説明

ロール状インクジェット用記録媒体

【課題】外観を損なうことなく、効率良くロール状インクジェット用記録媒体を提供する。
【解決手段】接合テープ6が基材層4と粘着層5からなり、基材層のロールの巻き取り方向に対する端部が、接着層の巻き取り方向に対する端部よりも0.25mm以上長く、前記接合テープの基材層と粘着層の厚さの和が該インクジェット用記録媒体の厚さ以下であり、接合テープの厚さに占める基材層の厚さが20.0%以上であることを特徴とするロール状インクジェット用記録媒体3。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は支持体の両面にインク受容層を有し、ロール状に巻き取られた形状で供されるロール状インクジェット用記録媒体に関するものである。さらに詳しくは、表裏両面の外観を損なうことなく、該記録媒体の紙片同士を接合したロール状インクジェット用記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、インク等の液体を種々の作動原理により飛翔させて、紙等の記録媒体に付着させ、画像、文字等の記録を行うものである。この記録方法は、高速低騒音、多色化が容易であり、記録パターンの融通性が大きく、現像が不要である等の特徴があり、広く普及している。このような背景において、銀塩写真や製版方式の多色印刷と比較して遜色ない画像を、手軽にインクジェット記録方式で出力する事が求められるようになってきており、インクジェット用記録媒体に関しても、その構造や特性に関する改良が検討されている。
【0003】
インクジェット記録等に用いられる記録用媒体については、これまでに数多くの形態のものが提案されてきた。例えば、特許文献1には、インクの吸収速度を向上させるために比表面積の大きなシリカ系顔料を主成分とした空隙を有する層をインク受容層として設けた記録用紙が開示されている、また、記録用紙のインクを受ける部分の構成材料として、近年アルミナ水和物が注目を集めつつある。これは、アルミナ水和物が正電荷を有している為にインク染料の定着性が良い為に発色性が高く、しかも高光沢性の画像が得られるなどの特徴を有している為である。このようなアルミナ水和物を用いた記録用紙については、例えば、特許文献2に記載がある。また、特許文献3には、インク受容層にアルミナ水和物粒子を含有させた記録用紙が開示されている。
【0004】
ところで、近年では、デジタルカメラやインクジェットプリンタが急速に普及するにあたり、ホームユースに供されるインクジェット用記録媒体として、印画紙などの用紙サイズに断裁された枚葉状の記録媒体が広く普及している。しかし、コンピュータやインクジェットプリンタの高速化、高精細化が進むにつれ、従来以上の印刷速度が求められるようになり、プリンタ内に連続的に記録媒体を供給できるロール状インクジェット用記録媒体をプリンタに装着し、印字後に要求される用紙サイズに断裁するようになってきている。
【0005】
また、最近では、プリンタの搬送システムの向上によって記録媒体の両面に印字可能なインクジェットプリンタが広く普及するとともに、デジタルカメラで撮影した多量の画像をまとめて両面印字し、得られた両面印字物をそのまま製本加工して、アルバム形態で保存するといったユーザーの要望も高まっている。
【0006】
このような要求を満足する記録媒体として、表裏両面にインク受容層を設けた記録媒体をロール状に巻き取ったロール状インクジェット用記録媒体がある。ただし、表裏両面にインク受容層を設けた記録媒体では、両面に印字をするために表裏両面への光沢性や平滑性、異物や故障の有無といった外観上の要求が非常に高いものとなり、これを満足する記録媒体を連続的に得ることは非常に難しい。また、インク受容層で比較的高価な材料を使用するために従来の片面にインク受容層を設けた記録媒体よりも高価になる。このため、ロール状インクジェット用記録媒体を効率的に利用するためには、外観が劣った分を除去した紙片や、異なる製造ロットの紙片同士を繋ぎ合わせて一つのロール状インクジェット用記録媒体とすることが望ましい。
【0007】
ロール状に巻き取る記録媒体においては、一定の厚み範囲外の接合テープを使用すると、記録媒体と接合テープの厚み差による段差によって、上巻き側および下巻き側の記録媒体に押し跡、擦れ傷の発生や、粘着剤のはみ出しといった外観不良の原因となる。例えば、特許文献4には、支持体の厚みに対して一定の厚みのスレッドを抄き込むことで、記録媒体のボコツキ、および巻き取り時の波打(コルゲート)がないインクジェット用記録媒体が開示されている。
【0008】
