説明

ロール紙繰出装置、ロール紙保持装置、ロール紙繰出方法およびロール紙交換方法

【課題】ロール紙を搭載する装置に関する技術を提供する。
【解決手段】ロール紙から用紙を繰出すロール紙繰出装置であって、ロール紙を搭載する第1の搭載部と、搭載可能なロール紙の径が第1の搭載部に搭載可能なロール紙の径より小さい第2の搭載部と、第1の搭載部および第2の搭載部がロール紙を繰出し可能である場合に、第2の搭載部に搭載されたロール紙が第1の搭載部に搭載されたロール紙より先に無くなるように第1の搭載部および第2の搭載部に搭載されたロール紙を繰出し、第2の搭載部にロール紙が無い場合に第1の搭載部のロール紙を繰出す繰出制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙を搭載する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ATMや発券装置など、限られた筐体内のスペースに搭載したロール紙から用紙を繰出して明細票の作成や発券を行うロール紙繰出装置においては、ロール紙を補充してから次のロール紙を補充するまでの期間(以下、補充期間とも呼ぶ)を極力長くして運用することが、作業効率上重要である。補充期間を長くする技術の一つとして、一巻の大容量のロール紙を搭載する技術が以前から知られている。また、近年、同じ容量のロール紙を複数搭載可能なロール紙繰出装置が知られている。複数のロール紙を搭載可能なロール紙繰出装置に関する技術としては、例えば下記特許文献1,2の技術がある。
【0003】
特許文献1の技術は、ロール紙を複数搭載可能なロール紙繰出装置において、一方のロール紙が紙切れと成った場合に、他方のロール紙の繰出しに自動的に切替える機構を開示しており、複数のロール紙を搭載することによって補充期間を長くすることを可能としている。特許文献2の技術は、ロール紙を複数搭載可能なロール紙繰出装置において、作業者がロール紙を補充する際に不良発生頻度の高いロール紙の先端処理を行うことにより、不良発生時の迅速な対応を可能としている。また、一方のロール紙が紙切れとなり他方のロール紙へ切替える際に、先端処理の必要がなく、ロール紙切替えの高速化が望める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−21429号公報
【特許文献2】特開2001−105676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、大容量のロール紙を1巻搭載可能なロール紙繰出装置では、紙切れを回避するために、ロール紙を使い切らないまま新しいロール紙に入れ替えるので、ランニングコストの点で経済的でない。また、同じ容量のロール紙を2巻搭載可能なロール紙繰出装置にでは、ロール紙を補充するタイミングは、一方のロール紙が無くなった時〜両方のロール紙が無くなるまでであるが、限られた装置のスペースの中では、大容量ロール紙の半分程度のロール紙を2巻搭載することとなり、結果的に、頻繁にロール紙を補充しなければならない。
【0006】
本発明は、従来の課題を鑑みてなされたものであり、ロール紙を使い切る運用により、低ランニングコストでのロール紙繰出装置の運用を可能とすることを第1の目的とする。また、限られた装置スペースの制限の下、ロール紙の補充期間を長くすることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するために、以下の形態または適用例を取ることが可能である。
【0008】
[適用例1]
ロール紙から用紙を繰出すロール紙繰出装置であって、ロール紙を搭載する第1の搭載部と、搭載可能なロール紙の径が前記第1の搭載部に搭載可能なロール紙の径より小さい第2の搭載部と、前記第1の搭載部および第2の搭載部が前記ロール紙を繰出し可能である場合に、前記第2の搭載部に搭載されたロール紙が前記第1の搭載部に搭載されたロール紙より先に無くなるように前記第1の搭載部および第2の搭載部に搭載されたロール紙を繰出し、前記第2の搭載部にロール紙が無い場合に第1の搭載部のロール紙を繰出す繰出制御部とを備えるロール紙繰出装置。
【0009】
このロール紙繰出装置によると、ロール紙繰出装置内の一定のスペース内に、効率よくロール紙を搭載することが可能である。すなわち、ロール紙繰出装置内に搭載可能な最大の径のロール紙(第1のロール紙とも呼ぶ)を決定し、第1のロール紙を搭載する部分を第1の搭載部とする。そして、第1の搭載部に第1のロール紙を搭載後のロール紙繰出装置内のスペースにおいて、搭載可能な最大の径のロール紙(第2のロール紙とも呼ぶ)を決定し、第2のロール紙を搭載する部分を第2の搭載部とする。このようにロール紙を搭載することで、ロール紙繰出装置内に搭載可能な最大の径のロール紙を1巻搭載する場合や、同じ径のロール紙を2巻搭載する場合と比較して大容量のロール紙を搭載することができる。
