説明

ローラハース炉

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、たとえばプラズマディスプレイ用ガラス基板の焼成等の清浄な環境下で被処理物に熱処理を施すのに使用されるローラハース炉に関する。
【0002】
【従来の技術】ローラハース炉においては、プラズマディスプレイ用ガラス基板等の被熱処理物は治具に積載され、被熱処理物と治具とよりなる被搬送体が炉内を搬送されつつ被熱処理物に熱処理が施されるようになっている。
【0003】従来、ローラハース炉用ローラとしては、ステンレス鋼等の金属からなるものが用いられていた。しかしながら、このローラでは、ローラの表面に発生した酸化スケールが被搬送体の治具との摩擦によりローラから剥離して被熱処理物に付着したり、被搬送体の治具との摩擦により金属粉等が発生して被熱処理物に付着したりし、これにより被熱処理物が汚染されるという問題があった。
【0004】そこで、このような問題を解決するために、全体がセラミックスからなるローラハース炉用ローラが考えられた。しかしながら、このローラでは、その機械的耐衝撃性が不足するとともに、熱的耐衝撃性が不足して熱膨張、熱収縮に起因する割れが発生するという問題があった。しかも、ローラの支持や駆動系との連結が困難であるという問題があった。
【0005】この発明の目的は、上記問題を一挙に解決したローラハース炉を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明によるローラハース炉は複数のローラが並列状に配置されることにより構成された炉床を備えているローラハース炉であって、各ローラが、金属製ローラ本体と、ローラ本体の長さ方向に間隔をおいて複数設けられ、かつローラ本体よりも大径の被搬送体支持部とよりなり、各被搬送体支持部の少なくとも表面部がセラミックスで覆われ、隣接する2本のローラにおける被搬送体支持部のローラ長さ方向の位置がずれているものである。
【0007】上記ローラハース炉において、全てのローラの被搬送体支持部が、炉床全体として千鳥配置状となっていることが好ましい。
【0008】上記ローラハース炉において、金属製ローラ本体の表面にセラミックスコーティングが施されているのがよい。
【0009】また、上記ローラハース炉において、金属製ローラ本体の周囲に、複数のセラミックスチューブが長さ方向に間隔をおくように嵌め被せられて固定され、このセラミックスチューブが被搬送体支持部となっていることがある。
【0010】
【作用】各ローラが、金属製ローラ本体と、ローラ本体の長さ方向に間隔をおいて複数設けられ、かつローラ本体よりも大径の被搬送体支持部とよりなり、各被搬送体支持部の少なくとも表面部がセラミックスで覆われ、隣接する2本のローラにおける被搬送体支持部のローラ長さ方向の位置がずれていると、被搬送体は被搬送体支持部に支持され、ローラ本体とは接触することがないので、ローラ本体からの金属粉等の発生が防止される。しかも、金属製ローラ本体に被搬送体支持部が設けられ、被搬送体支持部の少なくとも表面部がセラミックスで覆われていると、全体がセラミックスで形成されたものに比べて機械的耐衝撃性および熱的耐衝撃性が向上する。また、ローラ本体の被搬送体支持部が設けられていない部分を利用してローラを支持したり、駆動系に連結したりすることができる。さらに、金属製ローラ本体に、これよりも大径の被搬送体支持部が長さ方向に間隔をおいて複数設けられていると、被搬送体は被搬送体支持部に支持されるので、被搬送体とローラとの接触面積が小さくなる。
【0011】また、ローラハース炉において、金属製ローラ本体の表面にセラミックスコーティングが施されていると、ローラ本体からの酸化スケールの発生が防止される。ローラ本体の表面にセラミックスコーティングが施されていないと、ローラ本体の表面に酸化スケールが発生し、これが何等かの理由によりローラ本体から剥離して被搬送体の被熱処理物に付着するおそれがある。
