説明

ワイヤーハーネスの製造方法

【課題】熱可塑性材料に不測の変形や熱可塑性材料の分離が発生しないようにできるワイヤーハーネスの製造方法を提供すること。
【解決手段】第一の保持具1aに電線91の所定の部分が一の熱可塑性材料92と他の熱可塑性材料93により挟まれた状態で載置し、加熱手段を備える下型2aと上型3aにより一の熱可塑性材料92と他の熱可塑性材料93とを第一の保持具1aに載置された状態で押圧することによって、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93を加圧成形しながら加熱して電線91の所定の部分の周囲を一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93で覆うとともに、一の熱可塑性材料92と他の熱可塑性材料93との接触面を溶着し、その後一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93で覆われた電線91の所定の部分を第一の保持具1aの上側に載置された状態で上型3aおよび下型2aから取り外す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネスの製造方法に関するものであり、詳しくは、ワイヤーハーネスを構成する電線の所定の部分を所定の形状に維持する形状維持部材(この形状維持部材は、ワイヤーハーネスを構成する電線を保護するプロテクタとしての機能も有する)が設けられたワイヤーハーネスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両の内部には、電気装置や電子機器などを相互に接続するためのワイヤーハーネスが配索される。このワイヤーハーネスは、車両などの内部を所定の経路に沿って配索されるため、ワイヤーハーネスを製造する段階において、ワイヤーハーネスが配索しやすい形状に形成されることがある。たとえば、ワイヤーハーネス(すなわち、ワイヤーハーネスを構成する電線)が、配索される経路の形状に応じた形状に形成されることがある。
【0003】
このため、ワイヤーハーネスを構成する電線の所定の箇所(たとえば、電線が分岐している箇所や、電線が屈曲もしくは湾曲している箇所)には、形状維持部材が装着されることがある。また、ワイヤーハーネスを構成する電線を保護するために、所定の箇所にプロテクタが装着されることがある。このような形状維持部材やプロテクタは、一般的には内部が空洞のシェル状の部材(たとえば筒状の部材であって、その軸線が所定の形状に形成される部材)が適用される。そして、このような形状維持部材やプロテクタは、一般的には樹脂材料からなる成形品が適用される。
【0004】
このような成形品の形状維持部材が適用される構成によれば、ワイヤーハーネスを構成する電線の所定の箇所に形状維持部材を装着することにより、当該装着された箇所を所定の形状に形成することができる。また、成形品のプロテクタが適用される構成によれば、装着された箇所がプロテクタにより保護される。しかしながら、成形品の形状維持部材やプロテクタが適用される構成は、次のような問題を有する。
【0005】
まず、このような形状維持部材やプロテクタを製造するためには、成形型が必要となる。成形型は一般的に高価であることから、形状維持部材やプロテクタの製造コストや価格が上昇する。このため、このような形状維持部材やプロテクタが装着されたワイヤーハーネスも価格が上昇する。また、ワイヤーハーネスを構成する電線に形状維持部材やプロテクタを装着する作業が必要となるから、作業工数が増加し、このため製造コストの上昇を招くおそれがある。
【0006】
また、シェル状の形状維持部材やプロテクタがワイヤーハーネスを構成する電線に装着される構成においては、電線と形状維持部材やプロテクタの内周面との間に隙間が存在することがある。このため、ワイヤーハーネスに振動や衝撃が加わると、電線が形状維持部材やプロテクタの内周面に衝突し、打音や衝撃音が発生する。このような打音や衝撃音の発生は、ワイヤーハーネスが適用された車両などの品位を低下させるおそれがある。また、電線が形状維持部材やプロテクタの内周面に衝突することによって、損傷するおそれもある。
【0007】
電線が形状維持部材やプロテクタの内周面に衝突することを防止する構成としては、たとえば、形状維持部材やプロテクタの内部に緩衝材(たとえばスポンジ状の部材)を配設する構成がある。しかしながらこのような構成では、形状維持部材やプロテクタの内部に緩衝材を配設する作業が必要となるから、作業工数が増加し、製造コストの上昇を招くおそれがある。また、部品点数が増加するため、部品コストの上昇を招くおそれもある。
【0008】
成形品ではないプロテクタを用いる構成としては、たとえば、フラット回路体の周囲に熱可塑性材料からなるプロテクタを形成する構成が提案されている(特許文献1参照)。すなわち特許文献1に開示される構成は、熱可塑性樹脂材料からなる二枚の被覆材でフラット回路体を挟み、これらを加熱しながら金型によりプレス成形することにより、二枚の被覆材をフラット回路体に密着させるとともに、二枚の被覆材どうしが接触する部分を溶着させる。このような構成によれば、二枚の被覆材がプロテクタとなるから、成形品のプロテクタが不要となる。このため、部品コストの削減を図ることができる。
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示される構成は、次のような問題点を有すると考えられる。プレス成形直後の被覆材は高温であるから、被覆材が塑性変形しやすい状態にある。このため、プレス成形されたワイヤーハーネスを金型から取り出して搬送すると、フラット回路体や被覆材の自重によって撓み変形するおそれがある。また、金型からの取り出しや搬送の際に被覆材に触れると、触れた箇所やその近傍が変形するおそれがある。このように、プレス成形後において、ワイヤーハーネスに望まない変形が生じるおそれがある。
【0010】
また、プレス成形後に金型から取り出されると、被覆材に加わっていた圧縮力が除去されるため、被覆材が元の形状に戻ろうとして変形することがある(金属などの塑性加工におけるスプリングバックに相当する現象が生じることがある)。また、被覆材が硬化していない状態で金型から取り外されると、被覆材どうしの接触面に加わっていた押し付け力が除去されるため、被覆材どうしの溶着強度が低下するほか、溶着部が剥離するおそれもある。
【0011】
なお、特許文献1には、金型を冷却してからワイヤーハーネスを取り出す構成が開示されているが、このような構成とすると、ワイヤーハーネスをプレス成形するごとに金型の加熱と冷却を行う必要がある。このため、ワイヤーハーネスの製造に要する時間が長くなる。
【0012】
また、特許文献1には、金型に凹部を設け、金型により被覆材をプレス成形する際に、フラット回路体がこの凹部に入り込むようにする構成が開示されている。このような構成によれば、フラット回路体に圧縮力が掛からないようにできるから、フラット回路体の損傷を防止することができる。しかしながら、フラット回路体を二枚の被覆材の間に挟んだ状態でプレス成形を行うため、フラット回路体を正確に位置決めすることが困難であり、フラット回路体を金型の凹部に正確に誘導することが困難である。また、プレス成形の前にはフラット回路体を正確に位置決めすることができても、その後フラット回路体が移動して、プレス成形の際には金型の凹部から外れ出ることがある。
【0013】
また、従来のプロテクタは、成形した後や冷却した後において曲げるなどの形状変更をしようとすると、プロテクタが破損するおそれがあるか、または剛性が高いため形状変更することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2003−197038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、成形品の形状維持部材やプロテクタを用いることなく、電線や電線束を所定の形状に維持する形状維持部材や電線や電線束を保護するプロテクタを有するワイヤーハーネスの製造方法を提供すること、または、形状維持部材やプロテクタの製造コストや製造工数の削減を図ることができるワイヤーハーネスの製造方法を提供すること、または、熱可塑性材料からなる形状維持部材やプロテクタを有するワイヤーハーネスを製造するに際し、熱可塑性材料に不測の変形や熱可塑性材料の分離が発生しないようにできるワイヤーハーネスの製造方法を提供すること、または、熱可塑性材料からなる形状維持部材やプロテクタを有するワイヤーハーネスを製造するに際し、製造に要する時間の短縮を図ることができるワイヤーハーネスの製造方法を提供すること、または、熱可塑性材料からなる形状維持部材やプロテクタを有するワイヤーハーネスを製造するに際し、電線や電線束を所定の位置に収めることができるワイヤーハーネスの製造方法を提供すること、または、熱可塑性材料からなる形状維持部材やプロテクタを有するワイヤーハーネスを製造するに際し、形状維持部材やプロテクタを成形した後においても形状を変更することができるワイヤーハーネスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するため、本発明は、電線の所定の部分の周囲が熱可塑性材料により覆われたワイヤーハーネスの製造方法であって、第一の保持具の上側に前記電線の前記所定の部分と前記熱可塑性材料とを前記電線の前記所定の部分が前記熱可塑性材料に挟まれた状態で載置し、加熱手段を備える一対の成形型の一方により前記第一の保持具の下側を押圧するとともに前記一対の成形型の他方により前記第一の保持具に載置された前記電線の前記所定の部分を挟む前記熱可塑性材料を押圧することによって、前記電線の前記所定の部分を挟む前記熱可塑性材料を前記第一の保持具の上側に載置された状態で加圧成形しながら所定の温度に加熱して前記電線の前記所定の部分の周囲を前記熱可塑性材料で覆うとともに前記熱可塑性材料どうしの接触面を溶着し、その後前記熱可塑性材料で覆われた前記電線の前記所定の部分を前記第一の保持具の上側に載置された状態で前記一対の成形型から取り外すことを要旨とするものである。
【0017】
前記熱可塑性材料で覆われた前記電線の前記所定の部分を前記第一の保持具の上側に載置された状態で前記一対の成形型から取り外した後、前記熱可塑性材料で覆われた前記電線の前記所定の部分が前記第一の保持具の上側に載置された状態で前記熱可塑性材料を冷却することが好ましい。
【0018】
前記一対の成形型の他方と前記第一の保持具の上側の少なくとも一方には前記電線の前記所定の部分を収容可能な凹部が形成されるとともに該凹部の外側には前記熱可塑性材料どうしの接触面に圧縮力を加えるための加圧部が形成され、前記熱可塑性材料の接触面のうち前記加圧部により圧縮力が加えられた部分を溶着させることが好ましい。
【0019】
本発明は、電線の所定の部分の周囲が熱可塑性材料により覆われたワイヤーハーネスの製造方法であって、第一の保持具の上側と第二の保持具の下側の間に前記電線の前記所定の部分と前記熱可塑性材料とを前記電線の前記所定の部分が前記熱可塑性材料に挟まれた状態で配設し、加熱手段を備える一対の成形型の一方により前記第一の保持具の下側を押圧するとともに前記一対の成形型の他方により前記第二の保持具の上側を押圧することによって前記電線の前記所定の部分を挟む前記熱可塑性材料を前記第一の保持具と前記第二の保持具とに挟まれた状態で加圧成形しながら所定の温度に加熱して前記電線の前記所定の部分の周囲を前記熱可塑性材料で覆うとともに前記熱可塑性材料どうしの接触面を溶着し、その後前記熱可塑性材料で覆われた前記電線の前記所定の部分を前記第一の保持具と前記第二の保持具により挟まれた状態で前記一対の成形型から取り外すことを要旨とするものである。
【0020】
前記熱可塑性材料で覆われた前記電線の前記所定の部分を前記第一の保持具と前記第二の保持具との間に挟まれた状態で前記一対の成形型から取り外した後、前記熱可塑性材料で覆われた前記電線の前記所定の部分が前記第一の保持具と前記第二の保持具との間に挟まれた状態で前記熱可塑性材料を冷却することが好ましい。
【0021】
前記第一の保持具の上側と前記第二の保持具の下側の少なくとも一方には前記電線の前記所定の部分を収容可能な凹部が形成されるとともに該凹部の外側には前記熱可塑性材料どうしの接触面に圧縮力を加えるための加圧部が形成され、前記熱可塑性材料の接触面のうち前記加圧部により圧縮力が加えられた部分を溶着させることが好ましい。
【0022】
前記熱可塑性材料のうち前記凹部に嵌り込んだ部分の表層部を前記所定の温度に加熱することにより塑性変形させて硬化させ、前記熱可塑性材料のうち前記凹部に嵌り込んだ部分の中心部に比較して硬度を向上させる構成であってもよい。
【0023】
前記第一の保持具には、前記電線を前記凹部に位置決めするためのガイドピンが立設され、前記電線の前記所定の部分は前記熱可塑性材料を貫通して突出する前記ガイドピンにより電線が位置決めされる構成であってもよい。また、成形型にガイドピンを立設し、前記第一の保持具にはガイドピンを挿通可能な貫通孔を形成し、この貫通孔を通じて突出するガイドピンにより電線が位置決めされる構成であってもよい。
【0024】
前記一対の成形型には、前記熱可塑性材料の不要な部分を切りおとすことができる剪断用段差面が形成され、前記電線の前記所定の部分を挟む前記熱可塑性材料を加圧成形する際に前記熱可塑性材料の不要な部分を切りおとす構成であってもよい。
【0025】
前記熱可塑性材料の間に前記電線の前記所定の部分を挟むとともに強度向上用の熱可塑性材料を挟み、前記電線の前記所定の部分を挟む前記熱可塑性材料を加圧成形しながら所定の温度に加熱する際に前記強度向上用の熱可塑性材料も加圧成形して前記電線の前記所定の部分の周囲を前記熱可塑性材料で覆うとともに前記熱可塑性材料と前記強度向上用の熱可塑性材料の接触面を溶着する構成であってもよい。
【0026】
前記一対の成形型の少なくとも一方に前記熱可塑性材料を加圧する加圧突起を立設し、前記電線の前記所定の部分を挟む前記熱可塑性材料を加圧成形する際に前記加圧突起を前記熱可塑性材料に食い込ませることによって前記熱可塑性材料どうしの接触面において前記電線の前記所定の部分を挟む前記熱可塑性材料の一方の面を他方の面に食い込ませる構成であってもよい。
【0027】
前記電線の前記所定の部分を挟む前記熱可塑性材料を加圧成形する前に、あらかじめ前記電線の前記所定の部分に前記電線と前記熱可塑性材料との結合強度を向上させる結合強度向上部材を固定しておく構成であってもよい。
【0028】
前記電線の前記所定の部分を挟む前記熱可塑性材料を加圧成形する前に、あらかじめ前記電線の前記所定の部分の外周に延出部を有するシールド材を装着しておき、前記シールド材の延出部を前記熱可塑性材料の間に挟みこんだ状態で前記熱可塑性材料を加圧成形し、前記熱可塑性材料に前記シールド材の延出部と電気的に導通する留め具を装着する構成であってもよい。
【0029】
前記熱可塑性材料で覆われた前記電線の前記所定の部分を前記一対の成形型から取り外した後、さらに前記熱可塑性材料で覆われた前記電線の前記所定の部分を加圧して曲げながら加熱することにより、前記熱可塑性材料で覆われた前記電線の前記所定の部分を所定の形状に曲げる構成が適用できる。また、前記熱可塑性材料で覆われた前記電線の前記所定の部分を前記一対の成形型から取り外した後、前記熱可塑性材料が軟化しない温度に下がる前に、さらに前記熱可塑性材料で覆われた前記電線の前記所定の部分を加圧して曲げることにより、前記熱可塑性材料で覆われた前記電線の前記所定の部分を所定の形状に曲げる構成であってもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、熱可塑性材料を加圧成形することによりワイヤーハーネスを所定の形状に維持する形状維持部材を形成することができる。そしてこの形状維持部材は、ワイヤーハーネスを構成する電線を保護するプロテクタとしての機能も有する。このため、成形品の形状維持部材やプロテクタを適用することなく、ワイヤーハーネスに形状維持部材やプロテクタを形成することができる。
【0031】
熱可塑性材料からなる形状維持部材は、熱可塑性材料を加圧成形しながら加熱することにより形成される。熱可塑性材料には、成形品の形状維持部材やプロテクタに比較して安価な材料が適用できるから、形状維持部材の製造コストや部品コストの削減を図ることができる。また、熱可塑性材料を加圧成形するための成形型は、成形品を製造するための成形型に比較して構造が簡単で安価であるから、設備コストの上昇を抑制または設備コストの削減を図ることができる。
【0032】
さらに、形状維持部材の形成は、ワイヤーハーネスを構成する電線の所定の箇所を熱可塑性材料で挟み、その状態で加圧成形するだけでよい。このため、成形品の形状維持部材やプロテクタを装着する構成と比較して、作業内容が簡単となる。したがって、ワイヤーハーネスの製造時間の短縮や製造コストの削減を図ることができる。
【0033】
本発明によれば、熱可塑性材料の所定の部分(=電線が埋め込まれた部分ではない部分)を圧縮することにより、当該所定の部分において熱可塑性材料どうしを強固に溶着することができる。このため、熱可塑性材料どうしが強固に一体化した形状維持部材を形成することができる。
【0034】
さらに本発明によれば、熱可塑性材料のうち、電線に接触している部分及びその近傍の部分が高温になる前に熱可塑性材料の加圧成形を終了させることができる。このため、形成された形状維持部材のうち、電線に接触している部分及びその近傍の部分は、加圧成形前の性質を維持させることができる。このため、電線が硬化していない熱可塑性材料により弾性的に包み込まれた構成を有するワイヤーハーネスを製造することができる。このような構成のワイヤーハーネスによれば、硬化していない熱可塑性材料が電線を振動や衝撃から保護する緩衝材として機能する。また、電線が硬化していない熱可塑性材料に包み込まれた構成であるから、ワイヤーハーネスに振動や衝撃が加わっても、電線と形状維持部材との間で打音や衝撃音が発生しない。このように、成形品の形状維持部材やプロテクタの内部に緩衝材が充填された構成と同様の作用効果を奏することができる。一方、成形品の形状維持部材やプロテクタの内部に緩衝材が充填された構成に比較して、部品点数や作業工数の削減を図ることができる。
【0035】
本発明によれば、製造されたワイヤーハーネスを成形型から取り外す際や、取り外された後冷却している間において、不測の変形が発生することを防止できる。すなわち、本発明によれば、製造されたワイヤーハーネスを、第一の保持具に載置された状態で成形型から取り外すことができる。また、成形型から取り外されたワイヤーハーネスを、第一の保持具に載置された状態で冷却することができる。このため、成形型から取り外す際や冷却の際にワイヤーハーネスに直接触れる必要がない。また、ワイヤーハーネスが第一の保持具に載置されていれば、成形型により成形された形状が維持される。このため、ワイヤーハーネスに不測の(または望まない)変形が生じることを防止できる。
【0036】
