説明

ワインラクトンの製造方法

【課題】
取り扱いに厳重な注意を有する危険な試薬、環境に負荷をかける重金属試薬、極度な低温条件などを必要としない簡便な方法で、工業的に、天然型ワインラクトンを豊富に含むワインラクトンを高純度かつ高収率で得る方法を提供すること。
【解決手段】
3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−イル 2−メチル−3−ブテノエートを分子内ディールス・アルダー反応を行うことを特徴とする、ワインラクトンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワインラクトンの製造方法、ワインラクトンを製造するための極めて有効な中間体、および、その中間体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワインラクトン(化合物名:(3a,4,5,7a)−テトラヒドロ−3,6−ジメチル−2(3H)−ベンゾフラノン)は下記式(1)
【0003】
【化1】

【0004】
で示される化合物であり、1975年にI.A.Southwellにより、コアラから精油の代謝物として見出され(非特許文献1)、1996年にH.Guthにより白ワインから発見されたことより、「ワインラクトン」と命名された(非特許文献2)。非特許文献2にはワインラクトンの閾値は0.00001〜0.00004ng/L(in air)であり、香気特性としてはスイート,スパイシーと記載されている。その後、バレンシアオレンジ果汁(非特許文献3)、グレープフルーツ果汁(非特許文献4)などから見出されており、また、飲食品用の香料としての使用が提案されている(特許文献1)。
ワインラクトンには不斉炭素原子が3個あるため8つの立体異性体、即ち(3S,3aS,7aR)−体(5)、(3R,3aR,7aS)−体(6)、(3R,3aS,7aR)−体(7)、(3S,3aR,7aS)−体(8)、(3S,3aS,7aS)−体(9)、(3R,3aR,7aR)−体(10)、(3R,3aS,7aS)−体(11)、(3S,3aR,7aR)−体(12)が存在する。
【0005】
【化2】

【0006】
これらの異性体のそれぞれの香気に関してはすでに調べられており、香気の強度は、非特許文献5に記載されているように、「天然型」といわれる式(5)で示される(3S,3aS,7aR)−体が最も香気が良いことが判明している。
【0007】
ワインラクトンの合成方法としては、光学活性体及びラセミ体各々に対してさまざまな方法が試みられている。例えば、非特許文献5にはワインラクトンの合成方法として以下の3種類の方法が記載されている。全立体異性体の混合物を合成する方法;ディールス・アルダー反応による6員環形成反応を応用し(3S,3aS,7aR)−体と(3R,3aR,7aS)−体の混合物を合成する方法;ワインラクトンの3a位と同じ立体配置を有する(+)−(4R)−リモネンを出発物質として用い(3S,3aS,7aR)−体と(3R,3aS,7aR)−体の混合物を得る方法。しかしながら、全立体異性体の混合物を合成する方法では天然体の収率は、ワインラクトン全体の20%未満にとどまっており収率が悪い。また、ディールス・アルダー反応を用いた反応では酸化反応の収率が悪く、最終生成物の分離は非常に困難である。さらに、ワインラクトンの3a位と同じ立体配置を有するリモネンを出発物質として用いる方法では3位の立体異性体の混合物が得られ、それらの分離も困難であるといった問題点がある。またこれら3種類の方法には−78℃といった低温条件を必要とする工程や取り扱いに厳重な注意を有する危険な試薬、環境に負荷をかける重金属試薬を用いる工程が含まれており産業的に有用な方法とは言い難い。
【0008】
また、非特許文献6には、6−メチル−2−ヘキセノールを出発原料に転位反応を利用してワインラクトンを合成する方法が記載されている。この合成法は収率も良くラセミ体合成として優れた合成法ではあるが−78℃といった低温条件の工程を必要とする。また出発原料として光学活性体を用いれば転位反応により3a位の立体配置を完全に制御できる方法ではあるが、出発物質である光学活性アルコールの入手が非常に困難であり、工業的に量産できる方法ではない。
【0009】
さらに、非特許文献7には光学活性配位子を用いたパラジウムによるマロン酸エステルの付加反応を行い、天然型ワインラクトンのみを得る方法が記載されているが、ラクトン化−ラクトン開裂−再環化という段階があり、工程数が多くなるため、収率が低くなるといった問題点がある。
【0010】
さらにまた、非特許文献8には天然型ワインラクトンの3a位と同じ立体配置を持つリモネンの変換によって合成する方法が記載されているが、3位のメチル基の立体混合物が得られるので、立体異性体が副生し収率が悪くなるという問題点がある。またこの合成法にも取り扱いに厳重な注意を有する危険な試薬、環境に負荷をかける重金属試薬を用いる工程が含まれており産業的に有用な方法とは言い難い。
【0011】
また、特許文献1には3−メチル−2−シクロヘキセン−1−オンのアルキル付加物に光学活性オキサザボロリジンを不斉触媒として使用してカルボニル基の不斉還元反応を行い、その後3工程を経て天然型ワインラクトンのみを得る方法が記載されているが、工程が長く収率が悪いため、実用的な方法とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−269463号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Tetrahedron Letters,(24),1885−8(1975)
【非特許文献2】Special Publication−Royal Society of Chemistry,197(Flavour Science),163−167(1996)
【非特許文献3】Flavour and Fragrance Journal,13(1),49−55(1998)
【非特許文献4】Journal of Agricultural and Food Chemistry,49(3),1358−1363(2001)
【非特許文献5】Helv.Chim.Acta,79,1559,(1996)
【非特許文献6】J.Org.Chem.,46,3869−3900(1981)
【非特許文献7】Eur.J.Org.Chem.,419−423(2000)
【非特許文献8】Tetrahedron Asymmetry,12,2985−2988(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、取り扱いに厳重な注意を有する危険な試薬、環境に負荷をかける重金属試薬、極度な低温条件などを必要としない簡便な方法で、工業的に、天然型ワインラクトンを豊富に含むワインラクトンを高純度かつ高収率で得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者等はワインラクトンの合成方法について鋭意研究を行ってきたところ、分子内ディールス・アルダー反応を行うことにより2つの環を同時に生成させ、特にその反応における溶媒として1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)を使用することにより、高収率でワインラクトンが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
かくして本発明は下記式(2)
【0017】
【化3】

