説明

ロール紙供給装置

【課題】ユーザーにとって手前側の位置を片側基準として異なる幅のロール紙をセットすることのできる簡単な構成の紙幅調整機構を備えたロール紙供給装置を提案すること。
【解決手段】ロール紙供給装置1は、ロール紙Aを保持するホルダー7と、ロール紙Aの幅方向における一方の端面に当接可能な第1鍔部11aを有する第1鍔部材11と、ロール紙Aの幅方向における他方の端面に当接可能な第2鍔部13aを有する第2鍔部材13とを備えている。第1鍔部材11および第2鍔部材13は、ロール紙Aの幅方向でホルダー7に対して位置決めされた状態で取り付けられている。ロール紙供給装置1は、第1鍔部11aの一方の面11cをロール紙Aに向けて第1鍔部材11を取り付けたときと、第1鍔部11aの他方の面11dをロール紙Aに向けて第1鍔部材11を取り付けたときとで、第1鍔部11aと第2鍔部13aとの距離とが変わるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンターなどのロール紙を供給するロール紙供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンターに供給されるロール紙が収納されたロール紙供給装置としては特許文献1、2に記載のものが知られている。特許文献1においては、ロール紙ホルダーの幅方向の両側端を規定している一方の鍔部を幅方向の位置決め基準とし、他方の側の鍔部を基準側の鍔部に対して接近する方向に移動させて、装着されるロール紙の紙幅に対応させる構成が記載されている。特許文献2においては、ロール紙の幅方向の位置決めとしては、その両側を規定しているガイド部材を、ラック・ピニオン機構によって相互に逆方向に移動させることにより、幅方向の中央を基準として、ロール紙の幅方向の位置決めを行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−040502号公報
【特許文献2】特開2003−221147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載されているように、ロール紙を、その幅方向の一方の側を基準としてロール紙ホルダーにセットする、所謂、片側基準のロール紙ホルダーにおいては、当該ホルダーの両側端を規定している左右のガイド板のうち、ユーザーの手前側に位置するガイド板を基準面としてロール紙をセットできるようにすることが望ましい。すなわち、ユーザーの使用するロール紙の幅は一般に決まっており、頻繁に変更されることは無いので、ロール紙ホルダーの奥側のガイド板の位置を変更可能にしておき、これを使用するロール紙幅に応じた位置に調整しておけば、ロール紙のセット作業においては、手前側のガイド板を決まった位置に対して着脱するのみでよいので、ロール紙の交換作業が簡単にできる。
【0005】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、ロール紙ホルダーにおけるユーザーにとって手前側の位置を片側基準として、異なる幅のロール紙をセットすることのできる簡単な構成の紙幅調整機構を備えたロール紙供給装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明のロール紙供給装置は、ロール紙を保持するホルダーと、前記ロール紙の径方向に広がるように形成され前記ロール紙の幅方向における一方の端面に当接可能な第1鍔部を有する第1鍔部材と、前記ロール紙の径方向に広がるように形成され前記ロール紙の幅方向における他方の端面に当接可能な第2鍔部を有する第2鍔部材とを備え、前記第1鍔部材および前記第2鍔部材は、前記ロール紙の幅方向で前記ホルダーに対して位置決めされた状態で取り付けられ、前記第1鍔部の一方の面を前記ロール紙に向けて前記第1鍔部材を取り付けたときの前記第1鍔部と前記第2鍔部との距離と、前記第1鍔部の他方の面を前記ロール紙に向けて前記第1鍔部材を取り付けたときの前記第1鍔部と前記第2鍔部との距離とが変わることを特徴とする。
【0007】
