説明

ロール紙繰り出し装置及びロール紙繰り出し方法

【課題】 ロール紙外周の折れ癖、セット時の弛み、ロール紙の厚さなどに影響されることなく、ロール紙の先端位置を高精度に判定し、安定したオートロードを行う。
【解決手段】 ロール紙Pを回転可能に支持する駆動ローラ11及び従動ローラ12と、従動ローラ12の回転を所定のトルクで制動するトルクリミッタ22と、従動ローラ12の回転を検出するエンコーダ23とを備えるとともに、オートロードに際し、駆動ローラ11をロール紙巻き取り方向bに駆動させながら、従動ローラ12の回転を監視し、従動ローラ12の回転が停止したとき、ロール紙先端Paが従動ローラ12と駆動ローラ11の間に到達したと判定し、その後、駆動ローラ11をロール紙繰り出し方向aに駆動させて、ロール紙先端Paをセパレータ17に向けて繰り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、ファクシミリ、ATM、POS端末、券売機などのロール紙使用機器に設けられるロール紙繰り出し装置に関し、特に、収納部に収納されたロール紙の先端を紙搬送路に自動的に繰り出すオートロード機能を備えたロール紙繰り出し装置や、そのロール紙繰り出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
収納部に収納されたロール紙の先端を紙搬送路に自動的に繰り出すオートロード機能を備えたロール紙繰り出し装置が知られている(例えば、特許文献1〜5参照)。この種のロール紙繰り出し装置としては、ロール紙のオートロードに際し、ロール紙の先端検出を行うものと、ロール紙の先端検出を行うことなく、ロール紙をオートロードするものとがある。
【0003】
図11は、従来例に係るロール紙繰り出し装置の側面図である。
この図に示すロール紙繰り出し装置は、ロール紙の先端検出を行うことなく、ロール紙をオートロードするものであり、駆動ローラ101、従動ローラ102、搬送ローラ103、クランプローラ104、タイミングベルト105、モータ106、セパレータ107、搬送ガイド108、搬送センサ109などを備えて構成されている。
【0004】
駆動ローラ101及び従動ローラ102は、収納部の底部に所定の間隔をあけて平行に配置され、収納部に収納されたロール紙Pを回転可能に支持する。駆動ローラ101及び搬送ローラ103は、タイミングベルト105を介して連動され、モータ106により駆動する。セパレータ107は、駆動ローラ101と従動ローラ102の間に配置され、ロール紙先端Paを分離して搬送ガイド108間の紙搬送路へ導く。搬送ローラ103及びクランプローラ104は、紙搬送路を挟んで配置され、紙搬送路に繰り出されたロール紙Pを挟持搬送する。また、搬送センサ109は、紙搬送路にてロール紙Pを検知する。
【0005】
上記のように構成されるロール紙繰り出し装置でオートロードを行う場合は、図11に示すように、駆動ローラ101を正転方向(ロール紙繰り出し方向)aに駆動し、ロール紙Pを繰り出し方向Aに回転させる。ロール紙Pの先端位置がセパレータ107に到達すると、セパレータ107で分離されたロール紙先端Paが紙搬送路に導かれ、オートロードが完了する。
【0006】
しかしながら、このようなロール紙繰り出し装置では、ロール紙先端Paのオートロードに際し、ロール紙Pを繰り出し方向Aに回転させるので、ロール紙先端Paが周囲に引っ掛かり易いという問題がある。また、ロール紙Pに弛みが発生し易いので、オートロード後に駆動ローラ101をロール紙巻き取り方向に駆動させ、ロール紙Pの弛みを除去する必要があった。
【0007】
一方、特許文献1〜4に示されるように、先端検出手段を備えるロール紙繰り出し装置では、駆動ローラをロール紙巻き取り方向に駆動させながら、ロール紙の先端位置を検出し、ロール紙先端が従動ローラと駆動ローラの間に到達した後、駆動ローラをロール紙繰り出し方向に駆動させて、ロール紙先端をセパレータに向けて繰り出すことができる。したがって、ロール紙先端のオートロードに際し、ロール紙先端が周囲に引っ掛かることがなく、また、ロール紙に弛みが生じにくいので、オートロード後の弛み除去動作も不要になる。