さらに本発明によれば、成形型を用いて成形されたワイヤーハーネスを、第一の保持具と第二の保持具との間に挟んでおくことにより、熱可塑性材料どうしの剥離を防止することができるとともに、熱可塑性材料どうしの溶着強度の向上を図ることができる。また、ワイヤーハーネスの断面の寸法精度の向上を図ることができる。
【0037】
すなわち、成形型により加圧成形した後、熱可塑性材料が塑性変形し難い温度に下がるまでの間に、ワイヤーハーネスを第一の保持具と第二の保持具との間に挟んでおき、その状態でクランプなどで挟持すれば、熱可塑性材料に圧縮力を加えることができる。このため、熱可塑性材料どうしの接合面に押し付け力を加えることができ、熱可塑性材料どうしが分離することを防止し、溶着強度の向上を図ることができる。また、成形型により成形された直後の熱可塑性材料は高温であり、塑性変形しやすい状態にある。この状態で熱可塑性材料に加わっていた圧縮力が除去されると、元の形状に戻ろうとする。そこで、熱可塑性材料が変形しない温度に下がるまで第一の保持具と第二の保持具との間に挟んでおくことにより、ワイヤーハーネスの熱可塑性材料の断面形状の変化を防止し、寸法精度の向上を図ることができる。
【0038】
本発明によれば、ガイドピンによって電線を所定の位置に位置決めすることができる。したがって、加圧成形の際に電線束や電線が加圧されて損傷することを防止できる。
【0039】
本発明によれば、熱可塑性材料を加圧成形した後においても、ワイヤーハーネスの所定の部分を所定の形状に形成する(=所定の形状に曲げる)ことができる。したがって、ワイヤーハーネスの形成や形状の変更が容易となる。また、熱可塑性材料が軟化しない温度に下がる前に曲げを行うことにより、ワイヤーハーネスを再加熱する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法により製造されるワイヤーハーネス(=本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス)の構成を、模式的に示した外観斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法において使用される器具の構成を模式的に示した外観斜視図であり、第一の保持具と下型の構成を模式的に示した外観斜視図である。
【図3】本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法において使用される器具の構成を模式的に示した外観斜視図であり、上型の構成を模式的に示した外観斜視図である。
【図4】本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法の所定の工程を模式的に示した断面図であり、第一の保持具に一の熱可塑性材料と電線と他の熱可塑性材料とが配設された状態を模式的に示した断面図である。
【図5】本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法の所定の工程を模式的に示した断面図であり、一の熱可塑性材料と電線と他の熱可塑性材料とが配設された第一の保持具が下型に載置された状態を模式的に示した断面図である。
【図6】本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法の所定の工程を模式的に示した断面図であり、上型と下型とにより一の熱可塑性材料および他の熱可塑性材料を加圧している状態を模式的に示した断面図である。
【図7】本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法の所定の工程を模式的に示した断面図であり、製造された本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスが第一の保持具に載置された状態で上型および下型から取り外された状態を模式的に示した断面図である。
【図8】本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法において使用される器具の構成を模式的に示した外観斜視図であり、第二の保持具および上型の構成を模式的に示した外観斜視図である。
【図9】本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法の所定の工程を模式的に示した断面図であり、第一の保持具と第二の保持具との間に一の熱可塑性材料と電線と他の熱可塑性材料とが配設された状態を模式的に示した断面図である。
【図10】本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法の所定の工程を模式的に示した断面図であり、一の熱可塑性材料と電線と他の熱可塑性材料とが配設された第一の保持具および第二の保持具が下型に載置された状態を、模式的に示した断面図である。
【図11】本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法の所定の工程を模式的に示した断面図であり、上型と下型とによって一の熱可塑性材料および他の熱可塑性材料を加圧している状態を模式的に示した断面図である。
【図12】本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法の所定の工程を模式的に示した断面図であり、製造された本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスが第二の保持具と第一の保持具との間に挟まれたままの状態で上型および下型から取り外された状態を模式的に示した断面図である。
【図13】本発明の第三実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法の所定の工程を模式的に示した断面図であり、第二の保持具と第一の保持具との間に一の熱可塑性材料と電線と他の熱可塑性材料と強度向上用の熱可塑性材料とが配設された状態を模式的に示した断面図である。
【図14】本発明の第三実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法の所定の工程を模式的に示した断面図であり、一の熱可塑性材料と電線と他の熱可塑性材料と強度向上用の熱可塑性材料とが配設された第二の保持具および第一の保持具が下型に載置された状態を模式的に示した断面図である。
【図15】本発明の第三実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法の所定の工程を模式的に示した断面図であり、上型と下型とにより一の熱可塑性材料と電線と他の熱可塑性材料と強度向上用の熱可塑性材料とが加圧される状態を模式的に示した断面図である。
【図16】本発明の第三実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法の所定の工程を模式的に示した断面図であり、製造された本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスが第二の保持具と第一の保持具との間に挟まれたままの状態で上型および下型から取り外された状態を模式的に示した断面図である。
【図17】本発明の第四実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法において使用される器具の構成を模式的に示した外観斜視図であり、第一の保持具と下型の構成を模式的に示した外観斜視図である。
【図18】本発明の第四実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法において使用される器具の構成を模式的に示した外観斜視図であり、第二の保持具と上型の構成を模式的に示した外観斜視図である。
【図19】本発明の第四実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法の所定の工程を模式的に示した断面図であり、一の熱可塑性材料と電線と他の熱可塑性材料とが配設された第二の保持具および第一の保持具が下型に載置された状態を模式的に示した断面図である。
【図20】本発明の第四実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法の所定の工程を模式的に示した断面図であり、上型と下型とにより一の熱可塑性材料と電線と他の熱可塑性材料とが加圧される状態を模式的に示した断面図である。
【図21】本発明の第四実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法の所定の工程を模式的に示した断面図であり、製造された本発明の第三実施形態にかかるワイヤーハーネスが第二の保持具と第一の保持具との間に挟まれたままの状態で上型および下型から取り外された状態を模式的に示した断面図である。
【図22】本発明の第四実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法により製造されるワイヤーハーネス(=本発明の第三実施形態にかかるワイヤーハーネス)の構成を、模式的に示した外観斜視図である。
【図23】一の熱可塑性材料および/または他の熱可塑性材料と電線との結合強度の向上を図ったワイヤーハーネスの断面構造を、模式的に示した断面図である。
【図24】一の熱可塑性材料および/または他の熱可塑性材料と電線との結合強度の向上を図ったワイヤーハーネスを構成する部品を模式的に示した図であり、(a)は電線と結合強度向上部材と固定部材の構成を模式的に示した分解斜視図、(b)は結合強度向上部材が固定部材によって電線に固定された状態を模式的に示した外観斜視図である。
【図25】シールド材で覆われた電線を有するワイヤーハーネスの構成を、模式的に示した断面図である。
【図26】本発明のいずれかの実施形態にかかるワイヤーハーネスを曲げ加工する工程を模式的に示した断面図であり、曲げ加工を行う前の状態を模式的に示した断面図である。
【図27】本発明のいずれかの実施形態にかかるワイヤーハーネスを曲げ加工する工程を模式的に示した断面図であり、曲げ加工用の上型および曲げ加工用の下型により本発明のいずれかの実施形態にかかるワイヤーハーネスを挟んで曲げ加工を行っている状態を模式的に示した断面図である。
【図28】本発明のいずれかの実施形態にかかるワイヤーハーネスを曲げ加工する工程を模式的に示した断面図であり、本発明のいずれかの実施形態にかかるワイヤーハーネスが第二の保持具および第一の保持具との間に保持されており、曲げ加工を行う前の状態を模式的に示した断面図である。
【図29】本発明のいずれかの実施形態にかかるワイヤーハーネスを曲げ加工する工程を模式的に示した断面図であり、本発明のいずれかの実施形態にかかるワイヤーハーネスが第二の保持具および第一の保持具との間に保持されており、曲げ加工用の上型および曲げ加工用の下型により本発明のいずれかの実施形態にかかるワイヤーハーネスを挟んで曲げ加工を行っている状態を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に、本発明の各種実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0042】
図1は、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法または本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法により製造されるワイヤーハーネス9a(以下、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aと称する)の所定の部分(=所定の一部)の構成を、模式的に示した外観斜視図である。
【0043】
本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aは、全体として所定の数の電線が束ねられて所定の形状に形成される構成を有する。そして各電線の端部には、コネクタ類が装着される(図略)。図1に示すように、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aの所定の部分は、所定の数の電線91(単数または複数の電線。複数の場合には電線が電線束を構成する。本発明においては、「電線」という場合には、単数の電線に加え、複数の電線からなる電線束も含む)と、この電線91を覆う熱可塑性材料92,93とを有する。そして電線91の所定の部分の周囲が、二つの熱可塑性材料92,93(以下、説明の便宜上、これらの二つの熱可塑性材料92を、それぞれ「一の熱可塑性材料92」、「他の熱可塑性材料93」と称する。)により覆われる構成を有する。
【0044】
そして電線91の所定の部分の周囲を覆う一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93が、電線91の所定の部分を所定の形状に維持する形状維持部材となる。また、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93(すなわち形状維持部材)は、電線91の所定の部分を保護するプロテクタの機能も有する。
【0045】
本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aの一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93は、所定の材料からなる不織布または発泡体により形成される。この不織布および発泡体は熱可塑性を有する。すなわち、ある温度以上に加熱された状態で加えられた変形は主に塑性変形となり、当該ある温度より低い温度で加えられた変形は主に弾性変形となる。そして、当該ある温度以上の温度に加熱された状態で所定の形状に形成され、その後当該ある温度よりも低い温度になると、形成された形状を維持する。
【0046】
この不織布には、基本繊維とバインダ繊維とが絡み合った構成を有するものが適用できる。基本繊維は、所定の融点を有する熱可塑性樹脂材料により形成される。バインダ繊維は、芯繊維の外周にバインダ材の層が形成される構成を有する。この芯繊維は基本繊維と同じ熱可塑性樹脂材料により形成される。バインダ材の層は、基本繊維および芯繊維よりも融点が低い熱可塑性樹脂材料により形成される。このような構成の不織布は、バインダ材の融点よりも高い温度であって基本繊維の融点よりも低い温度に加熱されると、基本繊維および芯繊維が塑性変形しやすくなるとともに、バインダ材が溶融して基本繊維や芯繊維の間に染み渡る。その後前記温度よりも低い温度に戻ると、基本繊維および芯繊維が加熱時に形成された形状を維持する。また、溶融したバインダ材が固化して基本繊維や芯繊維どうしを結合する。このため、前記温度以上に加熱された部分が、加熱前に比較して硬化する。
【0047】
不織布の基本繊維は、PET(ポリエチレンテレフタレート)により形成される。バインダ繊維は、PETにより形成される芯繊維と、PETとPEI(ポリエチレンイソフタレート)の共重合樹脂により形成されるバインダ材の層とを有する。そして芯繊維の外周にバインダ材の層が形成される。基本繊維や芯繊維(すなわちPET)の融点は、約250℃である。バインダ材の融点は110〜150℃である。このため、この不織布は、110〜250℃の温度に加熱されると、基本繊維および芯繊維が塑性変形しやすくなるとともに、バインダ材が溶融して基本繊維や芯繊維の間に染み渡る。その後、前記温度よりも低い温度に戻ると、加熱時に形成された形状が維持されるとともに、バインダ材が固化して基本繊維や芯繊維どうしが結合し、加熱前に比較して硬化する。
【0048】
発泡体には、所定の融点を有する熱可塑性樹脂材料により形成されるものが適用できる。熱可塑性樹脂材料からなる発泡体が融点近傍に加熱されると、塑性変形しやすくなる。
【0049】
図1に示すように、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aの所定の部分は、電線91の所定の部分が、所定の断面形状に形成された一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93により覆われる構成を有する。
【0050】
そして、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93には、本体部941と溶着部942が形成される。
【0051】
本体部941は、電線91の所定の部分が埋め込まれる部分であり、所定の断面形状を有する棒状に形成される。図1においては、本体部941が断面略六角形の棒状または柱状に形成される構成を示す。また、以下の説明では、本体部941が断面略六角形の柱状または棒状に形成される構成を例に説明する。
【0052】
溶着部942は、本体部941の外周から外側に向かって突起し、本体部941の軸線方向に沿って延伸する襞状の部分である。この溶着部942は、一の熱可塑性材料92と他の熱可塑性材料93とが溶着している部分である。すなわち、溶着部942の厚さ方向の中間に、一の熱可塑性材料92と他の熱可塑性材料93の接合面が位置する。溶着部942の厚さ寸法(一の熱可塑性材料92と他の熱可塑性材料93との重ね合わせ方向をいう)は、本体部941の厚さ寸法よりも小さく形成される。
【0053】
一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93のうち、本体部941の表層部(=表面およびその近傍)は、中心部(=電線91の所定の部分に接触している部分およびその近傍)に比較して硬く形成される。このため、この硬い表層部が電線91の所定の部分を所定の形状に維持するとともに、電線91の所定の部分を保護するプロテクタとしての機能を有する。一方、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93のうち、本体部941の中心部は表層部に比較して軟らかく形成される。このため、電線91の所定の部分を衝撃や振動などから保護する緩衝材として機能する。また、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93が、弾性を有する状態で電線91の所定の部分に接触して包みこんでいるため、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aに振動や外力が加わった場合であっても、電線91と一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93との間で打音や衝撃音が発生しない。
【0054】
次に、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法について説明する。図2と図3は、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法において使用される器具の構成を、模式的に示した外観斜視図である。本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法においては、第一の保持具1a、上型2aと下型3aからなる一対の成形型(たとえば金型)が使用される。それぞれ、図2は、第一の保持具1aと下型2aの構成を模式的に示した外観斜視図であり、図3は、上型3aの構成を模式的に示した外観斜視図である。なお、図2においては、上方が上型3aに対向する側となり、図3においては、上方が下型2aに対向する側となる。