本発明のロール紙供給装置では、ロール紙の一方の端面に当接可能な第1鍔部を有する第1鍔部材と、ロール紙の他方の端面に当接可能な第2鍔部を有する第2鍔部材とが、ロール紙の幅方向でホルダーに対して位置決めされた状態で取り付けられている。また、第1鍔部の一方の面をロール紙に向けて第1鍔部材を取り付けたときの第1鍔部と第2鍔部との距離と、第1鍔部の他方の面をロール紙に向けて第1鍔部材を取り付けたときの第1鍔部と第2鍔部との距離とが変わる。そのため、第1鍔部材の取付方向を変えることで、紙幅の異なるロール紙の幅方向の位置決めを、第2鍔部を片側基準として行うことができる。また、紙幅調整は、第1鍔部材の取り付け方向を変えるのみで簡単に行うことができるので、極めて簡単な構成により、2種類の紙幅に対応可能である。さらに、ロール紙幅方向の基準位置を規定する第2鍔部材の側を、ユーザーにとって手前側の位置となるように配置しておくことにより、ロール紙の交換作業が容易になる。
【0008】
本発明において、第1鍔部の一方の面をロール紙に向けて第1鍔部材を取り付けたときの第1鍔部と第2鍔部との距離と、第1鍔部の他方の面をロール紙に向けて第1鍔部材を取り付けたときの第1鍔部と第2鍔部との距離とを変えるため、たとえば、前記第1鍔部材は、前記第1鍔部がその外周面に形成される鍔部形成部を備え、前記ロール紙の幅方向における前記鍔部形成部の幅は、前記第1鍔部の幅よりも広く形成され、前記ロール紙の幅方向における前記鍔部形成部の中心と、前記ロール紙の幅方向における前記第1鍔部の中心とがずれており、前記第1鍔部材は、前記鍔部形成部が前記ホルダーに対して前記ロール紙の幅方向で位置決めされた状態で取り付けられている。
【0009】
本発明において、ロール紙供給装置は、筒状に形成され前記鍔部形成部の端面に当接可能な端面を有するスペーサーを備え、前記鍔部形成部は、筒状に形成された第1筒部であり、前記ホルダーは、大径部と、前記大径部よりも径の小さな小径部と、前記大径部と前記小径部との境界に形成される段差面とを備え、前記大径部側から前記第1筒部、前記スペーサーの順番、または、前記スペーサー、前記第1筒部の順番で配置された前記第1筒部および前記スペーサーに前記小径部が挿通され、前記第1筒部の端面または前記スペーサーの端面が前記段差面に当接可能となっていることが好ましい。この場合には、たとえば、ロール紙供給装置は、前記ホルダーを支持する支持軸と、前記支持軸の基端側を支持する支持部とを備え、前記ホルダーは、前記小径部が前記支持軸の基端側に配置され前記大径部が前記支持軸の先端側に配置されるように、前記支持軸に支持され、前記支持部には、前記第1筒部の端面または前記スペーサーの端面に当接可能な当接面が形成されている。このように構成すると、大径部側から第1鍔部材とスペーサーとがこの順番で配置される場合と、大径部側からスペーサーと第1鍔部材とがこの順番で配置される場合とで、第1鍔部と第2鍔部との距離を変えることができる。したがって、紙幅の異なる4種類のロール紙に対応可能な極めて簡単な構成の紙幅調整機構を実現できる。
【0010】
本発明において、ロール紙供給装置は、前記ホルダーを支持する支持軸と、前記支持軸の基端側を支持する支持部とを備え、前記支持軸の先端側には、前記支持軸の径方向内側に向かって窪む凹部が形成され、前記第2鍔部材は、筒状に形成されるとともに前記第2鍔部がその外周面に形成される第2筒部を備え、前記第2筒部の内周側には、前記支持軸の先端側が挿入される挿入孔が形成される挿入孔形成部材と、前記挿入孔の径方向へ移動可能な状態で前記挿入孔形成部材に保持され前記凹部に係合可能な球状部材と、前記挿入孔の径方向内側に向かって前記球状部材を付勢する付勢部材とが取り付けられていることが好ましい。このように構成すると、片側基準面を規定している第2鍔部材を、ユーザーにとって手前側に位置する支持軸の先端部に対してワンタッチで簡単に着脱できるので、ロール紙の交換作業が極めて容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態にかかるロール紙供給装置の斜視図。
【図2】ロール紙供給装置が使用される印刷システムの概略図。
【図3】ロール紙供給装置の断面図。
【図4】ホルダーの斜視図。
【図5】図3のE−E方向からキャップ部材を示す図。
