説明

ロータおよび埋込磁石型モータ

【課題】接着剤を用いずに、永久磁石をロータコアに固定すること。
【解決手段】円筒状のロータコア(31)と、ロータコア(31)にその端面から軸心方向に埋設される永久磁石(40)とを備えている。永久磁石(40)は、軸心方向に対向する両端面が軸心方向に対して傾斜する傾斜面(41a,43a)となっている。永久磁石(40)の傾斜面(41a,43a)をロータコア(31)の端面側から軸心方向に押圧する押さえ板(35)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータおよび埋込磁石型モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、永久磁石が埋め込まれた埋込磁石型のロータが知られている。この種のロータでは、例えば特許文献1に開示されているように、永久磁石が接着剤によってロータコア(鉄心)の埋設穴に接着固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−194472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したようなロータを有する埋込磁石型モータは、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷凍装置の圧縮機に用いられることも多い。ところが、冷凍装置の圧縮機内には冷媒が存在しており、その冷媒によって永久磁石の接着剤が変性してしまい、永久磁石の固定が不十分になったり、接着剤の成分が冷凍サイクルに悪影響を及ぼすという問題があった。その結果、最悪の場合、永久磁石がロータコア内部で振動して破損したり、冷凍サイクル自体に不具合が生じることがある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、永久磁石が埋め込まれるロータおよびそれを有する埋込磁石型モータにおいて、接着剤を用いることなく、永久磁石をロータコアに十分に固定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、ロータコア(31)の軸心方向に延びる板状の永久磁石(40)の軸心方向の端面を傾斜面に形成し、その傾斜面を軸心方向に押圧する部材を設けるようにしたものである。
【0007】
具体的に、第1の発明は、円筒状のロータコア(31)と、該ロータコア(31)にその端面から該ロータコア(31)の軸心方向に埋設される永久磁石(40)とを備えたロータを対象としている。そして、前記永久磁石(40)は、前記軸心方向に延びる板状に形成され、前記軸心方向に対向する2つ面のうち少なくとも一方が、前記軸心方向に対して傾斜する傾斜面(41a,43a)となっている。また、本発明のロータは、前記永久磁石(40)の傾斜面(41a,43a)を前記ロータコア(31)の端面側から前記軸心方向に押圧する押さえ部材(35,36,37)を備えているものである。
【0008】
第1の発明では、永久磁石(40)の軸心方向の両端面の少なくとも一方が傾斜面(41a,43a)となっている。永久磁石(40)がロータコア(31)に埋設された状態で、永久磁石(40)の傾斜面(41a,43a)が押さえ部材(35,36,37)によって軸心方向に押圧されると、永久磁石(40)は軸心方向へ押圧されると共に傾斜面(41a,43a)の傾斜方向にも押圧される。そのため、永久磁石(40)はロータコア(31)の埋設穴に対して軸心方向および傾斜方向の両方向から押し付けられる。これにより、永久磁石(40)はロータコア(31)に固定される。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記押さえ部材(35,36)が、前記永久磁石(40)の傾斜面(41a,43a)に沿って接触する押圧面(35a,36a)を有しているものである。
【0010】
