説明

ロータリエンジン用の補助複合制御弁

ロータリエンジンは、第1のロータセクションと第2のロータセクションとの間にある第1の移送ダクトを備える。第2の移送ダクトが、第2のロータセクションと第1のロータセクションとの間にある。補助複合制御弁が、第1の移送ダクトと第2の移送ダクトとの間の連通を選択的に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロータリエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン技術では、出力密度と燃料消費との間にさまざまなトレードオフがある。ガスタービンエンジン技術では、かなり高い出力密度が得られるが、大きさが比較的小さい場合、燃料消費は相対的に高く、効率は相対的に低くなる。小型のディーゼルピストンエンジンは、燃料消費は適度であるが、典型的にはおおよそ0.5hp/lbより低い出力密度で比較的重くなることがあるのに対し、同程度の大きさの4サイクルエンジンは、典型的にはおおよそ0.8hp/lbより低い出力密度となる。2サイクルエンジンは、同等の大きさの4サイクルエンジンより出力密度が大きいが、燃料消費は比較的高い。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【図1】例示的なロータリエンジンの模式的構成図。
【図2】例示的なロータリエンジンの部分仮想線図。
【図3】第1のロータセクションを例示する、図1の例示的なロータリエンジンの部分組立図。
【図4】第2のロータセクションを例示する、図1の例示的なロータリエンジンの部分組立図。
【図5】ロータリエンジンの分解図。
【図6】例示的な目的で水平軸および垂直軸周りに模式的に上に移動しかつ180度回転した第2のロータと共に第1の移送ダクトと第2の移送ダクトとの間にある、非限定的な実施例の補助複合制御弁の図。
【図7】さまざまな補助複合制御弁の位置に応じた補助効果の図。
【図8】補助複合制御弁の位置の連続域に対する補助複合効果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0004】
当業者には開示の非限定的な実施例についての以下の詳細な説明からさまざまな特徴が明らかとなるであろう。詳細な説明に付随する図面は上述のように簡単に説明できる。
【0005】
図1は、第1のロータセクション22および第2のロータセクション24を有する複合ロータリエンジン20を模式的に示す。ロータリエンジン20は、ロータリに基づき、例えばバンケル型エンジンである。吸気ポート26が、周囲空気を第1のロータセクション22に伝達し、排気ポート28が、そこから排気生成物を伝達する。第1の移送ダクト30および第2の移送ダクト32が、第1のロータセクション22と第2のロータセクション24の間に連通する。JP−8などの重い燃料、JP−4、天然ガス、水素、ディーゼルおよびその他の燃料と共に使用する燃料システム36が、エンジン20の第2のロータセクション24と連通する。エンジン20は、さまざまな商用、工業用の小型の移動式発電機や航空用途において高い出力密度と、低い燃料消費とを同時に提供する。
【0006】
図2を参照すると、複合ロータリエンジン20は一般に、回転軸A周りに回転する、少なくとも1つのシャフト38を備える。シャフト38は、整合された偏心カム40、42(図3、図4)を備えており、偏心カム40、42は、それぞれ第1のロータ44および第2のロータ46を駆動し、第1のロータ44および第2のロータ46は、同一のシャフト38によって調和した仕方で駆動される。第1のロータ44および第2のロータ46はそれぞれ、第1の固定ロータハウジング52および第2の固定ロータハウジング54(図3、図4)によって形成された容積部48、50内で回転可能である。非限定的な一実施例では、燃料システム36は、1つまたは複数の燃料噴射器を備えており、2つの燃料噴射器36A、36Bが、これらの概略反対側にある第2のロータ容積部50と連通するように示されており、そこには、非限定的な一実施例では移送ダクト30、32が配置されている。他の燃料噴射器の構成、配置、および数を代替としてあるいは付加的に設けることができることは理解されたい。燃料システム36は、燃料を第2のロータ容積部50に供給する。非限定的な一実施例では第1のロータ容積部48は、第2のロータ容積部50より大きな容積を提供する。さまざまなハウジング構成、形状、および配置を代替としてあるいは付加的に設けることができることは理解されたい(図5)。
【0007】
第1のロータ44および第2のロータ46はそれぞれ、周方向に離間した3つの頂点44A、46Aを備える周面を有する。各頂点44A、46Aは、アペックスシール44B、46Bを備えており、アペックスシール44B、46Bは、各容積部48、50の周面48P、50Pと摺動シール係合する。回転軸Aに垂直な平面内にある容積部48、50の周面は、実質的に2ローブエピトロコイド形の周面であり、一方、同じ平面内にあるロータ44、46の周面は、実質的に2ローブエピトロコイド形の3ローブインナ包絡線の周面である。
【0008】
