ローラスケート
【課題】歩行モードとスケーティングモードとを切り換え可能なローラスケートにおいて、歩行モードとスケーティングモードとのいずれにおいても、ローラが歩行面や走行面に全幅にわたって確実かつ安定に接触できるようにする。
【解決手段】第1のローラスケートでは、靴底12の長さ方向に沿って複数のローラ13が配置される。これらのローラ13に沿って摩擦接触部材21が並設されている。ローラ13と靴底12とは、互いに左右に振れることができるようにヒンジ結合17、18されている。第2のローラスケートでは、靴底12の長さ方向に沿って複数のローラ13が配置されている。これらのローラ13に沿って摩擦接触部材21が並設されている。摩擦接触部材21は、ケース31と接触子32とを有する。接触子32は、ケース31から下向きに突出可能であるとともに、ケース31内に上向きに退入可能である。
【解決手段】第1のローラスケートでは、靴底12の長さ方向に沿って複数のローラ13が配置される。これらのローラ13に沿って摩擦接触部材21が並設されている。ローラ13と靴底12とは、互いに左右に振れることができるようにヒンジ結合17、18されている。第2のローラスケートでは、靴底12の長さ方向に沿って複数のローラ13が配置されている。これらのローラ13に沿って摩擦接触部材21が並設されている。摩擦接触部材21は、ケース31と接触子32とを有する。接触子32は、ケース31から下向きに突出可能であるとともに、ケース31内に上向きに退入可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はローラスケートに関する。
【背景技術】
【0002】
公知のローラスケートとして、特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載されたローラスケートは、
靴底における外側の位置で、靴の長さ方向に沿って基材部から下方に突出するように形成された摩擦接触部材と、
靴底における内側の位置において靴の長さ方向に沿って複数設けられた傾斜ローラと、
摩擦接触部材と傾斜ローラとの間において上向きに形成された空間部とを有し、
歩行モードでは摩擦接触部材と傾斜ローラの内側エッジとが歩行面に接触するように構成され、
スケーティングモードでは、基材部が倒されることで傾斜ローラの踏面が走行面に接触しかつ摩擦接触部材が走行面に接触しないように構成されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第07/094649号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されたローラスケートでは、上記のように歩行モードでは摩擦接触部材と傾斜ローラの内側エッジとが歩行面に接触するように構成されており、傾斜ローラが全幅にわたって歩行面に接触するものではないので、接触状態の安定性に改善の余地がある。また特許文献1に記載されたローラスケートでは、傾斜ローラは特定の傾斜角で設置されているため、スケーティングモードにおいても、その傾斜角に対応した角度で基材部を倒した場合のみ傾斜ローラが全幅にわたって走行面に接触するが、それ以外の角度で基材部を倒した場合は傾斜ローラは全幅にわたって走行面に接触することができず、したがってこの点においても接触状態の安定性に改善の余地がある。
【0005】
そこで本発明は、このような問題点を解決して、歩行モードとスケーティングモードとを切り換え可能なローラスケートにおいて、歩行モードとスケーティングモードとのいずれにおいてもローラが歩行面や走行面に全幅にわたって確実かつ安定に接触できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するため本発明の第1のローラスケートは、靴底の長さ方向に沿って複数のローラが配置されるとともに、これらのローラに沿って摩擦接触部材が並設され、ローラと靴底とは、互いに左右に振れることができるようにヒンジ結合されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の第2のローラスケートは、靴底の長さ方向に沿って複数のローラが配置されるとともに、これらのローラに沿って摩擦接触部材が並設され、摩擦接触部材は、ケースと接触子とを有し、接触子は、ケースから下向きに突出可能であるとともに、ケース内に上向きに退入可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1のローラスケートによると、ローラを全幅にわたって歩行面に接触させた状態で、靴底を左右に振るようにして摩擦接触部材を歩行面に接触させることによって、摩擦接触部材と歩行面との間の摩擦力によってローラの回転を阻止することができる。その結果、全幅にわたって確実かつ安定に歩行面に接触させたローラと、歩行面に接触させた摩擦接触部材とによって、良好な歩行を行うことができる。また靴底を左右に振るようにして摩擦接触部材を歩行面から適度に浮かせることによって、ローラのみを全幅にわたって確実かつ安定に走行面に接触させた状態でスケーティングを行うことができる。