一方、インクジェット用記録媒体では、白紙の保存安定性に関して、黄変の発生といった問題も課題となっている。例えば、特許文献5には、耐ガス性およびファイルに閉じて保管する場合や、粘着テープをインク受容層に貼着した場合に発生する白紙の黄変を改良するために、特定の構造を有する化合物をインク受容層に含有させたインクジェット用記録媒体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭52−9074号公報
【特許文献2】特開平7−232473号公報
【特許文献3】特開平10−94754号公報
【特許文献4】特開2002−264488号公報
【特許文献5】特開2003−103909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ロール状インクジェット用記録媒体において、2つ以上の紙片を繋ぎ合わせる際に使用した接合テープの貼り付け部分周辺に白紙の黄変が発生するとともに、ロール状に巻き取った際に接合テープが触れる上巻きまたは下巻き側にある反対面のインク受容層に対しても白紙の黄変が発生していた。特許文献5では、インク受容層の白紙の黄変を改善するために、特定の硫黄化合物をインク受容層中に含有させる方法が提案されているものの、処方設計の変更などにより、印字濃度やインク吸収性などの様々な印刷特性への弊害確認を行なう必要性があった。
【0011】
また、接合テープの総厚みによっては、前記上巻きまたは下巻き側にある反対面のインク受容層の表面に接合テープの押し跡による凹みや擦れ傷、粘着剤のはみ出しが発生して、白紙の黄変と同様に外観不良の原因となっていた。これらの問題は解決すべき課題である。
【0012】
よって、本発明の目的は、支持体の両面に多孔質インク受容層を設けた記録用媒体をロール状に巻き取る際に、2つ以上の紙片を接合テープで介して繋ぎ合わせたロール状記録用媒体において、処方設計上の変更や製造装置を改造することなく白紙の黄変や接合テープの押し跡や擦れ傷および粘着剤のはみ出しを低減し、外観を損なうことなく、効率良くロール状インクジェット用記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題は以下本発明によって達成できる。
【0014】
支持体の両面にインク受容層を設けた記録媒体をロール状に巻き取り、該記録媒体が2つ以上の紙片からなり、その紙片を片面もしくは両面側から接合テープを介して記録媒体を重ねることなく貼り合せたロール状記録媒体において、該接合テープが基材層と粘着層からなり、基材層のロールの巻き取り方向に対する端部が、接着層の巻き取り方向に対する端部よりも0.25mm以上長いことを特徴とするロール状インクジェット用記録媒体である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のロール状インクジェット用記録媒体は、支持体の両面にインク受容層を設けた記録媒体をロール状に巻き取る際に、2つ以上の紙片を接合テープで繋ぎ合わせたロール状記録媒体において、処方設計上の変更や製造装置を改造することなく、白紙の黄変や接合テープの押し跡や擦れ傷および粘着剤のはみ出しを低減させて外観を損なわずに効率良くロール状インクジェット用記録媒体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のインクジェット用記録媒体の断面図である。
【図2】本発明の2つ以上の紙片のインクジェット用記録媒体の各端部を、重ね合わせることなく接合テープを貼り付けて繋ぎ合わせたインクジェット用記録媒体を示す図である。
【図3】本発明のインクジェット用記録媒体を、紙管の外周に巻き付けたロール状インクジェット用記録媒体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の好ましい実施の形態の詳細を説明する。
【0018】
本発明は、図1に示すように、支持体と該支持体の表裏の両表面上にインク受容層を設けたインクジェット用記録媒体であることが好ましい。
【0019】
また、図2に示すように、2つ以上の分離した紙片からなる該インクジェット用記録媒体を、紙片の片面もしくは両面側から接合テープを介して、記録媒体を重ねることなく貼り合せる。この際、該接合テープが基材層と粘着層からなり、該基材層のロールの巻き取り方向に対する端部が、該接着層の巻き取り方向に対する端部よりも0.5mm以上長くなるようにする。このとき、接合テープの基材層と粘着層の厚さの和がインクジェット用記録媒体の厚さ以下であり、接合テープの厚さに占める基材層の厚さが20.0%以上であるロール状インクジェット用記録媒体であることが好ましい。そして、該接合テープにより繋ぎ合わされた該インクジェット用記録媒体を図3に示すように、紙管などの中心材の外周に巻き付けることで、ロール状のインクジェット用記録媒体とする。
【0020】