【図6】図5のF部の拡大図。
【図7】紙幅W1のロール紙が取り付けられるときのロール紙供給装置の正面図。
【図8】紙幅W2のロール紙が取り付けられるときのロール紙供給装置の正面図。
【図9】紙幅W3のロール紙が取り付けられるときのロール紙供給装置の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
(ロール紙供給装置の全体構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるロール紙供給装置1の斜視図である。図2は、ロール紙供給装置1が使用される印刷システム3の概略図である。図3は、ロール紙供給装置1の断面図である。
【0014】
ロール紙供給装置1は、図2(A)に示すように、ロール状に巻回されたロール紙Aをプリンター2に供給するためのユニットであり、たとえば、航空機の搭乗券やバッケージタグを発行する印刷システム3に使用される。また、ロール紙供給装置1は、図2(B)に示すように、用紙に刻まれたミシン目に沿って折りたたまれたファンフォールド紙Bをプリンター2に供給することも可能になっている。このロール紙供給装置1は、ロール紙Aを回転可能に保持するロール紙保持部5と、ロール紙供給装置1の下端部を構成するベース部6とを備えている。
【0015】
ロール紙保持部5は、ロール紙Aを外周側で保持する円筒状のホルダー7を備えている。図3に示すように、ホルダー7は、その中心に同軸状態に配置される支持軸8に支持されている。支持軸8の基端側は、支持部としての支柱部9に支持されている。支柱部9は、上下方向を長手方向として配置される柱状に形成されている。支持軸8の基端側となるホルダー筒7の一端側(図3の左端側)には、ロール紙Aの幅方向における一方の側端位置を規定するための第1鍔部11aを有する第1鍔部材11が配置されている。また、支持軸8の先端側となるホルダー7の他端側(図3の右端側)には、ロール紙Aの幅方向における他方の側端位置を規定するための第2鍔部13aを有するキャップ部材12が配置されている。本例では、キャップ部材12の第2鍔部13aが、ロール紙セット時の幅方向の基準位置(片側基準位置)となっており、他方の第1鍔部材11の側を、キャップ部材12に対して接近および離れる方向に移動した位置に位置決めすることにより、各幅のロール紙に対応可能となっている。このロール紙保持部5の紙幅調整機構の詳細な構成については後述する。
【0016】
ベース部6には、ファンフォールド紙Bが収容される収容部6aが形成されている。収容部6aは、収容部6aの底面を形成する底面部6bと、ファンフォールド紙Bを三方から囲むように形成される側面部6cとを備えている。底面部6bには、ロール紙供給装置1をプリンター2へ取り付けるための取付部6dがプリンター側へ延びるように形成されている。側面部6cは、ファンフォールド紙Bの幅方向の両側および反プリンター側の三方からファンフォールド紙Bを囲むように形成されている。側面部6cの上端には、ロール紙保持部5を支持するための支持面6fが水平面状に形成されている。支持面6fには、ネジ25(図3参照)によって、支柱部9の下端が固定されている。
【0017】
ロール紙供給装置1では、図2(A)に示すように、ロール紙Aをプリンター2に供給する場合には、図1に示すように、ベース部6にロール紙保持部5が取り付けられる。また、図2(B)に示すように、ファンフォールド紙Bをプリンター2に供給する場合には、ベース部6からロール紙保持部5が取り外される。
【0018】
(ロール紙保持部の構成)
図4は、図1に示すホルダー7の斜視図である。図5は、図3のE−E方向からキャップ部材12を示す図である。図6は、図5のF部の拡大図である。図7は、紙幅W1のロール紙Aが取り付けられるときのロール紙供給装置1の正面図である。図8は、紙幅W2のロール紙Aが取り付けられるときのロール紙供給装置1の正面図である。図9は、紙幅W3のロール紙Aが取り付けられるときのロール紙供給装置1の正面図である。
【0019】
