説明

ロール状物品の梱包容器

【課題】搬送時にロール状物品を確実に固定でき、安定して収容し、かつ、その収容、取出し等の作業が簡便なロール状物品の梱包容器を提供する。
【解決手段】巻芯に巻きつけられたロール状物品50を収容するトレイ2と側壁3とからなる容器本体と、容器本体に収容されるロール状物品50の巻芯を保持する切り欠き部を備え、ロール状物品50を浮上して保持する一対の支持部材4と、支持部材4の上部に沿わせて配置され、支持部材4に保持されたロール状物品50の巻芯を上方から押さえて固定する一対の押さえ部材5と、各支持部材4の容器本体の側壁3側に巻芯を挟んで固定された柱状の一対の下部スペーサーと、各押さえ部材5容器本体の側壁3側の下部スペーサーと同位置に下部スペーサーに下端を当接させるように固定された柱状の一対の上部スペーサーと、容器本体の蓋体6と、を有するロール状物品の梱包容器1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状物品を搬送、保管等する際に用いられる梱包容器に係り、特に、搬送時にもロール状物品を容器内側面や容器内部材に接触させずに確実に保持し、かつ、収容、取出し作業が容易であるロール状物品の梱包容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂フィルム、アルミニウム箔、紙等を巻芯に巻き付けたロール状物品は、薄層状のフィルム等を巻き取っているため、何層にも重なってロール状態を形成している。このようなロール状物品は、その製品自体が薄いため、外部からの力に対しては弱いことが多く、製品が傷つかないように安定、かつ、確実に、輸送や保管等ができるように種々の梱包容器が検討されている。
【0003】
この梱包容器としては、例えば、ロール状物品の巻芯の両端を利用して宙吊り状態に維持するようにして、ロール状物品を容器と接触させないようにする梱包容器が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−104570号公報
【特許文献2】特開2003−54557号公報
【特許文献3】特開2010−89812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、単に宙吊り状態としただけでは、容器内に収容したロール状物品を搬送する際に、容器自体が傾いたり、揺れたりした場合、ロール状物品の巻芯を下方からの支持だけで固定するのが難しい場合がある。例えば、容器が横転等により大きく動いた場合には、ロール状物品が支持部から外れて動いてしまい、容器の内側面と接触して製品が傷つく問題があった。
【0006】
また、製品によってはロール状物品の重量が100kg以上と非常に重くなり、その場合、梱包容器への収容、取出しの作業が容易に行えないため、吊り上げるための専用の装置を用いる場合がある。その際、吊り上げ方法の一つとして、ロール状物品にベルト等を掛けて上方へ持ち上げる方法があるが、製品自体にベルトを掛けるのは、製品自体が傷つく場合があった。また、他の方法として巻芯にベルトを掛ける方法もあるが、巻芯を支持している部材が、多くの場合、巻芯の両端部を塞いでおり、この方法も用いる容器によって容易ではないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点を解消し、搬送時にロール状物品を確実に固定して容器内での揺動の抑制によって、ロール状物品の容器内側面や容器内部材との接触による損傷等を防止し、かつ、簡便にロール状物品の収容、取出し等の作業ができるロール状物品の梱包容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記問題点を解消するために鋭意検討した結果、ロール状物品の巻芯の支持部材及び押さえ部材を所定の関係を有する形状とすれば、容器自体が揺動しても収容されたロール状物品の容器内部における独立した揺動が防げ、さらに、収容、取出し作業時のスペースも