【0009】
本発明の第2のローラスケートによると、ローラを全幅にわたって歩行面に接触させた状態で、摩擦接触部材の接触子をケースから下向きに突出させて歩行面に接触させることによって、摩擦接触部材の接触子と歩行面との間の摩擦力によってローラの回転を阻止することができる。その結果、全幅にわたって確実かつ安定に歩行面に接触させたローラと、歩行面に接触させた接触子とによって、良好な歩行を行うことができる。また摩擦接触部材の接触子をケース内に上向きに退入させて、この接触子を歩行面から適度に浮かせることによって、ローラのみを全幅にわたって確実かつ安定に走行面に接触させた状態でスケーティングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態のローラスケートの正面図である。
【図2】同ローラスケートの左側面図である。
【図3】同ローラスケートの右側面図である。
【図4】同ローラスケートにおけるローラの立体図である。
【図5】同ローラスケートにおけるローラと靴底との取り付け構造を示す図である。
【図6】同ローラスケートにおけるローラの靴底への取り付け工程を示す図である。
【図7】同ローラスケートにおける摩擦接触部材を走行面からわずかに浮かせた状態を示す図である。
【図8】同ローラスケートにおける摩擦接触部材を走行面から大きく浮かせた状態を示す図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態のローラスケートの変形例の正面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態のローラスケートの正面図である。
【図11】同ローラスケートにおける摩擦接触部材を走行面から浮かせた状態を示す図である。
【図12】図10〜図11に示されたローラスケートにおける摩擦接触部材の出退機構の一例を示す図である。
【図13】同ローラスケートの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施の形態)
図1〜図3に示されるローラスケートにおいて、11は靴本体、12はその靴底である。靴底12は、たとえば合成ゴムにより靴本体11と一体に厚肉で形成されている。
【0012】
図1〜図3に示されたローラスケートは右足に装着するものであるが、靴底12における中心部の位置には、靴の長さ方向に沿って複数のローラ13が設けられている。各ローラ13は、図1〜図4に示すように、幅広の合成樹脂製の車輪14と、この車輪14を回転自在に支持するブラケットにて構成された支持部材15とを有した構成である。そして支持部材15の上面には、ステー16を介して、円柱状の回転部材17が連結されている。すなわち、回転部材17は、支持部材15に一体的に取り付けられ、あるいは支持部材15と一体に形成されている。支持部材15とステー16と回転部材17とは、樹脂や軽金属などによって形成することができる。
【0013】
図1〜図3および図5〜図6に示すように、靴底12には、回転部材17を収容可能な収容凹部18が形成されている。この収容凹部18は、回転部材17が靴本体11の前後方向の軸心のまわりに回転自在な状態で、この回転部材17を収容可能である。
【0014】
図5および図6に詳細に示すように、収容凹部18は、その横断面が半円よりもやや大きい形状となるように形成されている。したがって収容凹部18は、その両側の開口縁に鋭角状のエッジ部19がそれぞれ形成された構成である。
【0015】
靴底12へのローラ13の装着は、次のようにして行うことができる。すなわち、図6に示すようにローラ13の回転部材17を収容凹部18に接近させ、この状態から回転部材17を両方のエッジ部19に接触させる。そして、回転部材17を収容凹部18に向けて強く押圧することで、両方のエッジ部19を互いに開く方向に弾性変形させて、回転部材17の中央部がエッジ部19の位置を通過するようにさせる。これにより、図5に示すように、回転部材17が収容凹部18に装着される。装着後は、図5に示すようにエッジ部19が元の状態に戻って回転部材18を抱きかかえるようになり、これによって収容凹部18からの回転部材17すなわちローラ13の脱落を防止できる。
【0016】
靴底12の硬度、詳細にはエッジ部19の硬度を調節することによって、メンテナンスのためにローラ13を靴底12から取り外しおよび再装着可能とすることができる。あるいは、エッジ部を硬く形成することで、不要な脱落を確実に防止することができる。
