説明

ワニス含浸方法およびその装置

【課題】ワニスをコイルの内部にまで均等に浸透させることができるうえに、コイル部分以外にワニスが付着することがないワニス含浸方法およびその装置を目的とする。
【解決手段】ワニスとエアを混合して霧化し噴霧ノズルによりワニスを噴射してコイルにワニスを適正含浸量浸透させる方法と、噴霧ノズル1のワニスの時間当たり噴霧量と噴霧領域がワニス液圧とエア圧およびノズル径により設定され、ワニスの適正含浸量がワーク重量に基づく方法と、ワニスとエアを混合して霧化し、コイルへの噴霧領域と時間当たり噴霧量が限定される多数の噴霧ノズル1をコイル左右外周面と左右内周面および前後側面に配設させてワークと相対的に回転させる装置と、噴霧ノズルがワニス液圧とエア圧およびノズル径に基きコイルへの噴霧領域と時間当たり噴霧量が限定されワーク重量に基くワニスの適正含浸量に従ってワークを所定回数回転させるワーク装着機構5を設けた装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコアに巻かれたモータステータコアにワニスを含浸させて絶縁を図るワニス含浸方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ワニスをモータステータコアに含浸させる方法としては、ワニスを滴下した後、コイル部に低圧エアを吹き付けるものがある(例えば、特許文献1参照)。また、滴下したワニスの重量に基いてワニスの滴下終了を行うとともに巻線コイルに付着せず下に落ちた落下ワニスの重量を測定して付着ワニス重量を求めるものがある(例えば、特許文献2参照)。さらに、滴下されるワニスに対してエアブローを行うものがある(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
しかし、特許文献1の方法は、滴下されたワニスを低圧エアの圧力で含浸させてゆくためワニスを均一に含浸させる難しいという問題があった。また、特許文献2の方法は、ワニスの減少量や落下ワニス量をモニタリングしなければならず装置が複雑で高価なものとなる問題があった。さらに、特許文献3の方法は、滴下途中のワニスにエアを吹き付けるため、エアの吹き付けタイミングの制御が難しくワニスの吹き付け位置の調整が難しいうえに吹き付け強さの調整も難しいという問題があった。
【特許文献1】特開平7−213029号公報
【特許文献2】特開2001−2311225号公報
【特許文献3】特開2005−318692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ワニスをコイルの内部にまで均等に浸透させることができるうえに、コイル部分以外にワニスが付着することがないワニス含浸方法およびその装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ワニスとエアを混合してワニスを霧化するとともにワークと相対的に回転する噴霧ノズルにより、霧化したワニスをワークのコイル領域にのみ噴射してコイルの内部にワニスを適正含浸量浸透させるワニス含浸方法と、ワニスとエアを混合してワニスを霧化するとともにワニス液圧とエア圧およびノズル径に基いてワニスの時間当たり噴霧量と噴霧領域とが限定される噴霧ノズルをワークと相対的に回転させて、ワークのコイル領域にのみ霧化したワニスを所定時間噴射しワニスの適正含浸量をコイルの内部に浸透させるワニス含浸方法および、ワニスとエアを混合してワニスを霧化するとともにコイルへの噴霧領域が限定され、且つ時間当たり噴霧量が限定されて適正含浸量のワニスをコイル内部に噴射浸透させる多数の噴霧ノズルを、ワークと相対的に回転自在としてワークのコイル左右外周面と左右内周面および前後側面に配設したワニス含浸装置と、ワニスとエアを混合してワニスを霧化するとともにワニス液圧とエア圧およびノズル径に基きコイルへの噴霧領域が限定され、且つ時間当たり噴霧量が限定される多数の噴霧ノズルを、ワークのコイル左右外周面と左右内周面および前後側面に向けて配設するとともにワーク重量に基くワニスの適正含浸量に従ってワークを所定回数回転させるワーク装着機構を設けたワニス含浸装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の請求項1は、ワニスとエアを混合してワニスを霧化するとともにワークと相対的に回転する噴霧ノズルにより、霧化したワニスをワークのコイル領域にのみ噴射してコイルの内部にワニスを適正含浸量浸透させるものとしたから、ワニスは霧化され微粒子となって噴射されるのでコイル間の細隙を通じてコイル内部へ浸透するので強固なコイルとすることができるうえにワニスの噴霧範囲をコイル領域のみ限定できるので、他部位に付着硬化したワニスの除去作業が不要となり生産性を向上できる。しかも、噴射ノズルとワークを相対的に回転させるものとしたから、従来のようにワーク以外は回転できないという制約がなくなり噴射ノズルを可動できるので、種々のワーク形状に応じて最適なワニス含浸方法を得ることができる。
