説明

ロール紙保持装置及び印字装置

【課題】ロール紙をセット部上方から装填できる保持装置であって、セット部に対するロール紙の着脱が容易で、且つ、ロール紙が挿入方向に抜け落ちにくいロール紙保持装置を提供する。
【解決手段】用紙がロール状に巻かれたロール紙5の芯孔両側を、一対の対向する弾発出没する保持部材12,12’で保持するロール紙保持装置であって、前記保持部材は、前記ロール紙が該保持部材間に挿入されるとき該ロール紙の一部が接する傾斜12aと、前記保持部材間に保持された前記ロール紙を取り出すとき該ロール紙の芯孔周縁の一部が接する傾斜12bと、を有し、ロール紙の挿入時に接する傾斜の角度が、ロール紙を取り出すときに接する傾斜の角度より大きくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラベルプリンタ等で使用されるラベルロール等のロール紙を保持するロール紙保持装置及び該装置を備えた印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ラベルプリンタ等にラベルロール(ロール紙)をセットする方法として、該ラベルロールの巻き芯の孔に軸を通してセットする方法がある。
しかし、この方法の場合、装置側部のカバーを開けてラベルロールを軸の側端より挿通するため、装置側部に前記カバーを開閉できるだけのスペースを確保しなければならないという問題点を有する。
【0003】
上記問題に対し、ラベルロールのセットを軸の側方から行うことなく、セット部の上方から装填可能とした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
前記技術は、対向する一対の側板に一対の軸受を取り付け、該一対の軸受の中空部に一対のボール(保持部)及び該ボールをラベルロール側に押圧付勢する弾性体を収容し、該一対のボールによって前記ラベルロールのコアを両側から保持するというものである。
【0004】
しかしながら、ラベルロールのコアを保持する保持部がボール(球状)である為、該ボールを付勢する弾性体の弾発力(付勢力)が弱いと、特に重いラベルロールをセットした時は、ラベルロールを保持できずそのまま下方に落下する虞れがある。それを防ぐ為に弾発力の強い弾性体を用いることも考えられるが、弾発力の強い弾性体を用いると前記ボールの出没動作が重くなり(鈍くなり)、コアにボールが入りにくくなり、且つ、無理してセットしたラベルロールを取り外す場合も前記弾発力に抗して外すのが大変であるという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平1−62239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたもので、ロール紙をセット部上方から装填できる保持装置であって、セット部に対するロール紙の着脱が容易で、且つ、ロール紙が挿入方向に抜け落ちにくいロール紙保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する為に本発明のロール紙保持装置は、用紙がロール状に巻かれたロール紙の芯孔両側を、一対の対向する弾発出没する保持部材で保持するロール紙保持装置であって、前記少なくとも一方の保持部材は、前記ロール紙が該保持部材間に挿入されるとき該ロール紙の一部が接する傾斜と、前記保持部材間に保持された前記ロール紙を取り出すとき該ロール紙の芯孔周縁の一部が接する傾斜と、を有し、ロール紙の挿入時に接する傾斜の角度が、ロール紙を取り出すときに接する傾斜の角度より大きいことを特徴とする(請求項1)。
前記ロール紙保持装置で保持されるロール紙としては、紙管(コア)の外側に用紙がロール状に巻かれたもの、或いは紙管がなく用紙をロール状に巻いて中心に芯孔を形成したものが挙げられる。
前記保持部材は、ロール紙を保持する両側に設けてもよい。
【0008】
