説明

ロボット

【課題】ロボットにおける小型化を実現するとともに、電気ケーブルにおいてロボット伸縮動作に伴う不都合の発生を抑制する。
【解決手段】ロボット10は、固定部14と、昇降動作する昇降部15とを備え、それら固定部14と昇降部15とにFPCケーブル51の一端側と他端側とがそれぞれ接続されている。固定部14には、FPCケーブル51のケーブル表面の一面側に当接する第1折り返しバー52が設けられ、昇降部15には、FPCケーブル51のケーブル表面の他面側に当接する第2折り返しバー53が設けられ、それら各折り返しバー52,53により、上下方向にFPCケーブル51が折り返されている。昇降部15において第2折り返しバー53は上下方向に移動可能であり、その第2折り返しバー53は、本折り返しバー53での折り返し方向とは逆側に向けて付勢手段により付勢されるものとなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットに係り、例えば工場等で使用される産業用ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の可動部を有し、そのうちいずれかが伸縮軸方向に沿って伸縮動作可能な可動部であるロボットが実用化されており、その伸縮軸方向に延びる伸縮軸ケース内には電気ケーブルが収容配置されている。電気ケーブルとして、一般には複数の電線を束ねたハーネスや、複数の配線の集合体である被覆付き配線が用いられる。この場合、電気ケーブルには、ロボットの伸縮動作を考慮して余長分があらかじめ付与される。
【0003】
ケーブル配置に関する技術としては、伸縮軸ケース内において電気ケーブルをケーブル保護具内に収容して配置する技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載されたものは、プラスチック製の折曲自在な構成要素からなり内部にケーブル収容空間が形成されたケーブル保護具を用い、伸縮軸ケース内においてケーブル保護具をS字状をなす状態で配置するものとなっている。かかる技術では、伸縮軸ケース内においてケーブル保護具の変形により、伸縮動作に際しての電気ケーブルの可動代が確保されている。
【0004】
また、こうして伸縮軸ケース内にS字状に配置されるケーブル保護具として、一対のリンクプレートとそれらを連結する連結体とからなる複数のリンク枠体を有するとともに、それら各リンク枠体が互いに回動可能に連結される構造を有し、ケーブル保護具においてリンク枠体の連結により形成されたケーブル収容空間内に電気ケーブルを挿通して案内するものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平3−65689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のとおりS字状に配置されたケーブル保護具に電気ケーブルが収容されている技術では、伸縮軸ケース内においてケーブル保護具の曲がり部分の曲率に依存して、ケーブル収容寸法(必要最小寸法)が大きくなってしまう。したがって、ロボットとしての小型化に対して妨げとなっている。
【0007】
この点、伸縮軸ケース内においてケーブル収容寸法の低減を図るべく、電気ケーブルをケーブル保護具を使わずに単体で配置することも考えられるが、ロボットにおいて高速に伸縮動作がなされることを想定すると、伸縮軸ケース内で電気ケーブルが暴れるおそれがあり、それに起因して電気ケーブルの摩耗や破損が生じるといった不都合が懸念される。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ロボットにおける小型化を実現するとともに、電気ケーブルにおいてロボット伸縮動作に伴う不都合の発生を抑制することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。
【0010】
第1の発明は、ロボット伸縮方向に相対移動可能な第1ユニットと第2ユニットとを備え、それら各ユニットに電気ケーブルの一端側と他端側とがそれぞれ接続されているロボットであって、
前記電気ケーブルはフラットケーブルよりなり、前記両ユニットの間において前記相対移動により伸縮変化する空間部が前記フラットケーブルを収容するケーブル収容部となっており、
前記第1ユニットには、前記フラットケーブルのケーブル表面の一面側に当接する第1当接部が設けられ、前記第2ユニットには、前記フラットケーブルのケーブル表面の他面側に当接する第2当接部が設けられ、それら各当接部により、前記ケーブル収容部において前記伸縮方向に前記フラットケーブルが折り返されており、