【0012】さらに、金属製ローラ本体の周囲に、複数のセラミックスチューブが長さ方向に間隔をおくように嵌め被せられて固定され、このセラミックスチューブが被搬送体支持部となっていると、ローラ本体の熱膨張、熱収縮に起因するセラミックスチューブの割れが防止される。ローラ本体におけるローラを支持したり、駆動系に連結したりするための両端部を除いた部分の全長にわたってセラミックスチューブが嵌め被せられて固定されていると、ローラ本体とセラミックスチューブとの熱膨張率の差により、熱膨張、熱収縮に起因してセラミックスチューブが割れるおそれがある。
【0013】
【実施例】以下、この発明の実施例を、図面を参照して説明する。
【0014】図1および図2はこの発明によるローラハース炉を示し、図3はローラを示す。なお、以下の説明において、図1および図2の左右を左右というものとし、図2の上側を前、これと反対側を後というものとする。
【0015】図1および図2において、ローラハース炉(1) は、基台(2) 上に載置された炉殻(3) と、炉殻(3) 内に設けられたマッフル(4) と、マッフル(4) 内に設けられた炉床(5) とを備えている。
【0016】炉殻(3) は、ヒータを内蔵した複数のブロック(6) により形成されている。マッフル(4) は、炉殻(3) の底壁(3a)上に左右方向に間隔をおいて立設された耐熱ガラス製の左右両側板(4a)と、炉殻(3) の底壁(3a)上に耐熱材(7) を介して載置された耐熱ガラス製の底板(4b)と、左右両側板(4a)の上端部を貫通して炉殻(3)の左右両側壁(3b)に固定されているセラミックスチューブ(8) に支持された天板(4c)とよりなる。炉床(5) は、左右方向に伸びる複数のローラ(9) が前後方向に並んで配置されることにより構成されている。各ローラ(9) の左右両端部は、マッフル(4) の左右両側板(4a)および炉殻(3) の左右両側壁(3b)を貫通して外方に伸びており、その両端に設けられた軸部(9a)が軸受(11)を介して基台(2) 上に設けられた支持部材(12)に回転自在に支持されている。なお、図示は省略したが、すべてのローラ(9) は、その一端部の軸部(9a)が公知の駆動系に連結されており、駆動系により回転駆動されるようになっている。
【0017】ローラ(9) は、外周面に酸化物系セラミックスコーティングの施された金属製、たとえばステンレス鋼製ローラ本体(13)と、ローラ本体(13)の周囲にその長さ方向に間隔をおいて嵌め被せられて固定された複数のセラミックスチューブ(14)とよりなる。セラミックスチューブ(14)は、たとえばアルミナ、ムライト、石英等により形成されている。図3に示すように、セラミックスチューブ(14)は、ローラ本体(13)の周囲に嵌め被せられた後、セラミックスチューブ(14)の周壁を外側から貫通した、たとえばステンレス鋼からなるねじ(図示略)をローラ本体(13)に形成されたねじ穴(図示略)にねじ嵌めることにより、ローラ本体(13)に固定されている。このとき、ねじの頭部は、セラミックスチューブ(14)の外周面に形成された凹所(図示略)内に収納されるようになっている。そして、セラミックスチューブ(14)により、ローラ本体(13)よりも大径の被搬送体支持部(15)が形成されている。隣接する2本のローラ(9) においては、セラミックスチューブ(14)の左右方向の位置はずれており、炉床(5) 全体としてセラミックスチューブ(14)が千鳥配置状となるようになっている。
【0018】上記のようなローラハース炉(1) において、たとえば、プラズマディスプレイ用ガラス基板等の被熱処理物(S) は、耐熱ガラスとアルミナ等のセラミックスにより形成された治具(A) に多段状に複数載せられ、被熱処理物(S) と治具(A) とよりなる被搬送体(X) がセラミックスチューブ(14)に支持された状態で炉床(5)上を搬送され、被熱処理物(S) に熱処理が施される。
【0019】上記実施例においては、ローラ本体(13)の周囲にセラッミクスチューブ(14)を嵌め被せて固定することにより被搬送体支持部(15)が形成されているが、これに限るものではなく、たとえばローラ本体(13)の周囲に、外周面にセラミックスコーティングが施された金属チューブを嵌め被せて固定することにより被搬送体支持部が形成されていてもよく、あるいはローラ本体(13)に一体的に大径部を形成し、大径部の外周面にセラミックスコーティングを施すことにより被搬送体支持部が形成されていてもよい。