上記手段によれば、ロール紙を保持する一対の保持部材が弾発出没自在に設けられているため、保持部材間にロール紙を挿入することで、該ロール紙の軸方向の端部外周面が保持部材を弾性部材の弾発力に抗して側板内に押し込み、ロール紙の芯孔中心が前記保持部材の中心線上に位置すると、前記保持部材は弾性部材の弾発力で押し出され、ロール紙の芯孔内に嵌入される。そして、ロール紙の挿入時に接する傾斜の角度が、ロール紙を取り出すときに接する傾斜の角度より大きいため、ロール紙がセットされた状態では前記大きい傾斜角度にロール紙が引掛かる状態で保持される。従って、ロール紙は下方に抜け落ちるのが防止される。また、前記保持部材に形成される取り出すときに接する傾斜の角度は前記挿入時に接する傾斜の角度より小さいため、ロール紙を挿入方向と反対方向に移動することで挿入時より抵抗少なく容易に取り外すことができる。
【0009】
前記保持部材に形成される挿入時に接する傾斜と、取り出すときに接する傾斜は、面又は線(線材)で構成することができる。前記傾斜を面で構成する場合は、前記挿入時に接する傾斜面と取り出し時に接する傾斜面を交差させ、前記ロール紙の芯孔の内面と接し、前記ロール紙の軸方向に沿って起立する壁部を前記保持部材に形成する(請求項2)。
前記二つの傾斜面が交差する頂部は、そのまま稜線(山型)の状態で残す、或いは頂部を所定の幅で切除して平坦な頂部とするなど何れでもよい。
【0010】
上記手段によれば、保持部材の表面(ロール紙の側端と対向する面)が二つの傾斜面で形成される為、ロール紙を挿入する操作、及びロール紙を取り出す操作の案内をスムーズに行うことができる。そして、前記二つの傾斜面の交差により、傾斜面の交差部の両側部(保持部材の外周面)には軸方向に沿って起立する壁部が形成され、その壁部がロール紙の芯孔(紙管)の内面と接触するので安定よく保持される。
【0011】
また、前記ロール紙の挿入時に接する傾斜面は、ロール紙の挿入方向に向かって傾斜する単一の傾斜面だけで形成してもよいが、角度が異なる複数の傾斜面によって形成してもよい。例えば、傾斜面の幅方向両側に、該傾斜面の角度より大きい角度の周縁部が突出形成されていてもよい(請求項3)。
前記周縁部の形成開始位置は中央部が外れていればよく、例えばロール紙の挿入時に接する傾斜面の途中から形成されていてもよい(請求項4)。
【0012】
上記手段によれば、幅方向の両側が大きい角度になることで、傾斜面の幅方向の中央部は両側に比べて傾斜が緩くなるので、ロール紙を挿入する時相対的に傾斜の緩い中央からロール紙の端部が接するので、挿入時の抵抗は少なくなる。また、傾斜面の幅方向の両側に設けられる壁部がよりロール紙の軸方向に突出するようになるので、ロール紙が保持部にセットされた時、ロール紙との引っ掛かり度合いが高くなり、ロール紙と保持部材との係合が確実になり、ロール紙の抜けを確実に防止できる。
【0013】
また、前記ロール紙を取り出すときに接する傾斜面も、前記挿入時に接する傾斜面同様、単一の傾斜面だけで形成してもよいが、角度が異なる複数の傾斜面によって形成してもよい。例えば、傾斜面の幅方向の略中央部が取り出し方向に向かって他の部分より盛り上がっているように形成してもよい(請求項5)
前記盛り上がりは左右の傾斜面が交わる山型の稜線、或いは緩やかな凸曲面など何れでもよい。
【0014】
上記手段によれば、ロール紙を取り出す時、該ロール紙の芯孔(紙管)の孔縁の一部は傾斜面の一部に接触しながら案内されるため、ロール紙を取り出すときの負荷(接触抵抗)を軽減することが出来る。
【0015】
また、前記保持部材に形成する挿入時に接する傾斜と、取り出すときに接する傾斜は、線(線材)で構成してもよい。例えば、線状材を所定の形状に屈曲形成したアーム材で構成し、それを円形の基台上に固定して形成する(請求項6)。尚、基台上に固定するアーム材は中央部(直径線上)に1本、或いは複数本を平行に配置する等何れでもよい。
【0016】
上記手段によれば、ロール紙の芯孔(紙管)の孔縁がアーム材に係着して保持され、且つ、挿入時はロール紙の端部外周面が、取り出し時はロール紙の芯孔の孔縁がアーム材上を滑りながら案内される為、簡単な構造で挿入/取り出しを容易に行うことができる。
【0017】
また、上記構成のロール紙保持装置はロール紙を使用する各種機器に使用することができる。例えば、前記ロール紙保持装置を備え、且つ前記ロール紙保持装置に保持されるロール紙に所定事項を印字する印字部を備えて印字装置を構成する(請求項7)。印字装置としては、ロール紙が連続した用紙である場合はレシートプリンタ、ロール紙がラベルロールである場合はラベルプリンタ等が挙げられる。
【0018】