このとき、該基材層の端部が該接着層の端部よりも長いため、接合テープとしての端部の厚さが段階的に変化する。そのため、ロール状に巻き取られた記録媒体に貼り付けた接合テープの端部が、上巻き側および下巻き側のインク受容層に接するときに、その端部にかかる押し圧が低減されることで押し跡や擦れ傷が低減するものと推察される。また、基材層の端部が粘着層の端部よりも長いことで、粘着層に含まれる黄変の原因物質がロール状に巻き取られた際の上巻き側および下巻き側のインク受容層へ拡散することを防ぐことで、白紙の黄変が低減するものと推察される。
【0021】
本発明は更に、インク受容層が、シリカ、アルミナおよび/またはアルミナ水和物の少なくとも一種以上の無機顔料と、バインダ樹脂からなるロール状インクジェット用記録媒体であることが好ましい。
【0022】
以下、本発明の実施形態の詳細について説明する。
【0023】
<支持体>
支持体として使用できる原材料は特に限定されず、紙、レジンコート紙、プラスチックフィルムなどが使用可能である。支持体としての紙は、LBKP、NBKP、NBSP等の化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGP等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ、等の木材パルプや、ケナフ、バガス、コットンなどの非木材パルプ、等のパルプと従来公知の顔料を主成分として、バインダ及びサイズ剤や定着剤、歩留まり向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤等の各種添加剤を1種類以上用いて混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の各種装置により抄造された原紙を用いることが好ましい。また、上記原紙基材には、澱粉、ポリビニルアルコール、カルボキシルメチルセルロース等の高分子化合物を含有する液をサイズプレス、ゲートロールコーター等で含浸・塗布した基材を用いることが好ましい。
【0024】
支持体としてのレジンコート紙は、原紙または塗工の片面または両面に対して、高密度、低密度ポリエチレン、ポリエステルなどの樹脂をTダイなどの溶融押し出し法によりコートしたものが好ましい。
【0025】
支持体としてのプラスチックフィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ナイロンなどの合成樹脂単独またはこれらの樹脂に顔料や染料などの添加剤を加えた合成樹脂フィルムを基材として用いることが好ましい。
【0026】
これらの支持体には、下塗り層となる塗布液を塗布する前に、必要に応じて平滑化や厚みを調整する目的でカレンダ処理を施しても良い。
【0027】
これら支持体の坪量としては、50〜300g/m程度のものが好ましいが、坪量が低いと印字後の記録媒体のコックリングや裏写り、坪量が高いとプリンタの記録媒体搬送性に問題が生じやすいため、更に好ましくは100〜250g/m程度である。
【0028】
<インク受容層>
インク受容層は、下記に挙げるような顔料と、バインダとを含む塗布液を塗布、乾燥することで形成できる。無機顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化マグネシウム等の無機顔料が挙げられ、有機顔料としては、例えば、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン粒子、マイクロカプセル粒子、尿素樹脂粒子、メラミン樹脂粒子等が挙げられる。本発明においては、インク受容層の主成分として、上記した中でも、透明性、発色性からシリカ、アルミナおよび/またはアルミナ水和物が好ましい。これらは単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。中でも染料定着性、透明性、印字濃度、発色性、光沢性の点で特に好ましいアルミナ水和物を用いる。インク受容層を形成するための塗工液中におけるアルミナ水和物の含有率は、塗工液中に含有させる無機顔料の100〜60質量%とすることが好ましい。アルミナ水和物の含有量がこの範囲に満たない場合は、上記アルミナ水和物に起因して得られる性能が低下する恐れがある。
【0029】
アルミナ水和物としては、例えば、下記一般式により表されるものが好適に利用できる。
【0030】
Al−n(OH)n・mH
(上記式中、nは0、1、2又は3の何れかを表し、mは0〜10、好ましくは0〜5の範囲にある値を表す。但し、mとnは同時に0にはならない。mHOは、結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水相を表すものであるため、mは整数又は整数でない値をとることができる。又、この種の材料を加熱するとmは0の値に達することがあり得る。)