【0018】
で表される3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−イル 2−メチル−3−ブテノエートを分子内ディールス・アルダー反応を行うことを特徴とする、下記式(1)
【0019】
【化4】

【0020】
で表されるワインラクトンの製造方法を提供するものである。
【0021】
また、本発明はディールス・アルダー反応を1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンの存在下で行うことを特徴とする、前記のワインラクトンの製造方法を提供するものである。
【0022】
さらに本発明では、下記式(2)
【0023】
【化5】

【0024】
で表される3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−イル 2−メチル−3−ブテノエートを提供するものである。
【0025】
さらにまた、本発明では下記式(3)
【0026】
【化6】

【0027】
(式中Rはシリル系保護基を示す)
で表される3−メチルブタ−1,3−ジエニルエーテルを求核性の塩基の存在下、下記式(4)
【0028】
【化7】

【0029】
(式中Xはハロゲン原子を示す)
で表される2−メチル−3−ブテン酸ハライドと反応させ、下記式(2)
【0030】
【化8】

【0031】
で表される3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−イル 2−メチル−3−ブテノエートを得た後、分子内ディールス・アルダー反応を行うことを特徴とする、下記式(1)
【0032】
【化9】

【0033】
で表されるワインラクトンの製造方法を提供するものである。
【0034】
さらにまた、本発明は下記式(13)
【0035】
【化10】

【0036】
で表される3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−イル 2(S)−メチル−3−ブテノエートを提供するものである。
【0037】
本発明は、また、下記式(3)
【0038】
【化11】

【0039】
(式中Rはシリル系保護基を示す)
で表される3−メチルブタ−1,3−ジエニルエーテルを求核性の塩基の存在下、下記式(18)
【0040】
【化12】

【0041】
(式中Xはハロゲン原子を示す)
で表される2(S)−メチル−3−ブテン酸ハライドと反応させ、下記式(13)
【0042】
【化13】

【0043】
で表される3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−イル 2(S)−メチル−3−ブテノエートを得た後、分子内ディールス・アルダー反応を行うことを特徴とする、下記式(5)
【0044】
【化14】

