説明

ローラスケート

【課題】歩行モードとスケーティングモードとを切り換え可能なローラスケートにおいて、歩行モードでの歩行を快適に行えるようにする。
【解決手段】靴底における外側の位置で、靴の長さ方向に沿って基材部12から下方に突出するように形成された摩擦接触部材13と、靴底における内側の位置で、靴の長さ方向に沿って複数設けられた傾斜ローラ16と、摩擦接触部材13と傾斜ローラとの間において上向きに形成された空間部22とを有する。歩行モードでは、摩擦接触部材13と傾斜ローラ16の内側エッジ21とが歩行面14に接触する。スケーティングモードでは、基材部12が外側へ倒されることで傾斜ローラ16の踏面27が走行面に接触しかつ摩擦接触部材13は走行面に接触しない。つま先部分23と、つま先部分23よりも後側の部分との境界部が、この境界部以外の部分よりも弾性変形しやすいように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はローラスケートに関する。
【背景技術】
【0002】
公知のローラスケートとして、特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載されたローラスケートは、
靴底における外側の位置で、靴の長さ方向に沿って基材部から下方に突出するように形成された摩擦接触部材と、
靴底における内側の位置において靴の長さ方向に沿って複数設けられた傾斜ローラと、
摩擦接触部材と傾斜ローラとの間において上向きに形成された空間部とを有し、
歩行モードでは摩擦接触部材と傾斜ローラの内側エッジとが歩行面に接触するように構成され、
スケーティングモードでは、基材部が外側へ倒されることで傾斜ローラの踏面が走行面に接触しかつ摩擦接触部材が走行面に接触しないように構成されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第07/094649号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたローラスケートでは、上記のように摩擦接触部材は、靴底における外側部の位置で、靴の長さ方向に沿って基材部から下方に突出するように形成されている。したがって摩擦接触部材は、靴底がその長さ方向に沿って湾曲するのを防止するように機能する。
【0005】
ところが、靴の着用者が歩行するときには「かかと」を歩行面から蹴り上げることで前進するものであるから、それに対応して靴底が湾曲しないと歩きにくい。
したがって、特許文献1に記載されたローラスケートは、基材部を倒したり戻したりするだけで容易に歩行モードとスケーティングモードとを切り換え可能であり、スケーティングモードでは快適な走行が可能であるが、歩行モードでの歩きやすさの点では改善の余地がある。
【0006】
そこで本発明は、このような問題点を解決して、歩行モードとスケーティングモードとを切り換え可能なローラスケートであって、歩行モードにおいて快適に歩行することができるローラスケートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため本発明のローラスケートは、
靴底に対応する部位に設けられた基材部と、
靴底における外側の位置で、靴の長さ方向に沿って基材部から下方に突出するように形成された摩擦接触部材と、
靴底における内側の位置で、靴の長さ方向に沿って複数設けられた傾斜ローラと、
摩擦接触部材と傾斜ローラとの間において上向きに形成された空間部とを有し、
歩行モードでは摩擦接触部材と傾斜ローラの内側エッジとが歩行面に接触するように構成され、
スケーティングモードでは、基材部が外側へ倒されることで傾斜ローラの踏面が走行面に接触しかつ摩擦接触部材が走行面に接触しないように構成され、
靴のつま先部分と、つま先部分よりも後側の部分との境界部が、この境界部以外の部分よりも弾性変形しやすいように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
したがって本発明によると、靴のつま先部分と、つま先部分よりも後側の部分との境界部が、この境界部以外の部分よりも弾性変形しやすいように構成されているため、装着者が歩行するときに「かかと部分」を地面から蹴り上げることで前進する動作に対応して靴底が湾曲しやすく、したがって歩行モードにおける快適な歩行を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態のローラスケートの側面図である。
【図2】同ローラスケートの正面図である。
