説明

ローディングアーム装置

【課題】燃料供給開始時及び供給停止時におけるコック操作レバーの操作確認の煩雑さを解消する。
【解決手段】本発明装置は複数の送油管の先端に取り付けられて送油先への油類の供給路を開閉する手動操作用のコック弁と、送油管への油類の供給を行うオン/オフする閉止弁と、該閉止弁の開閉を制御する操作スイッチ48と、操作スイッチ48の閉止位置と、開位置との間で移動できるように設けられたシャッタ54と、操作レバー50とシャッタとを連動連結し、前記レバーが弁閉位置にある場合はシャッタ54を閉止位置に保持し、弁開位置にある場合はシャッタ54を開位置に保持するワイヤ52とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクローリなどにガソリンなどの液体燃料を供給するためのローディングアーム装置に関し、特に燃料供給開始時及び供給停止時におけるヒューマンエラーを未然に防止するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献に示すように、ローディングアーム装置を用いてガソリン、灯油などの液体燃料をタンクローリ車など陸上出荷するシステムは良く知られている。
【0003】
このシステムでは、積込み中にタンク内の液面が設定レベルに到達するとドロップパイプ内部のレベルセンサがこれを検知し、バルブを自動的に閉鎖し、オーバフローを未然に防止できる。
【0004】
図8は、以上のローディングアーム装置を備えた燃料供給装置の概略を示している。図において、供給元側配管1内には流量計2、緊急遮断弁3、二段閉止弁4、並びにバキュームブレイク弁5などが配置されており、この配管1の下流側には複数のスイベルなどを介して屈曲可能に連結された複数の送油管からなるローディングアーム装置8が旋回かつ傾動可能に配置され、その先端にはバルブハウジング9を介してドロップパイプ10が垂設されている。
【0005】
この構造において、給油作業を実行する場合には、ローディングアーム装置8を格納位置から引出し、ドロップパイプ10を一旦引上げてから、タンクローリ11のハッチ内に降ろせば給油準備操作が完了する。
【0006】
前記バルブハウジング9には、コック弁用操作レバー12が設けられているとともに、ローディングアーム装置8の先端外周には手元操作スイッチ13が配置されており、前記のごとく給油準備操作後は、コック弁用操作レバー12を開に操作してから、スイッチ13を押釦操作することにより遮断弁3、閉止弁4が開き、前記配管1の元側に設けた図示しないポンプから送られた燃料がローディングアーム装置8、ドロップパイプ10を通じてタンクローリ11内に供給される。
【0007】
そして、スイッチ13によって設定された量でタンクローリ11の内部を満たし流量計が当該設定量を検知すると、各弁3,4を遮断することによってタンクローリー内への燃料の供給が停止される。
【0008】
その後は、コック弁用操作レバー12を閉位置に戻してから、ローディングアーム装置8を折畳み、元の格納位置に戻すことで給油作業を完了する。
【特許文献1】特開平8−198397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、以上の作業手順を実行する場合には、これらの作業を確実に順を追って実行する必要があり、確認が煩雑になったり、作業時間が長くかかってしまうなどという問題があった。
【0010】
例えば、出荷(給油)開始の際、コック弁を開放しないで手元スイッチ13のスタートボタンを押してしまうと、通常どおり遮断弁3,閉止弁4が開放され、ローディングアーム装置8内に通油されるが、コック弁が開放されていないため、タンクローリー内へスムーズに燃料を送り込むことができない。従ってコック弁が確実に開放されているかを確認した後にスタートボタンをおす必要がある。
【0011】
そこで本発明は以上の課題を解決するものであり、その目的とするところは、燃料供給開始時及び供給停止時におけるコック弁の開閉状態の確認を容易にするとともに、燃料供給開始時のスタートボタン操作手順を確実に実行可能として、作業性を向上させたローディングアーム装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、請求項1記載のローディングアーム装置は、回動可能に連結されて先端が給油先の給油孔に挿入される複数の送油管と、前記送油管の先端に取り付けられて前記送油先への油類の供給路を操作レバーにより開閉するコック弁と、前記送油管への油類の供給をオン/オフする閉止弁と、前記閉止弁の開閉を制御する操作スイッチとを有するローディングアーム装置において、