【0045】
で表される天然型ワインラクトンの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0046】
本発明のワインラクトンの製造方法は、取り扱いに厳重な注意を有する危険な試薬、環境に負荷をかける重金属試薬、極度な低温条件などを必要としない簡便な方法で、安価な原料より少ない工程により高収率にワインラクトンを製造でき、工業的に有利である。また、分子内ディールス・アルダー反応を行う際に溶媒として1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)を使用することにより、3a位と7a位の立体配置がシス−配置になるため、天然型ワインラクトンを豊富に含むワインラクトンが得られる。なおかつ不純物がほとんど副生せず容易に極めて高純度のワインラクトンが得られる。さらに、この際、中間体である3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−イル 2−メチル−3−ブテノエートの2位の立体配置(ワインラクトンにおける3位の立体配置)を制御することにより、天然型ワインラクトンのみを合成することも可能である。
【0047】
なお、3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−イル 2−メチル−3−ブテノエートは文献未記載の新規化合物であり、本発明におけるワインラクトン合成の中間体として極めて有用な化合物である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の目的化合物である式(1)のワインラクトンは次の反応経路1に従って合成することができる。
【0049】
【化15】

【0050】
式(2)の3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−イル 2−メチル−3−ブテノエートからの式(1)のワインラクトンへの分子内ディールス・アルダー反応は、ディールス・アルダー反応のための一般的な条件で行うことができ、溶媒の非存在下あるいは存在下で加熱することにより反応が進行するが、3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−イル 2−メチル−3−ブテノエートが高濃度で存在する場合、収率が低下するため、溶媒を使用し、希釈した状態で反応を行うことが好ましい。またこのディールス・アルダー反応は開放系及びオートクレーブ等を使用する密封系どちらでも行うことができ、溶媒を使用する場合に使用可能な溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、デカリンなどの無極性溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジグライムなどの極性溶媒及びピリジン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)などの塩基性溶媒を例示することができる。また、無極性溶媒に少量のピリジンや炭酸カリウムなどの塩基を添加することによりワインラクトンの収率を高めることができる。また、前記溶媒のうち、特に1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)を使用した場合は、塩基を添加せずとも反応が良好に進行する。さらにまた、前記無極性溶媒に1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを塩基として添加混合して使用しても反応を行うことも可能である。溶媒量としては、3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−イル 2−メチル−3−ブテノエートの1質量部に対し1容量部〜100容量部程度を例示することができる。また、反応温度としては、150℃〜250℃、好ましくは180℃〜220℃を例示でき、反応時間としては10分〜20時間、好ましくは30分〜10時間を例示できる。本ディールス・アルダー反応においては、簡便な蒸留等にて容易に高純度のワインラクトンを得ることができる。
【0051】
なお、反応経路1において溶媒として1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)を用いた場合は、生成物の異性体比率は下記反応経路2のように生成し、天然型である下記式(5)の異性体を高含有率で含むため好ましい。
【0052】
【化16】

【0053】
さらにまた、下記反応経路3に示すように、出発原料の式(2)の3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−イル 2−メチル−3−ブテノエートとして、下記式(13)で示される光学活性3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−イル 2(S)−メチル−3−ブテノエートを用いることにより、生成物を天然体である式(5)の(3S,3aS,7aR)のみとすることもできる。
【0054】
【化17】

【0055】
本発明における、式(1)のワインラクトン製造の出発原料である、式(2)の3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−イル 2−メチル−3−ブテノエートは文献未記載の新規化合物であるが、例えば、下記反応経路4に示す方法で合成することができる。
【0056】
【化18】