上記手段によれば、ロール紙の装填及び取り外しが容易で、且つロール紙をしっかり保持できる印字装置を提供できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のロール紙保持装置は請求項1記載の構成により、ロール紙をロール紙保持装置間に挿入することで、該ロール紙の芯孔両側に一対の保持部材が嵌入し、且つロール紙がセットされた状態では前記大きい傾斜角度でロール紙が保持される。従って、ロール紙は下方に抜け落ちるのが防止される。また、前記保持部材に形成される取り出すときに接する傾斜の角度は前記挿入時に接する傾斜の角度より小さいため、ロール紙を挿入方向と反対方向に移動することで挿入時より抵抗少なく容易に取り外すことができる。
また、請求項2記載の構成により、保持部材の表面(ロール紙の側端と対向する面)が二つの傾斜面で形成される為、ロール紙を挿入する操作、及びロール紙を取り出す操作の案内をスムーズに行うことができる。そして、前記ロール紙の芯孔(紙管)は、前記保持部材の壁部と接触し、安定よく保持される。従って、保持部材を付勢する弾性部材の弾発力が弱くてもロール紙をしっかり保持することができる。
【0020】
また、請求項3、4記載の構成により、ロール紙と保持部材との係合が確実になり、ロール紙の抜けを確実に防止できる。
また、請求項5記載の構成により、ロール紙を取り出す時、該ロール紙の芯孔(紙管)の孔縁の一部は傾斜面の一部に接触しながら案内されるため、ロール紙を取り出すときの負荷(接触抵抗)を軽減することが出来る。
また、請求項6記載の構成により、ロール紙の芯孔(紙管)の孔縁がアーム材に係着して保持され、且つ、挿入時はロール紙の端部外周面が、取り出し時はロール紙の芯孔の孔縁がアーム材上を滑りながら案内される為、簡単な構造で挿入/取り出しを容易に行うことができる。
また、請求項7記載の構成により、ロール紙の装填及び取り外しが容易で、且つロール紙をしっかり保持できる印字装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るロール紙保持装置を備えた印字装置の外観斜視図。
【図2】(a)は同側面図、(b)はロール紙保持装置及び印字部が取り付けられた前面枠を引き出した同右側面図、(c)は前面枠を引き出した同左側面図。
【図3】ロール紙保持装置部分を示す拡大斜視図。
【図4】(a)はロール紙保持装置の一方(可動側)の側板部分を示す分解斜視図、(b)は保持部材の拡大斜視図。
【図5】(a)はロール紙保持装置にロール紙がセットされた状態の中央縦断面図、(b)は(a)図の(b)−(b)線に沿える拡大断面図。
【図6】同縦断正面図。
【図7】ロール紙の装填動作を示し、(a)は保持部材間に挿入する前の状態、(b)はロール紙を挿入しロール紙の外周端面が挿入側の傾斜面に当接した状態、(c)はロール紙の側端で保持部材を側板の凹部内に没入させ、ロール紙が傾斜面の頂点に達した状態の各断面図。
【図8】保持部材の他の変形例を示し、(a)は挿入側と取り出し側の二つの傾斜面が直線的に合流する形態を示す断面図及び正面図、(b)はロール紙を保持する傾斜が線状(棒状)材で構成された形態を示す断面図及び正面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面に基づいて説明する。
図1及び図2は、ロール紙保持装置及び印字部を備えた印字装置を示し、その印字装置はケース1内に、ロール紙保持装置Aと印字部Bを備え、ケース1の外側上面には表示部2と操作入力部3が配置され、前記ロール紙保持装置Aと印字部Bは該ケース1に対して前方に引き出し可能に構成された前面枠4に装備されている。それにより、ロール紙保持装置Aに対するラベルロール(ロール紙)5の装填及び取り外し、巻き取った台紙の取り外し、印字部のメンテナンス等は前記前面枠4を前方に引き出して行うことができる。
【0023】
前記ケース1は前面が開口した略四角形の有底筒状に形成され、一方の側壁内面には前面開口より前方に向けて案内レール6,6’が固着突出され、その案内レール6,6’に案内枠7,7’を介して取付基板8が摺動可能に固着されている。そして、前記取付基板8に、前記ロール紙保持装置A、印字部B、台紙巻取り軸9、前記印字部B及び台紙巻取り軸9の駆動機構10等が片持ち構造で支持され、更に前記ケース1の前面開口を閉鎖する前面枠4が取り付けられている。前記前面枠4には該前面枠4の後側に配置される印字部Bで印字されるラベルを繰り出すラベル発行口が形成されている。