【図3】図1に示されたローラスケートの底面図である。
【図4】図1に示されたローラスケートの反対側の側面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態のローラスケートを示す図である。
【図6】図5に示されたローラスケートの底面図である。
【図7】図5および図6のローラスケートの歩行時の状態を示す図である。
【図8】本発明のさらに他の実施の形態のローラスケートの側面図である。
【図9】図8に示されたローラスケートの反対側の側面図である。
【図10】図9に示されたローラスケートの底面図である。
【図11】本発明のさらに他の実施の形態のローラスケートの側面図である。
【図12】図11に示されたローラスケートの反対側の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1〜図4に示されるローラスケートにおいて、11は靴本体、12はその靴底としての基材部である。基材部12は、たとえば合成ゴムにより靴本体11と一体に厚肉で形成されている。
【0011】
図1〜4に示されたローラスケートは右足に装着するものであるが、その靴底を構成する基材部12における外側の位置には、基材部12から下方に突出するように図示のように基材部12と一体あるいは図示は省略するが基材部12とは別体に形成された摩擦接触部材13が、靴の長さ方向に沿って形成されている。摩擦接触部材13の下端には、地面などの歩行面14に接する接触面15が形成されている。図2に示すように、接触面15を形成するために、基材部12よりも歩行面14に対する摩擦係数が大きくなる部材10を、摩擦接触部材13の下端に貼り付けなどにより取り付けることもできる。
【0012】
靴底を構成する基材部12における内側の位置には、傾斜ローラ16が設けられている。詳細には、厚肉の基材部12における内側の位置の「つま先部分23」と「かかと部分28」とには、それぞれ下向きに開口する凹部17が、外向きに傾斜した状態で形成されている。凹部17には、軽金属や硬質樹脂によって形成されたブラケット18が、収容状体で取り付けられている。ブラケット18には、幅広のローラ19が、回転自在に支持されている。すなわちローラ19は、その回転軸心20が靴の中心部から外側部に向かって上向きに傾斜した状態で、基材部12に取り付けられている。21はローラ19における内側のエッジであり、歩行時には摩擦接触部材13の接触面15とこのエッジ21とが歩行面14に接触するように構成されている。図2に示すように、摩擦接触部材13と傾斜ローラ16との間には、上向きの空間部22が形成されている。
【0013】
23は、ローラスケートのつま先部分である。つま先部分23と、このつま先部分23よりも後側の部分との境界部における摩擦接触部材13の部分には、下向きに開口した切欠部24が形成されている。切欠部24はその奥部が靴本体11の側方から見て円弧状となるように形勢されている。25はその円弧状部である。また切欠部24は、その開口部26が靴本体11の側方から見て先広がり形状すなわち開先形状になるように形成されている。
【0014】
図5〜図6は、本発明の他の実施の形態のローラスケートを示す。すなわち、図1〜図4に示されたローラスケートは、靴本体の長さ方向に沿った前後の二箇所に傾斜ローラ16が設けられたものであったが、この図5〜図6に示されたローラスケートは、前後の3箇所に傾斜ローラ16が設けられている。詳細には、つま先部分23とその直後の部分とにおいて、切欠部24を間に挟むようにして、一対の傾斜ローラ16、16が設けられている。またかかと部分28に残りの一つの傾斜ローラが設けられている。
【0015】
図1〜図4に示されたローラスケート、および図5〜図6に示されたローラスケートでは、図2に示される状態で摩擦接触部材13とローラ19のエッジ21とをともに歩行面14に接触させることで、摩擦接触部材13が摩擦力により歩行面14に対して相対移動しないため、ローラ19の回転も阻止される。これにより、普通の靴により歩行する場合と同様に歩行することが可能な「歩行モード」とすることができる。そして、この状態から靴本体11を傾けることにより、摩擦接触部材13を歩行面14から浮かすとともにローラ19の踏面27を走行面に接地させることができる。これにより、普通のローラスケートと同様のローラ19による「スケーティングモード」すなわち「走行モード」とすることができる。
【0016】