前記各ユニットにおいて前記第1当接部及び前記第2当接部の少なくともいずれかは前記伸縮方向に移動可能であり、その移動可能である当接部は、各当接部での折り返し方向とは逆側に向けて付勢手段により付勢されるものとなっていることを特徴とする。
【0011】
上記構成のロボットでは、電気ケーブルとしてフラットケーブルを用いており、ケーブル収容部においてユニットごとに設けた各当接部により折り返された状態でフラットケーブルが収容されている。かかる場合、ケーブル収容部内においては、ケーブル収容に要する容積(寸法)として、薄板状をなすフラットケーブルの折り返し配置と、折り返し状態でのケーブル動作とに要する容積が確保されていればよく、ケーブル保護具を用いる従来構成に比べて大幅な収容容積の縮小が可能となる。
【0012】
またここで、各当接部にフラットケーブルを引っ掛けていない状態を想定すると、両当接部の間のロボット伸縮方向の距離(当接部間距離L)は、両ユニットの相対位置に応じて変わり、縮み方向(互いに近づく側)への両ユニットの相対移動が生じると当接部間距離Lが大きくなり、伸長方向(互いに遠ざかる側)への両ユニットの相対移動が生じると当接部間距離Lが小さくなる。これを鑑みると、フラットケーブルを折り返し配置した状態では、伸長方向への両ユニットの相対移動が生じることに伴いフラットケーブルに弛み(余り分)が生じることが懸念される。
【0013】
この点、上記構成では、第1,第2当接部のいずれかはユニット移動方向に移動可能であり(すなわち、第1当接部であれば第1ユニットにおいて移動可能であり、第2当接部であれば第2ユニットにおいて移動可能であり)、さらにその移動可能である当接部は、各当接部での折り返し方向とは逆側に向けて付勢手段により付勢されているため、縮み方向への相対移動、伸長方向への相対移動のいずれに際しても、フラットケーブルの弛みを抑制し、ひいてはフラットケーブルを適度に突っ張らせた状態(適度にテンションをかけた状態)で維持できる。つまり、仮に伸長方向への相対移動が生じることに伴い上記当接部間距離Lが小さくなっても、フラットケーブルを適度に突っ張らせた状態で維持できる。
【0014】
こうしてフラットケーブルを突っ張らせた状態で維持できることにより、両ユニットの相対移動に際し、ケーブル保護具を用いずとも、フラットケーブルの暴れやそれに伴うケーブルの摩耗、破損等の不都合を抑制できる。この場合、ロボットとして高速に伸縮動作がなされることを想定しても、やはりケーブルの摩耗、破損等の不都合を抑制できる。以上により、ロボットにおける小型化を実現できるとともに、電気ケーブルについてロボット伸縮動作に伴う不都合の発生を抑制できる。
【0015】
第2の発明は、前記フラットケーブルがFPCケーブルであることを特徴とする。
【0016】
FPCケーブルは、合成樹脂等の絶縁性フィルム上に銅箔等により電気回路が形成された薄板状のフレキシブルプリント基板からなるフラットケーブルであり、屈曲性や柔軟性の点で優れている。そのため、上記のとおりフラットケーブルが各当接部により折り返された状態で配置され、さらに各ユニットの相対移動に伴い折り返し位置が適宜変更される構成において、FPCケーブルを採用することで当該ケーブルのスムーズな追従動作が可能となる。したがって、フラットケーブルとしてFPCケーブルを用いることは特に好適な構成であると言える。
【0017】
第3の発明は、前記第1ユニットは、前記第2ユニット側に向けて延びる第1壁部を有し、
前記第2ユニットは、前記第1ユニット側に向けて延びる第2壁部を有し、
前記第1壁部と前記第2壁部との間の空間に前記フラットケーブルが収容されており、
前記フラットケーブルのうち、前記第1ユニットにおいてケーブル接続部から前記第1当接部まで延びる部分が前記第1壁部に対面させて設けられ、
前記フラットケーブルのうち、前記第2ユニットにおいてケーブル接続部から前記第2当接部まで延びる部分が前記第2壁部に対面させて設けられていることを特徴とする。
【0018】
フラットケーブルのうち、第1ユニットにおいてケーブル接続部から第1当接部まで延びる部分は、いわば両ユニットの相対移動に際して第1ユニットと一体化された状態のままで維持されるケーブル部分であり、本発明の構成では、かかるケーブル部分が、第1壁部(第1ユニットの壁部)に対面させて設けられている。また同様に、フラットケーブルのうち、第2ユニットにおいてケーブル接続部から第2当接部まで延びる部分は、いわば両ユニットの相対移動に際して第2ユニットと一体化された状態のままで維持されるケーブル部分であり、本発明の構成では、かかるケーブル部分が、第2壁部(第2ユニットの壁部)に対面させて設けられている。こうした構成により、縮み方向又は伸長方向のいずれかに両ユニットが相対移動する際に、フラットケーブルと各ユニットの壁部との間の擦れを抑制でき、フラットケーブルの保護を図ることができる。
【0019】