【0057】
(式中Rはシリル系保護基を示し、Xはハロゲン原子を示す)
式(3)の3−メチルブタ−1,3−ジエニルエーテルの置換基(R)としてはシリル系保護基であれば特に制限はなく、次のものが例示される。t−ブチルジメチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリエチルシリル基、トリメチルシリル基等。これらのうちt−ブチルジメチルシリル基が特に好ましい。
【0058】
また、式(4)の2−メチル−3−ブテン酸ハライドのXが示す、特に好ましいハロゲン原子としては、Cl、Br、Iが挙げられる。
【0059】
式(3)の3−メチルブタ−1,3−ジエニルエーテルと式(4)の2−メチル−3−ブテン酸ハライドとのエステル合成反応は不活性有機溶媒中で求核性の塩基の存在下に行うことができ、有機溶媒としては、例えば、エーテル(例:ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、1,2−ジメトキエタン、シクロペンチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、ハロゲン化炭化水素(例:ジクロロメタン、クロロホルムなど)、芳香族炭化水素(例:ベンゼン、トルエン、キシレンなど)または極性溶媒(例:ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなど)が挙げられ、特にトルエン、1,2−ジメトキエタン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドまたはこれらの混合溶媒が好適である。
【0060】
上記求核性の塩基としては、有機リチウム化合物(メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、フェニルリチウムなど)が例示でき、これらの求核性の塩基の使用量は、式(3)の3−メチルブタ−1,3−ジエニルエーテルに対して、通常0.5〜1.5モル当量、好ましくは0.8〜1.2モル当量の範囲内とすることができる。また、式(3)の3−メチルブタ−1,3−ジエニルエーテルに対する式(4)の2−メチル−3−ブテン酸ハライドの使用量は、通常0.5〜3モル当量、好ましくは0.8〜2モル当量の範囲内とすることができる。
【0061】
上記エステル合成反応は、反応温度としては、通常、−78〜60℃、好ましくは、−10〜25℃の範囲で、反応時間としては、通常1分〜5時間、好ましくは10分〜2時間の範囲で行うことができる。
【0062】
上記反応経路4におけるそれぞれの出発原料である式(3)の3−メチルブタ−1,3−ジエニルエーテルおよび式(4)の2−メチル−3−ブテン酸ハライドは、例えば、以下の反応経路5および反応経路6に示す方法で合成できる。
【0063】
【化19】

【0064】
(式中Rはシリル系保護基を示す)
3−メチル−2−ブテナール(14)より得られる3−メチルブタ−1,3−ジエニルエーテルの置換基(R)としてはシリル系保護基であれば特に制限はなく、t−ブチルジメチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリエチルシリル基、トリメチルシリル基などが例示できる。これらのうちt−ブチルジメチルシリル基が特に好ましい。
容易に入手できる式(14)の3−メチル−2−ブテナールの3−メチルブタ−1,3−ジエニルエーテルへの変換は溶媒、有機塩基及びシリル系保護試薬存在下でおこなうことができ、溶媒としてはエーテル(例:ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、ハロゲン化炭化水素(例:ジクロロメタン、クロロホルムなど)、または極性溶媒(例:ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなど)が挙げられ、特にテトラヒドロフラン,ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドまたはこれらの混合溶媒が好適である。
【0065】
また、有機塩基としてはピリジン、2,6−ルチジン、コリジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどが挙げられ。特にトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンが好適である。これらの有機塩基の使用量は、式(14)の3−メチル−2−ブテナールに対して、通常0.5〜1.5モル当量、好ましくは0.8〜1.2モル当量の範囲内とすることができる。
シリル系保護試薬としてはt−ブチルジメチルシリルクロライド、ジメチルエチルシリルクロライド、イソプロピルジメチルシリルクロライド、t−ブチルジフェニルシリルクロライド、トリイソプロピルシリルクロライド、トリエチルシリルクロライド、トリメチルシリルクロライドなどが挙げられ、t−ブチルジメチルシリル基が特に好ましい。これらのシリル系保護試薬の使用量は、式(14)の3−メチル−2−ブテナールに対して、通常0.5〜1.5モル当量、好ましくは0.8〜1.2モル当量の範囲内とすることができる。
上記エーテル合成反応の反応温度としては、通常、−78〜60℃、好ましくは、−10〜25℃の範囲で、反応時間としては、通常1分〜5時間、好ましくは10分〜2時間の範囲で行うことができる。
【0066】
【化20】

【0067】
(式中Xはハロゲン原子を示す)
容易に入手できる式(15)で表される2−メチル−3−ブテンニトリルを無機酸存在下加熱することで式(16)に表される2−メチル−3−ブテン酸を得ることができ、無機酸としては塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸及びフッ化水素酸があげられ、特に塩酸、硫酸が好適である。これらの無機酸の使用量は、式(15)の2−メチル−3−ブテンニトリルに対して、通常0.1〜10モル当量、好ましくは0.5〜5.0モル当量の範囲内とすることができる。
上記カルボン酸合成反応は、反応温度としては、通常、0〜200℃、好ましくは、40〜120℃の範囲で、反応時間としては、通常1分〜5時間、好ましくは10分〜2時間の範囲で行うことができる。
【0068】
式(4)で表される2−メチル−3−ブテン酸ハライドは、上記カルボン酸合成反応により得られた式(16)に表される2−メチル−3−ブテン酸に対して、従来知られている酸ハロゲン化物化を行うことで得ることができ、特に酸塩化物、酸臭化物が好適である。酸ハロゲン化物反応としては、塩化ホスホリル、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リンなどを用いる酸塩化物化、オキシ臭化リン、三臭化リン、臭化チオニルなどを用いる酸臭化物化が挙げられ、塩化チオニルを用いる酸塩化物化が特に好適である。
【0069】
前記したとおり反応経路1における3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−イル 2−メチル−3−ブテノエートとして、下記式(13)で示される3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−イル 2(S)−メチル−3−ブテノエートを用い、ディールス・アルダー反応を1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)の存在下でおこなうことにより、得られるワインラクトンを下記式(5)の天然体である(3S,3aS,7aR)のみとすることも可能であるが、その場合は上記式(16)の2−メチル−3−ブテン酸を光学分割し、下記式(17)で表される2(S)−メチル−3−ブテン酸とすればよい。
【0070】
【化21】