【0017】
靴底12における各ローラ13の側方には、すなわちローラスケートの装着者における身体の外側に相当する側方には、摩擦接触部材21が設けられている。摩擦接触部材21は、靴底12から下向きに突出するように設けられた支持体22と、支持体22の下端側に取り付けられた接触子23とを有する。支持体22は、樹脂や軽金属などで形成することが好ましく、接触子23はゴムなどで形成することが好ましい。
【0018】
24は、ローラスケートのつま先部分である。つま先部分24と、このつま先部分24よりも後側の部分との境界部における靴底12の部分には、靴本体11の幅方向の溝部25が、単数条あるいは複数条に形成されている。なお、この部分にはローラ13や摩擦接触部材21は設けられていない。
【0019】
このようなローラスケートであると、ローラ13の回転部材17が靴底12の収容凹部18に回転自在に収容されているため、ローラ13と靴底12とは、互いにローラスケートの左右の方向に振れることができるようにヒンジ結合された構成となっている。このため、ローラ13の車輪14を全幅にわたって歩行面26に接触させた状態で靴底12を左右に振るようにすることで、詳細には靴底12を左右に傾けることで、図1〜図3に示すように、摩擦接触部材21の接触子23を歩行面26に接触させることができる。すると、接触子23と歩行面26との間の摩擦力によってローラ13の車輪14の回転を阻止することができる。その結果、車輪14をその全幅にわたって確実かつ安定に歩行面26に接触させたローラ13と、接触子26を歩行面26に接触させた摩擦接触部材21とによって、良好な歩行を行うことができる。
【0020】
この歩行時には、靴底12は、つま先部分24と、このつま先部分24よりも後側の部分との境界部に形成された溝部25を中心として、「く」の字形に弾性的に折れ曲がる。このとき、溝部25が形成されているため、靴底12の弾性変形を容易に行うことができる。したがって、装着者による快適な歩行を実現することができる。
【0021】
摩擦接触部材21は、溝部25よりも後側の部分において、上述のように各ローラ13ごとに対応して形成されていることに代えて、図2および図3において仮想線で示すように、ローラスケートの長さ方向に沿って連続した形態とすることもできる、あるいは、各ローラ13よりも長い範囲でそれぞれ形成することもできる。このように構成することで、歩行面26に対する接触子23の接触範囲を大きくすることができて、より安定した歩行を実現することができる。
【0022】
図1〜図3に示す状態から、ローラ13の車輪14を接地させたまま靴底12を左右に振って若干傾斜させることで、図7に示すように摩擦接触部材21の接触子23を歩行面26から適度に浮かせることができる。こうすることで、ローラ13の車輪14のみを全幅にわたって確実かつ安定に走行面27に接触させた状態で、良好なスケーティングを行うことができる。
【0023】
スケーティングを行うときに、接触子23を走行面27からどの程度浮かせるかは、接触子23が走行面27に接触しない限り、任意である。たとえば図7に示すように靴底12を少しだけ傾けてわずかに浮かせるようにすることもできるし、あるいは図8に示すように靴底12を大きく傾けることで、それに対応した程度だけ浮かせることもできる。そのときの装着者の身体の運動の具合、特に脚の運動の具合に応じた浮き上がり状況のもとで、安定、確実かつ安全にスケーティングを行うことができる。
【0024】
図9は、第1の実施の形態のローラスケートの変形例を示す。この図9のローラスケートでは、ローラ13の車輪14と摩擦接触部材21の接触子23とがより安定に接地するように、車輪14が全幅で接地ときに、靴底12に接触子23を接地させる姿勢を維持させることを目的として、靴底12とローラ13の支持部材15との間にばね28が設けられている。詳細には、図示の例では、靴底12とローラ13の支持部材15との間におけるステー16及び回転部材17の両側に、圧縮コイルばねなどの圧縮ばねが設けられている。ただし、ばねの形態は任意であって、車輪14が全幅で接地したときに靴底12が接触子23を接地させる姿勢を維持可能なものであれば、その種類は問わない。
【0025】
上記においては、靴底12とローラ13との連結構造として、回転部材17が収容凹部18に収容されたものを例示した。しかし、その連結構造は、これに限定されるものではなく、ローラ13と靴底12とを互いに左右に振れることができるようにヒンジ結合させることが可能なものであれば、その詳細な構成は問わない。
【0026】
(第2の実施の形態)