【0007】
また、請求項2は、ワニスとエアを混合してワニスを霧化するとともにワニス液圧とエア圧およびノズル径に基いてワニスの時間当たり噴霧量と噴霧領域とが限定される噴霧ノズルをワークと相対的に回転させて、ワークのコイル領域にのみ霧化したワニスを所定時間噴射しワニスの適正含浸量をコイルの内部に浸透させるものとしたから、噴射された霧化ワニスはコイル間の細隙を通じてコイル内部へ浸透させることができることは勿論、コイル領域のみワニスを噴射含浸できるものとなる。さらに、噴射ノズルとワークを相対的に回転させるものとしたから、ワーク形状に応じてワーク乃至噴射ノズルを可動させることができ最適なワニスの含浸を行うことができる。また、噴霧ノズルは時間当たり噴霧量が設定されるのでワークまたは噴射ノズルの回転回数によりワニスの含浸量を知ることができ、ワニス重量をモニタリングすることなくワニスの適正含浸量を得ることができる。さらに、時間当たり噴霧量と噴霧範囲とをエア圧とワニス液圧およびノズル径に基いて設定できるのでワークの形状やサイズに合わせて最適な設定を簡単に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の好ましい実施の形態を図に基いて詳細に説明する。
図1中、1はワニスとエアを混合してワニスを霧化して噴霧する噴霧ノズルであり、該噴霧ノズル1は二流体ノズルよりなり、ノズル本体1aにエア流路1bとワニス流路1cとを形成するとともにノズル本体1aの先端部をノズルキャップ1dにより被套したものである。エア流路1bはワニス流路1cとなる中央孔に向う傾斜孔としており、ノズル孔径(ワニス流路)はφ0.4〜1.0mmとしている。
【0009】
また、噴霧ノズル1はエアとワニスとをノズルキャップ1d内で混合する内部混合タイプとしているが、ノズルキャップ1dの出口でエアとワニスを混合する外部混合タイプとしてもよいことはいうまでもない。また、エア流路1bを中央孔としてワニス流路1cを傾斜孔としてもよいことはいうまでもない。
【0010】
さらに、噴霧ノズル1は図1,2に示されるようにワークのステータコアSに巻かれているコイルCの左右外周面、左右側面および左右内周面に先端を臨ませて配設され、コイル領域にのみワニスを噴射できるものとしている。噴霧ノズル1とコイルCとの離隔距離はノズル径とワニス液圧、エア圧等により決定されるワニスの噴霧領域に基いて規定されるものとし、ワークのステータコアS等に霧化ワニスが噴霧されることがない領域としている。また、全噴霧ノズル1から噴射される霧化ワニスは12g〜13g/minとすることが好ましい。
【0011】
2は噴霧ノズル1にワニスを供給するワニス供給回路であり、該ワニス供給回路2はワニスタンク2aと、ワニスに一定の液圧を与える加圧機構3とからなり、ワニス供給回路2は各噴霧ノズル1と接続されている。また、前記加圧機構3はワニスタンク2aを密閉し、該ワニスタンク2aに加圧エアを供給することにより加圧するものであるが、ワニスタンク2aに適宜落差を与えることによりワニスに0.01〜0.5MPaの液圧を与えるものとしている。さらに、ワークに含浸されるワニスの適正含浸量はワークサイズに従い約30〜100g/台とする。また、ワニスの液圧はノズル径や噴霧領域やワークサイズにより適宜設定される。
【0012】
4は噴霧ノズル1にエアを供給するエア供給回路であり、該エア供給回路4はエア源と各噴霧ノズル1間を接続したもので、0.01〜0.5MPaのエア圧を噴霧ノズル1に供給するものとしている。エア圧はノズル径や噴霧領域、ワークサイズにより適宜設定されるものとしている。
【0013】
5はワーク装着機構であり、該ワーク装着機構5は拡げチャック5aと、拡げチャック5aを取り付けた回転軸5bとからなり、回転軸5bは図示しない駆動源に接続されている。そして、ワーク装着機構5はワークを所定回数10〜50rpmの回転数で回転させるものである。ワークの回転回数は噴霧ノズル1の時間当たり噴霧量とワニスの適正含浸量およびワークサイズとから決定されるものとしている。
【0014】
以下、図4に示されるワニス含浸乾燥装置に基いて本発明の作用を説明する。
ワニス含浸乾燥装置はワーク脱着部10、予熱室11、ワニス含浸室12、乾燥室13、冷却室14とからなり、各室は仕切りにより区画されるとともにカバー15により密閉されている。また、ワニス含浸部12内に設けられる噴霧ノズル1はワークがワニス含浸室12内に侵入した際、ワークに所定の離隔距離まで近接できるようになっている。