【0055】
以下説明の便宜上、図2の上方を、第一の保持具1aおよび下型2aの上側と称し、下方を下側と称する。また、図3の上方を、上型3aの下側と称し、下方を上側と称する。
【0056】
第一の保持具1aは、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aを製造する工程において、一の熱可塑性材料92または他の熱可塑性材料93を加圧形成する機能や、製造された本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aが所定の形状を維持する(換言すると、不測のまたは望まない変形をしないようにする)などの機能を有する部材である。
【0057】
第一の保持具1aの上側には、電線91の所定の部分を収容可能な溝状の凹部が形成される。この凹部は底部12と底部12の両側の側部13からなる部分であり、本体部941を形成するための部分である。このため、底部11及び側部13の断面形状は、本体部941の断面形状に基づいて設定される。前記のように、本体部941の断面形状が略六角形に形成される場合には、底部12は細長い平面に形成され、側部13は上側に向かって広がる斜面に形成される。すなわち、この凹部の断面形状は、底面が平面で上側に向かうにしたがって幅が広がる形状に形成される。
【0058】
溝状の凹部の両側には、加圧部11が形成される。この加圧部11は、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93を加圧して圧縮させることにより、溶着部942を形成するための部分である。具体的には、側部13の外側に、側部13の長手方向に沿って形成される平面である。
【0059】
そして、側部13には、ガイドピン14が、所定の間隔をおいて上側に向かって立設される。このガイドピン14は、電線91の所定の部分を位置決めして保持するための部材であり、特に、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aの製造工程において、第一の保持具1aの上側に配設された電線91の所定の部分が凹部に収まった状態(加圧部11にはみ出ささない状態)に維持するための部材である。ガイドピン14は針状または細い棒状の部材であり、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93に突き刺さる(または貫通する)ことができるように、先端が尖っていることが好ましい。また、ガイドピン14の長さ(加圧部11の上側の面からの突出長さ)は、加圧成形前の一の熱可塑性材料92の厚さよりも大きい寸法に設定される。より好ましくは、「(成形前の一の熱可塑性材料92の厚さ)+(電線91の直径(または電線束の外径))」よりも大きい寸法に設定される。
【0060】
なお、ガイドピン14が立設される位置や、ガイドピン14の数は特に限定されるものではない。前記のように、電線91の所定の部分が加圧部11の上側にはみ出さないようにすることができればよい。このため、ガイドピン14は加圧部11の内側に立設されればよく、側部13に立設される構成のほか、底部12の両外側近傍に立設される構成であってもよい。また、ガイドピン14が立設される間隔も特に限定されるものではない。たとえば、底部14が直線状に形成される場合には、ガイドピン14の間隔を大きくし、底部14がカーブしている場合には、ガイドピン14の間隔を小さくするなどしてもよい。この場合、特にカーブの内側においてガイドピン14の間隔を小さくしてもよい。また、底部11がカーブしている場合には、カーブの内側にのみガイドピン14が立設される構成であってもよい。
【0061】
この第一の保持具1aは、熱伝導率の高い材料により形成され、蓄熱量が小さい(すなわち、周りの温度変化に追従しやすい)構成を有する。特に、上下方向に熱を伝えやすい構成を有する。たとえば薄い金属板などからなり、板金加工などにより形成される構成を有する。薄い金属板などからなれば、上下方向(金属板の厚さ方向)に熱を伝えやすく、また、第一の保持具1aの質量を小さくできるから、蓄熱量を小さくすることができる。
【0062】
第一の保持具1aの下側の形状は、特に限定されるものではない。第一の保持具1aが板金加工などにより形成される場合には、第一の保持具1aの下側には、上側に形成される凹部(底部11と側部13)に応じた形状の凸部が形成される。
【0063】
下型2aは、第一の保持具1aを介して上型3aとともに一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93を加圧成形しながら加熱する部材である。すなわち、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93を塑性変形させて所定の断面形状に加圧形成するとともに、一の熱可塑性材料92と他の熱可塑性材料93とを溶着させることができる。
【0064】
下型2aの上側には、第一の保持具1aの下側の面の形状に倣った形状を有する部分が形成される。すなわち、下型2aの上側には、第一の保持具1aを載置することができ、かつ、載置した状態においては、第一の保持具1aの下側の面(=加圧部11、側部13および底部12のそれぞれの下側の面)が、ほぼ全体にわたって下型2aに接触する部分が形成される。具体的には、下型2aには、第一の保持具1aの加圧部11の下側の面に当接する第一の加圧部21、底部12の下側の面に当接する第二の加圧部22、側部13の下側の面に当接する第三の加圧部23が形成される。このように、下型2aの上側には、第一の保持具1aの底部12および側部13を落とし込むように嵌め込むことができる溝状の凹部(第二の加圧部22が凹部の底面に相当し、第三の加圧部23が凹部の側面に相当する)が形成される。そして、この凹部の両側には、第一の保持具1aの加圧部11の下側の面に当接する第一の加圧部21が形成される。また、第一の加圧部21の両外側には、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93をトリミングするための剪断用段差面24が形成される。
【0065】
下型2aは、図略の加熱手段を備える。そして、この加熱手段により第一の加圧部21、第二の加圧部22、第三の加圧部23を所定の温度に維持することができる。なお、所定の温度については後述する。また、加熱手段には公知の各種加熱手段が適用できる。たとえば、加熱手段として電熱線が適用され、この電熱線が下型2aの内部に埋め込まれた構成や、下型2aの外周に電熱線が装着された構成が適用できる。また、下型2aの内部に流体が通過することができる経路(たとえば孔)が形成され、この経路に温度調整された流体(温度調整された空気、液体(油など)、蒸気(過熱蒸気など))を通過させる構成が適用できる。
【0066】
上型3aは、下型2aとともに一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93を加圧成形しながら加熱することができる部材である。そして、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93を所定の断面形状に加圧形成するとともに、一の熱可塑性材料92と他の熱可塑性材料93とを溶着する。上型3aの下側の面(図3においては上方の面)には、所定の断面形状を有する溝が形成される。この溝の中心線の形状は、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aの中心線の形状に沿った形状に形成される。図3においては所定の曲率で湾曲している形状を示す。
【0067】
溝の底面は、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aの断面形状と略同じ形状に形成される。すなわち溝の底部には、電線91の所定の部分を収容可能な溝状の凹部(第二の加圧部32と第三の加圧部33とからなる部分)と、一の熱可塑性材料92や他の熱可塑性材料93の接触面に圧縮力を加えて溶着するための第一の加圧部31が形成される。
【0068】
このため、この溝の底面にさらに幅の細い溝(=凹部)が形成される構成を有する。そしてこの幅の細い溝の底面が第二の加圧部32となり、この幅の細い溝の側面が第三の加圧部33となり、この幅の細い溝の両外側が第一の加圧部31となる。さらに、この溝の側面(=第一の加圧部31の外側の段差面)が、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93をトリミングするための剪断用段差面34となる。また、第三の加圧部33の所定の位置には、ガイドピン逃がし孔35が形成される。
【0069】
上型3aは、図略の加熱手段を備える。そして、この加熱手段により第一の加圧部31、第二の加圧部32および第三の加圧部33を所定の温度に維持することができる。この所定の温度は下型2aと同じである。また、加熱手段も、下型2aと同じ加熱手段が適用できる。したがって説明は省略する。
【0070】
そして、下型2aの上側に第一の保持具1aを載置し、その状態で上型3aと下型2aとを突き合わせると、下型2aのうち、第一の加圧部21と第二の加圧部22と第三の加圧部23と剪断用段差面24が形成される部分が、上型3aの溝(=剪断用段差面34に挟まれる部分)に嵌り込むことができる。そして、第一の保持具1aのガイドピン14の先端が、上型3aのガイドピン逃がし孔35に入り込むことができる。このため、下型2aおよび下型2aに載置された第一の保持具1aと、上型3aとを、所定の距離にまで接近させることができる。
【0071】
下型2aのうち、第一の加圧部21と第二の加圧部22と第三の加圧部23と剪断用段差面24が形成される部分が、上型3aの溝(=剪断用段差面34に挟まれる部分)に嵌り込むと、第一の保持具1aの加圧部11の上側の面と、上型3aの第一の加圧部31とが所定の間隔をおいて対向する。同様に、第一の保持具1aの底部11の上側の面と上型3aの第二の加圧部32が所定の間隔をおいて対向し、第一の保持具1aの側部13の上側の面と上型3aの第三の加圧部33が所定の間隔をおいて対向する。
【0072】
そして、第一の保持具1aの加圧部11の上側の面と底部12の上側の面と側部13の上側の面、および上型3aの剪断用段差面34と第一の加圧部31と第二の加圧部32と第三の加圧部33に囲まれる空隙の断面形状が、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aの断面形状(=電線91の所定の部分を覆う一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93の断面形状)となる。この状態においては、第一の保持具1aの加圧部11の上側の面と上型3aの第一の加圧部31との間の距離は、第一の保持具1aの底部12の上側の面と上型3aの第二の加圧部32との間の距離よりも小さくなる。
【0073】
さらに、下型2aの剪断用段差面24と、上型3aの剪断用段差面34とは接触するか、所定の微小な間隔をおいて対向する。
【0074】
本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法は、次のとおりである。図4〜図7は、それぞれ、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法の所定の工程を、模式的に示した断面図である。具体的には、図4は、第一の保持具1aに一の熱可塑性材料92と電線91の所定の部分と他の熱可塑性材料93とが配設された状態を示した図、図5は、一の熱可塑性材料92と電線91の所定の部分と他の熱可塑性材料93とが配設された第一の保持具1aが、下型2aに載置された状態を示した図、図6は、上型2aと下型3aとにより一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93を加圧している状態を示した図、図7は、製造された本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aの所定の部分が第一の保持具1aに載置された状態で上型3aおよび下型2aから取り外された状態を示した図である。
【0075】
まず、図4に示すように、第一の保持具1aの上側に一の熱可塑性材料92が載置される。そして、ガイドピン14の先端部が一の熱可塑性材料92を貫通して突出するようにする。この状態で、一の熱可塑性材料92の上側に電線91の所定の部分が載置される。前記のように、ガイドピン14の長さ(加圧部11の上側の面からの突出長さ)が、一の熱可塑性材料92の厚さよりも大きく設定されると、図4に示すように、一の熱可塑性材料92の一方の面が第一の保持具1aの加圧部11の上側の面に接触する場合には、ガイドピン14の先端部が一の熱可塑性材料92を貫通して他方の面から突出する。このため、この突出したガイドピン14により電線91の所定の部分を位置決めして配設することができる。具体的には、電線91の所定の部分を第一の保持具1aの凹部(=底部12および側部13)に収まる位置に配設することができるとともに、加圧部11の上側にはみ出さないようにすることができる。
【0076】
また、ガイドピン14の長さ(加圧部11の上側の面からの突出長さ)が、前記のように「(成形前の一の熱可塑性材料92の厚さ)+(電線91の直径(または電線束の外径))」よりも長く設定されると、一の熱可塑性材料91を貫通して突出している部分の長さが、電線91の直径(または電線束の外径)よりも大きくなる。このため、ガイドピン14の間に配設された電線91の所定の部分が、ガイドピン14に挟まれた位置から外れ出ることが防止または抑制される。
【0077】
そして、一の熱可塑性材料92の上側に電線91の所定の部分が配設された状態で、さらにその上側に他の熱可塑性材料93が配設される。ガイドピン14の長さが前記長さであれば、ガイドピン14の先端が他の熱可塑性材料93に突き刺さる。このため、他の熱可塑性材料93が配設された後に、電線91の所定の部分がガイドピン14の間から外れ出ることが防止される。また、ガイドピン14の先端が他の熱可塑性材料93に突き刺さると、第一の保持具1aと一の熱可塑性材料92と電線91の所定の部分と他の熱可塑性材料93とが一体に結合するから、バラバラになることが防止または抑制される。このため、取り扱いが容易となる。このように、電線91の所定の部分が、一の熱可塑性材料92と他の熱可塑性材料93とに挟まれた状態で、第一の保持具1aに載置される。
【0078】
次いで、図5に示すように、一の熱可塑性材料92と電線91と他の熱可塑性材料93とが配設された第一の保持具1aが、上型3aと下型2aとの間に挿入され、下型2aに載置される。
【0079】
なお、上型3aの第一の加圧部31と第二の加圧部32と第三の加圧部33、および下型2aの第一の加圧部21と第二の加圧部22と第三の加圧部23とは、加熱手段により所定の温度に維持されている。
【0080】
「所定の温度」とは、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93が前記不織布により形成される場合には、バインダ材の融点よりも高い温度であって基本繊維および芯繊維の融点よりも低い温度である。一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93に前記不織布が適用される場合には、所定の温度には、110〜250℃の温度が適用される。また、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93が熱可塑性の樹脂材料からなる発泡体が適用される場合には、「所定の温度」は、軟化点またはバインダ材などの接合用の樹脂の融点以上の温度が適用される。
【0081】
そして、図6に示すように、上型3aと下型2aと接近させる。具体的には、第一の保持具1aの加圧部11の上側の面と上型3aの第一の加圧部31との間の距離が、加圧成形前の一の熱可塑性材料92の厚さと他の熱可塑性材料93の厚さの合計よりも小さい距離となるようにする。前記のように、第一の保持具1aのガイドピン14が、上型3aのガイドピン逃がし孔35に入り込むことにより、第一の保持具1aおよび下型2aと上型3aとを、前記距離になるように接近させることができる。また、下型2aの剪断用段差面24と上型3aの剪断用段差面34とが接触(または微小な距離をおいて対向)する。
【0082】
これにより、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93の加圧成形を行う。そして、所定の時間にわたって、この状態を維持する(すなわち、加圧成形を継続する)。「所定の時間」については後述する。
【0083】
一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93のうち、第一の保持具1aの加圧部11の上側の面と上型3aの第一の加圧部31とにより挟まれる部分は、下型2aの第一の加圧部(により押圧される第一の保持具1aの加圧部11の上側の面)と上型3aの第一の加圧部31とにより加圧されて圧縮変形する。そして上型3aおよび下型2aの加熱手段が発する熱により、当該部分が軟化して塑性変形する。このため、この部分は密度が高くなるとともに、一の熱可塑性材料92と他の熱可塑性材料93とが押し付けられる。そして、一の熱可塑性材料92と他の熱可塑性材料93との接触面が加熱されて溶着する。
【0084】
具体的には、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93として前記不織布が適用される場合には、不織布の基本繊維およびバインダ繊維の芯繊維が熱によって軟化し、塑性変形する。ただし、基本繊維および芯繊維の融点よりも低い温度であるため、軟化はするが溶融はせず、繊維の状態が維持される。一方、バインダ材の融点より高い温度であるため、バインダ繊維のバインダ材が溶融し、基本繊維や芯繊維の間に染み渡るとともに、第一の保持具1aの加圧部11の上側の面と上型3aの第一の加圧部31との間に挟まれる部分においては、溶融したバインダ材が、一の熱可塑性材料92と他の熱可塑性材料93との接触面にも広がる。
【0085】
また、一の熱可塑性材料92のうち、第一の保持具1aの底部12の上側の面や側部13の上側の面に接触している部分の表層部も、加圧および加熱されて塑性変形する。同様に、他の熱可塑性材料93のうち、上型3aの第二の加圧部32と第三の加圧部33に接触している部分の表層部も、加圧および加熱されて塑性変形する。このため、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93の断面形状が、全体として第一の保持具1aと上型3aとの間に形成される空隙の形状に略等しい形状に塑性変形する。
【0086】