【特許文献1】特開平05−246610号公報
【特許文献2】特開平06−336061号公報
【特許文献3】特開平08−133534号公報
【特許文献4】特開平11−217139号公報
【特許文献5】特開平07−117920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1〜4に記載される先端検出手段は、光学センサやマイクロスイッチによって、ロール紙の膨らみHや段差を直接検出するので、ロール紙外周の折れ癖、セット時の弛み、ロール紙の厚さなどに影響を受け、ロール紙の先端位置を誤検知するおそれがあった。
【0009】
なお、特許文献5には、トルクリミッタ(従動ローラ制動手段)及びエンコーダ(従動ローラ回転検出手段)を備える従動ローラが開示されているが、この従動ローラは、補充用のロール紙を装填するロール紙補充部において、ロール紙の装填方向判定に利用されるものであり、ロール紙先端のオートロードに際し、ロール紙の先端位置判定に利用することを示すものではない。
【0010】
本発明は、上記の事情にかんがみなされたものであり、ロール紙外周の折れ癖、セット時の弛み、ロール紙の厚さなどに影響されることなく、ロール紙の先端位置を高精度に判定し、安定したオートロードを行うことができるロール紙繰り出し装置及びロール紙繰り出し方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため本発明のロール紙繰り出し装置は、収納部に収納されたロール紙を紙搬送路に繰り出すロール紙繰り出し装置であって、前記収納部の底部に所定の間隔をあけて平行に配置され、前記収納部に収納されたロール紙を回転可能に支持する駆動ローラ及び従動ローラと、前記駆動ローラと前記従動ローラの間に配置され、ロール紙先端を分離して前記紙搬送路へ導くセパレータと、前記従動ローラの回転を所定のトルクで制動する従動ローラ制動手段と、前記従動ローラの回転を検出する従動ローラ回転検出手段と、前記駆動ローラをロール紙繰り出し方向及びロール紙巻き取り方向に駆動制御する制御部とを備え、前記制御部が、前記駆動ローラをロール紙巻き取り方向に駆動させながら、前記従動ローラの回転を監視し、前記従動ローラの回転が停止したとき、ロール紙先端が前記従動ローラと前記駆動ローラの間に到達したと判定する先端位置判定手段と、ロール紙先端が前記従動ローラと前記駆動ローラの間に到達した後、前記駆動ローラをロール紙繰り出し方向に駆動させて、ロール紙先端を前記セパレータに向けて繰り出す先端繰り出し制御手段とを備える構成としてある。
【0012】
このように構成すれば、従動ローラの回転検出にもとづいて、ロール紙の先端位置を判定できるので、ロール紙外周の折れ癖、セット時の弛み、ロール紙の厚さなどに影響されることなく、ロール紙の先端位置を高精度に判定し、安定したオートロードを行うことが可能になる。
【0013】
また、本発明のロール紙繰り出し装置は、前記従動ローラ制動手段の制動トルクをT、前記従動ローラが受けるロール紙の荷重をF1、前記従動ローラとロール紙の摩擦係数をμ1、前記駆動ローラが受けるロール紙の荷重をF2、ロール紙同士の摩擦係数をμ2としたとき、F1μ1>T>F2μ2が成り立つ構成としてある。
このように構成すれば、ロール紙先端が従動ローラと駆動ローラの間に到達したとき、従動ローラの制動力でロール紙の回転を確実に停止させて、ロール紙の先端位置を精度良く判定することができる。
【0014】
また、本発明のロール紙繰り出し装置は、前記従動ローラ制動手段が、ロール紙のロール径に応じて制動トルクを自動的に調整する構成としてある。
このように構成すれば、ロール径に応じた適正なトルクで従動ローラの回転が制動されるので、ロール径の小さい使いかけのロール紙などをセットした場合でも、ロール紙先端位置を正確に判定し、安定したオートロードを行うことができる。
【0015】
また、本発明のロール紙繰り出し装置は、前記従動ローラ制動手段が、アームの角度に応じて制動トルクが変動する調整式トルクリミッタと、前記アームの先端部に設けられ、ロール紙の外周面に当接するローラと、前記アームをロール紙に向けて付勢するスプリングとを備える構成としてある。