前記操作スイッチを覆い隠して操作不能とする閉止位置と、前記操作スイッチを開放して操作可能とする開放位置との間で移動できるように設けられたシャッターと、
前記コック弁の操作レバーと前記シャッターとを連動連結し、前記操作レバーが前記コック弁を閉とする位置にある場合は前記シャッターを閉止位置に保持し、前記操作レバーが前記コック弁を開とする位置にある場合は前記シャッターを開放位置に保持するワイヤーと、 を具備することを特徴としている。
【0013】
請求項2記載のローディングアーム装置は、請求項1において、前記操作スイッチが、前記送油管に取り付けられていることを特徴としている。
【0014】
請求項3記載のローディングアーム装置は、請求項1において、前記操作レバーの回動軸には、前記操作レバーが前記コック弁を閉とする位置にある場合は下方の位置に設定され、前記開閉レバーが前記コック弁を開とする位置にある場合は上方の位置に設定される開状態が表示された表示板を有することを特徴としている。
【0015】
請求項4記載のローディングアーム装置は、請求項1において、記操作レバーによる閉止動作に連動して前記閉止位置に設定された前記シャッターを同位置に固定し、前記操作レバーによる開放動作に連動して前記シャッターの固定を解除するロック機構が設けられたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、弁開放動作により、スイッチを覆うシャッターが開いて操作可能となり、弁閉止動作によりスイッチを覆うシャッターが閉じて操作不可能となるため、操作を確実に行うことが出来、確認作業が容易となり、操作性が向上する。また開閉レバーに連動するワイヤーにより開閉動作を行うため、機構が簡単で、安価に構成できる。
【0017】
請求項2の発明によれば、スイッチが給油作業者の手元にあるため、作業が簡単である。
【0018】
請求項3の発明によれば、表示板の位置に応じて弁の開閉状態が直ちに目視確認できるため、理解しやすいものとなる。
【0019】
請求項4の発明によれば、弁が完全に開放状態になったときにのみ、スイッチの操作位置が開放されるため、手順どおりの操作を確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下本発明の最良の形態につき、添付図面を参照して説明する。図1は本発明にかかるローディングアーム装置の全体構成を示す斜視図、図2は要部を拡大して示す正面斜視図、図3は同背面斜視図、図4は操作スイッチとワイヤー及び開閉レバーとの関係を示す説明図、図5(a),(b)は同開閉状態における操作スイッチとワイヤー並びに開閉レバーとの関係を示す説明図、図6(a)は開閉レバーとワイヤーの関係を示す簡略斜視図、(b)は同簡略側面図、図7は同ワイヤーガイドを設けた簡略斜視図である。
【0021】
図1において、ローディングアーム装置20は供給元配管22にスイベル24を介して互いに旋回乃至揺動可能に連結された第1、第2、第3の送油管26a〜26cと、第3の送油管26cの先端にスイベル24を介して揺動可能に接続され、かつ下部側にドロップパイプ28を垂設したコック弁ハウジング30を備えている。
【0022】
前記第2の送油管26bには固定板32aを介してエアシリンダ32の基部が連結固定され、このシリンダ32の先端から突出するプランジャ34の先端を前記第3の送油管26cの側部に連結し、プランジャ34の伸縮動作に伴いスイベル(図略)を基点に傾動可能に支持している。
【0023】
前記コック弁ハウジング30の下流側にはガス抜き管36が分岐配管され、このガス抜き管36の上部側はホースユニオン38を介してフレキシブルホース40の一端に連結されている。
【0024】
このホース40の他端部は第1の送油管26aの上部に平行に配置されたガス抜き管42の一端に接続され、さらにこのガス抜き管42の他端はスイベル44を介してU形管46に接続され、このU形管46に接続される図示しない排管部を通じて系外に排出されるようになっている。
【0025】
前記第3の送油管26cの先端に近い位置には手元操作用スイッチ48がU形金具などを介して固定されている一方、前記弁ハウジング30の前面にはコック弁の手動開閉用の操作レバー50が配置され、このレバー50はワイヤー52を介してスイッチ48の上面に設けた開閉用シャッター54に連動連結されている。
