説明

ワクチン投与の方法、新たなネコカリシウイルス、ならびにネコパルボウイルスおよびネコヘルペスウイルスに対して動物を免疫感作する治療

【課題】ネコウイルスに対してネコを免疫感作するワクチンの提供。
【解決手段】FCV−49キャプシドタンパク質または単離FCV−49キャプシドタンパク質を含み、前記キャプシドタンパク質がFCV−49株由来のタンパク質配列を含むワクチン。ネコカリシウイルスに対してネコを免疫感作するワクチンであって、FCV−49キャプシドタンパク質または単離FCV−49キャプシドタンパク質と、薬学的に許容できる担体とを含み、前記キャプシドタンパク質が、特定のタンパク質配列または少なくとも約92.7%、95%もしくは99%の同一性を有する配列を含み、免疫応答を生じさせるのに有効な量提供されるワクチン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々のワクチンを種々の動物に投与する新たな方法の提供に関する。本発明は、いくつかの単離ネコカリシウイルス(FCV)を開示する。本発明は、FCVワクチンをネコに与える新たな方法を開示する。本発明はまた、ネコカリシウイルスをコードする核酸クローンにも関する。本発明は、FCVキャプシドタンパク質、生または死滅ワクチン、キャプシドタンパク質を含むサブユニットワクチン、核酸ワクチン、および単離ネコカリシウイルスのキャプシドタンパク質をコードする核酸を含む組換えウイルスベクターワクチンに関する。本発明はまた、ワクチン組成物の作製に有用なネコカリシウイルスを同定する方法、およびネコカリシウイルスに感染したネコを診断するアッセイにも関する。本発明はまた、新たなFCVワクチンおよび古いFCVワクチンをネコ科動物に投与する新たな方法をも提供する。
【背景技術】
【0002】
カリシウイルスは、ネコにおける疾患の重要な原因であることが報告されている。発熱、鼻炎、くしゃみ、軽度の結膜炎、眼漏、外鼻孔、口腔粘膜中または舌上の小疱、肺炎、気管気管支炎(tracheal bronchitis)、下痢、筋肉痛、こわばった口(stiff gate)や知覚過敏などの多様な症状が観察される。日和見細菌感染はしばしばFCV感染を伴い、それによって治療および回復が複雑となる。重度のFCV感染により、特に幼若なネコで死に至る可能性がある。そのような徴候は、報告によれば自然の場合では一般的であるが、実験的感染ではいつも顕著であるというわけではないことに留意されたい。ネコカリシウイルス(FCV)の種々の野外株が疾患を引き起こすその潜在性において異なり、または他の作用物質との同時感染が疾患の症状に影響を及ぼすように思われる。
【0003】
ネコカリシウイルスに対するワクチンは、20年を超える期間利用可能であった。多数のFCV血清型が存在するが、F9などの特定の株は、広範囲のFCV株に対して抗体を誘導することが分かった。J.L.BittleおよびW.J.Rubic、Am.J.Vet.Res.、37:275〜78(1976)を参照されたい。結果的に、ネコカリシウイルスに対する最も初期のワクチンでは、改変型または弱毒化型のFCV−F9株が使用された。参照によりその全体が本明細書に組み込まれているJ.L.BittleおよびW.J.Rubicの米国特許第3,937,812号を参照されたい。
【0004】
FCV−F9由来のワクチンおよび他の市販されているワクチンは多数の野外単離物からの防御をもたらすが、これらのワクチンがすべての株の感染を防止することは真実ではない。さらに、FCVが進化し続けるにつれて、FCV−F9に基づくワクチンは、ますます少数の野外単離物に対してしか防御をもたらさなくなる(Lauritzenら、1997、Vet Microbiology、56:55〜63)。さらに、獣医は、単一の血清型に基づくワクチンの効果に対して懸念を示している。実際、野外研究から、FCV−F9株に由来するワクチンがネコカリシウイルスの多数の株に対して不十分な免疫しかもたらさないことが示唆される。例えば、N.C.Pedersonら、Feline Pract.、13(1):26〜35(1983);S.Dawsonら、Vet.Rec.132:346〜50(1993)を参照されたい。獣医にはまた、ある状況では、そうでなければ健康な動物に疾患を引き起こす可能性がある改変型生ウイルスの投与についての懸念も起こっている。研究者は、皮下投与するFCVワクチンの不注意な経口投与により急性疾患が生じることを報告している。R.C.Povey、Feline Pract.、7(5):12〜16(1977)を参照されたい。したがって、それ自体でまたは他のワクチンと組み合わせるとネコへのワクチン接種後に所望の防御をもたらすワクチンの開発には引き続き関心がある。ネコから単離されたいくつかの単離物を本明細書に記載し、免疫感作したネコにおいて広い防御をもたらす手段を提供する。
【0005】
情報の開示
米国特許文献
3937812 1976年2月 Bittleら、3944469 1976年3月 Bittleら
4486530 1984年12月 Davidら、4786589 1988年11月 Roundsら、
5169789 1992年12月 Bernsteinら、5229293 1993年7月 Matsuuraら
5266313 1993年11月 Espositoら、5338683 1994年8月 Paolettiら
5494807 1996年2月 Paolettiら、5559041 1996年9月 Kangら
5561064 1996年10月 Marquetら、5580859 1996年12月 Felgner
5585100 1996年12月 Mondら、5589384 1996年12月 Liscombe
5589466 1996年12月 Felgner、5620845 1997年4月 Gouldら
5656448 1997年8月 Kangら、5693761 1997年12月 Queenら
5693762 1997年12月 Queenら、5695928 1997年12月 Stewartら
5703055 1997年12月 Felgner、5716784 1998年2月 DiCesare
5716822 1998年2月 Wardley、5718901 1998年2月 Wardley
5725863 1998年3月 Danielsら、5728587 1998年3月 Kangら
5800821 1998年9月 Achesonら、5977322 1999年11月 Marksら
6010703 2000年1月 Maesら、6355246 2002年3月 Krugerら
6,534,066B1 2003年3月 Pouletら
外国特許文献
0484382 1995年3月 EP、WO2004/083390
他の刊行物
Burroughs,J.NおよびBrown,F.,J.、Gen.Virol.、22、pp.281〜285(1974)
ClarkeおよびLambden、J.Gen.Virol.、78:291〜301(1997)
Griest,N.R.、1979、Diagnostic methods in clinical virology(第3版)、pp.84〜85、Blackwell
J.L.BittleおよびW.J.Rubic、Am.J.Vet.Res.37:275〜78(1976)
Lauritzenら、Vet Microbiology、56:55〜63(1997)
Maky,Brian W.J.およびKangro,Hillar O.、1996、Virology methods manual、pp.35〜37、Academic Press、New York.
Motinら、Infect.Immun.、64:4313〜4318(1996)
N.C.Pedersonら、Feline Pract.13(1):26〜35(1983)
Oglesby,A.S.ら、Virology 44、pp.329〜341(1971)
Pouletら、Veterinary Microbiology 106:17〜31(2005)
Pouletら、Archives of Virology 145:243〜261(2000)
R.C.Povey、Feline Pract.、7(5):12〜16(1977)
S.Dawsonら、Vet.Rec.、132:346〜50(1993)
Scientific Publishers、英国Oxford
Soergel,M.E.ら、Intervirology、5、pp239〜244(1975)
Yokoyama,N.ら、Vaccine、第14巻、第17/18号、pp.1657〜1663(1996).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、いくつかの単離ネコカリシウイルス(FCV)の新たな株を提供し、そのウイルスに関する。本発明はまた、ワクチンを動物に、具体的にはFCVワクチンをネコに与える新たな方法をも開示する。本発明はまた、ネコカリシウイルスをコードする核酸クローンにも関する。本発明は、FCVキャプシドタンパク質、生または死滅ワクチン、キャプシドタンパク質を含むサブユニットワクチン、核酸ワクチン、および単離ネコカリシウイルスのキャプシドタンパク質をコードする核酸を含む組換えウイルスベクターワクチンに関する。本発明はまた、ワクチン組成物の作製に有用なネコカリシウイルスを同定する方法、およびネコカリシウイルスに感染したネコを診断するアッセイにも関する。本発明はまた、新たなFCVワクチンおよび古いFCVワクチンをネコ科動物に投与する新たな方法をも提供する。汎白血球減少またはFPLとも呼ばれているFPVまたはネコパルボウイルスと、ネコ鼻気管支炎ウイルスとも呼ばれている他の疾患のFHVまたはネコヘルペスウイルスの両方に対するワクチンで動物を、具体的にはネコを治療し免疫感作するための方法および材料も本明細書に記載する。記載するようにネコ科動物に与えたときFPVおよび/またはFHVワクチンの両方の有効な経口/経口および皮下/経口送達が可能となるワクチンの新規の組合せを下記に記載する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
具体的には、本発明は、ネコカリシウイルスに対してネコを免疫感作する下記のワクチンを開示する。FCV−21キャプシドタンパク質または単離FCV−21キャプシドタンパク質(配列番号13)、または少なくとも約91.2%、95%もしくは99%の同一性を有する配列。FCV−21キャプシドタンパク質または単離FCV−21キャプシドタンパク質をコードする核酸配列を含み、前記DNAが、配列(配列番号12)または少なくとも約78.7%もしくは79.2%の配列同一性を有し、保存的置換を許容する配列を含むDNAワクチン。
【0008】
FCV−49キャプシドタンパク質または単離FCV−49キャプシドタンパク質を含み、前記キャプシドタンパク質が、FCV−49株由来のタンパク質配列(配列番号15)または少なくとも約92.7%、95%もしくは99%の同一性を有し、有効量提供されるワクチン。FCV−49キャプシドタンパク質または単離FCV−49キャプシドタンパク質をコードする核酸配列を含み、前記DNAが、配列(配列番号14)または少なくとも約78.9%、すなわち79.4%(78.9+0.5)の配列同一性を有し、保存的置換を許容する配列を含むDNAワクチン。
【0009】
FCV−26391−4キャプシドタンパク質または単離FCV−26391−4キャプシドタンパク質を含み、前記キャプシドタンパク質がFCV−26391−4株由来のタンパク質配列を含むワクチン。FCV−26391−4キャプシドタンパク質を含み、前記キャプシドタンパク質がタンパク質配列(配列番号17)または少なくとも約91.8%、95%もしくは99%の同一性を有する配列を含むワクチン。FCV−26391−4キャプシドタンパク質または単離FCV−26391−4キャプシドタンパク質をコードする核酸配列を含み、前記DNAが、配列(配列番号16)または少なくとも約78.4%、すなわち78.9%(78.4+0.5)の配列同一性を有する配列を含むDNAワクチン。
【0010】
ポリヌクレオチドが本質的に配列番号12、14、16からなる群から選択されるワクチン。そのワクチンは、アジュバントを含有するワクチン、FCV構成成分が生であるワクチン、FCV構成成分を弱毒化したワクチン、FCV構成成分を不活性化したワクチンのうち単独でもよく、またはいずれかの組合せでもよく、それはFCV−F9、FCV−LLK、FCV−M8、FCV−255、およびFCV−2280からなる群から選択される少なくとも1つの他のネコカリシウイルス株を含んでよい。
【0011】
免疫応答を生じさせるのに有効な量の、配列番号13、15、または17と93%以上の同一性を有するポリペプチドからなる群から選択されるFCVキャプシドタンパク質のヌクレオチド配列であって、FCV単離物が株213−95でなく、核酸配列が異種プロモーター配列と作動的に連結しているヌクレオチド配列と、薬学的に許容できる担体とを含む、ネコカリシウイルスに対してネコを免疫感作するワクチン。本質的に配列番号12、14、16からなる群から選択される群から選択されるFCVキャプシドタンパク質のヌクレオチド配列を含む、ネコカリシウイルスに対してネコを免疫感作するワクチン。ヌクレオチド配列が、プラスミド、組換えウイルスベクター、または任意の他のヌクレオチドベクターのいずれかの中にあるワクチン。
【0012】
組換えウイルスベクターが、ネコヘルペスウイルス、アライグマポックスウイルス、カナリアポックスウイルス、アデノウイルス、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス、およびワクシニアウイルスからなる群から選択されるワクチン。
【0013】
獣医学的に許容できる賦形剤の媒体と、本明細書において23、26、41、44および56と呼ばれるモノクローナル抗体から選択されるモノクローナル抗体と結合するFCVの単離株とを含む免疫原性組成物についても記載する。本発明の一部の型では、免疫原性組成物は、獣医学的に許容できる賦形剤の媒体と、本明細書において23、26、41、44および56と呼ばれるモノクローナル抗体から選択されるモノクローナル抗体と選択的に結合するFCVの単離株とを含む。これらの免疫原性組成物は、FCV株が不活性化され、前記FCV株がワクチンであり、アジュバントを含む組成物が含まれる。
【0014】
本明細書に記載のワクチンは、ネコヘルペスウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、オウム病クラミジア(Chlamydia pssittaci)、およびネコパルボウイルス、狂犬病ウイルスおよび気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)からなる群から選択される少なくとも1つの他のネコ病原体を含んでよい。ワクチンはまた、アジュバントをさらに含んでもよく、それとともに投与してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、ネコカリシウイルス(FCV)と関係する死亡率を有意に低下させ、FCVワクチンの安全性を高めるワクチン接種法を提供する。さらに、特許請求に係るワクチン接種法は、既存のFCV−F9ワクチンプロトコールより幅広い血清交差中和特性を誘導し、それはネコカリシウイルスの異なる株全体に対してより良好な免疫をもたらすはずである。
【0016】
本発明の一態様は、ワクチンで動物を、具体的にはネコカリシウイルスに対してネコを免疫感作する方法を提供する。2つの他のネコ疾患であるFPVおよびFHVも、本明細書に記載する新規の治療を有する。その方法は、ネコに治療有効量の第1のワクチン、第2のワクチンを投与するステップを含み、年1回の追加免疫として約1年後、上記のように120日以内、またはより頻繁に第3のワクチンの投与を行ってもよい。第1のワクチンを非経口(例えば、皮下、筋内など)投与する。第1のワクチンの投与後約N日目に第2のワクチンを経口または口鼻投与し、第1または第2のワクチンの投与後約M日目に第3のワクチンを非経口、経口または口鼻投与する。ここで、NおよびMは、それぞれ独立に、3〜120(両端を含む)の整数である。Nが約3週間および約2〜4週間である場合も好ましい。さらに、同定された特定のワクチンを2回の経口投与として投与することができ、最初に非経口投与する必要がない本発明の一態様を提供する。年1回の追加免疫についても助言する。
【0017】
配列表の簡単な説明
配列番号1:
オリゴヌクレオチドプライマー、DEL−653
配列番号2:
オリゴヌクレオチドプライマー、DEL−651
配列番号3:
オリゴヌクレオチドプライマー、FCV−SR N2
配列番号4:
オリゴヌクレオチドプライマー、FCV−SR N3
配列番号5:
オリゴヌクレオチドプライマー、FCV−SR N4
配列番号6:
オリゴヌクレオチドプライマー、FCV−SR N5
配列番号7:
オリゴヌクレオチドプライマー、FCV−SR N6
配列番号8:
オリゴヌクレオチドプライマー、FCV−SR N9
配列番号9:
オリゴヌクレオチドプライマー、プライマー2
配列番号10:
オリゴヌクレオチドプライマー、FCV−SR C4
配列番号11:
オリゴヌクレオチドプライマー、FCV−SR C8
配列番号12:
FCV−21キャプシド遺伝子のDNA配列
配列番号13:
FCV−21キャプシド遺伝子のコードされたアミノ酸配列
配列番号14:
FCV−49キャプシド遺伝子のDNA配列
配列番号15:
FCV−49キャプシド遺伝子のコードされたアミノ酸配列
配列番号16:
FCV−26391−4キャプシド遺伝子のDNA配列
配列番号17:
FCV−26391−4キャプシド遺伝子のコードされたアミノ酸配列
【0018】
定義および略語
測定可能な数値変数に関して使用するとき「約(about)」とは、「約3週間」が17〜25日間であり、約2〜4週間が10〜40日間である週単位の時間間隔に関して約(about)を使用する場合を除いて、変数の示された値、および示された値の実験誤差内(例えば平均の95%信頼区間内)または示された値の10パーセント以内のどちらか大きい方に入る変数のすべての値を指す。
【0019】
「能動免疫」は、本発明のワクチンでのネコのワクチン接種によって誘導されるネコウイルスに対する液性免疫および/または細胞性免疫をどちらも含む。
【0020】
「抗体」とは、特定の抗原との免疫応答の結果、その抗原と結合することができるイムノグロブリン分子を指す。イムノグロブリンは、「定常」領域および「可変」領域を有するポリペプチド「軽」鎖および「重」鎖から構成される血清タンパク質であり、定常領域の組成に基づいてクラス(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM)に分けられる。所与の抗原に「特異的」である抗体は、抗体の可変領域が特定の抗原を認識し排他的にそれと結合することを示し、例えば、抗体は、キャプシドタンパク質と他のポリペプチドの間に限局的な配列同一性、相同性、または類似性が存在するにも関わらず、結合親和性の測定可能な違いにより特定のキャプシドタンパク質を他の知られているタンパク質と区別することができる。特定の抗体はまた、抗体の可変領域の外側、具体的には分子の定常領域中にある配列との相互作用により、他のタンパク質(例えば、ELISA技術での黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)プロテインAまたは他の抗体)と相互作用することもできる。抗体の結合特異性を決定するスクリーニングアッセイは周知である。そのようなアッセイの包括的な論述については、Harlowら(編)、Antibodies:A Laboratory Manual、第6章(1988)を参照されたい。抗体はまた、抗体がFCVキャプシドタンパク質に特異的であるという条件で、FCVキャプシドタンパク質の断片を認識しそれと結合することもできる。抗体は、当技術分野で知られている方法を使用して作製することができる。
【0021】
「抗原」または「免疫原」とは、対象にさらされた後その抗原に特異的な免疫応答を誘導する1つまたは複数の(直線的、高次構造的またはその両方の)エピトープを含有する分子を指す。エピトープとは、T細胞受容体または特定の抗体と結合する抗原の特定の部位であり、通常は約3アミノ酸残基〜約20アミノ酸残基を含む。抗原という用語は、サブユニット抗原という、本来抗原が結合している生物全体、ならびに死滅し、弱毒化しまたは不活性化した細菌、ウイルス、真菌、寄生虫または他の微生物から離れそれと別々となった抗原を指す。抗原という用語はまた、抗イディオタイプ抗体やその断片などの抗体、および抗原または抗原決定基(エピトープ)を模倣することができる合成ペプチドミモトープをも指す。抗原という用語はまた、DNA免疫感作の適用などで、in vivoで抗原または抗原決定基を発現するオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをも指す。
【0022】
「賦形剤」とは、抗原でないワクチンの任意の構成成分を指す。
【0023】
FELOCELL3とは、オウム病クラミジアを含まないFELOCELL4である。
【0024】
FELOCELL4は、改変型生ネコ鼻気管支炎ウイルス[FHV]、カリシウイルス[FCV−F9]、汎白血球減少ウイルス[FPV]およびオウム病クラミジア[FCp]を含有する。FELOCELL4Aは、改変型生ネコ鼻気管支炎ウイルス[FHV]、カリシウイルス[FCV−21]、汎白血球減少ウイルス[FPV]およびオウム病クラミジア[FCp]を含有する。FELOCELL4Aは、FCV−F9を含まないがFCV−21を含むFELOCELL4である。FELOCELL3Aは、FCV−F9を含まないがFCV−21を含むFELOCELL3である。Felocell(登録商標)4、Felocell4、もしくはFELOCELL4またはこれらの語の後に「3」もしくは「4」の数が続くものはワクチンであり、名称Felocellの任意の変種は、Pfizerによって所有されている。
【0025】
「第1のワクチン」、「第2のワクチン」、「第3のワクチン」などは、別々に投与可能なワクチンを指し、それは同じものでもよくまたは異なるものでもよく、一般に任意の順番で投与することができる。したがって、第3のワクチンは、第2のワクチンの前後に対象に投与することができる。
【0026】
ポリペプチドに関するパーセントアミノ酸配列「同一性」に関して「同一性」とは、両方の配列を整列し必要な場合にギャップを導入して最大のパーセント配列同一性にした後に、標的配列中の残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の百分率と本明細書で定義する。パーセント配列同一性は、従来の方法によって決定される。簡潔に述べると、ClustalWアルゴリズム(Thompsonら;Nuc.Ac.Res.22:4673〜4680;1994)およびPAM250重み行列(Dayhoffら、「Atlas of Protein Sequence and Structure.」、National Biomedical Research Foundation、Washington,DC、5:345〜358(1978))およびプログラムMegAlign(DNASTAR,Inc.;ウィスコンシン州Madison)によって提供される初期設定のパラメーターを使用して、2つのアミノ酸配列を整列してアラインメントスコアを最適化する。PAM250重み行列表を、表1−1として示す(アミノ酸は標準的な1文字のコードで示す)。
【0027】
【表1】