【0010】
そして、このロール紙繰出装置では、第2の搭載部に搭載されたロール紙が第1の搭載部に搭載されたロール紙より先に無くなるように第1の搭載部および第2の搭載部に搭載されたロール紙を繰出す繰出制御部を備えるので、第2の搭載部のロール紙が繰出しにより無くなったあと、第1の搭載部に搭載している第1のロール紙が、繰出しによって第2の搭載部に搭載可能な径以下の残量であれば、そのロール紙を第2の搭載部に移動させ、第1の搭載部には未使用の新たな第1のロール紙を搭載することができ、常にロール紙を使い切るロール紙の運用が可能である。
【0011】
またロール紙の補充期間については、第2の搭載部に搭載したロール紙が繰出しによって無くなるまでの期間と、その後に第1の搭載部に搭載されたロール紙が第2の搭載部に搭載される残量となるまでの期間とを合わせた期間分を補充期間として確保することが可能である。すなわち、平均して、第1の搭載部に搭載されているロール紙1巻分を繰出しにより使い切る期間に相当する期間の補充期間を確保することができる。
【0012】
[適用例2]
適用例1記載のロール紙繰出装置であって、さらに、前記第1の搭載部に搭載された前記ロール紙が前記第2の搭載部に搭載可能な残量になったことを検知する残量検知部と、前記残量検知部が前記検知した場合に、検知結果を報知する報知部とを備えるロール紙繰出装置。
【0013】
このロール紙繰出装置によれば、適用例1で説明したロール紙の運用をする際に、ロール紙の移動を行う作業者が第1の搭載部に搭載されたロール紙が第2の搭載部に搭載可能な残量になったことを報知部を介して知ることができる。
【0014】
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載のロール紙繰出装置であって、さらに、前記第2の搭載部に搭載される前記ロール紙の径を、前記第2の搭載部に搭載可能なロール紙の径に規制する規制部を備えるロール紙繰出装置。
【0015】
このロール紙繰出装置によれば、第2の搭載部にロール紙を装着する作業者が、ロール紙繰出装置の機構や第1のロール紙に接触する径のロール紙を装着してしまう誤作業を回避することができる。
【0016】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか記載のロール紙繰出装置であって、前記繰出制御部は、前記第1の搭載部および第2の搭載部が前記ロール紙を繰出し可能である場合に、前記第2の搭載部に搭載されたロール紙を優先的に該ロール紙が無くなるまで連続して繰り出し、前記第2の搭載部に搭載されたロール紙が無くなってから前記第1の搭載部に搭載されたロール紙を繰り出すロール紙繰出装置。
【0017】
このロール紙繰出装置によると、第1の搭載部および第2の搭載部が前記ロール紙を繰出し可能である場合に、第2の搭載部に搭載されたロール紙を優先的に該ロール紙が無くなるまで連続して繰り出し、第2の搭載部に搭載されたロール紙が無くなってから第1の搭載部に搭載されたロール紙を繰り出す制御をすることで、簡易な制御によって、適用例1の繰出制御部による制御を実現することができる。
【0018】
[適用例5]
適用例3または適用例4に記載のロール紙繰出装置であって、前記規制部は、前記第2の搭載部に搭載される前記ロール紙の径を、前記第2の搭載部に搭載可能なロール紙の径に規制する仕切り板を備えるロール紙繰出装置。
【0019】
このロール紙繰出装置によると、仕切り板によって、第2の搭載部にロール紙を装着する作業者が、ロール紙繰出装置の機構や第1のロール紙に接触する径のロール紙を装着してしまう誤作業を回避することができる。
【0020】
[適用例6]
適用例3ないし適用例5のいずれか記載のロール紙繰出装置であって、前記規制部は、前記第2の搭載部に搭載される前記ロール紙の径を検知し、前記ロール紙の径が前記第2の搭載部に搭載可能なロール紙の径より大きい場合に報知する外径検知部を備えるロール紙繰出装置。
【0021】
このロール紙繰出装置によると、外径検知部によって、第2の搭載部にロール紙を装着する作業者が、ロール紙繰出装置の機構や第1のロール紙に接触する径のロール紙を装着してしまう誤作業を回避することができる。
【0022】
[適用例7]