この結果、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93のうち、第一の保持具1aの底部12の上側の面や側部13の上側の面と、上型3aの第二の加圧部32や第三の加圧部33に挟まれる部分が、本体部941となる。また、第一の保持具1aの加圧部11の上側の面と上型3aの第一の加圧部31とに挟まれて加圧される部分が溶着部942となる。
【0087】
そして、一の熱可塑性材料92のうち、第一の保持具1aの底部12の上側の面と側部13の上側の面に接触している部分の表層部にあるバインダ材が熱により溶融し、表層部に広がって基本繊維や芯繊維どうしの間に染み渡る。同様に、他の熱可塑性材料のうち、上型3aの第二の加圧部32や第三の加圧部33に接触している部分の表層部にあるバインダ材が熱により溶融し、表層部に広がって基本繊維や芯繊維どうしの間に染み渡る。
【0088】
また、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93として熱可塑性の樹脂材料からなる発泡体が適用される場合には、発泡体が熱によって軟化し、塑性変形する。そして、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93のうち、第一の保持具1aの加圧部11の上側の面と上型3aの第一の加圧部31との間に挟まれる部分は、圧縮変形して密度が高くなる。
【0089】
また、一の熱可塑性材料92のうち、第一の保持具1aの底部12の上側の面や側部13の上側の面に接触している部分の表層部も、加圧および加熱されて塑性変形する。同様に、他の熱可塑性材料93のうち、上型3aの第二の加圧部32と第三の加圧部33に接触している部分の表層部も、加圧および加熱されて塑性変形する。このため、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93の断面形状が、全体として第一の保持具1aと上型3aとの間に形成される空隙の形状に略等しい形状に塑性変形する。そして、一の熱可塑性材料92のうち、第一の保持具1aの底部12の上側の面と側部13の上側の面に接触している部分の表層部が熱により軟化するともに圧縮され、塑性変形して密度が高くなる。同様に、他の熱可塑性材料93のうち、上型3aの第二の加圧部32や第三の加圧部33に接触している部分の表層部が熱により軟化するとともに圧縮され、密度が高くなる。
【0090】
なお、下型2aが発する熱は、第一の保持具1aを通じて一の熱可塑性材料92や他の熱可塑性材料93に伝わる。前記のとおり第一の保持具1aが熱伝導率の高い材料から形成され、かつ上下方向に熱を伝えやすい構成であるから、下型2aが発する熱は一の熱可塑性材料92や他の熱可塑性材料93に伝わりやすい。このため、前記「所定の時間」を長くする必要がない。
【0091】
また、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93のうち、上型3aの第一の加圧部31および第一の保持具1aの加圧部11(=下型2aの第一の加圧部21)よりも外側にはみ出している部分92’,93’は、上型3aの剪断用段差面34と下型2aの剪断用段差面24とにより切り離される。このように、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93は、上型3aと下型2aとにより加圧成形されると同時に不要な部分が除去される(すなわち、トリミングされる)。
【0092】
次いで、図7に示すように、所定の時間経過後、上型3aと下型2aとが分離される。
【0093】
「所定の時間」とは、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93のうち、溶着部942(=第一の保持具1aの加圧部11と上型3aの第一の加圧部31との間に挟まれる部分)が、上下方向の全長にわたって前記所定の温度に達するのに必要な時間よりも長い時間であって、本体部941の中心部(=電線91およびその近傍の部分)は前記所定の温度に達しない時間である。前記のように、溶着部942の厚さは本体部941の厚さよりも薄いから、本体部941の中心部が前記所定の温度に達するよりも前に、溶着部942の全体を前記所定の温度に加熱することができる。
【0094】
このような時間とすると、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93に前記不織布が適用される場合には、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93のうち、第一の保持具1aの加圧部11と上型3aの第一の加圧部31との間に挟まれる部分が塑性変形して上下方向寸法が縮まるとともに、当該部分の全体においてバインダ材が溶融し、バインダ材が当該部分の全体にわたって染み渡る。一方、本体部941の中心部(=電線91およびその近傍)は前記所定の温度に達しないから、電線91に触れている部分およびその近傍においてはバインダ材が溶融しない。
【0095】
また、一の熱可塑性材料および他の熱可塑性材料に発泡体が適用される場合には、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93のうち、第一の保持具1aの加圧部11と上型3aの第一の加圧部31との間に挟まれる部分が塑性変形して上下方向寸法が縮まる。また、本体部941も、第一の保持具1aの底部12の上側の面や側部13の上側の面と、上型3aの第二の加圧部32や第三の加圧部33により加圧されて圧縮する。この際に、本体部941の表層部は塑性変形しやすい温度に達しているが、中心部(すなわち電線91の所定の部分の近傍)は温度が低く塑性変形しにくいから、表層部のみが塑性変形し、中心部は変形しない(加圧開始直後は中心部も弾性変形すると考えられるが、表層部が塑性変形することによって、中心部は変形のない状態に戻る)。
【0096】
そして、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aの所定の部分が、第一の保持具1aに載置された状態で、下型2aから取り外される。その後、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aの所定の部分が第一の保持具1aに載置された状態で冷却される。そして、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aの所定の部分が、他の所定の温度以下になった後、第一の保持具1aから取り外される。なお、冷却方法は特に限定されるものではない。たとえば、冷蔵庫内に収納する方法、常温または低温の気体を吹き付ける方法のほか、常温中に放置する方法であってもよい。
【0097】
「他の所定の温度」とは、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93に前記不織布が適用される場合には、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93が軟化しない温度であり、かつバインダ材が固体の状態にある温度をいう。一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93に熱可塑性樹脂材料からなる発泡体が適用される場合には、当該熱可塑性樹脂材料が固体の状態にあり、かつ軟化しない温度をいう。
【0098】
なお、第一の保持具1aが熱伝導率の高い材料から形成され、かつ上下方向に熱を伝えやすい構成であるから、一の熱可塑性材料92や他の熱可塑性材料93が有する熱は、第一の保持具1aを通じて迅速に外部に放熱される。また、第一の保持具1aが金属板などからなり板金加工などにより形成される構成であれば蓄熱量が小さいから、下型2aから取り外されるとただちに温度が下がり始める。このため、第一の保持具1aに載置されたワイヤーハーネスの所定の部分(特に、一の熱可塑性材料92や他の熱可塑性材料93)は、下型2aから取り外された後においては、第一の保持具1aの有する熱によって加熱されることがない。このため、必要以上に加熱されることを防止でき、一の熱可塑性材料92や他の熱可塑性材料93の性質の制御が容易となる。
【0099】
本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9a(の一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93)が他の所定の温度以下となると、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93の基本繊維や芯繊維が塑性変形しにくくなり、加圧成形により形成された形状に確定する。また、バインダ材が固化する。基本繊維や芯繊維の間に染み渡ったバインダ材が固化すると、バインダ材が基本繊維や芯繊維どうしを接着する。このため、バインダ材が溶融して固化した部分は、その他の部分に比較して硬くなる。
【0100】
前記のように、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93のうち第一の保持具1aの加圧部11と上型3aの第一の加圧部31との間に挟まれる部分(すなわち、溶着部942)は、厚さ方向の全長にわたってバインダ材が溶融しその後固化している。また、溶着部942は圧縮されて基本繊維や芯繊維の密度が高くなっている。このため、溶着部942は他の部分に比較して硬度が高くなっている。また、バインダ材が固化することによって、一の熱可塑性材料92と他の熱可塑性材料93とが接着されて一体化している。
【0101】
一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93のうち、本体部941(=第一の保持具1aの底部12と上型3aの第二の加圧部32に挟まれた部分、および第一の保持具1aの側部13と上型3aの第三の加圧部33に挟まれた部分)の表層部は、加圧成形の際に前記所定の温度に達しているから、バインダ材が溶融しその後固化している。このため、本体部941の表層部は、バインダ材により基本繊維や芯繊維どうしが接着されている。また、加圧されているから密度が高くなっている。したがって、加圧成形前に比較すると硬くなっている。
【0102】
これに対して、本体部941の中心部(すなわち、電線91に接触している部分およびその近傍)は、前記所定の温度に達していないから、バインダ材は溶融していない。したがって、この部分は、成形前の状態とほぼ同じ状態である(ただし、加圧成形により多少密度が上がっている)。
【0103】
一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93に発泡体が適用される場合には、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93のうち、溶着部942(=第一の保持具1aの加圧部11と上型3aの第一の加圧部31との間に挟まれる部分)は、は圧縮されて密度が高くなっている。このため、溶着部942は他の部分に比較して硬度が高くなっている。一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93のうち、本体部941の表層部は、塑性変形して密度が高くなっている。このため、塑性変形前に比較して硬くなっている。これに対して中心部は塑性変形しておらず、加圧成形前の状態のままである。
【0104】
このように、本体部941は、表層部が硬くなるが中心部の硬さは加圧成形前とほぼ同じである。したがって、本体部941の表層部に硬い層を形成することによって、表層部に本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aの所定の部分の形状を維持する機能を持たせることができるとともに、プロテクタとしての機能を持たせることができる。さらに、本体部941の中心部は、加圧成形前の軟らかい状態に維持することができるから、電線91の緩衝材や防音材としての機能をもたせることができる。
【0105】
以上の工程により、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aが製造される。
【0106】
本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法によれば、樹脂成形品のプロテクタや形状維持部材を用いる構成に比較して、次のような作用効果を奏することができる。
【0107】
まず、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法において使用される上型3aおよび下型2aは、成形品を製造する金型に比較して構造が簡単で安価に製造できるから、設備コストの削減を図ることができる。また、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法によれば、樹脂成形品のプロテクタや形状維持部材を用いる構成に比較して、安価な材料(熱可塑性材料)が適用できるから、ワイヤーハーネスを安価に製造することができる。このため、製品価格の低廉化を図ることができる。
【0108】
また、成形品のプロテクタや形状維持部材に電線を嵌め込む構成に比較して、作業が簡単である。
【0109】
また、成形品のプロテクタや形状維持部材を用いる構成においては、プロテクタや形状維持部材の内面と電線との間に隙間があると、振動などによって電線がプロテクタや形状維持部材の内面と衝突し、打音や衝撃音が発生する。なお、成形品のプロテクタや形状維持部材の内部にスポンジなどの緩衝材を挿入して打音や衝撃音を防止する構成があるが、このような構成とすると、部品点数や作業工数が増加し、製造コストや製品価格の上昇を招くおそれがある。
【0110】
これに対して本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aによれば、電線91の所定の部分は一の熱可塑性材料92と他の熱可塑性材料93の間に埋め込まれており、電線91の所定の部分は一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93に弾性的に接触している。このため、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93との間で打音や衝撃音などが発生しない。また、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93が形状維持部材やプロテクタとして機能するとともに、電線91の所定の部分を衝撃や振動から保護する緩衝材としても機能する。このように、部品点数の増加や作業工数の増加を招かないから、部品コストや製造コストの削減を図ることができる。
【0111】
さらに、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法によれば(すなわち、第一の保持具1aを用いる構成によれば)、第一の保持具1aを用いない構成に比較して次のような効果を奏することができる。
【0112】
第一の保持具を用いずに、上型と下型とによって一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93を直接的に加圧成形する構成においては、下型の上側の面に直接的に一の熱可塑性材料92を配設し、さらにその上側に電線91の所定の部分を配設し、さらにその上側に他の熱可塑性材料93を配設するという作業が必要になる。このため、これらの作業に時間がかかると(特に、下型の上側に一の熱可塑性材料92を配設した後に時間が経過すると)、下型に載置された一の熱可塑性材料92が、加圧成形する前に下型の熱によって予定しない形状に塑性変形するおそれがある。このため、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93を所定の形状に成形することができなくなるおそれがある。
【0113】
一の熱可塑性材料92が下型に載置された状態で長時間経過すると、下型の熱が一の熱可塑性材料92の全体に伝わり、電線91の被覆材が熱により破損するおそれがある。
【0114】
また、上型および下型は、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93が塑性変形することができる温度に維持されているから、この状態で、一の熱可塑性材料92と電線91と他の熱可塑性材料93を下型に載置する作業を行うと、作業者が上型および/または下型に触れて、火傷をするおそれがある。
【0115】
なお、一の熱可塑性材料92の不測の変形や作業者の火傷を防止するため、下型に一の熱可塑性材料92と電線91の所定の部分と他の熱可塑性材料93とを配設する作業を、下型が低温(=一の熱可塑性材料92が塑性変形しない温度および作業者が火傷をしない温度)のときに行い、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93を加圧成形するときにのみ、上型と下型を加熱する構成が考えられる。しかしながらこのような構成は、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aを製造するたびに、上型と下型の加熱と冷却が必要となるため、製造に要する時間が大幅に増加する。さらにこの方法では、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93に与える熱量の制御が難しくなる。
【0116】
さらに、加圧成形時にのみ上型および下型を加熱する構成(すなわち、加圧開始後に上型および下型の加熱を解する構成)では、上型および下型が前記所定の温度に達するまでの間にも一の熱可塑性材料92と電線91と他の熱可塑性材料93に熱が与えられる。そうすると、下型や上型が前記所定の温度に達するころには、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93の表面から内部にまで熱が伝達し、電線91の所定の部分やその近傍まで高温になるおそれがある。電線91の所定の部分やその近傍が高温になると、電線91の所定の部分の被覆材(一般的には合成樹脂材料により形成される)が熱により損傷するおそれがある。電線91の所定の部分の被覆材が熱により損傷すると、電線91どうしの間の絶縁が維持できなくなるなど、ワイヤーハーネスが所定の性能を維持できなくなるおそれがある。
【0117】
これに対して本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法によれば、第一の保持具1aに一の熱可塑性材料92と電線91と他の熱可塑性材料93を配設する作業においては、第一の保持具1aを加熱する必要がない。したがって、上型3aおよび下型2aにより加圧成形するときにのみ、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93を加熱することができる。このように、加圧成形前に一の熱可塑性材料92と他の熱可塑性材料93とが加熱されることがないため、加圧成形前に一の熱可塑性材料92および/または他の熱可塑性材料93が予定しない変形を起こすおそれがない。したがって、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93を、所定の形状に正確に形成することができる。