図11〜図13に示されるローラスケートでは、第1の実施の形態のローラスケートと比べて、ローラ13は、その支持部材15が靴底12に固定されることなどによって、靴底12に対して互いに左右に振れることはない。また第1の実施の形態のローラスケートと比べて、摩擦接触部材21の構成が相違する。その他の構成は、第1の実施の形態のものと同じである。
【0027】
すなわち摩擦接触部材21は、図示のように、靴底12から下向きに突出するように設けられたケース31と、ケース31に対して出退可能な接触子32とを有する。接触子32は、図10に示すようにケース31から下向きに突出可能でありかつ突出姿勢に保持されることが可能であるとともに、図11に示すようにケース31内に上向きに退入可能でありかつ退入姿勢に保持されることが可能である。ケース31は、樹脂や軽金属などで形成することが好ましく、接触子32はゴムなどで形成することが好ましい。
【0028】
ケースに対する接触子32の出退動作のための機構や、接触子32の姿勢保持のための機構は、任意のものとすることができ、特に限定されない。たとえば出退動作のための機構としては、図12〜図13に示すものを挙げることができる。
【0029】
すなわち、靴底12の内部における前端部と後端部とには、ピン33のまわりに揺動自在なアーム34がそれぞれ設けられており、アーム34の連結点35には作動ボタン36が連結されている。作動ボタン36は、そのボタン部37が、靴底12の前端部および後端部において、それぞれ靴底12の外部に露出している。前後のアーム34の作用点38どうしの間には、ローラスケートの前後方向に配置されたロッド39が渡されている。ロッド39には、ピン40のまわりに揺動自在なL形クランク41の一端が連結されている。L形クランク41の他端は、接触子32に連結されている。
【0030】
このような構成によれば、つま先側の作動ボタン36のボタン部37を靴底12に近づく方向に押すと、それに連動して、ロッド39が前向きに変位するとともに、かかと側の作動ボタン36のボタン部37が靴底12から離れる方向に突出する。そしてロッド39が前向きに変位すると、それにL形クランク41が連動して、接触子32が歩行面26から浮き上がる。反対に突出しているかかと側のボタン部37を靴底12に近づく方向に押すと、上記とは逆の動作によって接触子32が歩行面26に接触する。
【0031】
よって、ステーティング中にかかと側のボタン部37を何かに当ててこのボタン部37を靴底12に接近させれば、接触子32がケース31から突出して接地可能となる。すると、ローラ13の車輪14が全幅で接地した状態で接触子32も接地する。これによって、摩擦接触部材21の接触子32と歩行面26との間の摩擦力によってローラ13の車輪14の回転を阻止することができる。その結果、車輪14を全幅にわたって確実かつ安定に歩行面26に接触させたローラ13と、歩行面26に接触させた接触子32とによって、良好な歩行を行うことができる。
【0032】
また、歩行中につま先側のボタン部37を何かに当ててこのボタン部37を靴底12に接近させれば、摩擦接触部材の21接触子32をケース31の内部に上向きに退入させて、ローラ13の車輪14が全幅で接地した状態で接触子32を歩行面26から適度に浮かせることができる。その結果、ローラ13の車輪14のみを全幅にわたって確実かつ安定に走行面27に接触させた状態で、良好なスケーティングを行うことができる。
【0033】
(その他の実施の形態)
本発明によれば、上記に代えて、ローラスケートが靴本体11に相当するものを有さず、靴底12の上面が露出した構成とすることができる。そして、靴底12にベルトが設けられた構成とすることで、このベルトを用いて、普通の靴を靴底12に取り外し自在に固定できるように構成することが可能である。このような構成によれば、任意の靴を履いた状態で、その靴を靴底12に固定してローラスケーティングを行うことができる。
【0034】
本発明のローラスケートは、靴本体11と靴底12とが、その長さ方向に長さ調整可能であるようにすることができる。つまり、着用者の足のサイズに合わせた適宜の長さに調整可能な構成とすることができる。
【符号の説明】
【0035】
12 靴底
13 ローラ
14 車輪
15 支持部材
17 回転部材
18 収容凹部
21 摩擦接触部材
23 接触子
31 ケース
32 接触子
【技術分野】
【0001】
本発明はローラスケートに関する。
【背景技術】
【0002】
公知のローラスケートとして、特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載されたローラスケートは、
靴底における外側の位置で、靴の長さ方向に沿って基材部から下方に突出するように形成された摩擦接触部材と、
靴底における内側の位置において靴の長さ方向に沿って複数設けられた傾斜ローラと、
