説明

ワイヤー通し孔形成用の固定具及びくくり罠

【課題】ワイヤーの端部を折り返すように曲げて形成される通し孔について、その通し孔の形態を保持してその機能を維持するように固定できるワイヤー通し孔形成用の固定具及びそれを用いたくくり罠を提供すること。
【解決手段】ワイヤー21の端部21aをループ状に曲げて固定することで形成される通し孔25を設けるために、ワイヤー21が並列状態に挿通できるように断面が略8の字状の偏平に形成され、圧着変形されることでワイヤー21に固着されるように設けられた筒状部材11であって、その筒状部材11の一方の開口端部11a側でワイヤー21の並び方向の一方の側面部11cに、ワイヤーの末端部21bが抜け止めのために鈍角に曲げられて固定されるように嵌め込まれるワイヤー末端部用の切り欠き部12が形成され、圧着変形されることで固着されるように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーの端部をループ状に曲げて固定することで形成される通し孔を設けるために、ワイヤーが並列状態に挿通できるように断面が略8の字状の偏平に形成され、圧着変形されることでワイヤーに固着されるように設けられた筒状部材をベースの形態とするワイヤー通し孔形成用の固定具に関する。
【0002】
また、ワイヤーの一方の端部に設けられた通し孔に他方を通して罠用ループが作られるワイヤー状のくくり部材と、そのくくり部材の前記通し孔を形成する一端部に接して罠用ループを小さくするように締め付ける締め付け部材と、その締め付け部材を作動させるように力を与えるスプリング状の撥ね上げ部材を備え、くくり部材を撥ね上げ部材の力によって獣足をくくるように締め付けるくくり罠に関する。
【背景技術】
【0003】
機能性の高いくくり罠としては、一方に設けられた通し孔に他方を通して罠用ループが作られるワイヤー状のくくり部部材と、該くくり部部材の前記通し孔を形成する一端部に接して前記罠用ループを小さくするように締め付ける締め付け部材と、該締め付け部材を稼働させるように力を与えるスプリング状の撥ね上げ部材とを備え、前記くくり部部材を前記撥ね上げ部材の力によって獣足をくくるように締め付けるくくり罠において、掘削された土中に埋められる枠状に設けられた本体外枠と、該本体外枠の上部外周を取り巻いて上側に張り出した縁状に設けられた本体外枠上部保護材と、前記本体外枠の内周に嵌まって上下方向へ移動可能に枠状に設けられると共に内部に踏み板が固定されて設けられ、上部外周が、罠を設置するときには前記くくり部部材が前記撥ね上げ部材の力に抗して前記罠用ループを作るように嵌められた状態に保持される部位になると共に、前記踏み板が踏み込まれることに伴って下降したときには前記くくり部部材が前記本体外枠の上端面によって下降を阻止されて外れる部位になるように設けられている本体中枠と、前記くくり部部材が、前記本体外枠の上端面、前記本体外枠上部保護材の内周面、及び前記本体中枠の上部外周面によって囲まれて設置される部位を含め、上部を覆う上部覆い材とを具備する(特許文献1参照)ものが、先に本出願人によって提案されている。これによれば、構成が簡単且つ小型で、撥ね上げ部材を弱いものにした場合でも、獣足のくくりをより確実にすることができる
【0004】
このようなくくり罠においては、ワイヤー状のくくり部材とスプリング状の撥ね上げ部材とを構成要素とするものが多く、圧縮したスプリング(撥ね上げ部材)の力を利用するため、くくり部材の一方を圧縮した撥ね上げ部材の後方に固定し、くくり部材の他方で圧縮した撥ね上げ部材の前方に罠用ループを作る形態に設けられている。獣足によって罠が作動し、撥ね上げ部材の反発力を利用して獣足をくくり、締め付けるが、作動時にくくり部材(ワイヤー)の滑りが悪かったり、くくり部材を締め付けきれず、獣が踏み足を抜くケースが多くある。
【0005】
これは、従来のワイヤー端部の通し孔の形状が、図5に示すような形態になっているためである。このワイヤー端部210の通し孔250は、ワイヤー端部210を結ぶことによって形成されており、経時的に締まる方向へ形状が変化しやすいなど、その通し孔250の形態を保持できない場合がある。そのため、その通し孔250の機能を発揮できない場合がある。
【0006】