【0118】
また、一の熱可塑性材料92と電線91と他の熱可塑性材料93とが載置された第一の保持具1aを下型2aに載置した後、ただちに加圧成形を行うことができる。すなわち、加圧成形を行う前に、長時間にわたって一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93が加熱されることがない。したがって、一の熱可塑性材料92の内部に熱が伝達する前に、加圧成形を行うことができる。このため、一の熱可塑性材料92の内部(特に電線91の所定の部分に接している部分およびその近傍)が、前記所定の温度に達する前に加圧成形を行うことができる。したがって、一の熱可塑性材料92の内部が硬化することがないから、一の熱可塑性材料92が防音材や緩衝材としての機能を失うことがない。
【0119】
また、第一の保持具1aに一の熱可塑性材料92と電線91と他の熱可塑性材料93を配設する作業は、上型3aおよび下型2aから離れた位置で行うことができる。このため、作業空間を広くとることができ、作業を容易に行うことができる。すなわち、上型3aおよび下型2aは一般的にプレス機に組み付けられていることから、下型に直接的に一の熱可塑性材料92などを配設する作業は、上型と下型の間の限られた空間で行う必要があり、上型が作業を阻害することがある。これに対して第一の保持具1aを用いる構成では、作業場所を問わず、作業を阻害するものがない箇所で作業を行うことができる。また、一の熱可塑性材料92と電線91と他の熱可塑性材料93を第一の保持具1aに配設する作業において、作業者が火傷を負うおそれがなくなる。
【0120】
また、加圧成形時にのみ上型および下型を加熱する構成と比較すると、加圧成形時のみならず、それ以外のとき(たとえば待機時)においても、上型3aおよび下型2aを前記所定の温度に維持しておくことができる。このため、第一の保持具1aに一の熱可塑性材料92と電線91の所定の部分と他の熱可塑性材料93を配設する作業が完了した後、ただちに加圧成形を行うことができる。このため、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aの製造に要する時間を短縮することができる。また、上型3aおよび下型2aを常に所定の温度に維持しておくことができるから、加圧成形時において一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93の温度の制御が容易となる。
【0121】
また、第一の保持具1aを用いる構成では、上型3aおよび下型2aを常に前記所定の温度に維持できるから、加圧成形開始と同時に所定の温度に加熱することができる。このため、電線91や電線91の近傍に熱が伝わって高温になる前に、溶着部942において一の熱可塑性材料92と他の熱可塑性材料93とを溶着することができる。
【0122】
さらに、本体部941の表層部のみを前記所定の温度にして塑性変形させ、かつ表層部のみのバインダ材を溶かすことができる。したがって、本体部941においてはその表層部のみ、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93を塑性変形させることができるとともに、バインダ材を基本繊維や芯繊維どうしの間に染み渡らせることができる。このため、冷却した後は、表層部のみが硬化し、中心部は加圧成形前の状態のままである。このため、硬化した部分がワイヤーハーネスの形状を所定の形状に維持する機能を有するとともに、プロテクタとしての機能も有する。さらに、本体部941の中心部の硬化していない部分が、電線91の防音材や緩衝材として機能する。
【0123】
さらに、第一の保持具1aを用いる構成では、製造された本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aが下型2aから取り外される際や、取り外された後、他の所定の温度以下の温度に下がるまでの間に、予定しない(または望まない)変形が生じることを防止できる。すなわち、上型3aおよび下型2aにより加圧成形された直後の本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aは、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93の少なくとも表層部が高温(=塑性変形を起こす温度)にある。このため、第一の保持具1aを用いない構成では、加圧成形後において下型2aから取り外す際に、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aを掴む必要があり、その際に一の熱可塑性材料92および/または他の熱可塑性材料93のうち、掴んだ部分及びその近傍が変形するおそれがある。また、取り外す際に、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aが、自重などによって撓み変形することもある。さらに、下型2aから取り外した後であって、前記他の所定の温度以下の温度に下がるまでの間にも、変形が生じるおそれがある。
【0124】
これに対して本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法によれば、加圧成形された本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aは、第一の保持具1aに載置された状態で下型2aから取り外すことができる。さらに、下型2aから取り外された本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aは、第一の保持具1aに載置された状態で冷却することができる。
【0125】
すなわち、下型2aから取り外す際には、第一の保持具1aを掴んで取り外せばよいから、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aに直接触れる必要ない。また、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aは、第一の保持具1aにより支持されているから、加圧成形された形状を維持した状態で下型から取り外すことができる。さらに、第一の保持具1aに載置された状態で冷却することができる。このため、加圧成形後に一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93に予定しない(または望まない)変形が発生することを防止できる。
【0126】
なお、加圧成形後に予定しない変形が発生することを防止するために、上型および下型を冷却してから取り外す構成が適用できるが、この構成では、上型および下型の冷却に時間を要するため、ワイヤーハーネスの製造に要する時間が長くなる。また、加圧成形ごとに上型および下型の加熱と冷却を行う必要があるから、前記のような問題を有する。
【0127】
また、複数の第一の保持具1aを用意することにより、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aを大量生産する場合において、作業サイクルの短縮を図ることができる。たとえば、三つの第一の保持具1aを用意すると、次のような作業が可能となる。
【0128】
一つ目の第一の保持具1aに載置された一の熱可塑性材料92と電線91の所定の部分と他の熱可塑性材料93とを上型3aおよび下型2aにより加圧成形している間に、二つ目の第一の保持具1aに、一の熱可塑性材料92と電線91と他の熱可塑性材料93を配設する作業を行う。一つ目の第一の保持具1aに載置された一の熱可塑性材料92と電線91の所定の部分と他の熱可塑性材料93との加圧成形が終了後であって冷却している間に、二つ目の第一の保持具1aに載置された一の熱可塑性材料92と電線91の所定の部分と他の熱可塑性材料93とを上型3aおよび下型2aにより加圧成形する。これと同時並行して、三つ目の第一の保持具1aに、一の熱可塑性材料92と電線91の所定の部分と他の熱可塑性材料93を載置する作業を行う。
【0129】
そして、二つ目の第一の保持具1aに載置された一の熱可塑性材料92と電線91の所定の部分と他の熱可塑性材料93との加圧成形が終了後であって冷却している間に、三つ目の第一の保持具1aに載置された一の熱可塑性材料92と電線91の所定の部分と他の熱可塑性材料93とを上型3aおよび下型2aにより加圧成形する。これと同時並行して、一つ目の第一の保持具1a(冷却後、製造された本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aが取り外されて空の状態となっている)に、一の熱可塑性材料92と電線91と他の熱可塑性材料93を配設する作業を行う。以下、このような工程を繰り返す。
【0130】
このように、複数の第一の保持具1aを用い、上型3aおよび下型2aを常に所定の温度に維持しておくことにより、「第一の保持具1aに一の熱可塑性材料92と電線91と他の熱可塑性材料93を配設する作業」と、「加圧成形」と、「冷却」を同時並行的に行うことができる。このため、作業サイクルの短縮を図ることができ、大量生産などにおいて製造に要する時間の短縮を図ることができる。
【0131】
なお、前記本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法においては、第一の保持具1aにガイドピン14が形成される構成を示したが、下型2aにガイドピンが形成される構成であってもよい。具体的には、下型2a第三の加圧部23に、上側に向かって突起するガイドピンを形成するとともに、第一の保持具1aの側部13に、ガイドピンが挿通可能な貫通孔を形成する。このような構成であっても、前記同様の作用効果を奏することができる。
【0132】
次に、本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法について説明する。なお、以下、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法と相違する部分について主に説明し、共通する部分については説明を省略することがある。
【0133】
本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法においては、上型3b、下型2a、第一の保持具1aおよび第二の保持具4bが使用される。下型2aおよび第一の保持具1aは、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法において使用されるものと同じ構成を有する。したがって、説明は省略する。
【0134】
図8は、本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法において使用される上型3bおよび第二の保持具4bの構成を、模式的に示した外観斜視図である。図8においては、図中の上方が下型2aに対向する側である。以下説明の便宜上、図8の上方を、上型3bおよび第二の保持具4bの下側と称し、下方を上側と称する。
【0135】
第二の保持具4bは、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aを製造する工程において、一の熱可塑性材料92または他の熱可塑性材料93を所定の形状に加圧成形する機能や、製造された本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aの所定の部分を所定の形状に維持するなどの機能を有する部材である。
【0136】
第二の保持具4bの下側には、電線91の所定の部分を収納可能な(換言すると本体部941を形成するための)溝状の凹部(側部43および底部42からなる部分)が形成される。そして溝状の凹部の外側には、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93を加圧するための(換言すると溶着部942を形成するための)加圧部41が形成される。すなわち、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aの軸線方向に沿って延伸する細長い底部42と、この底部42の両側に形成される側部43と、さらに側部43の両外側に形成される加圧部41とが形成される。
【0137】
そして側部43には、第一の保持具1aに対向させた際に第一の保持具1aのガイドピン14の先端部が通過できるガイドピン逃がし孔44が形成される。このガイドピン逃がし孔44は貫通孔である。ガイドピン逃がし孔44の位置や数は、第一の保持具1aのガイドピン14の位置や数に応じて設定される。
【0138】
この第二の保持具4bは、熱伝導率の高い材料により形成され、蓄熱量が小さい(すなわち、周りの温度変化に追従しやすい)構成を有する。特に、上下方向に熱を伝えやすい構成を有する。このため、たとえば薄い金属板などからなり、板金加工などにより形成される構成を有する。
【0139】
第一の保持具1aの上側の形状は、特に限定されるものではない。たとえば、第二の保持具4bが板金加工などにより形成される場合には、第二の保持具4bの上側には、溝状の凹部に対応した凸条が形成される。
【0140】
上型3bは、下型2aとともに一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93を加圧しながら加熱して、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93を所定の断面形状に形成するとともに、一の熱可塑性材料92と他の熱可塑性材料93とを溶着する部材である。上型3aの下側の面(図3においては上方の面)には、所定の断面形状を有する溝が形成される。この溝の中心線の形状は、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aの中心線の形状に沿った形状に形成される。図8においては所定の曲率で湾曲している形状を示す。
【0141】
溝の底面の断面形状は、第二の保持具4bの上側の面の断面形状と略同じ形状に形成される。すなわちこの溝の底面は、この溝に第二の保持具4bが嵌め込まれた場合、第二の保持具4bの上側の面が、ほぼ全体にわたって接触することができる形状に形成される。具体的には、第二の保持具4bが薄板状の部材により形成される場合には、溝の底面には、第二の保持具4bの加圧部41の上側の面に当接する第一の加圧部31、底部42の上側の面に当接する第二の加圧部32、側部43の上側の面に当接する第三の加圧部33が形成される。第三の加圧部33の所定の位置には、ガイドピン逃がし孔35が形成される。また、溝の側面(=第一の加圧部31の外側の段差面)が、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93をトリミングするための剪断用段差面34となる。
【0142】
上型3bは、図略の加熱手段を備える。そして、この加熱手段により第一の加圧部31、第二の加圧部32および第三の加圧部33を所定の温度に維持することができる。この所定の温度は下型2aと同じである。また、加熱手段も、下型2aと同じ加熱手段が適用できる。したがって説明は省略する。
【0143】
そして、下型2aの上側に第一の保持具1aを載置するとともに上型3bの溝に第二の保持具4bを挿入し、その状態で上型3bと下型2aとを突き合わせると、下型2aの第一の加圧部21と第二の加圧部22と第三の加圧部23と剪断用段差面24が形成される部分が、上型3bの溝(=剪断用段差面34に挟まれる部分)に嵌り込むことができる。そして、第一の保持具1aのガイドピン14の先端部が、第二の保持具4bのガイドピン逃がし孔44を通過し、上型3bのガイドピン逃がし孔35に入り込むことができる。このため、下型2aおよび下型2aに載置された第一の保持具1aと、上型3aおよび上型の溝に嵌め込まれた第二の保持具4bとを、所定の距離にまで接近させることができる。
【0144】
下型2aの第一の加圧部21と第二の加圧部22と第三の加圧部23と剪断用段差面24が形成される部分が、上型3bの溝(=剪断用段差面34に挟まれる部分)に嵌り込むと、第一の保持具1aの加圧部11の上側の面と、第二の保持具4bの加圧部41の下側の面が所定の間隔をおいて対向する。同様に、第一の保持具1aの底部11の上側の面と第二の保持具4bの底部42の下側の面とが所定の間隔をおいて対向し、第一の保持具1aの側部13の上側の面と第二の保持具4bの側部43の下側の面が所定の間隔をおいて対向する。
【0145】
そして、第一の保持具1aの加圧部11の上側の面と底部12の上側の面と側部13の上側の面、第二の保持具4bの加圧部41の下側の面と底部42の下側の面と側部43の下側の面と、上型3bの剪断用段差面34に囲まれる空隙の断面形状が、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aの断面形状となる。この状態においては、第一の保持具1aの加圧部11の上側の面と第二の保持具4bの加圧部41の下側の面との間の距離は、第一の保持具1aの底部12の上側の面と第二の保持具4bの底部42の下側の面との間の距離よりも小さくなる。
【0146】
さらに、下型2aの剪断用段差面24と、上型3bの剪断用段差面34とは接触するか、所定の微小な間隔をおいて対向する。
【0147】
また、第一の保持具1aのガイドピン14の先端部は、第二の保持具4bに形成されるガイドピン逃がし孔44および上型3bに形成されるガイドピン逃がし孔35に入り込むことができる。このため、下型2aに載置された第一の保持具1aと第二の保持具4bが嵌め込まれた上型3bとを、ガイドピン14に阻害されることなく所定の距離にまで近接させることができる。
【0148】
本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法は、次のとおりである。図9〜図12は、本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法の所定の工程を模式的に示した断面図である。それぞれ、図9は、第一の保持具1aと第二の保持具4bとの間に一の熱可塑性材料92と電線91の所定の部分と他の熱可塑性材料93とが配設された状態を示した図であり、図10は、一の熱可塑性材料92と電線91の所定の部分と他の熱可塑性材料93とが配設された第一の保持具1aおよび第二の保持具4bが下型2aに載置された状態を示した図であり、図11は、上型3bと下型2aとによって一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93を加圧している状態を示した図であり、図12は、製造された本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aの所定の部分が第二の保持具4bと第一の保持具1aとの間に挟まれた状態で上型3bおよび下型1aから取り外された状態を示した図である。