ロール紙を保持するロール紙保持装置であって、ロール紙を保持する第1の保持部と、保持可能なロール紙の径が前記第1の保持部に保持可能なロール紙の径より小さい第2の保持部とを備えるロール紙保持装置。
【0023】
このロール紙保持装置によると、ロール紙保持装置内の一定のスペース内に、効率よくロール紙を保持することが可能である。すなわち、ロール紙保持装置内に保持可能な最大の径のロール紙(第1のロール紙とも呼ぶ)を決定し、第1のロール紙を保持する部分を第1の保持部とする。そして、第1の保持部に第1のロール紙を保持後のロール紙保持装置内のスペースに保持可能な最大の径のロール紙(第2のロール紙とも呼ぶ)を決定し、第2のロール紙を保持する部分を第2の保持部とする。このようにロール紙を保持することで、ロール紙保持装置内に保持可能な最大の径のロール紙を1巻保持する場合や、同じ径のロール紙を2巻保持する場合と比較して大容量のロール紙を保持することができる。
【0024】
[適用例8]
ロール紙から用紙を繰出すロール紙繰出方法であって、前記ロール紙を第1の搭載部に搭載し、前記第1の搭載部から前記ロール紙を繰出し、前記第1の搭載部に搭載され前記繰出しによって所定の残量以下となった前記ロール紙を、搭載可能なロール紙の径が前記第1の搭載部に搭載可能なロール紙の径より小さい第2の搭載部に搭載し、前記第1の搭載部および第2の搭載部が前記ロール紙を繰出し可能である場合に、前記第2の搭載部に搭載されたロール紙が前記第1の搭載部に搭載されたロール紙より先に無くなるように前記第1の搭載部および第2の搭載部に搭載されたロール紙を繰出し、前記第2の搭載部にロール紙が無い場合に第1の搭載部のロール紙を繰出すロール紙繰出方法。
【0025】
このロール紙繰出方法によると、ロール紙を使い切る運用を可能とし、またそのような運用をしても紙切れとなることを回避できる。よってロール紙のランニングコストを抑えることが可能である。
【0026】
[適用例9]
ロール紙を搭載する第1の搭載部と、搭載可能なロール紙の径が前記第1の搭載部に搭載可能なロール紙の径より小さい第2の搭載部と、前記第1の搭載部および第2の搭載部が前記ロール紙を繰出し可能である場合には、前記第1の搭載部に搭載されたロール紙が前記繰出しにより前記第2の搭載部に搭載可能な径となる前に、前記第2の搭載部に搭載されたロール紙が無くなるように前記第1の搭載部および第2の搭載部に搭載されたロール紙を繰出し、前記第1の搭載部にロール紙が無い場合には第2の搭載部のロール紙を繰出す繰出制御部とを備えるロール紙繰出装置において、ロール紙を交換するロール紙交換方法であって、前記第1の搭載部に搭載され前記繰出しにより前記第2の搭載部に搭載可能な径以下となった前記ロール紙を前記第2の搭載部に搭載し、前記第1の搭載部に搭載可能なロール紙を前記第1の搭載部に搭載するロール紙交換方法。
【0027】
このロール紙交換方法によると、ロール紙繰出装置を用いて、ロール紙を使い切る運用を可能とし、またそのような運用をしても紙切れとなることを回避できる。よってロール紙のランニングコストを抑えることが可能である。またロール紙の補充期間については、第2の搭載部に搭載したロール紙が繰出しによって無くなるまでの期間と、その後に第1の搭載部に搭載されたロール紙が第2の搭載部に搭載可能な径の残量となるまでの期間とを合わせた期間分を補充期間として確保することが可能である。すなわち、第1の搭載部に搭載されているロール紙1巻分を繰出しにより使い切る期間に相当する期間の補充期間を確保することができる。
【0028】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、ロール紙の搭載方法および装置、ロール紙印字装置、明細票発行装置、発券装置、ロール紙印字システム、それらの方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】ATM10の構成を概略的に示す説明図である。
【図2】明細票発行機構20の構成を説明する説明図である。
【図3】制御部70の構成を示すブロック図である。
【図4】ロール紙繰出方法の流れを説明した説明図である。
【図5】ロール紙繰出方法の流れを説明した説明図である。
【図6】ロール紙を1巻搭載可能な明細票発行機構を示す説明図である。
【図7】同じ容量のロール紙を2巻搭載可能な明細票発行機構を示す説明図である。
【図8】明細票発行機構20を用いたロール紙繰出方法の効果を示す説明図である。
【図9】変形例1を説明する説明図である。