インク受容層を形成するための塗工液に使用するバインダとしては、ポリビニルアルコールを用いることが好ましい。ポリビニルアルコールとしては、アルミナ水和物等の顔料の結着性の点から、ケン化度70%以上、より好ましくは、80%以上のものが好ましく、又、重合度としては、500以上のものを使用することが好ましい。ポリビニルアルコールの含有量としては顔料に対して、5〜20質量%になるようにするのが好ましい。
【0031】
上記ポリビニルアルコールの他、顔料を結着する能力のある材料であり、且つ水系塗布液を塗布した際に著しく塗布液の吸収阻害やはじきを引き起こすものでなければ特に制限なく利用できる。例えば、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉等の澱粉誘導体;カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、ポリビニルアルコール又はその誘導体;ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共重合体ラテックス;アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体等のアクリル系重合体ラテックス;エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス;或いはこれら各種重合体のカルボキシル基等の官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス;或いはこれら各種重合体にカチオン基を用いてカチオン化したもの、カチオン性界面活性剤にて重合体表面をカチオン化したもの、カチオン性ポリビニルアルコール下で重合し重合体表面に該ポリビニルアルコールを分布させたもの、カチオン性コロイド粒子の懸濁分散液中で重合を行い、重合体表面に該粒子が分布しているもの、;メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化合成樹脂等の水性バインダ;ポリメチルメタクリレート等のアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体樹脂;ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系バインダ等を挙げることができる。上記は、単独或いは複数混合して用いることができる。
【0032】
更に白色度、色調整のために蛍光染料、色顔料を併用しても構わない。記録媒体とした時に、印字画像の写真様の質感、視覚の最適化のためにはやや青白く調整することが好ましい。
【0033】
上記のインク受容層を形成する際に使用する塗布液中には、その他の添加剤として、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、浸透剤、着色顔料、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、耐水化剤、染料定着剤等を、必要に応じて適宜に含有させることができる。特に、インク受容層の形成材料中に、ホウ酸及びホウ酸塩からなる群より選ばれた1種以上を含有させることは、インク受容層のクラック発生の抑制という点から極めて有効である。
【0034】
インク受容層を形成する顔料とバインダとは、質量比で100/5〜20/100で配合されているのが好ましい。インク受容層の乾燥塗工量は、20〜60g/mの範囲にあることが好ましい。インク受容層の厚さが20g/mに満たない場合は、色素の定着性、吸収性が不充分になり鮮明で色濃度の高い記録ができないおそれがあるので好ましくない。インク受容層の厚さが60g/mを超える場合は、インク受容層の機械的強度が低下し、クラックの発生が起こりやすくなるので好ましくない。
【0035】
上記で説明したインク受容層の塗工液は、例えば各種ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ロッドブレードコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、エクストルージョン方式を用いたダイコーター、スライドホッパー方式を用いたコーター、サイズプレス等の各種塗工装置を適宜選択して用い、オンマシン、オフマシンで塗工することができる。
【0036】
また、上記塗工後の乾燥には、例えば、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機、赤外線、加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等を、適宜選択して用いることができる。
【0037】
このようにして得られるインク受容層を、支持体の表裏の両表面に設けることで、両面に印字可能なインクジェット用記録媒体が得られる。
【0038】
<接合テープ>