【0026】
さらに、前記エアシリンダ32の駆動用ホース及び前記スイッチ48のケーブルなどのハーネス類56は一本に束ねられ、第1の送油管26aの外周を這わせた状態で供給元側に引込んでいる。
【0027】
図2において、符号58は前記第3の送油管26cを傾動させ、送油管26cの最先端位置側部に配置された前記エアシリンダ32の駆動用レバーであって、この駆動レバー58の上げ下げによってエアシリンダ32に圧力空気の給排して送油管26cを傾動させ、前記弁ハウジング30とともにドロップパイプ28の昇降動作がなされる。
【0028】
また、図2においては、操作レバー50によってコック弁を開いた状態を示し、この状態でスイッチ48のシャッター54が開きその上面の操作部48aを覗かせている。これと同時に表示板60が起きあがり、表示板60の表面に注意色(例えば赤)で表示された「開」と言う文字をレバー50の操作者に対して見やすい位置に表示している。
【0029】
図3において、図2に示す前記操作レバー50の回動軸50aは、弁ハウジング30の裏面側において、連結軸62軸に一体化されており、この連結軸62に軸60aを介して前記表示板60が一体に連結されている。図3においては弁閉止状態を示しており、この弁閉止状態で、表示板60は横になり、弁ハウジング30の裏面側に隠れた状態となる。
【0030】
また、この表示板60の軸60aと直交する位置で前記連結軸62にはワイヤー52の端部固定用の支軸64が突設されており 表示板60が横向きの位置で支軸64は立上がり、ワイヤー52がシャッター54を押す方向の力が加わり、これによってシャッター54はスイッチ48の表面に覆い被さり、操作部48aを隠蔽する。
【0031】
なお、図1〜3において、符号66は弁ハウジング30の上部エンドプレートに共締されて、その一端を弁ハウジング30の背面側にオーバハングさせたアタッチメントプレート、68はそのオーバハング端の下部に垂設されたガイドプレートであり、このガイドプレート68には前記ワイヤー52を平行ガイドする後述のガイド部が設けられている。
【0032】
次に前記シャッター54の開閉動作と、操作レバー50の操作及びこれに要するワイヤー長さとの関係について、図4、図5を用いて説明する。なお、先には示さなかったが、本例では、シャッター54を閉鎖位置にロックするためのロック部70及びロック部70を常時閉鎖位置に付勢するバネ72を付加した場合を示している。
【0033】
まず図4はその動作原理を説明するもので、シャッターに連結されているワイヤー52−1の支軸の1/4円弧の長さ(図から90時計方向回動した場合)は、
2πL1/4=πL1/2
よって、長さL1の指示軸64の1/4円弧の長さと、シャッター移動長さ及び遊び長さとの関係は、概略次のように近似できる。
πL1/2=L3+L4
なお、遊び長さL4は、シャッター固定用ロック部70によるロックが解除されるまでの間、シャッターが移動しない長さとして固定点を定めればよい。
【0034】
したがって、図5(a)に示すように、開表示が横に倒されている状態から連結軸62を時計方向に回動すると、最初にロック部70がワイヤー52−2により引張られ、バネ72の圧力に抗してロック解除後、図5(b)に示すように、ワイヤー52−1が引張られることでシャッター54が完全に開き、操作部48aに設けたスタートボタンが現れ、このボタンを押すことで、操作手順以外の操作を排除して、手順通りの確実な給油動作が可能となるのである。
【0035】
図6は(a)は前記操作レバー50に対する連結軸62の結合及び連結軸62に対する支軸64の結合関係の詳細を示している。図において、操作レバー50の回動軸50aの弁ハウジング30からの後部突出端には中空の連結軸62が嵌合され、その外周にネジ込まれた複数の六角穴付ネジ62aにより一体化されている。
【0036】
また、この連結軸62に結合される支軸64は上部にワイヤー通し孔を形成したネジ付の棒であって、その上下外周にナット64aをねじ込み、連結軸62を挟みつけることで強固に固定される。なお、この支軸64の先端に直交配置される前記表示板60の軸60aも同様な取付構造となっている。
【0037】
次に図6(b)は前記支軸64に対するワイヤー52の取付構造を示している。前述の固定点は図の一部に拡大示して示すように筒形のホルダ80であって、ワイヤー52に通した後ペンチPなどによってホルダ80を潰すことにより、その固定位置を設定通り保つことが出来る。また、このワイヤー52の外周はシース管82で摺動可能に覆われ、過度の押し引き操作に伴うワイヤー52の屈曲変形が未然に防止されるようになっている。