確保できるため、安定した搬送と、円滑な収容、取出し作業が可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明のロール状物品の梱包容器は、巻芯に巻きつけられたロール状物品を収容する上部開放の容器本体と、前記容器本体の収容された前記ロール状物品の巻芯の両端近傍に対向配置され、上部に前記ロール状物品の巻芯を保持する切り欠き部を備え、該切り欠き部で前記ロール状物品を容器本体の底板から所定の間隔をあけて支持する一対の支持部材と、前記支持部材の上部に沿わせて配置され、前記支持部材の切り欠き部に保持された前記ロール状物品の巻芯を上方から押さえて固定する一対の押さえ部材と、前記各支持部材の前記容器本体の側壁側に前記ロール状物品の巻芯を挟んでその両側に鉛直方向に固定された前記支持部材と等高の柱状の一対の下部スペーサーと、前記各押さえ部材の前記容器本体の側壁側の前記下部スペーサーと同位置に前記下部スペーサーに下端を当接させるように鉛直方向に固定された前記押さえ部材と等高の柱状の一対の上部スペーサーと、前記容器本体の蓋体と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のロール状物品の梱包容器によれば、ロール状物品の巻芯の支持部材及び押さえ部材により、巻芯の外径と同じ径を有する巻芯の固定部が形成されるようにして、容器自体が揺動しても収容されたロール状物品の容器内部における独立した揺動を防ぎ、安定、確実に搬送できる。
【0011】
さらに、支持部材及び押さえ部材には、収容、取出し作業時のスペースを確保するために巻芯の端部が支持部材及び押さえ部材の水平方向外側に突出可能なようにスペーサーが設けられている。そのため、巻芯の両端部には支持部材が直接かからず、巻芯の両端部から所定の幅を空けて内側を支持部材で支持され、円滑な収容、取出し作業が可能である。このスペーサーは、容器の底板から蓋部まで鉛直方向に連続して設けられており、部材の強度を高めると同時に容器自体の強度を高め、耐荷重を高める作用も有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態であるロール状物品の梱包容器を透視的に示した斜視図である。
【図2】図1のロール状物品の梱包容器の構成を説明する図である。
【図3】支持部材、押さえ部材及び巻芯の位置関係を(a)正面方向から示した図と(b)左側面方向から示した図である。
【図4】支持部材、押さえ部材及び巻芯の位置関係を上方から示した図である。
【図5】緩衝部材を設けた場合における、支持部材、押さえ部材及び巻芯の位置関係を正面方向から示した図である。
【図6】緩衝部材の一例を示した図である。
【図7】緩衝部材の他の例を示した図である。
【図8】本発明の他の実施形態であるロール状物品の梱包容器の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
〔第1の実施形態〕
図1に示したように、本発明の一実施形態であるロール状物品の梱包容器1は、容器本体の底板を形成するトレイ2と、トレイ2上に載置され容器本体の側面を形成する側壁3と、トレイ2上に載置されたロール状物品50をその上部に受けて下方から支持する支持部材4と、支持部材に保持されたロール状物品50を上方から押さえる押さえ部材5と、容器本体の天板となる蓋体6と、から構成されている。このロール状物品の梱包容器1は、図2に示した構成からなる容器で、これらを順番に重ねていくとロール状物品50を収容した図1に示す梱包容器となる。
【0015】
トレイ2は、容器本体の底板を形成するものである。このトレイ2は、図1及び2に示したように、底板を形成する板の4辺において、鉛直方向に側板を立ち上げ、浅い箱状にすることで、後述する側壁3をその内側、所定の位置に配置できる点で好ましい。ただし、この側板は必ずしも必要なものではなく、容器本体の底板を形成できれば、単に一枚の板状体からなるトレイとしてもよい。
【0016】