【0071】
式(17)の2(S)−メチル−3−ブテン酸を得る方法としては、ラセミ体の2−メチル−3−ブテン酸を有機溶媒中で酵素を用いてR体のみを不斉エステル化し、未反応物であるS体のみを分離して得る方法、ラセミ体の2−メチル−3−ブテン酸を有機溶媒中で酵素を用いてS体のみを不斉エステル化し、未反応のR体と分離した後、S体のエステルのみを加水分解し、S体を得る方法、ラセミ体の2−メチル−3−ブテン酸をエステル化し、ラセミ体のエステルを得た後、酵素を用いて不斉加水分解しS体のみを得る方法を例示できる。酵素としてはリパーゼ、エステラーゼ、プロテアーゼなどを使用することが可能である。有機合成的な手法として光学活性なアミン化合物などと塩を形成させた後に再結晶を行い光学分割する方法を例示することができる。光学活性なアミン化合物としては1−フェニルエチルアミン、α−メチルベンジルアミン、1−フェニルプロピルアミン、1−(4−メチルフェニル)エチルアミン、1−(4−メトキシフェニル)エチルアミンなどの光学活性体を使用することが可能である。
【0072】
かくして、得られた本発明の式(1)のワインラクトンは、例えば、果物(例:ストロベリー、ブルーベリー、ラズベリー、アップル、チェリー、プラム、アプリコット、ピーチ、パイナップル、バナナ、メロン、マンゴー、パパイヤ、キウイ、ペアー、グレープ、マスカット、巨峰など)、柑橘類(例:レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ライム、マンダリンなど)、和柑橘類(例:みかん、カボス、スダチ、ハッサク、イヨカン、ユズ、シークワーサー、金柑など)、茶類(例:紅茶、ウーロン茶、緑茶など)、コーヒーなどの香料組成物に式(1)の化合物を添加することにより、香料組成物に好ましいボディ感やコク味を賦与・強調することができる。
また、かくして得られた香料を、例えば、飲料、アイスクリーム、シャーベットなどの冷菓、ゼリー、プリン、水ようかん、くずきりなどのデザート類、クッキー、ケーキ、チョコレート、チューインガム、まんじゅうなどの菓子類、菓子パン、食パンなどのパン類、ジャム、フラワーペーストなどのフィリング類、ラムネ、タブレット、錠菓類などに添加することにより、これら飲食品に、好ましいボディ感やコク味を賦与・強調することができる。なお、飲食品以外に、歯磨き、マウスウオッシュ、リップクリーム、口紅などの口腔用組成物やその他石鹸、香水、芳香剤、シャンプー、洗濯用洗剤類、消毒用洗剤類、防臭洗剤類、その他各種の保健・衛生用洗剤類、柔軟剤類;ティシュ、トイレットペーパーなどの化粧品、香粧品などにも適応することが出来る。
【0073】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0074】
(実施例1)
下記の一連の反応式に従って式(1)のワインラクトンを合成した。なお、工程番号の下のカッコ内の百分率は各工程の収率を示す。
【0075】
【化22】