歩行モードにおける図5〜図6のローラスケートの挙動は、図7に示すようになる。すなわち、まず図7の右端に示すように「かかと部分28」における摩擦接触部材13と傾斜ローラ16とが歩行面14に接触し、その後に、図示は省略するが摩擦接触部材13の全面とすべての傾斜ローラ16、16、16のエッジ21とが歩行面14に接触する。次に、かかとの蹴り上げによって、図7の中央に示すように「かかと部分28」が歩行面14から浮き上がる。すると、これにつれて、つま先部分23における摩擦接触部材13と傾斜ローラ16は歩行面14に接触したままであるが、それよりも後側の摩擦接触部材13と傾斜ローラ16とは、歩行面14から離れる。このとき、図示のように、靴底を構成する基材部12は、つま先部分23と、このつま先部分23よりも後側の部分との境界部を中心として、「く」の字形に弾性変形する。このとき、摩擦接触部材13も同様に「く」の字形に弾性変形する。そして、このとき、摩擦接触部材13には、「く」の字形に弾性変形するときの屈曲部に切欠部24が形成されているため、基材部12に揃った弾性変形を容易に行うことができる。したがって、装着者が歩行するときに「かかと部分28」を走行面14から蹴り上げることで前進する動作に対応して靴底が湾曲しやすく、このため歩行モードにおける快適な歩行を実現することができる。
【0017】
図7の中央に示す動作の次は、図7の左端に示すように「つま先部分23」の蹴り上げによる前進が行われる。このときも、基材部12は図示のように「く」の字形に弾性変形することになるが、同様に摩擦接触部材13が切欠部24を屈曲中心として「く」の字形に弾性変形するため、靴底を容易に湾曲させることが可能である。
【0018】
切欠部24は、適宜の深さに形成することができる。あるいは、切欠部24が基材部12に到達して、切欠部24の奥部には摩擦接触部材13の構成材料が存在しないようにすることもできる。あるいは、摩擦接触部材13において、切欠部24の奥部は、それ以外の部分に比べて弾性変形しやすい別の材料で構成することもできる。
【0019】
図8〜図10は、本発明のさらに他の実施の形態のローラスケートを示す。このローラスケートは、靴本体11に相当するものを有さず、靴底に該当する基材部12の上面が露出した構成となっている。そして、基材部12にはベルト30が設けられており、このベルト30を用いて、普通の靴31を基材部12に取り外し自在に固定できるように構成されている。このような構成によれば、任意の靴を履いた状態で、その靴を基材部12に固定してローラスケーティングを行うことができる。
【0020】
基材部12は、靴の長さ方向に長さ調整可能とすることができる。つまり、靴31のサイズに合わせた適宜の長さに調整可能な構成とすることができる。これによれば、基材部12として、たとえば「大」「中」「小」の3種類程度を準備しておくだけで、すべてのサイズの靴31に合わせて長さ調整することが可能である。
【0021】
それ以外の構成は、図1〜図7の実施の形態のものと同様とすることができる。
これに対して、図8〜図10に示した実施の形態では、図1〜図7の実施の形態のものとは異なる構成を採用している。すなわち、基材部12には剛性部材としての板状体32が固定されており、この板状体32に、摩擦接触部材13と傾斜ローラ16とが取り付けられている。傾斜ローラ16は、図1〜図7の実施の形態のもののように厚肉の基材部12の内部にはまり込んでいるのではなく、ブラケット18が板状体32に取り付けられて、その全体が板状体32から突出した構成とされている。摩擦接触部材13は、同様に切欠部24を有する。あるいは摩擦接触部材13は、図8〜図10において仮想線で示すように、切欠部24よりもつま先側の部分が存在しない構成とすることもできる。つまり、摩擦接触部材13は、つま先部分23を除いたそれよりも後側の部分のみに形成されている構成とすることもできる。
【0022】
板状体32は、軽金属や硬質樹脂などによって形成することができる。そして板状体32は、つま先部分23とこのつま先部分23よりも後側の部分との境界部には存在しないように構成されている。すなわち、板状体32は、つま先部分23とこのつま先部分23よりも後側の部分との境界部において、適当な幅の切れ目33を有した構成とされている。
【0023】
