説明

ロータリドビーとその制御方法、及び該ロータリドビーを備えた織機

【課題】動作スピードを更に高める一方、信頼性を維持したロータリドビーを提供すること。
【解決手段】ドビーの主軸1に緩装された作動部材4と、主軸1と共に回転する駆動部材8と、該駆動部材8及び作動部材4に交互に係合する第1及び第2の係止部材10,11と、第1及び第2の係止部材10,11に弾性的な付勢力を作用させる第1の弾性付勢手段19と、第1の弾性付勢手段19の付勢力に抗して第1及び第2の係止部材10,11を変位させる制御手段14,15とを備えるリフティングユニットを有するドビーにおいて、第1の弾性付勢手段19による付勢力を、第1の係止部材10には直接負荷する一方、第2の係止部材11には間接的に負荷するとともに、制御手段を前記付勢力に抗した前記第1の係止部材の変位に適合させ、一方、前記第2の係止部材11を、第2の端面を介して第2の係合面84Dに係合保持させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機のロータリドビー、該ロータリドビーを備えた織機、ロータリドビーのサブアセンブリ及びロータリドビーの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、ヘルドフレームに連結された揺動リンクを作動させる作動部材として形成された偏心カムとドライブディスクを接続させる2つの圧縮付勢された係止部材を備えたロータリドビーが開示されている。全体としてこの装置は満足し得るものである。
【0003】
リフティングユニットをドビーの主軸に連結すれば、ドライブディスクと偏心カムの間で生じる力は、一方の係止部材から他方の係止部材へ交互に伝達される。このとき、一方の係止部材はリフティングユニットを駆動するための駆動力を伝達し、一方、他方の係止部材はリフティングユニットから主軸への反力により駆動されている。
【0004】
ここで、駆動する方の係止部材は、主軸の駆動中、即ちヘルドフレームの加速度と速度の向きが同方向である間作動し、一方、駆動される方の係止部材は、主軸からの負荷を受ける間、即ちヘルドフレームの加速度と速度の向きが逆方向である間負荷される。ヘルドフレームは、主軸が完全に1回転する間に往復動することになる。
【0005】
しかし、主軸がその選択領域、即ち2つの極位置に到るとその動作が離脱される。この選択領域は、駆動する方の係止部材と駆動される方の係止部材の2つの係止部材間での力の伝達時に相当する。
【0006】
又、リフティングユニットの動作中には、2つの係止部材はそれぞれドライブディスクに設けられた凹部に係合しており、リフティングユニットを停止させる際には、駆動される係止部材が活発に動作していても、当該係止部材の凹部との係合を解除するために選択装置を作動させる必要がある。
【0007】
従って、読取装置アームを係止部材に強力且つ迅速に作用させる必要があり、伝達される強い負荷に対応するために、採寸された係止部材に作用する手段が必要である。
【0008】
上記の結果、係止部材の制御要素は大きな慣性を有し、従来のドビーの動作スピードを制限してしまうことになり得る。
【特許文献1】欧州特許出願公開第1111106号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的とする処は、動作スピードを更に高める一方、信頼性を維持した新規なロータリドビーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、ドビーの主軸に緩装された作動部材と協働するヘルドフレームに連結された揺動部材と、前記主軸と共に回転する駆動部材と、該駆動部材及び前記作動部材に交互に係合する第1及び第2の係止部材と、前記第1及び第2の係止部材に弾性的な付勢力を作用させる第1の弾性付勢手段と、前記第1の弾性付勢手段の付勢力に抗して前記第1及び第2の係止部材を変位させる制御手段とを備えるリフティングユニットを有し、前記第1及び第2の係止部材が前記作動部材上に設けられており、前記第1の係止部材が前記駆動部材の少なくとも1つの第1の係合面に選択的に係合する第1の端面を備え、該第1の端面が、接触面として形成され、前記駆動部材の駆動力を前記作動部材へ伝達し、一方、前記第2の係止部材が前記駆動部材の少なくとも1つの第2の係合面に選択的に係合する第2の端面を備え、該第2の端面が、接触面として形成され、前記作動部材の反力を前記駆動部材へ伝達し、前記第1及び第2の係止部材が、前記第1の弾性付勢手段により、それぞれ第1及び第2の端面が前記駆動部材の前記第1及び第2の係合面に係合するよう付勢する、織機用のロータリドビーにおいて、前記第1の弾性付勢手段による前記付勢力を、前記第1の係止部材には直接負荷する一方、前記第2の係止部材には間接的に負荷するとともに、前記制御手段を前記付勢力に抗した前記第1の係止部材の変位に適合させ、一方、前記第2の係止部材を、前記第2の端面を介して前記第2の係合面に係合保持させたことを特徴としている。