【0149】
まず、図9に示すように、第一の保持具1aの上側に一の熱可塑性材料92が載置される。具体的には、ガイドピン14が一の熱可塑性材料92を貫通して突出するようにする。そしてこの状態で、一の熱可塑性材料92の上側に電線91の所定の部分が配設される。ガイドピン14により電線91の所定の部分を位置決めして配設できる構成、および配設された電線91の所定の部分が所定の位置から外れ出ない構成は、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法と同じである。さらに電線91の所定の部分の上側に、他の熱可塑性材料93が載置される。そして、他の熱可塑性材料93の上側に、第二の保持具4bが配設される。
【0150】
このように、第一の保持具1aの上側と第二の保持具4bの下側との間に、電線91の所定の部分が、一の熱可塑性材料92と他の熱可塑性材料93に挟まれた状態で配設される。
【0151】
なお、本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法において使用される第一の保持具1aのガイドピン14の長さ(加圧部11の上側の面から突出する部分の長さ)は、前記本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法において記した長さであってもよいが、「(一の熱可塑性材料92の厚さ)+(電線91の直径(または電線束の外径))+(他の熱可塑性材料93の厚さ)+(第二の保持具4bの高さ)」よりも大きい長さであることが好ましい。このような寸法とすると、ガイドピン14の先端が他の熱可塑性材料93を貫通して突出する。そして、突出したガイドピン14の先端を、第二の保持具のガイドピン逃がし孔44に挿入することができる。このような構成によれば、第二の保持具4bの位置決めが容易となる。また、ガイドピン14によって第二の保持具4bが位置決めされた状態に維持されるから、第二の保持具4bが位置ずれることを防止できる。
【0152】
次いで、図10に示すように、一の熱可塑性材料92と電線91と他の熱可塑性材料93と第二の保持具4bとが配設された第一の保持具1aを、上型3bと下型2aの間に挿入し、下型2aの上側の面に載置する。
【0153】
そして図11に示すように、上型3bと下型2aとを接近させる。具体的には、上型3bにより第二の保持具4bを押圧するとともに、下型2aにより第一の保持具1aを押圧する。そして第一の保持具1aの加圧部11の上側の面と第二の保持具4bの加圧部41の下側の面との間の距離が、加圧成形前の一の熱可塑性材料92の厚さと加圧成形前の他の熱可塑性材料93の厚さの合計値よりも小さくなるようにする。これにより第一の保持具1aと第二の保持具4bとを接近させ、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93を加圧成形する。前記のように、第一の保持具1aのガイドピン14の先端が、第二の保持具4bのガイドピン逃がし孔44および上型3bのガイドピン逃がし孔35に刺さることにより、第一の保持具1aおよび下型2aと第二の保持具4bおよび上型3bとを、ガイドピン14に阻害されることなく、所定の距離にまで接近させることができる。また、下型2aの剪断用段差面24と上型3bの剪断用段差面34とが接触(または微小な距離おいて対向)する。
【0154】
そして、所定の時間、この状態を維持する。すなわち、所定の時間だけ加圧成形を行う。この所定の時間は、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法における所定の時間と同じ時間である。
【0155】
また、この工程においては、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法とは、上型3aにより直接的に一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93を加圧するか、第二の保持具4bを介して加圧するかが相違するのみである。すなわち、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93の塑性変形の態様やバインダ材の溶融の態様などは、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法と同じである。
【0156】
図11に示す状態が維持されると、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93のうち、第一の保持具1aの加圧部11の上側の面と第二の保持具4bの加圧部41の下側の面との間に挟まれる部分は、加圧されて圧縮変形する。そして上型3bおよび下型2aの加熱手段が発する熱により塑性変形するとともに、当該部分の上下方向全長にわたって、バインダ繊維のバインダ材が溶融し、基本繊維や芯繊維どうしの間に染み渡る。また、溶融したバインダ材は、一の熱可塑性材料と他の熱可塑性材料との接触面にも広がる。
【0157】
また、一の熱可塑性材料92のうち、第一の保持具1aの底部12の上側の面や側部13の上側の面に接触している部分の表層部も、加圧および加熱されて塑性変形する。同様に、他の熱可塑性材料93のうち、第二の保持具4bの底部42の下側の面や側部43の下側の面に接触している部分の表層部も、加圧および加熱されて塑性変形する。このため、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93の断面形状が、全体として第一の保持具1aと第二の保持具4bとの間に形成される空隙の形状に略等しい形状に形成される。そして、一の熱可塑性材料92のうち、第一の保持具1aの底部12の上側の面と側部13の上側の面に接触している部分の表層部にあるバインダ材が熱により溶融して、表層部に広がって基本繊維や芯繊維どうしの間に染み渡る。同様に、他の熱可塑性材料のうち、第二の保持具4bの底部42の下側の面や側部43の下側の面に接触している部分の表層部にあるバインダ材が熱により溶融して、表層部に広がって基本繊維や芯繊維どうしの間に染み渡る。
【0158】
なお、下型2aが発する熱は、第一の保持具1aを通じて一の熱可塑性材料92や他の熱可塑性材料93に伝わり、上型3bが発する熱は、第二の保持具4bを通じて一の熱可塑性材料92や他の熱可塑性材料93に伝わる。前記のとおり第一の保持具1aが熱伝導率の高い材料から形成され、かつ上下方向に熱を伝えやすい構成であるから、下型2aが発する熱は一の熱可塑性材料92や他の熱可塑性材料93に伝わりやすい。同様に、第二の保持具4bが熱伝導率の高い材料から形成され、かつ上下方向に熱を伝えやすい構成であるから、上型3bが発する熱は一の熱可塑性材料92や他の熱可塑性材料93に伝わりやすい。このため、前記「所定の時間」を長くする必要がない。
【0159】
また、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93のうち、第二の保持具4bの加圧部41(=上型3bの第一の加圧部31)および第一の保持具1aの加圧部11(=下型2aの第一の加圧部21)よりも外側にはみ出している部分92’,93’は、上型3bの剪断用段差面34と下型2aの剪断用段差面24とにより切り離される。このように、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93は、上型3aと下型2aとにより加圧成形されると同時に不要な部分が除去される(すなわち、トリミングされる)。
【0160】
次いで、図12に示すように、所定の時間経過後、上型と下型とが分離され、加圧成形された一の熱可塑性材料92と電線91と加圧成形された他の熱可塑性材料93(すなわち、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9a)が、第一の保持具1aと第二の保持具4bとに挟まれた状態のまま、下型2aから取り外される。そして、そのまま冷却される。この際、第二の保持具4bと第一の保持具1aとをクランプなどで挟むことにより、第二の保持具4bと第一の保持具1aとの間の寸法が変化すること(特に寸法が大きくなること)を防止してもよい。そして、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスが前記他の所定の温度以下になった後、第二の保持具4bおよび第一の保持具1aから取り外す。
【0161】
なお、第一の保持具1aおよび第二の保持具4bが熱伝導率の高い材料から形成され、かつ上下方向に熱を伝えやすい構成であるから、一の熱可塑性材料92や他の熱可塑性材料93が有する熱は、第一の保持具1aおよび第二の保持具4bを通じて迅速に外部に放熱される。また、第一の保持具1aおよび第二の保持具4bが金属板などからなり板金加工などにより形成される構成であれば、蓄熱量が小さく、上型3bや下型2aから取り外されるとただちに温度が下がり始める。このため、第一の保持具1aと第二の保持具4bとの間に挟まれた一の熱可塑性材料92や他の熱可塑性材料93は、下型2aから取り外された後において第一の保持具1aや第二の保持具4bの有する熱によって加熱され続けるということがない。このため、必要以上に加熱されることを防止できるから、一の熱可塑性材料92や他の熱可塑性材料93の性質の制御が容易となる。
【0162】
以上の工程により、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスが製造される。本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法されるワイヤーハーネスは、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法において製造されるワイヤーハーネスとほぼ同じ構成を有する。
【0163】
このような構成によれば、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法と同様の作用効果を奏することができる。さらに、次のような作用効果を奏することができる。
【0164】
上型3bおよび下型2aで加圧成形後、上型3bと下型2aとが分離されると、加圧成形された一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93に加わっていた圧力がなくなるため、本体部941の加熱時の温度が低く塑性変形が少なく弾性変形の多い部分も含めて、元の形状に戻ろうとする(すなわち、金属などの塑性加工におけるスプリングバックに相当する現象が生じる)ことがある。このため、加圧成形された一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93の断面形状や寸法が変化することがある。
【0165】
本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法によれば、上型3bと下型2aから取り出された後、前記他の所定の温度よりも低い温度になるまでの間は、第二の保持具4bの自重によって一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93に圧縮力を加え続けることができる。このため、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93が元の形状に戻ることを防止する。本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aが前記他の所定の温度以下の温度になれば、バインダ材が固化して形状が確定する。これにより、製造される本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの形状形成を図ることができる。
【0166】
また、加圧成形後、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93の温度が高い(塑性変形する温度にある状態)うちに加圧力を除去すると、本体部941のの加熱時の温度が低く塑性変形が少なく弾性変形の多い部分も含めてスプリングバックにより接合部が引き剥がされ、一の熱可塑性材料92と他の熱可塑性材料93の溶着部942における溶着が弱くなるおそれがある。このため、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93が前記他の所定の温度よりも低い温度となるまで(すなわち、バインダ材が固化するまで)、第二の保持具4bの自重を加え続けることにより、溶着部942における溶着強度の向上を図ることができる。
【0167】
なお、第二の保持具4bと第一の保持具1aとをクランプなどで挟めば、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93の変形をより確実に防止することができる。同様に、溶着部942における溶着強度の向上を図ることができる。
【0168】
さらに、加圧成形後、上型と下型とが分離される際に、一の熱可塑性材料92が下型2aに貼り付き、他の熱可塑性材料93が上型3bに貼り付くことが防止できる。このため、一の熱可塑性材料92と他の熱可塑性材料93とが分離することを防止できる。
【0169】
次に、本発明の第三実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法について説明する。本発明の第三実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法は、一の熱可塑性材料92と他の熱可塑性材料93との溶着強度の向上を図ることができる方法である。なお、本発明の第三実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法において使用する器具は、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法または本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法において使用される器具と同じである。ここでは、本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法において使用する器具を用いる構成を例に挙げて説明する。このため、本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法と共通する部分については説明を省略することがある。なお、本発明の第三実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法において製造されるワイヤーハーネスを、本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネス9bと称する。
【0170】
図13〜図16は、本発明の第三実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法の所定の工程を、模式的に示した断面図である。それぞれ、図13は、第二の保持具4bと第一の保持具1aとの間に一の熱可塑性材料92と電線91の所定の部分と他の熱可塑性材料93と強度向上用の熱可塑性材料95とが配設された状態を示した図であり、図14は、一の熱可塑性材料92と電線91の所定の部分と他の熱可塑性材料93と強度向上用の熱可塑性材料95とが配設された第二の保持具4bおよび第一の保持具1aが下型2aに載置された状態を示した図であり、図15は、上型3bと下型2aとにより一の熱可塑性材料92と電線91の所定の部分と他の熱可塑性材料93と強度向上用の熱可塑性材料95とが加圧される状態を示した図であり、図16は、製造された本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネス9bの所定の部分が第二の保持具4bと第一の保持具1aとの間に挟まれたままの状態で上型3bおよび下型2aから取り外された状態を示した図である。
【0171】
まず、図13に示すように、第一の保持具1aの上側に一の熱可塑性材料92が載置される。この際、図13に示すように、ガイドピン14を一の熱可塑性材料92を貫通させて突出させる。そして、その状態で、一の熱可塑性材料92の上側に電線91が配置される。さらに、第一の保持具1aの加圧部11に対応する位置に、強度向上用の熱可塑性材料95が配設される。そして、電線91および強度向上用の熱可塑性材料95が配設された状態で、さらにその上側に他の成形部材93が配設される。すなわち、電線91の所定の部分および強度向上用の熱可塑性材料95が、一の熱可塑性材料92と他の熱可塑性材料93との間に挟まれる。このため、強度向上用の熱可塑性材料95の少なくとも一部が、第一の保持具1aの加圧部11と第二の保持具4bの加圧部41との間に位置する。
【0172】
なお、この強度向上用の熱可塑性材料95は、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93と同じ材料からなり、所定の断面形状を有する棒状の部材である。図13においては、断面略四辺形の形状を示す。
【0173】
次いで、図14に示すように、一の熱可塑性材料92と電線91と強度向上用の熱可塑性材料95と他の熱可塑性材料93と第二の保持具4bとが配設された第一の保持具1aが、上型3bと下型2aの間に挿入され、下型2aの上側に載置される。
【0174】
そして図15に示すように、上型3bと下型2aとを接近させる。具体的には、上型3bにより第二の保持具4bを押圧し、下型2aにより第一の保持具1aを押圧し、互いに接近させる。そして第一の保持具1aの加圧部11の上側の面と第二の保持具4bの加圧部41の下側の面との間の距離が、加圧成形前の一の熱可塑性材料92の厚さと加圧成形前の他の熱可塑性材料93の厚さと強度向上用の熱可塑性材料95の厚さの合計の値よりも小さくなるようにする。
【0175】
そして、この状態(図15に示す状態)が、所定の時間だけ維持される。この「所定の時間」は、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法における所定の時間と同じである。
【0176】
この状態が維持されると、一の熱可塑性材料92と強度向上用の熱可塑性材料95と他の熱可塑性材料93のうち、第一の保持具1aの加圧部11の上側の面と第二の保持具4bの加圧部41の下側の面との間に挟まれる部分(溶着部942となる部分)は、加圧されて圧縮変形する。そして上型3bおよび下型2aの加熱手段が発する熱により所定の温度に加熱されて塑性変形する。
【0177】