このような構成によると、摩擦接触部材13と傾斜ローラ16とは、板状体32により確実に支持されることで、十分にその機能を発揮可能である。かつ板状体32は切れ目33を有することから、歩行時に、靴底を構成する基材部12が、つま先部分23とこのつま先部分23よりも後側の部分との境界部を屈曲中心として「く」の字形に弾性変形することを阻害しない。このため、歩行時に基材部12が湾曲しやすく、歩行モードにおける快適な歩行を実現することができる。切れ目33は、図示のような空隙として形成することが可能であるほかに基材部12と同様の弾性変形しやすい材料を充填することも可能である。あるいは、板状体32を樹脂にて成形する場合には、つま先部分23とこのつま先部分23よりも後側の部分との境界部すなわち歩行時に屈曲する部分を弾性変形しやすい材料で構成するとともに、それ以外の部分を、摩擦接触部材13と傾斜ローラ16とを確実に支持するために硬質の材料で形成し、かつ両者を一体化した構成とすることもできる。
【0024】
図11および図12は、本発明のさらに他の実施の形態のローラスケートを示す。上述の図8〜図10の実施の形態では基材部12とベルト30とを備えた構成であることにより、任意の靴を取り付けてローラスケート化できるものを例示したが、この図11および図12の実施の形態のローラスケートは、図1〜図7に示したものと同様に、靴本体11と基材部12とが一体に構成されたものである。それ以外の構成およびその機能は、図8〜図10の実施の形態のものと同様である。
【0025】
図1〜図12には、ローラスケートとして、切欠部24以外の部分で摩擦接触部材13が比較的長い範囲に存在するものを示した。しかし、摩擦接触部材13は、傾斜ローラ16に対応して形成されていれば足り、たとえば図示のように切欠部24よりも後側すなわち切欠部24よりも「かかと部分28」の側において長さ方向に連続して形成する必要は無い。つまり、傾斜ローラ16の存在する部分においてローラ19のエッジ21と摩擦接触部材13とが歩行面に接触していれば、歩行機能を達成するために必要かつ十分であり、それ以外の部分には摩擦接触部材13が形成されていなくても問題は無い。むしろ、その方が、不要な部分に摩擦接触部材13が形成されることを防止できて、ローラスケートの軽量化およびコストダウンを図るうえで有利である。また、摩擦接触部材13が歩行面14上の障害物に接触する可能性を低減することもできる。
【符号の説明】
【0026】
12 基材部
13 摩擦接触部材
14 歩行面
16 傾斜ローラ
21 エッジ
22 空間部
23 つま先部分
24 切欠部
25 切れ目
27 踏面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴底に対応する部位に設けられた基材部と、
靴底における外側の位置で、靴の長さ方向に沿って基材部から下方に突出するように形成された摩擦接触部材と、
靴底における内側の位置で、靴の長さ方向に沿って複数設けられた傾斜ローラと、
摩擦接触部材と傾斜ローラとの間において上向きに形成された空間部とを有し、
歩行モードでは摩擦接触部材と傾斜ローラの内側エッジとが歩行面に接触するように構成され、
スケーティングモードでは、基材部が外側へ倒されることで傾斜ローラの踏面が走行面に接触しかつ摩擦接触部材が走行面に接触しないように構成されたローラスケートであって、
靴のつま先部分と、つま先部分よりも後側の部分との境界部が、この境界部以外の部分よりも弾性変形しやすいように構成されていることを特徴とするローラスケート。
【請求項2】
基材部が靴本体と一体に構成されていることを特徴とする請求項1記載のローラスケート。
【請求項3】
基材部は、靴本体と別体に構成されるとともに、靴本体を着脱自在とされていることを特徴とする請求項1記載のローラスケート。
【請求項4】
靴のつま先部分と、つま先部分よりも後側の部分との境界部において、摩擦接触部材における歩行面への接触側に切欠部が形成されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載のローラスケート。
【請求項5】
境界部以外の部分において、摩擦接触部材および傾斜ローラを支持するための剛性部材を有するとともに、境界部においては、剛性部材は有さず、かつ部材を有しない切れ目が形成されているか、または剛性部材よりも弾性変形しやすい部材を有することを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項記載のローラスケート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−94515(P2013−94515A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241793(P2011−241793)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(500514579)ジェイディジャパン株式会社 (20)