【0011】
又、本発明によるドビーは、以下のうち少なくとも何れかの特徴を有している。即ち、
−第1の弾性付勢手段を、第1の係止部材を介して第2の係止部材に作用させる、
−第1の係止部材には作用せず、第2の係止部材にのみ該第2の係止部材の第2の端面が第2の係合面から離脱するよう作用する第2の弾性付勢手段を設けた、
−第1の弾性付勢手段による付勢力に抗して第1の係止部材を変位させる力をこの第1の係止部材に直接作用させる可動部材と、該可動部材或いは第1の係止部材と第2の係止部材の間で力を伝達する弾性付勢手段とを備える構成とした、
−弾性付勢手段を圧縮したバネ又は板バネで構成した、
−弾性付勢手段を可動部材と第2の係止部材の間に配置した、
−弾性付勢手段を第1の係止部材と第2の係止部材の間に配置した、
−可動部材を、第1の係止部材が第1の弾性付勢手段による不勢力に抗して変位するよう当該第1の係止部材に直接作用させるとともに、第2の係止部材が可動部材の力による第1の係止部材の変位に起因する第1の弾性付勢手段の動作の影響を受けない限り、第2の弾性付勢手段を、第2の端面が駆動部材の第2の係合面から離脱するよう第2の係止部材に作用させる。
【0012】
上記のような場合、可動部材を、摺動部材として構成して作動部材上に設けるとともに、主軸の径方向に摺動可能に形成している。
【0013】
又、本発明は、上記のようなドビーを備えた織機にも関する。
【0014】
そして、上記の通り、本発明は、時として”ドビーリフティングユニット”とも呼ばれる、ドビーのサブアセンブリにも関しており、このサブアセンブリは、作動部材を構成する偏心カムと、該偏心カム上に設けた揺動リンクと、該揺動リンクとヘルドフレームを連結する旋回アームとを備えている。
【0015】
更に、本発明はドビーの制御方法にも関しており、この制御方法は、駆動部材を駆作動部材から離脱させる際に、
a)第2の係止部材に直接力を作用させずに、力を、第1の弾性付勢手段の付勢力に抗して第1の端面が前記第1の係合面から離脱するよう第1の係止部材に作用させ、
b)第2の弾性付勢手段を設け、該第2の弾性付勢手段を、第2の端面が駆動部材の第2の係合面から離脱するよう第2の係止部材に作用させる
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、制御手段により、主軸の駆動力を作動部材及びヘルドフレームに伝達する第1の係止部材のみを直接動作させることが可能であり、一方、負荷を受ける第2の係止部材は、ドビーが駆動する方へ移行するまでの間は所定位置に保持される。その後、第2の係止部材をドライブディスクの係止面から容易に離脱させることができる。
【0017】
又、本発明による織機によれば、従来に比べて動作スピードの高速化を図ることができる。
【0018】
そして、本発明によるサブアセンブリによれば、当該サブアセンブリを、ドビーの予備部品の役割を果たすよう、上記係止部材を備えた作動ユニットとして設けることが可能である。
【0019】
更に、本発明によるドビーの制御方法によれば、駆動部材と作動部材の間の離脱(係合解除)がドビーの主軸と駆動部材が180°の行程においてまだ運動している間に行うことができるとともに、第2の係止部材が弾性付勢手段の負荷の下で自動的に離脱(係合解除)される。
【0020】
尚、その他の効果については、下に説明する本発明の実施の形態において詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明の4つの実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0022】
<実施の形態1>
図1に示すロータリドビーRは半回転毎に停止して間欠的な回転運動を行う主軸1を備えており、この主軸1は、織機Mのリフティングユニット或いはヘルドフレーム3と同数の軸受2で支持されている。これら各軸受2は、これに緩装されつつ周囲に設けられた軸受2’で揺動リンク5を支持する偏心カム4を備えている。
【0023】