このような従来のワイヤー端部210の通し孔250を備えるくくり罠は、くくり部材200の罠用ループ300のくくりを著しく阻害するばかりでなく、締め付けにおいても遅れが生じ、獣足を抜かれて逃げられてしまう。このような現象が起こる原因の一つには、くくり部材200が罠本体(本体中枠)に長時間装着されている間に、撥ね上げ部材(スプリング)の力が加わって締め付け部が動いてしまうことにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−162011号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ワイヤー通し孔形成用の固定具及びくくり罠に関して解決しようとする問題点は、従来のワイヤー端部の通し孔は、ワイヤー端部を結ぶことによって形成されており、経時的に締まる方向へ形状が変化しやすいなど、その通し孔の形態を保持できないことでその機能を失う場合が生じやすいことある。
そこで本発明の目的は、ワイヤーの端部を折り返すように曲げて形成される通し孔について、その通し孔の形態を保持してその機能を維持するように固定できるワイヤー通し孔形成用の固定具及びそれを用いたくくり罠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明にかかるワイヤー通し孔形成用の固定具の一形態によれば、ワイヤーの端部をループ状に曲げて固定することで形成される通し孔を設けるために、ワイヤーが並列状態に挿通できるように断面が略8の字状の偏平に形成され、圧着変形されることでワイヤーに固着されるように設けられた筒状部材であって、該筒状部材の一方の開口端部側でワイヤーの並び方向の一方の側面部に、ワイヤーの末端部が抜け止めのために鈍角に曲げられて固定されるように嵌め込まれるワイヤー末端部用の切り欠き部が形成され、圧着変形されることでワイヤーに固着されるように設けられている。
【0010】
また、本発明にかかるワイヤー通し孔形成用の固定具の一形態によれば、前記筒状部材の他方の開口端部側でワイヤーの並び方向の一の側面部に、ワイヤーを前記通し孔の形状に固定するためにワイヤーが鈍角に曲げられて固定されるように嵌め込まれる形状案内用の切り欠き部が形成され、圧着変形されることでワイヤーに固着されるように設けられていることを特徴とすることができる。
【0011】
また、本発明にかかるワイヤー通し孔形成用の固定具の一形態によれば、前記筒状部材の他方の開口端部側でワイヤーの並び方向の両方の側面部に、ワイヤーを前記通し孔の形状に固定するためにワイヤーが鈍角に曲げられて固定されるように嵌め込まれる形状案内用の切り欠き部が、それぞれ形成され、圧着変形されることでワイヤーに固着されるように設けられていることを特徴とすることができる。
【0012】
また、本発明にかかるくくり罠の一形態によれば、上記のワイヤー通し孔形成用の固定具を用いて設けられた通し孔に、ワイヤーのもう一方の端を通して罠用ループが作られるワイヤー状のくくり部材を具備する。
また、本発明にかかるくくり罠の一形態によれば、ワイヤーの末端に、リング状の抜け止め部材が固着されていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のワイヤー通し孔形成用の固定具及びくくり罠によれば、ワイヤーの端部を折り返すように曲げて形成される通し孔について、その通し孔の形態を保持してその機能を維持するように固定できるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るワイヤー通し孔形成用の固定具の形態例を示す(a)は斜視図であり、(b)は他の方向から見た斜視図、(c)は側面図、(d)は平面図、(e)は他の方向から見た側面図である。
【図2】本発明に係るワイヤー通し孔形成用の固定具の形態例によって、通し孔を形成するための手順を示す(a)は第一工程の斜視図、(b)は第二工程の斜視図である。
【図3】ワイヤー状のくくり部材に本発明に係るワイヤー通し孔形成用の固定具を取り付けてくくり罠を完成した状態を示す(a)は斜視図であり、(b)は要部の詳細を示す拡大図である。
【図4】筒状罠本体に、本発明に係るくくり部材を本体中枠に取り付けた設置状態を示す側面図である。
【図5】従来のワイヤー通し孔の形態例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のワイヤー通し孔形成用の固定具10及びくくり罠に係る最良の実施の形態例を図面1〜4に基づき詳細に説明する。
11は筒状部材であって、ワイヤー21の端部21aをループ状に曲げて固定することで形成される通し孔25を設けるために、ワイヤー21が並列状態に挿通できるように断面が略8の字状の偏平に形成され、圧着変形されることでワイヤー21に固着されるように設けられている。この筒状部材11は、金属製であり、円形の筒状の材料を適宜プレスすることで成形できる形態になっている。
【0016】