このように構成すれば、ロール径に応じた制動トルクの自動調整を機械的に行うことができる。これにより、制御部の処理負担を軽減しつつ、ロール径に影響を受けない安定したオートロードが可能になる。
【0016】
また、本発明のロール紙繰り出し方法は、収納部に収納されたロール紙を紙搬送路に繰り出すロール紙繰り出し方法であって、前記収納部の底部に所定の間隔をあけて平行に配置され、前記収納部に収納されたロール紙を回転可能に支持する駆動ローラ及び従動ローラと、前記駆動ローラと前記従動ローラの間に配置され、ロール紙先端を分離して前記紙搬送路へ導くセパレータと、前記従動ローラの回転を所定のトルクで制動する従動ローラ制動手段と、前記従動ローラの回転を検出する従動ローラ回転検出手段と、前記駆動ローラをロール紙繰り出し方向及びロール紙巻き取り方向に駆動制御する制御部とを用い、前記駆動ローラをロール紙巻き取り方向に駆動させながら、前記従動ローラの回転を監視し、前記従動ローラの回転が停止したとき、ロール紙先端が前記従動ローラと前記駆動ローラの間に到達したと判定し、ロール紙先端が前記従動ローラと前記駆動ローラの間に到達した後、前記駆動ローラをロール紙繰り出し方向に駆動させて、ロール紙先端を前記セパレータに向けて繰り出す方法としてある。
【0017】
このような方法にすれば、従動ローラの回転検出にもとづいて、ロール紙の先端位置を判定することにより、ロール紙外周の折れ癖、セット時の弛み、ロール紙の厚さなどに起因する先端位置の誤検出を防止できる。その結果、ロール紙の先端位置を高精度に判定し、常に安定したオートロードを行うことが可能になる。
【0018】
また、本発明のロール紙繰り出し方法は、前記従動ローラ制動手段の制動トルクをT、前記従動ローラが受けるロール紙の荷重をF1、前記従動ローラとロール紙の摩擦係数をμ1、前記駆動ローラが受けるロール紙の荷重をF2、ロール紙同士の摩擦係数をμ2としたとき、F1μ1>T>F2μ2が成り立つ方法としてある。
このような方法にすれば、ロール紙先端が従動ローラと駆動ローラの間に到達したとき、従動ローラの制動力でロール紙の回転を確実に停止させて、ロール紙の先端位置を精度良く判定することができる。
【0019】
また、本発明のロール紙繰り出し方法は、前記従動ローラ制動手段が、ロール紙のロール径に応じて制動トルクを自動的に調整する方法としてある。
このような方法にすれば、ロール径に応じた適正なトルクで従動ローラの回転が制動されるので、ロール径の小さい使いかけのロール紙などをセットした場合でも、ロール紙先端位置を正確に判定し、安定したオートロードを行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、従動ローラの回転検出にもとづいて、ロール紙の先端位置を判定できるので、ロール紙外周の折れ癖、セット時の弛み、ロール紙の厚さなどに影響されることなく、ロール紙の先端位置を高精度に判定し、安定したオートロードを行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
[第一実施形態]
まず、本発明の第一実施形態について、図1〜図7を参照して説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係るロール紙繰り出し装置の側面図である。
この図に示すように、第一実施形態のロール紙繰り出し装置は、駆動ローラ11、従動ローラ12、搬送ローラ13、クランプローラ14、タイミングベルト15、モータ16、セパレータ17、搬送ガイド18、搬送センサ19などを備えて構成されている。
【0023】
駆動ローラ11及び従動ローラ12は、収納部の底部に所定の間隔をあけて平行に配置され、収納部に収納されたロール紙Pを回転可能に支持する。駆動ローラ11及び搬送ローラ13は、タイミングベルト15を介して連動され、モータ16により駆動する。セパレータ17は、駆動ローラ11と従動ローラ12の間に配置され、ロール紙先端Paを分離して搬送ガイド18間の紙搬送路へ導く。搬送ローラ13及びクランプローラ14は、紙搬送路を挟んで配置され、紙搬送路に繰り出されたロール紙Pを挟持搬送する。また、搬送センサ19は、紙搬送路にてロール紙Pを検知する。
