説明

ワイヤハーネス及びワイヤハーネスのオフセット形成方法

【課題】オフセット部分での浮き上がりなく被配索側へ配索することができるワイヤハーネス及びワイヤハーネスのオフセット部分を容易に形成することが可能なワイヤハーネスのオフセット形成方法を提供する。
【解決手段】複数のケーブル13を平面状に一体化したフラットケーブル14からなるワイヤハーネス11であって、ケーブル13の配列面内において、一方向へ湾曲され、さらに、他方向へ湾曲されたオフセット部21を有し、延在方向が幅方向へずらされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に用いられるワイヤハーネス及びワイヤハーネスのオフセット形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のセンターコンソール等に配索される電気配線用のワイヤハーネスとして、複数のケーブルを平面状に配列させたフラットケーブルからなるものがある。
【0003】
ところで、ワイヤハーネスは、センターコンソール等の被配索側の形状や被配索側に取り付けられた部品等によって、配索経路を直線状とすることができない場合がある。このような場合、ワイヤハーネスの一部を折り返して配索経路をオフセットすることにより対応していた(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−62543号公報
【特許文献2】特開平8−315641号公報
【特許文献3】特開2003−112584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、フラットケーブルを折り返すことにより、配索経路をオフセットしたワイヤハーネスは、その折り返し部分における厚みが厚くなり、また、フラットケーブルの復元力で折り返し部分が浮き上がってしまう。したがって、このワイヤハーネスを配索すると、折り返した部分(オフセット部分)における被配索側への密着力の低下によりワイヤハーネスの脱落を招くおそれがある。
【0006】
また、フラットケーブルを折り返して配索経路をオフセットしたワイヤハーネスを形成するには、オフセットさせるフラットケーブルを、折り返し箇所を中心として大きく振り回さなければならず、したがって、広い作業スペースが必要であった。しかも、折り返しの際に、折り返し側のフラットケーブルを大きく振り回すため、筺体や配索治具から外した状態としておく必要があった。つまり、被配索側に配索しながら配索方向をオフセットさせることができず、配索方向をオフセットさせるためだけの工程が別途必要であった。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、オフセット部分での浮き上がりなく被配索側へ配索することができるワイヤハーネス及びワイヤハーネスのオフセット部分を容易に形成することが可能なワイヤハーネスのオフセット形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係るワイヤハーネスは、下記(1)または(2)を特徴としている。
(1) 複数のケーブルを平面状に一体化したフラットケーブルからなるワイヤハーネスであって、
前記ケーブルの配列面内において、一方向へ湾曲され、さらに、他方向へ湾曲されたオフセット部を有し、延在方向が幅方向へずらされていること。
(2) 上記(1)の構成のワイヤハーネスにおいて、
幅方向に分割されて複数の分割ケーブルとされ、前記分割ケーブルの少なくとも一つに前記オフセット部が設けられていること。
【0009】
上記(1)の構成のワイヤハーネスでは、オフセット部にて一方向へ湾曲され、さらに他方向へ湾曲されて延在方向が幅方向へずらされているので、被配索側の形状や取り付けられた部品等によって、直線状の配索経路が確保できないような場合でも、障害物を避けて配索することができる。
また、フラットケーブルを折り返すことにより幅方向へオフセットさせたものと比較して、オフセット部における浮き上がりを防止することができる。つまり、被配索側に対するワイヤハーネスの良好な密着性を確保することができ、よって、被配索側への密着性の低下による脱落なく配索することができる。
上記(2)の構成のワイヤハーネスでは、障害物によって直線的に配索することができないためにオフセットが必要な箇所だけを避けて配索することができる。
【0010】
また、上述した目的を達成するために、本発明に係るワイヤハーネスのオフセット形成方法は、下記(3)または(4)を特徴としている。
(3) 複数のケーブルを平面状に一体化したフラットケーブルを、その長手方向の所定範囲において前記ケーブル毎に分離させる分離工程と、
前記所定範囲にて前記ケーブル毎に分離された前記フラットケーブルを、軸方向へ圧縮させながら前記ケーブルの配列面内において互いに反対方向へ二度湾曲させてオフセットさせるオフセット工程と、を含むこと。
(4) 上記(3)の構成のワイヤハーネスのオフセット形成方法において、
前記フラットケーブルを予め幅方向に分割された複数の分割ケーブルとする分割工程を含み、
前記分割ケーブルの少なくとも一つに対して前記分離工程と前記オフセット工程を行うこと。
【0011】
上記(3)のワイヤハーネスのオフセット形成方法では、フラットケーブルを、その長手方向の所定範囲においてケーブル毎に分離させ、ケーブル毎に分離させたフラットケーブルを、軸方向へ圧縮させながらケーブルの配列面内において互いに反対方向へ二度湾曲させることにより、極めて容易に延在方向が幅方向へずらされたワイヤハーネスとすることができる。
