるようになっている。なお、第1折り返しバー52についても同様に、各取付ロッド54に連結される一対の連結部と、その一対の連結部の間に設けられる中間部とを有し、中間部がその軸心周りに回転自在となる構成であってもよい。
【0046】
また、図2において、回動支持部16の突出部16cには、昇降部15の昇降動作に際して生じるFPCケーブル51の余り分を巻き取る巻き取り手段が設けられている。つまり、突出部16cはケーブル巻き取りユニットとなっている。この突出部16c(ケーブル巻き取りユニット)の構成を図2を用いて説明する。
【0047】
図2において、回動動作用モータ18は、その出力軸18cがFPCケーブル51の幅方向と同じ方向に延びるように配置されている。そして、その出力軸18cをケーブル巻き取りの中心軸としてFPCケーブル51が巻き取られるようになっている。図2において「M」はFPCケーブル51が巻き取られた部分を示す。この場合、突出部16c内において出力軸18cには付勢手段としてバネ装置57が設けられており、そのバネ装置57により、FPCケーブル51に対して巻き取り方向(突出部16cからすれば引き込み方向)に引張力が生じるようになっている。より具体的には、バネ装置57は例えばゼンマイバネを有するものであり、そのゼンマイバネの一端に、巻回状態のFPCケーブル51の一端が接続されている。したがって、ゼンマイバネの引張力に抗してFPCケーブル51が突出部16cから引き出された状態では、その引張力(すなわちFPCケーブル51を巻き戻す方向の力)によりFPCケーブル51の弛みが解消される。
【0048】
なお、図示は略すが、FPCケーブル51において突出部16c側の端部には、出力軸18cの軸方向に延びるケーブル横出し部が設けられており、そのケーブル横出し部が突出部16cの外側に引き出されるようになっている。
【0049】
次に、昇降動作部11の昇降動作時におけるFPCケーブル51の挙動について説明する。図7は、FPCケーブル51の挙動を説明するための模式図である。図7において、(a)は昇降部15(昇降部ベース41)が降下位置にある状態を示し、(b)は昇降部15(昇降部ベース41)が上昇位置にある状態を示している。
【0050】
図7(a)、(b)ではいずれも、FPCケーブル51が各折り返しバー52,53により折り返されて配置されており、それら両者の違いとして、両折り返しバー52,53の間の折り返し長さが(a)は大きく、(b)は小さいものとなっている。この場合、ケース内部空間SにおけるFPCケーブル51のケーブル長(ベース21,41間のケーブル長)が相違することになるが、図7(a)、(b)のいずれであっても、バネ装置57により適度な引張力がFPCケーブル51に付与されている。これにより、いずれの状況でも、FPCケーブル51が適度に突っ張った状態(適度な張力によりテンションがかかった状態)で維持され、その状態でFPCケーブル51に緩みも生じないまま昇降動作が行われることとなる。
【0051】
したがって、昇降動作部11が高速で昇降動作することを想定しても、FPCケーブル51の暴れやそれに伴うケーブル摩耗、破損等の不都合が抑制される。また、昇降動作時には、FPCケーブル51において第2折り返しバー53との接触部分(当接部分)の位置が変わることになるが、第2折り返しバー53は、その中間部53bが軸心周りに回転自在となっているため、FPCケーブル51との接触部分(当接部分)である中間部53bにおいてFPCケーブル51の摩耗が生じる等の不都合が抑制される。
【0052】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0053】
電気ケーブルとしてFPCケーブル51を用いたため、電気ケーブルとして複数の電線を束ねたハーネスや配線の集合体である被覆付き配線を用いる構成と比較して、ケーブル収容に要する容積の削減が可能となる。また、ケーブル保護具を用いる従来構成と比べても大幅な収容容積の縮小が可能となる。
【0054】