【図10】変形例1を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
A.第1実施例:
(A1)ATM10の構成:
図1は、本発明の第1実施例としての現金自動取引装置(以降、「ATM」とも呼ぶ)10の構成を概略的に示す説明図である。ATM10は、例えば金融機関や小売店、公共施設等に設置され、顧客(利用者)の操作に基づき現金出納等の所定の取引処理を行う装置である。
【0031】
図1に示すように、ATM10は、装置前面に立つ顧客に対する前面パネル11と、顧客側に迫り出した操作テーブル12とを備えている。ATM10は、前面パネル11に、明細票発行機構20と、通帳取扱機構13と、カード取扱機構14と、紙幣入出金機構15と、硬貨入出金機構16とを備える。また、ATM10は、操作テーブル12に、顧客操作部17を備える。なお、図1においては、説明上必要としない一部の構成部については図示を省略している。このことは、後述する図においても同様である。
【0032】
明細票発行機構20は、顧客がATM10にて行った取引の内容を印字した明細票の発行を行う。通帳取扱機構13は、顧客の通帳の受け入れ/排出動作や、磁気ストライプを対象としたリード/ライト動作、通帳への印字動作等を行う。カード取扱機構14は、現金支払いや預け入れといった取引処理に必要な情報(以降、「顧客情報」とも呼ぶ。)が記録されたカードの受け入れ/排出動作や、カードに含まれる磁気ストライプを対象としたリード/ライト動作、カードのエンボス部分のイメージの読み取り動作等を行う。紙幣入出金機構15は、紙幣の入金/出金動作や、ATM10内部の図示しない紙幣収納部への搬送動作といった現金(紙幣)の管理を行う。硬貨入出金機構16は、硬貨の入金/出金動作や、ATM10内部の図示しない硬貨収納部への搬送動作といった現金(硬貨)の管理を行う。
【0033】
顧客操作部17は、例えば、入力機能と表示機能とを備えるタッチパネルにより構成されている。顧客操作部17は、種々の情報を画面に表示すると共に顧客の画面タッチ操作を検知することにより、顧客の取引操作を誘導したり、顧客による画面表示された項目の選択や暗証番号の入力等を受け付けたりするユーザインタフェースである。なお、顧客操作部17は、タッチパネルに代えて、ディスプレイと操作ボタンの組合せにより構成するものとしてもよい。
【0034】
図2は、明細票発行機構20の構成を説明する説明図である。明細票発行機構20はロール紙を搭載し、搭載したロール紙を繰出して印字およびカットして明細票として出力する。図2に示すように、明細票発行機構20はロール紙30およびロール紙40を搭載している。また、明細票発行機構20は、筐体25、軸受け27、第1搭載部32、第2搭載部42、ニアエンドセンサ33、仕切り板43、エンドセンサ34、エンドセンサ44、報知部35、ロール紙切替部50、印字部60、カット部62、搬送部64、放出口66、回収部68を備える。また、明細票発行機構20は、その動作全体を制御する制御部70を備える。制御部70については、図3にて説明をする。
【0035】
ロール紙30,40は各々、軸状の第1搭載部32および第2搭載部42に装着される。第1搭載部32および第2搭載部42は軸受け27で支持されている。2つのロール紙30,40の用紙は複数の搬送ローラで保持され、ロール紙切替部50まで繰出される。ロール紙切替部50は、ロール紙30およびロール紙40から繰出された用紙のうちの一方の用紙のみを印字部60に供給する。印字部60に供給された用紙は印字され、カット部62で所定の長さにカットされる。カットされた用紙は、放出口66まで、搬送部64が搬送し、放出口66から明細票として発行する。
【0036】
ロール紙30は、明細票5500枚分をロール状に巻いたものである。ロール紙30は、筐体25のスペース内に搭載可能なロール紙のうち、最も大きい径のロール紙である。ニアエンドセンサ33は、ロール紙30から用紙が繰出され、ロール紙30が第2搭載部42に搭載可能な大きさの径の残量(以下、規定残量とも呼ぶ)以下になったことを検知する赤外線を利用したセンサである。ニアエンドセンサ33によって、ロール紙30が規定残量以下であることを検知した場合、その旨を報知部35が明細票発行機構20の作業者に報知する。第2搭載部42に搭載可能な大きさのロール紙の径とは、第1搭載部32に搭載された未使用のロール紙30(すなわち明細票5500枚分のロール紙)や、筐体25内に備えられた他の機構部に接触しないロール紙の径を言う。仕切り板43は、設置によって、第2搭載部42に搭載可能な大きさのロール紙の径より大きい径のロール紙40を第2搭載部42に搭載できないように規制する板である。仕切り板43は、作業者等が過って第2搭載部42に搭載可能な大きさのロール紙の径より大きい径のロール紙40を第2搭載部42に搭載することを防止している。