作動時に、空気が吸気ポート26(図1)からエンジン20に流入する。第1のロータ44が、第1の圧縮行程を行い、第1の移送ダクト30が、圧縮空気を第1のロータ容積部48から第2のロータ容積部50(図2、図3)に移送する。第2のロータ46が、第2の圧縮、燃焼行程、および第1の膨張行程を行い、次いで、第2の移送ダクト32が、排気ガスを第2のロータ容積部50から第1のロータ容積部48(図2、図4)に移送する。第1のロータ44が、第2の膨張行程を排気ガスに行い、膨張した排気ガスは、排気ポート28(図1、図2)から排出される。各ロータ面が各回転でサイクルを完了し、合計で6つの面を有する2つのロータがあるので、エンジンは、比較的小さな変位で大きな出力を生成する。
【0009】
シャフトは、各サイクルで1回転を完了するので、各完全なロータ回転で3回のクランク回転がある。第1のロータ44の上死点(top dead center)(TDC)位置では、第1のロータ容積部の出口ポート48Oと第1のロータ容積部の入口ポート48Iとが一時的に連通する。従って、第2のロータ容積部50から第2の移送ダクト32および第1のロータ容積部の入口ポート48Iを通って戻る排気ガスが、第1のロータ容積部48に流入し、次いで、第2のロータ容積部50内に戻るように連通する第1の移送ダクト30内に第1のロータ容積部の出口ポート48Oを通って戻る際に、補助複合効果が実現される。より高圧の排気ガスが、第1の移送ダクト30の固定容積部に進入するので、第1の移送ダクト30内の残留圧縮空気は、第2のロータ容積部50に進入する。第1の移送ダクト30内からの残留圧縮空気は、第2のロータ容積部50内に伝達され、従って、第2のロータ容積部50内への付加的または補助的な空気質量流の移動を通して第2のロータ46の圧縮行程の開始前の初期圧力を増加させまたは複合させることで、エンジン10の有効圧縮比を増加させる。第2のロータ46の固定された形状で規定された圧縮比で、第2のロータ46の行程に対する、より高い初期圧力によって、燃焼からより高いピーク圧力が得られる。このより高い圧力は、増加した空気質量の取り込みと合わせて、結果としてエンジン10の出力を増加させる。
【0010】
図6を参照すると、補助複合効果は、第1の移送ダクト30と第2の移送ダクト32との間にあるバイパスダクト62と連通する補助複合制御弁60を用いて調整可能である。第1の逆止弁64が、圧縮機容積部48に隣接して第1の移送ダクト30に配置可能である。第1のバイパスダクト逆止弁66が、第1の移送ダクト30に隣接してバイパスダクト62に配置可能である。第2のバイパスダクト逆止弁68が、第2の移送ダクト32に隣接してバイパスダクト62に配置可能である。逆止弁64、66、68によって、排気ガスは確実に、補助複合制御弁60の制御下で、第2のロータ容積部50から第2の移送ダクト32を通って第1のロータ容積部48内へと戻り、第1の移送ダクト30内へと戻る。代替の二方向の仕方でバイパスダクト62内の流量を制御するように、さまざまな付加的なまたは代替の弁構成が利用可能であることは理解されたい。
【0011】
補助複合制御弁60は、補助複合アルゴリズム72を実行するモジュール70を用いて絞り特性、高度特性、および排出物質の制御を向上させるようにエンジンサイクルにおけるさまざまな位置で補助複合効果を制御するために使用可能である。アルゴリズム72の機能は例えば、図(図7)によって開示されており、これらの機能が、マイクロプロセッサに基づく電子機器制御の実施例において実行可能なプログラムされたソフトウェアルーチンまたは専用ハードウェア回路で実施可能であることは、本開示の恩恵を受ける当業者には理解されるはずである。非限定的な一実施例では、モジュール70は、ソフトウェア、制御システムの一部、または独立型のライン交換可能ユニット、または他のシステムとすることができる。
【0012】
モジュール70は一般に、プロセッサ70A、メモリ70B、およびインターフェース70Cを備える。プロセッサ70Aは、所望の性能特性を有する任意の種類の既知のマイクロプロセッサとすることができる。メモリ70Bは、データを保存しかつ本願に記載されているアルゴリズムを制御する、さまざまなコンピュータ可読媒体を含むことができる。インターフェース70Cは、飛行制御コンピュータ(flight control computer)(FCC)74との通信、および、無人空中輸送手段(unmanned aerial vehicle)(UAV)で典型的な開示の非限定的な実施例における他のアビオニクスおよびシステムとの通信を容易にする。
【0013】
図8を参照すると、補助複合制御弁60は、モジュール70に応答した閉位置と開位置の間の連続域に沿って選択的に移動可能である。一般に、補助複合制御弁60を通して伝達される排気ガス部分が大きいほど、補助複合効果が大きくなる。すなわち、基本的な効果は、第2のロータの圧縮行程の開始前の固定容積部への複数モルの進入空気のうちの1モルになる。
【0014】
補助複合制御弁60の閉位置に向かって、ピーク燃焼圧力は、長いエンジン寿命を提供するために最小化される。最小の補助複合は、圧縮機出口ポート48Oと圧縮機入口ポート48Iの間の固定されたポート形状のみによって最小固有補助複合が実現される時に生じる。補助複合制御弁60の開位置に向かって、有効圧縮比(大気圧に対するピーク燃焼圧力)は、所望の馬力を生成するように高度に対して制御可能である。開位置はまた、圧力を最大化しかつ低温始動を容易にするために利用可能である。補助複合制御弁60は次いで、比較的速いエンジン暖機を提供するための作動温度に到達すると、選択的に閉にされる。開位置と閉位置の間の連続域に沿ったさまざまな位置が、所望の作動効果を提供するようにさまざまな作動条件において利用可能であることは理解されたい。