【0024】
図2は、本発明の第一実施形態に係るロール紙繰り出し装置の平面図である。
この図に示すように、駆動ローラ11及び従動ローラ12は、セパレータ17やロール紙ガイド20と同様に、一対のフレーム21間で保持されている。従動ローラ12の軸部一端には、フレーム21で回転規制されたトルクリミッタ(従動ローラ制動手段)22が設けられており、このトルクリミッタ22によって従動ローラ12の回転が制動される。トルクリミッタ22の負荷トルク(制動トルク)Tは、従動ローラ12が受けるロール紙Pの荷重をF1、従動ローラ12とロール紙Pの摩擦係数をμ1、駆動ローラ11が受けるロール紙Pの荷重をF2、ロール紙P同士の摩擦係数をμ2としたとき、
F1μ1>T>F2μ2
が成り立つように設定されている。
【0025】
また、従動ローラ12の軸部他端には、従動ローラ12の回転を検出するエンコーダ(従動ローラ回転検出手段)23が設けられている。エンコーダ23は、例えば、周方向に所定の間隔で複数のスリットを形成した円盤23aと、円盤23aのスリットを検出する透過型光学センサ23bとを備えて構成されるものであり、その検出信号は、モータ16を駆動制御する制御部24に入力される。
【0026】
つぎに、本発明の第一実施形態に係るロール紙繰り出し装置のオートロード動作について、図3〜図7を参照して説明する。
図3は、本発明の第一実施形態に係るロール紙繰り出し装置の制御構成を示すブロック図、図4は、本発明の第一実施形態に係るロール紙繰り出し装置のオートロード処理手順を示すフローチャート、図5は、本発明の第一実施形態に係るロール紙繰り出し装置のオートロード開始状態を示す説明図、図6は、本発明の第一実施形態に係るロール紙繰り出し装置の先端位置判定状態を示す説明図、図7は、本発明の第一実施形態に係るロール紙繰り出し装置の先端繰り出し状態を示す説明図である。
【0027】
図3及び図4に示すように、ロール紙繰り出し装置のオートロード動作は、制御部24がオートロード処理ルーチンを実行することにより、所定の手順で行われるものであり、例えば、収納部のカバー開閉にもとづいてロール紙Pのセットを検知し、オートロード処理ルーチンを実行する。オートロード処理ルーチンでは、まず、モータ16の逆転駆動により(図4のS101、図5参照)、駆動ローラ11をロール紙巻き取り方向bに駆動させる。これにより、ロール紙Pは、巻き取り方向Bに回転するので、ロール紙先端Paがロール紙ガイド20の段差などに引っ掛かることなく、スムーズに回転することができる。
【0028】
図5に示すように、ロール紙先端Paが駆動ローラ11と従動ローラ12の間にないときは、従動ローラ12がロール紙Pとの摩擦でトルクTのブレーキ力を与えながら回転するが、図6に示すように、ロール紙先端Paが駆動ローラ11と従動ローラ12の間に到達すると、トルクリミッタ22のトルクTによりロール紙Pの外側一枚が剥離され、膨らみHが発生する。このとき駆動ローラ11は、ロール紙巻き取り方向bの回転駆動を継続するが、従動ローラ12は、トルクリミッタ22のトルクTにより停止する。そして、これをエンコーダ23で検知することにより(図4のS102:先端位置判定手段)、ロール紙先端Paが従動ローラ12と駆動ローラ11の間に到達したと判定することが可能になる。
なお、モータ16の逆転駆動時は、タイマt1をセットするとともに(図4のS103)、タイマt1が経過しても従動ローラ12が停止しないときは(図4のS104)、所定のエラー処理を行うことが好ましい(図4のS105)。
【0029】