【0028】
次いでパーセント同一性を下記のように計算する:
同一整合の合計数_×100
[長い配列の長さ+2つの配列を整列するために長い配列中に導入したギャップの数]
【0029】
対象中での「免疫応答」とは、抗原に対する液性免疫応答、細胞性免疫応答、または液性および細胞性免疫応答の発生を指す。「液性免疫応答」とは、抗体によって媒介されるものを指す。「細胞性免疫応答」とは、Tリンパ球または他の白血球またはその両方によって媒介されるものであり、活性化したT細胞、白血球、またはその両方によって産生されるサイトカイン、ケモカイン、および同様の分子の産生を含む。免疫応答は、当技術分野で知られている標準的なイムノアッセイおよび中和アッセイを使用して決定することができる。
【0030】
抗原の「免疫学的防御量」または「免疫応答を生じさせるのに有効な量」とは、疾患作用物質、および具体的にはネコカリシウイルスの感染によって引き起こされる有害な健康上の影響またはその合併症を含めた疾患の徴候または症状を防止しまたは改善するのに十分であるレシピエントでの免疫原性応答を誘導するのに有効な量である。液性免疫または細胞性免疫またはその両方を誘導することができる。例えば抗体力価の測定、リンパ球増殖アッセイにより間接的に、または野生型株での誘発後に徴候および症状をモニターすることにより直接的に、ワクチン組成物に対する動物の免疫原性応答を評価することができる。ワクチンによって付与される防御免疫は、例えば、死亡率、罹患率、体温や全体的な身体状態などの臨床的徴候の低下、ならびに対象の全体的な健康および能力を測定することによって評価することができる。免疫応答は、それだけに限らないが、細胞性および/または液性免疫の誘導を含み得る。治療上有効なワクチンの量は使用する特定のウイルス、またはネコの状態に応じて様々となり得、それは獣医により決定することができる。
【0031】
「鼻内」投与とは、鼻を介しまたはそれを経由する対象の体内へのワクチンなどの物質の導入を指し、主として鼻粘膜を介する物質の輸送が関与する。
【0032】
ポリヌクレオチドやポリペプチドなど任意の具体的に定義された物質について記載するのに使用するとき「単離された(isolated)」とは、ポリペプチドや核酸などの物質が通常認められる元の細胞環境から分離した物質を指す。したがって、本明細書において、ほんの一例として、本発明のポリヌクレオチドを用いて構築された組換え細胞系統は、「単離された」核酸を使用している。あるいは、FCVキャプシドタンパク質または特異的免疫原性断片をワクチンとして使用することもでき、したがって、本来それがどのように存在し得るかと比較して、それが同定され、分離されある程度精製されているので、それは単離されたとみなされる。キャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片が、抗原を産生する組換え細菌または真核生物発現ベクター中で産生される場合、それは、単離されたタンパク質または核酸として存在するとみなされる。例えば、ポリヌクレオチドを用いて構築された組換え細胞系統は、「単離された」核酸を使用している。
【0033】
「モノクローナル抗体」とは、単一の系統のハイブリドーマ細胞によって産生される抗体を指し、すべてが特定の抗原上の1つのエピトープに対して誘導されるものである。モノクローナル抗体の作製に使用される抗原は、病原体の単離タンパク質または病原体全体として提供することができる。ハイブリドーマとは、骨髄腫細胞と特定の抗体産生細胞の融合によって形成されるハイブリッド細胞からなるクローン細胞系統である。一般に、モノクローナル抗体は、マウス由来のものである;しかし、モノクローナル抗体はまた、ファージディスプレイ技術またはファージディスプレイと同等の方法またはマウス由来でないハイブリッド細胞によって産生される、抗原の特定のエピトープに対して作製された抗体のクローン集団をも指す。
【0034】
「N日」、「N」の間隔もしくは期間、または事象後「M日」とは、それぞれ事象後N日目またはM日目における任意の時間を指す。例えば、第1のワクチンの投与後3日での対象への第2のワクチンのワクチン接種とは、第1のワクチンの後3日目における任意の時間に第2のワクチンを投与することを意味する。この記載は、第1と第2のワクチン接種の間隔にしばしば適用される。通常好ましいNの間隔は約3週間または17〜25日間であるが、約2〜4週間または10〜40日間も一般的であり、ここで本発明は、3〜120日のNの期間で有効である。
【0035】
「経口」または「経口的」投与とは、口を介しまたはそれを経由する対象の体内へのワクチンなどの物質の導入を指し、嚥下または口腔粘膜を介する輸送(例えば、舌下または口腔吸収)またはその両方が関与する。
【0036】
「口鼻」投与とは、例えば、鼻の中に液滴を1滴または複数滴入れることにより行われる、鼻および口を介しまたはそれを経由する対象の体内へのワクチンなどの物質の導入を指す。口鼻投与には、経口投与および鼻内投与と関係する輸送過程が関与する。
【0037】
「非経口投与」とは、消化管を含まない経路を介しまたはそれを経由する対象の体内へのワクチンなどの物質の導入を指す。非経口投与には、皮下投与、筋内投与、経皮投与、皮内投与、腹腔内投与、眼内投与、および静脈内投与がある。この開示の目的で、非経口投与は、口、鼻、気管、および肺中の粘膜組織を介する物質の輸送が主として関与する投与経路を排除するものである。
【0038】
「受動免疫」とは、FCV株に対する抗体または免疫原性構成成分もしくはその構成成分の断片を含むワクチンをネコにワクチン接種した結果ネコにもたらされるネコカリシウイルスに対する防御を指す。
【0039】
「薬学的に許容できる」とは、正しい医学的判断の範囲内にある、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴わずに対象の組織と接触させて使用するのに適し、相応の対危険便益比と釣り合い、その使用目的に有効である物質を指す。
【0040】
「ポリクローナル抗体」とは、特定の病原体または抗原に対して作製された抗体の混合集団を指す。一般に、その集団は様々な抗体の群を含有し、各群は、病原体または抗原の特定のエピトープに対して誘導されたものである。ポリクローナル抗体を作製するために、病原体全体または単離抗原を接種または感染により宿主中に導入し、それが宿主を誘導して、病原体または抗原に対して抗体が作製される。
【0041】
「呼吸器」投与とは、噴霧(霧化)物質の吸入を介しまたはそれを経由する対象の体内へのワクチンなどの物質の導入を指す。呼吸器投与では、主要な輸送機構には気管、気管支、および肺中の粘膜を介する霧化物質の吸収が関与し、したがって、鼻内または経口的投与と異なる。
【0042】
「単回投与」とは、同じ日またはほぼ同じ日の投与、すなわちほぼ1日以内に投与するすべての構成成分を意味する。構成成分は、単一容器中に入れてもよく、または入れなくてもよい。
【0043】
本発明の抗体について記載するのに使用するとき「に特異的な(specific for)」は、本発明の抗体の可変領域が特定のウイルス株を認識し排他的にそれと結合する(すなわち、FCVキャプシドタンパク質とそのようなポリペプチドの間に限局的な配列同一性、相同性、または類似性が存在するにも関わらず、結合親和性の測定可能な違いにより特定のFCVキャプシドタンパク質を他の知られているタンパク質と区別することができる)ことを示す。特定の抗体がまた、抗体の可変領域の外側、具体的には分子の定常領域中にある配列との相互作用により、他のタンパク質(例えば、ELISA技術での黄色ブドウ球菌プロテインAまたは他の抗体)と相互作用することもできることが理解されるであろう。本発明の抗体の結合特異性を決定するスクリーニングアッセイは周知であり、当技術分野で日常的に実施されている。そのようなアッセイの包括的な論述については、Harlowら(編)、Antibodies:A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory;ニューヨーク州Cold Spring Harbor(1988)、第6章を参照されたい。抗体がFCVキャプシドタンパク質に特異的であるという条件で、本発明のFCVキャプシドタンパク質の断片を認識しそれと結合する抗体も意図される。本発明の抗体は、当技術分野で周知であり日常的に実施されている任意の方法を使用して作製することができる。
【0044】
「特異的免疫原性断片」とは、下記で詳細に定義づけるように、その配列に特異的な抗体によって認識可能な配列の部分を意味する。
【0045】
「対象」とは、免疫系を有する任意の動物を指し、ネコなどの哺乳動物を含む。
【0046】
「サブユニットワクチン」とは、1つまたは複数の抗原を含むが、すべての抗原を含むわけではないワクチンの型を指し、その抗原は、ウイルス、細菌、寄生虫や真菌など、対象とする病原体の抗原に由来しまたはそれと同種である。そのような組成物は、完全な病原体細胞もしくは病原性粒子、またはそのような細胞もしくは粒子の溶解物を実質的に含まない。したがって、病原体またはその類似体から少なくとも部分的に精製し、または実質的に精製した免疫原性ポリペプチドからサブユニットワクチンを調製することができる。サブユニットワクチン中の1つまたは複数の抗原を得る方法には、標準的な精製技術、組換えによる作製、または化学合成がある。
【0047】
「TCID50」とは「組織培養感染量」を指し、所与のバッチの接種細胞培養物の50%に感染させるのに必要なウイルスの希釈率と定義される。本明細書全体にわたって利用されるSpearman−Karber法を含めた様々な方法を使用して、TCID50を計算することができる。Spearman−Karber法の記載については、B.W.MahyおよびH.O.Kangro、Virology Methods Manual、25〜46(1996)を参照されたい。
【0048】
この開示の文脈で「治療有効量」とは、ウイルス(例えば、FCV)、細菌、寄生虫や真菌などの病原体の感染によって引き起こされる有害な健康上の影響またはその合併症を含めた疾患の徴候または症状を防止しまたは改善するのに十分である、抗原またはワクチンを投与した対象(例えば、ネコ)中で免疫応答を誘導する抗原またはワクチンの量を指す。液性免疫または細胞性免疫または液性免疫と細胞性免疫の両方を誘導することができる。例えば抗体力価の測定、リンパ球増殖アッセイにより間接的に、または野生型株での誘発後に徴候および症状をモニターすることにより直接的に、ワクチン組成物に対する動物の免疫原性応答を評価することができる。ワクチンによって付与される防御免疫は、例えば、死亡率、罹患率、体温などの臨床的徴候の低下、対象の全体的な身体状態ならびに全体的な健康および能力を測定することによって評価することができる。治療上有効なワクチンの量は使用する特定のウイルス、または対象の状態に応じて様々となり得、それは医師により決定することができる。
【0049】
「治療すること(treating)」とは、そのような用語が当てはまる障害、状態もしくは疾患から回復させ、それを改善し、その進行を阻害し、もしくはそれを防止すること、またはそのような障害、状態もしくは疾患の1つもしくは複数の症状を防止することを指す。
【0050】
「治療」とは、直前で定義した「治療する(treating)」行為を指す。
【0051】
「ワクチン」とは、抗原を含み、下記で定義するいわゆる「サブユニットワクチン」を包含する組成物を指す。対象にワクチンを投与すると免疫応答が生じる。非経口、経口などを含めた任意の知られている投与経路によりワクチンを対象中に直接導入することができる。
【0052】
第1部
本発明のワクチン、ウイルス株、キャプシドタンパク質、および抗体
本発明は、FCV−21、FCV−49およびFCV26391−4からなる群から選択される生のまたは死滅したFCV株に基づくワクチンを提供する。本発明は、本発明のFCV株由来のFCVキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片をコードする核酸ワクチンをさらに提供する。本発明は、本発明のFCV株に由来する単離キャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片をさらに提供する。
【0053】
FCV株では、キャプシドタンパク質から生じる抗原決定基によって良好な免疫応答が誘導される。ここで、密接に関連するキャプシドタンパク質およびその変異体を含めてFCVのいくつかの株を記載し特許請求する。具体的には、FCV−21株およびタンパク質配列(配列番号13)または91.2%、95%もしくは99%以上の同一性を有する配列;FCV−49株およびタンパク質配列(配列番号15)または92.7%、95%もしくは99%以上の同一性を有する配列;FCV−26391−4株およびタンパク質配列(配列番号17)または91.8%、95%もしくは99%以上の同一性を有する配列を記載する。
【0054】
本発明のワクチンは一般に、ネコカリシウイルスの病原性株によって引き起こされる疾患に対してネコを免疫感作する予防的処置となることが意図される。しかし、ワクチンはまた、ネコカリシウイルスの病原性株にすでに感染しているネコの治療的処置にも意図される。例えば、FCVキャプシドまたはその免疫原性構成成分で異種の宿主を免疫感作することによって産生される抗体を含むワクチンは、ネコカリシウイルスに感染したネコの治療的処置に使用される。
【0055】
しかし、能動免疫をもたらすワクチン、すなわちFCV−21、FCV−49およびFCV26391−4からなる群から選択されるFCV株、またはその突然変異体、または本発明のFCV株に由来するキャプシドタンパク質、またはそのキャプシドタンパク質の特異的免疫原性断片を含むワクチンでも、様々な疾患に対する治療的処置として投与したときに有効となることが予想される。したがって、本発明によってもたらされる免疫は能動免疫でもよく、または受動免疫でもよく、ワクチンの使用目的は予防的でもよく、または治療的でもよい。
【0056】
本発明のワクチンのいずれか1つの実施形態での投与経路には、それだけに限らないが、口鼻、筋内、腹腔内、皮内、皮下、静脈内、動脈内、眼内、および経口ならびに経皮、または吸入もしくは坐剤による投与がある。好ましい投与経路には、口鼻、筋内、腹腔内、皮内、および皮下注射がある。ワクチンは、任意の手段によって投与することができ、その手段には、それだけに限らないが、シリンジ、噴霧器、霧吹き、無針注射機器、または微粒子遺伝子銃(微粒子銃)がある。
【0057】
本発明のいずれか1つの実施形態でのワクチンは、使用する投与形態に従って、薬学的に許容される担体中で製剤される。当業者なら、生のまたは死滅したFCV−21、FCV−49またはFCV26391−4、本発明のFCV株のいずれかに由来するキャプシドタンパク質またはその免疫原性断片、FCV−21、FCV−49もしくはFCV26391−4キャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片をコードする組換えウイルスベクター、またはFCV−21、FCV−49もしくはFCV26391−4に由来するキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片をコードするDNA分子を含むワクチンを容易に製剤することができる。筋内注射が好ましい場合では、等張性の製剤が好ましい。一般に、等張性のための添加剤には、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、およびラクトースがあり得る。特定の場合では、リン酸緩衝溶液などの等張溶液が好ましい。製剤は、ゼラチンやアルブミンなどの安定化剤をさらに提供することができる。いくつかの実施形態では、血管収縮剤を製剤に添加する。本発明による医薬製剤は、滅菌され、発熱物質を含まない状態で提供される。しかし、本発明のワクチンを含む、薬学的に許容される担体に好ましい製剤が、生ネコカリシウイルスワクチン、死滅ネコカリシウイルスワクチン、ポリペプチド(抗原)サブユニットワクチン、組換えウイルスベクターワクチン、抗体ワクチン、およびDNAワクチンについて、米国農務省(United States Department of Agriculture)、またはカナダ、メキシコや欧州各国のいずれか一国などの外国における同等の政府機関によって公布された規則で承認された薬学的担体であることは当業者に周知である。したがって、本発明のワクチンの商業生産について薬学的に許容される担体は、米国または外国における適当な政府機関によってすでに承認され、または承認される予定である担体である。ワクチンは、薬学的に許容できるアジュバントとさらに混合することができる。本発明のワクチンの特定の製剤では、ワクチンを他のネコワクチンと混合して、他のネコ病原体によって引き起こされる広範な疾患に対してネコを防御することができる多価ワクチン製品を生産する。現在、ネコワクチンの商業的製造業者も最終消費者も多価ワクチン製品の方を好む。したがって、好ましい実施形態では、本発明は、ネコカリシウイルス、ならびに好ましくはネコヘルペスウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、ネコクラミジア、およびネコ汎白血球減少ウイルスからなる群から選択される少なくとも1つの他のネコ病原体に対してネコを免疫感作する多価ワクチンを提供する。
【0058】
ネコへの接種は、好ましくは、完全な幅広い免疫原性応答を生じさせる単回ワクチン接種によって行う。本発明の他の実施形態では、ネコに一連のワクチン接種を施して、完全な幅広い免疫応答を生じさせる。一連のワクチン接種を行うとき、ほぼ1日から4週間以上の間隔でワクチン接種を行うことができる。特定の実施形態では、同時に異なる部位でネコにワクチン接種する。経路および投与についてのさらなる詳細は、下記の「カリシウイルスに対してネコを免疫感作する方法(Methods of Immunizing Cats against Calicivirus.)」という名称の節で見出される。
【0059】
ワクチン組成物は、薬学的媒体、賦形剤、または媒質として働く、ワクチンと適合性のある薬学的に許容できる(すなわち、滅菌され毒性のない)液体、半固体、または固体希釈剤を含んでもよい。希釈剤には、水、食塩水、デキストロース、エタノール、グリセロールなどがあり得る。等張剤には、とりわけ塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、およびラクトースがあり得る。安定化剤にはとりわけアルブミンがある。フロイント完全アジュバントやフロイント不完全アジュバントなどの油に基づくアジュバント、ミコール酸に基づくアジュバント(例えば、トレハロースジミコレート)、細菌リポポリサッカリド(LPS)、ペプチドグリカン(すなわち、ムレイン、ムコペプチド、またはN−Opacaなどの糖タンパク質、ムラミルジペプチド[MDP]、またはMDP類似体)、プロテオグリカン(例えば、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)から抽出されるもの)、レンサ球菌製剤(例えば、OK432)、Biostim(商標)(例えば、01K2)、EP 109 942、EP 180 564およびEP 231 039の「Iscom」、水酸化アルミニウム、サポニン、DEAE−デキストラン、中性油(ミグリオル(miglyol)など)、植物油(ラッカセイ油など)、リポソーム、Pluronic(登録商標)ポリオールを含めて、当技術分野で知られている任意のアジュバントをワクチン組成物中で使用することができる。アジュバントには、それだけに限らないが、他に多数ある中でもRIBIアジュバント系(Ribi Inc.)、ミョウバン、水酸化アルミニウムゲル、コレステロール、水中油型乳剤、例えばフロイント完全およびフロイント不完全アジュバントなどの油中水型乳剤、ブロックコポリマー(Block co−polymer)(CytRx、ジョージア州Atlanta)、SAF−M(Chiron、カリフォルニア州Emeryville)、AMPHIGEN(登録商標)アジュバント、サポニン、Quil A、QS−21(Cambridge Biotech Inc.、マサチューセッツ州Cambridge)、GPI−0100(Galenica Pharmaceuticals,Inc.、アラバマ州Birmingham)もしくは他のサポニン分画、モノホスホリル脂質A、Avridine脂質−アミンアジュバント、大腸菌(E. coli)由来の熱不安定性エンテロトキシン(組換えまたはその他によるもの)、コレラ毒素、またはムラミルジペプチドがある。免疫原性組成物は、例えば、インターロイキン、インターフェロンや他のサイトカインなどの1つまたは複数の他の免疫調節作用物質をさらに含んでよい。免疫原性組成物はまた、ゲンタマイシンおよびMerthiolateを含んでもよい。本発明との関連で有用なアジュバントおよび添加剤の量および濃度は当業者により容易に決定することができるが、本発明は、アジュバントを約50μg〜約2000μg、好ましくはワクチン組成物の投与量2ml当たり約500μg含む組成物を意図するものである。他の好ましい実施形態では、本発明は、約1μg/ml〜約60μg/ml、より好ましくは約30μg/ml未満の抗生物質を含むワクチン組成物を意図するものである。
【0060】
本発明の免疫原性組成物は、投与経路に応じて様々な形態で作製することができる。例えば、免疫原性組成物は、注射可能な使用に適した滅菌水溶液剤もしくは分散剤の形態で作製することもでき、または凍結乾燥技術を使用して凍結乾燥した形態で作製することもできる。凍結乾燥した免疫原性組成物は通常約4℃で維持され、アジュバントを含むまたは含まない安定化溶液、例えば食塩水または/およびHEPES中で再調製することができる。
【0061】
さらに、本発明の免疫原性ワクチン組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容できる担体を含んでよい。本明細書において、「薬学的に許容できる担体」は、ありとあらゆる溶媒、分散用媒質、被覆、アジュバント、安定化剤、希釈剤、保存剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤などを含む。(複数の)担体は、本発明の構成成分と適合性があり、免疫感作する対象にとって有害でないという意味で「許容でき」なければならない。通常、担体は滅菌され、発熱物質を含まない。
【0062】
生ワクチン
本発明のワクチンの一実施形態では、ワクチンは生ワクチンを含み、FCV構成成分は、FCV−21、FCV−49およびFCV26391−4からなる群から選択される。これらの株が非病原性の型で単離されたので、それらは、疾患を引き起こさずにネコの免疫系を刺激する生ワクチンの調製に特に好ましい。
【0063】
ウイルスをさらに弱毒化する方法は当技術分野で周知であり、適切な細胞系統での細胞培養における連続的な継代や、紫外線または化学的突然変異生成などの方法を含む。
【0064】
不活性化ワクチン
本発明の他の実施形態では、ワクチンは、FCV−21、FCV−49およびFCV26391−4からなる群から選択されるFCV株を含む不活性化または死滅FCVワクチンを含む。不活性化ワクチンは、当技術分野で周知の方法によって作製される。例えば、ウイルスを増殖させて高力価にした後、当技術分野で周知の方法によってウイルス抗原量を得ることができることが当業者には容易に明らかとなるであろう。例えば、ウイルス抗原量は、希釈、濃縮、または抽出によって得ることができる。ワクチンの産生に適したウイルス抗原量を得るのにこれらの方法がすべて使用されている。カリシウイルスは、ホルマリン、ベータプロプリオラクトン(BPL)、もしくは二成分エチレンイミン(BEI)での処理、または当業者に知られている他の方法によって不活性化する。
【0065】
ホルマリンによる不活性化は、カリシウイルス懸濁物を37%ホルムアルデヒドと混合してホルムアルデヒドの終濃度を0.05%にすることによって行う。室温で約24時間絶えず撹拌することによってカリシウイルス−ホルムアルデヒド混合物を混合する。次いで、不活性化したカリシウイルス混合物を、CRFK細胞などの適切なネコ細胞系統での増殖についてアッセイを行うことにより、生きているウイルスが残存するかどうか試験する。
【0066】
BEIによる不活性化は、本発明のカリシウイルス懸濁物を0.1M BEI(0.175N NaOH中の2−ブロモ−エチルアミン)と混合してBEIの終濃度を1mMにすることによって行う。室温で約48時間絶えず撹拌し、その後1.0Mのチオ硫酸ナトリウムを添加して終濃度0.1mMにすることによってカリシウイルス−BEI混合物を混合する。さらに2時間混合を継続する。不活性化したカリシウイルス混合物を、NLFK細胞などの適切なネコ細胞系統での増殖についてアッセイを行うことにより、生きているカリシウイルスが残存するかどうか試験する。
【0067】
本発明の上記の不活性化カリシウイルスを、不活性化ウイルスワクチンを製剤するための薬学的担体のいずれか1つと混合して適当な投与レベルにする。不活性化ワクチンは、FCV−21、FCV−49およびFCV26391−4からなる群から選択されるFCV構成成分に加えて、好ましくはFCV−F9、FCV−M8、FCV−255、およびFCV−2280からなる群から選択される少なくとも1つの他のネコカリシウイルス株をさらに含んでよい。好ましい実施形態では、ワクチンは、好ましくはネコヘルペスウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、ネコクラミジア、およびネコ汎白血球減少ウイルスからなる群から選択される1つまたは複数の他のネコ病原体に対してネコを免疫感作するためのワクチンをさらに含む。
【0068】
組換えワクチン
本発明のさらなる実施形態では、ワクチンは、本明細書で開示されるFCVキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片をコードする核酸を含有する組換えウイルスベクターを含む。
【0069】
特定の一実施形態では、組換えウイルスベクターは、ネコカリシウイルスとネコヘルペスウイルスの両方に対してネコを免疫感作するネコヘルペスウイルスである。他の実施形態では、組換えウイルスベクターは、好ましくはネコヘルペスウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、ネコクラミジア、およびネコ汎白血球減少ウイルス、狂犬病ウイルスおよび気管支敗血症菌からなる群から選択される1つまたは複数の抗原を含む。
【0070】
FCVキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片を発現する組換えウイルスベクターを作製するには、キャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片をコードするcDNAを、ヘルペスウイルス、ポックスウイルスやアデノウイルスなどのウイルスベクターのゲノム中に挿入する。Wardleyらの米国特許第5,716,822号には、ネコカリシウイルス株CFI−68 FIVキャプシドタンパク質をコードするDNAをネコヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子中に挿入する方法が記載されている。本発明によって包含される他の組換えウイルスベクターワクチンには、それだけに限らないが、FCVキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片を発現するアデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、パルボウイルス、および種々のポックスウイルスベクターがある。具体的には、本発明は、外来抗原を発現するワクシニアウイルスまたはカナリアポックスウイルスからなる組換えウイルスワクチンを教示するPaolettiらの米国特許第5,338,683号および第5,494,807号;狂犬病ウイルス抗原を発現する組換えアライグマポックスウイルスベクターを教示するEspositoらの米国特許第5,266,313号;ならびにネコヘルペスウイルスgDまたはgB抗原を発現する組換えアライグマポックスウイルスベクターを教示するMaesらの米国特許第6,010,703号のいずれか1つで教示される方法に従って作製されたFCVキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片を発現する組換えポックスウイルスベクターワクチンを含む。
【0071】
上記の組換えウイルスベクターのいずれかでは、FCVキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片をコードするcDNAが、抗原をコードするcDNAの5’末端で真核生物プロモーターと、抗原をコードするcDNAの3’末端で真核生物終結シグナルおよびポリ(A)シグナルと作動的に連結している。本明細書において、「作動的に連結している」という用語は、(cDNA分子である)本発明のポリヌクレオチド、ならびに発現調節配列、例えば転写プロモーターおよび終結配列を含有するポリヌクレオチド(DNA)がベクターまたは細胞中に位置し、その結果、cDNAによってコードされる抗原の発現が発現調節配列によって制御されることを意味する。FCVキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片をコードするcDNAなどのDNAをクローン化し、発現調節配列を含有するDNAをそれと作動的に連結する方法は当技術分野で周知である。組換えウイルスベクター中でのFCVキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片の発現に適したプロモーターの例は、サイトメガロウイルス前初期(CMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス長末端反復配列(RSV−LTR)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)前初期プロモーター、およびメタロチオネインプロモーターなどの誘導性プロモーターである。終結およびポリ(A)シグナルを有するDNAの例は、SV40後期ポリ(A)領域である。抗原の産生に適したウイルス発現系の他の例は、Invitrogenから入手可能なシンドビス発現系である。市販されている発現ベクターおよび発現系の使用は当技術分野で周知である。
【0072】
核酸またはDNA分子ワクチン
本発明のさらなる実施形態では、ネコにおいて活発な免疫応答を誘発する核酸またはDNA分子ワクチンとしてワクチンが提供される。DNA分子ワクチンは、本明細書で開示されるFCVキャプシドタンパク質のキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片をコードする核酸配列を有するDNAからなる。
【0073】
好ましい実施形態では、DNA分子ワクチンは、配列番号13、15、もしくは17または配列番号13、15、もしくは17の特異的免疫原性断片をコードする配列番号12、14、もしくは16、またはその断片の核酸配列を含む。キャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片をコードする核酸は、転写プロモーターで、またはその近くで作動的に連結している。これにより、核酸をネコの細胞中に接種したときに核酸からのキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片の転写が可能となる。好ましくは、DNA分子はプラスミドである。DNAワクチンに有用なプロモーターは当技術分野で周知であり、そのプロモーターには、それだけに限らないが、RSV LTRプロモーター、CMV前初期プロモーター、およびSV40T抗原プロモーターがある。核酸が、キャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片をコードする配列の終結コドンでまたはその近くで、転写終結シグナルおよびポリ(A)認識シグナルを含む核酸断片と作動的に連結していることがさらに好ましい。許容される薬学的担体、またはFelgnerの米国特許第5,703,055号中で開示されているものと類似した脂質もしくはリポソーム担体中のDNAワクチンをネコに提供する。DNAワクチンは、筋内注射、イントラジェット(intrajet)注射や、微粒子銃などの様々な方法によってネコに提供することができる。DNAワクチンの作製およびその使用方法は、どちらもFelgnerの米国特許第5,589,466号と第5,580,859号において示されている。最後に、医薬品用品質のプラスミドDNAを作製する方法は、Marquetらの米国特許第5,561,064号で教示されている。
【0074】
したがって、上記の方法を使用して、FCVキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片を発現するDNAワクチンを使用して、病原性ネコカリシウイルスに対してネコを免疫感作する。DNAワクチンの利点は、好都合なことに、DNA分子が、ワクチンを産生するための単純かつ安価な手段であるプラスミドとして増殖され、ワクチンが生でないので、生の組換えウイルスベクターワクチンに関係する規制の問題の多くがDNAワクチンでは問題とならないことである。当業者なら、本発明のDNAワクチンが、当技術分野で周知の化学合成の方法によって作製された、合成により生成された核酸を含んでよいことを理解するであろう。
【0075】
単離および精製されたFCVキャプシドタンパク質
本発明のさらなる実施形態では、ワクチンは、単離および精製されたFCVキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片からなる。具体的には、FCVキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片が配列番号13、15、17のアミノ酸配列を含むワクチンが提供される。好ましくは、キャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片は、単離および精製してワクチンを作製することができる抗原を産生する組換え細菌または真核生物発現ベクター中で産生される。例えば、FCVキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片は、細菌、酵母や真菌などの微生物中で、哺乳動物細胞や昆虫細胞などの真核生物細胞中で、またはアデノウイルス、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、セムリキ森林ウイルス、バキュロウイルス、バクテリオファージ、シンドビスウイルスやセンダイウイルスなどの組換えウイルスベクターを介して産生される。FCVキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片の産生に適した細菌には、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、または異種ポリペプチドを発現することができる任意の他の細菌がある。FCVキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片の発現に適した酵母の種類には、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、カンジダ(Candida)、または異種ポリペプチドを発現することができる任意の他の酵母がある。上記の細菌、真核細胞または組換えウイルスベクターを使用してワクチン用の抗原を産生する方法は、当技術分野で周知である。
【0076】
キャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片からなるワクチンを作製するには、FCVキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片をコードする核酸をプラスミド中にクローン化し、その核酸を、微生物中でキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片の発現を実施するプロモーターと作動的に連結する。適切なプロモーターには、それだけに限らないが、T7ファージプロモーター、T3ファージプロモーター、β−ガラクトシダーゼプロモーター、およびSp6ファージプロモーターがある。微生物中でのFCVキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片の発現によって、大量の組換え抗原ポリペプチドの生産に商業的に使用される発酵技術を使用してキャプシドタンパク質を生産することが可能となる。抗原を単離および精製する方法は当技術分野で周知であり、その方法には、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーや遠心分離などの方法がある。
【0077】
FCVキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片の単離を促進するために、融合ポリペプチドを作製し、キャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片を、アフィニティークロマトグラフィーによる単離を可能にする他のポリペプチドと連結する。好ましくは、下記の発現系の1つを使用して融合ポリペプチドを作製する。例えば、FCVキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片をコードするcDNA核酸配列を、5’末端または3’末端で、ポリペプチドをコードする核酸と連結する。核酸を適当なコドンの読み枠で連結して融合ポリペプチドの産生を可能にし、キャプシドタンパク質またはその部分のアミノ末端および/またはカルボキシル末端をポリペプチドと融合し、それによって融合ポリペプチドとして抗原の回収を単純化することが可能となる。融合ポリペプチドはまた、精製中に抗原が分解されることを防止することができる。融合ポリペプチドを含むワクチンは有効であるが、ある場合には、精製後に第2のポリペプチドを除去することが望ましい可能性がある。したがって、融合ポリペプチドが、抗原とポリペプチドの結合部に切断部位を含有することも意図される。切断部位は、その部位のアミノ酸配列に特異的な酵素で切断されるアミノ酸配列からなる。意図されるそのような切断部位の例には、エンテロキナーゼによって切断されるエンテロキナーゼ切断部位、第Xa因子によって切断される第Xa因子切断部位、GENENASEによって切断されるGENENASE切断部位(GENENASEは、New England Biolabs、マサチューセッツ州Beverlyの商標である)がある。下記のものは、融合ポリペプチド、またはポリペプチドを含まない単離抗原としてキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片を産生する方法である。
【0078】
ワクチンで使用する融合ポリペプチドとしてFCVキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片を産生する原核生物発現系の例は、pGEX−4T−1発現ベクタープラスミドを使用する、Amersham Pharmacia Biotech、ニュージャージー州Piscatawayから入手可能なグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)遺伝子融合系である。キャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片をコードするcDNAを、適当なコドンの読み枠で、GSTをコードするDNAと融合する。融合ポリペプチドのGST部は、グルタチオンセファロース4Bアフィニティークロマトグラフィーを使用した融合ポリペプチドの迅速な精製を可能にする。精製後、融合ポリペプチドのGST部分をトロンビンや第Xa因子などの部位特異的プロテアーゼでの切断により除去して、GSTポリペプチドを含まない抗原を産生することができる。GSTポリペプチドを含まないキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片は、2回目のグルタチオンセファロース4Bアフィニティークロマトグラフィーによって産生される。
【0079】
FCVキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片を含むワクチンを作製する他の方法は、インフレーム(in−frame)で、抗原をコードするcDNAとポリヒスチジンをコードするDNAコドンを連結する方法である。ポリヒスチジンは、好ましくは、6個のヒスチジン残基を含み、それによって、金属アフィニティークロマトグラフィー、好ましくはニッケルアフィニティークロマトグラフィーによる融合ポリペプチドの精製が可能となる。ポリヒスチジンを含まないキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片を産生するには、エンテロキナーゼ切断部位などの切断部位を、適当なコドンの読み枠で、ポリヒスチジンをコードするコドンと、抗原をコードするコドンの間に融合する。エンテロキナーゼでの切断、その後の、遊離ポリヒスチジンを結合する2回目の金属アフィニティークロマトグラフィーによって、抗原からポリヒスチジンを除去する。この方法は、ペスト菌(Y. pestis)のLcrV抗原の調製に有用であることが示され、それはMotinら(Infect.Immun.64:4313〜4318(1996))で開示された。Invitrogen、カリフォルニア州Carlsbadから入手可能なXpress系は、ポリヒスチジン−ポリペプチド融合タンパク質を作製し次いでそれを単離するのに利用可能な市販のキットの例である。
【0080】
FCVキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片を含むワクチンを作製するさらなる方法は、Motinら、Infect.Immun.、64:3021〜3029(1995)によって開示される方法を使用する。Motinらは、プロテインAの部分をコードするDNAと連結した抗原をコードするDNAからなる、融合ポリペプチドをコードするDNAを開示し、エンテロキナーゼ切断部位をコードするDNAが、プロテインAと抗原をコードするDNA間の適当なコドンの読み枠中に介在する。プロテインAは、IgGアフィニティークロマトグラフィーによる融合ポリペプチドの単離を可能にし、エンテロキナーゼでの切断により、プロテインAを含まないキャプシドタンパク質が産生される。次いで、2回目のIgGアフィニティークロマトグラフィーによってプロテインAが除去される。
【0081】
FCVキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片を含むワクチンを作製する他の方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、Danielsらの米国特許第5,725,863号で開示される方法に基づく。Danielsらの方法を使用して、各分子がFCVキャプシドタンパク質の100アミノ酸残基以上を挿入したエンテロトキシン分子からなるFCVキャプシドワクチンを作製することができる。本発明のワクチンの作製に使用することができる、融合ポリペプチドワクチンを作製する他の方法は、Mondらの米国特許第5,585,100号、およびLiscombeの米国特許第5,589,384号で開示されている。最後に、New England Biolabsから入手可能なpMAL融合および精製系が、融合ポリペプチドを作製する方法の他の例であり、マルトース結合タンパク質をキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片に融合する。マルトース結合タンパク質は、アミロースアフィニティークロマトグラフィーによる融合ポリペプチドの単離を促進する。マルトース結合タンパク質を含まない抗原を作製することを可能にする上記で述べた切断部位の1つによって、マルトース結合タンパク質を抗原と連結することができる。
【0082】
ワクチン用のFCVキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片の産生に細菌の方法が使用されるが、真核生物発現系中でキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片を産生することが望ましい可能性がある。特に有用な系は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、Matsuuraらの米国特許第5,229,293号で開示されているバキュロウイルス発現系である。キャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片の産生に適したバキュロウイルス発現ベクターは、StratageneのpPbacおよびpMbacベクター;ならびにInvitrogen、カリフォルニア州Carlsbadから入手可能なBac−N−Blueベクター、pBlueBac4.5ベクター、pBlueBacHis2−A、B、C、およびpMelBacである。
【0083】
ワクチン用のFCVキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片の発現に有用な他の真核生物系は、Stratageneから入手可能なESP酵母タンパク質発現および精製系などの酵母発現系である。他の酵母発現系は、Invitrogenの、ピチア(Pichia)に基づく発現系のいずれか1つである。哺乳動物発現系も本発明によって包含される。哺乳動物発現系の例は、StratageneのLacSwitchII系、pBKファージミド、pXT1ベクター系、およびpSG5ベクター系;Promega Corporation、ウィスコンシン州Madisonから入手可能なpTargeT哺乳動物発現ベクター系、pSI哺乳動物発現ベクター、pCI哺乳動物発現ベクター、およびpAdVantageベクター;ならびにInvitrogenから入手可能なエクジソン誘導哺乳動物発現系、pCDM8、pcDNA1.1、およびpcDNA1.1/Ampである。
【0084】
本発明は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、Achesonらの米国特許第5,800,821号で教示される方法に従って作製される熱安定性胞子送達系の構成成分としてFCVキャプシドタンパク質またはキャプシドタンパク質の特定のエピトープを含むワクチンからなる実施形態をさらに含む。したがって、本発明は、FCVキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片をコードする核酸を含有する遺伝子操作された細菌細胞を提供する。組換え細菌胞子ワクチンをネコに経口投与したとき、胞子がネコの胃腸管で出芽し、細菌がキャプシドタンパク質またはその特異的免疫原性断片を発現し、それがネコの免疫系と接触し、免疫応答を誘発するようになる。そのワクチンは、熱安定性であるという利点を有し、したがって、それは無期限に室温で貯蔵することができる。
【0085】
受動免疫ワクチン
本発明の上記の実施形態はネコカリシウイルスに対する能動免疫をもたらすが、本発明は、ネコカリシウイルスに対する受動免疫をもたらすワクチンをさらに含む。ネコカリシウイルスに対する受動免疫を誘発するワクチンは、FCVキャプシドタンパク質、その特異的免疫原性断片、またはFCVウイルス全体に対するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体からなる。
【0086】
ポリクローナル抗体を含む受動免疫ワクチンを作製するには、そのFCVキャプシドタンパク質、またはその特異的免疫原性断片を、抗体の調製に適した宿主中に注射し、好ましくは、宿主はウマ、ブタ、ウサギ、ヒツジ、またはヤギである。これらの宿主からポリクローナル抗体ワクチンを作製する方法は当技術分野で周知である。一例として、キャプシドタンパク質もしくはその特異的免疫原性断片またはカリシウイルスFCVキャプシド全体を、フロイント完全アジュバントや、CytRx Corp.、ジョージア州Norcrossから入手可能な毒性の低いTiterMaxなどのアジュバントと混合し、次いで、当技術分野で周知の方法によってそれを宿主に投与する。抗体産生をモニターし、十分な抗体が産生されたとき、宿主から血清を取り出し、好ましくは血清から抗体を回収する。
【0087】
受動免疫ワクチンは、FCVキャプシドタンパク質またはFCVウイルス全体の1つまたは複数のエピトープに対する1つまたは複数のモノクローナル抗体を含んでよい。モノクローナル抗体を産生する方法およびハイブリドーマは当技術分野で周知である。当技術分野で周知のハイブリドーマ技術を使用してモノクローナル抗体を作製することができるが、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、Marksらの米国特許第5,977,322号で開示されているものなどのファージディスプレイ法に従って、抗原に対するモノクローナル抗体を作製することもできる。キャプシドタンパク質またはその部分に対するネコ化抗体は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、どちらもQueenらの米国特許第5,693,762号および第5,693,761号で開示されているものなどの、抗体をヒト化するのに使用されている方法に従って作製することができる。モノクローナル抗体の作製に有用なファージディスプレイキットは、Amersham Pharmacia Biotechから入手可能なRecombinant Phage Antibody Systemである。
【0088】
ポリクローナルおよびモノクローナル抗体
本発明はまた、いくつかの非常に重要なモノクローナル抗体を含み、それについて記載し特許請求するものである。ここで、これらの抗体は、本明細書に記載のウイルス株を迅速に同定し、ある場合にはそれを定義するために開発された。モノクローナル抗体の具体例およびその記載は、下記の実施例で見出すことができる。具体的には、実施例1−2および表1−2、特に実施例1−8、表1−4を参照されたい。
【0089】
下記の実施例は、本発明のさらなる理解を促進するが、それを限定しないものとする。
【実施例】
【0090】
第1部の実施例
(実施例1−1)
FCV−21の単離および増殖
1993年6月に、ミシガン州Ann Arborのネコのショーからネコカリシウイルス(FCV)株21(FCV−21)を収集した。それを1%の培地を含有する96穴用微小管中で希釈し、1:10希釈物を作製した。希釈した試料100ulを、96穴プレート中でCRFK細胞100ulに添加した。
【0091】
96穴プレート中で、限界希釈によりFCV−21ウイルスを3回精製した。最終精製物からウイルス上清を取り出し、それを使用して、T25フラスコ中で集密度75%まで増殖させたCRFK細胞に感染させた。100%のCPEが観察されたとき、懸濁液の凍結/解凍を3回行い、それを分注して凍結バイアル(1ml/バイアル)にした。このウイルスストックの力価は、1.5×10TCID50/mlであると決定された。
【0092】
FCV−21は米国基準菌株保存機構(American Type Culture Collection)(ATCC)、米国バージニア州Manassas 20110、University Blvd 10801に寄託され、ATCCアクセッション番号PTA−_を割り当てられた。
【0093】
(実施例1−2)
様々な市販のまたは既存のモノクローナル抗体を使用したFCV−21の免疫蛍光法およびELISA
免疫蛍光アッセイ(IFA)では、FCV−21のウイルスストックを使用して、約90%の集密度まで増殖させたNLFK細胞を播いた24穴プレートに感染させた。感染から約20時間後、プレートを1×PBSで2回洗浄し、80%アセトンで固定した。様々なモノクローナル抗体を約2ug/ulに希釈し、それをプレートの個々の穴に添加した(1穴当たり0.2ml)。室温(RT)で撹拌しながら1時間インキュベートした後、各穴を1×PBSで2回洗浄し、二次抗体(抗マウスFITC、10ug/ml)を添加した。プレートをアルミニウムホイルで被覆し、RTで撹拌しながら30分間インキュベートした後、各穴を1×PBSで2回洗浄し、風乾した。次いで、蛍光顕微鏡下で、FITCでの染色の強度について各穴を観察した。
【0094】
ELISAアッセイでは、炭酸ナトリウム緩衝液(NaCO1.59gおよびNaHCO2.93gを水1リットル中に溶解)で1:1500に希釈した抗FCVウサギポリクローナル抗体(Pfizer#16)200ulで96穴ELISAプレートをコートした。プレートを4℃で1晩インキュベートした。プレートを、0.05%のTween−20を含有する1×PBS(pH7.4)(PBST)で3回洗浄し、次いで、PBST中の1%カゼイン200ulで、37℃で1時間ブロッキング処理した。様々なモノクローナル抗体を約0.1ug/mlに希釈し、それを個々の穴に添加した(1穴当たり100ul)。各試料を3連で行った。37℃で1時間インキュベートした後、各穴をPBSTで3回洗浄し、1:200に希釈したペルオキシダーゼ結合AffiniPureヤギ抗マウスIgG(H+L)(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号715−035−150)100ulとともに37℃で1時間インキュベートした。次いで各穴をPBSTで3回洗浄し、その後、ABTSペルオキシダーゼ基質(KPL、メリーランド州Gaithersburg、カタログ番号50−66−18)を各穴に100ul添加した。RTで約10分後、ELISAリーダーを用いて405〜490nm(二重波長)でプレートを読み取った。シグナル/ノイズ比に基づいて比活性を計算した。
【0095】
IFAとELISAアッセイのデータの組は、互いによく相関し(表1−2)、そのデータの組から、FCV−21が、一般に使用されるFCVワクチン株であるF9と免疫学的に異なることが示唆された。2つのモノクローナル抗体(FCV1−43およびMAB791P)がF9と反応したが、FCV−21とは反応しなかった(表1−2)。
【0096】
【表2】