そして、その筒状部材11の一方の開口端部11a側でワイヤー21の並び方向の一方の側面部11cに、ワイヤー21の末端部21bが抜け止めのために鈍角に曲げられて固定されるように嵌め込まれるワイヤー末端部用の切り欠き部12が形成され、圧着変形されることでワイヤー21に固着されるように設けられている。このワイヤー通し孔形成用の固定具によれば、ワイヤー21の末端部21bが、ワイヤー21に確実に固着され、緩んだり、抜けることを確実に防止でき、通し孔25の形態を好適に保持できる。
【0017】
また、本形態例では、筒状部材11の他方の開口端部11b側でワイヤー21の並び方向の一の側面部11c又は11dに、ワイヤー21を通し孔25の形状に固定するためにワイヤー21が鈍角に曲げられて固定されるように嵌め込まれる形状案内用の切り欠き部13a又は13bが形成され、圧着変形されることでワイヤー21に固着されるように設けられている。これにより、通し孔25の形状を好適なループ状に形成することが可能になる。
【0018】
さらに、本形態例では、筒状部材11の他方の開口端部11b側でワイヤー21の並び方向の両方の側面部11c、11dに、ワイヤー21を通し孔25のループ形状に固定するためにワイヤー21が鈍角に曲げられて固定されるように嵌め込まれる形状案内用の切り欠き部13a、13bが、それぞれ形成され、圧着変形されることでワイヤー21に固着されるように設けられている。これにより、通し孔25の形状をさらに好適なループ状に形成することが可能になる。
【0019】
また、本発明によれば、上記のワイヤー通し孔形成用の固定具10を用いて設けられた通し孔25に、ワイヤー21のもう一方の端を通して罠用ループ30が作られるワイヤー状のくくり部材20を具備するくくり罠を提供することができる(図3参照)。また、ワイヤー21の末端21cに、リング状の抜け止め部材40が固着されていることで、ワイヤー21の末端21cが抜け落ちることを適切に防止できる。
【0020】
このようにワイヤー通し孔形成用の固定具10を用いたくくり罠によれば、ワイヤー状のくくり部材20が罠に装着された時点から撥ね上げ部材60(スプリング)による長時間の力によっても、くくり締め付けに何らの影響を及ぼすことなく、獣足をワイヤー21の罠用ループ30の滑らかな滑りでくくり締め付けた後も緩むことなく確実に獣足を保持することができる。
【0021】
すなわち、くくり罠によれば、ワイヤー状のくくり部材20のくくり及び締め付けの確実性を高めると共に、罠に装着された作動前の撥ね上げ部材60の力による長時間におよぶ締め付けによっても何ら変化をきたさないことが重要である。そのため、本形態例によれば、ワイヤー通し孔形成用の固定具10の片一方の孔に通したワイヤーを折返して、もう一方の孔に逆方向から通して確実に固定することで、通し孔25が、そのループ状の機能的形態を確実に保持できるように形成される。
【0022】
これによれば、長時間の設置よっても、ワイヤー21の通し孔25内での滑り機能に変化を生じさせず、くくり力に変動をきたさない状態にできる。そして、くくり罠によるくくり時には、撥ね上げ部材60(スプリング)によって押し上げられながら、くくり部材20の罠用ループ30が素早く縮み上昇されるように、極円滑なくくり部材20(ワイヤー)の滑りを実現できる。さらに、獣足をくくった時には、撥ね上げ部材60(スプリング)のより強い力が、くくりの緩み止めとしても作用する締め付け部材50に加わり、罠用ループ30を縮めるように作用して確実に獣足を保持できる。
【0023】
次ぎに、図2に基づいて、通し孔25の形成方法について、その工程を詳細に説明する。
先ず、図2(a)に示すように、ワイヤー21を筒状部材11の一方側の挿通孔部に通す。このワイヤー21の一方の末端21cは、金属製のリング状の抜け止め部材40が、潰されるようにカシメられて圧着固定されている。そして、この抜け止め部材40が固定された側のワイヤー21の末端部21bが、抜け止めのために鈍角に曲げられ、ワイヤー末端部用の切り欠き部12に嵌め込まれた状態で、筒状部材11の一方の開口端部11a側が、潰されるようにカシメられてワイヤー21に圧着固定される。この際、ワイヤー21の末端部21bを適切に固定するには、ワイヤー21を筒状部材11の一方側の挿通孔部に通した後、ワイヤー末端部用の切り欠き部12を形成する一方の開口端部11aの近傍を圧縮して一旦固定し、ワイヤー末端部用の切り欠き部12が設けられた側の側面部11cのあたりをさらに強く潰して圧着固定すればよい。これにより、ワイヤー21の一方の末端21cがワイヤー通し孔形成用の固定具10から抜け落ちることを完全に防止できる。
【0024】