【0024】
前記ロール紙保持装置Aに装填されるラベルロール(ロール紙)5は、ラベル用紙を剥離可能に仮着した台紙5aが、紙管5bにロール状に巻かれた今日周知のもので、該ラベルロール5のラベル用紙に所定事項を印字する印字部Bは、サーマルヘッドとプラテンローラを備え、駆動機構10によってプラテンローラ及び台紙巻取り軸9が駆動回転するように構成されている。
【0025】
以下、ロール紙保持装置Aについて詳細に説明する。
ロール紙保持装置Aは、図3及び図6に示すように、一対の対向する側板11,11’と、その側板11,11’の対向する面に出没可能に配設した保持部材12,12’と、前記保持部材12,12’を対向面側に弾発付勢する弾性部材13,13’とで構成されている。そして、ラベルロール5を保持部材12,12’間に挿入し、その挿入した方向と反対方向にラベルロール5を引き抜くことでラベルロール5を取り出すことができる。
前記一対の対向する側板11,11’は、一方の側板11が前記取付基板8の内面に固着され、その側板11に側板支持棒14,14’が片支持構造でケース1の幅方向に向けて突出され、その側板支持棒14,14’に他方の側板11’が摺動/固定可能に取り付けられている。即ち、ラベルロール5を保持する一方の側板11は固定し、他方の側板11’を側板支持棒14,14’に沿って幅方向に摺動自在とすることで、ロール幅の異なるロール紙に対応し得るようになっている。
【0026】
前記側板11,11’は合成樹脂材によって成形され、その略中央に保持部材12,12’及び弾性部材13,13’を収容する円形筒状の凹部15が外側に向けて形成され、その凹部15の周壁には該凹部15に収容する保持部材12,12’が周方向に回動するのを止め、且つ保持部材12,12’が凹部15から飛び出るのを防止する掛止め孔16,16’が相対向して切欠き形成されている。そして、この掛止め孔16,16’には後述する保持部材12,12’の係合片が嵌合係着される。
前記凹部15の深さは、該凹部15に収容される保持部材12(又は保持部材12’)がラベルロールで押圧された時、該保持部材12,12’が凹部内に没入されてその表面(山形傾斜面)が該凹部15の孔縁と面一か、孔縁より下側となる深さとする。
【0027】
前記保持部材12,12’は、図4(a),(b)に示すように、合成樹脂材によって円盤状に形成され、その円盤の表面(ラベルロール5の端面と対向する面)は二つの傾斜面12a,12bによって保持部材の断面視山形に突出形成されている。つまり、保持部材12,12’は二つの傾斜面によって保持部材間の中心方向に突出形成されている。そして、周壁の後端には前記凹部15の掛止め孔16,16’に嵌合係着する係合片17,17’が形成され、これにより保持部材12,12’が周り止めされて軸方向に弾発出没される。
【0028】
前記傾斜面12aは、ロール紙保持装置Aにラベルロール5を装填する時の該ラベルロール5の挿入方向に沿う傾斜面で、ラベルロール5を挿入する時に該ラベルロール5の端部外周縁の一部が接し、該傾斜面12aは挿入方向に向かって漸次上向に傾斜し、傾斜の頂点は保持部材12,12’の中心より挿入方向側に寄った位置とする。
又、傾斜面12bは前記傾斜面12aとは反対側から挿入側に向かって漸次上向に傾斜する傾斜面で、ラベルロール5を取り出す時に該ラベルロール5の芯孔周縁の一部が接し、その傾斜の頂点は前記傾斜面12aの頂点と平坦面で結ばれている。
また、前記二つの傾斜面12a,12bの始端位置は、前記側板11,11’の凹部15の孔縁と略面一か、孔縁より僅か下がった位置とし、ラベルロール5の挿入が阻害されないようになっている。
【0029】