【0037】
エンドセンサ34,44は、ロール紙30またはロール紙40の用紙が無く、ロール紙切替部50まで用紙が搬送されていないことを検知するセンサである。ロール紙切替部50は、エンドセンサ34,44が、ロール紙30またはロール紙40のいずれか一方の用紙が無いと検知した場合に、残量を有する他方のロール紙から用紙を繰出す機能部である。また、回収部68は、発行される明細票を顧客が取り忘れた場合や、誤印字が発生した場合に、その明細票を回収し収集する。ロール紙30,40、第1搭載部32、第2搭載部42、ニアエンドセンサ33、軸受け27、仕切り板43、回収部68は、筐体25に収納されている。
【0038】
図3は、明細票発行機構20全体の動作を制御する制御部70の構成を示すブロック図である。制御部70は、CPU71、ROM72、接続インターフェース75、RAM77、ネットワークインターフェイス(NT/IF)78を備える。CPU71、ROM72、接続インターフェース75、RAM77、NT/IF78は、バスによって互いに内部接続されている。接続インターフェース75は、ニアエンドセンサ33、エンドセンサ34,44、ロール紙切替部50、印字部60、カット部62、搬送部64と外部接続されている。
【0039】
ROM72は、上述したロール紙切替部50の動作を制御する切替制御部73を備える。ROM72はさらに、優先繰出部74を備える。優先繰出部74は、第1搭載部32および第2搭載部42の両方にロール紙30およびロール紙40が搭載されており、いずれのロール紙も繰出し可能である場合には、ロール紙40を優先的に繰出すようにロール紙切替部50の動作を制御する。切替制御部73および優先繰出部74はROM72に記憶されたプログラムであり、CPU71によって読み込まれ、CPU71がそれらの機能部としてロール紙切替部50を制御する。ROM72は、その他、ニアエンドセンサ33、エンドセンサ34,44、ロール紙切替部50、印字部60、カット部62、搬送部64等を接続インターフェース75を介して制御する制御部も備えているが、説明の便宜上図示を省略した。
【0040】
NT/IF78は、ネットワークを介して報知部35と接続されている。報知部35は、ATM10の管理者の元に備えられており、制御部70は、ネットワークを介して報知部35を制御する。なお、本実施例では、説明の便宜上、明細票発行機構20の制御部である制御部70が直接に報知部35を制御するとしているが、制御部70が、ATM10全体の動作を制御する制御装置(以下、ATM制御装置とも呼ぶ)に報知部35を制御する制御信号を送信し、ATM制御装置が報知部35を制御するとしてもよい。
【0041】
(A2)ロール紙繰出方法:
明細票発行機構20を用いて行われるロール紙の繰出し方法について説明する。図4および図5は、ロール紙繰出方法の流れを説明した説明図である。図4は、ロール紙繰出方法の工程を示している。図5は、ロール紙繰出方法によるロール紙30およびロール紙40の状態の変化を図によって表している。ロール紙繰出方法は、明細票発行機構20にロール紙30およびロール紙40が搭載されていない状態を初期状態として説明する。
【0042】
ロール紙繰出方法として、最初に、作業者が第1搭載部32に未使用のロール紙30(明細票5500枚分)をセットし、明細票発行機構20の通常動作を開始する。すなわち、ATM10の通常運転を開始する(ステップS102)。この状態の場合、ロール紙30の用紙は、搬送ローラおよびエンドセンサ34を通り、ロール紙切替部50まで搬送される。第2搭載部42にはロール紙40は搭載されていない。従って、エンドセンサ34は「用紙有り」、エンドセンサ44は「用紙無し」と検知し、ロール紙切替部50は切替制御部73の制御により、ロール紙30を繰出す。そして印字部60で印字され、カット部62でカットされることにより、放出口66から明細票が放出口66から発行される(図4:ステップS104、図5:状態T104)。
【0043】
明細票発行機構20は、ロール紙30からの用紙の繰出しによる明細票の発行を、ロール紙30の残量が規定残量以下、すなわち第2搭載部42に搭載可能な大きさの径の残量以下になるまで、顧客との取引毎に繰り返す。そして、ロール紙30が規定残量以下になると、ニアエンドセンサ33が検知し、報知部35によって作業者に報知する。作業者への報知後も、作業者がロール紙の交換作業を行うまではロール紙切替部50によって、ロール紙30が繰出される(図4:ステップS106、図5:状態T106)。