第4の発明は、前記両ユニットは、互いに対向して設けられるベース部をそれぞれ有しており、そのベース部に前記フラットケーブルの端部が接続されており、
前記第1ユニットのベース部には、前記第2ユニットのベース部側に向けて延びる第1ロッド部が設けられ、その第1ロッド部に交差する方向に長尺状の前記第1当接部が支持されており、
前記第2ユニットのベース部には、前記第1ユニットのベース部側に向けて延びる第2ロッド部が設けられ、その第2ロッド部に交差する方向に長尺状の前記第2当接部が支持されていることを特徴とする。
【0020】
上記構成によれば、第1当接部及び第2当接部が、各々ロッド部に支持された状態で設けられている。この場合、少なくとも一方の当接部を各ロッド部に沿わせて移動させれば、両当接部の間のロボット伸縮方向の距離の調整が容易に可能となる。したがって、例えば、同じユニットを用いたまま伸縮動作範囲(可動範囲)を変更しようとする場合や、その伸縮動作範囲(可動範囲)が異なるロボットを実現しようとする場合にも、フラットケーブルの弛み具合、張り具合を容易に調整できる。
【0021】
また、フラットケーブルの幅寸法よりも大きい間隔で、一対となるロッド部(第1ロッド部、第2ロッド部)を設けるとともに、その間に当接部を設ける構成とすれば、当接部を支える部材(ロッド部)がフラットケーブルと接触することがなくなり、フラットケーブルの擦れ合いによる摩耗を抑制する上でも有益である。
【0022】
第5の発明は、前記第1当接部及び前記第2当接部のうち各ユニットにおいて前記伸縮方向に移動可能である当接部は長尺部材よりなり、その軸線周りに回転可能となっていることを特徴とする。
【0023】
第1当接部及び第2当接部のうち各ユニットにおいて伸縮方向に移動可能である当接部は、その移動に伴いフラットケーブルにおける当接位置が変わり、その当接部が非回転に設けられていると、フラットケーブルと当接部との接触部分で擦れ合いが生じる。この点、上記構成では、当接部がその軸周りに回転可能となっているため、フラットケーブルと当接部との接触部分での擦れ合いを抑制できる。つまり、ロボットの伸縮動作時にはフラットケーブルの動きに合わせて当接部が回転しながら移動し、フラットケーブルの表面と当接部との擦れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】2軸ロボットの外観を示す斜視図。
【図2】昇降動作部の内部構造を示す断面図。
【図3】昇降動作部の内部構造を示す斜視図。
【図4】昇降動作部の内部構造を示す斜視図。
【図5】昇降動作部の内部構造を示す斜視図。
【図6】第2折り返しバーの支持構造を示す図。
【図7】折り返し状態のFPCケーブルの挙動を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、昇降機構と回動機構とを有する2軸ロボットについて具体化しており、図1はその外観を示す斜視図である。
【0026】
図1に示すように、ロボット10は概要として、上下方向に延びる軸Jに沿って昇降動作を行う昇降動作部11と、軸Jを回動中心として正逆両方向に回動動作を行う回動動作部12とを備えている。昇降動作部11及び回動動作部12はそれぞれ、昇降用、回動用の駆動部(モータ)を有している。昇降動作部11は、軸Jを伸縮方向として伸縮する伸縮動作部に相当する。
【0027】
昇降動作部11は、所定のロボット設置場所に固定される固定部14と、その固定部14に対して昇降する昇降部15とを有している。本実施形態では、固定部14が「第1ユニット」に相当し、昇降部15が「第2ユニット」に相当する。
【0028】
また、回動動作部12は、昇降動作部11の昇降部15から上方に延びる回動軸部16と、その回動軸部16の上端部に連結され、水平方向に延びる回動アーム17とを有している。回動アーム17の回動先端側には操作ツール18が設けられており、回動アーム17が軸Jを回動中心として回動すると、それに合わせて操作ツール18の操作位置が変位する。操作ツール18は、例えばワークを搬送する搬送ツールである。
【0029】
次に、昇降動作部11について詳細な構成を図2〜図5を用いて説明する。図2は、昇降動作部11の内部構造を示す断面図であり、図3、図4は、昇降動作部11の内部構造を異なる2方向から見た斜視図である。なお、図3、図4では、昇降動作部11の外周のケース部を省略して図示している。また、図5は、昇降動作部11の内部構造について電気ケーブル(FPCケーブル)等、一部構成を省略して示す斜視図である。
【0030】