又、揺動リンク5の自由端51には旋回アーム6が連結されており、この旋回アーム6は、図1に簡略化して示すヘルドフレーム3を矢印F1で示すように垂直方向へ運動せしめるリンク機構61を動作させる。尚、主軸1の軸中心線はX1で示されている。
【0024】
そして、主軸1は、その外面において長手方向に沿って設けられた2つの溝1aそれぞれが、中空に形成されたドライブディスク8に設けられた歯状部81に係合することにより、2つの偏心カム4間でこのドライブディスク8と共に回転せしめられる。
【0025】
又、ドライブディスク8の外縁部82にはそれぞれショルダ部84A,84B,84C,84Dとして形成された4つのV字状凹部83が形成されている。
【0026】
そして、第1及び第2の係止部材10,11がそれぞれピン12A,12Bで偏心カム4にヒンジ結合されて、ここに、これら第1及び第2の係止部材10,11の旋回軸X10,X11が形成されている。尚、これら旋回軸X10,X11は主軸1の軸中心線X1に平行に設定されている。ここで、第1の係止部材10は、旋回軸X10に対して径方向に延設され、その端部102でV字状凹部83のうち2つと、そのショルダ部84A,84Cの何れかに当接して係合している。
【0027】
又、第1の係止部材10は第2のアーム104を備えており、この第2のアーム104の端部105は、摺動部材13の二股状に形成された端部131に係合している。ここで、摺動部材13は、偏心カム4上に取り付けられており、矢印F2で示すように、主軸1の軸中心線X1からの径方向線D1上で往復動する。
【0028】
同様に、第2の係止部材11も第1の係止部材10と同じ形状で形成されており、この第2の係止部材11は、旋回軸X11に対して径方向に延設された第1及び第2のアーム111,114を備えている。これら第1及び第2のアーム111,114それぞれの端部112,115はそれぞれショルダ部84B又は84D、摺動部材13と係合する。尚、第1のアーム111の端部外面113はショルダ部84B又は84Dと当接する。
【0029】
そして、ドライブディスク8が主軸1により図1、図2に矢印F8で示す方向に駆動されると、その駆動力F3が端部外面103とそれに当接するショルダ部84Aを介して偏心カム4へ伝達される。ここで、特に主軸1の軸中心線X1回りに180°反対方向へ働く制動力としての駆動力F3の反力F4は、端部外面113がショルダ部84Bと当接することにより偏心カム4へ伝達される。
【0030】
尚、このような関係は、端部外面103,104がそれぞれショルダ部83C,83Dに当接する場合も同様である。
【0031】
ところで、摺動部材13は、図1に矢印16で示す読取装置で制御される揺動レバー14,15の先端部141,151により駆動される。これら揺動レバー14,15は、当該揺動レバー14,15の先端部141,151を読取装置16の動作に抗して摺動部材13に係合するよう作用する2つのバネ17の動作を受けるように設定されている。
【0032】
又、偏心カム4は歯状部42を有する2つの爪41を備えており、歯状部42は、これに対向する位置にある歯状部52と噛合する。ここで、歯状部52は、揺動リンク5に取り付けられたアーム53の自由端に配置され、歯状部42と噛合するよう作用する弾性部材(図示せず)の作用方向であるF5方向に付勢されている。
【0033】
そして、前記爪41とアーム53はそれぞれ点で枢支されており、主軸1が或る停止位置に到達するとこれらのうち一方が自動的に他方に係合し、ドライブディスク8が駆動されて偏心カム4が第1及び第2の係止部材10,11によりその停止位置から離脱するとその係合が解除される。
【0034】
ところで、図2に示すように、カバー18が偏心カム4上でこの偏心カム4の表面部43と所定間隔隔てて設けられており、第1及び第2の係止部材10,11、ピン12A,12B及び摺動部材13がカバー18と上記表面部43の間に配設されている。
【0035】
又、カバー18と上記表面部43の間にはバネ19が縮装されており、このバネ19は、偏心カム4上に立設された支柱44で支持され、押圧部材19’を介して第1の係止部材10の第1のアーム101に弾発力F19を作用させる。ここで、第1のアーム101の端部102はV字状凹部83に係合し易く設定されている。
【0036】
而して、前記弾発力F19は、摺動部材13を主軸1の軸中心線X1から離間する方向へ移動させるべく摺動部材13の側面に設けられた爪132に力F104を作用させるような旋回軸X10回りのトルクC19を第1の係止部材10に発生させる。
【0037】