第2の発明では、永久磁石(40)の傾斜面(41a,43a)が押さえ部材(35,36)の押圧面(35a,36a)で押圧されるので、確実に押圧力が永久磁石(40)に伝えられる。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、前記永久磁石(40)は、前記ロータコア(31)の軸心回りに複数埋設され、各々の前記傾斜面(41a,43a)が、前記ロータコア(31)の端面よりも外方に位置し且つ前記軸心へ向かうにつれて前記端面側へ傾斜している。さらに、前記押さえ部材(35)は、円錐台状に形成され、その円錐面が前記押圧面(35a)を構成し、前記各永久磁石(40)の傾斜面(41a,43a)は、前記押さえ部材(35)の押圧面(35a)に対応する円錐面となっている。
【0012】
第3の発明では、図2に示すように、永久磁石(40)がロータコア(31)に埋設された状態で永久磁石(40)の傾斜面(41a,43a)はロータコア(31)の端面から外方に突出している。永久磁石(40)の傾斜面(41a,43a)は、軸心へ向かうにつれてロータコア(31)の端面に近づくように傾斜している。つまり、永久磁石(40)の傾斜面(41a,43a)は、軸心に対する径方向に傾斜しており、径方向外方へいくに従ってロータコア(31)の端面から遠ざかる。そして、永久磁石(40)の傾斜面(41a,43a)は、押さえ部材(35)の円錐面で軸心方向に押圧される。そうすると、永久磁石(40)は軸心方向へ押圧されると共に径方向外方へも押圧される。そのため、永久磁石(40)はロータコア(31)の埋設穴に対して軸心方向および径方向外方へ押し付けられる。
【0013】
第4の発明は、第1乃至第3の何れか1の発明において、前記永久磁石(40)は、前記軸心方向に複数分割され、その互いに対向する分割面が前記軸心方向に対して傾斜する傾斜面(41a,42a,43a)となっている。
【0014】
第4の発明では、例えば図2に示すように、1つの永久磁石(40)が軸心方向に対して斜めに切断されて分割されている。そして、分割された永久磁石(40)がロータコア(31)に埋設された状態で、ロータコア(31)の最も端面側に位置する永久磁石(40)の傾斜面(41a,43a)が押さえ部材(35,36,37)によって押圧される。そうすると、分割された各永久磁石(40)の分割面同士が接触し、押さえ部材(35,36,37)による押圧力が各永久磁石(40)に伝えられる。これにより、各永久磁石(40)は軸心方向および傾斜面(41a,43a)の傾斜方向に押圧される。
【0015】
第5の発明は、円筒状のステータ(20)と、該ステータ(20)の内側にエアギャップを介して配置される第1乃至第4の何れか1の発明のロータ(30)とを備えていることを特徴とする埋込磁石型モータである。
【0016】
第5の発明では、押さえ部材(35,36,37)による押圧作用によって永久磁石(40)がロータコア(31)に固定される埋込磁石型モータが提供される。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、永久磁石(40)の傾斜面(41a,43a)が押さえ部材(35,36,37)によってロータコア(31)の軸心方向に押圧されると、永久磁石(40)は軸心方向へ押圧されると共に傾斜面(41a,43a)の傾斜方向にも押圧される。これにより、永久磁石(40)をロータコア(31)の埋設穴に対して軸心方向および傾斜方向の両方向から押し付けることができる。その結果、永久磁石(40)を埋設穴に強固に密着させることができるため、接着剤を用いなくても、永久磁石(40)をロータコア(31)に十分に固定することが可能となる。よって、特に冷媒が循環して冷凍サイクルが行われる冷凍装置に対して、信頼性の高いロータ(30)および埋込磁石型モータ(10)を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、実施形態に係る埋込磁石型モータの構成を示す平面図である。
【図2】図2は、実施形態に係るロータの構成を示す縦断面図である。
【図3】図3は、分割された永久磁石の1つを示す斜視図である。
【図4】図4は、分割された永久磁石の1つを示す斜視図である。
【図5】図5は、実施形態に係る押さえ板を示す斜視図である。
【図6】図6は、実施形態の変形例に係る押さえ板を示す斜視図である。
【図7】図7は、実施形態の変形例に係るロータの要部を示す断面図であり、(A)は押圧前を示し、(B)は押圧後を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態および変形例は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0020】