図2〜図5に示すように、昇降動作部11において、固定部14は、略円盤状をなす固定部ベース21と、その固定部ベース21から上方に延びる固定部ケース22とを有している。固定部ベース21は、ねじ等により互いに連結された下ベース21aと上ベース21bとを有し、それら両ベース21a,21bを囲むようにカバー21cが取り付けられている。下ベース21aには、ロボット設置場所にねじ等により固定される固定フランジ部21dが設けられている。また、固定部ケース22は、固定部ベース21と略同一の外径寸法を有する円筒状をなしており、固定部ベース21(詳しくは上ベース21b)に対して固定されている。
【0031】
固定部ベース21の上方であって固定部ケース22の内側となるスペースは昇降用アクチュエータの設置スペースとなっており、この設置スペースに、ロボット昇降動作のための昇降用モータ25と、昇降用モータ25の回転駆動に伴い回転して上下方向、すなわちロボット昇降方向に伸縮動作する伸縮機構部26とが設置されている。
【0032】
伸縮機構部26は、ボールねじ伸縮機構を用いて構成されており、固定部ベース21を上下方向に貫通して設けられるボールねじ31を有している。ボールねじ31は、上下方向に昇降移動することなく(すなわち、固定部ベース21に対して昇降移動することなく)回転するようにして設けられており、昇降部15側に設けられるボールナット32に螺合している。この場合、ボールねじ31が回転するとそれに合わせてボールナット32が回転しながら昇降方向に移動する。
【0033】
また、固定部ベース21において、下ベース21aにはその下方に開口するベース内スペースが形成されており、そのベース内スペースには、昇降用モータ25の回転をボールねじ31に伝達するための動力伝達機構が設けられている。動力伝達機構は、昇降用モータ25の出力軸に一体回転可能に設けられた入力側プーリ35と、ボールねじ31に一体回転可能に設けられた出力側プーリ36とを有し、これら両プーリ35,36にベルト37が掛け渡されている。したがって、昇降用モータ25が回転駆動されると、それに伴い両プーリ35,36が回転しその回転によりボールねじ31が回転する。なお、動力伝達機構は、モータ回転を減速する減速機能を有していてもよい。また、動力伝達機構は、複数の動力伝達ギア(減速ギア)からなるギア機構により構成されていてもよい。さらに、昇降用モータ25がベース内スペースに設けられる構成であってもよい。
【0034】
一方、昇降部15は、略円盤状をなし固定部ベース21に対向配置される昇降部ベース41と、その昇降部ベース41から下方に延びる円筒状の昇降部ケース42とを有している。昇降部ケース42は、その上板部42aが昇降部ベース41の底面に固定されている。昇降部ケース42は、固定部ケース22に対してその外側に被せるようにして設けられ、固定部ケース22に対して上下方向に昇降移動する。
【0035】
また、昇降部ケース42の上板部42aには、その下方に延びる板状のフレーム43が設けられている。フレーム43は、上下方向に延びる鉛直板部43aと、その上下両端部において鉛直板部43aに直交する向きに設けられた一対のフランジ部43b,43cとを有し、上側のフランジ部43bが昇降部ケース42の上板部42aに固定されている。また、下側のフランジ部43cには、連結プレート44が固定され、その連結プレート44にボールナット32が固定されている。
【0036】
この場合、ボールナット32は、フレーム43や連結プレート44を介して昇降部ベース41に一体化されており、ボールねじ31の回転によりボールナット32が上下方向に移動すると、それに合わせて昇降部ベース41及び昇降部ケース42が上下方向に移動する(昇降移動する)。
【0037】
フレーム43は、鉛直板部43aが概ね昇降部ベース41の中心部を通る位置となるように設けられている。この場合、フレーム43は、固定部ケース22及び昇降部ケース42により形成されるケース内部空間Sにおいて、昇降用モータ25を収容するモータ収容空間と、伸縮機構部26を収容する伸縮機構収容空間との境界部に設けられている。
【0038】
また、昇降動作部11には、固定部14に対する昇降部15の昇降移動を案内するための案内機構が設けられている。案内機構について具体的な構成を説明する。図5に示すように、昇降部15側に固定されているフレーム43には、その下端部にフレーム43と共に昇降移動する一対のスライダ46が設けられている。各スライダ46は、フレーム43の幅方向端部となる位置にそれぞれ設けられている。一方で、固定部ベース21には、その上面から上方に延びる一対の案内レール47が設けられている。各案内レール47は、一対のスライダ46を横方向両側から挟む位置に設けられている。上記構成では、固定部14に対して昇降部15が昇降移動する際(フレーム43が昇降移動する際)には、案内レール47に案内されながらスライダ46とフレーム43とが移動することになり、これにより昇降部15の安定動作が可能となっている。なお、図2〜図4では便宜上、案内機構の図示を省略している。