側壁3は、トレイ2の上に載置してトレイ2と共に箱状の容器本体を形成する部材である。図1に示した側壁3は上下開放された四角筒状であり、容器の側面として四方を囲んでロール状物品50の収容部を形成する。また、この側壁3は、ロール状物品の収容時に後述する支持部材4及び押さえ部材5が底板に固定されていない場合には、それら部材が梱包容器内部から左右の側壁3(巻芯50aの軸方向にある側壁)に押しつけられ、部材の位置を決定するように機能する。
【0017】
なお、上記説明では、トレイ2と側壁3とを別々の部材として上部開放の容器本体を形成しているが、これらを一体的にして、底板と四方を囲んだ側壁とからなる上部開放の箱状の形状として容器本体を一つの部材として形成してもよい。
【0018】
支持部材4は、容器本体に収容されるロール状物品50の巻芯50aの両端近傍に配置され、その上部にロール状物品50の巻芯50aを保持する切り欠き部を有する一対の部材である。この切り欠き部により受け止められたロール状物品50は下方から支持され、容器本体の底板から所定の間隔をあけた宙吊り状態で支持される。このように空中に浮上させて支持すると、ロール状物品50の表面が容器の底板に接触しないため、外部からの圧力による傷やシワ等の発生を抑制できる。
【0019】
押さえ部材5は、支持部材4の上部に沿わせて配置され、支持部材4の切り欠き部に保持されたロール状物品50の巻芯50aを上方から押さえて固定するようになっている。このとき、押さえ部材5の下面は、支持部材4の上面に対応する形状(切り欠き部に対応する部分を除く)となっており、支持部材4と押さえ部材5とを上下に重ね合わせた際に安定するように加工されている。そして、押さえ部材5を支持部材4の上部に重ね合わせたとき、支持部材4の切り欠き部に対応する位置においては、巻芯50aの上部を巻芯50aを潰さない程度の力で丁度押さえられる形状となっている。
【0020】
図3は、ロール状物品50と支持部材4及び押さえ部材5との位置関係を図1の正面方向(A方向)から示した図(図3(a))と図1の左側面方向(B方向)から示した図(図3(b))である。
【0021】
この支持部材4は、例えば、図3に示したように、ロール状物品50が水平方向に容易に動かないように、巻芯50aを切り欠き部4bで受け止め、保持する。ロール状物品50を浮上したまま保持するには、例えば、切り欠き部4bの下端部から支持部材4の最下部(底板との接触部)までの距離h4を、ロールの厚みh50(巻芯の軸方向から見た時のロールの半径から巻芯外径の半径分を除いたもの)よりも大きくすればよい。
【0022】
このとき、支持部材4の切り欠き部4bとしては、巻芯50aをしっかりと受け止められるよう巻芯50aの外径に合わせてU字形状となっている。ここではU字形状を例に挙げたが、切り欠き部の形状は巻芯50aの下部を複数の点で安定に支持できればよく、特に、連続的に支持する形状、例えば、上記したU字形状以外には半円形状等が好ましい。
【0023】
そして、この切り欠き部4bと押さえ部材5の対応する部分で形成される巻芯50aの固定部分の形状は、その高さが巻芯50aの外径と同じになるように設ければ、巻芯50aの上部及び下部を押さえて固定できる。このような構造とすれば、巻芯50aは上下動が抑制され、梱包容器を搬送する際に、容器自体が揺れた場合にも、内容物であるロール状物品50が容器と一体的に動く。すなわち、ロール状物品50の容器内部での独立した揺動を抑制する。そのため、容器内でロール状物品50が容器内側面や固定部材等と接触せずに済み、ロール状物品50の受傷を防止できる。
【0024】
このとき、支持部材4と押さえ部材5とで形成される巻芯50aの固定部の高さが巻芯50の外径と同一の高さとなるように加工する。図3(b)に示したように、U字状に切り欠き部4bを設け、そのU字の高さを巻芯の外径と同一の高さとすれば、押さえ部材は切り欠き部を設けなくてよい。切り欠き部の形成は、多くの場合、これら部材の外形を加工した後に、別の加工工程を要する。そのため、一方の部材の加工だけで済ませるようにして、加工する部材点数を少なくするのがコスト等の効率性の点で好ましい。