支柱部9は、上下方向に細長い直方体形状をした中空状のものである。ロール紙Aの幅方向における支柱部9の一方の側板9aには、支持軸8の基端に形成される小径部8aを保持する保持筒部9bが形成されている。ロール紙Aの幅方向における支柱部9の他方の側板9cには、支持軸8を保持する保持筒部9dが形成されている。支持軸8の基端側は、側板9cの内側で支持軸8に取り付けられるE型止め輪等の止め輪19と保持筒部9b、9dとによって、軸方向へ移動しないように支柱部9に支持されている。
【0020】
第1鍔部材11は、第1鍔部11aと、鍔部形成部の一例としての第1筒部11bとを備えている。第1筒部11bは円筒状に形成されており、第1鍔部11aは、第1筒部11bの外周面から径方向外側に広がる円板状に形成されている。第1鍔部11aには、ロール紙Aの幅方向における一方の端面(図3の左端面)が当接可能となっている。図3に示すように、ロール紙Aの幅方向における第1筒部11bの幅は、第1鍔部11aの幅よりも広く形成されている。また、ロール紙Aの幅方向における第1鍔部11aの中心CL1と、ロール紙Aの幅方向における第1筒部11bの中心CL2とがずれている。
【0021】
ホルダー7は、図4に示すように、外径の大きな大径部7aと、大径部7aよりも外径の小さな小径部7bとを備える段付きの略円筒状に形成されている。ホルダー7の中心には、支持軸8が挿通される挿通孔7dが形成されている。また、大径部7aと小径部7bとの境界には、支持軸8の軸方向に直交する平面状の段差面7eが形成されている。大径部7aの外径は、第1鍔部材11の第1筒部11bの外径とほぼ同じか、若干、大きくなっている。
【0022】
ホルダー7は、支持軸8の基端側に小径部7bが配置され、支持軸8の先端側に大径部7aが配置されるように支持軸8に取り付けられている。また、ホルダー7は、小径部7b側の端面が支柱部9の側板9cの外側面9eに当接可能となるように、支持軸8に取り付けられている。また、支持軸8の軸方向における大径部7aの外側には、E型止め輪等の止め輪20が取り付けられており、外側面9eと止め輪20とによって、支持軸8の軸方向におけるホルダー7の移動が規制されている。すなわち、外側面9eと止め輪20とによって、支持軸8の軸方向において、ホルダー7が位置決めされている。
【0023】
小径部7bには、径方向の外側へ放射状に延びる複数のリブ7cが形成されている。リブ7cの先端面によって形成される径は、大径部7aの外径よりも小さくなっている。小径部7bには、リブ7cの先端面と第1筒部11bの内周面とが接触するように、第1鍔部材11が嵌め込まれている。すなわち、第1筒部11bには、小径部7bが挿通されている。
【0024】
また、小径部7bには、円筒状に形成されたスペーサー21が、その内周面とリブ7cの先端面とが接触するように嵌め込まれている。すなわち、スペーサー21には、小径部7bが挿通されている。スペーサー21の内径は、第1筒部11bの内径とほぼ等しくなっている。また、スペーサー21の外径は、第1筒部11bの外径とほぼ等しくなっている。そのため、小径部7bに嵌め込まれた第1筒部11bの端面とスペーサー21の端面とは当接可能となっている。
【0025】
キャップ部材12は、第2鍔部13aと第2筒部13bとを有する第2鍔部材13を備えている。第2鍔部13aは第1鍔部11aと同様に構成され、第2筒部13bは第1筒部11bと同様に構成されており、第2鍔部材13は、第1鍔部材11と同様に構成されている。第2筒部13bの内周側には、支持軸8の先端側が挿入される挿入孔14aが形成される挿入孔形成部材14が固定されている。また、第2筒部13bの内周側には、支持軸8からキャップ部材12を取り外すための把持部15aが形成される把持部材15が固定されている。
【0026】
挿入孔形成部材14は、鍔部14bを有する鍔付きの円筒状に形成されている。挿入孔形成部材14は、鍔部14bの外周面が第2筒部13bの内周面に接触するように、第2筒部13bの内周側に固定されている。支持軸8の先端側には、径方向内側に向かって窪む凹部8bが形成されており(図3参照)、図5、図6に示すように、挿入孔形成部材14には、凹部8bに係合する球状部材(ボール)17を保持する保持孔14cが形成されている。保持孔14cは、ボール17が挿入孔形成部材14の径方向へ移動可能となるように形成されている。また、ボール17の一部が挿入孔14aの内部に突出して凹部8bに係合するように、保持孔14cと挿入孔14aとは繋がっている。ボール17は、付勢部材18によって挿入孔形成部材14の径方向内側へ付勢されている。付勢部材18は、たとえば、板バネであり、保持孔14cの中に配置されている。