【0097】
(実施例1−3)
FCV−21のキャプシド配列分析
TRIzol試薬(Invitrogen;カリフォルニア州Carlsbad)を使用して、FCV−21感染細胞培養物の上清から全RNAを単離した。ランダムプライマーおよびSuperscriptII逆転写酵素(Invitrogen)を使用して「第1鎖」cDNA調製物を合成した。XL rTthポリメラーゼ(Applied Biosystems;カリフォルニア州Foster City)ならびにオリゴヌクレオチドプライマーDEL−653(配列番号1)およびDEL−651(配列番号2)を使用してPCR反応を行った。BigDye化学反応法およびABI377 Genetic Analyzerを使用して、得られたPCR産物の配列を決定した。完全なキャプシド配列は、ヌクレオチド配列については配列番号12として、コードされたアミノ酸配列については配列番号13として列挙する。
【0098】
(実施例1−4)
FCV−49の単離および増殖
1993年に、ペンシルバニア州Philadelphiaのネコのショーからネコカリシウイルス(FCV)株49(FCV−49、PHA−49とも呼ばれる)を収集した。その検体を、1%の培地を含有する96穴用微小管中で希釈し、1:10希釈物を作製した。希釈した試料100ulを、96穴プレート中でCRFK細胞100ulに添加した。96穴プレート中で、限界希釈によりFCV−49ウイルスを3回精製した。最終精製物からウイルス上清を取り出し、それを使用して、T25フラスコ中で集密度75%まで増殖させたCRFK細胞に感染させた。100%のCPEが観察されたとき、懸濁液の凍結/解凍を3回行い、それを分注して凍結バイアル(1ml/バイアル)にした。このウイルスストックの力価は、6.8×107TCID50/mlであると決定された。
【0099】
FCV−49は米国基準菌株保存機構(ATCC)、米国バージニア州Manassas 20110、University Blvd 10801に寄託され、ATCCアクセッション番号PTA−_を割り当てられた。
【0100】
(実施例1−5)
FCV−49のキャプシド配列分析
TRIzol試薬(Invitrogen;カリフォルニア州Carlsbad)を使用して、FCV−49感染細胞培養物の上清から全RNAを単離した。ランダムプライマーおよびSuperscriptII逆転写酵素(Invitrogen)を使用して「第1鎖」cDNA調製物を合成した。XL rTthポリメラーゼ(Applied Biosystems;カリフォルニア州Foster City)ならびにオリゴヌクレオチドプライマーDEL−653(配列番号1)およびDEL−651(配列番号2)を使用してPCR反応を行った。BigDye化学反応法およびABI377 Genetic Analyzerを使用して、得られたPCR産物の配列を決定した。完全なキャプシド配列は、ヌクレオチド配列については配列番号14として、コードされたアミノ酸配列については配列番号15として記載する。
【0101】
(実施例1−6)
FCV−26391−4の単離および増殖
2003年に、Humane Society of Bay County(フロリダ州Panama City)からネコカリシウイルス(FCV)株26391−4(FCV−26391−4)を収集した。2%ウシ胎児血清入りのDMEM培地(Invitrogen)を含有する96穴プレート中で、限界希釈によりそれを1回精製した。次いでその精製ウイルスを使用して、NLFK(Norden Labネコ腎)細胞を含有するT150フラスコに感染させた。100%のCPEに達した後、懸濁液の凍結/解凍を1回行い、それを分注して凍結バイアル(0.85ml/バイアル)にした。このストックのウイルス力価は、5.6×10TCID50/mlであると決定された。
【0102】
FCV−26391−4は米国基準菌株保存機構(ATCC)、米国バージニア州Manassas 20110、University Blvd 10801に寄託され、ATCCアクセッション番号PTA−_を割り当てられた。
【0103】
(実施例1−7)
FCV−26391−4のキャプシド配列分析
QIAamp Viral RNA Isolation Kit(Qiagen;カリフォルニア州Valencia)を使用して、FCV−26391−4感染細胞培養物の上清から全RNAを単離した。約1ugのウイルスRNAをRT−PCR(SuperScript One−Step RT−PCR with Platinum Taq;Invitrogen)で使用した。反応条件は下記の通りであった:50℃で30分;94℃で2分;その後、94℃で15秒、55℃で30秒、および70℃で2分を40サイクル;その後72℃で10分の最後のインキュベーションを行い、4℃で貯蔵。使用したプライマーは、FCV−N2(配列番号3)およびFCV−プライマー2(配列番号9)であった。次いで、様々なオリゴヌクレオチドプライマー(配列番号3、4、5、6、7、8、9、10、および11)を使用してPCR産物の配列を決定した。FCV−26391−4のキャプシド全体の配列は、ヌクレオチド配列については配列番号16として、コードされたアミノ酸配列については配列番号17として示す。
【0104】
FCV−21、FCV−49およびFCV−26391−4由来のキャプシド遺伝子のアミノ酸配列を、GenBankで入手可能な完全長FCVキャプシド配列すべてと整列させた。ClustalWアルゴリズム(Thompsonら、1994)、PAM250重み行列(Dayhoffら、1978)、および初期設定プログラムパラメーター(MegAlign;DNASTAR,Inc.;ウィスコンシン州Madison)を使用して、アラインメントを作成した。GenBank中のすべての登録配列の中で最も高い、FCV−21とFCV213−95のキャプシドタンパク質配列間での同一性は90.7%である。FCV−49とFCV213−95のキャプシド配列は92.2%同一である。FCV26391−4とFCV CFI−68のキャプシド配列は互いに91.3%同一である。
【0105】
FCV−21、FCV−49およびFCV−26391−4について単一のキャプシド配列を示し、それは、得られたPCR産物の直接配列決定に基づいている。しかし、これらの各配列は、RNAウイルス集団内に存在することが知られているウイルス準種(総説については、Domingoら、Virus Res.82:39〜44;2002を参照)の集団の間での平均または共通の配列を表す。準種は、RNAゲノム複製の間に起こる誤りの直接的な結果物であり、そのゲノム内に突然変異を有する子孫を生じさせる。したがって、これらおよび他のFCVキャプシド遺伝子配列についてキャプシド配列の少量の変異体が天然に存在することが予想される。しかし、各配列内の突然変異の分布は、FCV−21、FCV−49およびFCV−26391−4を含めた株間での全体的な同一性にほとんど/全く影響を及ぼさないようなものである。
【0106】
(実施例1−8)
FCV−21に特異的なモノクローナル抗体の生成
A.FCV−21の精製。FCV−21を感染させたNLFK細胞の細胞培養上清約200mlを、3000rpmで、10℃で30分間遠心分離した。上清25mlをBeckman Ultraclear遠心分離管中に移し、10%スクロース溶液10mlを管の底に入れた。次いで、27,000rpmで管を15℃で2時間遠心分離した。遠心分離後、上清を取り出しそれを捨て、滅菌水250ul中でペレットを再懸濁した。Micro BCA Protein Assay Kit(Pierce Chemical Co.、イリノイ州Rockford)を使用して、タンパク質濃度が7mg/mlであると決定された。
【0107】
マウスの免疫感作およびハイブリドーマ細胞クローンの生成
精製FCV−21ウイルスタンパク質約100ugを、フロイントアジュバントと一緒に各マウスに注射した。マウス8匹にワクチン接種した。RIBIアジュバントを伴う精製FCV−21 100ugを用いて追加免疫感作を4週間の間隔で2回実施した。この8匹のマウスの免疫応答が、精製FCV−21を使用したELISAで31250以上の力価を有することが決定された。細胞融合を実施してハイブリドーマクローンを作製した。そのような細胞クローン68個を増殖させ、FCV−21との反応性について上清を試験した。
【0108】
このELISAでは、96穴ELISAプレートを、1×PBSで希釈した濃度5ug/mlの精製FCV100ulでコートした。加湿していないインキュベーター中で覆いをかけずにプレートを37℃で1晩乾燥させた。メタノール0.1mlをかけ室温で5分間インキュベートすることによってプレート上のウイルスを固定した。次いでプレートを蒸留水で8回洗浄し、次いで、1×PBS中の10%ウマ血清200ulで、4℃で1晩ブロッキング処理した。再度プレートを蒸留水で8回洗浄した。マウス血清試料の様々な希釈物を個々の穴に添加した(1穴当たり100ul)。各試料を3連で行った。37℃で1時間インキュベートした後、各穴をPBSTで3回洗浄し、1:200に希釈したペルオキシダーゼ結合AffiniPureヤギ抗マウスIgG(H+L)(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号715−035−150)100ulとともに37℃で1時間インキュベートした。次いで各穴をPBSTで3回洗浄し、その後、ABTSペルオキシダーゼ基質(KPL、メリーランド州Gaithersburg、カタログ番号50−66−18)を各穴に100ul添加した。RTで約10分後、ELISAリーダーを用いて405〜490nm(二重波長)でプレートを読み取った。シグナル/ノイズ比に基づいて比活性を計算した。
【0109】
FCV−21特異的モノクローナル抗体の反応性
上記のハイブリドーマ細胞クローンの上清を使用して、サンドイッチELISAアッセイでFCV−21ならびにF9に対するその反応性について試験した。簡潔に述べると、炭酸ナトリウム緩衝液(NaCO1.59gおよびNaHCO2.93gを水1リットル中に溶解)で1:1500に希釈した抗FCVウサギポリクローナル抗体(Pfizer#16)200ulで96穴ELISAプレートをコートした。プレートを4℃で1晩インキュベートした。プレートを、0.05%のTween−20を含有する1×PBS(pH7.4)(PBST)で3回洗浄し、次いで、PBST中の1%カゼイン200ulで、37℃で1時間ブロッキング処理した。FCV−21およびF−9の上清を、1:10の希釈で各穴に添加した。37℃で1時間インキュベートした後、プレートを洗浄し、様々なハイブリドーマの上清およびその様々な希釈物を個々の穴に3連で添加した(1穴当たり100ul)。次いでプレートを37℃で1時間インキュベートし、PBSTで3回洗浄し、1:200に希釈したペルオキシダーゼ結合AffiniPureヤギ抗マウスIgG(H+L)(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号715−035−150)100ulとともに37℃で1時間インキュベートした。洗浄後、ABTSペルオキシダーゼ基質(KPL、メリーランド州Gaithersburg、カタログ番号50−66−18)を各穴に100ul添加した。RTで約10分後、ELISAリーダーを用いて405〜490nm(二重波長)でプレートを読み取った。シグナル/ノイズ比に基づいて比活性を計算した。
【0110】
【表3−1】