本実施形態に係る埋込磁石型モータ(10)(以下、単にモータ(10)という。)は、冷媒が循環して蒸気圧縮式冷凍サイクルが行われる冷凍装置の圧縮機に用いられる。この圧縮機は、図示しないが、冷媒を圧縮する圧縮機構と、該圧縮機構と連結されて回転駆動するモータ(10)とをケーシング内に備えている。
【0021】
図1に示すように、モータ(10)は、ステータ(20)と、ロータ(30)とを備えている。
【0022】
ステータ(20)は、略円筒状に形成され、ヨーク(21)と複数(本実施形態では、9つ)のティース(22)を備えている。ティース(22)は、ヨーク(21)の内周側の周方向に配列されている。ヨーク(21)とティース(22)とは一体形成されている。各ティース(22)には、コイル(23)が巻回されている。コイル(23)には、ロータ(30)を回転させる回転磁界を発生させるための例えば三相交流が流れる。なお、コイル(23)の巻線方式は、本実施形態のような分布巻きの形態に限らず、複数のティースに対して集中巻きされた形態であってもよい。
【0023】
ロータ(30)は、ステータ(20)の内周側にエアギャップを介して対向配置されている。ロータ(30)は、図2にも示すように、ロータコア(31)と、回転軸(32)と、2つの押さえ板(35)と、複数(本実施形態では、6つ)の永久磁石(40)とを備えている。
【0024】
ロータコア(31)は、図示しないが、磁性材料からなる複数の鋼板が積層されて略円筒状に形成されている。ロータコア(31)の内周側には、回転軸(32)が挿通して固定されている。なお、この回転軸(32)が上述した圧縮機構と連結される。ロータコア(31)には、永久磁石(40)が埋め込まれる複数(6つ)の埋設穴が回転軸(32)周りの周方向に沿って形成されている。この埋設穴は、回転軸(32)の軸方向、即ちロータコア(31)の軸心方向に延びて貫通している。埋設穴は、断面視矩形に形成され、永久磁石(40)と略同じ大きさに形成されている。なお、上述した永久磁石(40)およびその埋設穴の数量は単なる一例であり、これに限るものではない。
【0025】
各永久磁石(40)は、ロータコア(31)の埋設穴に対してロータコア(31)の端面(図2における上側の面と下側の面)から回転軸(32)の軸方向に埋設される。各永久磁石(40)は、回転軸(32)の軸方向に延びる1つの板状磁石が、回転軸(32)の軸方向に分割された複数(本実施形態では、3つ)の分割体からなる。この分割体は、第1磁石(41)と、第2磁石(42)と、第3磁石(43)であり、これらの順にロータコア(31)に埋設される。第1磁石(41)および第2磁石(42)は、図3にも示すように、板状であり、互いに略同じ形状である。第1磁石(41)および第2磁石(42)は、長手方向(即ち、回転軸(32)の軸方向)に対向する両端面が長手方向に対して同じ方向に傾斜する傾斜面(41a,42a)となっている。つまり、第1磁石(41)および第2磁石(42)は、長手方向の断面が平行四辺形となっている。第1磁石(41)および第2磁石(42)は、傾斜面(41a,42a)の傾斜方向がロータコア(31)の径方向に沿う状態でロータコア(31)に埋設される。また、第1磁石(41)および第2磁石(42)は、傾斜面(41a,42a)が回転軸(32)の軸心へ向かうにつれて図2の下側へ傾斜する状態でロータコア(31)に埋設される。一方、第3磁石(43)は、図4にも示すように、板状であり、長手方向(即ち、回転軸(32)の軸方向)に対向する両端面が長手方向に対して傾斜する傾斜面(43a)となっている。第3磁石(43)は、ロータコア(31)に埋設された状態において、上側の傾斜面(43a)が第2磁石(42)の下側の傾斜面(42a)と同じ方向に傾斜し、下側の傾斜面(43a)が回転軸(32)の軸心へ向かうにつれて図2の下側へ傾斜している。つまり、第3磁石(43)は、長手方向の断面が台形となっている。第1磁石(41)および第3磁石(43)は、それぞれロータコア(31)の端面側の傾斜面(41a,43a)がロータコア(31)の端面から外方へ突出した状態でロータコア(31)に埋設される。このように、本実施形態の永久磁石(40)は、長手方向に分割されてロータコア(31)に埋設されているが、長手方向に対向する2つの端面が回転軸(32)の軸方向に対して傾斜する傾斜面(41a,43a)となっている。そして、この傾斜面(41a,43a)は、回転軸(32)の軸心へ向かうにつれてロータコア(31)の端面側へ傾斜している。