【0020】但し、被搬送体支持部の表面にセラミックスコーティングが施されている場合、被搬送体(X) との接触摩擦により、コーティングが剥がれるおそれがあるので、上記実施例のように、ローラ本体(13)にセラミックスチューブ(14)が嵌め被せられて固定されていることが好ましい。
【0021】
【発明の効果】この発明のローラハース炉によれば、上述のように、ローラ本体から酸化スケールが発生したとしても、これが被搬送体の被熱処理物に付着するのを防止できるとともに、ローラ本体からの金属粉等の発生が防止されて金属粉等が被搬送体の被熱処理物に付着するのが防止される。したがって、被熱処理物の汚染を防止することができる。
【0022】また、全体がセラミックスで形成されたものに比べて機械的耐衝撃性が向上するので、ローラの破損を防止することができる。また、全体がセラミックスで形成されたものに比べて熱的耐衝撃性が向上するので、熱膨張、熱収縮に起因する割れを防止することができる。さらに、ローラ本体の被搬送体支持部が設けられていない部分を利用してローラを支持したり、駆動系に連結したりすることができるので、その作業が簡単になる。
【0023】また、金属製ローラ本体の表面にセラミックスコーティングが施されているので、ローラ本体からの酸化スケールの発生が防止され、酸化スケールの被熱処理物への付着が完全に防止される。
【0024】さらに、金属製ローラ本体の周囲に、複数のセラミックスチューブが長さ方向に間隔をおくように嵌め被せられて固定され、このセラミックスチューブが被搬送体支持部となっているので、ローラ本体の熱膨張、熱収縮に起因するセラミックスチューブの割れが防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるローラハース炉の横断面図である。
【図2】この発明によるローラハース炉の部分水平断面図である。
【図3】この発明によるローラハース炉に用いられるローラの一部分を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
(1) ローラハース炉
(9) ローラ
(13) ローラ本体
(14) セラミックスチューブ
(15) 被搬送体支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数のローラが並列状に配置されることにより構成された炉床を備えているローラハース炉であって、各ローラが、金属製ローラ本体と、ローラ本体の長さ方向に間隔をおいて複数設けられ、かつローラ本体よりも大径の被搬送体支持部とよりなり、各被搬送体支持部の少なくとも表面部がセラミックスで覆われ、隣接する2本のローラにおける被搬送体支持部のローラ長さ方向の位置がずれているローラハース炉
【請求項2】 全てのローラの被搬送体支持部が、炉床全体として千鳥配置状となっている請求項1記載のローラハース炉
【請求項3】 金属製ローラ本体の表面にセラミックスコーティングが施されている請求項1または2記載のーラハース炉
【請求項4】 金属製ローラ本体の周囲に、複数のセラミックスチューブが長さ方向に間隔をおくように嵌め被せられて固定され、このセラミックスチューブが被搬送体支持部となっている請求項1、2または3記載のローラハース炉

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【特許番号】第2961295号
【登録日】平成11年(1999)8月6日
【発行日】平成11年(1999)10月12日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−316316
【出願日】平成6年(1994)12月20日
【公開番号】特開平8−176649
【公開日】平成8年(1996)7月9日
【審査請求日】平成9年(1997)6月12日
【出願人】(000167200)光洋リンドバーグ株式会社 (180)
【参考文献】
【文献】特開 平1−255618(JP,A)
【文献】実開 昭59−117662(JP,U)
【文献】実公 平5−48075(JP,Y2)
【文献】実公 昭62−34995(JP,Y2)
【文献】実公 昭63−20403(JP,Y2)