従動ローラ12の回転停止を検知した後は、ロール紙先端Paがセパレータ17を通過するまでモータ16の逆転駆動を継続した後、モータ駆動を停止させる(図4のS106)。つぎに、図7に示すように、モータ16の正転駆動により(図4のS107:先端繰り出し制御手段)、駆動ローラ11をロール紙繰り出し方向aに回転させる。これにより、ロール紙先端Paは、セパレータ17により分離され、搬送ガイド18内の紙搬送路に繰り出される。このとき、従動ローラ12には、トルクリミッタ22によりトルクTのブレーキ力が働き、図6で発生した膨らみHが無くなるまで回転しないので、ロール紙Pに弛みを発生させることなく、ロール紙先端Paをオートロードすることができる。
【0030】
モータ16を正転駆動させた後は、搬送センサ19でオートロードの成功確認を行い(図4のS108)、モータ16の駆動を停止させる(S109)。これにより、オートロード処理が終了する。
なお、モータ16の正転駆動時は、タイマt2をセットするとともに(図4のS110)、タイマt2が経過しても搬送センサ19がロール紙先端Paを検出しないときは(図4のS111)、所定のエラー処理を行うことが好ましい(図4のS112)。
また、オートロード終了時、モータ16を停止することなくロール紙Pの搬送を継続し、図示しない下流の印字機構で印字を行ってもよい。
【0031】
以上のように構成された第一実施形態のロール紙繰り出し装置よれば、収納部の底部に所定の間隔をあけて平行に配置され、収納部に収納されたロール紙Pを回転可能に支持する駆動ローラ11及び従動ローラ12と、駆動ローラ11と従動ローラ12の間に配置され、ロール紙先端Paを分離して紙搬送路へ導くセパレータ17と、従動ローラ12の回転を所定のトルクで制動するトルクリミッタ22と、従動ローラ12の回転を検出するエンコーダ23と、駆動ローラ11をロール紙繰り出し方向a及びロール紙巻き取り方向bに駆動制御する制御部24とを備える。そして、制御部24は、駆動ローラ11をロール紙巻き取り方向bに駆動させながら、従動ローラ12の回転を監視し、従動ローラ12の回転が停止したとき、ロール紙先端Paが従動ローラ12と駆動ローラ11の間に到達したと判定し、更には、ロール紙先端Paが従動ローラ12と駆動ローラ11の間に到達した後、駆動ローラ11をロール紙繰り出し方向aに駆動させて、ロール紙先端Paをセパレータ17に向けて繰り出す。すなわち、第一実施形態のロール紙繰り出し装置は、従動ローラ12の回転検出にもとづいて、ロール紙Pの先端位置を判定することにより、ロール紙Pの外周の折れ癖、セット時の弛み、ロール紙Pの厚さなどに影響されることなく、ロール紙Pの先端位置を高精度に判定し、安定したオートロードを行うことが可能になる。
【0032】
また、第一実施形態のロール紙繰り出し装置は、トルクリミッタ22の制動トルクをT、従動ローラ12が受けるロール紙Pの荷重をF1、従動ローラ12とロール紙Pの摩擦係数をμ1、駆動ローラ11が受けるロール紙Pの荷重をF2、ロール紙P同士の摩擦係数をμ2としたとき、
F1μ1>T>F2μ2
が成り立つ構成としてあるので、ロール紙先端Paが従動ローラ12と駆動ローラ11の間に到達したとき、従動ローラ12の制動力でロール紙Pの回転を確実に停止させて、ロール紙Pの先端位置を精度良く判定することができる。
【0033】
[第二実施形態]
つぎに、本発明の第二実施形態について、図8〜図10を参照して説明する。ただし、第一実施形態と共通の構成については、第一実施形態と同じ符号を付し、第一実施形態の説明を援用する。
【0034】
図8は、本発明の第二実施形態に係るロール紙繰り出し装置の側面図、図9は、本発明の第二実施形態に係るロール紙繰り出し装置の平面図、図10は、本発明の第二実施形態に係るロール紙繰り出し装置の作用説明図である。
これらの図に示すように、第二実施形態のロール紙繰り出し装置は、基本的な構成が第一実施形態のロール紙繰り出し装置とほぼ同じであるが、ロール紙Pのロール径に応じて、従動ローラ12の制動トルクを自動的に調整する点が第一実施形態と相違している。
【0035】
図8及び図9に示すように、第二実施形態のロール紙繰り出し装置は、従動ローラ12の軸部一端に調整式トルクリミッタ25を備える。この調整式トルクリミッタ25は、アーム26の角度に応じてトルクT1〜T2が変動可能である。アーム26の先端部には、負荷無く回転できるローラ27が保持されており、アーム26を付勢するスプリング28の付勢力でローラ27がロール紙Pの外周面に当接される。これにより、ロール紙Pのロール径に応じてアーム26の角度が変化し、調整式トルクリミッタ25のトルクが自動調整されることになる。
