説明

ロール状フィルムの収容容器

【課題】ロール状フィルムからフィルムを引き出す操作に注意力を要さない容器を提供する。
【解決手段】ロール状に巻かれているフィルムを収容しておく箱40に、ロールから引き出されたフィルムが通過するスリット24が形成されている。フィルムがスリット24を通過するためにフィルムの引き出し位置が安定する。フィルムを容器から引き出す際に、フィルムが重なりあったり、ロール状に巻かれているフィルムが箱から飛び出すことがなく、フィルムを引き出す操作に注意力を要さない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状に巻かれているフィルムを収容しておく容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ラップフィルムやアルミホイールやキッチンペーパなどは、ロール状に巻かれた状態で容器に収容して提供される。ロール状に巻かれているフィルム(以下では、ロール状フィルムという)を収容しておく容器は、図16に例示するように、箱本体12と蓋16で形成されている箱40で構成されている。箱本体12は、背壁2と底壁4と前壁6と左側壁8と右側壁10を備えている。蓋16は、背壁2の上縁2aから伸びており、箱本体12の上側の開口を塞ぐ位置と塞がない位置の間で開閉可能となっている。蓋16の前壁の下縁に沿って切断歯18が固定されている。
使用する際には、ロール状フィルムRの一端R1を箱本体12から引き出しておく。その一端R1をさらに引き出して使用する。
引き出したフィルムを切断する際には、蓋16で箱本体12の上側の開口を塞ぐ位置とし、引き出したフィルムを切断歯18に当てて切断する。
フィルムを箱本体12から引き出す際には、蓋16で箱本体12の上側の開口を塞がない位置とする。蓋16は箱本体12から連続している紙で製造されていることが多く、蓋16に圧力を加えない限り、紙の復元力によって蓋16は箱本体12の上側の開口を塞がない姿勢をとる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−132406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ラップフィルムやアルミホイールは、極めて薄くて腰が弱いことから扱いにくい。またラップフィルムやアルミホイールは、幅が広く、片手では左端部と右端部の両方を同時に把持することができない。多くの場合、幅方向の中央部を片手で把持してロールから引き出す。この場合、ラップフィルムやアルミホイールの左端部と右端部の位置が不安定となり、フィルムに皺がよりやすく、フィルムが重なり合いやすい。フィルムが重なり合ってしまうと、平坦なシート状の形態に戻すことがひどく厄介である。従来の容器は、注意を払って操作すれば、きれいに引き出してきれいに切断することができるが、十分な注意力を払わないで操作すると、フィルムに皺がよってフィルム同士が重なり合ってしまう事態が生じやすい。
【0005】
本発明は、あわてて操作しても、あるいは十分な注意力を払わないで操作しても、きれいに引き出してきれいに切断することができ、フィルムが重なり合ってしまう事態が生じにくい容器を提供する。
本明細書でいうフィルムは、ロール状に巻かれた状態で提供されるものであり、薄くて腰が弱いために皺がよりやすく、片手では幅方向の一部しか把持できないほどに幅広なフィルムのことをいう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ロール状に巻かれているフィルムを収容しておく容器を提供する。この容器は、ロール状に巻かれているフィルムを収容しておく箱を備えており、その箱に、ロールから引き出されたフィルムが通過するスリットが形成されている。
【0007】
ここでいうスリットは、フィルムが通過することでフィルムの通過位置を規制するものをいう。典型的には、シート状部材に形成されている切れ目をいう。しかしながら、切れ目に限定されるものでない。
例えば2枚のシート状部材を重ね合わせたときに形成される間隔も、フィルムが通過することでフィルムの通過位置を規制することができ、スリットに相当する。2本の紐状部材の間隔も、フィルムが通過することでフィルムの通過位置を規制することができ、スリットに相当する。
スリットとなる間隔の幅は、フィルムの厚み以上あればよく、スリット内でフィルムが厚み方向に変位するだけの余裕があってもかまわない。スリットとなる間隔の長さは、フィルムの幅に等しいか、それよりも若干長いことが好ましい。しかしながら、フィルムの幅よりも若干短くても、フィルムに皺が寄らないようにしながらフィルムが通過できることがあり、それもスリットに相当する。