【0026】
2つの押さえ板(35)は、図5にも示すように、同じ円錐台状に形成されている。押さえ板(35)の中央には、軸心方向に延びる貫通穴(35b)が形成され、この貫通穴(35b)に回転軸(32)が挿通する。各押さえ板(35)は、図2に示すように、両端の円形面のうち小さい側の円形面がロータコア(31)の端面と対向するように回転軸(32)に挿通される。各押さえ板(35)は、回転軸(32)に挿通された状態で、円錐面である傾斜面(35a)が各永久磁石(40)における第1磁石(41)の傾斜面(41a)と第3磁石(43)の傾斜面(43a)とに面接触するようになっている。第1磁石(41)の上側の傾斜面(41a)と第3磁石(43)の下側の傾斜面(43a)は、押さえ板(35)の傾斜面(35a)に対応する円錐面となっている。そして、各押さえ板(35)は、それぞれ図2に示す矢印方向(回転軸(32)の軸方向)に押圧されながらロータコア(31)の端面に固定される。
【0027】
〈永久磁石の固定〉
上述したように、各押さえ板(35)がロータコア(31)の端面へ向かって押圧されると、押さえ板(35)の傾斜面(35a)を通じて第1磁石(41)および第3磁石(43)の傾斜面(41a,43a)が回転軸(32)の軸方向へ押圧される。つまり、各押さえ板(35)は、永久磁石(40)の傾斜面(41a,43a)をロータコア(31)の端面側からその軸心方向へ押圧する押さえ部材を構成している。そして、各押さえ板(35)の傾斜面(35a)は、永久磁石(40)の傾斜面(41a,43a)と接触して該傾斜面(41a,43a)をロータコア(31)の軸心方向へ押圧する押圧面を構成している。
【0028】
第1磁石(41)および第3磁石(43)の傾斜面(41a,43a)が押圧されると、その押圧力が第2磁石(42)の傾斜面(42a)に伝えられる。つまり、第1磁石(41)の下側の傾斜面(41a)を通じて第2磁石(42)の上側の傾斜面(42a)が下方へ押圧され、第3磁石(43)の上側の傾斜面(43a)を通じて第2磁石(42)の下側の傾斜面(42a)が上方へ押圧される。ここで、第1磁石(41)および第2磁石(42)の傾斜面(41a,42a)、第3磁石(43)の上側の傾斜面(43a)は、上述したようにロータコア(31)の径方向に傾斜し且つ回転軸(32)の軸心へ向かうにつれて下側へ傾斜している。また、第3磁石(43)の下側の傾斜面(43a)は、上述したようにロータコア(31)の径方向に傾斜し且つ回転軸(32)軸心へ向かうにつれて上側へ傾斜している。そのため、各傾斜面(41a,42a,43a)が回転軸(32)の軸方向へ押圧されると、各磁石(41,42,43)は回転軸(32)の軸方向へ押圧されると共にロータコア(31)の径方向外方へも押圧される。これにより、各磁石(41,42,43)同士が強固に密着すると共に、各磁石(41,42,43)はロータコア(31)の埋設穴における径方向外方側の壁に強く密着する(押し付けられる)。よって、接着剤を用いなくても、永久磁石(40)をロータコア(31)に対して十分に固定することが可能となる。さらに、ロータ(30)は回転軸(32)を中心にして回転するため、その遠心力が各磁石(41,42,43)に作用する。これによっても、永久磁石(40)を埋設穴における径方向外方側の壁に押し付けることができる。したがって、永久磁石(40)をより十分に固定することが可能となる。
【0029】
また、本実施形態では、押さえ板(35)の傾斜面(35a)と永久磁石(40)の傾斜面(41a,43a)とを面接触させるため、即ち面同士で押圧力を作用させるため、押圧力を確実且つ十分に作用させることができる。
【0030】
また、本実施形態では、押さえ板(35)を円錐台状に形成し、その1つの円錐面によって複数の永久磁石(40)の傾斜面(41a,43a)を押圧するようにしたので、部品点数の少ない簡易な構成で永久磁石(40)を固定することができる。
【0031】
以上により、冷媒によって接着剤が変性して永久磁石の固定が不十分になるという虞がないため、信頼性の高いロータ(30)および埋込磁石型モータ(10)を提供することができる。