【0039】
昇降部ベース41は、昇降動作部11に対して回動動作部12を連結させるための連結中間部材でもあり、図示は略すが、昇降部ベース41の上面側には回動動作部12のベース体が固定されるようになっている。
【0040】
また、昇降動作部11には、電気ケーブルとしてのFPCケーブル51が設けられている。FPCケーブル51は、所定幅の長尺状をなし合成樹脂等の絶縁性フィルム上に銅箔等により電気回路が形成された薄板状のフレキシブルプリント基板からなるフラットケーブルであり、固定部ベース21と昇降部ベース41との間に設けられている。つまりこの場合、ケーブル収容部であるケース内部空間Sは上下方向に伸縮変化する空間であり、その空間内にFPCケーブル51が配設されている。FPCケーブル51は、その一端側(下端側)が図示しない固定部材により固定部ベース21に固定され、他端側(上端側)が図示しない固定部材により昇降部ベース41に固定されている。FPCケーブル51の一部は、固定部14の外周部(例えば固定部ケース22)に形成された貫通孔を介して固定部14の外側に引き出されている。なお、FPCケーブル51と各ベース21,41との接続に着脱可能なコネクタが用いられる構成でもよい。
【0041】
FPCケーブル51により、本ロボット10における各駆動部(前段側の昇降動作部11の駆動部、及び後段側の回動動作部12の駆動部)に対して駆動電力や制御信号が送出される。つまり、図示しない電源装置からの電力供給やロボットコントローラからの信号送信がこのFPCケーブル51を介して実施される。また、各動作部11,12でロボット動作状態が検出される場合に、その検出信号も同様に、FPCケーブル51を介して送出される。
【0042】
本実施形態では特に、FPCケーブル51の取付構造として、ケース内部空間SにおいてFPCケーブル51をS字状に折り返して配置するための折り返し手段を用いており、その折り返しのための構成として、固定部14に設けられた第1折り返しバー52と、昇降部15に設けられた第2折り返しバー53とを有している。本実施形態では、これら各折り返しバー52,53が第1当接部、第2当接部にそれぞれ相当する。各折り返しバー52,53はいずれも棒状の長尺材である。第1折り返しバー52は、固定部ベース21から上方に延びる一対の取付ロッド54の先端部に、そのロッド長手方向に直交する方向に取り付けられ、第2折り返しバー53は、昇降部ベース41から下方に延びる一対の取付ロッド55の先端部に、そのロッド長手方向に直交する方向に取り付けられている。なお、固定部14では、一対の取付ロッド54の間のスペースを利用して昇降用モータ25が配設されている。
【0043】
この場合、第1折り返しバー52は、FPCケーブル51のケーブル表面の一面側に当接し、第2折り返しバー53は、FPCケーブル51のケーブル表面の他面側に当接するものとなっている。そして、ケース内部空間Sにおいて第2折り返しバー53が第1折り返しバー52よりも固定部ベース21寄りに配置されることで、各折り返しバー52,53によりFPCケーブル51が上下方向に折り返されている。なお、固定部ベース21と第1折り返しバー52との間には、FPCケーブル51と昇降用モータ25との接触を避けるべく、折り返しバー52,53とは異なる別の当接バーが設けられている。
【0044】
ここで、両折り返しバー52,53のうち第2折り返しバー53は、上下方向に移動可能であり、かつケーブル折り返し方向とは逆側(下方向)に向けて付勢手段により付勢される構成となっている。その構成を図6で説明すると、第2折り返しバー53は、各取付ロッド55に連結される一対の連結部53aと、その一対の連結部53aの間に設けられる中間部53bとを有しており、中間部53bはその軸心周りに回転自在となっている。中間部53bは、FPCケーブル51の幅寸法よりも大きい長さを有しており、この中間部53bにFPCケーブル51が引っ掛けられるようになっている。
【0045】
第1折り返しバー52についても同様に、各取付ロッド54に連結される一対の連結部と、その一対の連結部の間に設けられる中間部とを有し、中間部がその軸心周りに回転自在となる構成であってもよい。
【0046】
また、各取付ロッド55には、同ロッド55の長さを可変とする長さ調整部56が設けられている。この長さ調整部56は、弾性部材としてスプリングを備えるものであり、第2折り返しバー53に外力(第2折り返しバー53を押し上げる力)がかかっていない状態では、スプリング力により最も伸長した状態となっている。そして、第2折り返しバー53を押し上げる力がかかると、スプリング力に抗して長さ調整部56が縮み、ひいては取付ロッド55の長さが短縮されるようになっている。本実施形態では、長さ調整部56が付勢手段に相当する。