摩擦接触部材と傾斜ローラとの間において上向きに形成された空間部とを有し、
歩行モードでは摩擦接触部材と傾斜ローラの内側エッジとが歩行面に接触するように構成され、
スケーティングモードでは、基材部が倒されることで傾斜ローラの踏面が走行面に接触しかつ摩擦接触部材が走行面に接触しないように構成されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第07/094649号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されたローラスケートでは、上記のように歩行モードでは摩擦接触部材と傾斜ローラの内側エッジとが歩行面に接触するように構成されており、傾斜ローラが全幅にわたって歩行面に接触するものではないので、接触状態の安定性に改善の余地がある。また特許文献1に記載されたローラスケートでは、傾斜ローラは特定の傾斜角で設置されているため、スケーティングモードにおいても、その傾斜角に対応した角度で基材部を倒した場合のみ傾斜ローラが全幅にわたって走行面に接触するが、それ以外の角度で基材部を倒した場合は傾斜ローラは全幅にわたって走行面に接触することができず、したがってこの点においても接触状態の安定性に改善の余地がある。
【0005】
そこで本発明は、このような問題点を解決して、歩行モードとスケーティングモードとを切り換え可能なローラスケートにおいて、歩行モードとスケーティングモードとのいずれにおいてもローラが歩行面や走行面に全幅にわたって確実かつ安定に接触できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するため本発明の第1のローラスケートは、靴底の長さ方向に沿って複数のローラが配置されるとともに、これらのローラに沿って摩擦接触部材が並設され、ローラと靴底とは、互いに左右に振れることができるようにヒンジ結合されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の第2のローラスケートは、靴底の長さ方向に沿って複数のローラが配置されるとともに、これらのローラに沿って摩擦接触部材が並設され、摩擦接触部材は、ケースと接触子とを有し、接触子は、ケースから下向きに突出可能であるとともに、ケース内に上向きに退入可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1のローラスケートによると、ローラを全幅にわたって歩行面に接触させた状態で、靴底を左右に振るようにして摩擦接触部材を歩行面に接触させることによって、摩擦接触部材と歩行面との間の摩擦力によってローラの回転を阻止することができる。その結果、全幅にわたって確実かつ安定に歩行面に接触させたローラと、歩行面に接触させた摩擦接触部材とによって、良好な歩行を行うことができる。また靴底を左右に振るようにして摩擦接触部材を歩行面から適度に浮かせることによって、ローラのみを全幅にわたって確実かつ安定に走行面に接触させた状態でスケーティングを行うことができる。
【0009】
本発明の第2のローラスケートによると、ローラを全幅にわたって歩行面に接触させた状態で、摩擦接触部材の接触子をケースから下向きに突出させて歩行面に接触させることによって、摩擦接触部材の接触子と歩行面との間の摩擦力によってローラの回転を阻止することができる。その結果、全幅にわたって確実かつ安定に歩行面に接触させたローラと、歩行面に接触させた接触子とによって、良好な歩行を行うことができる。また摩擦接触部材の接触子をケース内に上向きに退入させて、この接触子を歩行面から適度に浮かせることによって、ローラのみを全幅にわたって確実かつ安定に走行面に接触させた状態でスケーティングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態のローラスケートの正面図である。
【図2】同ローラスケートの左側面図である。
【図3】同ローラスケートの右側面図である。
【図4】同ローラスケートにおけるローラの立体図である。
【図5】同ローラスケートにおけるローラと靴底との取り付け構造を示す図である。
【図6】同ローラスケートにおけるローラの靴底への取り付け工程を示す図である。
【図7】同ローラスケートにおける摩擦接触部材を走行面からわずかに浮かせた状態を示す図である。
【図8】同ローラスケートにおける摩擦接触部材を走行面から大きく浮かせた状態を示す図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態のローラスケートの変形例の正面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態のローラスケートの正面図である。
【図11】同ローラスケートにおける摩擦接触部材を走行面から浮かせた状態を示す図である。