【0111】
【表3−2】

【0112】
B.FCV−21に特異的であり、他のFCV株には特異的でないモノクローナル抗体。18個のハイブリドーマ細胞クローン(3、7、17、23、27、29、30、36、37、40、41、42、44、53、56、59、60および61)を選択して、FCV−21に対するその特異性についてさらに試験した。11種のFCVウイルスをアッセイで使用した(FCV−21、49、26391−4、F9、CFI−68、33585、89391、255、J−1、2280およびH)。さらに、上記に記載のように、サンドイッチELISAを使用した。結果の概要を表1−4に示す。
【0113】
【表4】

【0114】
上記で示したように、ハイブリドーマ細胞系統23、41、44および56はFCV−21に特異的であり、試験した他のどのFCVにも特異的でない。したがって、FCV−21の診断ツールとしてこれらのモノクローナル抗体を使用することができる。さらに、ハイブリドーマ36は、ワクチンFCV株だけ(FCV−21、49、26391−4)と反応し、他のどのFCV株とも反応しないように思われる。
【0115】
ハイブリドーマ細胞系統23、36、41、44および56はすべて米国基準菌株保存機構(ATCC)、米国バージニア州Manassas 20110、University Blvd 10801に寄託され、ATCCアクセッション番号:
PTA−7349(23)
PTA−7350(36)
PTA−7353(41)
PTA−7351(44)
PTA−7352(56)
を割り当てられた。
【0116】
(実施例1−9)
1993年に単離されたFCVウイルスに対するFCV−21およびFCV−49の血清の血清交差中和分析
A.同種抗血清の力価測定。12種のFCV単離物に対する回復期抗血清を特定病原体除去(SPF)ネコで産生させ、1回目および2回目の接種後に収集した。ウイルス接種物はストックの力価に応じて様々であり、ネコ1匹当たり10〜10TCID50であった。最初にネコに接種を行い、3週間後に追加免疫し、次いで追加免疫から2週間後に血清用にそれを出血させた。12種の単離物には、F9、CFI−68、LSO12、JOK63、JOK92、ならびに野外単離物18、21、49、50、54、27、および11があった。野外単離物は、各株のキャプシドタンパク質配列の、超可変領域の配列の系統発生分析に基づいて選択した。最も分岐している単離物を試験用に選択した。
【0117】
血清を56℃で30分間熱非働化し、標準的な不変ウイルス−可変血清技術(constant virus−varying serum technique)(Griest 1979、Mahy 1996)を使用してその同種ウイルスに対する力価測定を行った。簡潔に述べると、培地(100〜150μl)を96穴組織培養プレートの各穴に添加した。血清(100〜150μl)を一番上の列の各穴に添加し(最初の1:2または1:4血清希釈物;F9およびLSO12は1:4)、多連式ピペッターで混合後(1:2希釈)100μlをプレートの下方へと移した。最後の100μlを捨てた。力価測定した同種ウイルス(50μl当たり200TCID50に希釈)50μlを各穴に添加し、COインキュベーター中でプレートを37℃で2時間インキュベートした。インキュベーション後、懸濁させたCRFK細胞の1:10希釈物50μlを各穴に添加した。適当な接種物が各穴に確実に添加されるように、希釈したウイルスを使用してウイルス力価測定プレートを構成した。培地150μlを含有する一番上の列中にウイルス50μlを使用し、プレートの残りは1穴当たり180μlを含有し、20μlを用いてプレートの下方へと10倍希釈を実施した。プレートを4日間インキュベートし、Karberの公式を使用して血清とウイルスの力価をどちらも計算した(血清の力価の場合、防御されなかった穴に対する防御された穴の割合を方程式中で使用した)。
【0118】
血清の力価測定のとき、TCID50は、50%中和の終点の希釈率と定義した(Griest 1979)。1抗体価(AU)は、試験培養物の50%で32〜320TCID50の同種ウイルスを中和することができる抗血清の最も高い希釈率と定義した。したがって、得られたTCID50は1AUと等しい。2.5、5、10および20AUの血清濃度に対してウイルス交差中和を実施した。
【0119】
B.ウイルス交差中和アッセイ。各ウイルス野外単離物、ならびにF9、LSO12、JOK63、JOK92、SA113およびCFI−68を、交差中和アッセイにおいて12種の各FCV抗血清に対して試験した。各ウイルスについて96穴プレートを5枚必要とした。各血清を2.5、5、10および20AUに希釈し、プレートの下方へと8個の複製物をそのプレート(プレート1枚当たり血清3種、合計でプレート4枚)および(血清力価測定と同様にして構成した)ウイルス力価測定プレートに入れた。最初に血清を20AUに希釈し、次いで2倍希釈を実施して2.5AUまで下げることによりDMEM中で抗血清希釈物を調製した。次いで各希釈物のアリコート(100μl)をプレート上の穴の各カラムに添加した。ウイルスを37℃で迅速に解凍し、それを氷上に置き、次いで1穴当たり200TCID50に希釈した(氷上で維持した)。一貫性を維持するために、ほとんどのウイルスストックで3ステップの希釈工程を使用し、どのステップでも1:100より高くはならなかった。希釈したウイルスストック(50μl)を血清プレートのすべての穴に添加し、前記に記載したように力価測定を行った。COインキュベーター中でプレートを37℃で2時間インキュベートし、その後周密状態まで予め増殖させたCRFK細胞懸濁液の1:10希釈物50μlを各穴に添加した。ピペットチップおよび貯蔵トラフは、プレート5枚の各セット後に交換した。4日後にプレートをスコア化した。一部の場合では、予め力価測定し予め希釈したウイルスを使用した。
【0120】
【表5−1】

【0121】
【表5−2】

【0122】
交差中和データの概要を表1−5に示す。各データ点は、アッセイを行った8個の複製穴を表す。「N」、「n」、または「−」は、防御されなかった穴に対する防御された穴の割合を表し、それは、交差中和の程度を示すものである。その同種ウイルスに対して試験した各単一特異性血清と対応する血清中和の結果を表中で太字表記している。これらの血清は完全に中和するはずであり、その大部分については中和する。少数の例外、最も顕著にはJOK63、JOK92および11は高いAU値で完全な中和を示すが、2.5AUでは示さない。これは、希釈の誤りに起因する可能性が高い。このデータ組の最も著しい結果は、血清FCV−21およびFCV−49、特に後者によって示された高度の交差中和である。これらの血清の交差中和のパターンはF9のものと類似しているように思われる。(F9のデータ組、ならびに20AUでのFCV−21およびFCV−49のデータ組が、血清の量が不十分であることにより不完全であることに留意されたい。)3種の血清(FCV−21、FCV−49、およびF9)間で中和パターンにいくらかの違いが認められるが、単離物11、38および39は、その3種のどれによっても一貫して中和されなかった。
【0123】
(実施例1−10)
2003年に単離されたFCVウイルスに対するFCV−21およびFCV−49抗血清の交差中和分析
この試験におけるFCV抗血清は、10〜10TCID50/mlのFCVをネコ(1群当たりネコ4〜5匹)に鼻内接種することによって生成した。同量のウイルスを使用して、3週間後に追加接種を実施した。追加免疫から2週間後に血清を収集し、それを56℃で30分間熱処理した。
【0124】
ワクチン接種した各ネコの血清試料を、26種の各FCV株(表1−6)に対する血清中和アッセイで使用した。血清試料を1:8に希釈し、その後体積600ulで1:16384まで連続2倍希釈(合計12回の希釈)を行った。600ul中で力価が50〜500TCID50/mlのFCVを、希釈した血清試料と混合し、それを室温で45分間インキュベートした。次いで試料200ulを、CRFK細胞を4連で播いた96穴プレートの各穴に移した。プレートを37℃、5%CO2で6日間インキュベートし、終点の中和力価を決定した。血清中和(SN)力価と誘発ウイルス逆力価はどちらもSpearman−Karberの方法(Spearman C、1908、Brit J Psychol 2:227〜242;Karber G、1931、Arch exp Path Pharmak 162:480〜487)によって計算した。
【0125】
>23および>15および>10の遮断力価を用いて血清中和データを分析した。その結果を表1−7に示す。そのデータから、FCV−21、FCV−49およびFCV26391−4が幅広い交差中和特性を有し、したがって現在のFCVワクチン株F9より良好なワクチンの候補であることが示唆される。
【0126】
【表6】

【0127】
【表7】

【0128】
(実施例1−11)
FCV−21を伴うFELOCELL4構成成分およびFCV−21を伴わないFELOCELL4構成成分でワクチン接種したネコの死亡率および臨床スコア
約8週齢の、家庭向けの短毛のネコに、他のFCV株であるFCV−21を伴うまたは伴わない、改変型生ネコ鼻気管支炎ウイルス[FHV]、カリシウイルス[FCV−F9]、汎白血球減少ウイルス[FP]およびオウム病クラミジアを含有するFELOCELL4(登録商標)構成成分でワクチン接種した。評価したワクチン接種法には以下のものがあった:最初に皮下ワクチン接種、その後21日目に皮下追加免疫(SQ/SQ);最初に皮下ワクチン接種、その後21日目に1回の経口追加免疫感作(SQ/経口);または最初に経口免疫感作、その後21日目に2回目の経口ワクチン接種。経口ワクチン接種は、口の中へのワクチンの投与によって行った。42日目に、約1mLの病原性全身性FCV−33585(3logのTCID50/mL)ですべてのネコを誘発した。疾患の臨床的徴候(体温、結膜炎の漿液性漏出、結膜炎の粘液膿性漏出、鼻炎の漿液性漏出、鼻炎の粘液膿性漏出、くしゃみ、可聴性ラ音、せき、開口呼吸、食欲不振、脱水症、1つの口腔潰瘍<4mm、複数の口腔潰瘍、口腔潰瘍>4mm、流涎、非出血性外部潰瘍、出血性外部潰瘍)について、誘発後の14日間すべてのネコをモニターした。カリシウイルスの病原性と一致する誘発後の重度の臨床的徴候を示すネコを安楽死させた。
【0129】
表1−8に示すように、新たな株FCV−21を加えると、FCV−F9が存在してもまたはしなくてもFELOCELL4の効果が著しく増大する。SQ/SQワクチン接種もSQ/経口ワクチン接種もFCV感染の防止に有効であると思われる。さらに、FELOCELL4およびFELOCELL3でFCV−21を加えF9を除いた経口/経口ワクチン接種でもFCV感染に対する効果が示された(FELOCELL3とは、オウム病クラミジアを含まないFELOCELL4である)。
【0130】
表1−9で、評価したワクチン接種法には、最初に皮下ワクチン接種、その後21日目および42日目に2回の経口追加免疫感作(SQ/経口/経口)があった。FCV−21を加えると、FELOCELL4中にFCV−F9を含んでもまたは含まなくても、死亡率と臨床スコアの両方が著しく低下することが示された。
【0131】
【表8】

【0132】
【表9】

【0133】
(実施例1−12)
FCV−21を伴うFELOCELL4構成成分およびFCV−21を伴わないFELOCELL4構成成分でワクチン接種したネコの血清の交差中和分析
実施例1−11に記載の試験における各ネコの血清試料を、2回目のワクチン接種から85での誘発までの間に収集した。試料を56℃で30分間熱処理し、前記の実施例1−10(表1−6)に記載した26種の各FCV株に対する血清中和アッセイで評価した。
【0134】
>23および>15の遮断力価を用いて血清中和データを分析し、2つの遮断力価の平均を計算した(Ave)。その結果を表1−10に示す。そのデータから、FCV−21を含有するすべてのワクチン製剤が旧来のFCV−F9株を含有するワクチンより幅広い交差中和特性を有していた(約60%対40%)ことが示唆される。この結果、中和されたFCV株の数が約50%増大した。
【0135】
【表10】

【0136】
表1−10にも示すように、新たな株FCV−21を加えると、FCV−F9が存在してもまたはしなくてもFELOCELL4の交差中和特性が著しく増大する。SQ/SQワクチン接種でもSQ/経口ワクチン接種でも幅広い交差中和特性が観察された。さらに、FELOCELL4およびFELOCELL3でFCV−21が存在するがF9が存在しない経口/経口ワクチン接種で交差中和特性の向上が示された。
【0137】
表1−11で、評価したワクチン接種法には、最初に皮下ワクチン接種、その後21日目および42日目に2回の経口追加免疫感作(SQ/経口/経口)があった。その結果から、FCV−21を加えると、FELOCELL4中にFCV−F9を含んでもまたは含まなくても、交差中和特性が著しく幅広くなった(約40%増大した)ことが示唆される。
【0138】
【表11】