【0025】
なお、切り欠き部4bを半円形状とした場合は、押さえ部材5の対応する部分においても半円形状の加工が必要となる。このように支持部材4と押さえ部材5において、同一の半円形状の加工を施した場合、支持部材4と押さえ部材5を重ね合わせて形成される巻芯50aの固定部は巻芯の外径と同一の形状、大きさで設けられる。
【0026】
また、支持部材4には、その容器本体の側壁3側にロール状物品50の巻芯50aを挟んでその両側に鉛直方向に固定された支持部材と等高の柱状の一対の下部スペーサー4aが設けられている。そして、押さえ部材5には、同様に、その容器本体の側壁3側にロール状物品50の巻芯50aを挟んでその両側に鉛直方向に固定された押さえ部材5と等高の柱状の一対の上部スペーサー5aが設けられている。この上部スペーサー5aは、下部スペーサー4aと同位置に、そして下部スペーサー4aに上部スペーサー5aの下端が当接するようになっている。
【0027】
これらスペーサー4a、5aは、巻芯50aを受ける支持部材4及び押さえ部材5の本体から容器本体の側壁までの距離を、所定の距離以上となるように確保する。すなわち、図4に示したように、これらスペーサー5a(4a)は、支持部材4及び押さえ部材5の本体から外側(容器本体の側壁3側)に突出するように設けられる。図4は、ロール状物品50と支持部材4及び押さえ部材5との位置関係を図1の上方(C方向)から示した部分拡大図である。なお、このように上方から見たとき、支持部材4及びスペーサー4aは、押さえ部材5及びスペーサー5aと重なっていて直接は見えない。
【0028】
支持部材4及び押さえ部材5の本体は、その外側に突出して設けられたスペーサー4a及び5aによって、側壁3と所定の距離を有するようになっている。すなわち、側壁3と支持部材4及び押さえ部材5の本体とは、少なくとも支持部材4及び押さえ部材5の側面において左右両端に設けられたスペーサー5a(4a)の幅(図4のwで示した部分)だけは空間を設けられるように配置されている。
【0029】
したがって、支持部材4本体によりロール状物品50を支持する位置は、巻芯50aの端部よりも内側を支持するようにでき、図4に示したように、巻芯50aの端部は、支持部材4の本体よりも側壁3側に突出した形で保持される。側壁に垂直方向のスペーサー5a(4a)の幅(図4のw)は巻芯50aの端部が突出できるだけの十分なスペースを確保するように設けられ、その幅は60mm以上が好ましく、80〜210mmがより好ましい。このとき、巻芯50aの端部は、支持部材4本体から突出するように配置させ、突出する長さは50mm以上が好ましく、70〜200mmがより好ましい。
【0030】
このように巻芯50aの端部を直接支持させず、巻芯の両端部からロール状物品50の吊り上げベルトを掛けられる幅を空けて内側を支持するようにして余裕を持たせれば、ロール状物品50の収容、取出し作業において、巻芯50aの端部に吊り上げベルトを掛けたり外したりが容易となる。したがって、ロール状物品の収容、取出しの際に、上部からの吊り上げ、吊り下げ作業を容易かつ確実に実行できる。なお、ここで吊り上げベルトを掛けられる幅は、上記巻芯50aの端部が支持部材4の本体から突出した長さと同一の内容を意味し、50mm以上が好ましく、70〜200mmがより好ましい。
【0031】
また、巻芯50aの端部より内側を支持部材4により支持するためには、支持部材4を予めトレイ2等の底板に、所定の配置となるように固定しておくか、固定しない場合には、側壁3の左右の側壁(巻芯50aの軸方向にあり、支持部材4及び押さえ部材5が押しつけられて部材の位置を決定する側壁)の幅を巻芯50aの長さとほぼ同一又は出し入れの際の作業的な余裕を持たせるように巻芯50aの長さよりも5mm程度大きくすればよい。
【0032】