又、摺動部材13の端部131を第1及び第2の係止部材10,11それぞれの端部105,115と係合するよう形成すれば、力104が第2の係止部材11の第2のアーム114に力F131として作用し、この力F131は、第2の係止部材11をトルクC19による第1の係止部材10の回転方向と逆に旋回軸X11回りに回転させる。即ち、力F131によるトルクC’19が図2における時計方向に第1のアーム111を駆動し、それ故、第2の係止部材11の端部112をV字状凹部83と係合する位置にもたらすか、或いはV字状凹部83と係合する位置を維持することが可能である。
【0038】
即ち、図2に示すように第1及び第2の係止部材10,11の外面端部103,113をそれぞれショルダ部84A,84B(或いは図1下部に示すショルダ部84C,84D)に係合させる際、バネ19及び押圧部材19’は、第1の係止部材10にのみ直接作用し、第2の係止部材11には第1の係止部材10及び摺動部材13を介して間接的に作用する。
【0039】
又、主軸1の減速過程が終了し、主軸1が完全に停止した場合には、図3においてより詳細に示すように、摺動部材13を主軸1の軸中心線X1方向へ動かす力F14を、揺動レバー14の先端部141を介して摺動部材13に作用させることができる。
【0040】
そして、爪132は、摺動部材13の端部131で第1の係止部材の端部105と係合するよう設けられた凹部を形成し、この端部105との係合により当該端部105に主軸1方向への力F132を作用させる。この力F132は、第1の係止部材10の端部102をV字状凹部83との係合から離脱するような旋回軸X10回りのトルクC14を生じさせる。
【0041】
尚、このような操作は、主軸1が減速し、第1の係止部材10が無負荷状態となった後、迅速になされる。即ち、第1の係止部材の端部外面103とショルダ部84Aの間の接触圧は実質的にはゼロである。そして、トルクC14による第1の係止部材10の運動は弾発力F19による運動とは逆向きのものとなる。
【0042】
一方、第2の係止部材11の端部外面113とショルダ部84Bの間の接触圧は高く、第2の係止部材11の端部115は単に摺動部材13の端部131上に載置されているだけである。そして、第2の係止部材11の端部115近傍には爪132に相当するものが設けられておらず、第2のアーム114にはF132に相当する力は作用しない。従って、第1の係止部材10が力F14を受けて動く一方、第2の係止部材11は、その端部外面113がショルダ部84Bとの係合を維持する。
【0043】
又、爪133が摺動部材13における爪132と反対の側面に配置されており、補助バネ20及び押圧部材20’が爪133と第2の係止部材11の端部115の間に挟装されている。この補助バネ20は、第2の係止部材11の端部115に作用し、押圧部材20’を介して第2の係止部材11の旋回軸X11回りのトルクC20を生じさせる弾発力F20を発生させる。このとき、第2の係止部材11の端部外面113はショルダ部84Bから離脱(係合解除)する方向へ旋回軸X11回りに旋回する。
【0044】
而して、補助バネ20のバネ剛性は、トルクC20が、主軸1が減速している間に第2の係止部材11の端部外面113とショルダ部84Bの間に生じる摩擦力F0を克服しない程度に設定されている。尚、ドライブディスク8により偏心カム4へ伝達される反力により摩擦力F0が強められる。
【0045】
一方、ドライブディスク8及び偏心カム4が停止し、主軸1が半回転し終わるとすぐに第2の係止部材11の端部112が今まで係合していたV字状凹部83から離脱する。このような第1及び第2の係止部材10,11の一連の離脱によりドライブディスク8としての駆動要素が偏心カム4としての揺動リンク5から分離される。
【0046】
上記によれば、力F14は、主軸1の回転速度が増加するよう比較的迅速にリフティングユニットの静止位置方向へ摺動部材13に対して負荷される。そして、ドライブディスク8と偏心カム4の互いの離脱は時間的な僅かなオフセットで以下の2つのステップで行われる。即ち、
a)第1の係止部材10が離脱し、
b)第2の係止部材11が離脱する。
【0047】
尚、ドライブディスク8が偏心カム4から分離する際に動かされる部材が少ないため、動作スピードの上昇を図ることができるとともに、ドビーの信頼性を高めることができる。
【0048】
図4にはドライブディスク8と偏心カム4が分離した状態でのドビーの構成部材が示されており、ここで、偏心カム4が駆動されないので、ショルダ部84C,84Dをそれぞれ図3におけるショルダ部84A,84Bが占める位置に移動させるために、ドライブディスク8は主軸1と共に矢印F8方向に180°回転する。
【0049】