そして、一の熱可塑性材料92と他の熱可塑性材料93と強度向上用の熱可塑性材料95が前記不織布または発泡体からなる場合には、溶着部942の厚さ方向の全長にわたって、一の熱可塑性材料92と強度向上用の熱可塑性材料95と他の熱可塑性材料93のバインダ材が溶融し、この部分の全体にわたって染み渡る。さらに、溶融したバインダ材は、一の熱可塑性材料92と強度向上用の熱可塑性材料95との接触面および強度向上用の熱可塑性材料95と他の熱可塑性材料93との接触面にも広がる。また、一の熱可塑性材料92と他の熱可塑性材料93と強度向上用の熱可塑性部材95が前記不織布または発泡体からなる場合には、溶着部942の厚さ方向の全長にわたって、一の熱可塑性材料92と強度向上用の熱可塑性材料95と他の熱可塑性材料が溶融する。
【0178】
また、一の熱可塑性材料92と強度向上用の熱可塑性材料95と他の熱可塑性材料93のうち、第二の保持具4bの加圧部11および上型3bの第一の加圧部より外側の部分と、第一の保持具1aの加圧部11および下型2aの第一の加圧部より外側にはみ出す部分92’,93’,95’は、上型3bの剪断用段差面34と下型2aの剪断用段差面24とにより切り離される。このように、一の熱可塑性材料92と強度向上用の熱可塑性材料95と他の熱可塑性材料93は、上型3bと下型2aとにより加圧成形すると同時に不要な部分が除去される(トリミングされる)。
【0179】
なお、本体部941における一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93の変形の態様や、バインダ材の溶融の態様は、本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法における態様と同じである。したがって説明は省略する。
【0180】
次いで、図16に示すように、所定の時間経過後、上型3bと下型2aとが分離され、加圧成形された一の熱可塑性材料92と電線91と加圧成形された他の熱可塑性材料93と加圧成形された強度向上用の熱可塑性材料95(すなわち、本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネス9bの所定の部分)が、第一の保持具2aと第二の保持具4bに挟まれた状態のまま、下型2aから取り外される。そして、そのまま冷却される。そして、本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネス9bが前記他の所定の温度よりも低い温度になった後、第二の保持具4bおよび第一の保持具1aから取り外される。
【0181】
これにより、本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネス9bが製造される。
【0182】
本発明の第三実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法によれば、本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法と同様の作用効果を奏することができる。さらに、溶着部942は一の熱可塑性材料92と強度向上用の熱可塑性材料95と他の熱可塑性材料93とにより形成されるから、溶着部942における密度が高くなり、溶着強度が向上する。このため、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93の溶着強度の向上を図ることができる。なお、本発明の第三実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法においては、第二の保持具4bを使用する構成を示したが、第二の保持具4bを使用しない構成であってもよい。すなわち、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法と略同じ方法であってもよい。
【0183】
次に、本発明の第四実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法について説明する。図17と図18は、本発明の第四実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法において使用される器具の構成を、模式的に示した外観斜視図である。具体的には、図17は、第一の保持具1cと下型2cの構成を模式的に示した外観斜視図であり、図18は、第二の保持具4cと上型3cの構成を模式的に示した外観斜視図である。なお、本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法において使用される器具と共通する部分については同じ符号を付して示し、説明は省略することがある。
【0184】
図17に示すように、下型2cには、第一の加圧部21、第二の加圧部22、第三の加圧部23、剪断用段差面24が形成される。これらの構成は、本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法において使用される下型2aと同じ構成が適用される。そして、第一の加圧部21には、加圧突起25が形成される。この加圧突起25は、上側に向かって突起する部材である。この加圧突起25の形状は特に限定されるものではないが、たとえばピン状に形成される構成や、柱状に形成される構成が適用できる。また、必ずしも上下方向に長い形状である必要はなく、横長の形状であってもよい。加圧突起25は第一の加圧部21に形成されるものであればよく、数や第一の加圧部21上における位置は特に限定されるものではない。
【0185】
また、第一の保持具1cの加圧部11には、加圧突起逃がし孔15が形成される。この加圧突起逃がし孔25は貫通孔である。それ以外の構成は、本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法において使用される第一の保持具1aと同じ構成が適用できる。この加圧突起逃がし孔15は、下型2cの加圧突起25の位置や数に応じて形成される。すなわち、第一の保持具1cが下型に載置された場合に、下型2cの加圧突起25が第一の保持具1cの加圧突起逃がし孔15を通過することができるように形成される。
【0186】
図18に示すように、上型3cには、第一の加圧部31、第二の加圧部32、第三の加圧部33、剪断用段差面34が形成される。第三の加圧部33には、ガイドピン逃がし孔35が形成される。また第一の加圧部31の両外側には剪断用段差面34が形成される。これらの構成は、本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法において使用される上型3bと同じ構成が適用できる。そして第一の加圧部31には、逃がし孔36が形成される。
【0187】
第二の保持具4cの加圧部41には、逃がし孔45が形成される。この逃がし孔45は貫通孔である。それ以外の構成は、本発明の第四実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法において使用される第二の保持具4bと同じ構成が適用できる。
【0188】
上型3cの逃がし孔36および第二の保持具4cの逃がし孔45は、下型2cの加圧突起25の位置や数に応じて形成される。すなわち、第二の保持具4cが上型3cに嵌め込まれた状態で上型3cと下型2cとが位置決めして対向させられると、下型2cの加圧突起25の位置と上型3cの逃がし孔36および第二の保持具4cの逃がし孔45の位置が略一致する。
【0189】
本発明の第四実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法は、次のとおりである。図19〜図21は、本発明の第四実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法の所定の工程を模式的に示した断面図である。それぞれ、図19は、一の熱可塑性材料92と電線91の所定の部分と他の熱可塑性材料93とが配設された第二の保持具4cおよび第一の保持具1cが下型2cに載置された状態を示した図であり、図20は、上型3cと下型2cとにより一の熱可塑性材料92と電線91の所定の部分と他の熱可塑性材料93とが加圧される状態を示した図であり、図21は、製造された本発明の第三実施形態にかかるワイヤーハーネス9cが第二の保持具4cと第一の保持具1cとの間に挟まれたままの状態で上型3cおよび下型2cから取り外された状態を示した図である。なお、本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法と共通する部分については説明を省略することがある。
【0190】
まず、図19に示すように、第一の保持具1cの上側に一の熱可塑性材料92が配設される。そして、その状態で、一の熱可塑性材料92の上側に電線91が配設される。そして、電線91の所定の部分が配設された状態で、さらにその上側に他の成形部材93が配設される。そして、他の熱可塑性材料の上側に、第二の保持具4cが配設される。このように、電線91の所定の部分が一の熱可塑性材料92と他の熱可塑性材料93との間に挟まれた状態で、第一の保持具1cと第二の保持具4cとの間に配設される。
【0191】
次いで、一の熱可塑性材料92と電線91と他の熱可塑性材料93と第二の保持具4cとが配設された第一の保持具1cが、上型3cと下型2cとの間に挿入され、下型2cに載置される。そして図20に示すように、上型3cと下型2cとを接近させる。具体的には、上型3cにより第二の保持具4cを押圧し、下型2cにより第一の保持具1cを押圧する。そして第二の保持具4cと第一の保持具1cとを接近させ、第二の保持具4cの加圧部41の下側の面と第一の保持具1cの加圧部11の下側の面との間の距離が、加圧成形前の一の熱可塑性材料92の厚さと加圧成形前の他の熱可塑性材料93の厚さの合計の値も小さくなるようにする。
【0192】
そして、所定の時間、この状態を維持する。ここでいう所定の時間は、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法における所定の時間と同じである。この間における一の熱可塑性材料および他の熱可塑性材料の変形の態様などは、本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法における工程とほぼ同じである。したがって、説明は省略する。
【0193】
ここで、下型2cの加圧突起25が、第一の保持具1cの加圧突起逃がし孔15を貫通し、一の熱可塑性材料92に食い込む。そして、加圧突起25により押圧された一の熱可塑性材料92が、他の熱可塑性材料93に食い込む。さらに、加圧突起25により押圧された一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93は、第二の保持具4cの逃がし孔45および上型3cの逃がし孔36の内部に入り込む。
【0194】
次いで、図21に示すように、所定の時間経過後、上型3cと下型2cとが分離され、加圧成形された一の熱可塑性材料92と電線91の所定の部分と加圧成形された他の熱可塑性材料93(すなわち、本発明の第三実施形態にかかるワイヤーハーネス9cの所定の部分)が、第二の保持具4cと第一の保持具1cに挟まれた状態のまま、下型2cから取り外される。そして、その状態のまま冷却される。そして、本発明の第三実施形態にかかるワイヤーハーネス9cが前記他の所定の温度よりも低い温度になった後、第二の保持具4cおよび第一の保持具1cから取り外される。
【0195】
以上の工程により、本発明の第三実施形態にかかるワイヤーハーネス9cが製造される。
【0196】
図22は、本発明の第三実施形態にかかるワイヤーハーネス9cの構成を、模式的に示した外観斜視図である。本発明の第三実施形態にかかるワイヤーハーネス9cは、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス9aとほぼ同じ構成を有する。ただし、溶着部942には、下型2cの加圧突起25により押圧されて第二の保持具4cの逃がし孔45および上型3cの逃がし孔36に充填した一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93が突起96を形成する。なお、反対側には、下型2cの加圧突起25による凹部が形成される(図22においては隠れて見えない)。
【0197】
本発明の第四実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法によれば、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法または本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法と同様の作用効果を奏することができる。それに加えて、加圧突起25により押圧された一の熱可塑性材料92が他の熱可塑性材料93に食い込むから、食い込んだ箇所において一の熱可塑性材料92と他の熱可塑性材料93との溶着強度が向上する。なお、本発明の第四実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法においては、第二の保持具4cを使用する構成を示したが、第二の保持具4cを使用しない構成であってもよい。すなわち、本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法に対して適用してもよい。
【0198】
次に、電線91と一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93との結合強度の向上を図る構成について説明する。図23は、結合強度の向上を図ったワイヤーハーネス9dの断面構造を、模式的に示した図である。図24は、このワイヤーハーネス9dの電線91の所定の部分と、この電線91の所定の部分に取り付けられる結合強度向上部材99と、固定部材98との構成を模式的に示した図であり、(a)は分解斜視図、(b)は組み付けた状態を示した外観斜視図である。
【0199】
図23と図24に示すように、このワイヤーハーネス9dの所定の部分は、電線91と、一の熱可塑性材料92と、他の熱可塑性材料93と、結合強度向上部材99と、固定部材98とを有する。図23に示すように、結合強度向上部材99は、断面略U字形状の円弧状の部材であり、電線91の所定の部分の外周に沿った形状に形成される(たとえば電線の半径と略等しい曲率半径を有する円弧状に形成される)底面992と、底面992の両側から起立する側壁991とを有する。そして側壁991の上端は、図23や図24に示すように凹凸が形成される。
【0200】
固定部材98は、結合強度向上部材99を電線91に固定するための部材であり、その構成は限定されるものではない。たとえば図23や図24に示すように、リング状の部材であってもよく、紐状の部材であってもよい。また、タイバンド(tie band)であってもよい。要は、結合強度向上部材99を電線91に固定する(少なくとも、結合強度向上部材が電線91の所定の部分の軸線方向に移動することが困難なる)ことができればよい。具体的には、図23と図24のそれぞれに示すように、結合強度向上部材99の側壁991の間に固定部材98を嵌め込み、底面992を外側から固定部材98によって、電線91の外周に巻き付けるように固定する。なお、固定部材98を使用せずに、接着剤によって結合強度向上部材を電線に固定する構成であってもよい。
【0201】
そして、結合強度向上部材99が固定された電線91について、本発明の前記いずれかの実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法によってワイヤーハーネスを製造する。そうすると、図23に示すように、結合強度向上部材99の側壁991の上端に形成される凹凸が、一の熱可塑性材料92および/または他の熱可塑性材料93に食い込む。このため、電線91に軸線方向の引っ張り力(電線91を一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93から引き抜くような力)が加わった場合であっても、一の熱可塑性材料92および/または他の熱可塑性材料93に食い込んだ結合強度向上部材99により、電線91が軸線方向に移動することを防止する。
【0202】
なお、結合強度向上部材99の構成、および結合強度向上部材99を電線91に固定する構成は、前記構成に限定されるものではない。要は、結合強度向上部材99が一の熱可塑性材料92および/または他の熱可塑性材料93に食い込むことができるような形状であり(たとえば、突起や凹凸が形成される構成であり)、かつこの結合強度向上部材99が電線91に固定される構成であればよい。
【0203】
次に、電線91の所定の部分がシールド材により覆われたワイヤーハーネス9eの製造方法について説明する。図25は、電線91の所定の部分がシールド材により覆われたワイヤーハーネス9eの断面構造を模式的に示した断面図である。図25に示すように、このワイヤーハーネス9eは、電線91と、この電線91の所定の部分をシールドするシールド材970と、電線91の所定の部分およびシールド材970の周囲を覆う一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93と、留め具973とを有する。
【0204】
図25に示すように、電線91の所定の部分、一の熱可塑性材料92、他の熱可塑性材料93の構成は、前記いずれかの実施形態にかかるワイヤーハーネスと略同じである。シールド材970は、電線91の所定の部分を覆う本体部971と、本体部971に電気的に導通しており、本体部971から延出する延出部972とを有する。このシールド材970には、導電性の材料からなる箔、板金、テープ、編組、網などが適用できる。留め具973には、導体からなる鳩目(環状の金具)が適用できる。
【0205】
このような構成のワイヤーハーネス9eの製造方法は次のとおりである。まず、電線91の所定の部分の外周をシールド材970で覆う。たとえばアルミテープを電線91の所定の部分の外周に巻き付けるとともに、アルミテープにより延出部972を形成する構成などが適用できる。
【0206】
そして、シールド材970に覆われた電線91の所定の部分に対して、前記本発明のいずれかの実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法を適用し、ワイヤーハーネス9eを製造する。一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93(および、場合によっては強度向上用の熱可塑性材料95)を加圧成形する際に、シールド材970の延出部が、一の熱可塑性材料92と他の熱可塑性材料93との間に挟まれるようにする。なお、強度向上用の熱可塑性材料95を用いる場合には、一の熱可塑性材料92と強度向上用の熱可塑性材料95との間、または強度向上用の熱可塑性材料95と他の熱可塑性材料93との間に挟まれるようにする。このような構成によれば、シールド材970の延出部972が、溶着部942の内部に埋め込まれた構造が得られる。
【0207】
そして、溶着部942および溶着部942に埋め込まれたシールド材970の延出部972に貫通孔を形成し、この貫通孔に留め具973を装着する。なお、上型または下型に突起を設け、この突起により一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93(および場合によっては強度向上用の熱可塑性材料95)を加圧成形する際に同時に貫通孔を形成する構成であってもよい。このような工程により、このワイヤーハーネス9eが製造される。