間隔の形状は、かならずしも直線的に伸びている必要はない。湾曲していてもよいし、屈曲していてもよい。例えば、上に凸に湾曲ないし屈曲していてもよいし、下に凸に湾曲ないし屈曲していてもよいし、W字状に湾曲ないし屈曲していてもよいし、逆W字状に湾曲ないし屈曲していてもよい。波打っていてもよい。また、箱を構成する壁と壁の境界線に対して平行に伸びていてもよいし、傾斜していてもよい。
スリットを画定する壁側部材が、フィルムの左端から右端まで連続して存在している必要はない。フィルムの幅方向の中央部では、スリットを画定する壁側部材が存在しておらず、フィルムの幅方向の中央部のみを観察するとスリットがない場合もある。少なくともフィルムの左端部と右端部の通過位置を規制する部分的スリットが形成されていれば、実質的にはフィルムの通過位置を規制することができる。それもスリットに相当する。
フィルムの少なくも一部が通過することによってフィルムの通過位置を安定させるものであれば、本発明のスリットに相当する。
【0008】
スリットは、ロール状フィルムを収容する箱本体に設けられていてもよいし、蓋に設けられていてもよい。箱本体にスリットを形成されている場合は、蓋があってもよいし、なくてもよい。スリットは、箱本体ないし蓋を形成する部材で形成されていてもよいし、箱本体ないし蓋を形成する部材とは異なる部材で形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の収容容器は、フィルムの一端を箱から引き出すためのスリットを備えており、そのスリットがフィルムの引き出し位置をガイドする。フィルムの一端を、上方に引き出そうが、下方に引き出そうが、手前側に引き出そうが、体から離れる向きに引き出そうが、フィルムの引き出し位置はスリットに案内されて安定する。フィルムを少々乱暴ないし軽率に引き出しても、フィルムの引き出し位置がスリットによって安定しているために、引き出されたラップフィルに皴がよりにくく、常に皴のない状態で引き出すことができる。フィルムの使い勝手が向上する。フィルムに生じた皺を伸ばしたり、フィルム同士が重なり合ってしまった部分を引き剥がすといった面倒が要らなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施例の収容容器の斜視図。
【図2】第2実施例の収容容器の斜視図。
【図3】第3実施例の収容容器の斜視図。
【図4】第4実施例の収容容器の斜視図。
【図5】第5実施例の収容容器の斜視図。
【図6】第6実施例の収容容器の斜視図。
【図7】第7実施例の収容容器の斜視図。
【図8】第8実施例の収容容器の斜視図。
【図9】第9実施例の収容容器の斜視図。
【図10】第10実施例の収容容器の斜視図。
【図11】第11実施例の収容容器の斜視図。
【図12】第12実施例の収容容器の斜視図。
【図13】第13実施例の収容容器の斜視図。
【図14】第14実施例の収容容器の斜視図。
【図15】第15実施例の収容容器の斜視図。
【図16】従来の収容容器の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記する。
(第1特長) 蓋と背壁と底壁と前壁と上壁と左側壁と右側壁が、一枚の紙を折り曲げて形成されており、前壁と上壁が連続しており、前壁と上壁の境界近傍に境界に沿って伸びるスリットが形成されており、上壁が左側壁に隣接する位置から右側壁に隣接する位置まで連続している。上壁と左側壁は直接的には連続しておらず、上壁と右側壁も直接的には連続しておらず、上壁と背壁も直接的には連続していない。
(第2特長) 上壁に、上壁と前壁の境界から所定距離だけ隔てた位置を境界に沿って伸びる切れ目と、その切れの両端から境界に向けて伸びる切れ目が形成されており、その切れ目の内側の上壁を境界に沿って前壁側に折り曲げる。
(第3特長) フィルムは芯の周りに巻きつけられており、芯の軸線方向の距離がフィルムの幅よりも長く、芯の両端部はロール状フィルムから露出している。スリットの両端部の外側を、ロール状フィルムから露出している芯の軸線方向の距離に等しい幅の紙片が通過しており、その紙片が前壁と上壁を連続させている。
【実施例】
【0012】