そして、読取装置6の動作により力F14が除去されると、バネ19の弾発力F19によって第1及び第2の係止部材10,11それぞれの端部102,112がV字状凹部83に係合する。
【0050】
又、特に縦糸がほつれた際等のように、ドビーを逆に運転しなければならない場合には、摺動部材13を操作することにより偏心カム4を停止させることが可能である。このような状況においては、主軸1の回転速度は通常のドビーの運転時よりもかなり小さく、第1の係止部材10の離脱に比べた第2の係止部材11の離脱の僅かな遅れは問題ではない。
【0051】
図5に更に詳細に示すように、ドライブディスク8が図3に示す位置に近づくとともに、主軸1が180°回転し、読取装置6の動作により力F14が除去されると、第1の係止部材10の第1のアーム101と第2の係止部材11の第1のアーム111が、それぞれ対応するV字状凹部83に同時に係合する。
【0052】
従って、揺動リンク5が流動的、即ち固定箇所にない間は、第1の係止部材10が対応するV字状凹部83に係合することはない。又、第1及び第2の係止部材10,11は、主軸1の回転速度が小さい場合にのみ起こるのと同じように、それぞれ同時にのみV字状凹部83に係合する。それ故、ドライブディスク8若しくは第1及び第2の係止部材10,11が損傷する危険性がない。
【0053】
尚、第2の係止部材11近傍には、バネ19及び押圧部材19’に類する部材を支持するための箇所191が設けられているため(図2)、主軸1及びドライブディスク8が矢印F8と逆方向に回転する場合に、第1及び第2の係止部材10,11の順序及び役割を逆にすることができる。尚、この場合でも、両係止部材10,11の構造は同一である。
【0054】
このような状況においては、バネ19及び押圧部材19’を上記箇所191に設け、補助バネ20を第1の係止部材10側に配置することも可能である。
【0055】
<実施の形態2>
図6に示す本実施の形態においても、実施の形態1と同一の部材には同一の符号を付している。
【0056】
バネ19及び押圧部材19’は、第1の係止部材10の端部102をV字状凹部83に係合させるような弾発力F19を生じさせる。第1の係止部材10に負荷されたこの弾発力F19は、第1及び第2の係止部材10,11それぞれの端部105,115が互いに接触することにより第2の係止部材11に伝達される。
【0057】
そして、ドライブディスク8は主軸1と共に矢印F8(図5)と逆の方向に回転し、又、第1の係止部材10は駆動力を偏心カム4へ伝達し、第2の係止部材11は前記駆動力の反力を偏心カム4へ伝達する。
【0058】
ところで、本実施の形態は、補助バネ20及び押圧部材20’が摺動部材13と第2の係止部材11の間ではなく、偏心カム4に支持された支柱45と第2の係止部材11の第2のアーム114の間に挟装されている点で実施の形態1と異なっている。
【0059】
このような構成によれば、係合を解除する方向の力F14が、偏心カム4に対して主軸1の軸中心線X1からの径方向線D1に沿って往復動する摺動部材13に負荷されると、摺動部材13の端部131はこの力をF132として第1の係止部材10の第2のアーム104に伝達する。これによりトルクC14(図3)が生じ、このトルクC14は第1の係止部材10にのみ伝達され、第1のアーム101がV字状凹部から離脱する。
【0060】
又、補助バネ20の弾発力F20によって生じる旋回軸X11回りのトルクC20が端部外面113とショルダ部84Bに生じる摩擦力F0を克服すると、第2の係止部材11の第1のアーム111はこのトルクC20の作用によりV字状凹部83から離脱する。
【0061】
更に、箇所191、201を設けることにより、バネ19及び補助バネ20を、ドライブディスク8と共に矢印F8と逆方向に回転する位置に押圧部材19’,20’と共に設けることができる。
【0062】
<実施の形態3>
図7に示す本実施の形態においても、実施の形態1と同一の部材には同一の符号を付している。
【0063】
本実施の形態は、上記のように、バネ19及び押圧部材19’が第1の係止部材10をV字状凹部83に係合させるような弾発力F19を生じさせるが、第1の係止部材10と第2の係止部材11の接続が止め金21で第2の係止部材11の第2のアーム114に固定されたC字状の補助バネ(板バネ)20で行われる点で実施の形態1,2と相違する。
【0064】
尚、第1の係止部材10の第2のアーム104の端部105は、補助バネ20の湾曲端部202を支持している。初期設定では、補助バネ20は、その両端部が図7に示した状態よりも近接することによりトルクC19を第2の係止部材11に伝達する。