【0076】
工程(A):式(16)の2−メチル−3−ブテン酸の合成
2L4径フラスコに式(15)の2−メチル−3−ブテンニトリル400g(4.92mol)および濃塩酸600mLを仕込み、80℃で3時間攪拌した。室温まで放冷した後に水800mLを加えて水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層に1.0M水酸化ナトリウム水溶液2000mLを加えて室温で30分攪拌した。有機層を除去し、水層にpHが1になるまで濃塩酸を加えた。酸性水溶液にジエチルエーテルを加え抽出し、得られた有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し減圧濃縮して得られた残渣を減圧蒸留にて精製することで無色油状物質として式(16)の2−メチル−3−ブテン酸(265.6g、2.64mol、収率54%)を得た。
【0077】
工程(B):式(19)の2−メチル−3−ブテン酸クロライドの合成
1L4径フラスコに式(16)の2−メチル−3−ブテン酸140g(1.40mol)を仕込み、0℃に冷却しながら、塩化チオニル332g(2.80mol)を滴下し、室温下で4時間攪拌した。その後、常圧蒸留(80〜90℃)、ついで、水流アスピレーターを用いた微減圧蒸留を行うことにより、無色油状物質として式(19)の2−メチル−3−ブテン酸クロライド(148g、1.25mol、収率89%)を得た。
【0078】
工程(C):式(20)の3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−オールTBSエーテルの合成
2L4径フラスコに式(14)の3−メチル−2−ブテナール87.5g(1.04mol)、トリエチルアミン252g(2.5mol)、t−ブチルジメチルシリルクロライド(TBSCl)188g(1.25mol)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)430mLを仕込み、室温で30分攪拌した後に120℃に加熱し1時間攪拌した。反応溶液にヘキサン500mLおよび飽和重曹水500mLを加えて分液操作を行い、水層をヘキサンで抽出した。得られた有機層を1.0M塩酸水溶液、飽和重曹水、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮して得られた残渣を減圧蒸留し黄色油状物質として式(20)の3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−オールTBSエーテル(176g、890mmol、収率86%)を得た。
【0079】
工程(D):式(2)の3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−イル 2−メチル−3−ブテノエートの合成
窒素ガス雰囲気下で、500mL4径フラスコに式(20)の3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−オールTBSエーテルを22.7g(114.6mmol)および1,2−ジメトキシエタン(DME)200mLを仕込み、0℃に冷却しながらメチルリチウムのジエチルエーテル溶液115mL(濃度1.0M、メチルリチウムとして115mmol)を加え、室温下で6時間攪拌した。
【0080】
一方、これとは別に、窒素ガス雰囲気下で、1L4径フラスコに式(19)の2−メチル−3−ブテニルクロライドを22.5g(190.6mmol)とテトラヒドロフラン(THF)80mLを仕込み、0℃で攪拌した。この系内に、前記のDME溶液を加え、室温下で30分間攪拌した。反応溶液に水200mLを加え、分液操作後に水層をジエチルエーテルにて抽出した。ジエチルエーテル層を先に分液した有機層と合わせ、水、10%水酸化ナトリウム水溶液にて3回、飽和食塩水にて順次洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し減圧濃縮して得られた残渣を減圧蒸留により精製し、無色油状物質として式(2)の3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−イル 2−メチル−3−ブテノエート(14.6g、収率77%)を得た。
【0081】
式(2)の3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−イル 2−メチル−3−ブテノエートの物性
H−NMR:1.32(3H、d、J=6.8Hz)、1.86(3H、s)、3.24(1H、dq、J=6.8、7.4Hz)、4.94(2H、d、J=11.6Hz)、5.16(1H、d、J=10.0Hz)、5.19(1H、d、J=17.2Hz) 、5.93(1H、ddd、J=7.4、10.0、17.2Hz)、6.17(1H、d、J=12.6Hz)、7.38(1H、d、J=12.6Hz)
13C−NMR:18.747、25.681、43.433、116,547、116.617、118.464、136.196、136.474、138.501、171.521。
【0082】
工程(E):式(1)のワインラクトンの合成
温度計付き50mL2径フラスコに式(2)の3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−イル 2−メチル−3−ブテノエートを500mg(3.0mmol)と1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)30mLを仕込み、攪拌しながらマントルヒーターにて加熱し、1.5時間かけて内温を200℃まで上昇させた。反応溶液を室温まで放冷した後、2規定塩酸50mLを加え、30分間攪拌した。反応溶液を酢酸エチルで抽出し、有機層を減圧濃縮することで得られた残渣に1.0M水酸化ナトリウムエタノール溶液を5mL加えて30分攪拌した。減圧濃縮によりエタノールを除去し、水5mLを加えた後にジエチルエーテルで洗浄した。水層に2規定塩酸をpHが1になるまで加え、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を水、10%炭酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて順次洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し減圧濃縮して得られた残渣を減圧蒸留により精製し、無色油状物質として式(1)のワインラクトン(200mg、収率40%、化学純度99.9%)を得た。
得られたワインラクトンの立体異性体比はディールス・アルダー反応におけるエンド則及びワインラクトンの3位のメチルの立体障害を避ける面選択性に基づき式(5)+(6):式(7)+(8)=約5:1であった。
【0083】
(実施例2)
下記の一連の反応式に従って式(5)の天然型ワインラクトンを合成した。なお、工程番号の下のカッコ内の百分率は各工程の収率を示す。
【0084】
【化23】