【0038】
図7は前述のワイヤーガイドをより詳細に説明するためのもので、アタッチメントプレート66のオーバハング端の下部に垂設されたガイドプレート68にはシースホルダ90が設けられ、このシースホルダ90にシース管82を挿通し、シース管82及びワイヤー52がほぼ水平な状態となるようにワイヤー52を支軸64に固定することで、ワイヤー52の押し引きに伴うワイヤー52の屈曲を防止し、常時一定のおしひき量によってワイヤー52を移動可能としている。
【0039】
本実施形態において、例えば給油後に弁閉止操作を行わない場合にはエアシリンダ32の駆動用レバー58の操作端がカバーでロックされるようにワイヤー連繋機構で連結すれば、弁が開いたままではドロップパイプ28を引上げることが出来なくなり、これによっても作業手順の確認を容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明にかかるローディングアーム装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】同要部を拡大して示す正面斜視図である。
【図3】同背面斜視図である。
【図4】操作スイッチとワイヤー及び開閉レバーとの関係を示す説明図である。
【図5】(a),(b)は同開閉状態における操作スイッチとワイヤー並びに開閉レバーとの関係を示す説明図である。
【図6】(a)は開閉用操作レバーと回動軸の関係を示す簡略側面図、(b)はワイヤーと支軸の関係を示す一部拡大部分を含む同簡略斜視図である。
【図7】同ワイヤーガイドを設けた簡略斜視図である。
【図8】ローディングアーム装置における従来の不具合を示す説明図である。
【符号の説明】
【0041】
4 閉止弁
20 ローディングアーム装置
24 スイベル
26a,26b,26c 送油管
28 ドロップパイプ
30 弁ハウジング(コック弁)
48 手元操作用スイッチ
50 操作レバー、50a 回動軸
52 ワイヤー
54 シャッター板
60 表示板
62 連結軸
64 支軸
70,72 ロック機構(70 ロック部、72バネ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動可能に連結されて先端が給油先の給油孔に挿入される複数の送油管と、前記送油管の先端に取り付けられて前記送油先への油類の供給路を操作レバーにより開閉するコック弁と、前記送油管への油類の供給をオン/オフする閉止弁と、前記閉止弁の開閉を制御する操作スイッチとを有するローディングアーム装置において、
前記操作スイッチを覆い隠して操作不能とする閉止位置と、前記操作スイッチを開放して操作可能とする開放位置との間で移動できるように設けられたシャッターと、
前記コック弁の操作レバーと前記シャッターとを連動連結し、前記開閉レバーが前記コック弁を閉とする位置にある場合は前記シャッターを閉止位置に設定し、前記開閉レバーが前記コック弁を開とする位置にある場合は前記シャッターを開放位置に設定するワイヤーと、
を具備することを特徴とするローディングアーム装置。
【請求項2】
前記操作スイッチが、前記送油管に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載のローディングアーム装置。
【請求項3】
前記操作レバーの回動軸には、前記操作レバーが前記コック弁を閉とする位置にある場合は下方の位置に設定され、前記開閉レバーが前記コック弁を開とする位置にある場合は上方の位置に設定される開状態が表示された表示板を有することを特徴とする請求項1記載のローディングアーム装置。
【請求項4】
前記操作レバーによる閉止動作に連動して前記閉止位置に設定された前記シャッターを同位置に固定し、前記操作レバーによる開放動作に連動して前記シャッターの固定を解除するロック機構が設けられたことを特徴とする請求項1記載のローディングアーム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−137425(P2007−137425A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329080(P2005−329080)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(000181343)鹿島石油株式会社 (11)
【Fターム(参考)】