【0044】
報知部35を介して作業者に報知後、作業者が、規定残量以下となったロール紙30をロール紙40として第2搭載部42にセットする。そして、第1搭載部32には新たな未使用のロール紙30(明細票5500枚分)をセットし、ATM10の通常運転を開始する(図4:ステップS108、図5:状態T108)。
【0045】
ATM10の通常運転を開始すると、第1搭載部32、第2搭載部42にはロール紙30およびロール紙40が搭載されているので、エンドセンサ34は「用紙有り」、エンドセンサ44も「用紙有り」と検知する。この場合、優先繰出部74によってロール紙切替部50を制御して、ロール紙40を優先的に先に繰出して明細票として発行する。ロール紙40を優先的に繰出して明細票の発行を続けると、ロール紙40の残量が減少する(図4:ステップS110、図5:状態T110)。
【0046】
その後、ロール紙40の残量が無くなる。この時、エンドセンサ34は「用紙有り」と検知し、エンドセンサ44は「用紙無し」と検知する。この状態はステップS104と同じ状態であり、ATM10の運転を継続する場合は(ステップS112:NO)、再び、図4のステップS104(すなわち、図5:状態T104)からの工程を繰り返し行う。このようにしてロール紙繰出方法は行われる。
【0047】
以上説明したように、明細票発行機構20を用いてロール紙繰出方法を行うと、ロール紙の補充までの期間は、平均して、明細票5500枚分の発行つき1回の割合で行うこととなる。ロール紙の補充期間をロール紙の発行枚数で換算すると、他のロール紙の繰出し方法と比較して、上記実施例のロール紙繰出方法は補充期間が長い。図6〜図8は、明細票発行機構20を用いたロール紙繰出方法が、他の明細票発行機構を用いたロール紙繰出方法と比較して補充期間が長いこと具体的に説明する説明図である。図6〜図8のいずれの明細票発行機構もロール紙を搭載可能な筐体のスペースを横338mm×縦216mmとしている。
【0048】
図6はロール紙を1巻搭載可能な明細票発行機構を示している。図7は同じ容量のロール紙を2巻搭載可能な明細票発行機構を示している。図8は本実施例における明細票発行機構20を示している。図6の明細票発行機構は最大φ216mmのロール紙を1巻、図7の明細票発行機構は、ロール紙同士が互いに接触しないような空間を考慮すると最大φ160mmのロール紙を2巻、図8の明細票発行機構(明細票発行機構20)は、最大φ216mmを1巻と、最大φ102mmのロール紙を1巻搭載可能である。
【0049】
例えば、ロール紙の内径をφ33.4mm、用紙厚を65μm、明細票1枚分の長さを100mmとすると、それぞれの明細票発行機構に搭載可能なロール紙に巻かれる明細票数は、図6の明細票発行機構が約5500枚、図7の明細票発行機構が約2960枚×2巻で約5920枚、図8の明細票発行機構が5500枚を1巻と約1170枚を1巻で合計約6670枚となる。すなわち、本実施例の明細票発行機構20は、一定の筐体内に最も多くの明細票を搭載することが可能であり、最も筐体のスペースを効率良く利用していることがわかる。
【0050】
そして、補充期間については、図6の明細票発行機構ではロール紙残量が有る間に新しいロール紙に交換する必要があることから補充期間は明細票5500枚以下の発行に対して1回、図7の明細票発行機構は平均して搭載しているロール紙1巻分すなわち明細票2960枚の発行に対して1回、図8の明細票発行機構20は、平均して明細票5500枚の発行に対して1回であり、明細票発行機構20の機構を用いたロール紙繰出方法が最も補充期間が長い。すなわち、明細票発行機構20は作業効率の向上を実現している。
【0051】
また、明細票発行機構20を用いたロール紙繰出方法の場合、ロール紙を使い切る運用が可能であることから、図6の明細票発行機構のように残量を残して新しいロール紙の交換する必要が無い。よって低ランニングコストによる運用が可能である。
【0052】
さらに、ロール紙30とロール紙40といった2種類の径のロール紙を搭載するにも関わらず、使用途中のロール紙30をロール紙40として用いることから、1種類のロール紙のみでの運用が可能であり、ロール紙の運用の簡易化を実現している。
【0053】