【0027】
把持部材15は、略有底円筒状に形成されており、底部となる把持部15aと、筒部15bとを備えている。筒部15bは、第2鍔部材13の第2筒部13bに挿入されている。また、筒部15bの内周側には、挿入孔形成部材14が挿入されている。筒部15bの端面には、挿入孔形成部材14の鍔部14bの厚さ方向にねじ込まれるネジ(図示省略)によって、鍔部14bが固定されている。また、筒部15bは、第2筒部13bの径方向外側からねじ込まれるネジ(図示省略)によって、第2筒部13bの内周側に固定されている。すなわち、第2鍔部材13と挿入孔形成部材14と把持部材15とがネジによって一体化されて、キャップ部材12が構成されている。なお、第2鍔部材13、挿入孔形成部材14および把持部材15の弾性変形を利用する圧入によって、第2鍔部材13と挿入孔形成部材14と把持部材15とが一体化されて、キャップ部材12が構成されても良い。
【0028】
キャップ部材12は、ホルダー7の大径部7a側の端面から突出する支持軸8の先端側に着脱可能となっている。支持軸8の先端側に取り付けられたキャップ部材12は、支持軸8の凹部8bとボール17とによって、ロール紙Aの幅方向において、支持軸8に対して位置決めされている。支持軸8の先端側に取り付けられたキャップ部材12を取り外す際には、支持軸8の先端方向へキャップ部材12を引っ張る。キャップ部材12を引っ張ると、挿入孔14aの内部に突出して凹部8bに係合していたボール17は、付勢部材18の付勢力に抗して挿入孔形成部材14の径方向外側へ移動し、キャップ部材12が支持軸8から外れるまで、支持軸8の外周面に接触する。キャップ部材12を支持軸8の先端側に取り付ける際には、支持軸8の基端方向へキャップ部材12を押し込む。キャップ部材12を押し込むと、挿入孔14aの内部にその一部が突出していたボール17は、付勢部材18の付勢力に抗して挿入孔形成部材14の径方向外側へ移動し、凹部8bに係合するまで、支持軸8の外周面に接触する。
【0029】
以上のように構成されたロール紙保持部5には、紙幅の異なる3種類のロール紙A、すなわち、紙幅W1のロール紙A、紙幅W2のロール紙Aおよび紙幅W3のロール紙Aが取り付け可能である。また、ロール紙供給装置1は、ロール紙Aの紙幅に応じて、第1鍔部11aと第2鍔部13aとの距離を変えることで、ロール紙Aの幅方向の位置決めを行うことが可能である。なお、紙幅W1はたとえば、83mmであり、紙幅W2はたとえば、80mmであり、紙幅W3はたとえば、54mmである。
【0030】
最も紙幅の広い紙幅W1のロール紙Aがロール紙保持部5に取り付けられる場合には、図7に示すように、ホルダー7の小径部7bに、大径部7a側からスペーサー21および第1鍔部材11がこの順番で嵌め込まれる。また、第1鍔部材11は、第1筒部11bの中心CL2が第1鍔部11aの中心CL1よりも大径部7a側に配置されるように、小径部7bに嵌め込まれる。すなわち、第1鍔部11aの一方の面11cがロール紙A側に配置され、第1鍔部11aの他方の面11dが支柱部9側に配置されるように、第1鍔部材11が小径部7bに嵌め込まれる。
【0031】
2番目に紙幅の広い紙幅W2のロール紙Aがロール紙保持部5に取り付けられる場合には、図8に示すように、ホルダー7の小径部7bに、大径部7a側からスペーサー21および第1鍔部材11がこの順番で嵌め込まれる。また、第1鍔部材11は、第1鍔部11aの中心CL1が第1筒部11bの中心CL2よりも大径部7a側に配置されるように、小径部7bに嵌め込まれる。すなわち、第1鍔部11aの他方の面11dがロール紙A側に配置され、第1鍔部11aの一方の面11cが支柱部9側に配置されるように、第1鍔部材11が小径部7bに嵌め込まれる。
【0032】