したがって、折り返してオフセットする場合のように、折り返し箇所を中心としてフラットケーブルを大きく振り回す必要がなく、よって、狭いスペースにて容易にオフセットさせることができる。これにより、被配索側に配索しながら配索方向をオフセットすることができ、配索作業性を大幅に向上させることができる。
上記(4)のワイヤハーネスのオフセット形成方法では、障害物によって直線的に配索することができないために必要な箇所だけがオフセットされたワイヤハーネスを容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、オフセット部分での浮き上がりなく被配索側へ配索することができるワイヤハーネス及びワイヤハーネスのオフセット部分を容易に形成することが可能なワイヤハーネスのオフセット形成方法を提供できる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ワイヤハーネスが配索されたセンターコンソールの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るワイヤハーネスのオフセット部における平面図である。
【図3】センターコンソールへのワイヤハーネスの配索の仕方を説明する配索箇所の一部の斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るワイヤハーネスのオフセット部における平面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るワイヤハーネスのオフセット形成方法を説明する図であって、(a)〜(c)は、それぞれワイヤハーネスのオフセット部における平面図である。
【図6】参考例に係るワイヤハーネスのオフセット形成方法を説明する図であって、(a)〜(d)は、それぞれワイヤハーネスのオフセット部における平面図である。
【図7】参考例に係るワイヤハーネスのオフセット部における斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
【0016】
図1はワイヤハーネスが配索されたセンターコンソールの斜視図、図2は本発明の実施形態に係るワイヤハーネスのオフセット部における平面図、図3はセンターコンソールへのワイヤハーネスの配索の仕方を説明する配索箇所の一部の斜視図、図4は本発明の実施形態に係るワイヤハーネスのオフセット部における平面図である。
【0017】
図1に示すように、ワイヤハーネス11は、例えば、自動車等の車両に組み付けられるセンターコンソール(被配索側)12の配索面12aの配索箇所Aに配索される。
【0018】
このワイヤハーネス11は、図2に示すように、複数本のケーブル13を平面状に配列させて外被によって一体化させたフラットケーブル14から構成されている。
【0019】
このワイヤハーネス11は、その一部が湾曲したオフセット部21を有している。オフセット部21では、ワイヤハーネス11の幅方向の一部分(図2では約半分)がオフセットケーブル(分割ケーブル)22とされ、このオフセットケーブル22が、他の部分のストレートケーブル(分割ケーブル)23側(一方向)へ湾曲され、さらに、ストレートケーブル23の延在方向(他方向)へ湾曲され、ストレートケーブル23に沿わされている。
【0020】
ここで、ワイヤハーネス11のオフセットケーブル22は、オフセット部21にて、各ケーブル13が、折り返されずに、それぞれケーブル13の配列面内において互いに反対方向へ二度湾曲されている。したがって、オフセット部21では、その厚さがフラットケーブル14を2枚積層した程度の厚さに抑えられている。
【0021】
そして、このオフセット部21を有するワイヤハーネス11では、センターコンソール12の形状やセンターコンソール12に取り付けられた部品等によって、直線状の配索経路が確保できないような場合でも、障害物を避けて直線的に配索することができる。
【0022】
なお、このワイヤハーネス11は、センターコンソール12における配索箇所Aに対して、接着テープ又はホットメルトタイプの接着材などによって固定される。
【0023】
このとき、オフセット部21は、フラットケーブル14を2枚積層した程度の厚さであり、また折り返しが無いため、センターコンソール12の配索箇所Aからの浮き上がりなく固定することができる。つまり、センターコンソール12に対するワイヤハーネス11の良好な密着性を確保することができ、よって、センターコンソール12への密着性の低下による脱落なく、ワイヤハーネス11をセンターコンソール12の配索箇所Aに、容易に位置決めして配索することができる。
【0024】
ここで、図3に示すものは、センターコンソール12の形状等によって直線的に配索することができない配索箇所における配索例を示している。このような配索箇所においては、図4に示すように、予めオフセット部21にてオフセットさせたワイヤハーネス11を用いる。そして、このワイヤハーネス11を、接着テープ又は接着材によって、センターコンソール12の配索面に貼り付けながら配索する。
【0025】
このようにすると、被配索側であるセンターコンソール12の配設面に密着させて内倒れなく配索することができる。つまり、配索寸法誤差を含んだ配索長を考慮しなければならない三次元的な配索や車両の走行時の振動によって破損したり異音を発生させるような空中配索をなくすことができる。特に、空中配索部分がないので、車両組立時に他の部品が空中配索部分に引っ掛かり、組立作業に支障が生じるような不具合もなくすことができる。
【0026】
次に、ワイヤハーネス11にオフセット部21を形成する方法について説明する。
【0027】
まず、図5(a)に示すように、ワイヤハーネス11を長手方向へ切断することにより、オフセットさせるオフセットケーブル22とストレートケーブル23とに分割する(分割工程)。
【0028】