特許請求の範囲との対応関係としては、明細票発行機構20が特許請求の範囲に記載のロール紙繰出装置に対応し、第1搭載部32が特許請求の範囲に記載の第1の搭載部に対応し、第2搭載部42が特許請求の範囲に記載の第2の搭載部に対応し、切替制御部73および優先繰出部74が特許請求の範囲に記載の繰出制御部に対応する。
【0054】
B.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0055】
(B1)変形例1:
上記実施例では、明細票発行機構20は、作業者等が過って第2搭載部42に搭載可能な大きさのロール紙の径より大きい径のロール紙40を第2搭載部42に搭載することを防止するため仕切り板43を備えるとしたが、他の構成を採用することによって、仕切り板43と同じ目的を達成することも可能である。例えば図9に示したように、回転軸を有する回転子82を、ロール紙40の径を規制する位置に複数備えるとしてもよい。
【0056】
その他、図10に示すように、ロール紙40の径を規制する位置にロール紙40を外径を検知する外径検知センサ84、および作業者に報知する報知部86を設け、第2搭載部42に搭載可能な大きさのロール紙の径より大きい径のロール紙40を第2搭載部42に搭載した場合に、報知部86が作業者に報知するとしてもよい。また、外径検知センサ84および報知部86と、仕切り板43または回転子82を組み合わせて用いるとしてもよい。このようにしても、上記実施例と同様の効果を得ることが可能である。
【0057】
(B2)変形例2:
上記実施例では、本発明におけるロール紙繰出装置をATM10の明細票発行機構20に適用して説明したが、それに限ることなく、例えば、ロール紙を用いてチケットを発券する発券装置や、ロール紙に領収書を印字する会計用レジスタなど、ロール紙から用紙を繰出す装置に適用可能であり、上記実施例と同様の効果を得ることが可能である。
【0058】
(B3)変形例3:
上記実施例では、ロール紙を搭載する筐体は直方体であったが、それに限らず、筐体として様々な形状を採用することが可能である。例えば、円柱形、楕円の柱状をした形状、矩形柱など、ロール紙が搭載可能な形状であれば種々の形状を採用することが可能である。この場合、その筐体に搭載可能な第1のロール紙を決定し、その後、その筐体に第1のロール紙を搭載した状態で搭載可能な第2のロール紙を決定することで、上記実施例と同様の効果を得ることが可能である。
【0059】
(B4)変形例4:
上記実施例では、明細票発行機構20がロール紙30とロール紙40の両方を搭載する場合には、ロール紙切替部50によって、先にロール紙40を繰出して使用する制御を行う優先繰出部74を備えるとしたが、それに限ることなく、ロール紙30が規定残量以下になる前にロール紙40が無くなるようにロール紙30およびロール紙40を繰出すようにロール紙切替部50を制御すれば、上記実施例と同様の効果を得ることが可能である。例えば、ロール紙30とロール紙40とを交互に使用するように用紙を繰出したとしても、結果的に、ロール紙30が規定残量以下になる前にロール紙40が無くなるようにロール紙30およびロール紙40を繰出せば上記実施例と同様の効果を得ることができる。また、補充期間の若干のバラツキを許容できる場合には、ロール紙30が無くなる前にロール紙40が無くなるようにロール紙30およびロール紙40を繰出す制御をロール紙切替部50に対して行えば、上記実施例と同様の効果を得ることが可能である。
【0060】
(B5)変形例5:
上記実施例においてソフトウェアで実現されている機能の一部をハードウェアで実現してもよく、あるいは、ハードウェアで実現されている機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0061】
10…ATM
11…前面パネル
12…操作テーブル
13…通帳取扱機構
14…カード取扱機構
15…紙幣入出金機構
16…硬貨入出金機構
17…顧客操作部
20…明細票発行機構
25…筐体
27…軸受け
30…ロール紙
32…第1搭載部
33…ニアエンドセンサ
34…エンドセンサ
35…報知部
40…ロール紙
42…第2搭載部
43…仕切り板
44…エンドセンサ
50…ロール紙切替部
60…印字部
62…カット部
64…搬送部
66…放出口
68…回収部
70…制御部
71…CPU
72…ROM
73…切替制御部
74…優先繰出部
77…RAM
78…NT/IF
82…回転子
84…外径検知センサ
86…報知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール紙から用紙を繰出すロール紙繰出装置であって、
ロール紙を搭載する第1の搭載部と、