【0015】
ワニス含浸を行う際、先ず、ステップ移動式のコンベア16上に定間隔下に配設されているワーク装着機構5にワークを装着する。ワーク装着機構5にワークを装着後、コンベア16を駆動し、1ステップ動作させてワークを予熱室11内に進入させる。このときワークをワーク装着機構17により回転させて均等に予熱されるようにする。そして、ワーク装着装置5により回転されながらコンベア16の2ステップ動作間、予熱室11内で予熱されたワークはコンベア16の3ステップ目の動作によりにワニス含浸室12に進入することとなる。
【0016】
ワーク装着機構5により一定速度で回転されながら支持されているワークがワニス含浸室12内に収容されると、噴霧ノズル1は移動してコイルCの左右外周面と左右内周面と左右側面の所定位置に接近する。そして、噴霧ノズル1の位置決めが完了すると、エア供給回路4とワニス供給回路3とにより所定圧のエアと所定液圧のワニスが各噴霧ノズル1に供給される。
【0017】
噴霧ノズル1のエア流路1bとワニス流路1cに供給されたエアとワニスは混合して霧化され、回転するコイルCの左右外周面と左右内周面と左右側面とに霧化して微粒子となっているワニスが噴射されることとなる。この噴射圧により微粒子となっているワニスはコイルCの細隙を通じて内部に強制的に浸透されることとなる。
【0018】
全噴霧ノズル1からの噴射されるワニス量が例えば約12g/minとなるように噴射しながらワークを回転させる。ワニスの適正含浸量が例えば約36gであれば、ワークを約3分間回転させれば適正含浸量なるので、コンベア16を1ステップ動作させてワークをコンベア16下部の乾燥室13に送り込む。ワークは乾燥室13でコンベア16の4ステップ動作分滞在されて乾燥されたうえ、冷却室14に送り込まれる。そして、冷却室14での冷却が完了後、コンベア16を1ステップ動作させてワーク脱着部10に送り込み、ワーク装着機構5よりワニスが乾燥硬化されたワークを取り外せばよい。そして、ワーク装着機構5に新しいワークを装着して前記と同様の操作を繰り返せばよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の好ましい実施の形態を示す正面図である。
【図2】同じく側面図である。
【図3】同じく噴霧ノズルを拡大して示す断面図である。
【図4】本発明が組み込まれたワニス含浸乾燥装置を示す正面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 噴霧ノズル
2 ワニス供給回路
3 加圧機構
4 エア供給回路
5 ワーク装着機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワニスとエアを混合してワニスを霧化するとともにワークと相対的に回転する噴霧ノズルにより、霧化したワニスをワークのコイル領域にのみ噴射してコイルの内部にワニスを適正含浸量浸透させることを特徴とするワニス含浸方法。
【請求項2】
ワニスとエアを混合してワニスを霧化するとともにワニス液圧とエア圧およびノズル径に基いてワニスの時間当たり噴霧量と噴霧領域とが限定される噴霧ノズルをワークと相対的に回転させて、ワークのコイル領域にのみ霧化したワニスを所定時間噴射しワニスの適正含浸量をコイルの内部に浸透させることを特徴とするワニス含浸方法。
【請求項3】
ワニスとエアを混合してワニスを霧化するとともにコイルへの噴霧領域が限定され、且つ時間当たり噴霧量が限定されて適正含浸量のワニスをコイル内部に噴射浸透させる多数の噴霧ノズルを、ワークと相対的に回転自在としてワークのコイル左右外周面と左右内周面および前後側面に配設したことを特徴とするワニス含浸装置。
【請求項4】
ワニスとエアを混合してワニスを霧化するとともにワニス液圧とエア圧およびノズル径に基きコイルへの噴霧領域が限定され、且つ時間当たり噴霧量が限定される多数の噴霧ノズルを、ワークのコイル左右外周面と左右内周面および前後側面に向けて配設するとともにワーク重量に基くワニスの適正含浸量に従ってワークを所定回数回転させるワーク装着機構を設けたことを特徴とするワニス含浸装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−29086(P2008−29086A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196954(P2006−196954)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(393011038)菱栄エンジニアリング株式会社 (59)
【Fターム(参考)】