また、前記傾斜面12aの傾斜角度α1(水平面となす角度)は、前記傾斜面12bの傾斜角度α2(水平面となす角度)より大きく設定されている。つまり、ラベルロール5を挿入する時と、取り出す時とで、ラベルロール5の一部と保持部材12,12’が接する角度が異なる。そして、傾斜角度α2の方が傾斜角度α1より小さくなっているので、ラベルロール5の取り出し時の抵抗が少なくなり、傾斜角度α1が大きければより軸方向に突出する部分(壁19,19’)を設けることができるので、その部分にてラベルロール5を確実に保持できる(図6参照)。また、更に傾斜面12aの幅方向の両側部(傾斜面の頂点と保持部材の外周縁が交差する部分)はさらに傾斜角度を大きく立ち上げ、両側部に角部18,18’が形成されている。それにより、保持部材12,12’の外周には正面視略台形状をした略鉛直の壁19,19’が形成される。尚、角部18,18’を形成する傾斜角度は、傾斜面12aの傾斜角度α1より大きければよく、その角度は任意であり、角度が大きければ前記壁19,19’が軸方向に突出するようになるので、紙管5cとの引っ掛かり度合いも強くなる。
【0030】
従って、ラベルロール5が傾斜面12aに沿って挿入され、そのラベルロール5の挿入によって側板11,11’の凹部15内に没入された保持部材12,12’は、前記ラベルロール5の紙管5b(芯孔)の中心が前記保持部材12,12’の略中心線上に位置すると前記保持部材12,12’の押圧が開放されるため弾性部材13,13’の弾発力で凹部15より突出する方向に押し出され、ラベルロール5の紙管5b内に嵌入される。そして、紙管5bの側端開口に嵌入した保持部材12,12’は前記鉛直の壁19,19’が紙管5cの内面と接触することで、ラベルロール5は保持部材12,12’によって確実に保持される。
【0031】
また、前記傾斜面12bは単一の傾斜面で形成することなく、例えば、図5(b)に示すように該傾斜面12bの中央部がラベルロール5の取り出し方向(移動方向)に沿って盛り上がった凸部20を有する形態としてもよい。この場合、前記凸部20は中央部で左右の傾斜面(直線面又は球面)を合流させることで形成することができる。
又、図3に示すように傾斜面12aが斜め上方に向くように保持部材12,12’がセットされている。つまり、ラベルロール5の挿入方向と、傾斜面12aの傾斜面とが向き合うように保持部材がセットされている。
これにより、ラベルロール5を挿入する方向にラベルロール5の外周端部が接する傾斜面が位置するので、ラベルロールの挿入をスムーズに行うことができる。
【0032】
図8(a),(b)、(c),(d)は保持部材の変形した例を示し、(a),(b)は前示実施例における二つの傾斜面12a、12bの先端を略直線で交差させた例で、前示実施例は本実施例の頂部を線21に沿って切断したものに相当する。尚、図8(a),(b)は周壁から傾斜面頂部までの高さが前示実施例より高くなる為、側板11,11’に形成する凹部15の深さを、前示実施例より深くする必要がある。
【0033】
また、図8(c),(d)は保持部材12,12’が有する二つの傾斜面12a,12bからなる山形状の凸部を、合成樹脂製又は金属製の帯板22(アーム材)を山形状に屈曲し、該帯板22の両側部を円盤の表面に固着したもので、帯板と円盤は同一体に形成されている。尚、山形状の凸部は帯板に限らず、断面円形の棒材や線材を山形状に屈曲して形成してもよい。
【0034】
次に、前示実施例で示した保持部材12,12’によるラベルロール5の保持動作を図6及び図7に基づいて説明する。
先ず、ラベルロール5を一対の側板11,11’間に挿入セットする場合、図2(b)(又は図5)に示すように、ラベルロール5を側板11,11’に取り付けられた保持部材12,12’の傾斜面12aに沿って挿入する(図7(a)参照)。
ラベルロール5は、図7(b)に示すように、先ず該ラベルロール5の両側端外周面が、保持部材12,12’の傾斜面12aの最低部に当たり、ラベルロール5の押し込みに伴い前記保持部材12,12’は弾性部材13,13’を圧縮しながら側板11,11’の凹部15内に没入し、ラベルロール5の挿入を続行させる。このように、ラベルロール5の外周面が傾斜面12aの両側部よりも傾斜の緩い面(傾斜面12aの中央部)に接しながら挿入されるので、挿入時にラベルロール5が受ける接触抵抗が少なくなるので、ラベルロール5を挿入しやすくなる。
そして、ラベルロール5の両側端外周面が傾斜面12a上を滑動して該傾斜面12aの頂面に達すると、保持部材12,12’はラベルロール5の両側端面で凹部15内に完全に押し込まれる(図7(c)参照)。
【0035】
ラベルロール5の挿入が進行し、該ラベルロール5の紙管5b(芯孔)の略中心が保持部材12,12’の中心線上に位置する、即ち紙管5b(芯孔)内に保持部材12,12’が嵌合する状態になると、保持部材12,12’は弾性部材13,13’の弾発力で前記紙管5b(芯孔)内に押し出され、紙管5bに嵌入される(図6参照)。