接合テープとして使用できる原材料は特に限定されず、基材層としては強度面や作業性から二軸延伸したポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム等が好ましい。一方、環境面を考慮して天然素材の利用や、離解性のある素材としてセロハンや紙などが好ましい。
【0039】
粘着層は、特定の条件下の接着力を生じるものであればよく、溶剤系、エマルション系、ホットメルト系などの状態で、天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル系、シリコーン系などの粘着性を有する樹脂成分を主成分とし、粘着付与剤、老化防止剤、安定剤、オイル等の軟化剤、充填剤、安定剤、顔料、着色剤等を適宜添加することか出来る。粘着層は、支持体あるいは合成樹脂層への直接塗工、不織布や紙への含浸塗工、剥離シートへ塗布、乾燥といったように、公知のコーティング方法に従って塗布、乾燥することにより得られ、これを前記基材層と貼り合わせることにより接合テープが得られる。
【0040】
<巻芯、及び巻き取り方法>
巻芯は特に限定されるものではなく、例えば、硬質紙管原紙を巻回し円筒状に加工した後、所望の長さに切断した紙管が挙げられる。紙管としては、必要に応じて表面を研磨仕上げ、あるいはウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂棟で吹き付け塗装後研磨仕上げしたものを用いると良い。紙管原紙の巻回・成形方法は特に限定されるものではなく、該原紙を所望の大きさに切断後、樹脂等を含浸させて数回平巻きにし、熱プレス等の方法により表面を硬化させる方法や、断面を台形状、平行四辺形状に加工した帯状の紙管原紙に樹脂等を含浸させた後、切断加工面を重ね合わせながら螺旋状に巻き上げ、熱プレス等の表面を硬化させる方法等が用いられる。また、全体がプラスチックできた管状のものも使用できる。更に、紙管、プラスチック管にゴム、スポンジ等クッション効果のあるものを巻き付けたものを用いても良い。
【0041】
巻芯の外径は被記録媒体の剛度との関係を満たすものであれば特に限定されるものではないが、4inch以上が好ましく、5inch以上が更に好ましい。4inch未満では選択可能な被記録媒体の剛度の数値が小さくなりすぎ、写真や、アルバムといった用途を考えた時には品位が低下する場合がある。
【0042】
本発明において、被記録媒体を巻き取る巻き取り機の方式は、特に限定されるものではないが、ゴムロール等のタッチロールを被記録媒体に押しあてながら巻き取りドラムを駆動させる方式が、蛇行等を防止する観点から好ましい。
【0043】
本発明において、巻き取り時の記録媒体にかかる張力は、2kgf/m以上、20kgf/m以下であることが好ましい。2kgf/m未満の場合には、ロール状インクジェット用記録媒体の運搬中に巻ズレ等が発生する場合がある。20kgf/mを超える場合には、記録媒体のインク受容層が変形し印字特性の不良を引き起こす場合がある。また、20kgf/mを超える場合には、巻き取り時に被記録媒体の面にかかる圧力が大きくなりすぎ、圧力によって大きな巻グセがつくことで、カールを制御しにくくなる場合があるため、好ましくない。巻き取り時の張力は、巻芯に近い内周部から外周部にかけて均一でも良いが、徐々に強くすることも巻ズレ防止とインク受容層の変形防止とを両立するのに有効である。
【0044】
(実施例)
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明の内容は実施例によって限定されるものではない。
【0045】
<ロール状インクジェット用記録媒体の評価方法)>
・白紙の黄変
接合テープを貼り付けた部位の端部および、該接合テープの端部が接するロール状の上巻きおよび/または下巻き側にあるインクジェット用記録媒体の表面の白紙部の色相を目視により評価した。
【0046】
○:白紙の黄変が発生せず、外観が良好な状態。
【0047】
△:接合テープの端部のインク受容層のみにわずかに白紙の黄変色が発生する状態。
【0048】
×:接合テープの端部のインク受容層だけでなく、接合テープが接する上巻き側または下巻き側のインク受容層の白紙の黄変が目立ち、外観不良となる状態。
【0049】
・外観評価
得られたインクジェット用記録媒体を3インチ紙管の外周に幅400mm、長さ50mで巻き取り、1日放置した後のインク受容層表面の接合テープの押し跡、擦れ傷および粘着剤のはみ出しの有無を目視観察により評価した。
【0050】
○:接合テープの押し跡、擦れ傷および粘着剤のはみ出しが無く、外観が良好な状態。
【0051】
△:インク受容層表面を注視するとわずかに接合テープの押し跡があるものの、擦れ傷や粘着剤のはみ出しは無く、外観上問題の無い状態。
【0052】