【0015】
同様の参照符号がいくつかの図面全体に亘って対応する部材または同様の部材を特定することは理解されたい。例示の実施例では特定の部材構成を開示したとはいえ、他の構成も本願から恩恵を受けるであろうことも理解された。
【0016】
特定の工程配列を図示し、説明し、請求するとはいえ、特に指定のない限り別々または組み合わせで任意の順に工程が実施可能であり、本開示からなお恩恵を受けるであろうことも理解されたい。
【0017】
上述した説明は、限定として規定されるのではなく例示である。本願ではさまざまな非限定的な実施例を開示するが、当業者ならば、上述した教示に照らしてさまざまな修正例および変形例が添付の特許請求の範囲に含まれることを理解するであろう。従って、添付の特許請求の範囲においては具体的に説明する以外にも本開示が実施可能であることは理解されたい。従って、真の範囲および内容を決定するには添付の特許請求の範囲を検討する必要がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のロータセクションと、
第2のロータセクションと、
第1のロータセクションと第2のロータセクションとの間にある第1の移送ダクトと、
第2のロータセクションと第1のロータセクションとの間にある第2の移送ダクトと、
第1の移送ダクトと第2の移送ダクトとの間の連通を制御する補助複合制御弁と、
を備えることを特徴とするロータリエンジン。
【請求項2】
第1の移送ダクトは、圧縮空気を第1のロータセクションから第2のロータセクションに移送することを特徴とする請求項1記載のロータリエンジン。
【請求項3】
第2の移送ダクトは、排気ガスを第2のロータセクションから第1のロータセクションに移送することを特徴とする請求項1記載のロータリエンジン。
【請求項4】
補助複合制御弁は、第2の移送ダクトに配置されることを特徴とする請求項3記載のロータリエンジン。
【請求項5】
第1の移送ダクトと第2の移送ダクトとの間にバイパスダクトをさらに備え、補助複合制御弁は、第2の移送ダクトに配置されることを特徴とする請求項1記載のロータリエンジン。
【請求項6】
バイパスダクトに少なくとも1つの逆止弁をさらに備えることを特徴とする請求項6記載のロータリエンジン。
【請求項7】
第1のロータセクションは、第1の圧縮段を提供し、第2のロータセクションは、第2の圧縮段、燃焼段、および第1の膨張段を提供するように第1の移送ダクトを通して第1のロータセクションと連通し、第2のロータセクションは、第2の膨張段を提供するように第2の移送ダクトを通して第1のロータセクションと連通することを特徴とする請求項1記載のロータリエンジン。
【請求項8】
補助複合制御弁の作動を制御するモジュールをさらに備えることを特徴とする請求項1記載のロータリエンジン。
【請求項9】
モジュールは、飛行制御コンピュータと通信することを特徴とする請求項8記載のロータリエンジン。
【請求項10】
第1の移送ダクトを通して圧縮空気を第1のロータセクションから第2のロータセクションに移送し、
第2の移送ダクトを通して排気ガスを第2のロータセクションから第1のロータセクションに移送し、
第1の移送ダクトと第2の移送ダクトとの間の連通を選択的に制御する、
ことを含むことを特徴とする、ロータリエンジンを制御する方法。
【請求項11】
ピーク燃焼圧力を制御するように第1の移送ダクトと第2の移送ダクトとの間の連通を選択的に制御することをさらに含むことを特徴とする請求項10載の方法。
【請求項12】
大気圧に対するピーク燃焼圧力を制御するように第1の移送ダクトと第2の移送ダクトとの間の連通を選択的に制御することをさらに含むことを特徴とする請求項10載の方法。
【請求項13】
エンジン出力を制御するように第1の移送ダクトと第2の移送ダクトとの間の連通を選択的に制御することをさらに含むことを特徴とする請求項10載の方法。
【請求項14】
エンジン寿命を制御するように第1の移送ダクトと第2の移送ダクトとの間の連通を選択的に制御することをさらに含むことを特徴とする請求項10載の方法。
【請求項15】
エンジン始動を制御するように第1の移送ダクトと第2の移送ダクトとの間の連通を選択的に制御することをさらに含むことを特徴とする請求項10載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−507560(P2013−507560A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533125(P2012−533125)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/059958
【国際公開番号】WO2011/043773
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(507180364)プラット アンド ホイットニー ロケットダイン,インコーポレイテッド (20)