【0047】
次に、昇降動作部11の昇降動作時におけるFPCケーブル51の挙動について説明する。図7は、両折り返しバー52,53にFPCケーブル51を引っ掛けた状態でのFPCケーブル51の挙動を説明するための模式図である。図7において、(a)は昇降部15(昇降部ベース41)が降下位置にある状態を示し、(b)は昇降部15(昇降部ベース41)が上昇位置にある状態を示している。
【0048】
図7(a)、(b)ではいずれも、FPCケーブル51が各折り返しバー52,53により折り返されて配置されており、それら両者の違いとして、両折り返しバー52,53の間の折り返し長さが(a)は大きく、(b)は小さいものとなっている。この場合、(a)では、取付ロッド55の長さ調整部56が縮んだ状態になっているのに対し、(b)では長さ調整部56が伸びた状態となっている。これにより、図7(a)、(b)ではいずれも、FPCケーブル51が適度に突っ張った状態(適度な張力によりテンションがかかった状態)で維持されており、その状態でFPCケーブル51に緩みも生じないまま昇降動作が行われることとなる。なお、図7(a)には、長さ調整部56が縮んでいない状態(図7(b)と同じ長さになっている状態)での第2折り返しバー53の位置を破線にて示している。
【0049】
したがって、昇降動作部11が高速で昇降動作することを想定しても、FPCケーブル51の暴れやそれに伴うケーブル摩耗、破損等の不都合が抑制される。また、昇降動作時には、FPCケーブル51において第2折り返しバー53との接触部分(当接部分)の位置が変わることになるが、第2折り返しバー53は、その中間部53bが軸心周りに回転自在となっているため、FPCケーブル51との接触部分(当接部分)である中間部53bにおいてFPCケーブル51の摩耗が生じる等の不都合が抑制される。
【0050】
ここで、昇降動作部11が昇降動作をする際、図7の(a)、(b)の状態が交互に繰り返されることになり、ケース内部空間Sでは、FPCケーブル51の一部である昇降部分、すなわち昇降部ベース41(上側のケーブル接続部)から第2折り返しバー53まで延びる部分が上下方向に昇降動作することになるが、本実施形態の構成では、そのFPCケーブル51の昇降部分が他の部位に擦れ合うことが抑制されている。
【0051】
すなわち、FPCケーブル51は、第1壁部に相当する固定部ケース22と第2壁部に相当するフレーム43との間の空間が収容されており、その空間内においては、FPCケーブル51のうち、固定部ベース21(下側のケーブル接続部)から第1折り返しバー52まで延びる部分が固定部ケース22に対面させて設けられ、昇降部ベース41(上側のケーブル接続部)から第2折り返しバー53まで延びる部分がフレーム43に対面させて設けられている。この場合、固定部ベース21(下側のケーブル接続部)から第1折り返しバー52まで延びる部分は、いわば固定部14(固定部ベース21)と一体化された状態のままで維持されるケーブル部分であり、本構成では、かかるケーブル部分が、固定部ケース22(固定部14側の壁部)に対面させて設けられている。また同様に、昇降部ベース41(上側のケーブル接続部)から第2折り返しバー53まで延びる部分は、いわば昇降部15(昇降部ベース41)と一体化された状態のままで維持されるケーブル部分であり、本構成では、かかるケーブル部分が、フレーム43(昇降部15側の壁部)に対面させて設けられている。これにより、伸縮動作に際し、FPCケーブル51とそれに対面する壁部との間の擦れが抑制される。
【0052】
こうしたFPCケーブル51の配置は、FPCケーブル51の磨耗低減という観点からなされたものであり、かかる配置により、FPCケーブル51と固定部ケース22及びフレーム43との相対速度は昇降動作に関係なくゼロに保たれる。したがって、FPCケーブル51の磨耗が抑制される。
【0053】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0054】
電気ケーブルとしてFPCケーブル51を用い、各折り返しバー52,53により折り返された状態でそのFPCケーブル51を配置する構成とした。かかる場合、ケーブル収容に要する容積(寸法)としては、薄板状をなすFPCケーブル51の折り返し配置と、折り返し状態でのケーブル動作とに要する容積が確保されていればよく、ケーブル保護具を用いる従来構成に比べて大幅な収容容積の縮小が可能となる。
【0055】