【0036】
図8に示すように、ロール紙Pのロール径が大きい場合には、調整式トルクリミッタ25によりトルクT1の負荷が従動ローラ12にかかる。このときのトルクT1は、第一実施形態で説明したトルクTと同様であるため、問題なくロール紙Pをオートロードを行うことができる。
一方、図10に示すように、ロール紙Pのロール径が小さい場合には、アーム26の角度変化により調整式トルクリミッタ25のトルクがT2に調整される。このトルクT2は、従動ローラ12が受けるロール紙Pの荷重をF1p、ロール紙Pと従動ローラ12の摩擦係数をμ1、駆動ローラ11が受けるロール紙Pの荷重をF2p、ロール紙P同士の摩擦係数をμ2としたとき、
F1pμ1>T2>F2pμ2
が成り立つように設定されている。これにより、ロール紙Pのロール径に拘わらず、調整式トルクリミッタ25のトルクT1〜T2を適正化でき、その結果、ロール紙先端位置を正確に判定し、安定したオートロードを行うことができる。
【0037】
以上のように構成された第二実施形態のロール紙繰り出し装置によれば、ロール紙Pのロール径に応じて従動ローラ12の制動トルクを自動的に調整するので、ロール径に応じた適正なトルクで従動ローラ12の回転を制動でき、その結果、ロール径の小さい使いかけのロール紙Pなどをセットした場合でも、ロール紙Pの先端位置を正確に判定し、安定したオートロードを行うことができる。
【0038】
また、本実施形態では、アーム26の角度に応じて制動トルクが変動する調整式トルクリミッタ25と、アーム26の先端部に設けられ、ロール紙Pの外周面に当接するローラ27と、アーム26をロール紙Pに向けて付勢するスプリング28とを備えるので、ロール径に応じた制動トルクの自動調整を機械的に行うことができる。これにより、制御部24の処理負担を軽減しつつ、ロール径に影響を受けない安定したオートロードが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、プリンタ、ファクシミリ、ATM、POS端末、券売機などのロール紙使用機器に設けられるロール紙繰り出し装置に適用される。特に、収納部に収納されたロール紙の先端を紙搬送路に自動的に繰り出すオートロード機能を備えたロール紙繰り出し装置や、そのロール紙繰り出し方法において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第一実施形態に係るロール紙繰り出し装置の側面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係るロール紙繰り出し装置の平面図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係るロール紙繰り出し装置の制御構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係るロール紙繰り出し装置のオートロード処理手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第一実施形態に係るロール紙繰り出し装置のオートロード開始状態を示す説明図である。
【図6】本発明の第一実施形態に係るロール紙繰り出し装置の先端位置判定状態を示す説明図である。
【図7】本発明の第一実施形態に係るロール紙繰り出し装置の先端繰り出し状態を示す説明図である。
【図8】本発明の第二実施形態に係るロール紙繰り出し装置の側面図である。
【図9】本発明の第二実施形態に係るロール紙繰り出し装置の平面図である。
【図10】本発明の第二実施形態に係るロール紙繰り出し装置の作用説明図である。
【図11】従来例に係るロール紙繰り出し装置の側面図である。
【符号の説明】
【0041】
11 駆動ローラ
12 従動ローラ
13 搬送ローラ
14 クランプローラ
16 モータ
17 セパレータ
18 搬送ガイド
19 搬送センサ
21 フレーム