【0065】
而して、力F14が摺動部材13に作用すると、この力14は、第2の係止部材11に直接伝達されることなく、弾発力F19に抗して第1の係止部材10の第2のアーム104に伝達される。ここで、第2の係止部材11は、その端部外面113に生じる反力により回転が阻止されている。
【0066】
又、力F14が、補助バネ20の湾曲端部202を支持する、第2のアーム104の端部105を介して第2の係止部材11へ伝達されるので、力F14によって生じる力F’14の作用により補助バネ20の両端が互いに離間され、この力F’14を、補助バネ20の剛性に応じた大きさの弾発力F20として第2のアーム114へ伝達することができる。
【0067】
そして、弾発力F20は、第2の係止部材11の端部112をV字状凹部83から離脱させる方向に回転軸X11回りのトルクC20を発生させる。ここで、摩擦力F0が弾発力F20より大きい限り、力F20によるトルクC20は、第2の係止部材11がその端部外面113を介してショルダ部84Bとの係合を維持する程度に小さいものとなる。
【0068】
尚、ドライブディスク8がその回転方向であるF8に対して逆転すると、摺動部材13が反転し、第1及び第2の係止部材11,12も逆転する。
【0069】
<実施の形態4>
図8に示す本実施の形態においても、実施の形態1と同一の部材には同一の符号を付している。尚、本実施の形態は、摺動部材13が使用されていない点で実施の形態3と相違する。
【0070】
本実施の形態においては、揺動レバー14又はこれに相当する物がその先端部141を介して直接第1の係止部材10の第2のアーム104の端部105を支持しており、縮装された補助バネ20及び押圧部材20’が第2のアーム104の端部105と接続領域116の間に介装されている。ここで、接続領域116とは、第2の係止部材11の第2のアーム114とピン12Bの周囲に配された当該第2の係止部材11の中心部117の間の領域である。
【0071】
而して、押圧部材19’によりバネ19がその弾発力F19を第1の係止部材10の第1のアーム101に作用させ、第1及び第2の係止部材10,11それぞれの第1のアーム101,111の各端部外面103,113がそれぞれドライブディスク8のショルダ部84A,84Bに係合する。
【0072】
又、バネ19及び押圧部材19’は第1の係止部材10に直接作用する一方、第2の係止部材11には、当該第2の係止部材11の第2のアーム114の端部115を支持する、第1の係止部材10の第3のアーム106を介して作用する。
【0073】
尚、離脱の際、力F14は、直接第1の係止部材10の第2のアーム104と、補助バネ20を介して第2の係止部材11の第2のアーム114に伝達される。
【0074】
以上のように、上記何れの実施の形態においても、バネ19及び押圧部材19’は、第1の係止部材10,11をその端部外面103がショルダ部84A又は84Cに係合するように直接弾性的に付勢し、一方、第2の係止部材11をその端部外面113がショルダ部84B又は84Dに係合するように間接的に付勢する。
【0075】
又、第2の係止部材11と、第1の係止部材10の摺動部材13及び/又は揺動レバー14との間の機械的な離脱により、第1の係止部材10が離脱しようとするにも拘らず第2の係止部材11の係合を維持することができる。即ち、ドライブディスク8で構成された駆動要素が完全に停止しない減速中に第1の係止部材10を離脱させることができる。
【0076】
本発明によれば、半回転毎に停止せず、所定範囲で減速のみする主軸を用いることが可能となる。従って、織機の動作速度の上昇を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明によるドビーと共に示す、本発明による織機の作動原理を示す図である。
【図2】図1における部分IIを詳細に示す図である。
【図3】ドビーの作動装置と駆動部材の離脱の第1のステップを示す、図2と同様な図である。
【図4】離脱の第2のステップを示す、図2と同様な図である。
【図5】作動装置と駆動部材の相対運動を示す、図2と同様な図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態を示す、図3と同様な図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態を示す、図3と同様な図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態を示す、図3と同様な図である。