また、第2折り返しバー53について、上下方向(ユニット移動方向)に移動可能であり、かつケーブル折り返し方向とは逆側(下方向)に向けて付勢手段により付勢される構成としたため、昇降部15の下降動作、上昇動作のいずれに際しても、FPCケーブル51の弛みを抑制し、ひいてはFPCケーブル51を適度に突っ張らせた状態(適度にテンションをかけた状態)で維持できる。これにより、ロボット10の昇降動作に際し、ケーブル保護具を用いずとも、FPCケーブル51の暴れやそれに伴うケーブルの摩耗、破損等の不都合を抑制できる。つまり、FPCケーブル51を、保護具を使わず単体の状態(むき身の状態)で用いることが可能となる。この場合、ロボットとして高速に伸縮動作がなされることを想定しても、やはりケーブルの摩耗、破損等の不都合を抑制できる。以上により、ロボット10における小型化を実現できるとともに、電気ケーブルについてロボット昇降動作に伴う不都合の発生を抑制できる。
【0056】
また本実施形態では、複数の信号線や電力線をFPCケーブル51により構成しており、複数の信号線や電力線を、複数の配線を束ねたハーネスや複数の配線の集合体である被覆付き配線により構成する場合と比較して、最小曲げ半径を小さくできる。そのため、FPCケーブル51を折り返し配置する場合において、折り返し部分での曲げ半径を小さくでき、やはりロボット10の小型化を実現できる。
【0057】
折り返し状態となっているFPCケーブル51において、固定部14に一体化されたまま維持される部分は固定部ケース22に対面させ、昇降部15に一体化されたまま維持される部分はフレーム43に対面させる構成とした。これにより、ロボット10の昇降動作に際し、FPCケーブル51がロボット内の機械的部位に擦れ合うことを抑制でき、FPCケーブル51のより一層の保護を図ることができる。
【0058】
各折り返しバー52,53を各々取付ロッド54,55により支持する構成としたため、少なくとも一方の折り返しバー52,53を各取付ロッド54,55に沿わせて移動させれば、両折り返しバー52,53間の昇降方向の距離を容易に調整できる。したがって、例えば、昇降動作部11として同じ構成を用いたまま昇降動作範囲(可動範囲)を変更しようとする場合や、その昇降動作範囲(可動範囲)が異なるロボットを実現しようとする場合にも、FPCケーブル51の弛み具合、張り具合を容易に調整できる。
【0059】
また、FPCケーブル51の幅寸法よりも大きい間隔で、各折り返しバー52,53を支持するための各一対の取付ロッド54,55を設ける構成としたため、それら取付ロッド54,55がFPCケーブル51と接触することがなくなり、FPCケーブル51の擦れ合いによる摩耗防止を図る上で一層好適である。またこの場合、各一対の取付ロッド54,55の間は、モータ等の設置スペースとして利用できる。したがって、ケース内部空間Sにおいて広いスペースを部品収容等に利用でき、部品等の集約配置が可能になることから一層の小型化が可能となる。
【0060】
各折り返しバー52,53のうち昇降部15に設けられた第2折り返しバー53をその軸線周りに回転可能に構成したため、ロボット昇降時に際し、FPCケーブル51と第2折り返しバー53との接触部分での擦れ合いを抑制できる。
【0061】
電気ケーブルであるFPCケーブル51を、ロボット10のケース内部に収容したことにより、電気ケーブルが工場等において他のロボットや機械設備の設置に邪魔になったり、現場作業者の作業の邪魔になったりすることを抑制できる。
【0062】
[他の実施形態]
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0063】
・上記実施形態では、昇降動作部11において回動動作部12が連結されているユニット(図1の昇降部15)と、回動動作部12が連結されていないユニット(図1の固定部14)とのうち、後者のユニット(固定部14)を、所定のロボット設置位置に固定される固定ユニットとしたが、これを変更し、その後者のユニット(固定部14)を、動作可能な可動ユニットとしてもよい。例えば、「回動動作部12が連結されていない方のユニット」の前段側に別のユニットを設け、その別のユニットに対して「回動動作部12が連結されていない方のユニット」が回動動作する、又は伸縮動作する構成としてもよい。
【0064】
・上記実施形態では、固定部ベース21に固定された取付ロッドにより折り返しバー52,53を支持する構成としたが、これを変更し、FPCケーブル51を収容するための空間部を区画する壁部(固定部ケース22、フレーム43)に折り返しバー52,53を支持させる構成としてもよい。この場合、固定部ケース22、フレーム43の各側面部に、折り返しバー52,53が取り付けられるとよい。
【0065】
また、固定部14及び昇降部15の各ベース21,41に、互いに向き合う方向に延びる板体を固定し、その先端部を、ケーブル折り返しのための当接部とする構成としてもよい。
【0066】