×:接合テープの押し跡、擦れ傷および粘着剤のはみ出しのいずれかが著しく発生し、外観不良となる状態。
【0053】
(実施例1)
<基紙の作製>
先ず、下記組成のパルプスラリーを作製した。
【0054】
濾水度400mlCSFの広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)90質量部。
【0055】
濾水度350mlCSFの針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)10質量部。
【0056】
次に、上記パルプスラリー100質量部に対して、軽質炭酸カルシウム10質量部、内添用サイズ剤0.1質量部を添加して紙料を調整した。この紙料を、長網抄紙機を用いて抄紙する工程において、ワイヤー上およびウェットプレスでの搾水および多筒シリンダドライヤーで乾燥した後に、サイズプレス装置で、固形分が1.0g/mとなるように酸化澱粉水溶液を含浸させ、再び乾燥させた。その後、カレンダー処理をして坪量150g/m、ステキヒトサイズ度100秒の基紙を得た。
【0057】
<インク受容層の形成>
表面処理液が支持体となる前記基紙に含浸されてすぐに、表面処理液を塗布した表面上にインク受容層を形成した。この際、以下の通りに、インク受容層(塗工層)の形成を行った。
【0058】
純水中のアルミナ水和物固形分が5質量%となるように分散させ、次いで、これに塩酸を加え、pHを4に調整してしばらく攪拌した。この後、この分散液を攪拌しながら95℃まで昇温し、この温度で4時間、保持した。そして、この温度を保持したまま苛性ソーダによりpHを10に調整し、10時間攪拌を行った。この後、分散液の温度を室温に戻し、塩酸によりpHを7〜8に調整した。
【0059】
更に、脱塩処理を行い、続いて酢酸を添加して解膠処理して、コロイダルゾルを得た。このコロイダルゾルを乾燥して得られたアルミナ水和物をX線回折により測定したところ、ベーマイト構造を示すもの(擬ベーマイト)であった。また、この時のBET比表面積は138g/m、細孔容積は0.75cm/gであった。電子顕微鏡での観察では、平板状であり、平均アスペクト比は7.4、縦横比は0.7であった。
【0060】
そして、上記で調製したアルミナ水和物のコロイダルゾルを濃縮して22.5質量%の分散液を作製した。次に、この分散液に3質量%ホウ酸水溶液を、アルミナ水和物の固形分100質量部に対してホウ酸固形分換算で0.50質量部となるように添加してホウ酸含有アルミナ水和物分散液を得た。
【0061】
次に、ポリビニルアルコールを純水に溶解して、固形分9質量%の水溶液を得た。この後、上記ホウ酸含有アルミナ水和物分散液と、先に調製したポリビニルアルコール水溶液を、スタティックミキサーでアルミナ水和物固形分と、ポリビニルアルコール固形分の比(質量比)が100:9となるように混合した。そして、この混合直後の混合液をインク受容層用の塗布液とし、これをダイコーターで乾燥塗布量が30g/mとなるように毎分30mで塗布した。そして、この塗布液を170℃で乾燥して、インク受容層を設けることで記録媒体を得た。
【0062】
上記のインク受容層を基紙の反対面に対しても同様にして塗布、乾燥することで、両面にインク受容層を設けた坪量210g/m、厚さ230μmのインクジェット用記録媒体を得た。
【0063】
<接合テープの貼り付けおよびロール巻き取り>
2つの紙片からなる前記インクジェット用記録媒体に対して、紙片を重ね合わせることなく端部を合わせ、その端部上に粘着層に50mm幅の両面接着テープ(No.501F、商品名、日東電工社製)を、基材層として幅51mm、厚さ70μmのPETフィルムを貼り合わせ、粘着層の両端部に対して、基材層端部が0.5mm長い厚さ233μmの接合テープを貼り付けて2つの紙片を繋ぎ合わせた。
【0064】
この繋ぎ合わされたインクジェット用記録媒体を、直径3インチの紙管の外周上に50m巻き付けることで、ロール状インクジェット用記録媒体を得た。なお、接合テープはロール状に巻き取った際の上巻き側の面の片面のみに貼り付け、これは紙管に巻き付け部分から25mの位置にあり、ロール状に巻き取られた際に、接合テープの上巻き側および下巻き側の両方にもインクジェット用記録媒体が巻き取られる状態であった。
【0065】
(実施例2)
接合テープをインクジェット用記録媒体の表裏の両表面に貼り付けたこと以外は実施例1と同様にしてロール状インクジェット用記録媒体を得た。
【0066】
(実施例3)
接合テープの基材層として幅51mmのPETフィルムを貼り合せて、粘着層の両端部に対して、基材層端部が0.25mm長い厚さ233μmの接合テープを貼り付けた以外は実施例1と同様にしてロール状インクジェット用記録材料を得た。
【0067】
(実施例4)