【0032】
−実施形態の変形例−
〈変形例1〉
本変形例は、上述した実施形態においてロータ(30)の押さえ板(35)の構成を変更したものである。上述した実施形態の押さえ板(35)は円錐台状に形成したが、本変形例の押さえ板(36)は、図6に示すように、六角錐台状に形成したものである。押さえ板(36)の中央には、軸心方向に延びる貫通穴(36b)が形成され、この貫通穴(36b)に回転軸(32)が挿通する。押さえ板(36)は、両端の六角形面のうち小さい側の六角形面がロータコア(31)の端面と対向するように回転軸(32)に挿通される。押さえ板(36)は、回転軸(32)に挿通された状態で、六角錐面である6つの傾斜面(36a)が各永久磁石(40)における第1磁石(41)の傾斜面(41a)と第3磁石(43)の傾斜面(43a)とに面接触するようになっている。第1磁石(41)の上側の傾斜面(41a)と第3磁石(43)の下側の傾斜面(43a)は、押さえ板(36)の傾斜面(36a)に対応する平面となっている。この変形例においても、押さえ板(36)の傾斜面(36a)を通じて各磁石(41,42,43)が回転軸(32)の軸方向に押圧されるので、各永久磁石(40)をロータコア(31)に十分に固定することができる。その他の構成、作用および効果は上述した実施形態と同様である。
【0033】
〈変形例2〉
本変形例は、上述した実施形態においてロータ(30)の押さえ板(35)の構成を変更したものである。本変形例の押さえ板(37)は、図7に示すように、円板状の基板(37a)を有し、該基板(37a)の中央には軸心方向に貫通する貫通穴(図示せず)が形成されている。この貫通穴に回転軸(32)が挿通する。図7(A)に示すように、押さえ板(37)は、第1磁石(41)および第3磁石(43)の傾斜面(41a,43a)を押圧する前の状態では、基板(37a)の一方の端面に複数(本変形例では、6つ)の突起(37b)が形成されている。この各突起(37b)は、基板(37a)において、ロータコア(31)に埋設された各永久磁石(40)に対応するように周方向に沿って形成されている。突起(37b)は、先細形状になっている。
【0034】
本変形例では、図7(B)に示すように、押さえ板(37)がロータコア(31)の端面側から各永久磁石(40)の第1磁石(41)および第3磁石(43)へ押圧されると、押さえ板(37)の各突起(37b)は第1磁石(41)および第3磁石(43)の傾斜面(41a,43a)に接触しその傾斜面(41a,43a)に沿って先端部が潰れる。この先端部の潰れによって、押さえ板(37)における突起(37b)が形成される側の端面とロータコア(31)の端面とが接触する。そして、押さえ板(37)がロータコア(31)に固定される。なお、本変形例において、第1磁石(41)および第3磁石(43)は、ロータコア(31)に埋設された状態では傾斜面(41a,43a)がロータコア(31)の端面よりも内方に位置している。この変形例においても、押さえ板(37)の突起(37b)を通じて各磁石(41,42,43)が回転軸(32)の軸方向に押圧されるので、各永久磁石(40)をロータコア(31)に十分に固定することができる。その他の構成、作用および効果は上述した実施形態と同様である。
【0035】
〈その他の変形例〉
本発明は、上述した実施形態において次のように構成してもよい。
【0036】
例えば、永久磁石(40)の分割数は、3つに限らず、2つまたは4つ以上であってもよい。また、永久磁石(40)を分割せずに1つの板状のまま埋設するようにしてもよい。
【0037】
また、押さえ板(35,36,37)は、上述した形状に限らず、各永久磁石(40)の傾斜面(41a,43a)を回転軸(32)の軸方向に押圧する形状であればよく、また、各永久磁石(40)を個別に押圧する複数の押さえ部材で構成するようにしてもよい。
【0038】