第1実施例の容器は、図1に例示するように、箱本体12と蓋16を備えている。箱本体12は、背壁2と底壁4と前壁6と上壁22と左側壁8と右側壁10を備えている。蓋16は、背壁2の上縁2aから伸びており、箱本体12の上側の開口を塞ぐ位置と塞がない位置との間で開閉可能となっている。蓋16の前壁の下縁に沿って切断歯18が固定されている。箱本体12と蓋16は、一枚の連続した紙を折り曲げて形成されている。紙の復元力によって、蓋16に圧力を加えない限り、蓋16は箱本体12の上側の開口を塞がない姿勢をとる。第1実施例の箱40は、ロール状に巻かれているラップフィルムRを収容するものである。
【0013】
前壁6と上壁22は一枚の連続した紙を折り曲げて形成されている。正確に言うと、ロールから引き出されたラップフィルの左右両端の外側に位置する部分22a,22bにおいてのみ前壁6と上壁22が連続しており、残存部分22a,22bの中間にはスリット24が形成されている。スリット24は、前壁6と上壁22の境界26に沿って上壁22に形成された切込みによって形成されている。
ロール状に巻かれているラップフィルムRは芯の周りに巻きつけられており、芯の軸線方向の距離がラップフィルムRの幅よりも長く、芯の両端部はロール状ラップフィルムから露出している。左側壁8と右側壁10の距離は、芯の軸線方向の距離に等しい。残存部分22a,22bの幅は、ロール状ラップフィルムから露出している芯の軸線方向の距離に等しい。スリット24の幅は、ラップフィルムRの幅に等しい。
【0014】
使用する際には、ロール状ラップフィルムRの一端R1を箱本体12から引き出しておく。その際に、引き出されたフィルムがスリット24を通過して箱本体12から引き出されている姿勢で用いる。フィルムの引きだし位置は、スリット24によって拘束され、図示の上下方向にも左右方向にもずれることがない。
フィルムがスリット24を通過していると、フィルムRの一端R1を上向に引き出そうが、下向きに引き出そうが、左側に向けて引き出そうが、右側に向けて引き出そうが、フィルムRの引き出し位置はスリット24によって常時に安定する。少々乱暴に引きだしても、フィルムの引き出し位置がスリット24によって安定しているために、引き出されたラップフィルに皴がよりにくく、常に皴のない状態で引き出すことができ、常に皴のない状態で切断歯18によって切断することができる。
【0015】
第1実施例では、上壁22を部分的に除去してスリット24を形成しているが、スリット24を形成する上壁22の部分を除去せず、前壁6側に向けて折り曲げてもよい。そのためには、図2に示すように、上壁22と前壁6の境界から所定距離だけ隔てた位置を境界に沿って伸びる切れ目22dを上壁22に入れる。また、その切れ目22dの両端から境界に向けて伸びる切れ目22e、22fを入れる。そして、その切れ目の内側に位置している上壁22を境界に沿って前壁6の側に折り曲げる。
その結果、図2に示す箱が得られ、スリット24が形成される。また、前壁6の側に折り曲げられている部分22cは、紙の復元力によって、前壁6から離れようとする。
蓋16を被せて切断刃18でラップフィルムを切断すると、容器側に残されるラップフィルムの先端は前壁6に密着する。その結果、容器側に残されたラップフィルムの先端を摘むことが面倒なことがある。上壁22の一部22cを前壁6の側に折り曲げおくと、容器側に残されているラップフィルムの先端が前壁6から浮きあがり、ラップフィルムの先端を摘みやすくなる。スリット24と、ラップフィルムの先端を浮かせる部分22cが、一挙に形成される。なお、図2では、蓋16とロール状フィルムRの図示が省略されている。また、壁の表面が観察できる範囲を着色することによって、スリット24が形成されている様子を理解しやすくしている。スリットを形成する切り目22dは直線状に伸びていなくてもよい。スリットの形状は、ラップフィルムの左右両端部の引き出し位置を安定させるまであれば足り、ラップフィルムの先端を前壁から浮きあがらせるのに有利な形状を採用することができる。
【0016】
スリット24の位置は、前壁6と上壁22の境界26に接している必要はない。図3に示すように、境界26から離れた位置の上壁22側にスリット24が形成されていてもよいし、図4に示すように、境界26の上壁22側と前壁6側に跨ってスリット24が形成されていてもよいし、図5に示すように、境界26から離れた位置の前壁6側にスリット24が形成されていてもよい。なお図2以降の図面では、図示の明瞭化のために蓋16とロール状フィルムRの表示を省略している。
【0017】