接合テープの基材層として厚さ40μmのPETフィルムを貼り合せて、厚さ200μmの接合テープを貼り付けた以外は実施例1と同様にしてロール状インクジェット用記録材料を得た。
【0068】
(実施例5)
合成非晶質シリカ(ファインシールX45、商品名、トクヤマ社製)100質量部、ポリビニルアルコール(PVA117、商品名、クラレ社製)20質量部をイオン交換水に分散して、乾燥固形分濃度20質量%の下層側のインク受容層用塗布溶液を作製し、これをエアーナイフコーターで支持体の両面に塗工、乾燥して固形分量15g/mの下層側のインク受容層を設けた。
【0069】
次に、コロイダルシリカ溶液(スノーテックスOL、商品名、粒子径40nm以上、50nm以下、固形分濃度20%、日産化学社製)を下層側のインク受容層の表面にダイコーターにて塗工、乾燥して固形分量15g/mの上層側のインク受容層を支持体の両面に設けた以外は実施例1と同様にしてロール状インクジェット用記録媒体を得た。
【0070】
なお、このときのインクジェット用記録媒体の厚さは235μmであった。
【0071】
(「ファインシール」「スノーテックス」は登録商標)
(比較例1)
接合テープの基材層として幅50mmのPETフィルムを貼り合せて、粘着層の両端部と基材層の両端部の位置を合せた接合テープを貼り付けた以外は実施例1と同様にしてロール状インクジェット用記録材料を得た。
【0072】
(比較例2)
接合テープの基材層として厚さ100μmのPETフィルムを貼り合せて、接合テープの厚さを260μmとしたこと以外は実施例1と同様にしてロール状インクジェット用記録材料を得た。
【0073】
(比較例3)
接合テープの基材層として厚さ25μmのPETフィルムを貼り合せて、粘着層の両端部と基材層の両端部の位置を合せた接合テープを貼り付けた以外は実施例3と同様にしてロール状インクジェット用記録材料を得た。
【0074】
上記実施例、比較例の液浸透性、製造適性の評価結果を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
本発明のインクジェット用記録媒体は、インク受容層の処方設計や製造装置を変更することなく、記録媒体表面の白紙の黄変を低減するだけでなく、ロール状に巻き取られた際にも接合テープの押し跡や擦れ傷および粘着剤のはみ出しによる外観を損なうことない記録媒体を得ることが可能となり、各種画像記録材料の用途に好適に応用可能であり、特にインクジェット記録用の被記録媒体に好適である。
【0077】
支持体および接合テープの厚さが同一の条件での比較において、接合テープの粘着層の端部から基材層の端部までの長さが0.5mmにある実施例1、2に対して、実施例3のようにその長さが短くなると白紙の黄変がわずかに認められるようになり、その長さが0.0mmである比較例1では白紙の黄変が劣った。
【0078】
接合テープの粘着層の端部から基材層の端部までの長さが0.5mmと同一条件の比較において、接合テープの厚さが支持体の厚さ以下である実施例1、2、4に対して、接合テープの厚さが支持体よりも大きい比較例2では押し跡や擦れ傷が発生して、外観が損なわれた。また、基材層比率が20〜30%にある実施例1、2、4、5に対して、基材層比率が13.5%である比較例3は、白紙の黄変が劣った。
【符号の説明】
【0079】
1 支持体
2 インク受容層
3 インクジェット用記録媒体
4 接合テープの基材層
5 接合テープの粘着層
6 接合テープ
7 紙管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の両面に多孔質インク受容層を設けた記録用媒体をロール状に巻き取った記録用媒体が2つ以上の紙片からなり、その紙片を片面もしくは両面側から接合用テープを介して記録用媒体を重ねることなく貼り合せたロール状記録用媒体において、該接合テープが基材層と粘着層からなり、基材層のロールの巻き取り方向に対する端部が、接着層の巻き取り方向に対する端部よりも0.25mm以上長く、前記接合テープの基材層と粘着層の厚さの和が該インクジェット用記録媒体の厚さ以下であり、接合テープの厚さに占める基材層の厚さが20.0%以上であることを特徴とするロール状インクジェット用記録媒体。
【請求項2】
前記多孔質インク受容層が、シリカ、アルミナおよび/またはアルミナ水和物の少なくとも一種以上の無機顔料と、バインダ樹脂からなることを特徴とする請求項1記載のロール状インクジェット用記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−269539(P2010−269539A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124232(P2009−124232)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】