【図12】図10〜図11に示されたローラスケートにおける摩擦接触部材の出退機構の一例を示す図である。
【図13】同ローラスケートの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施の形態)
図1〜図3に示されるローラスケートにおいて、11は靴本体、12はその靴底である。靴底12は、たとえば合成ゴムにより靴本体11と一体に厚肉で形成されている。
【0012】
図1〜図3に示されたローラスケートは右足に装着するものであるが、靴底12における中心部の位置には、靴の長さ方向に沿って複数のローラ13が設けられている。各ローラ13は、図1〜図4に示すように、幅広の合成樹脂製の車輪14と、この車輪14を回転自在に支持するブラケットにて構成された支持部材15とを有した構成である。そして支持部材15の上面には、ステー16を介して、円柱状の回転部材17が連結されている。すなわち、回転部材17は、支持部材15に一体的に取り付けられ、あるいは支持部材15と一体に形成されている。支持部材15とステー16と回転部材17とは、樹脂や軽金属などによって形成することができる。
【0013】
図1〜図3および図5〜図6に示すように、靴底12には、回転部材17を収容可能な収容凹部18が形成されている。この収容凹部18は、回転部材17が靴本体11の前後方向の軸心のまわりに回転自在な状態で、この回転部材17を収容可能である。
【0014】
図5および図6に詳細に示すように、収容凹部18は、その横断面が半円よりもやや大きい形状となるように形成されている。したがって収容凹部18は、その両側の開口縁に鋭角状のエッジ部19がそれぞれ形成された構成である。
【0015】
靴底12へのローラ13の装着は、次のようにして行うことができる。すなわち、図6に示すようにローラ13の回転部材17を収容凹部18に接近させ、この状態から回転部材17を両方のエッジ部19に接触させる。そして、回転部材17を収容凹部18に向けて強く押圧することで、両方のエッジ部19を互いに開く方向に弾性変形させて、回転部材17の中央部がエッジ部19の位置を通過するようにさせる。これにより、図5に示すように、回転部材17が収容凹部18に装着される。装着後は、図5に示すようにエッジ部19が元の状態に戻って回転部材18を抱きかかえるようになり、これによって収容凹部18からの回転部材17すなわちローラ13の脱落を防止できる。
【0016】
靴底12の硬度、詳細にはエッジ部19の硬度を調節することによって、メンテナンスのためにローラ13を靴底12から取り外しおよび再装着可能とすることができる。あるいは、エッジ部を硬く形成することで、不要な脱落を確実に防止することができる。
【0017】
靴底12における各ローラ13の側方には、すなわちローラスケートの装着者における身体の外側に相当する側方には、摩擦接触部材21が設けられている。摩擦接触部材21は、靴底12から下向きに突出するように設けられた支持体22と、支持体22の下端側に取り付けられた接触子23とを有する。支持体22は、樹脂や軽金属などで形成することが好ましく、接触子23はゴムなどで形成することが好ましい。
【0018】
24は、ローラスケートのつま先部分である。つま先部分24と、このつま先部分24よりも後側の部分との境界部における靴底12の部分には、靴本体11の幅方向の溝部25が、単数条あるいは複数条に形成されている。なお、この部分にはローラ13や摩擦接触部材21は設けられていない。
【0019】
このようなローラスケートであると、ローラ13の回転部材17が靴底12の収容凹部18に回転自在に収容されているため、ローラ13と靴底12とは、互いにローラスケートの左右の方向に振れることができるようにヒンジ結合された構成となっている。このため、ローラ13の車輪14を全幅にわたって歩行面26に接触させた状態で靴底12を左右に振るようにすることで、詳細には靴底12を左右に傾けることで、図1〜図3に示すように、摩擦接触部材21の接触子23を歩行面26に接触させることができる。すると、接触子23と歩行面26との間の摩擦力によってローラ13の車輪14の回転を阻止することができる。その結果、車輪14をその全幅にわたって確実かつ安定に歩行面26に接触させたローラ13と、接触子26を歩行面26に接触させた摩擦接触部材21とによって、良好な歩行を行うことができる。
【0020】
この歩行時には、靴底12は、つま先部分24と、このつま先部分24よりも後側の部分との境界部に形成された溝部25を中心として、「く」の字形に弾性的に折れ曲がる。このとき、溝部25が形成されているため、靴底12の弾性変形を容易に行うことができる。したがって、装着者による快適な歩行を実現することができる。
【0021】