【0139】
本発明の番号付き記載。本発明のさらなる記載および例。1.ネコカリシウイルスに対してネコを免疫感作するワクチンであって、FCV−21キャプシドタンパク質または単離FCV−21キャプシドタンパク質を含むワクチン。2.ネコカリシウイルスに対してネコを免疫感作するワクチンであって、FCV−21キャプシドタンパク質または単離FCV−21キャプシドタンパク質と、薬学的に許容できる担体とを含み、前記キャプシドタンパク質が、タンパク質配列(配列番号13)または少なくとも約91.2%、95%もしくは99%の同一性を有する配列を含み、免疫応答を生じさせるのに有効な量提供されるワクチン。3.ネコカリシウイルスに対してネコを免疫感作するDNAワクチンであって、FCV−21キャプシドタンパク質または単離FCV−21キャプシドタンパク質をコードする核酸配列を含み、前記DNAが、配列(配列番号12)または少なくとも約78.7%もしくは79.2%の配列同一性を有し、保存的置換を許容する配列を含むDNAワクチン。4.ネコカリシウイルスに対してネコを免疫感作するワクチンであって、FCV−49キャプシドタンパク質または単離FCV−49キャプシドタンパク質を含み、前記キャプシドタンパク質がFCV−49株由来のタンパク質配列を含むワクチン。5.ネコカリシウイルスに対してネコを免疫感作するワクチンであって、FCV−49キャプシドタンパク質または単離FCV−49キャプシドタンパク質と、薬学的に許容できる担体とを含み、前記キャプシドタンパク質は、タンパク質配列(配列番号15)または少なくとも約92.7%、95%もしくは99%の同一性を有する配列を含み、免疫応答を生じさせるのに有効な量提供されるワクチン。6.ネコカリシウイルスに対してネコを免疫感作するDNAワクチンであって、FCV−49キャプシドタンパク質または単離FCV−49キャプシドタンパク質をコードする核酸配列を含み、前記DNAが、配列(配列番号14)または少なくとも約78.9%、すなわち79.4%(78.9+0.5)の配列同一性を有し、保存的置換を許容する配列を含むDNAワクチン。7.ネコカリシウイルスに対してネコを免疫感作するワクチンであって、FCV−26391−4キャプシドタンパク質または単離FCV−26391−4キャプシドタンパク質を含み、前記キャプシドタンパク質がFCV−26391−4株由来のタンパク質配列を含むワクチン。8.ネコカリシウイルスに対してネコを免疫感作するワクチンであって、FCV−26391−4キャプシドタンパク質と、薬学的に許容できる担体とを含み、前記キャプシドタンパク質が、タンパク質配列(配列番号17)または少なくとも約91.8%、95%もしくは99%の同一性を有する配列を含み、免疫応答を生じさせるのに有効な量提供されるワクチン。9.ネコカリシウイルスに対してネコを免疫感作するDNAワクチンであって、FCV−26391−4キャプシドタンパク質または単離FCV−26391−4キャプシドタンパク質をコードする核酸配列を含み、前記DNAが、配列(配列番号16)または少なくとも約78.4%、すなわち78.9%(78.4+0.5)の配列同一性を有する配列を含むDNAワクチン。10.ポリヌクレオチドが本質的に配列番号12、14、16からなる群から選択される、請求項1から3のいずれかに記載のワクチン。11.アジュバントを含有するワクチン、FCV構成成分が生であるワクチン、FCV構成成分を弱毒化したワクチン、FCV構成成分を不活性化したワクチンのうち単独またはいずれかの組合せをさらに含み、FCV−F9、FCV−LLK、FCV−M8、FCV−255、およびFCV−2280からなる群から選択される少なくとも1つの他のネコカリシウイルス株を含んでよい、請求項1から3のいずれかに記載のワクチン。12.ネコヘルペスウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、オウム病クラミジア、およびネコパルボウイルス、狂犬病ウイルスおよび気管支敗血症菌からなる群から選択される少なくとも1つの他のネコ病原体を含む、請求項1、4、および7に記載のワクチン。13.免疫応答を生じさせるのに有効な量の、配列番号13、15、または17と93%以上の同一性を有するポリペプチドからなる群から選択されるFCVキャプシドタンパク質のヌクレオチド配列であって、FCV単離物が株213−95でなく、核酸配列が異種プロモーター配列と作動的に連結しているヌクレオチド配列と、薬学的に許容できる担体とを含む、ネコカリシウイルスに対してネコを免疫感作するワクチン。14.ヌクレオチド配列が本質的に配列番号12、14および16からなる群から選択される、請求項13に記載のワクチン。15.ヌクレオチド配列が、プラスミド、組換えウイルスベクターのいずれかの中にある、請求項13に記載のワクチン。16.組換えウイルスベクターが、ネコヘルペスウイルス、アライグマポックスウイルス、カナリアポックスウイルス、アデノウイルス、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス、およびワクシニアウイルスからなる群から選択される、請求項13に記載のワクチン。17.獣医学的に許容できる賦形剤の媒体と、本明細書において23、26、41、44および56と呼ばれるモノクローナル抗体から選択されるモノクローナル抗体と結合するFCVの単離株とを含む免疫原性組成物。18.獣医学的に許容できる賦形剤の媒体と、本明細書において23、26、41、44および56と呼ばれるモノクローナル抗体から選択されるモノクローナル抗体と選択的に結合するFCVの単離株とを含む免疫原性組成物。19.FCV株が不活性化され、前記FCV株がワクチンであり、アジュバントを含む、請求項17および18に記載の免疫原性組成物。20.ネコカリシウイルスに対してネコを免疫感作する方法であって、有効投与量の請求項1から14のいずれかに記載のワクチンをネコに投与するステップを含み、ワクチンがさらにアジュバントを含む方法。
【0140】
第2部
下記のこの節では、ウイルスに対して動物を、具体的にはカリシウイルスに対してネコを免疫感作する方法についての詳細な情報を提供する
別段示さない限り、下記の開示では上記および下記で示す定義を使用する。
【0141】
ワクチンで動物を、具体的にはネコカリシウイルス(FCV)に対してネコを治療し免疫感作するための方法および材料を本明細書に記載する。その方法は、免疫応答を誘導し、具体的にはネコにおいてFCVに対する免疫応答を誘導することができる、治療有効量の第1および第2のワクチンをネコに投与するステップを含む。第1のワクチンは通常非経口投与するが、ある状況では経口投与することもでき、その一方で、第2のワクチンは、第1のワクチンの投与後N日目に経口または口鼻投与する。これらのワクチンは、最初に経口投与した場合に通常は口腔病変を引き起こすので、通常は最初に非経口投与する。驚くべきことに、非常に安全かつ有効であるので第1の経口投与、その後の第2の経口投与として投与することができるFCV−21、FCV−49およびFCV26391−4株をここで開示する。ここで、Nは3〜120(両端を含む)の整数であるが、通常は7〜42(両端を含む)、または14〜28(両端を含む)の整数であり、約3週間が好ましく、約2〜4週間も好ましい。あるいは、ネコに約1:6、1:9、1:12、1:15、1:18またはそれ以上のFCV血清中和力価が発生した後に第2のワクチンを投与することもできる。
【0142】
その方法はまた、第1のワクチンまたは第2のワクチンの投与後M日目の、FCVワクチンの1回または複数回のさらなる非経口、経口または口鼻投与を含むこともでき、Mは1〜120(両端を含む)の整数である。したがって、代表的なワクチン接種法には、(1)第1のFCVワクチンの皮下投与、その後第2のFCVワクチンの経口投与;(2)第1および第3のFCVワクチンの連続皮下投与、その後第2のFCVワクチンの経口投与;ならびに(3)第1のFCVワクチンの皮下投与、その後第2および第3のFCVワクチンの連続経口投与がある。
【0143】
上記に記載のように、第1のワクチンを非経口(例えば皮下)投与し、第2のワクチンを経口または口鼻投与し、任意選択の第3のワクチンは非経口、経口または口鼻投与してもよい。シリンジ、ドロッパー、無針注射機器などを含めた任意の機器を使用して、ワクチンを投与することができる。口鼻投与では、カニューレと適合するシリンジを使用して、ネコの鼻または口の中にワクチンの液滴を入れることができる。
【0144】
その方法は、第1のワクチンが非経口投与に適合し第2のワクチンが経口または口鼻投与に適合する限り、ネコにおいてFCVに対する免疫応答を誘導することができる任意のワクチンを使用することができる。上記で述べた通り、任意選択の第3のワクチンは、非経口、経口、または口鼻投与に適合する。第1、第2、および任意選択の第3のワクチンは同じでもよく、または異なるものでもよく、それぞれが独立に、FCVの1つまたは複数の株に由来する1つまたは複数の抗原を含む。したがって、有用なワクチンには、生ウイルスワクチン、改変型生ウイルスワクチン、および不活性化ウイルスワクチンがある。生および改変型生FCVワクチンは、ネコにおいて疾患を引き起こさず、非病原性の型で単離され、または適切な細胞系統での連続的な継代または紫外線もしくは化学的突然変異原への曝露を含めた周知の方法を使用して弱毒化されたFCV株を含有する。不活性化または死滅FCVワクチンは、ホルマリン、ベータプロプリオラクトン、二成分エチレンイミンなどでの処理を含めた既知の方法で不活性化されたFCV株を含有する。例示的なワクチンには、FCV−F9、FCV−M8、FCV−255、FCV−2280、FCV−21、FCV−49、FCV26391−4などから単独でまたは組み合わせて選択される非病原性株を含有するものがある。
【0145】
FCVの1つまたは複数の株に由来する他の有用なワクチンには、組換えワクチンおよびDNAワクチン(すなわちサブユニットワクチン)がある。組換えワクチンには組換えウイルスベクターがあり、それぞれが、FCVの株に由来する抗原をコードする核酸を含有する。そのようなベクターは、FCV株に由来する抗原(例えば、キャプシドタンパク質)をコードするcDNAを、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アデノウイルスなどを含めた非病原性ウイルスのゲノム中に挿入することによって調製することができる。ウイルスベクターでは、cDNAは、抗原をコードする配列の5’末端で真核生物転写プロモーターと作動的に連結し、抗原をコードする配列の3’末端で真核生物終結シグナルおよびポリ(A)シグナルと作動的に連結し、その結果、転写プロモーターおよび終結配列が抗原の発現を制御する。有用な転写プロモーターには、ラウス肉腫ウイルス長末端反復配列プロモーター(RSV−LTR)、サイトメガロウイルス(CMV)主要前初期プロモーター、シミアン空胞化ウイルス40(SV40)T抗原プロモーター、およびメタロチオネインプロモーターなどの誘導性プロモーターがある。組換えFCVワクチンの論述については、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、Wardleyらの米国特許第5,716,822号を参照されたい。
【0146】
DNAワクチンには、ネコにおいてFCVに対する免疫応答を誘発するFCVキャプシドタンパク質やその特異的免疫原性断片などのFCV抗原をコードする核酸配列を有するDNA分子(例えば、プラスミド)がある。核酸コード配列は、ネコの細胞中に接種したときにDNAの発現を可能にする転写プロモーターと作動的に連結している。有用なプロモーターには、RSV−LTRプロモーター、CMV主要前初期プロモーター、およびSV40T抗原プロモーターがある。さらに、核酸は、FCV抗原をコードする配列の終結コドンで、またはその近くで、転写終結シグナルおよびポリ(A)認識シグナルを含む核酸断片と作動的に連結することができる。DNAワクチンの論述については、Felgnerらの米国特許第5,580,859号、米国特許第5,589,466号、および米国特許第5,703,055号を参照されたい。
【0147】
他の有用なワクチンには、単離および精製されたFCVキャプシドタンパク質やキャプシドタンパク質の免疫原性断片などの1つまたは複数のサブユニット抗原を含有するものがある。サブユニット抗原は、上記に記載の方法を使用してin vitroで抗原を産生する組換え発現ベクター中で産生することができる。得られた抗原をその後単離および精製する。有用な発現ベクターには、細菌、酵母および真菌を含めた様々な微生物、ならびに哺乳動物細胞や昆虫細胞などの真核生物がある。他の有用な発現ベクターには、アデノウイルス、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、セムリキ森林ウイルス、バキュロウイルス、バクテリオファージ、シンドビスウイルスやセンダイウイルスなどのウイルスがある。微生物中でのFCVサブユニット抗原の発現によって、商業規模の発酵技術を使用した抗原タンパク質の生産が可能となる。ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、遠心分離などを含めた様々な方法を使用して、抗原を単離および精製することができる。
【0148】
1つまたは複数のワクチンはまた、FCVの他に、ネコヘルペスウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、ネコ汎白血球減少ウイルス、およびネコクラミジアを含めた1つまたは複数の病原体に対してネコを免疫感作する抗原をも含有する。
【0149】
ワクチンの他の構成成分には、担体、溶媒、および希釈剤を含めた薬学的に許容できる賦形剤、等張剤、緩衝化剤、安定化剤、保存剤、免疫調節作用物質(例えば、インターロイキン、インターフェロンおよび他のサイトカイン)、血管収縮剤、抗菌剤、抗真菌剤などがあり得る。典型的な担体、溶媒、および希釈剤には、水、食塩水、デキストロース、エタノール、グリセロールなどがある。代表的な等張剤には、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、ラクトースなどがある。有用な安定化剤には、ゼラチン、アルブミンなどがある。
【0150】
ワクチンはまた、抗原に対する免疫応答を高める1つまたは複数のアジュバントを含んでもよい。代表的なアジュバントには、フロイント完全アジュバントやフロイント不完全アジュバントなどの油に基づくアジュバント、ミコール酸に基づくアジュバント(例えば、トレハロースジミコレート)、細菌リポポリサッカリド、ペプチドグリカン(すなわち、ムレイン、ムコペプチド、またはN−Opacaなどの糖タンパク質、ムラミルジペプチドまたはその類似体)、プロテオグリカン(例えば、肺炎桿菌から抽出されるもの)、レンサ球菌製剤(例えば、OK432)、BIOSTIM(登録商標)(例えば、01K2)、Iscom(例えば、欧州特許出願EP109942、EP180564およびEP231039を参照)、水酸化アルミニウム、サポニン、ジエチルアミノエチル−デキストラン、中性油(例えば、ミグリオル)、植物油(例えば、ラッカセイ油)、リポソーム、PLURONIC(登録商標)ポリオールがある。他のアジュバントには、とりわけ、RIBIアジュバント系、ミョウバン、水酸化アルミニウムゲル、コレステロール、水中油型乳剤、油中水型乳剤、ブロックコポリマー(CytRx、ジョージア州Atlanta)、SAF−M(Chiron、カリフォルニア州Emeryville)、AMPHIGEN(登録商標)アジュバント、サポニン、Quil A、QS−21(Cambridge Biotech Inc.、マサチューセッツ州Cambridge)、GPI−0100(Galenica Pharmaceuticals,Inc.、アラバマ州Birmingham)もしくは他のサポニン分画、モノホスホリル脂質A、Avridine脂質−アミンアジュバント、大腸菌由来の熱不安定性エンテロトキシン(組換えまたはその他によるもの)、コレラ毒素、またはムラミルジペプチドがある。
【0151】
FCVワクチンの投与サイズは通常、約1mL〜約2mL(両端を含む)である。各投与は治療有効量の1つまたは複数のFCV抗原を含有し、それはネコの齢数および一般状態、投与経路、FCV抗原の性質、ならびに他のファクターに応じて様々となり得る。改変型生ウイルスまたは弱毒化ウイルスを含有するワクチンでは、治療有効投与量は一般に約10TCID50〜約10TCID50(両端を含む)である。FCVキャプシドタンパク質などのサブユニット抗原を含有するワクチンでは、治療有効投与量は一般に約10μg〜約100μg(両端を含む)である。ワクチンの物理的化学的特性が改変されるようにワクチンの他の構成成分を調整することができる。例えば、アジュバントは通常、投与量1mLのうち約25μg〜約1000μg(両端を含む)を占める。同様に、抗生物質は通常、投与量1mLのうち約1μg〜約60μg(両端を含む)を占める。
【0152】
投与経路、貯蔵の必要性などに応じて、様々な形態でFCVワクチンを提供する。例えば、ワクチンは、シリンジ、ドロッパーなどでの使用に適した水溶液剤もしくは分散剤として調製することもでき、または使用前に食塩水、HEPES緩衝液などの中で再調製する凍結乾燥粉末剤として調製することもできる。
【0153】
第2部の実施例および表
下記の実施例は、例示的かつ非限定的であるものとし、本発明の少数の具体的な実施形態を表す。
【0154】
(実施例2−1)
FELOCELL(登録商標)4およびFEL−O−VAX(登録商標)での皮下/経口ワクチン接種法
4〜5ヶ月齢の、家庭向けの短毛のネコに、FELOCELL(登録商標)4(Pfizer Inc.;改変型生ネコ鼻気管支炎ウイルス[FHV]、カリシウイルス[FCV]、汎白血球減少ウイルス[FP]およびオウム病クラミジア)を、FEL−O−VAX(登録商標)(Fort Dodge;死滅FHV、FCV、FPおよびオウム病クラミジア)または滅菌希釈剤(対照群)とともにワクチン接種した。評価したワクチン接種法には以下のものがあった:最初に皮下ワクチン接種、その後21日目および42日目に皮下追加免疫(SQ/SQ/SQ);最初に皮下ワクチン接種、その後21日目および42日目に2回の経口追加免疫感作(SQ/経口/経口);または最初に経口ワクチン接種、その後21日目に2回目の皮下ワクチン接種、および42日目に経口追加免疫。投与量はすべて1mLであった。経口ワクチン接種は、口の中へのワクチンの投与によって行った。99日目に、約3.5mLの病原性全身性FCV−33585(4.8logのTCID50/mL)ですべてのネコを誘発した。誘発は、缶入りネコ用飼料で投与量約3mL、点鼻注入により0.05mLを投与することによって行った。疾患の臨床的徴候について、誘発後の14日間すべてのネコをモニターした。カリシウイルスの病原性と一致する誘発後の重度の臨床的徴候を示すネコを安楽死させた。
【0155】
表2−1に示すように、SQ/経口/経口の投与法を介してワクチン接種した群は死亡率がわずか10%であったが、対照群は死亡率が90%であった。SQ/SQ/SQの投与法を介してワクチン接種した群は死亡率が50%であったが、SQ/SQ/経口の投与法を介してワクチン接種した群は死亡率が20%であった。これらの結果から、SQワクチン接種を行い、その後経口追加免疫を行うと、病原性FCV誘発に対するFELOCELL(登録商標)4ワクチン接種の有効性が高くなることが示唆される。経口ワクチン接種を投与法の一部にしたとき死亡率が50%(SQ/SQ/SQ)から10%(SQ/経口/経口)または20%(SQ/SQ/経口)に低下しただけでなく、表2−2に示すように、皮膚病変(SL)、食欲不振(IA)、抑うつ(DP)、口腔潰瘍(OU)、歩行困難(LN)、くしゃみ(SZ)、鼻漏(ND)や流涙(WE)などの臨床的徴候の重傷度が同様に低下した。
【0156】
【表12】

【0157】
【表13】

【0158】
(実施例2−2)
SQ/経口ワクチン接種後の平均FCV血清中和力価
実施例2−1のネコから採取した血液試料を、0、21、42、63、98および113日目の試験日に収集し、血清中和(SN)アッセイでFCVを中和する能力についてそれを評価した。血清試料を1:8に希釈し、その後体積600μlで1:16384まで連続2倍希釈(合計12回の希釈)を行った。600μl中で力価が50〜500TCID50/mLのネコカリシウイルスを、希釈した血清試料と混合し、それを室温で45分間インキュベートした。次いで希釈した各試料200μlを、Crandelネコ腎(CrFK)細胞を4連で播いた96穴プレートの別々の穴に移した。プレートを37℃、5%COで6日間インキュベートし、そのとき終点の中和力価を決定した。血清中和(SN)力価と誘発ウイルス逆力価はどちらもSpearman−Karberの方法を使用して計算した。C.Spearman、Brit.J.Psychol.2:227〜242(1908)およびG.Karber、Arch.Exp.Path.Pharmak.162:480〜487(1931)を参照されたい。表2−3に示すように、SQ/経口/経口またはSQ/SQ/経口のワクチン接種法を介して投与したFELOCELL(登録商標)4は、FCV SN力価が著しく高くなった。これらのデータは、実施例2−1で記載した死亡率の著しい低下と相関する。
【0159】
【表14】

【0160】
(実施例2−3)
ネコ汎白血球減少ウイルスに対するFELOCELL(登録商標)4およびFEL−O−VAX(登録商標)のSQ/経口投与の有効性
実施例2−1のネコの血清試料について、その平均FP力価のアッセイも行った。表2−4に示すように、すべてのネコが試験開始時に血清陰性であった。その後、対照群の平均力価は試料採取の合間の期間ずっと1のままであった(21および42日目)。しかし、他の4つのワクチン接種群の平均力価は著しく上昇した。
【0161】
【表15】

【0162】
(実施例2−4)
様々な投与経路によってFELOCELL(登録商標)4でワクチン接種したネコの臨床症状
動物の鼻孔中への液滴の点滴注入によって、FELOCELL(登録商標)4の口鼻(ON)投与を行った。表2−5で示すように、表2−5で示す投与法:皮下のワクチン接種および追加免疫(SQ/SQ);皮下ワクチン接種および口鼻追加免疫(SQ/ON);または口鼻のワクチン接種および追加免疫(ON/ON)に従って、6〜7ヶ月齢のネコ10匹の群(T1、T2、T3)にワクチン接種し、21日目に追加免疫した。首の右側にワクチンを皮下投与し(1mL)、口鼻投与は、各鼻孔中にワクチンを0.5mL送達することによるものであった。1日目から開始して、一般健康状態についてすべてのネコを毎日観察した。
【0163】
【表16】

【0164】
表2−5に示すように、どちらも口鼻でワクチン接種を受けているネコは、鼻潰瘍(NU)、口腔潰瘍(OU)、持続性のくしゃみ(SZ)、鼻漏(ND)、流涙(WE)および一過性の食欲不振(IA)を含めて高レベルの臨床症状を有していた。しかし、SQ/ONの投与法を介してワクチン接種したネコは、ON/ONワクチン接種ネコより低い臨床症状を示し、鼻潰瘍、口腔潰瘍、鼻漏、または流涙を示さなかった。また、SQ/ON群の対象は、ON/ON群のネコより少ないくしゃみも示した。SQ/ON群の安全性は、SQ/SQ群と類似していた。
【0165】
(実施例2−5)
FELOCELL(登録商標)4抗原に対する血清学的応答についての異なるワクチン接種経路の効果
実施例2−4に記載の試験に登録されたネコの血清試料について、FELOCELL(登録商標)4ワクチン中に存在する様々なウイルス抗原に対する血清学的反応性のアッセイを行った。0、21および42日目の試験日に、FCV、FHVおよびFPに対する平均血清中和抗体力価を決定した。表2−6に示すように、3つすべてのワクチン接種法により、FPに対する強い免疫応答が生じた。FHVに対する免疫応答は、アッセイの困難性によりわずかに検出可能であった。しかし、FCVに対する血清中和力価は、SQ/SQ群と比較して、ON/ONおよびSQ/ON群で著しく高かった。これらの結果から、ON/ONおよびSQ/ON群のネコは、病原性FCVの誘発に対して防御されるが、SQ/SQ群は防御されない可能性があることが示唆される。
【0166】
【表17】

【0167】
(実施例2−6)
SQまたはON経路を介して投与したFCV−F9に対する血清中和力価
1群当たり6匹のネコを、FELOCELL(登録商標)4ワクチン中に存在するFCV−F9抗原で、SQまたはONワクチン接種した。最初のワクチン接種から3週間後に、すべてのネコを、前記と同じ投与経路を介して同じ抗原で追加免疫した。投与量はすべて1mLであった。追加免疫感作から3週間後に血清試料を収集した。表2−7に示すように、26種のFCV株のパネルに対する血清中和力価をこれらの試料について決定した。そのパネルに選択されたFCV株は、(そのキャプシドの超可変領域の配列によって決定される)遺伝的多様性、ならびに地理的分布に基づいて選択された。さらに、各株の病原性の表現型も考慮された。F9でONワクチン接種したネコの血清試料は、SQワクチン接種したネコの試料と比較して、26個の構成要素のパネルの中でよりFCV株を中和した。中和力価の遮断値として23を使用すると、ONワクチン接種ではパネルの構成要素の26%で遮断値以上の力価となったが、SQワクチン接種では16%しか基準を満たさなかった。力価遮断値を15にすると、ONワクチン接種ではパネルの構成要素の32%で遮断値以上となったが、SQでは17%でしかならなかった。
【0168】
【表18】