上壁22を、箱本体12に後付けして形成してもよい。図6に示すように、上壁となる紙片22gを両側壁8,10に接着してもよいし、図7に示すように、上壁となる紙片22hを両側壁8,10に接着してもよいし、図8に示すように、上壁となる紙片22iを前壁6に接着してもよい。あるいは、図9と図10に例示するように、糸ないし紐30を前壁6の上縁6aに沿って張ることによってスリット24を形成してもよい。図9と図10では封筒を閉じるための紐を巻きつけて固定する治具31を利用しているが、糸ないし紐30を固定する治具はこれに限られない。糸ないし紐30は、ロール状に巻かれたフィルムを上面から押さえてロール状に巻かれたフィルムが箱本体12から飛び出してくるのを防止するものであり、上壁として機能する。
【0018】
上壁22は、図11に例示するように、左上壁22jと右上壁22kに分割されていてもよい。この場合、左上壁22jは左側壁8に連続し、右上壁22kは右側壁10に連続するようにしてもよい。図示の22lに例示するように、前壁6に接着する部分を設けることにより(22mは前壁6に接着した状態を示している)、左上壁22jと右上壁22kが上方に開かないようにすることがきる。これによっても、スリット24の左端部24aと右端部24bが形成される。左端部24aと右端部24bの間では上壁22がなく、スリット24が閉じられていないが、巻き戻されたフィルムR1の左端部がスリットの左端部24aを通過し、巻き戻されたフィルムR1の右端部がスリットの右端部24bを通過する限り、ラップフィルの収容容器からの引き出し位置を安定させることができる。収容容器からのラップフィルの引き出し位置を安定させるというスリットの機能に着目すると、スリット24が左端部24aと右端部24bに分割されていても、左端部24aから右端部24bまで連続している仮想的スリットをフィルムが通過している場合と同様の現象が得られる。左端部24aと右端部24bによって、実質的には一つのスリットが形成されているということができる。
【0019】
図12は、蓋を持たない実施例を示している。ロール状フィルムを収容する箱本体12の断面形状は四角に限定されない。多角形でもよいし、円弧面を備えていてもよい。
図示32は切れ目であり、34はそれを起こした部分である。図示の36は、切り起こし34を利用して張った輪ゴムである。輪ゴム36の間隔がスリット24を提供する。輪ゴム36は、ロール状フィルムの上方に位置している上壁でもあり、ロール状フィルムが箱本体12から飛び出すのを防止する。図6〜12に例示した実施例では、上壁にスリット形成部材を付加しているが、前壁にスリット形成部材を付加してもよい。あるいは前壁の一部を削除し、削除した部分に別部材を付加してスリットを形成してもよい。この場合は上壁があってもなくてもよい。
【0020】
図13は、帯38を前壁6の前側に配置した実施例を示している。帯38と前壁6の間の間隔がスリット24を提供する。
【0021】
図14は、上壁22にスリット24と切断刃18を成形した例を示している。上壁22に折り目22nを入れることで、上壁22に設けた切断刃18で、スリット24から引き出されたフィルムを切断することができる。
【0022】
図15は、蓋16に2本のスリット24a,24bを設けた例を示している。図15の(b)に示すように2本のスリット24a,24bをフィルムが通過するように用いる。2本のスリット24a,24bを用いると、フィルムの引き出し位置が一層に安定する。
【0023】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図壁に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図壁に例示した技術は複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0024】
R:フィルム
R1:ロール状に巻かれたフィルムから引き出された端部
2:背壁
2a:上縁
4:底壁
6:前壁
6a:上縁
8:左側壁
10:右側壁
12:箱本体
16:蓋
18:切断歯
22:上壁
24:スリット
24a:左端部
24b:右端部
26:境界
30:糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻かれているフィルムを収容しておく箱を備えており、
その箱に、ロールから引き出されたフィルムが通過するスリットが形成されていることを特徴とするロール状フィルムの収容容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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