【0085】
工程(F):式(17)の2(S)−メチル3−ブテン酸の合成
ジムロート冷却管を装着した500mLナスフラスコに式(16)の2(±)−メチル−3−ブテン酸(30.0g、0.30mol)を仕込み、アセトン(300mL)を加えた。撹拌しつつ、1(R)−フェニルエチルアミン(36.3g,0.30mol)を加えた。白色の塩が析出したら、アセトンが還流するまで加熱し、析出した塩を完全に溶解させた。その後、加熱を止め、室温まで自然に放冷させてカルボン酸塩を析出させた。このカルボン酸塩を吸引濾過により濾取し、その後減圧下で乾燥させた(収量27.5g)。得られたカルボン酸塩1gに対しアセトン4.5mLを加えて再結晶を行なった。再結晶を8回繰り返し、2(S)−メチル−3−ブテン酸 1(R)−フェニルエチルアンモニウムを得た。一方、得られた母液を合わせて減圧下で溶媒を留去した後、結晶1gに対して酢酸エチル2mLを加えて室温で撹拌後、吸引濾過して2−メチル−3−ブテン酸 1(R)−フェニルエチルアンモニウムを回収した。この回収した塩についてもアセトンによる再結晶を行なった。以上の繰り返しにより6.10gの2(S)−メチル−3−ブテン酸 1(R)−フェニルエチルアンモニウムを得た。比旋光度[α]=+8.8(D線、クロロホルム溶媒、c=2.18)。
【0086】
得られた2(S)−メチル−3−ブテン酸 1(R)−フェニルエチルアンモニウム(6.00g,27.1mmol)を3mol/L塩酸(60mL)に溶解させた。これをジエチルエーテル30mLで4回抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で2回洗浄した。減圧下でジエチルエーテルを留去した後、得られた残渣にヘキサンを加えてさらに減圧下で溶媒を留去し、混入する水分の除去を行なった。残渣として式(17)の2(S)−メチル−3−ブテン酸2.46gを得た。比旋光度[α]=+39.4 (D線、クロロホルム溶媒、c=1.11)。鏡像体純度92.1%ee(測定:ガスクロマトグラフィー、カラム:Chiramix、昇温条件:75℃より0.7℃/min昇温、キャリアガス:窒素0.7mL/min、保持時間:(S)−体 30.6min、(R)−体 31.7min)。
【0087】
工程(G):式(21)の2(S)−メチル−3−ブテン酸クロライドの合成
50mL2径フラスコに式(17)の2(S)−メチル−3−ブテン酸2.0g(20mmol)を仕込み、0℃に冷却しながら、塩化オキサリル5.93g(50mmol)を滴下し、室温下で3時間攪拌した。反応液をサンプリングしてガスクロマトグラフィーで原料の消失を確認した後、これをダイヤフラムポンプに接続し、撹拌しつつ6.7kPaまで減圧し、塩化オキサリルを留去し、式(21)の2(S)−メチル−3−ブテン酸クロライドの粗精製物(2.41g)を得た。
【0088】
工程(H):式(13)の3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−イル 2(S)−メチル−3−ブテノエートの合成
窒素ガス雰囲気下で、100mL2径フラスコに式(20)の3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−オールTBSエーテルを4.76g(24mmol)および1,2−ジメトキシエタン(DME)40mLを仕込み、0℃に冷却しながらメチルリチウムのジエチルエーテル溶液22mL(濃度1.09M、メチルリチウムとして24mmol)を加え、室温下で6時間攪拌した。
【0089】
一方、これとは別に、窒素ガス雰囲気下で、100mL2径フラスコに式(21)の2(S)−メチル−3−ブテニルクロライドの粗精製物2.41gとジエチルエーテル20mLを仕込み、0℃で攪拌した。この系内に、前記のDME溶液を加え、室温下で30分間攪拌した。反応溶液に水20mLを加え、分液操作後に水層をジエチルエーテルにて抽出した。ジエチルエーテル層を先に分液した有機層と合わせ、水、10%水酸化ナトリウム水溶液にて3回、飽和食塩水にて順次洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100:1−50:1)、式(13)の3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−イル 2(S)−メチル−3−ブテノエート(1.63g,収率49%)を得た。鏡像体純度90.3%ee(測定:ガスクロマトグラフィー、カラム:2,3−O−ジアセチル−6−O−TBDMS−β−シクロデキストリン、昇温条件:40℃より1.0℃/min昇温、キャリアガス:ヘリウム10mL/min、保持時間:(S)−体 66.3min、(R)−体 68.7min)。比旋光度[α]=+30.9 (D線、クロロホルム溶媒、c=1.17)。
【0090】
工程(I):式(5)の(3S,3aS,7aR)−3,6−ジメチル−3a,4,5,7a−テトラヒドロベンゾフラン−2(3H)−オン、(−)−ワインラクトンの合成
温度計、滴下漏斗つき100mL3径フラスコにアルゴン雰囲気下、式(13)の3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−イル 2(S)−メチル−3−ブテノエートを1.50g(9.0mmol)とデカリン(cis/trans混合物、45mL)を仕込み、攪拌しながらマントルヒーターにて加熱し、1.5時間かけて内温を200℃まで上昇させた。サンプリングにて原料の消失を確認後、反応溶液を室温まで放冷した。反応溶液をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、3,6−ジメチル−3a,4,5,7a−テトラヒドロベンゾフラン−2(3H)−オンの3つのジアステレオマーを単離した。それぞれの収量は式(5)の(3S,3aS,7aR)−体0.89g(収率59%),(3S,3aR,7aS)−体0.26g(収率18%)、(3S,3aS,7aS)−体0.22g(収率15%)。鏡像体純度90.3%ee(測定:ガスクロマトグラフィー、カラム:Chiramix、昇温条件:180℃一定、キャリアガス:窒素0.7mL/min、保持時間:(3S,3aS,7aR)−体 11.6min、(3R,3aR,7aS)−体 11.0min)。式(5)の(3S,3aS,7aR)−体の比旋光度は[α]=−12.6(D線、 クロロホルム溶媒、c=1.04)で文献値[α]=−13.5(D線、クロロホルム溶媒、c=3)と鏡像体純度から予測される値とほぼ一致した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(2)
【化1】