そして、保持部材12,12’がラベルロール5の紙管5bに嵌入した状態では、該紙管5b(芯孔)の内面に、保持部材12,12’の紙管5bに沿った鉛直の壁19,19’が接触する。しかも、該鉛直の壁19,19’の手前側には傾斜面12aの傾斜角度より傾斜角が大きい角部18,18’が形成されている為、紙管5b(芯孔)の内面は前記角部18,18’に係合し、それ以上の挿入が停止される。従って、例え保持部材12,12’を弾発付勢する弾性部材13,13’の弾発力が弱く、ラベルロール5の重量によって前記保持部材12,12’が簡単に出没する構成であっても、保持部材12,12’の周面に形成される鉛直の壁19,19’と角部18,18’が紙管5b(芯孔)の内面に係合し、ラベルロール5の抜け落ちが防止される。
【0036】
また、一対の保持部材12,12’によって支持されたラベルロール5を取り外す時は、該ラベルロール5の挿入方向と逆方向(手前側)に引き出す。即ち、ラベルロール5を挿入方向と逆方向に移動すると、該ラベルロール5の紙管5b(芯孔)の孔縁が、該紙管5b(芯孔)に嵌入する保持部材12,12’の取り出し方向に沿った傾斜面12bの凸部20上、及び前記傾斜面12bの幅方向の両側縁上を滑動し、保持部材12,12’を弾性部材13,13’の弾発力に抗して側板11,11’の凹部15内に押し込む。そして、前記傾斜面12bの傾斜角は反対側の傾斜面12aの傾斜角より小さいため、ラベルロール5の取り出し方向への移動は前記挿入方向への移動に比べてスムーズに行うことができる。
ラベルロールの取り出し方向への移動が進行して該ラベルロール5の側端面が傾斜面12bの頂点に達すると、前記保持部材12,12’は側板11,11’の凹部15内に押し込まれる。そして、前記傾斜面12bの頂点を過ぎるとその先はラベルロール5の取り出し方向に沿って下向きの傾斜面12aとなるため、ラベルロール5を簡単に取り出すことができる。尚、傾斜面12bの頂点にラベルロール5の側端面が当接した位置から取り出し完了までは、弾性部材13,13’で付勢された保持部材12,12’の押圧力が作用する。
【0037】
本発明のロール紙保持装置は図示した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
(1)実施の形態では、ロール紙の挿入/取り出し方向を鉛直線に対して所定角度手前に傾いた位置としたが、これに限らず鉛直方向等、何れでもよい。
(2)印字装置を示した実施の形態では、ロール紙保持装置を、ロール紙の挿入/取り出し方向が鉛直線に対して所定角度手前に傾いた位置としたが、これに限らず鉛直方向でもよい。
(3)実施の形態では、保持部材12,12’の傾斜面12aの幅方向両側に、該傾斜面の傾斜角度より角度が大きい角部を突出形成した例を示したが、これに限らず、角部が存在しなくてもよいものである。
(4)実施の形態では、ロール紙として紙管の外側に用紙がロール状に巻かれたものを挙げて説明したが、紙管を用いずに用紙をロール状に巻いて中心に芯孔を形成したロール紙でもよいものである。
(5)実施の形態では、山形形状の傾斜面を有した保持部材を、ロール紙を保持する両側に備えた例を示したが、山形形状の傾斜面を有する保持部材はロール紙を保持する一対の部材の片側にのみ配置し、もう一方の部材は今日周知の弾発出没部材(例えば、球体、円錐部材等)としてもよい。
(6)実施の形態では、一方の保持部材12’が側板に取り付けられた例を用いて説明したがこれに限らず、他方の保持部材12側から保持部材12’が吊り下げ保持されていてもよく、保持部材12’が固定される手段は問わない。
(7)実施の形態では、壁19,19’は紙管5bに沿った鉛直に形成された例を示したが、鉛直に限らず、ラベルロール5を保持できる程度、壁19,19’の軸方向の先端が保持部材12,12’の中心に向けて下方に傾斜していてもよい。