さらに、下部スペーサー4a及び上部スペーサー5bは、図1〜4に記載したように、それぞれ固定されている部材の高さと等しい高さで鉛直方向に延びた柱状に設けられている。また、下部スペーサー4a及び上部スペーサー5aは、支持部材4及び押さえ部材5を上下に重ね合わせた際に、それらスペーサーも上下に重なり合うように設けられる。
【0033】
スペーサー4a及び5bを、上記の形状、配置とすれば、巻芯50aの端部に十分なスペースを安定して設けられると同時に、支持部材4及び押さえ部材5の強度を高め、さらに、底板から蓋体までスペーサーが補強部材として接続されるため、上方からの圧力に対して容器の強度を高められる。したがって、梱包容器を2段、3段等に積み重ねた際にも、梱包容器が変形するのを抑制でき、耐荷重を大きくする作用を有する。
【0034】
蓋体6は、ロール状物品50を収容した梱包容器1に封をし、容器本体と共に搬送、保管時に外部のごみ、チリ等による汚染からロール状物品を守る。また、この蓋体6は、側壁3に支持されるが、支持部材4及び押さえ部材5が容器内部の補強用の柱としても機能するようになっており、これら支持部材4及び押さえ部材5によっても支持される。
【0035】
上記した梱包容器を形成する素材は、従来梱包容器として用いられている素材であれば特に限定されずに用いられ、例えば、ダンボール、樹脂、金属、木材等が挙げられる。いずれか1種の素材で容器を形成してもよいし、これら素材を組み合わせて容器を形成してもよい。
【0036】
ダンボール製とした場合、軽量で安価に容器を形成できる。また、各部材の組み立て、折りたたみ、を可能な構造とすれば、搬送後に、梱包容器の移動や廃棄等において、スペースを必要以上にとらないため省スペース化を達成でき、後処理が容易である。
【0037】
樹脂製とした場合、軽量な容器を形成できる。また、ダンボール製と同様に各部材の組み立て、折りたたみ、を可能な構造とすれば、搬送後に、梱包容器の移動や廃棄等において、スペースを必要以上にとらないため省スペース化を達成でき、後処理が容易である。また、ダンボールに比べて、耐環境性に優れるため、梱包容器としての繰り返し使用に適したものとできる。ここで用いる樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、等が挙げられる。
【0038】
金属製とした場合、質量は比較的重くなるが容器の強度を非常に高くでき、ロール状物品を安全、確実に搬送できる。樹脂よりもさらに強度が高いため繰り返し使用が可能である。ここで用いる金属としては、スチール、ステンレス等が挙げられる。
【0039】
なお、収容対象となるロール状物品50は、巻芯50aにフィルム状の製品を巻きつけて形成される。ここで、巻きつけられる製品は巻芯に巻きつけられてロール品にできるものであれば特に限定されず、例えば、樹脂フィルム、感光材料、紙、布、金属箔、グリーンシート等が挙げられる。
【0040】
ロール状物品50の大きさも種々のものがあるが、それに合わせて梱包容器を形成すればよい。例えば、樹脂フィルムを巻き付ける場合には、巻芯50aとして外径100〜300mm、好ましくは150〜200mmであって、長さが1000〜1600mm、好ましくは1100〜1400mmの紙製の巻芯を用い、これに幅600〜1200mmの樹脂フィルムを巻きつけていき、図3(b)でいうh50が300〜400mmとなるようにする。このようにして得られるロール状物品は、その質量が120〜200kg程度となる。このとき、当然であるが、支持部材4はこのような質量のロール状物品でも支持する強度を有するようにする。
【0041】
また、上記したロール状物品の梱包容器1を搬送する際には、通常、パレットを用いる。パレットは、フォークリフトで保持し、搬送可能とするフォーク挿入部を有し、その上部にロール状物品の梱包容器1が載置される。このフォーク挿入部は、フォークリフトにより持ち上げて保持できるように、フォークリフトのフォークを挿入する空間として、パレットの前後左右の側面に形成されている。したがって、パレットの前後方向、左右方向のいずれの方向からもフォークリフトのフォークを挿入できる。これにより、梱包容器に直接搬送装置を接触させることなく搬送が可能で、取り扱いが容易となり、さらに、収容したロール状物品の大きさや形状等に合わせて、適切な方向、位置にて梱包容器を保持できる。