【0169】
(実施例2−7)
FELOCELL(登録商標)4またはFELOCELL(登録商標)3構成成分および改変型生FCV−21の2回の投与でワクチン接種したネコの死亡率および臨床スコア
約8週齢の、家庭向けの短毛のネコに、改変型生ネコ鼻気管支炎ウイルス(FHV)、汎白血球減少ウイルス(FP)、オウム病クラミジア、ならびに(1)FCV−F9(FELOCELL(登録商標)4またはFELOCELL(登録商標)3)、(2)FCV−F9およびFCV−21(FELOCELL(登録商標)4+FCV−21、またはFELOCELL(登録商標)3+FCV−21)、または(3)FCV−21(FELOCELL(登録商標)4AまたはFELOCELL(登録商標)3A)を含有するワクチンを投与した。ワクチン接種法には以下のものがあった:最初に皮下ワクチン接種、その後21日目に皮下追加免疫(SQ/SQ);最初に皮下ワクチン接種、その後21日目に1回の経口追加免疫感作(SQ/経口);または最初に経口免疫感作、その後21日目に2回目の経口ワクチン接種(経口/経口)。様々な投与法内での各ネコ(T1〜T10の群、1群当たりネコ10匹)にワクチン1mLを投与した。経口ワクチン接種は、口の中へのワクチンの投与によって行った。42日目に、約1mLの病原性全身性FCV−33585(3logのTCID50/mL)ですべてのネコを誘発した。誘発後の14日間、体温の上昇、結膜炎の漿液性漏出、結膜炎の粘液膿性漏出、鼻炎の漿液性漏出、鼻炎の粘液膿性漏出、くしゃみ、可聴性ラ音、せき、開口呼吸、食欲不振、脱水症、1つの口腔潰瘍<4mm、複数の口腔潰瘍、口腔潰瘍>4mm、流涎、非出血性外部潰瘍、および出血性外部潰瘍を含めた疾患の臨床的徴候について、すべてのネコをモニターした。カリシウイルスの病原性と一致する誘発後の重度の臨床的徴候を示すネコを安楽死させた。
【0170】
表2−8に示すように、SQ/SQワクチン接種と比較したとき、SQ/経口ワクチン接種法では、FELOCELL(登録商標)4でワクチン接種したネコで死亡率が44%から10%に低下し、中央臨床スコアが12から5.5に改善された。さらに、FCV−21株をFELOCELL(登録商標)3およびFELOCELL(登録商標)4に加えると誘発後死亡しなかった。FELOCELL(登録商標)3およびFELOCELL(登録商標)4のFCV−F9株をFCV−21株に置換すると、経口/経口ワクチン投与法でもFCV−F9とFCV−21をどちらも含有するワクチンと同様の効果が得られた。
【0171】
【表19】

【0172】
(実施例2−8)
FELOCELL(登録商標)4構成成分および改変型生FCV−21の3回の投与でワクチン接種したネコの死亡率および臨床スコア
約8週齢の、家庭向けの短毛のネコに、改変型生ネコ鼻気管支炎ウイルス(FHV)、汎白血球減少ウイルス(FP)、オウム病クラミジア、ならびに(1)FCV−F9(FELOCELL(登録商標)4)、(2)FCV−F9およびFCV−21(FELOCELL(登録商標)4A)、または(3)FCV−21(FELOCELL(登録商標)4B)を含有するワクチンを投与した。各場合で、ネコに最初に皮下ワクチン接種、その後21日目および42日目に連続経口投与を行った(SQ/経口/経口)。様々な投与法内での各ネコ(T1〜T4の群、1群当たりネコ10匹)にワクチン1mLを投与した。経口ワクチン接種は、口の中へのワクチンの投与によって行った。63日目に、約1mLの病原性全身性FCV−33585(3logのTCID50/mL)ですべてのネコを誘発した。誘発後の14日間、実施例2−7と同様に疾患の臨床的徴候についてすべてのネコをモニターした。カリシウイルスの病原性と一致する誘発後の重度の臨床的徴候を示すネコを安楽死させた。表2−9に示すように、誘発後の死亡率および臨床スコアによって測定される三重投与法の効果は、実施例2−7に記載の二重投与法の効果と同等である。
【0173】
【表20】

【0174】
(実施例2−9)
FCV−21を伴うFELOCELL4構成成分およびFCV−21を伴わないFELOCELL4構成成分でワクチン接種したネコの血清の交差中和分析
実施例2−7に記載の試験における各ネコの血清試料を、2回目のワクチン接種から誘発までの間に収集した。試料を56℃で30分間熱処理し、前記の実施例1−10(表1−6)に記載した26種の各FCV株に対する血清中和アッセイで評価した。
【0175】
>23および>15の遮断力価を用いて血清中和データを分析し、2つの遮断力価の平均を計算した(Ave)。その結果を表2−10に示す。そのデータから、(FCV−F9を含有する)FELOCELL4の交差中和特性は、投与経路がSQ/SQであれSQ/経口であれ一定のままであることが示唆される。しかし、FCV−21を加えると、ワクチンをSQ/SQまたはSQ/経口で投与したときに交差中和特性が大いに向上する。さらに、(FCV−21を含有するが、FCV−F9は含有しない)FELOCELL4Aでは、SQ/SQ、SQ/経口で、また経口/経口のワクチン接種経路でも交差中和特性が向上する。
【0176】
【表21】

【0177】
表2−11で、評価したワクチン接種法には、最初に皮下ワクチン接種、その後21日目および42日目に2回の経口追加免疫感作(SQ/経口/経口)があった。その結果から、FCV−21を加えると、FELOCELL4中にFCV−F9を含んでもまたは含まなくても、交差中和特性が著しく幅広くなった(約40%増大した)ことが示唆される。
【0178】
【表22】

【0179】
FCV株FCV−21、FCV−49およびFCV26391−4に関連するペプチド、タンパク質、およびDNAとして本明細書に記載したワクチンを用いて、上記の実施例2−4および表2−5で述べた、以前に開示されている副作用を伴うことなく、第1の場合に経口または口鼻(ON)投与を、その後第2の経口または口鼻投与を実施することができるという、本発明者らの知見も開示する。
【0180】
本明細書および添付した特許請求の範囲において、「1つの(a)」、「1つの(an)」や「その(the)」などの単数形の冠詞は、文脈上別段にはっきりと示されない限り、1つの対象または複数の対象を指す可能性があることに留意されたい。したがって、例えば、「化合物(a compound)」を含有する組成物の指すものは、単一の化合物または2つ以上の化合物を含む可能性がある。
【0181】
上記の実施例および記載は、例示的であるものとし、限定的なものでないことを理解されたい。上記の記載を読んだ後、多数の実施形態が当業者には明らかとなるであろう。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲に権利がある完全な範囲の同等物とともに、添付した特許請求の範囲を参照して決定されるべきである。特許、特許出願および刊行物を含めたすべての論説および参照文献の開示は、参照によりその全体がすべての目的で本明細書に組み込まれている。
【0182】
表2−1〜2−9において、Felocell(登録商標)4、Felocell4、もしくはFELOCELL4またはこれらの語の後に「3」の数が続くものはワクチンであり、名称Felocellの任意の変種は、Pfizerによって所有されている。Felocell4Aの指すものは、FCV−F9を含まないFelocell4であり、Felocell3Aの指すものは、FCV−F9を含まないFelocell3である。これらの試験で使用した実際の抗原が市販の製品由来でなく、むしろ研究目的のみの小さなバッチで、しかし市販の製品と同じ形で抗原が調製されたことに留意されたい。
【0183】
本明細書で開示され、特許請求されているすべての組成物および/または方法は、本開示に照らして、過度な実験を行うことなく作製し実行することができる。本発明の組成物および方法を好ましい実施形態の点から説明してきたが、本発明の概念、趣旨および範囲を逸脱することなく、本明細書に記載の組成物および/または方法に、方法のステップまたはステップの順序に変更を当てはめることができることが当業者には明らかとなるであろう。より具体的には、化学的にも生理的にも関連する特定の作用物質で本明細書に記載の作用物質を置換することができ、その一方で、同じまたは類似した結果が実現されることが明らかとなるであろう。当業者にとって明らかであるそのような類似した置換および改変はすべて、添付した特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨、範囲および概念の中にあるとみなされる。
【0184】
本発明の番号付き記載。さらなる記載および例。1.ネコカリシウイルス(FCV)に対してネコを免疫感作する方法であって、治療有効量の第1および第2のワクチンをネコに投与するステップを含み、第1および第2のワクチンがFCVに対するネコの免疫応答を誘導するように適合されており、第1のワクチンを非経口投与し、第2のワクチンを経口または口鼻投与し、第1のワクチンの投与後N日目に第2のワクチンを投与し、Nが3〜120日(両端を含む)の整数であり、約3週間および約2〜4週間のNも記載される方法。2.ワクチンがそれぞれ独立に生ウイルスワクチン、改変型生ウイルスワクチン、不活性化ウイルスワクチン、組換えワクチン、DNAワクチン、またはサブユニット抗原ワクチンを単独でまたは組み合わせて含む、請求項1に記載の方法。3.少なくとも1つのワクチンが、FCVの1つまたは複数の株を含む、請求項1に記載の方法。4.FCVの1つまたは複数の株が、F9もしくはFCV−21またはF9およびFCV−21を含む、請求項3に記載の方法。5.ワクチンが同じものである、請求項1に記載の方法。6.少なくとも1つのワクチンがまた、ネコヘルペスウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、ネコ汎白血球減少ウイルス、およびネコクラミジアから選択される1つまたは複数の病原体に対する免疫応答の誘導にも適合する、請求項1に記載の方法。7.第1のワクチンを皮下投与する、請求項1に記載の方法。8.第2のワクチンを経口または口鼻投与する、請求項1に記載の方法。9.ネコに約1:6またはそれ以上のFCV血清中和力価が発生した後に第2のワクチンまたはその後のワクチンを投与する、請求項1に記載の方法。10.治療有効量の第3のワクチンをネコに投与するステップをさらに含み、第3のワクチンがFCVに対するネコの免疫応答を誘導するように適合されており、第1または第2のワクチンの投与後M日目にそれを非経口、経口、または口鼻投与し、Mが1〜120日(両端を含む)の整数である、請求項1から9のいずれかに記載の方法。11.第3のワクチンを皮下投与する、請求項10に記載の方法。12.ネコカリシウイルス(FCV)に対してネコを免疫感作する方法であって、治療有効量の第1および第2のワクチンをネコに投与するステップを含み、第1および第2のワクチンがFCVに対するネコの免疫応答を誘導するように適合されており、第1のワクチンを経口または口鼻投与し、第2のワクチンを経口または口鼻投与し、第1のワクチンの投与後N日目に第2のワクチンを投与し、Nが3〜120(両端を含む)の整数であり、約3週間および約2〜4週間のNも指定される方法。13.FCV株が、FCV−21、FCV−49、FCV26391−4からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。14.動物に免疫感作する方法であって、任意選択の第3のワクチンとともに、治療有効量の第1および第2のワクチンを動物に投与するステップを含み、第1および第2および任意選択の第3のワクチンが免疫応答を誘導するように適合されており、第1のワクチンを非経口または経口投与し、第2のワクチンを経口または口鼻投与し、第1のワクチンの投与後N日目に第2および任意選択の第3のワクチンを投与し、Nが3〜120(両端を含む)の整数であり、約3週間および約2〜4週間のNも指定され、約1年のM期間を含むワクチンの任意選択の年1回の追加免疫投与を含んでよい方法。
【0185】
第3部
この部では、ネコパルボウイルス(FPV)およびネコヘルペスウイルス(FHV)に対して動物を免疫感作するための方法および組成物を提供する
ネコカリシウイルス(FCV)によって引き起こされるネコ呼吸器疾患、ネコパルボウイルス(FPV)によって引き起こされるネコ汎白血球減少、ネコ鼻気管支炎ウイルスとも呼ばれているネコヘルペスウイルス(FHV)によって引き起こされるネコウイルス性鼻気管支炎に対してワクチンで動物を、具体的にはネコを治療し免疫感作するための方法および材料を本明細書に記載する。記載した形でネコに与えたとき、FPVおよび/またはFHVワクチンの両方の有効な単回経口および経口/経口および皮下/経口送達を可能にするワクチンの新規の組合せを下記に記載する。
【0186】
単回経口とは、ワクチン接種された動物に有効な防御を付与する単回経口送達を意味する。経口/経口とは、上記の第2部での記載と同様に2回行う経口送達を意味し、すなわちどちらかの経口の後いくらかの期間が続き、次いで経口経路を介して別の投与を行い、皮下/経口とは、皮下で行う第1の投与の後いくらかの期間が続き、次いで経口経路を介して別の投与を行うことである。
【0187】
本明細書に記載するものは、改変型生クラミジアワクチン、または改変型生クラミジアワクチンの任意の構成成分、例えば増殖培地、細胞溶解物または細胞全体、クラミジア自体の任意の構成成分と組み合わせた、改変型生FPVおよび/または改変型生FHVの組合せの送達である。クラミジアはまた、ネコクラミジア、またはネコオウム病クラミジアまたはFCpとも称される。
【0188】
改変型生FPVをそれ自体でまたは改変型生FCV、もしくは改変型生FHVワクチンと組み合わせて投与するとき、経口/経口の形で送達するときにFPVは有効でなく、SQ/経口の投与経路ではSN力価の低下を示す。同様に、改変型生FHVをそれ自体でまたは改変型生FCV、もしくは改変型生FPVワクチンと組み合わせて投与するとき、経口/経口の形で送達するときにFHVは有効でなく、SQ/経口の投与経路では効果の低下を示す。FPVおよび/またはFHVを改変型生クラミジアワクチンと組み合わせて投与するときだけ、その混合ワクチンの送達が皮下/経口または経口/経口の経路を介するときにFPVおよび/またはFHVに対する十分な防御がもたらされる。
【0189】
上記に従って、下記の実施例を提供する。下記の実施例は、例示的かつ非限定的であるものとし、本発明の少数の具体的な実施形態を表す。
【0190】
(実施例3−1)
(観念上)FPVおよびクラミジアでの皮下/経口ワクチン接種法。FPVおよびクラミジア(または改変型生クラミジアワクチンの任意の構成成分)を、他の構成成分を含むまたは含まない混合ワクチンとして提供する。改変型生ワクチンは、皮下/経口で送達することができる。
【0191】
(実施例3−2)
(観念上)FPVおよびクラミジアでの経口/経口ワクチン接種法。FPVおよびクラミジア(または改変型生クラミジアワクチンの任意の構成成分)を、他の構成成分を含むまたは含まない混合ワクチンとして提供する。改変型生ワクチンは、経口/経口で送達することができる。
【0192】
(実施例3−3)
(観念上)FPV、FHVおよびクラミジアでの皮下/経口ワクチン接種法。FPV、FHVおよびクラミジア(または改変型生クラミジアワクチンの任意の構成成分)を、他の構成成分を含むまたは含まない混合ワクチンとして提供する。改変型生ワクチンは、皮下/経口で送達することができる。
【0193】
(実施例3−4)
(観念上)FPV、FHVおよびクラミジアでの経口/経口ワクチン接種法。FPV、FHVおよびクラミジア(または改変型生クラミジアワクチンの任意の構成成分)を、他の構成成分を含むまたは含まない混合ワクチンとして提供する。改変型生ワクチンは、経口/経口で送達することができる。
【0194】
(実施例3−5)
(実際上)FPV、FHV、FCVおよびクラミジアでの皮下/経口ワクチン接種法。FPV、FHV、FCVおよびクラミジア(または改変型生クラミジアワクチンの任意の構成成分)を、他の構成成分を含むまたは含まない混合ワクチンとして提供する。改変型生ワクチンは、経口/経口で送達することができる(表3−1)。
【0195】
(実施例3−6)
(実際上)FPV、FHV、FCVおよびクラミジアでの経口/経口ワクチン接種法。FPV、FHV、FCVおよびクラミジア(または改変型生クラミジアワクチンの任意の構成成分)を、他の構成成分を含むまたは含まない混合ワクチンとして提供する。改変型生ワクチンは、経口/経口で送達することができる。表3−1を参照されたい。
【0196】
約8週齢の、家庭向けの短毛のネコに、改変型生ネコ鼻気管支炎ウイルス[FHV]、カリシウイルス[FCV−21]、汎白血球減少ウイルス[FPV]およびオウム病クラミジア[FCp]を含有するFELOCELL4Aおよび3A構成成分でワクチン接種した。評価したワクチン接種法には以下のものがあった:最初に皮下ワクチン接種、その後21日目に皮下追加免疫(SQ/SQ);最初に皮下ワクチン接種、その後21日目に1回の経口追加免疫感作(SQ/経口);または最初に経口ワクチン接種、その後21日目に2回目の経口ワクチン接種。経口ワクチン接種は、口の中へのワクチンの投与によって行った。各ネコの血清試料を2回目のワクチン接種後に収集し、それを56℃で30分間熱処理した。FPVに対する血清中和アッセイで試料を評価した。
【0197】
【表23】

【0198】
表3−1の結果から、文献中で以前に報告されたように、ネコがFPV抗原に対して最小限に応答したことが示唆される。(Absence of an immune response after oral administration of attenuated feline panleukopenia virus.Schults RD、Scott FW、Infect Immun.1973年4月7日(4):547〜9)。しかし、クラミジア、またはクラミジアワクチンと関係する任意の構成成分が存在すると、FPV SN力価がはるかに高くなり、このことから、FPV誘発に対するin vivoでの効果が示唆される。さらに、SQ/SQ、SQ/経口だけでなく、経口/経口の群でも高いFPV免疫原性が観察された。
【0199】
(実施例3−7)
(実際上)FPV、FHV、FCVでの経口/経口ワクチン接種法
FPV、FHV、FCVを、他の構成成分を含むまたは含まない混合ワクチンとして提供する。改変型生ワクチンは、経口/経口で送達することができる。表3−2を参照されたい。
【0200】
約8週齢の、家庭向けの短毛のネコに、改変型生ネコ鼻気管支炎ウイルス[FHV]、カリシウイルス[FCV−21]および汎白血球減少ウイルス[FPV]を含有するFELOCELL3Aでワクチン接種した。評価したワクチン接種法には以下のものがあった:最初に皮下ワクチン接種、その後21日目に皮下追加免疫(SQ/SQ);最初に皮下ワクチン接種、その後21日目に1回の経口追加免疫感作(SQ/経口);または最初に経口ワクチン接種、その後21日目に2回目の経口ワクチン接種。経口ワクチン接種は、口の中へのワクチンの投与によって行った。各ネコの血清試料を1回目および2回目のワクチン接種後に収集し、それを56℃で30分間熱処理した。FPVに対する血清中和アッセイで試料を分析した。
【0201】
【表24】