最も紙幅の狭い紙幅W3のロール紙Aがロール紙保持部5に取り付けられる場合には、図9に示すように、ホルダー7の小径部7bに、大径部7a側から第1鍔部材11およびスペーサー21がこの順番で嵌め込まれる。また、第1鍔部材11は、第1鍔部11aの中心CL1が第1筒部11bの中心CL2よりも大径部7a側に配置されるように、小径部7bに嵌め込まれる。すなわち、第1鍔部11aの他方の面11dがロール紙A側に配置され、第1鍔部11aの一方の面11cが支柱部9側に配置されるように、第1鍔部材11が小径部7bに嵌め込まれる。
【0033】
ロール紙保持部5に紙幅W1のロール紙Aが取り付けられる場合には、スペーサー21の一方の端面21aは、ホルダー7の段差面7eに当接可能となっており、スペーサー21の他方の端面21bは、第1筒部11bの一方の端面11eに当接可能となっている。また、第1筒部11bの他方の端面11fは、支柱部9の外側面9eに当接可能となっている。ロール紙保持部5に紙幅W2のロール紙Aが取り付けられる場合には、スペーサー21の端面21aは、ホルダー7の段差面7eに当接可能となっており、スペーサー21の端面21bは、第1筒部11bの端面11fに当接可能となっている。また、第1筒部11bの端面11eは、支柱部9の外側面9eに当接可能となっている。ロール紙保持部5に紙幅W3のロール紙Aが取り付けられる場合には、第1筒部11bの端面11fは、ホルダー7の段差面7eに当接可能となっており、第1筒部11bの端面11eは、スペーサー21の端面21a(または端面21b)に当接可能となっている。また、スペーサー21の端面21b(または端面21a)は、支柱部9の外側面9eに当接可能となっている。このように、第1筒部11bは、ホルダー7の段差面7e、支柱部9の外側面9eおよびスペーサー21によって、ロール紙Aの幅方向において、ホルダー7に対して位置決めされている。なお、支柱部9の外側面9eは、第1筒部11bの端面11e、11fまたはスペーサー21の端面21a、21bに当接可能な当接面である。
【0034】
また、ロール紙保持部5では、ロール紙Aをホルダー7に取り付ける際には、キャップ部材12を取り外して、支持軸8の先端側からロール紙Aをホルダー7に嵌め込む。また、ロール紙Aをホルダー7に嵌め込んだ後に、支持軸8の先端側にキャップ部材12を取り付ける。
【0035】
(本実施の形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、第1鍔部材11は、ホルダー7の段差面7e、支柱部9の外側面9eおよびスペーサー21によって、第1筒部11bがホルダー7に対してロール紙Aの幅方向に位置決めされた状態で、ホルダー7に取り付けられている。また、ロール紙Aの幅方向における第1鍔部11aの中心CL1と第1筒部11bの中心CL2とがずれている。そのため、第1鍔部11aの一方の面11cをロール紙Aに向けて第1鍔部材11を取り付けたときの第1鍔部11aと第2鍔部13aとの距離と、第1鍔部11aの他方の面11dをロール紙Aに向けて第1鍔部材11を取り付けたときの第1鍔部11aと第2鍔部13aとの距離とが変わる。
【0036】
また、本形態では、小径部7bに嵌め込まれた第1筒部11bの端面11e、11fとスペーサー21の端面21a、21bとが当接可能となっており、かつ、第1筒部11bの端面11e、11fおよびスペーサー21の端面21a、21bは、ホルダー7の段差面7eに当接可能となっている。そのため、大径部7a側からスペーサー21および第1鍔部材11がこの順番で小径部7bに嵌め込まれる場合と、大径部7a側から第1鍔部材11およびスペーサー21がこの順番で小径部7bに嵌め込まれる場合とで、第1鍔部11aと第2鍔部13aとの距離とが変わる。
【0037】
このように、本形態では、第1鍔部材11の取付方向を変えることで、第1鍔部11aと第2鍔部13aとの距離が変わり、かつ、小径部7bに嵌め込まれる第1鍔部材11およびスペーサー21の順番を変えることで、第1鍔部11aと第2鍔部13aとの距離が変わる。したがって、ロール紙Aの紙幅に応じて、第1鍔部11aと第2鍔部13aとの距離を適切に設定することで、紙幅の異なる3種類のロール紙Aの幅方向の両側端の位置決めを行うことができ、幅方向の両側端が位置決めされた状態で、紙幅の異なる3種類のロール紙Aをプリンター2に供給することができる。