また、昇降部15が昇降動作する際には、その昇降動作に際して生じるFPCケーブル51の弛み(余り分)が、回動支持部16に設けられた巻き取り部(突出部16c)により巻き取られる。したがって、昇降部15の下降動作、上昇動作のいずれに際しても、FPCケーブル51の弛みを抑制し、ひいてはFPCケーブル51を適度に突っ張らせた状態(適度にテンションをかけた状態)で維持できる。これにより、ロボット10の昇降動作に際し、ケーブル保護具を用いずとも、FPCケーブル51の暴れやそれに伴うケーブルの摩耗、破損等の不都合を抑制できる。つまり、FPCケーブル51を、保護具を使わず単体の状態(むき身の状態)で用いることが可能となる。この場合、ロボットとして高速に伸縮動作がなされることを想定しても、やはりケーブルの摩耗、破損等の不都合を抑制できる。以上により、ロボット10における小型化を実現できるとともに、電気ケーブルについてロボット昇降動作に伴う不都合の発生を抑制できる。
【0055】
また本実施形態では、複数の信号線や電力線をFPCケーブル51により構成しており、複数の信号線や電力線を、複数の配線を束ねたハーネスや複数の配線の集合体である被覆付き配線により構成する場合と比較して、最小曲げ半径を小さくできる。そのため、FPCケーブル51を折り返し配置する場合において、折り返し部分での曲げ半径を小さくでき、やはりロボット10の小型化を実現できる。
【0056】
昇降部15の回動支持部16に固定したモータ出力軸18cをケーブル巻き取りの中心軸として、FPCケーブル51の巻き取りを実施する構成とした。これにより、固定部14に対する回動支持部16の移動によりFPCケーブル51の弛み(余り分)が大きくなる場合には、モータ出力軸18cの周りにFPCケーブル51を巻き取らせて弛みを解消することができる。また、固定部14に対する回動支持部16の移動によりFPCケーブル51の弛み(余り分)が小さくなる場合には、モータ出力軸18cからFPCケーブル51を引き出させることができる。
【0057】
各折り返しバー52,53により折り返された状態でFPCケーブル51を配置する構成とした。この構成において、昇降部15の昇降動作に伴いケーブル折り返し長が変わっても、FPCケーブル51が弛んだままとなる不都合を解消できる。
【0058】
各折り返しバー52,53を各々取付ロッド54,55により支持する構成としたため、少なくとも一方の折り返しバー52,53を各取付ロッド54,55に沿わせて移動させれば、両折り返しバー52,53間の昇降方向の距離を容易に調整できる。したがって、例えば、昇降動作部11として同じ構成を用いたまま昇降動作範囲(可動範囲)を変更しようとする場合や、その昇降動作範囲(可動範囲)が異なるロボットを実現しようとする場合にも、FPCケーブル51の弛み具合、張り具合を容易に調整できる。
【0059】
また、FPCケーブル51の幅寸法よりも大きい間隔で、各折り返しバー52,53を支持するための各一対の取付ロッド54,55を設ける構成としたため、それら取付ロッド54,55がFPCケーブル51と接触することがなくなり、FPCケーブル51の擦れ合いによる摩耗防止を図る上で一層好適である。またこの場合、各一対の取付ロッド54,55の間は、モータ等の設置スペースとして利用できる。したがって、ケース内部空間Sにおいて広いスペースを部品収容等に利用でき、部品等の集約配置が可能になることから一層の小型化が可能となる。
【0060】
各折り返しバー52,53のうち昇降部15に設けられた第2折り返しバー53をその軸線周りに回転可能に構成したため、ロボット昇降時に際し、FPCケーブル51と第2折り返しバー53との接触部分での擦れ合いを抑制できる。
【0061】
電気ケーブルであるFPCケーブル51を、ロボット10のケース内部に収容したことにより、電気ケーブルが工場等において他のロボットや機械設備の設置に邪魔になったり、現場作業者の作業の邪魔になったりすることを抑制できる。
【0062】
[他の実施形態]
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0063】
・上記実施形態では、昇降動作部11のケース内部空間SにおいてFPCケーブル51を上下方向に折り返して配置する構成としたが、これを変更し、FPCケーブル51を折り返さずに配置する構成であってもよい。かかる構成であっても、上記のとおりケーブル巻き取り部が設けられることにより、FPCケーブル51が意図せず弛んでしまうといった不都合を抑制できる。
【0064】
・上記実施形態では、ケーブル巻き取り部を構成するバネ装置57においてゼンマイバネを用いてFPCケーブル51を巻き取る構成としたが、これを変更して、コイルバネを用いてFPCケーブル51を巻き取る構成としてもよい。
【0065】