【0208】
この貫通孔に留め具973が装着されると、シールド材970の延出部972と留め具973とが接触して電気的に導通する。このため、留め具973をアース接続することにより、シールド材970を接地することができる。
【0209】
次に、本発明の前記いずれかの実施形態により製造されたワイヤーハーネスを、所定の形状に形成する(所定の形状に曲げる)方法について説明する。
【0210】
一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93(さらに強度向上用の熱可塑性材料95)は、熱可塑性を有することから、前記所定の温度以上に加熱することにより、容易に塑性変形させることができ、その後冷却することにより、その形状を維持することができる。
【0211】
図26と図27は、本発明のいずれかの実施形態にかかる製造方法により製造されたワイヤーハーネス9a,9b,9c,9d,9e(以下、符号「9」を付す)をさらに曲げ加工する方法を、模式的に示した断面図である。それぞれ、図26は、曲げ加工を行う前の状態を示し、図27は、曲げ加工を行っている状態を示す。図26と図27のそれぞれに示すように、曲げ加工においては、曲げ加工用の上型6aと曲げ加工用の下型7aが使用される。曲げ加工用の上型6aと曲げ加工用の下型7aの一方が凸部を有し、他方が凹部を有する。図26と図27においては、曲げ加工用の上型6aが凸部を有し、曲げ加工用の下型7aが凹部を有する。そして、曲げ加工用の上型6aの凸部と曲げ加工用の下型7aの凹部の間に製造されたワイヤーハーネス9を挟みこみ、その状態で前記所定の温度に加熱することによって、ワイヤーハーネス9を所定の形状(凹部と凸部の形状)に曲げる。
【0212】
なお、ワイヤーハーネス9を加熱する構成としては、次のような構成が適用される。
【0213】
1.曲げ加工用の上型6aと曲げ加工用の下型7aが加熱手段を有する構成。この構成によれば、曲げ加工用の上型6aと曲げ加工用の下型7aとの間にワイヤーハーネス9を挟みこむことによって、曲げ加工しつつ加熱が行われる。そして曲げ加工用の上型6aと曲げ加工用の下型7aからワイヤーハーネスが取り外されて冷却されると、ワイヤーハーネス9の形状が確定する。加熱手段には、上型や下型と同じ加熱手段が適用できる。
【0214】
2.曲げ加工用の上型6aと曲げ加工用の下型7aが加熱手段を有さず、ワイヤーハーネス9を曲げ加工用の上型6aと曲げ加工用の下型7aに挟みこんだ状態で、外部からワイヤーハーネス9を加熱する構成。たとえば、曲げ加工用の上型6aと曲げ加工用の下型7aとの間にワイヤーハーネス9を挟みこみ、その状態で、ワイヤーハーネス9に前記所定の温度の気体(加熱した空気や過熱蒸気)を吹き付け、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93塑性変形させる。その後、気体の吹き付けを停止し、ワイヤーハーネス9が前記他の所定の温度よりも低い温度になった後、曲げ加工用の上型6aと曲げ加工用の下型7aから取り外される。
【0215】
3.曲げ加工用の上型6aと曲げ加工用の下型7aが加熱手段を有さず、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93の加圧成形の後、他の所定の温度よりも低い温度に下がるまでの間に、曲げ加工を行う構成。本発明の前記いずれかの実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法により製造された直後のワイヤーハーネス9は、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93の温度が高い状態(可塑性を有する状態)にある。そのため、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93が前記他の所定の温度よりも低い温度に下がる前に、曲げ加工用の上型6aと曲げ加工用の下型7aとの間に挟み、その状態でワイヤーハーネス9を冷却する。これにより、ワイヤーハーネス9の形状が確定する。この方法によれば、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93を再加熱する必要がない。このため、曲げ加工を行う設備の簡略化を図ることができる。
【0216】
このような構成によれば、一の熱可塑性材料92および他の熱可塑性材料93を加圧成形した後においても、ワイヤーハーネス9を所定の形状に形成する(=所定の形状に曲げる)ことができる。したがって、ワイヤーハーネス9の形成や形状の変更が容易となる。
【0217】
なお、ワイヤーハーネス9を曲げ加工する際に、曲げ加工を行う部分以外の部分が変形しないように、第二の保持具4eおよび第一の保持具1eとの間にワイヤーハーネス9を挟んだ状態で曲げ加工する構成であってもよい。図28と図29は、第二の保持具4eと第一の保持具1eとの間にワイヤーハーネス9を挟んだ状態で曲げ加工を行う構成を、模式的に示した断面図である。それぞれ図28は、曲げ加工を行う前の状態を示し、図29は曲げ加工を行っている状態を示す。
【0218】
図28と図29に示すように、第二の保持具4eは、曲げ加工を行う部分において分割されており、蝶番49により結合されている。このため、蝶番49の部分において屈曲することができる。なお、それ以外の構成は、前記本発明のいずれかの実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法において使用される第二の保持具と同じ構成が適用できる。また、第一の保持具1eも、曲げ加工を行う部分において分割されている。すなわち、第一の保持具1eは、複数の部材からなる。それ以外の構成は、前記本発明のいずれかの実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法において使用される第一の保持具と同じ構成が適用できる。
【0219】
そして、図28に示すように、第二の保持具4eの分割している箇所(=蝶番49により結合している箇所)および第一の保持具1eの分割している箇所が、曲げ加工用の上型6bと曲げ加工用の下型7bとの間に配置される。次いで、図29に示すように、当該箇所を曲げ加工用の上型6aと曲げ加工用の下型7bとの間に挟み、ワイヤーハーネス9を曲げる。この際に、ワイヤーハーネスを加熱する。加熱方法は、前記いずれかの方法が適用できる。
【0220】
このような構成によれば、必要な部分のみを曲げ加工することができ、曲げない部分に不測の変形が生じることを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0221】
以上、本発明の各種実施形態について詳細に説明したが、本発明は、前記各実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変が可能である。
【0222】
たとえば、前記本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法においては、電線を一の熱可塑性材料と他の熱可塑性材料の二つの熱可塑性材料の間に挟む構成を示したが、一つの熱可塑性材料を折り曲げ、その内側に電線を包みこむようにしてもよい。
【0223】
また、前記本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネスの製造方法においては、本体部の断面形状が略六角形に形成される構成を示したが、ワイヤーハーネスの断面形状は限定されるものではない。一般的に、ワイヤーハーネスの断面形状は、製造されたワイヤーハーネスが配索される場所の形状に応じて設定される。
【0224】
たとえば本体部941の断面形状は、略円形や略四辺形などであってもよい。また、上下、左右に非対称な形状であってもよい。本体部941の断面形状が略円形の場合には、第一の保持具には、上側に断面略円形の溝状の凹部が形成され、この溝状の凹部の両側に加圧部が形成される構成が適用される。そして上型の下側には(第二の保持具が用いられる場合には第二の保持具の下側には)、断面略円形の溝状の凹部が形成され、この溝状の凹部の両側に加圧部が形成される構成が適用される。本体部941の断面形状が略四辺形の場合には、第一の保持具には、上側に断面略四辺形の溝状の凹部が形成され、この溝状の凹部の両側に加圧部が形成される構成が適用される。そして上型の下側には(第二の保持具が用いられる場合には第二の保持具の下側には)、断面四辺形の溝状の凹部が形成され、この溝状の凹部の両側に加圧部が形成される構成のものが適用される。このように、第一の保持具の上側に形成される溝状の凹部と、上型の下側(第二の保持具が用いられる場合には第二の保持具の下側)に形成される溝状の凹部の断面形状を所定の形状に形成することにより、各種断面形状のワイヤーハーネスを形成することができる。
【符号の説明】
【0225】
1a,1c,1d 第一の保持具
11 第一の保持具の加圧部
12 第一の保持具の底部
13 第一の保持具の側部
14 ガイドピン
15 加圧突起逃がし孔
2a,2b,2c,2d 下型
21 下型の第一の加圧部
22 下型の第二の加圧部
23 下型の第三の加圧部
24 下型の剪断用段差面
25 加圧突起
3a,3b,3c,3d,3e 上型
31 上型の第一の加圧部
32 上型の第二の加圧部
33 上型の第三の加圧部
34 上型の剪断用段差面
35 ガイドピン逃がし孔
36 逃がし孔
4b,4c,4d,4e 第二の保持具
41 第二の保持具の加圧部
42 第二の保持具の底部
43 第二の保持具の側部
44 ガイドピン逃がし孔
45 逃がし孔
49 蝶番
6a,6b 曲げ加工用の上型
7a,7b 曲げ加工用の下型
9 本発明の各実施形態にかかるワイヤーハーネス
9a 本発明の第一実施形態にかかるワイヤーハーネス
9b 本発明の第二実施形態にかかるワイヤーハーネス
9c 本発明の第三実施形態にかかるワイヤーハーネス
9d 熱可塑性材料との結合力の向上を図ったワイヤーハーネス
9e 電線の所定の部分がシールド材で覆われたワイヤーハーネス
91 電線
92 一の熱可塑性材料
93 他の熱可塑性材料
941 本体部
942 溶着部
95 強度向上用の熱可塑性材料
96 突起
970 シールド材
971 シールド材970の本体部
972 シールド材970の延出部
973 留め具
98 固定部材
99 結合強度向上部材
991 結合強度向上部材の側壁
992 結合強度向上部材の底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の所定の部分の周囲が熱可塑性材料により覆われたワイヤーハーネスの製造方法であって、
第一の保持具の上側に前記電線の前記所定の部分と前記熱可塑性材料とを前記電線の前記所定の部分が前記熱可塑性材料に挟まれた状態で載置し、
加熱手段を備える一対の成形型の一方により前記第一の保持具の下側を押圧するとともに前記一対の成形型の他方により前記第一の保持具に載置された前記電線の前記所定の部分を挟む前記熱可塑性材料を押圧することによって、前記電線の前記所定の部分を挟む前記熱可塑性材料を前記第一の保持具の上側に載置された状態で加圧成形しながら所定の温度に加熱して前記電線の前記所定の部分の周囲を前記熱可塑性材料で覆うとともに前記熱可塑性材料どうしの接触面を溶着し、
その後前記熱可塑性材料で覆われた前記電線の前記所定の部分を前記第一の保持具の上側に載置された状態で前記一対の成形型から取り外す
ことを特徴とするワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項2】
前記熱可塑性材料で覆われた前記電線の前記所定の部分を前記第一の保持具の上側に載置された状態で前記一対の成形型から取り外した後、前記熱可塑性材料で覆われた前記電線の前記所定の部分が前記第一の保持具の上側に載置された状態で前記熱可塑性材料を冷却することを特徴とする請求項1に記載のワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項3】
前記一対の成形型の他方と前記第一の保持具の上側の少なくとも一方には前記電線の前記所定の部分を収容可能な凹部が形成されるとともに該凹部の外側には前記熱可塑性材料どうしの接触面に圧縮力を加えるための加圧部が形成され、前記熱可塑性材料の接触面のうち前記加圧部により圧縮力が加えられた部分を溶着させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項4】
電線の所定の部分の周囲が熱可塑性材料により覆われたワイヤーハーネスの製造方法であって、
第一の保持具の上側と第二の保持具の下側の間に前記電線の前記所定の部分と前記熱可塑性材料とを前記電線の前記所定の部分が前記熱可塑性材料に挟まれた状態で配設し、
加熱手段を備える一対の成形型の一方により前記第一の保持具の下側を押圧するとともに前記一対の成形型の他方により前記第二の保持具の上側を押圧することによって前記電線の前記所定の部分を挟む前記熱可塑性材料を前記第一の保持具と前記第二の保持具とに挟まれた状態で加圧成形しながら所定の温度に加熱して前記電線の前記所定の部分の周囲を前記熱可塑性材料で覆うとともに前記熱可塑性材料どうしの接触面を溶着し、
その後前記熱可塑性材料で覆われた前記電線の前記所定の部分を前記第一の保持具と前記第二の保持具により挟まれた状態で前記一対の成形型から取り外す
ことを特徴とするワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項5】
前記熱可塑性材料で覆われた前記電線の前記所定の部分を前記第一の保持具と前記第二の保持具との間に挟まれた状態で前記一対の成形型から取り外した後、前記熱可塑性材料で覆われた前記電線の前記所定の部分が前記第一の保持具と前記第二の保持具との間に挟まれた状態で前記熱可塑性材料を冷却することを特徴とする請求項4に記載のワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項6】
前記第一の保持具の上側と前記第二の保持具の下側の少なくとも一方には前記電線の前記所定の部分を収容可能な凹部が形成されるとともに該凹部の外側には前記熱可塑性材料どうしの接触面に圧縮力を加えるための加圧部が形成され、前記熱可塑性材料の接触面のうち前記加圧部により圧縮力が加えられた部分を溶着させることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項7】
前記熱可塑性材料のうち前記凹部に嵌り込んだ部分の表層部を前記所定の温度に加熱することにより塑性変形させて硬化させ、前記熱可塑性材料のうち前記凹部に嵌り込んだ部分の中心部に比較して硬度を向上させることを特徴とする請求項3または請求項6に記載のワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項8】
前記第一の保持具には、前記電線を前記凹部に位置決めするためのガイドピンが立設され、前記電線の前記所定の部分は前記熱可塑性材料を貫通して突出する前記ガイドピンにより位置決めされることを特徴とする請求項3、請求項6、請求項7のいずれか1項に記載のワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項9】
前記一対の成形型には、前記熱可塑性材料の不要な部分を切りおとすことができる剪断用段差面が形成され、前記電線の前記所定の部分を挟む前記熱可塑性材料を加圧成形する際に前記熱可塑性材料の不要な部分を切りおとすことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項10】
前記熱可塑性材料の間に前記電線の前記所定の部分を挟むとともに強度向上用の熱可塑性材料を挟み、
前記電線の前記所定の部分を挟む前記熱可塑性材料を加圧成形しながら所定の温度に加熱する際に前記強度向上用の熱可塑性材料も加圧成形して前記電線の前記所定の部分の周囲を前記熱可塑性材料で覆うとともに前記熱可塑性材料と前記強度向上用の熱可塑性材料の接触面を溶着することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項11】
前記一対の成形型の少なくとも一方に前記熱可塑性材料を加圧する加圧突起を立設し、前記電線の前記所定の部分を挟む前記熱可塑性材料を加圧成形する際に前記加圧突起を前記熱可塑性材料に食い込ませることによって前記熱可塑性材料どうしの接触面において前記電線の前記所定の部分を挟む前記熱可塑性材料の一方の面を他方の面に食い込ませることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項12】
前記電線の前記所定の部分を挟む前記熱可塑性材料を加圧成形する前に、あらかじめ前記電線の前記所定の部分に前記電線と前記熱可塑性材料との結合強度を向上させる結合強度向上部材を固定しておくことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項13】
前記電線の前記所定の部分を挟む前記熱可塑性材料を加圧成形する前に、あらかじめ前記電線の前記所定の部分の外周に延出部を有するシールド材を装着しておき、前記シールド材の延出部を前記熱可塑性材料の間に挟みこんだ状態で前記熱可塑性材料を加圧成形し、前記熱可塑性材料に前記シールド材の延出部と電気的に導通する留め具を装着することを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項14】
前記熱可塑性材料で覆われた前記電線の前記所定の部分を前記一対の成形型から取り外した後、さらに前記熱可塑性材料で覆われた前記電線の前記所定の部分を加圧して曲げながら加熱することにより、前記熱可塑性材料で覆われた前記電線の前記所定の部分を所定の形状に曲げることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項15】
前記熱可塑性材料で覆われた前記電線の前記所定の部分を前記一対の成形型から取り外した後、前記熱可塑性材料が軟化しない温度に下がる前に、さらに前記熱可塑性材料で覆われた前記電線の前記所定の部分を加圧して曲げることにより、前記熱可塑性材料で覆われた前記電線の前記所定の部分を所定の形状に曲げることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のワイヤーハーネスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2010−267412(P2010−267412A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115780(P2009−115780)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)