【0038】
また、大径部7a側から第1鍔部材11およびスペーサー21をこの順番で嵌め込むとともに、第1鍔部11aの一方の面11cをロール紙Aに向けて第1鍔部材11を取り付ければ、さらに、もう1種類の紙幅のロール紙Aにおける幅方向の両側端の位置決めを行うことができる。すなわち、本形態のロール紙供給装置1では、紙幅の異なる4種類のロール紙Aの幅方向の位置ずれを防止しつつ、紙幅の異なる4種類のロール紙Aをプリンター2に供給することができる。
【0039】
特に、本例では、ホルダー7の先端側(自由端側)に取り付けたキャプ部材12の第2鍔部13aが、ロール紙幅方向の一方の側面位置を規定する位置決め基準であり、ホルダー7の奥側(支柱部9の側)に装着する第1鍔部材11が、ロール紙幅方向の他方の側面位置を規定する幅変更用の位置決め面となっている。したがって、ロール紙を常に、ユーザーにとってホルダー7の手前側の第2鍔部13aを基準としてセットできる。ユーザーの側においては、使用するロール紙の幅が決まっているのが通常であり、ロール紙のセット時に紙幅変更を都度行うことはない。したがって、ホルダー7の奥側において使用する紙幅に対応できるように紙幅変更用の第1鍔部材11を取り付けておけば、ユーザーは、キャップ部材12を取り外してロール紙をホルダー7に装着してキャップ部材12を取り付ける操作だけで、ロール紙をセットできる。従来のようにホルダーの奥側がロール紙の位置決め基準となっている場合には、ロール紙をホルダーに装着した後に、ロール紙の幅に対応するように、ホルダーの先端に紙幅変更用の部材を取り付け、あるいは、紙幅の変更操作を行って、ロール紙が幅方向にズレないようにセットする必要がある。本例によれば、単にキャップ部材12を取り付けるだけで良いので、各幅のロール紙のセット作業が極めて簡単になる。
【0040】
次に、付勢部材18によって挿入孔形成部材14の径方向内側へ付勢されたボール17が挿入孔形成部材14に保持されており、支持軸8の凹部8bにボール17が係合することで、キャップ部材12が支持軸8の先端側に取り付けられている。そのため、キャップ部材12を、支持軸8の先端側から容易に引き抜くこと、および、支持軸8の先端側に容易に取り付けることが可能になる。したがって、ロール紙Aの交換作業が容易になる。
【0041】
(他の実施の形態)
上述した形態では、ホルダー7の小径部7bにスペーサー21が嵌め込まれているが、小径部7bにスペーサー21が嵌め込まれていなくても良い。この場合には、たとえば、スペーサー21の幅分だけ、大径部7aの幅が広くなる。この場合であっても、紙幅W1のロール紙Aと紙幅W2のロール紙Aとの紙幅の異なる2種類のロール紙Aの幅方向の位置ずれを防止しつつ、紙幅の異なる2種類のロール紙Aをプリンター2に供給することができる。
【0042】
なお、上述した形態では、ロール紙Aの幅方向における第1鍔部11aの中心CL1と、ロール紙Aの幅方向における第1筒部11bの中心CL2とがずれているが、ロール紙Aの幅方向における第1鍔部11aの中心CL1と、ロール紙Aの幅方向における第1筒部11bの中心CL2とが一致していても良い。この場合であっても、小径部7bに嵌め込まれる第1鍔部材11およびスペーサー21の順番を変えることで、紙幅W2のロール紙Aと紙幅W3のロール紙Aとの紙幅の異なる2種類のロール紙Aの幅方向の位置ずれを防止しつつ、紙幅の異なる2種類のロール紙Aをプリンター2に供給することができる。また、第2鍔部材13の取付方向が変更できるように、キャップ部材12が構成されていれば、第2鍔部材13の取付方向を変更することで、紙幅の異なるより多くの種類のロール紙Aの幅方向の位置ずれを防止しつつ、紙幅の異なるより多くのロール紙Aをプリンター2に供給することが可能になる。
【符号の説明】
【0043】