(8)実施の形態では、図3では保持部材12,12’が図面上、側板11,11’の反時計回り方向に少しずれた位置に取り付けられた例にて説明した。このように、図3にて反時計回り方向に少しずらすことで、図3の斜め左方向からラベルロールを挿入することになり、ラベルロールの挿入操作がし易くなるが、側板11,11’における保持部材12,12’の向きは図3に限らず、傾斜面12aが図3上で真上になるようにセットしてもよい。この場合、ラベルロール5は図3上の上下方向に挿入/取り出しをするようになるが、保持部材12,12’の両側部に設けられた角部18,18’が軸の中心方向に向けて突出しているのでラベルロールは確実に保持されるようになる。
また、傾斜面12aが真左に向くように保持部材12,12’をセットしてもよい。図3上、保持部材12と台紙巻取り軸9とは隣接しているので、保持部材12と台紙巻取り軸9との距離を離すように、側板支持棒14’を側板支持棒14の隣接した位置に配置させることで、ラベルロール5を真左方向から挿入/取り出しすることができる。この場合、ラベルロール5を保持部材12,12’にセットすると、紙管5bに沿って突出形成された壁19,19’によりラベルロール5が保持されるようになるので、確実にラベルロール5が保持される。
そして、傾斜面12aが前記図3の真上、真左に向く何れの場合でも、ラベルロール5を取り出す際は、紙管5bが傾斜面12aよりも傾斜の緩い傾斜面12bに沿って取り出されるので容易にラベルロール5を取り出すことができる。
また、壁19,19’、角部18,18’は何れも二つずつ設ける例を示したが、図3の上方に位置する壁19、角部18のみを形成するようにしてもよい。この場合でも、側板11,11’それぞれに設けられた保持部材12,12’の壁19或いは角部18により、ラベルロール5は保持されるので、ラベルロール5が落下してしまうことはない。
【符号の説明】
【0038】
A…ロール紙保持装置 B…印字部
5…ラベルロール(ロール紙) 11,11’…一対の側板
12,12’…保持部材 12a,12b…傾斜面
13,13’…弾性部材 15…凹部
18,18’…角部 19,19’…鉛直な壁
20…凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙がロール状に巻かれたロール紙の芯孔両側を、一対の対向する弾発出没する保持部材で保持するロール紙保持装置であって、
前記少なくとも一方の保持部材は、前記ロール紙が該保持部材間に挿入されるとき該ロール紙の一部が接する傾斜と、前記保持部材間に保持された前記ロール紙を取り出すとき該ロール紙の芯孔周縁の一部が接する傾斜と、を有し、ロール紙の挿入時に接する傾斜の角度が、ロール紙を取り出すときに接する傾斜の角度より大きいことを特徴とするロール紙保持装置。
【請求項2】
前記少なくとも一方の保持部材が有する挿入時に接する傾斜、取り出す時に接する傾斜は面で構成され、前記ロール紙の芯孔の内面と接し、前記ロール紙の軸方向に沿って起立する壁を前記保持部材に有することを特徴とする請求項1記載のロール紙保持装置。
【請求項3】
前記ロール紙の挿入時に接する傾斜面の幅方向両側に、該傾斜面の角度より大きい角度の周縁部が突出形成されていることを特徴とする請求項2記載のロール紙保持装置。
【請求項4】
前記周縁部は、ロール紙の挿入時に接する傾斜面の途中から形成されていることを特徴とする請求項3記載のロール紙保持装置。
【請求項5】
前記ロール紙を取り出すときに接する傾斜面は、該傾斜面の幅方向の略中央部が取り出し方向に向かって他の部分より盛り上がっていることを特徴とする請求項2記載のロール紙保持装置。
【請求項6】
前記少なくとも一方の保持部材が有する山形形状の傾斜は、線状材を所定の形状に屈曲形成したアーム材で構成されていることを特徴とする請求項1記載のロール紙保持装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか1項記載のロール紙保持装置を備え、且つ、前記ロール紙保持装置に保持されるロール紙に所定事項を印字する印字部を備えたことを特徴とする印字装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−184134(P2011−184134A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51166(P2010−51166)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000145068)株式会社寺岡精工 (317)
【Fターム(参考)】