次に、ワイヤー21を、ループ状に曲げて、筒状部材11の他方側の挿通孔部に通す。これによって、図2(b)に示すように、一対の形状案内用の切り欠き部13a、13bに、ワイヤー21がそれぞれ鈍角に曲げられて固定されるように嵌め込まれることで、ループ状の通し孔25が好適に形成される。そして、筒状部材11の他方の開口端部11b側が、潰されるようにカシメられてワイヤー21に圧着固定される。この際、通し孔25を適切にループ状に形成するには、ワイヤー21を筒状部材11の他方側の挿通孔部に通した後、ワイヤー末端部用の切り欠き部12が設けられた側とは反対側の側面部11dのあたりを軽く圧縮して仮止めし、通し孔25の形状をリング状に開いてワイヤー21の滑りが適切になるように調整し、他方の開口端部11bを含めて強く潰して圧着固定すればよい。
【0025】
以上ように形成された通し孔25を備えるくくり部材20を用いた罠の場合は、図3に示すように、ワイヤー21の一方に設けられた通し孔25に他方を通して罠用ループ30を作る。そして、そのくくり部材20の通し孔25を形成する一端部に接して罠用ループ30を小さくするように締め付ける締め付け部材50と、その締め付け部材50を稼働させるように力を与えるスプリング状の撥ね上げ部材60とに、ワイヤー21の他端を通し、そのワイヤー21の他端側23を、締め付け部材50を介する撥ね上げ部材60の収縮及び反発に支障のないことを確認して撥ね上げ部材60の後方に固定し、くくり装置を完成させる。そして、図4に示すように、くくり部材20によって形成される罠用ループ30を、罠の本体中枠70に嵌めて使用する。
【0026】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0027】
10 ワイヤー通し孔形成用の固定具
11 筒状部材
11a 一方の開口端部
11b 他方の開口端部
11c 側面部
11d 側面部
12 ワイヤー末端部用の切り欠き部
13a 形状案内用の切り欠き部
13b 形状案内用の切り欠き部
20 くくり部材
21 ワイヤー
21a 端部
21b 末端部
21c 末端
25 通し孔
30 罠用ループ
40 抜け止め部材
50 締め付け部材
60 撥ね上げ部材
70 本体中枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーの端部をループ状に曲げて固定することで形成される通し孔を設けるために、ワイヤーが並列状態に挿通できるように断面が略8の字状の偏平に形成され、圧着変形されることでワイヤーに固着されるように設けられた筒状部材であって、該筒状部材の一方の開口端部側でワイヤーの並び方向の一方の側面部に、ワイヤーの末端部が抜け止めのために鈍角に曲げられて固定されるように嵌め込まれるワイヤー末端部用の切り欠き部が形成され、圧着変形されることでワイヤーに固着されるように設けられていることを特徴とするワイヤー通し孔形成用の固定具。
【請求項2】
前記筒状部材の他方の開口端部側でワイヤーの並び方向の一の側面部に、ワイヤーを前記通し孔の形状に固定するためにワイヤーが鈍角に曲げられて固定されるように嵌め込まれる形状案内用の切り欠き部が形成され、圧着変形されることでワイヤーに固着されるように設けられていることを特徴とする請求項1記載のワイヤー通し孔形成用の固定具。
【請求項3】
前記筒状部材の他方の開口端部側でワイヤーの並び方向の両方の側面部に、ワイヤーを前記通し孔の形状に固定するためにワイヤーが鈍角に曲げられて固定されるように嵌め込まれる形状案内用の切り欠き部が、それぞれ形成され、圧着変形されることでワイヤーに固着されるように設けられていることを特徴とする請求項1記載のワイヤー通し孔形成用の固定具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のワイヤー通し孔形成用の固定具を用いて設けられた通し孔に、ワイヤーのもう一方の端を通して罠用ループが作られるワイヤー状のくくり部材を具備することを特徴とするくくり罠。
【請求項5】
前記ワイヤーの末端に、リング状の抜け止め部材が固着されていることを特徴とする請求項4記載のくくり罠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−130299(P2012−130299A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285873(P2010−285873)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【特許番号】特許第4726998号(P4726998)
【特許公報発行日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(509038681)
【Fターム(参考)】