【符号の説明】
【0078】
1 主軸
1a 溝
2 軸受(列)
2’ 軸受(列)
3 ヘルドフレーム
4 偏心カム
5 揺動リンク
6 旋回アーム
8 ドライブディスク
10 第1の係止部材
11 第2の係止部材
12A,12B ピン
13 摺動部材
14,15 揺動レバー
16 読取装置
17,19 バネ
18 カバー
19’,20’ 押圧部材
20 補助バネ
21 止め金
41 爪
42 歯状部
43 表面部
44,45 支柱
51 自由端
52 歯状部
53 アーム
61 リンク機構
81 歯状部
82 外縁部
83 V字状凹部
84A,84B,84C,84D ショルダ部
101,111 第1のアーム
102,112,105,115,131 端部
103,113 端部外面
104,114 第2のアーム
106 第3のアーム
116 接続領域
117 中心部
131 摺動部材端部
132,133 爪
141,151 揺動レバー先端部
202 湾曲端部
1 径方向軸線
1
M 織機
R ドビー
1 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドビーの主軸(1)に緩装された作動部材(4)と協働するヘルドフレーム(3)に連結された揺動部材(5)と、
前記主軸と共に回転する駆動部材(8)と、
該駆動部材(8)及び前記作動部材(4)に交互に係合する第1及び第2の係止部材(10,11)と、
前記第1及び第2の係止部材(10,11)に弾性的な付勢力(F19)を作用させる第1の弾性付勢手段(19,19’)と、
前記第1の弾性付勢手段(19,19’)の付勢力(F19)に抗して前記第1及び第2の係止部材(10,11)を変位させる制御手段(13,14,15)と
を備えるリフティングユニットを有し、
前記第1及び第2の係止部材が前記作動部材上に設けられており、
前記第1の係止部材(10)が前記駆動部材の少なくとも1つの第1の係合面(84A,84C)に選択的に係合する第1の端面(103)を備え、該第1の端面が、接触面(103/84A,103/84C)として形成され、前記駆動部材(8)の駆動力(F3)を前記作動部材(4)へ伝達し、一方、
前記第2の係止部材(11)が前記駆動部材の少なくとも1つの第2の係合面(84B,84D)に選択的に係合する第2の端面(113)を備え、該第2の端面が、接触面(113/84B,113/84D)として形成され、前記作動部材(4)の反力(F4)を前記駆動部材(8)へ伝達し、
前記第1及び第2の係止部材(10,11)が、前記第1の弾性付勢手段(19,19’)により、それぞれ第1及び第2の端面(103,113)が前記駆動部材(8)の前記第1及び第2の係合面(84A〜84D)に係合するよう付勢する、織機用のロータリドビーにおいて、
前記第1の弾性付勢手段(19,19’)による前記付勢力(F19)を、前記第1の係止部材(10)には直接負荷する一方、前記第2の係止部材(11)には間接的に負荷するとともに、前記制御手段を前記付勢力に抗した前記第1の係止部材の変位(C14)に適合させ、一方、前記第2の係止部材(11)を、前記第2の端面(113)を介して前記第2の係合面(84B,84D)に係合保持させたことを特徴とするロータリドビー。
【請求項2】
前記第1の弾性付勢手段(19,19’)を、前記第1の係止部材(10)を介して前記第2の係止部材(11)に作用させることを特徴とする請求項1記載のロータリドビー。
【請求項3】
前記第1の係止部材(10)には作用せず、前記第2の係止部材(11)にのみ該第2の係止部材の前記第2の端面(113)が前記第2の係合面(84B,84D)から離脱するよう作用する第2の弾性付勢手段(20,20’)を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のロータリドビー。
【請求項4】
前記第1の弾性付勢手段(19,19’)による前記付勢力(F19)に抗して前記第1の係止部材(10)を変位させる力(F132,F14)をこの第1の係止部材(10)に直接作用させる可動部材(13,14)と、
該可動部材(13)或いは前記第1の係止部材(10)と前記第2の係止部材(11)の間で力を伝達する弾性手段(20,20’)と
を備える構成としたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のロータリドビー。
【請求項5】
前記弾性手段(20,20’)を、圧縮したバネ(20)又は板バネ(20)で構成したことを特徴とする請求項4記載のロータリドビー。
【請求項6】