また、各磁石(41,42,43)の傾斜面(41a,42a,43a)は上述したものに限らない。例えば、図2において、第1磁石(41)および第2磁石(42)の傾斜面(41a,42a)、第3磁石(43)の上側の傾斜面(43a)は、回転軸(32)の軸心へ向かうにつれて上方へ傾斜し、第3磁石(43)の下側の傾斜面(43a)は、回転軸(32)の軸心へ向かうにつれて下方へ傾斜するものであってもよい。この場合は、各磁石(41,42,43)が回転軸(32)の軸方向に押圧されることによって、各磁石(41,42,43)は回転軸(32)の軸方向に押圧されると共にロータコア(31)の径方向内方へ押圧される。そのため、各磁石(41,42,43)同士が強固に接触すると共に、各磁石(41,42,43)はロータコア(31)の埋設穴における径方向内方側の壁に強く押し付けられて、その結果、各磁石(41,42,43)はロータコア(31)に十分に固定される。
【0039】
また、各磁石(41,42,43)の傾斜面(41a,43a)は、上述したようにロータコア(31)の径方向に傾斜するものに限らず、例えばロータコア(31)の径方向と直交する方向に傾斜するものでもよい。この場合、各磁石(41,42,43)は軸方向に押圧されると共に傾斜面の傾斜方向に押圧される。つまり、本発明は、永久磁石(40)が回転軸(32)の軸方向に押圧されると共に埋設穴の壁に押圧される傾斜面であれば如何なる形態であってもよい。
【0040】
また、上述した実施形態では、永久磁石(40)の軸方向に対向する両方の端面を傾斜面(41a,43a)としたが、本発明は、一方の端面のみを傾斜面としてもよい。その場合、ロータコア(31)の埋設穴は一方の開口が塞がる有底の穴として形成される。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上説明したように、本発明は、永久磁石が埋め込まれたロータおよびそれを有する埋込磁石型モータについて有用である。
【符号の説明】
【0042】
10 埋込磁石型モータ
20 ステータ
30 ロータ
31 ロータコア
35,36,37 押さえ板(押さえ部材)
35a,36a 傾斜面(押圧面)
40 永久磁石
41a,42a,43a 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のロータコア(31)と、該ロータコア(31)にその端面から該ロータコア(31)の軸心方向に埋設される永久磁石(40)とを備えたロータであって、
前記永久磁石(40)は、前記軸心方向に延びる板状に形成され、前記軸心方向に対向する二つ面のうち少なくとも一方が、前記軸心方向に対して傾斜する傾斜面(41a,43a)となり、
前記永久磁石(40)の傾斜面(41a,43a)を前記ロータコア(31)の端面側から前記軸心方向に押圧する押さえ部材(35,36,37)を備えている
ことを特徴とするロータ。
【請求項2】
請求項1において、
前記押さえ部材(35,36)は、前記永久磁石(40)の傾斜面(41a,43a)に沿って接触する押圧面(35a,36a)を有している
ことを特徴とするロータ。
【請求項3】
請求項2において、
前記永久磁石(40)は、前記ロータコア(31)の軸心回りに複数埋設され、各々の前記傾斜面(41a,43a)が、前記ロータコア(31)の端面よりも外方に位置し且つ前記軸心へ向かうにつれて前記端面側へ傾斜しており、
前記押さえ部材(35)は、円錐台状に形成され、その円錐面が前記押圧面(35a)を構成し、
前記各永久磁石(40)の傾斜面(41a,43a)は、前記押さえ部材(35)の押圧面(35a)に対応する円錐面となっている
ことを特徴とするロータ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項において、
前記永久磁石(40)は、前記軸心方向に複数分割され、その互いに対向する分割面が前記軸心方向に対して傾斜する傾斜面(41a,42a,43a)となっている
ことを特徴とするロータ。
【請求項5】
円筒状のステータ(20)と、該ステータ(20)の内側にエアギャップを介して配置される請求項1乃至4の何れか1項に記載のロータ(30)とを備えている
ことを特徴とする埋込磁石型モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−80650(P2012−80650A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222586(P2010−222586)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】