1 ロール紙供給装置、7 ホルダー、7a 大径部、7b 小径部、7e 段差面、8 支持軸、8b 凹部、9 支柱部(支持部)、9e 外側面(当接面)、11 第1鍔部材、11a 第1鍔部、11b 第1筒部(鍔部形成部)、11c 第1鍔部の一方の面、11d 第1鍔部の他方の面、11e・11f 第1筒部の端面、13 第2鍔部材、13a 第2鍔部、13b 第2筒部、14 挿入孔形成部材、14a 挿入孔、17 ボール(球状部材)、18 付勢部材、21 スペーサー、21a・21b スペーサーの端面、A ロール紙、CL1 第1鍔部の中心、CL2 第1筒部の中心(鍔部形成部の中心)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール紙を保持するホルダーと、
前記ロール紙の径方向に広がるように形成され前記ロール紙の幅方向における一方の端面に当接可能な第1鍔部を有する第1鍔部材と、
前記ロール紙の径方向に広がるように形成され前記ロール紙の幅方向における他方の端面に当接可能な第2鍔部を有する第2鍔部材とを備え、
前記第1鍔部材および前記第2鍔部材は、前記ロール紙の幅方向で前記ホルダーに対して位置決めされた状態で取り付けられ、
前記第1鍔部の一方の面を前記ロール紙に向けて前記第1鍔部材を取り付けたときの前記第1鍔部と前記第2鍔部との距離と、前記第1鍔部の他方の面を前記ロール紙に向けて前記第1鍔部材を取り付けたときの前記第1鍔部と前記第2鍔部との距離とが変わることを特徴とするロール紙供給装置。
【請求項2】
前記第1鍔部材は、前記第1鍔部がその外周面に形成される鍔部形成部を備え、
前記ロール紙の幅方向における前記鍔部形成部の幅は、前記第1鍔部の幅よりも広く形成され、
前記ロール紙の幅方向における前記鍔部形成部の中心と、前記ロール紙の幅方向における前記第1鍔部の中心とがずれており、
前記第1鍔部材は、前記鍔部形成部が前記ホルダーに対して前記ロール紙の幅方向で位置決めされた状態で取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のロール紙供給装置。
【請求項3】
筒状に形成され前記鍔部形成部の端面に当接可能な端面を有するスペーサーを備え、
前記鍔部形成部は、筒状に形成された第1筒部であり、
前記ホルダーは、大径部と、前記大径部よりも径の小さな小径部と、前記大径部と前記小径部との境界に形成される段差面とを備え、
前記大径部側から前記第1筒部、前記スペーサーの順番、または、前記スペーサー、前記第1筒部の順番で配置された前記第1筒部および前記スペーサーに前記小径部が挿通され、前記第1筒部の端面または前記スペーサーの端面が前記段差面に当接可能となっていることを特徴とする請求項2に記載のロール紙供給装置。
【請求項4】
前記ホルダーを支持する支持軸と、前記支持軸の基端側を支持する支持部とを備え、
前記ホルダーは、前記小径部が前記支持軸の基端側に配置され前記大径部が前記支持軸の先端側に配置されるように、前記支持軸に支持され、
前記支持部には、前記第1筒部の端面または前記スペーサーの端面に当接可能な当接面が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のロール紙供給装置。
【請求項5】
前記ホルダーを支持する支持軸と、前記支持軸の基端側を支持する支持部とを備え、
前記支持軸の先端側には、前記支持軸の径方向内側に向かって窪む凹部が形成され、
前記第2鍔部材は、筒状に形成されるとともに前記第2鍔部がその外周面に形成される第2筒部を備え、
前記第2筒部の内周側には、前記支持軸の先端側が挿入される挿入孔が形成される挿入孔形成部材と、前記挿入孔の径方向へ移動可能な状態で前記挿入孔形成部材に保持され前記凹部に係合可能な球状部材と、前記挿入孔の径方向内側に向かって前記球状部材を付勢する付勢部材とが取り付けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のロール紙供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−195204(P2011−195204A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60348(P2010−60348)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】