前記弾性手段(20,20’)を前記可動部材(13)と前記第2の係止部材(11)の間に配置したことを特徴とする請求項4又は5記載のロータリドビー。
【請求項7】
前記弾性手段(20,20’)を前記第1の係止部材(10)と前記第2の係止部材(11)の間に配置したことを特徴とする請求項4又は5記載のロータリドビー。
【請求項8】
前記可動部材を、前記第1の係止部材(10)が前記第1の弾性付勢手段(19,19’)による付勢力(F19)に抗して変位するよう当該第1の係止部材に直接作用させるとともに、前記第2の係止部材が前記可動部材(13)の力(F14)による前記第1の係止部材(10)の変位に起因する前記第1の弾性付勢手段の動作の影響を受けない限り、前記第2の弾性付勢手段(20,20’)を、前記第2の端面(113)が前記駆動部材(8)の前記第2の係合面(84B,84D)から離脱するよう前記第2の係止部材(11)に作用させることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のロータリドビー。
【請求項9】
前記可動部材を、摺動部材(13)として構成して前記作動部材(4)上に設けるとともに、前記主軸(1)の径(D1)方向に摺動可能に形成したことを特徴とする請求項8記載のロータリドビー。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかに記載のロータリドビー(R)を備える構成としたことを特徴とする織機(M)。
【請求項11】
前記作動部材を構成する偏心カム(4)と、
該偏心カム(4)上に設けた揺動リンク(5)と、
該揺動リンク(5)と前記ヘルドフレーム(3)を連結する旋回アーム(6)と
を備えて成る、請求項1〜9の何れかに記載のロータリドビーのサブアセンブリ。
【請求項12】
ドビーの主軸(1)に緩装された作動部材(4)と協働するヘルドフレーム(3)に連結された揺動部材(5)と、
前記主軸と共に回転する駆動部材(8)と、
該駆動部材(6)及び前記作動部材(4)に交互に係合する第1及び第2の係止部材(10,11)と、
前記第1及び第2の係止部材(10,11)に弾性的な付勢力(F19)を作用させる第1の弾性付勢手段(19,19’)と、
前記第1の弾性付勢手段(19,19’)の付勢力(F19)に抗して前記第1及び第2の係止部材(10,11)を変位させる制御手段(13,14,15)と
を備えるリフティングユニットを有し、
前記第1及び第2の係止部材が前記作動部材上に設けられており、
前記第1の係止部材(10)が前記駆動部材の少なくとも1つの第1の係合面(84A,84C)に選択的に係合する第1の端面(103)を備え、該第1の端面が、接触面(103/84A,103/84C)として形成され、前記駆動部材(8)の駆動力(F3)を前記作動部材(4)へ伝達し、一方、
前記第2の係止部材(11)が前記駆動部材の少なくとも1つの第2の係合面(84B,84D)に選択的に係合する第2の端面(113)を備え、該第2の端面が、接触面(113/84B,113/84D)として形成され、前記作動部材(4)の反力(F4)を前記駆動部材(8)へ伝達し、
前記第1及び第2の係止部材(10,11)が、前記第1の弾性付勢手段(19,19’)により、それぞれ第1及び第2の端面(103,113)が前記駆動部材(8)の前記第1及び第2の係合面(84A〜84D)に係合するよう付勢するロータリドビーの制御方法において、
前記駆動部材(8)を前記駆作動部材(4)から離脱させる際に、
a)前記第2の係止部材(11)に直接力を作用させずに、力(F14)を、前記第1の弾性付勢手段(19,19’)の付勢力(F19)に抗して前記第1の端面(103)が前記第1の係合面(84A,84C)から離脱するよう前記第1の係止部材(10)に作用させ、
b)第2の弾性付勢手段(20,20’)を設け、該第2の弾性付勢手段を、前記第2の端面(113)が前記駆動部材(8)の前記第2の係合面(84B,84D)から離脱するよう前記第2の係止部材(11)に作用させる
ことを特徴とするロータリドビーの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−277799(P2007−277799A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−102279(P2007−102279)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(591023572)シュトイブリー・ファベルゲ (31)