【0042】
パレットは、例えば、2枚の板状体の間に部分的に複数個の支柱を設け、フォークリフトの爪を挿入可能な空間を設けてフォーク挿入部を形成する。同時に、このように支柱を設ければパレットの強度も確保できる。また、パレットを用いた場合には、梱包容器を複数段積み上げた際に、荷重を受け止めて分散し、下の梱包容器へ局部的に外力が働かないようにできる。
【0043】
〔第2の実施形態〕
次に、上記とは異なる他の実施形態について説明する。この第2の実施形態の梱包容器は上記第1の実施形態とは、ロール状物品50と支持部材4及び押さえ部材5との間に緩衝部材7を設けた点が異なるのみで、その他の構成は同一である。図5に、本実施形態における支持部材、押さえ部材及び巻芯の位置関係を正面方向からの図を示した(第1の実施形態の図3(a)に相当)。
【0044】
ロール状物品50のロール部分を、支持部材4及び押さえ部材5により側方から保持する場合には、ロール部分と支持部材4及び押さえ部材5とが直接接触するため、部材の材料によってはロール部分が傷ついたり、しわが生じたりする等の不具合を完全に抑制できない。これは、一対の支持部材4間及び一対の押さえ部材5間の間隔をロール状物品の製品幅と一致させるのが難しく、少なからず隙間が生じてしまい、この隙間が製品の軸方向への移動を許容してしまうためである。軸方向への移動は、何重にも巻きつけられた製品の表面が、隣り合った表面と擦れて、擦り傷を生じさせる原因となる。このようにしてロール部分が受傷すると、製品として全く使用できなくなったり、一部が使用できるだけとなったり、してしまう。
【0045】
本実施形態においては、ロール状物品50と支持部材4及び押さえ部材5との間に緩衝部材を配設するので、ロール状物品50と支持部材4及び押さえ部材5との間の隙間が埋められ、ロール状物品50がガタ付かず確実に保持できる。それと同時に、柔軟性のある素材と接触させておけば、ロール状物品50を搬送時の衝撃等から守り、より安全かつ確実に、搬送を可能とする。
【0046】
ここで用いられる緩衝部材としては、従来、緩衝部材として用いられてきた弾力性を有する素材、例えば、ゴム、綿、布、発泡樹脂(発泡スチロール、発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタン等)からなる緩衝部材、気泡緩衝材、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、PVC等の樹脂材からなる緩衝部材、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等を紙に含浸したダンボールタイプのもの等が挙げられる。発泡樹脂は、発泡倍率が5〜15倍のものが好ましい。
【0047】
この緩衝部材としては、確実にロール状物品を保護し、かつ、搬送後のロール状物品の取出しの際に、巻芯50aから取り外しが容易にできる図5、6に示した形状の緩衝部材7を例示できる。図6に示したように、緩衝部材7は、発泡ポリエチレンや発泡ポリウレタン等のフレキシブルな素材で四角形の板状に形成され、中央に巻芯50aを通す穴7aが開いている。そして、この穴7aは外周部の一辺まで通じる切れ込み7bが設けられている。
【0048】
緩衝部材7は、巻芯50aの側面(巻芯50aの軸に対して垂直方向)から切れ込みを通じて嵌め込める。例えば、容器に収容前のロール状物品50の両端に、ロール状物品50を吊り上げたまま緩衝部材7を嵌めこんだ後、ロール状物品50の梱包容器への収容や、搬送後、ロール状物品を梱包容器から取出し、吊り上げた状態のまま緩衝部材7を外し、ロール状物品はそのまま所定の装置へ設置等が可能である。上記のように梱包容器の収容、取出しの際に緩衝部材7を取り付けておけば、作業時に容器やその内部部材との接触によるロール状物品50の受傷も防止できる。