摩擦接触部材21は、溝部25よりも後側の部分において、上述のように各ローラ13ごとに対応して形成されていることに代えて、図2および図3において仮想線で示すように、ローラスケートの長さ方向に沿って連続した形態とすることもできる、あるいは、各ローラ13よりも長い範囲でそれぞれ形成することもできる。このように構成することで、歩行面26に対する接触子23の接触範囲を大きくすることができて、より安定した歩行を実現することができる。
【0022】
図1〜図3に示す状態から、ローラ13の車輪14を接地させたまま靴底12を左右に振って若干傾斜させることで、図7に示すように摩擦接触部材21の接触子23を歩行面26から適度に浮かせることができる。こうすることで、ローラ13の車輪14のみを全幅にわたって確実かつ安定に走行面27に接触させた状態で、良好なスケーティングを行うことができる。
【0023】
スケーティングを行うときに、接触子23を走行面27からどの程度浮かせるかは、接触子23が走行面27に接触しない限り、任意である。たとえば図7に示すように靴底12を少しだけ傾けてわずかに浮かせるようにすることもできるし、あるいは図8に示すように靴底12を大きく傾けることで、それに対応した程度だけ浮かせることもできる。そのときの装着者の身体の運動の具合、特に脚の運動の具合に応じた浮き上がり状況のもとで、安定、確実かつ安全にスケーティングを行うことができる。
【0024】
図9は、第1の実施の形態のローラスケートの変形例を示す。この図9のローラスケートでは、ローラ13の車輪14と摩擦接触部材21の接触子23とがより安定に接地するように、車輪14が全幅で接地ときに、靴底12に接触子23を接地させる姿勢を維持させることを目的として、靴底12とローラ13の支持部材15との間にばね28が設けられている。詳細には、図示の例では、靴底12とローラ13の支持部材15との間におけるステー16及び回転部材17の両側に、圧縮コイルばねなどの圧縮ばねが設けられている。ただし、ばねの形態は任意であって、車輪14が全幅で接地したときに靴底12が接触子23を接地させる姿勢を維持可能なものであれば、その種類は問わない。
【0025】
上記においては、靴底12とローラ13との連結構造として、回転部材17が収容凹部18に収容されたものを例示した。しかし、その連結構造は、これに限定されるものではなく、ローラ13と靴底12とを互いに左右に振れることができるようにヒンジ結合させることが可能なものであれば、その詳細な構成は問わない。
【0026】
(第2の実施の形態)
図11〜図13に示されるローラスケートでは、第1の実施の形態のローラスケートと比べて、ローラ13は、その支持部材15が靴底12に固定されることなどによって、靴底12に対して互いに左右に振れることはない。また第1の実施の形態のローラスケートと比べて、摩擦接触部材21の構成が相違する。その他の構成は、第1の実施の形態のものと同じである。
【0027】
すなわち摩擦接触部材21は、図示のように、靴底12から下向きに突出するように設けられたケース31と、ケース31に対して出退可能な接触子32とを有する。接触子32は、図10に示すようにケース31から下向きに突出可能でありかつ突出姿勢に保持されることが可能であるとともに、図11に示すようにケース31内に上向きに退入可能でありかつ退入姿勢に保持されることが可能である。ケース31は、樹脂や軽金属などで形成することが好ましく、接触子32はゴムなどで形成することが好ましい。
【0028】
ケースに対する接触子32の出退動作のための機構や、接触子32の姿勢保持のための機構は、任意のものとすることができ、特に限定されない。たとえば出退動作のための機構としては、図12〜図13に示すものを挙げることができる。
【0029】
すなわち、靴底12の内部における前端部と後端部とには、ピン33のまわりに揺動自在なアーム34がそれぞれ設けられており、アーム34の連結点35には作動ボタン36が連結されている。作動ボタン36は、そのボタン部37が、靴底12の前端部および後端部において、それぞれ靴底12の外部に露出している。前後のアーム34の作用点38どうしの間には、ローラスケートの前後方向に配置されたロッド39が渡されている。ロッド39には、ピン40のまわりに揺動自在なL形クランク41の一端が連結されている。L形クランク41の他端は、接触子32に連結されている。
【0030】
このような構成によれば、つま先側の作動ボタン36のボタン部37を靴底12に近づく方向に押すと、それに連動して、ロッド39が前向きに変位するとともに、かかと側の作動ボタン36のボタン部37が靴底12から離れる方向に突出する。そしてロッド39が前向きに変位すると、それにL形クランク41が連動して、接触子32が歩行面26から浮き上がる。反対に突出しているかかと側のボタン部37を靴底12に近づく方向に押すと、上記とは逆の動作によって接触子32が歩行面26に接触する。