【0202】
表3−2の結果から、経口/経口で投与したとき、FELOCELL3Aワクチン中に存在するFPV抗原が最小限の免疫応答を誘導したことが示唆される(表3−1の結果と一致)。しかし、ワクチンをSQ/SQまたはSQ/経口で投与したとき、in vivoでの効果を示す高いFPV SN力価が観察された。
【0203】
本発明の番号付き記載。さらなる記載および例。下記で、FCVはネコカリシウイルスであり、FPVは、汎白血球減少またはFPLとも呼ばれているネコパルボウイルスであり、最後にFHVはネコヘルペスウイルスであることに留意されたい。1.単回投与で投与される改変型生FPVと改変型生クラミジアをどちらも含む免疫原性組成物。2.2回別々の単回投与でネコに送達される改変型生FPVおよび改変型生クラミジアを含むワクチンであって、単回投与が経口または口鼻経路によってどちらも送達されるものであり、期間的に3〜120日、または約3週間または約2週間離れているワクチン。3.FPVに対してネコを免疫感作する方法であって、治療有効量の第1および第2のワクチンをネコに投与するステップを含み、第1および第2のワクチンがFPVに対するネコの免疫応答を誘導するように適合されており、第1のワクチンを経口または口鼻投与し、第2のワクチンを経口または口鼻投与し、第1のワクチンの投与後N日目に第2のワクチンを投与し、Nが3〜120(両端を含む)の整数であり、またはNが約3週間であり、またはNが約2週間であり、前記第1および第2のワクチンが、改変型生FPVと改変型生クラミジアの両方からなる方法。4.単回投与で投与される改変型生FHVと改変型生クラミジアをどちらも含む免疫原性組成物。5.2回別々の単回投与でネコに送達される改変型生FHVおよび改変型生クラミジアを含むワクチンであって、単回投与が経口または口鼻経路によってどちらも送達されるものであり、期間的に3〜120日、または約3週間または約2週間離れているワクチン。6.FHVに対してネコを免疫感作する方法であって、治療有効量の第1および第2のワクチンをネコに投与するステップを含み、第1および第2のワクチンがFHVに対するネコの免疫応答を誘導するように適合されており、第1のワクチンを経口または口鼻投与し、第2のワクチンを経口または口鼻投与し、第1のワクチンの投与後N日目に第2のワクチンを投与し、Nが3〜120(両端を含む)の整数であり、またはNが約3週間であり、またはNが約2週間であり、前記第1および第2のワクチンが、改変型生FHVと改変型生クラミジアの両方からなる方法。7.単回投与で投与される改変型生FCVと改変型生クラミジアをどちらも含む免疫原性組成物。8.2回別々の単回投与でネコに送達される改変型生FCVおよび改変型生クラミジアを含むワクチンであって、単回投与が経口または口鼻経路によってどちらも送達されるものであり、期間的に3〜120日、または約3週間または約2週間離れているワクチン。9.FCVに対してネコを免疫感作する方法であって、治療有効量の第1および第2のワクチンをネコに投与するステップを含み、第1および第2のワクチンがFCVに対するネコの免疫応答を誘導するように適合されており、第1のワクチンを経口または口鼻投与し、第2のワクチンを経口または口鼻投与し、第1のワクチンの投与後N日目に第2のワクチンを投与し、Nが3〜120(両端を含む)の整数であり、またはNが約3週間であり、またはNが約2週間であり、前記第1および第2のワクチンが、改変型生FCVと改変型生クラミジアの両方からなる方法。10.単回投与で投与される改変型生FPV、改変型生FHVおよび改変型生クラミジアを含む免疫原性組成物。11.2回別々の単回投与でネコに送達される改変型生FPV、改変型生FHVおよび改変型生クラミジアを含むワクチンであって、単回投与が経口または口鼻経路によってどちらも送達されるものであり、期間的に3〜120日、または約3週間または約2週間離れているワクチン。12.FPVおよびFHVに対してネコを同時に免疫感作する方法であって、治療有効量の第1および第2のワクチンをネコに投与するステップを含み、第1および第2のワクチンがFPVおよびFHVに対するネコの免疫応答を誘導するように適合されており、第1のワクチンを経口または口鼻投与し、第2のワクチンを経口または口鼻投与し、第1のワクチンの投与後N日目に第2のワクチンを投与し、Nが3〜120(両端を含む)の整数であり、またはNが約3週間であり、またはNが約2週間であり、前記第1および第2のワクチンが、改変型生FPV、改変型生FHVおよび改変型生クラミジアを含む方法。13.単回投与で投与される改変型生FPV、改変型生FCVおよび改変型生クラミジアを含む免疫原性組成物。
14.2回別々の単回投与でネコに送達される改変型生FPV、改変型生FCVおよび改変型生クラミジアを含むワクチンであって、単回投与が経口または口鼻経路によってどちらも送達されるものであり、期間的に3〜120日、または約3週間または約2週間離れているワクチン。15.FPVおよびFCVに対してネコを同時に免疫感作する方法であって、治療有効量の第1および第2のワクチンをネコに投与するステップを含み、第1および第2のワクチンがFPVおよびFHVに対するネコの免疫応答を誘導するように適合されており、第1のワクチンを経口または口鼻投与し、第2のワクチンを経口または口鼻投与し、第1のワクチンの投与後N日目に第2のワクチンを投与し、Nが3〜120(両端を含む)の整数であり、またはNが約3週間であり、またはNが約2週間であり、前記第1および第2のワクチンが、改変型生FPV、改変型生FHVおよび改変型生クラミジアを含む方法。16.単回投与で投与される改変型生FHV、改変型生FCVおよび改変型生クラミジアを含む免疫原性組成物。17.2回別々の単回投与でネコに送達される改変型生FHV、改変型生FCVおよび改変型生クラミジアを含むワクチンであって、単回投与が経口または口鼻経路によってどちらも送達されるものであり、期間的に3〜120日、または約3週間または約2週間離れているワクチン。18.FHVおよびFCVに対してネコを同時に免疫感作する方法であって、治療有効量の第1および第2のワクチンをネコに投与するステップを含み、第1および第2のワクチンがFHVおよびFCVに対するネコの免疫応答を誘導するように適合されており、第1のワクチンを経口または口鼻投与し、第2のワクチンを経口または口鼻投与し、第1のワクチンの投与後N日目に第2のワクチンを投与し、Nが3〜120(両端を含む)の整数であり、またはNが約3週間であり、またはNが約2週間であり、前記第1および第2のワクチンが、改変型生FHV、改変型生FCVおよび改変型生クラミジアを含む方法。19.単回投与で投与される改変型生FPV、改変型生FHV、改変型生FCVおよび改変型生クラミジアを含む免疫原性組成物。20.2回別々の単回投与でネコに送達される改変型生FPV、改変型生FHV、改変型生FCVおよび改変型生クラミジアを含むワクチンであって、単回投与が経口または口鼻経路によってどちらも送達されるものであり、期間的に3〜120日、または約3週間または約2週間離れているワクチン。21.FPV、FHVおよびFCVに対してネコを同時に免疫感作する方法であって、治療有効量の第1および第2のワクチンをネコに投与するステップを含み、第1および第2のワクチンがFPVに対するネコの免疫応答を誘導するように適合されており、第1のワクチンを経口または口鼻投与し、第2のワクチンを経口または口鼻投与し、第1のワクチンの投与後N日目に第2のワクチンを投与し、Nが1〜120(両端を含む)の整数であり、またはNが約3週間であり、またはNが約2週間であり、前記第1および第2のワクチンが、改変型生FPV、改変型生FHV、改変型生FCVおよび改変型生クラミジアを含む方法。
【0204】
1.ネコカリシウイルスに対してネコを免疫感作するワクチンであって、FCV−21キャプシドタンパク質または単離FCV−21キャプシドタンパク質を含むワクチン。
2.ネコカリシウイルスに対してネコを免疫感作するワクチンであって、FCV−21キャプシドタンパク質または単離FCV−21キャプシドタンパク質と、薬学的に許容できる担体とを含み、前記キャプシドタンパク質が、タンパク質配列(配列番号13)または少なくとも約91.2%、95%もしくは99%の同一性を有する配列を含み、免疫応答を生じさせるのに有効な量提供されるワクチン。
3.ネコカリシウイルスに対してネコを免疫感作するDNAワクチンであって、FCV−21キャプシドタンパク質または単離FCV−21キャプシドタンパク質をコードする核酸配列を含み、前記DNAが、配列(配列番号12)または少なくとも約78.7%、もしくは79.2%の配列同一性を有し、保存的置換を許容する配列を含むDNAワクチン。
4.ネコカリシウイルスに対してネコを免疫感作するワクチンであって、FCV−49キャプシドタンパク質または単離FCV−49キャプシドタンパク質を含み、前記キャプシドタンパク質がFCV−49株由来のタンパク質配列を含むワクチン。
5.ネコカリシウイルスに対してネコを免疫感作するワクチンであって、FCV−49キャプシドタンパク質または単離FCV−49キャプシドタンパク質と、薬学的に許容できる担体とを含み、前記キャプシドタンパク質が、タンパク質配列(配列番号15)または少なくとも約92.7%、95%もしくは99%の同一性を有する配列を含み、免疫応答を生じさせるのに有効な量提供されるワクチン。
6.ネコカリシウイルスに対してネコを免疫感作するDNAワクチンであって、FCV−49キャプシドタンパク質または単離FCV−49キャプシドタンパク質をコードする核酸配列を含み、前記DNAが、配列(配列番号14)または少なくとも約78.9%、すなわち79.4%(78.9+0.5)の配列同一性を有し、保存的置換を許容する配列を含むDNAワクチン。
7.アジュバントを含有するか、FCV構成成分が生であるか、FCV構成成分が弱毒化されているか、FCV構成成分が不活性化されているか、のうち単独またはいずれかの組合せをさらに含み、FCV−F9、FCV−LLK、FCV−M8、FCV−255、およびFCV−2280からなる群から選択される少なくとも1つの他のネコカリシウイルス株を含んでよい、1.から6.のいずれかに記載のワクチン。
8.ネコカリシウイルス(FCV)に対してネコを免疫感作する方法であって、治療有効量の第1および第2のワクチンをネコに投与するステップを含み、第1および第2のワクチンがFCVに対するネコの免疫応答を誘導するように適合されており、第1のワクチンを非経口投与し、第2のワクチンを経口または口鼻投与し、第1のワクチンの投与後N日目に第2のワクチンを投与し、Nが3〜120日(両端を含む)の整数である方法。
9.ワクチンがそれぞれ独立に生ウイルスワクチン、改変型生ウイルスワクチン、不活性化ウイルスワクチン、組換えワクチン、DNAワクチン、またはサブユニット抗原ワクチンを単独でまたは組み合わせて含む、8.に記載の方法。
10.少なくとも1つのワクチンが、FCVの1つまたは複数の株を含む、9.に記載の方法。
11.FCVの1つまたは複数の株が、F9もしくはFCV−21またはF9およびFCV−21を含む、10.に記載の方法。
12.単回投与で投与される、改変型生FPVと改変型生クラミジアをどちらも含み、かつ/または改変型生FHVと改変型生クラミジアをどちらも含み、かつ/または改変型生FCVと改変型生クラミジアをどちらも含み、かつ/または改変型生FPV、改変型生FHVおよび改変型生クラミジアを含み、かつ/または改変型生FPV、改変型生FCVおよび改変型生クラミジアを含み、かつ/または改変型生FHV、改変型生FCVおよび改変型生クラミジアを含み、かつ/または改変型生FPV、改変型生FHV、改変型生FCVおよび改変型生クラミジアを含む免疫原性組成物。
13.2回別々の単回投与でネコに送達される、改変型生FPVと改変型生クラミジアをどちらも含み、かつ/または改変型生FHVと改変型生クラミジアをどちらも含み、かつ/または改変型生FCVと改変型生クラミジアをどちらも含み、かつ/または改変型生FPV、改変型生FHVおよび改変型生クラミジアを含み、かつ/または改変型生FPV、改変型生FCVおよび改変型生クラミジアを含み、かつ/または改変型生FHV、改変型生FCVおよび改変型生クラミジアを含み、かつ/または改変型生FPV、改変型生FHV、改変型生FCVおよび改変型生クラミジアを含むワクチンであって、単回投与が経口または口鼻経路によってどちらも送達されるものであり、期間的に3〜120日離れているワクチン。
14.FPV、FCVおよび/またはFHVに対してネコを免疫感作する方法であって、治療有効量の第1および第2のワクチンをネコに投与するステップを含み、第1および第2のワクチンがFPV、および/またはFCVおよび/またはFHVに対するネコの免疫応答を誘導するように適合されており、第1のワクチンを経口または口鼻投与し、第2のワクチンを経口または口鼻投与し、第1のワクチンの投与後N日目に第2のワクチンを投与し、Nが3〜120(両端を含む)の整数であり、前記第1および第2のワクチンが、a)改変型生FPVと改変型生クラミジアをどちらも含み、かつ/またはb)改変型生FHVと改変型生クラミジアをどちらも含み、かつ/またはc)改変型生FCVと改変型生クラミジアをどちらも含み、かつ/またはd)改変型生FPV、改変型生FHVおよび改変型生クラミジアを含み、かつ/またはe)改変型生FPV、改変型生FCVおよび改変型生クラミジアを含み、かつ/またはf)改変型生FHV、改変型生FCVおよび改変型生クラミジアを含み、かつ/またはg)改変型生FPV、改変型生FHV、改変型生FCVおよび改変型生クラミジア、もしくはその任意の組合せを含む組成物からなる方法。
15.本明細書に記載されている、動物、特にネコを治療するための任意の免疫原性組成物、ワクチン、および方法。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネコカリシウイルスに対してネコを免疫感作するワクチンであって、FCV−49キャプシドタンパク質または単離FCV−49キャプシドタンパク質を含み、前記キャプシドタンパク質がFCV−49株由来のタンパク質配列を含むワクチン。
【請求項2】
ネコカリシウイルスに対してネコを免疫感作するワクチンであって、FCV−49キャプシドタンパク質または単離FCV−49キャプシドタンパク質と、薬学的に許容できる担体とを含み、前記キャプシドタンパク質が、タンパク質配列(配列番号15)または少なくとも約92.7%、95%もしくは99%の同一性を有する配列を含み、免疫応答を生じさせるのに有効な量提供されるワクチン。
【請求項3】
ネコカリシウイルスに対してネコを免疫感作するDNAワクチンであって、FCV−49キャプシドタンパク質または単離FCV−49キャプシドタンパク質をコードする核酸配列を含み、前記DNAが、配列(配列番号14)または少なくとも約78.9%、すなわち79.4%(78.9+0.5)の配列同一性を有し、保存的置換を許容する配列を含むDNAワクチン。
【請求項4】
アジュバントを含有するか、FCV構成成分が生であるか、FCV構成成分が弱毒化されているか、FCV構成成分が不活性化されているか、のうち単独またはいずれかの組合せをさらに含み、FCV−F9、FCV−LLK、FCV−M8、FCV−255、およびFCV−2280からなる群から選択される少なくとも1つの他のネコカリシウイルス株を含んでよい、請求項1から3のいずれかに記載のワクチン。
【請求項5】
ネコカリシウイルス(FCV)に対してネコを免疫感作する方法であって、治療有効量の第1および第2のワクチンをネコに投与するステップを含み、第1および第2のワクチンがFCVに対するネコの免疫応答を誘導するように適合されており、第1のワクチンを非経口投与し、第2のワクチンを経口または口鼻投与し、第1のワクチンの投与後N日目に第2のワクチンを投与し、Nが3〜120日(両端を含む)の整数である方法。
【請求項6】
ワクチンがそれぞれ独立に生ウイルスワクチン、改変型生ウイルスワクチン、不活性化ウイルスワクチン、組換えワクチン、DNAワクチン、またはサブユニット抗原ワクチンを単独でまたは組み合わせて含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのワクチンが、FCVの1つまたは複数の株を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
FCVの1つまたは複数の株が、F9もしくはFCV−21またはF9およびFCV−21を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
単回投与で投与される、改変型生FPVと改変型生クラミジアをどちらも含み、かつ/または改変型生FHVと改変型生クラミジアをどちらも含み、かつ/または改変型生FCVと改変型生クラミジアをどちらも含み、かつ/または改変型生FPV、改変型生FHVおよび改変型生クラミジアを含み、かつ/または改変型生FPV、改変型生FCVおよび改変型生クラミジアを含み、かつ/または改変型生FHV、改変型生FCVおよび改変型生クラミジアを含み、かつ/または改変型生FPV、改変型生FHV、改変型生FCVおよび改変型生クラミジアを含む免疫原性組成物。
【請求項10】
2回別々の単回投与でネコに送達される、改変型生FPVと改変型生クラミジアをどちらも含み、かつ/または改変型生FHVと改変型生クラミジアをどちらも含み、かつ/または改変型生FCVと改変型生クラミジアをどちらも含み、かつ/または改変型生FPV、改変型生FHVおよび改変型生クラミジアを含み、かつ/または改変型生FPV、改変型生FCVおよび改変型生クラミジアを含み、かつ/または改変型生FHV、改変型生FCVおよび改変型生クラミジアを含み、かつ/または改変型生FPV、改変型生FHV、改変型生FCVおよび改変型生クラミジアを含むワクチンであって、単回投与が経口または口鼻経路によってどちらも送達されるものであり、期間的に3〜120日離れているワクチン。
【請求項11】
FPV、FCVおよび/またはFHVに対してネコを免疫感作する方法であって、治療有効量の第1および第2のワクチンをネコに投与するステップを含み、第1および第2のワクチンがFPV、および/またはFCVおよび/またはFHVに対するネコの免疫応答を誘導するように適合されており、第1のワクチンを経口または口鼻投与し、第2のワクチンを経口または口鼻投与し、第1のワクチンの投与後N日目に第2のワクチンを投与し、Nが3〜120(両端を含む)の整数であり、前記第1および第2のワクチンが、
a)改変型生FPVと改変型生クラミジアをどちらも含み、かつ/または
b)改変型生FHVと改変型生クラミジアをどちらも含み、かつ/または
c)改変型生FCVと改変型生クラミジアをどちらも含み、かつ/または
d)改変型生FPV、改変型生FHVおよび改変型生クラミジアを含み、かつ/または
e)改変型生FPV、改変型生FCVおよび改変型生クラミジアを含み、かつ/または
f)改変型生FHV、改変型生FCVおよび改変型生クラミジアを含み、かつ/または
g)改変型生FPV、改変型生FHV、改変型生FCVおよび改変型生クラミジア、もしくはその任意の組合せを含む
組成物からなる方法。

【公開番号】特開2012−211161(P2012−211161A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−137725(P2012−137725)
【出願日】平成24年6月19日(2012.6.19)
【分割の表示】特願2008−523479(P2008−523479)の分割
【原出願日】平成18年7月17日(2006.7.17)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】