【0049】
緩衝部材7の切れ込み7bは、その取り外しに重要である。この切れ込み7bがなく巻芯50aを通す穴だけ設けた場合には、巻芯50aの軸方向から嵌める形になるが、ロール状物品50の巻芯50aの端部の支持には、支持部材4や吊り上げベルトにより、常に巻芯50aの端部付近はフリーにならず、切れ込みがない場合には緩衝部材の取り外し作業がそのままでは行えない。しかし、切れ込み7bを有する緩衝部材7は、端部がフリーになっていなくても取り外しが容易である。
【0050】
また、緩衝部材としてフレキシブルでない素材を用いる場合には、図6に示した緩衝部材7の形状では、切れ込み部分に巻芯50aを通す際に生じるねじれる力により緩衝部材そのものが破壊されてしまうため、同じ形状では実用上問題があるが、図7に示すように、巻芯50aの外径と同じかそれ以上の幅を有する切り欠き8aを有する形状の緩衝部材8とすればロール状物品50を安定して保持できる。この形状の緩衝部材に用いる素材としては、樹脂積層品等が適している。
【0051】
図6、図7に示したような板状体の緩衝部材を用いる場合には、ロール状物品50のロール端部と支持部材4及び押さえ部材5との間の隙間の大きさに応じて、1枚又は2枚以上の複数枚の緩衝部材が用いられる。緩衝部材を隙間なく配置すれば、ロール状物品50が巻芯の軸方向に動かないようにできる。また、その際、緩衝部材を詰めすぎると、ロール状物品50を十分に固定して保持できるがロール部分を傷つけてしまうおそれがあるので、ロール部分を傷つけないない程度の力で保持できるように緩衝部材の厚さ、枚数を調節する。
【0052】
〔第3の実施形態〕
次に、さらに異なる他の実施形態について説明する。この第3の実施形態の梱包容器は上記第1の実施形態とは、側壁3がなく、トレイ2の側板が、支持部材4及び押さえ部材5の位置決めをする機能を有している点が異なるのみで、その他の構成は同一である。
【0053】
図8に、本実施形態のロール状物品の梱包容器の構成を示したが、第1の実施形態とは、側壁3を失くし、容器側面が開放状態となっている点が異なる。以下、この相違点についてのみ説明する。
【0054】
本実施形態では、容器本体は、底板を形成し、その底板を形成する4辺において、鉛直方向に側板を立ち上げた浅い箱状のトレイ2と後述するストレッチフィルムで形成され、鉛直方向に立ち上げた側板は支持部材4が梱包容器内部から押しつけられて、部材の位置を決定できる機能を有する。なお、このとき、蓋体6もこのトレイ2と同形状とすれば、この蓋体6により押さえ部材5が梱包容器内部から押しつけられて、部材の位置を決定できる。
【0055】
このように側面を開放状態とした場合に、上下方向に静的荷重をかける試験や、輸送時にかかるような横方向の揺動を与える試験を行った結果、第1の実施形態のように角筒状の側壁3を有する容器と遜色のない結果が得られた。よって、強度部材として側壁3を設けなくても実用上問題はない。これは、支持部材4と押さえ部材5とで十分な強度が得られており、特に、下部スペーサー4aと上部スペーサー5aが強度を補助する優れた作用を発揮しているためと考えられる。
【0056】
ただし、このような容器本体とすると、容器内部を外部雰囲気と遮断できず、そのままでは外部のごみ、チリ等により収容したロール状物品を守れない。そのため、本実施形態においては、ロール状物品50を収容したロール状物品の梱包容器に対して、その開放されている側面をストレッチフィルム(図示せず)により覆うのが好ましい。具体的には、容器側面にストレッチフィルムを巻いて、それを側壁として有する容器とすればよい。
【0057】