22 トルクリミッタ
23 エンコーダ
24 制御部
25 調整式トルクリミッタ
26 アーム
27 ローラ
28 スプリング
P ロール紙
Pa ロール紙先端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納部に収納されたロール紙を紙搬送路に繰り出すロール紙繰り出し装置であって、
前記収納部の底部に所定の間隔をあけて平行に配置され、前記収納部に収納されたロール紙を回転可能に支持する駆動ローラ及び従動ローラと、
前記駆動ローラと前記従動ローラの間に配置され、ロール紙先端を分離して前記紙搬送路へ導くセパレータと、
前記従動ローラの回転を所定のトルクで制動する従動ローラ制動手段と、
前記従動ローラの回転を検出する従動ローラ回転検出手段と、
前記駆動ローラをロール紙繰り出し方向及びロール紙巻き取り方向に駆動制御する制御部とを備え、
前記制御部が、
前記駆動ローラをロール紙巻き取り方向に駆動させながら、前記従動ローラの回転を監視し、前記従動ローラの回転が停止したとき、ロール紙先端が前記従動ローラと前記駆動ローラの間に到達したと判定する先端位置判定手段と、
ロール紙先端が前記従動ローラと前記駆動ローラの間に到達した後、前記駆動ローラをロール紙繰り出し方向に駆動させて、ロール紙先端を前記セパレータに向けて繰り出す先端繰り出し制御手段とを備える
ことを特徴とするロール紙繰り出し装置。
【請求項2】
前記従動ローラ制動手段の制動トルクをT、前記従動ローラが受けるロール紙の荷重をF1、前記従動ローラとロール紙の摩擦係数をμ1、前記駆動ローラが受けるロール紙の荷重をF2、ロール紙同士の摩擦係数をμ2としたとき、
F1μ1>T>F2μ2
が成り立つことを特徴とする請求項1記載のロール紙繰り出し装置。
【請求項3】
前記従動ローラ制動手段が、ロール紙のロール径に応じて制動トルクを自動的に調整することを特徴とする請求項1又は2記載のロール紙繰り出し装置。
【請求項4】
前記従動ローラ制動手段が、
アームの角度に応じて制動トルクが変動する調整式トルクリミッタと、
前記アームの先端部に設けられ、ロール紙の外周面に当接するローラと、
前記アームをロール紙に向けて付勢するスプリングとを備える
ことを特徴とする請求項3記載のロール紙繰り出し装置。
【請求項5】
収納部に収納されたロール紙を紙搬送路に繰り出すロール紙繰り出し方法であって、
前記収納部の底部に所定の間隔をあけて平行に配置され、前記収納部に収納されたロール紙を回転可能に支持する駆動ローラ及び従動ローラと、
前記駆動ローラと前記従動ローラの間に配置され、ロール紙先端を分離して前記紙搬送路へ導くセパレータと、
前記従動ローラの回転を所定のトルクで制動する従動ローラ制動手段と、
前記従動ローラの回転を検出する従動ローラ回転検出手段と、
前記駆動ローラをロール紙繰り出し方向及びロール紙巻き取り方向に駆動制御する制御部とを用い、
前記駆動ローラをロール紙巻き取り方向に駆動させながら、前記従動ローラの回転を監視し、前記従動ローラの回転が停止したとき、ロール紙先端が前記従動ローラと前記駆動ローラの間に到達したと判定し、
ロール紙先端が前記従動ローラと前記駆動ローラの間に到達した後、前記駆動ローラをロール紙繰り出し方向に駆動させて、ロール紙先端を前記セパレータに向けて繰り出す
ことを特徴とするロール紙繰り出し方法。
【請求項6】
前記従動ローラ制動手段の制動トルクをT、前記従動ローラが受けるロール紙の荷重をF1、前記従動ローラとロール紙の摩擦係数をμ1、前記駆動ローラが受けるロール紙の荷重をF2、ロール紙同士の摩擦係数をμ2としたとき、
F1μ1>T>F2μ2
が成り立つことを特徴とする請求項5記載のロール紙繰り出し方法。
【請求項7】
前記従動ローラ制動手段が、ロール紙のロール径に応じて制動トルクを自動的に調整することを特徴とする請求項5又は6記載のロール紙繰り出し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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