搭載可能なロール紙の径が前記第1の搭載部に搭載可能なロール紙の径より小さい第2の搭載部と、
前記第1の搭載部および第2の搭載部が前記ロール紙を繰出し可能である場合に、前記第2の搭載部に搭載されたロール紙が前記第1の搭載部に搭載されたロール紙より先に無くなるように前記第1の搭載部および第2の搭載部に搭載されたロール紙を繰出し、前記第2の搭載部にロール紙が無い場合に第1の搭載部のロール紙を繰出す繰出制御部と
を備える
ロール紙繰出装置。
【請求項2】
請求項1記載のロール紙繰出装置であって、さらに、
前記第1の搭載部に搭載された前記ロール紙が前記第2の搭載部に搭載可能な残量になったことを検知する残量検知部と、
前記残量検知部が前記検知した場合に、検知結果を報知する報知部と
を備えるロール紙繰出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のロール紙繰出装置であって、さらに、
前記第2の搭載部に搭載される前記ロール紙の径を、前記第2の搭載部に搭載可能なロール紙の径に規制する規制部を備える
ロール紙繰出装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか記載のロール紙繰出装置であって、
前記繰出制御部は、前記第1の搭載部および第2の搭載部が前記ロール紙を繰出し可能である場合に、前記第2の搭載部に搭載されたロール紙を優先的に該ロール紙が無くなるまで連続して繰り出し、前記第2の搭載部に搭載されたロール紙が無くなってから前記第1の搭載部に搭載されたロール紙を繰り出す
ロール紙繰出装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載のロール紙繰出装置であって、
前記規制部は、前記第2の搭載部に搭載される前記ロール紙の径を、前記第2の搭載部に搭載可能なロール紙の径に規制する仕切り板を備える
ロール紙繰出装置。
【請求項6】
請求項3ないし請求項5のいずれか記載のロール紙繰出装置であって、
前記規制部は、前記第2の搭載部に搭載される前記ロール紙の径を検知し、前記ロール紙の径が前記第2の搭載部に搭載可能なロール紙の径より大きい場合に報知する外径検知部を備える
ロール紙繰出装置。
【請求項7】
ロール紙を保持するロール紙保持装置であって、
ロール紙を保持する第1の保持部と、
保持可能なロール紙の径が前記第1の保持部に保持可能なロール紙の径より小さい第2の保持部と
を備える
ロール紙保持装置。
【請求項8】
ロール紙から用紙を繰出すロール紙繰出方法であって、
前記ロール紙を第1の搭載部に搭載し、
前記第1の搭載部から前記ロール紙を繰出し、
前記第1の搭載部に搭載され前記繰出しによって所定の残量以下となった前記ロール紙を、搭載可能なロール紙の径が前記第1の搭載部に搭載可能なロール紙の径より小さい第2の搭載部に搭載し、
前記第1の搭載部および第2の搭載部が前記ロール紙を繰出し可能である場合に、前記第2の搭載部に搭載されたロール紙が前記第1の搭載部に搭載されたロール紙より先に無くなるように前記第1の搭載部および第2の搭載部に搭載されたロール紙を繰出し、
前記第2の搭載部にロール紙が無い場合に第1の搭載部のロール紙を繰出す
ロール紙繰出方法。
【請求項9】
ロール紙を搭載する第1の搭載部と、搭載可能なロール紙の径が前記第1の搭載部に搭載可能なロール紙の径より小さい第2の搭載部と、前記第1の搭載部および第2の搭載部が前記ロール紙を繰出し可能である場合には、前記第1の搭載部に搭載されたロール紙が前記繰出しにより前記第2の搭載部に搭載可能な径となる前に、前記第2の搭載部に搭載されたロール紙が無くなるように前記第1の搭載部および第2の搭載部に搭載されたロール紙を繰出し、前記第1の搭載部にロール紙が無い場合には第2の搭載部のロール紙を繰出す繰出制御部とを備えるロール紙繰出装置において、ロール紙を交換するロール紙交換方法であって、
前記第1の搭載部に搭載され前記繰出しにより前記第2の搭載部に搭載可能な径以下となった前記ロール紙を前記第2の搭載部に搭載し、
前記第1の搭載部に搭載可能なロール紙を前記第1の搭載部に搭載する
ロール紙交換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−46332(P2012−46332A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190793(P2010−190793)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】