【0031】
よって、ステーティング中にかかと側のボタン部37を何かに当ててこのボタン部37を靴底12に接近させれば、接触子32がケース31から突出して接地可能となる。すると、ローラ13の車輪14が全幅で接地した状態で接触子32も接地する。これによって、摩擦接触部材21の接触子32と歩行面26との間の摩擦力によってローラ13の車輪14の回転を阻止することができる。その結果、車輪14を全幅にわたって確実かつ安定に歩行面26に接触させたローラ13と、歩行面26に接触させた接触子32とによって、良好な歩行を行うことができる。
【0032】
また、歩行中につま先側のボタン部37を何かに当ててこのボタン部37を靴底12に接近させれば、摩擦接触部材の21接触子32をケース31の内部に上向きに退入させて、ローラ13の車輪14が全幅で接地した状態で接触子32を歩行面26から適度に浮かせることができる。その結果、ローラ13の車輪14のみを全幅にわたって確実かつ安定に走行面27に接触させた状態で、良好なスケーティングを行うことができる。
【0033】
(その他の実施の形態)
本発明によれば、上記に代えて、ローラスケートが靴本体11に相当するものを有さず、靴底12の上面が露出した構成とすることができる。そして、靴底12にベルトが設けられた構成とすることで、このベルトを用いて、普通の靴を靴底12に取り外し自在に固定できるように構成することが可能である。このような構成によれば、任意の靴を履いた状態で、その靴を靴底12に固定してローラスケーティングを行うことができる。
【0034】
本発明のローラスケートは、靴本体11と靴底12とが、その長さ方向に長さ調整可能であるようにすることができる。つまり、着用者の足のサイズに合わせた適宜の長さに調整可能な構成とすることができる。
【符号の説明】
【0035】
12 靴底
13 ローラ
14 車輪
15 支持部材
17 回転部材
18 収容凹部
21 摩擦接触部材
23 接触子
31 ケース
32 接触子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴底の長さ方向に沿って複数のローラが配置されるとともに、これらのローラに沿って摩擦接触部材が並設され、
ローラと靴底とは、互いに左右に振れることができるようにヒンジ結合されていることを特徴とするローラスケート。
【請求項2】
ローラは、車輪と、この車輪を回転自在に支持する支持部材と、支持部材に連結された円柱状の回転部材とを有し、靴底は、回転部材を靴底の長さ方向の軸心まわりに回転自在に収容可能な収容凹部を有することを特徴とする請求項1記載のローラスケート。
【請求項3】
靴底の長さ方向に沿って複数のローラが配置されるとともに、これらのローラに沿って摩擦接触部材が並設され、
摩擦接触部材は、ケースと接触子とを有し、接触子は、ケースから下向きに突出可能であるとともに、ケース内に上向きに退入可能であることを特徴とするローラスケート。
【請求項1】
靴底の長さ方向に沿って複数のローラが配置されるとともに、これらのローラに沿って摩擦接触部材が並設され、
ローラと靴底とは、互いに左右に振れることができるようにヒンジ結合されていることを特徴とするローラスケート。
【請求項2】
ローラは、車輪と、この車輪を回転自在に支持する支持部材と、支持部材に連結された円柱状の回転部材とを有し、靴底は、回転部材を靴底の長さ方向の軸心まわりに回転自在に収容可能な収容凹部を有することを特徴とする請求項1記載のローラスケート。
【請求項3】
靴底の長さ方向に沿って複数のローラが配置されるとともに、これらのローラに沿って摩擦接触部材が並設され、
摩擦接触部材は、ケースと接触子とを有し、接触子は、ケースから下向きに突出可能であるとともに、ケース内に上向きに退入可能であることを特徴とするローラスケート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−111431(P2013−111431A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263157(P2011−263157)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(500514579)ジェイディジャパン株式会社 (20)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(500514579)ジェイディジャパン株式会社 (20)
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