ストレッチフィルムで容器の四方を囲えば、容易にかつ簡便に容器の側壁を形成でき、これによりロール状物品50を外部雰囲気に晒されないようにできる。また、材料コストも低く抑えられ、廃棄物も低減できる。さらに、側壁がフレキシブルであるため輸送時に衝撃を受けて変形しても、静置すれば元通りになる。これが、例えば、ダンボールで側壁が形成されている場合には、一旦衝撃を受けて変形すると元に戻らない。なお、このような衝撃はロール状物品50に影響のない範囲で与えられるものである。このとき、透明のストレッチフィルムを用いると、収容されているロール状物品の状態がいつでも確認できるという利点も有する。
【0058】
ここで用いられるストレッチフィルムは、伸縮性のある静電気を帯びたフィルムであり、従来から梱包に用いられているフィルムが用いられる。その素材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の柔軟性を有する素材が挙げられる。
【0059】
また、本実施形態において、上記説明では、トレイ2として浅い箱状の形状を有するものを例示したが、その側板を失くし、底板のみからなる一枚の板状体として設けてもよい。このときには、支持部材4を位置決めする側板も側壁もないため、支持部材4をトレイ2に予め固定して用いる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のロール状物品の梱包容器は、ロール状物品の保管、搬送等に適したものである。
【符号の説明】
【0061】
1…梱包容器、2…トレイ、3…側壁、4…支持部材、5…押さえ部材、6…蓋体、7,8…緩衝部材、4a,5a…スペーサー、4b…切り欠き部、50…ロール状物品、50a…巻芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻芯に巻きつけられたロール状物品を収容する上部開放の容器本体と、
前記容器本体の収容された前記ロール状物品の巻芯の両端近傍に対向配置され、上部に前記ロール状物品の巻芯を保持する切り欠き部を備え、該切り欠き部で前記ロール状物品を容器本体の底板から所定の間隔をあけて支持する一対の支持部材と、
前記支持部材の上部に沿わせて配置され、前記支持部材の切り欠き部に保持された前記ロール状物品の巻芯を上方から押さえて固定する一対の押さえ部材と、
前記各支持部材の前記容器本体の側壁側に前記ロール状物品の巻芯を挟んでその両側に鉛直方向に固定された前記支持部材と等高の柱状の一対の下部スペーサーと、
前記各押さえ部材の前記容器本体の側壁側の前記下部スペーサーと同位置に前記下部スペーサーに下端を当接させるように鉛直方向に固定された前記押さえ部材と等高の柱状の一対の上部スペーサーと、
前記容器本体の蓋体と、
を有することを特徴とするロール状物品の梱包容器。
【請求項2】
前記支持部材及び押さえ部材と前記ロール状物品との間に、緩衝部材を設けた請求項1記載のロール状物品の梱包容器。
【請求項3】
前記緩衝部材が、弾性体からなり、中央に巻芯通過用の穴と、該穴から外周に通じる切れ目を有する板状の緩衝部材である請求項2記載のロール状物品の梱包容器。
【請求項4】
前記緩衝部材が、発泡樹脂製である請求項3記載のロール状物品の梱包容器。
【請求項5】
前記容器本体が、側面が開放された容器であって、その開放されている側面にストレッチフィルムを巻いて、容器内部を外部雰囲気と遮断する請求項1乃至4のいずれか1項記載のロール状物品の梱包容器。
【請求項6】
前記支持部材により巻芯を支持する位置が、巻芯の両端部からロール状物品の吊り上げベルトを掛けられる幅を空けて内側である請求項1乃至5のいずれか1項記載のロール状物品の梱包容器。
【請求項7】
前記吊り上げベルトを掛けられる幅が、50mm以上である請求項6記載のロール状物品の梱包容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−106747(P2012−106747A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255038(P2010−255038)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】