・上記実施形態では、「当接部」としての両折り返しバー52,53のうち第2折り返しバー53について、上下方向に移動可能であり、かつケーブル折り返し方向とは逆側(下方向)に向けて付勢手段により付勢される構成としたが、これを変更し、第1折り返しバー52について、上下方向に移動可能であり、かつケーブル折り返し方向とは逆側(上方向)に向けて付勢手段により付勢される構成としてもよい。また、両方の折り返しバー52,53についてこうした構成とすることも可能である。
【0067】
・上記実施形態では、フラットケーブルとしてFPCケーブル51を用いたが、これに限らず、FFC(フレキシブルフラットケーブル)を用いてもよい。この場合も同様に、昇降動作部11において同ケーブルが上記のとおり折り返し状態で配置される。
【0068】
・ロボット伸縮方向は、上下方向(鉛直方向)に限らず、水平方向など他の方向であってもよい。例えば、軸Jを水平方向に延びる向きとし、そのJ方向に沿って昇降動作部11が伸縮動作する構成とする。
【符号の説明】
【0069】
10…ロボット、11…昇降動作部、12…回動動作部、14…固定部(第1ユニット)、15…昇降部(第2ユニット)、21…固定部ベース(ベース部)、22…固定部ケース(第1壁部)、25…昇降用モータ、41…昇降部ベース(ベース部)、43…フレーム(第2壁部)、51…FPCケーブル(フラットケーブル)、52…第1折り返しバー(第1当接部)、53…第2折り返しバー(第2当接部)、54…取付ロッド(第1ロッド部)、55…取付ロッド(第2ロッド部)、56…長さ調整部(付勢手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット伸縮方向に相対移動可能な第1ユニットと第2ユニットとを備え、それら各ユニットに電気ケーブルの一端側と他端側とがそれぞれ接続されているロボットであって、
前記電気ケーブルはフラットケーブルよりなり、前記両ユニットの間において前記相対移動により伸縮変化する空間部が前記フラットケーブルを収容するケーブル収容部となっており、
前記第1ユニットには、前記フラットケーブルのケーブル表面の一面側に当接する第1当接部が設けられ、前記第2ユニットには、前記フラットケーブルのケーブル表面の他面側に当接する第2当接部が設けられ、それら各当接部により、前記ケーブル収容部において前記伸縮方向に前記フラットケーブルが折り返されており、
前記各ユニットにおいて前記第1当接部及び前記第2当接部の少なくともいずれかは前記伸縮方向に移動可能であり、その移動可能である当接部は、各当接部での折り返し方向とは逆側に向けて付勢手段により付勢されるものとなっていることを特徴とするロボット。
【請求項2】
前記フラットケーブルがFPCケーブルであることを特徴とする請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記第1ユニットは、前記第2ユニット側に向けて延びる第1壁部を有し、
前記第2ユニットは、前記第1ユニット側に向けて延びる第2壁部を有し、
前記第1壁部と前記第2壁部との間の空間に前記フラットケーブルが収容されており、
前記フラットケーブルのうち、前記第1ユニットにおいてケーブル接続部から前記第1当接部まで延びる部分が前記第1壁部に対面させて設けられ、
前記フラットケーブルのうち、前記第2ユニットにおいてケーブル接続部から前記第2当接部まで延びる部分が前記第2壁部に対面させて設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のロボット。
【請求項4】
前記両ユニットは、互いに対向して設けられるベース部をそれぞれ有しており、そのベース部に前記フラットケーブルの端部が接続されており、
前記第1ユニットのベース部には、前記第2ユニットのベース部側に向けて延びる第1ロッド部が設けられ、その第1ロッド部に交差する方向に長尺状の前記第1当接部が支持されており、
前記第2ユニットのベース部には、前記第1ユニットのベース部側に向けて延びる第2ロッド部が設けられ、その第2ロッド部に交差する方向に長尺状の前記第2当接部が支持されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のロボット。
【請求項5】
前記第1当接部及び前記第2当接部のうち各ユニットにおいて前記伸縮方向に移動可能である当接部は長尺部材よりなり、その軸線周りに回転可能となっていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−71209(P2013−71209A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212548(P2011−212548)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】