で表される3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−イル 2−メチル−3−ブテノエートを分子内ディールス・アルダー反応を行うことを特徴とする、下記式(1)
【化2】


で表されるワインラクトンの製造方法。
【請求項2】
ディールス・アルダー反応を1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンの存在下で行うことを特徴とする、請求項1に記載のワインラクトンの製造方法。
【請求項3】
下記式(2)
【化3】


で表される3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−イル 2−メチル−3−ブテノエート。
【請求項4】
下記式(3)
【化4】


(式中Rはシリル系保護基を示す)
で表される3−メチルブタ−1,3−ジエニルエーテルを求核性の塩基の存在下、下記式(4)
【化5】


(式中Xはハロゲン原子を示す)
で表される2−メチル−3−ブテン酸ハライドと反応させ、下記式(2)
【化6】


で表される3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−イル 2−メチル−3−ブテノエートを得た後、分子内ディールス・アルダー反応を行うことを特徴とする、下記式(1)
【化7】


で表されるワインラクトンの製造方法。
【請求項5】
下記式(13)
【化8】

で表される3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−イル 2(S)−メチル−3−ブテノエート。
【請求項6】
下記式(3)
【化9】


(式中Rはシリル系保護基を示す)
で表される3−メチルブタ−1,3−ジエニルエーテルを求核性の塩基の存在下、下記式(18)
【化10】


(式中Xはハロゲン原子を示す)
で表される2(S)−メチル−3−ブテン酸ハライドと反応させ、下記式(13)
【化11】


で表される3−メチルブタ−1,3−ジエン−1−イル 2(S)−メチル−3−ブテノエートを得た後、分子内ディールス・アルダー反応を行うことを特徴とする、下記式(5)
【化12】

で表される天然型ワインラクトンの製造方法。

【公開番号】特開2010−195765(P2010−195765A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193152(P2009−193152)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000214537)長谷川香料株式会社 (176)
【Fターム(参考)】