また、オフセットケーブル22のオフセット部21を形成するオフセット区間において、一体化されているケーブル13同士の間にスリットを形成することにより、これらケーブル13を分離させて単線化させる(分離工程)。
【0029】
なお、ケーブル13同士が外被を形成する樹脂からなるブリッジによって連結されている場合、このブリッジを打ち抜いてケーブル13を単線化するのが好ましい。
【0030】
次に、図5(b)に示すように、オフセットケーブル22を、軸方向へ圧縮させるようにして、ケーブル13の配列面内において互いに反対方向へ二度水平移動させて湾曲させる。
【0031】
そして、図5(c)に示すように、オフセットケーブル22を、ストレートケーブル23に沿わせる(オフセット工程)。
【0032】
このようにして、オフセットケーブル22をオフセットさせたら、オフセット部21におけるオフセットケーブル22を接着テープ又は接着材によって固定する。
【0033】
上記ワイヤハーネスのオフセット形成方法によれば、フラットケーブル14を、その長手方向の所定範囲においてケーブル13に分離させ、ケーブル13に分離させたフラットケーブル14を、軸方向へ圧縮させながらケーブル13の配列面内において互いに反対方向へ二度湾曲させることにより、極めて容易に延在方向が幅方向へずらされたワイヤハーネス11とすることができる。
【0034】
したがって、折り返してオフセットする場合のように、折り返し箇所を中心としてフラットケーブル14を大きく振り回す必要がなく、よって、狭いスペースにて容易にオフセットさせることができる。これにより、センターコンソール12に配索しながら同時に配索方向をオフセットすることができる。つまり、オフセットさせるためだけの別途の工程を不要とすることができ、配索作業性を大幅に向上させることができる。
【0035】
ここで、本発明の更なる優位性を説明するため、図6及び図7に参考例を示す。
【0036】
図6はワイヤハーネスのオフセット形成方法を説明する図であり、図7はオフセットしたワイヤハーネスの斜視図である。
【0037】
この参考例では、ワイヤハーネスを折り返すことにより、ワイヤハーネスにオフセット部を形成する。
【0038】
具体的には、図6(a)に示すように、まず、ワイヤハーネス11を長手方向へ切断することにより、オフセットさせるオフセットケーブル22とストレートケーブル23とに分割する。次に、図6(b)に示すように、オフセットケーブル22を、ストレートケーブル23側へ折り返す。さらに、図6(c)に示すように、折り返したオフセットケーブル22を、さらに折り返す。そして、図6(d)に示すように、2度折り返したオフセットケーブル22を、ストレートケーブル23に沿わせる。
【0039】
このようにしてオフセット部21を形成する場合、折り返し箇所を中心としてオフセットケーブル22を大きく振り回さなければならず、広いスペースが必要となる。しかも、折り返しの際に、折り返し側のオフセットケーブル22を大きく振り回すため、折り返し側のオフセットケーブル22を、センターコンソール12や配索治具から外した状態としておく必要がある。つまり、センターコンソール12に配索しながら配索方向をオフセットすることができず、配索方向をオフセットするためだけの工程が別途必要となる。
【0040】
そして、このようにして形成したオフセット部21は、図7に示すように、オフセット部21における厚みが厚くなる。
【0041】
また、配索箇所に固定しても、折り返したオフセットケーブル22が復元することにより、配索箇所から浮き上がってしまい、配索箇所Aから脱落するおそれがある。
【0042】
なお、上記実施形態では、フラットケーブル14を幅方向に分割し、一方のオフセットケーブル22をオフセットさせたが、フラットケーブル14の全体をオフセットさせても良い。
【0043】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0044】
11 ワイヤハーネス
13 ケーブル
14 フラットケーブル
21 オフセット部
22 オフセットケーブル(分割ケーブル)
23 ストレートケーブル(分割ケーブル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のケーブルを平面状に一体化したフラットケーブルからなるワイヤハーネスであって、
前記ケーブルの配列面内において、一方向へ湾曲され、さらに、他方向へ湾曲されたオフセット部を有し、延在方向が幅方向へずらされていることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
幅方向に分割されて複数の分割ケーブルとされ、前記分割ケーブルの少なくとも一つに前記オフセット部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
複数のケーブルを平面状に一体化したフラットケーブルを、その長手方向の所定範囲において前記ケーブル毎に分離させる分離工程と、
前記所定範囲にて前記ケーブル毎に分離された前記フラットケーブルを、軸方向へ圧縮させながら前記ケーブルの配列面内において互いに反対方向へ二度湾曲させてオフセットさせるオフセット工程と、を含むことを特徴とするワイヤハーネスのオフセット形成方法。
【請求項4】
前記フラットケーブルを予め幅方向に分割された複数の分割ケーブルとする分割工程を含み、
前記分割ケーブルの少なくとも一つに対して前記分離工程と前記オフセット工程を行うことを特徴とする請求項3に記載のワイヤハーネスのオフセット形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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