・昇降動作部11の回動支持部16に、FPCケーブル51を巻き取るための巻き取り専用モータを設ける構成としてもよい。この場合、FPCケーブル51に弛み(余り分)が生じても、巻き取り専用モータの駆動によりその弛み分を適宜巻き取ることが可能となる。また、FPCケーブル51の弛み(余り分)は昇降部15の昇降位置に応じて定まるため、巻き取り専用モータの駆動をロボットコントローラにより制御可能とし、ロボットコントローラが、昇降部15の昇降位置に応じて巻き取り専用モータによるケーブル巻き取り量を調整する構成としてもよい。なお、巻き取り専用モータは、回動アーム17の一対の張出部17aを挟んで回動動作用モータ18の反対側に設置されるとよい。
【0066】
・上記実施形態では、昇降動作部11において回動動作部12が連結されているユニット(図1の昇降部15)と、回動動作部12が連結されていないユニット(図1の固定部14)とのうち、後者のユニット(固定部14)を、所定のロボット設置位置に固定される固定ユニットとしたが、これを変更し、その後者のユニット(固定部14)を、動作可能な可動ユニットとしてもよい。例えば、「回動動作部12が連結されていない方のユニット」の前段側に別のユニットを設け、その別のユニットに対して「回動動作部12が連結されていない方のユニット」が回動動作する、又は伸縮動作する構成としてもよい。
【0067】
・ロボット伸縮方向は、上下方向(鉛直方向)に限らず、水平方向など他の方向であってもよい。例えば、軸J1を水平方向に延びる向きとし、そのJ1方向に沿って昇降動作部11が伸縮動作する構成とする。
【符号の説明】
【0068】
10…ロボット、11…昇降動作部、12…回動動作部(第3ユニット)、14…固定部(第1ユニット)、15…昇降部(第2ユニット)、16…回動支持部、16c…突出部(巻き取り部)、18…回動動作用モータ、18c…出力軸、25…昇降用モータ、51…FPCケーブル(フラットケーブル)、52…第1折り返しバー(第1当接部)、53…第2折り返しバー(第2当接部)、57…バネ装置(付勢手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット伸縮方向に相対移動可能な第1ユニットと第2ユニットとを備えるとともに、前記第2ユニットに対して回動可能な第3ユニットを備え、
それら第1ユニット及び第2ユニットに電気ケーブルの一端側と他端側とがそれぞれ接続されており、
前記第2ユニットには前記第3ユニットを回動可能に支持する回動支持部が設けられており、前記第1ユニット及び前記第2ユニットの相対移動に伴い、前記回動支持部が前記第1ユニットに対して近づく又は遠ざかる方向に移動するロボットであって、
前記電気ケーブルはFPCケーブルよりなり、
前記回動支持部には、前記第1ユニット及び前記第2ユニットの相対移動に際して生じる前記FPCケーブルの余り分を巻き取る巻き取り部が設けられていることを特徴とするロボット。
【請求項2】
前記巻き取り部には、前記FPCケーブルをケーブル巻き取り方向に引張付勢する付勢手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記回動支持部は、モータにより前記第2ユニットに対して前記第3ユニットを回動させるものであり、前記モータの出力軸が前記FPCケーブルの幅方向と同じ方向に延びるように前記モータが配置されており、
前記巻き取り部は、前記出力軸をケーブル巻き取りの中心軸として前記FPCケーブルの巻き取りを実施することを特徴とする請求項1又は2に記載のロボット。
【請求項4】
前記第1ユニットには、前記FPCケーブルのケーブル表面の一面側に当接する第1当接部が設けられ、前記第2ユニットには、前記FPCケーブルのケーブル表面の他面側に当接する第2当接部が設けられており、
それら各当接部により、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間のケーブル収容部において前記伸縮方向に前記FPCケーブルが折り返されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−71208(P2013−71208A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212547(P2011−212547)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】