説明

ワーク搬送システム

【課題】 ワークを確実に搬送することができるとともに、その搬送時間の短縮化をも図ることができるワーク搬送システムを提供すること。
【解決手段】 加工すべきワーク16をワーク供給域から工作機械のワーク加工域に搬送するワーク搬送システム。この搬送システムは、ワーク16を保持するためのワーク保持装置20を具備し、ワーク保持装置20は、ワークを保持するためのハンドチャック爪36と、ワーク16を押し出すためのプッシャ部材47と、プッシャ部材47を駆動させるためのエアシリンダ機構38とを備えている。エアシリンダ機構38に関連して、圧縮空気を供給する圧縮空気供給源54と、圧縮空気の圧力を制御するための圧力制御手段、例えば電空レギュレータ62設けられ、圧力制御手段によってエアシリンダ機構38に送給される圧縮空気の圧力が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク供給域に置かれたワークを工作機械のワーク加工域に搬送してその加工チャック手段に保持させるためのワーク搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、NC旋盤などの工作機械を用いて自動的に加工する場合、ワーク供給域に置かれたワークを工作機械のワーク加工域に搬送するためのワーク搬送システムが広く用いられている。このワーク搬送システムは、加工前のワークを保持するための第1ワーク保持装置(加工前ワーク保持装置)と、加工後ワークを保持するための第2ワーク保持装置(加工後ワーク保持装置)と、これら第1及び第2ワーク保持装置を所要の通りに移動するためのワーク支持移動装置とから構成され、第1ワーク保持装置は、ワークを保持するための開閉自在なハンドチャック爪を有している(例えば、特許文献1)。
【0003】
この第1ワーク保持装置(加工前ワーク保持装置)としては、ばね部材の弾性偏倚力でもってプッシャ部材をプッシュするばね形式のものと、空圧シリンダの空圧でもってプッシャ部材をプッシュするエアシリンダ形式のものとが存在する。ばね形式のものでは、ハンドチャック本体にコイルばねが装着され、ハンドチャック爪でもってワークを保持する際にプッシャ部材が押し込まれてコイルばねが収縮され、かく収縮された状態にて、ハンドチャック爪がワークを保持する。このようにワークを保持するので、ハンドチャック爪による保持が解除されると、収縮状態のコイルばねが伸張し、このコイルばねの復元力でもってプッシャ部材が押し出され、かく押し出されるプッシャ部材によってワークが第1ワーク保持装置から工作機械の加工チャック手段に受け渡される。
【0004】
また、エアシリンダ形式のものでは、ハンドチャック本体にエアシリンダ機構が設けられ、このエアシリンダ機構の出力部がプッシャ部材として機能し、ハンドチャック爪でもってワークを保持するときにはエアシリンダ機構が収縮状態に保たれ、プッシャ部材が収縮された状態にて、ハンドチャック爪がワークを保持する。また、ワーク加工域にてワークを受け渡すときには、ハンドチャック爪による保持が解除され、更にエアシリンダ機構が伸張され、このエアシリンダ機構の伸張でもってプッシャ部材が押し出され、かく押し出されるプッシャ部材によってワークが第1ワーク保持装置から工作機械の加工チャック手段に受け渡される。
【0005】
【特許文献1】特開平10−193237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したワーク搬送システムには、次の通りの解決すべき問題が存在する。ばね形式のものでは、コイルばねの弾性復元力を利用しているので、ハンドチャックの爪が開放されると同時にコイルばねが伸張してプッシャ部材によってワークが押し出されて受け渡しが行われ、工作機械の加工チャック手段に受け渡しに要する時間が短く、ワークを搬送するためのサイクルタイムを短くすることができるという利点があるが、ワークを保持する間は常にコイルばねの作用によってプッシャ部材がワークに作用し、このコイルばねの弾性復元力が大きくなると、加工域に向けての搬送中にハンドチャック爪からワークが滑り落ちるなどの問題が生じる。特に、ワークを高速で搬送しようとすると、移動中にワークに加わる慣性力も大きくなり、より滑り落ち易くなる。
【0007】
また、エアシリンダ形式のものでは、エアバルブの電気開閉信号によるエアシリンダ機構の伸縮を利用しているので、ワーク搬送中においては、エアシリンダ機構は収縮状態に保たれてハンドチャック爪に保持されたワークに作用せず、この搬送中にワークがハンドチャック爪から滑り落ちることがなく、ワークを確実に搬送することができるという利点があるが、エアバルブを開閉するための時間、エアラインの圧力損失、エアシリンダ機構の応答性などの要因によってエアシリンダ機構の伸張に要する時間が長く、換言するとワークの受け渡しに要する時間が長くなり、その結果、ワークを搬送するためのサイクルタイムが長くなる問題がある。
【0008】
本発明の目的は、ワークを確実に搬送することができるとともに、その搬送時間の短縮化をも図ることができるワーク搬送システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に記載のワーク搬送システムは、加工すべきワークをワーク供給域から工作機械のワーク加工域に搬送するワーク搬送システムにおいて、
ワークを保持するためのワーク保持装置と、前記ワーク保持装置を前記ワーク供給域から前記ワーク加工域に所要の通りに移動するためのワーク支持移動装置と、を具備し、前記ワーク保持装置は、ワークを保持するための開閉自在なハンドチャック爪と、前記ハンドチャック爪に保持されたワークを押し出すためのプッシャ部材と、前記プッシャ部材を駆動させるためのエアシリンダ機構と、を備えており、
前記エアシリンダ機構に関連して、圧縮空気を供給する圧縮空気供給源と、前記圧縮空気供給源からの圧縮空気を前記エアシリンダ機構の伸張側に供給するための供給ラインとが設けられており、
更に、前記供給ラインには、前記圧縮空気供給源から供給される圧縮空気の圧力を制御するための圧力制御手段が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項2に記載のワーク搬送システムでは、前記圧力制御手段は、電気信号の大きさによって圧縮空気の圧力を制御する電空レギュレータから構成され、前記電空レギュレータは、電気信号の電流又は電圧の大きさに比例して前記供給ラインを通して供給される圧縮空気の圧力を制御することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項3に記載のワーク搬送システムでは、前記ワーク保持装置が前記ワーク供給域から前記ワーク加工域に搬送される間は、電気信号の大きさが小さい保持信号が前記電空レギュレータに送給され、また前記ワーク加工域において前記ハンドチャック爪が開放されると、電気信号の大きさが大きいプッシャ信号が前記電空レギュレータに送給されることを特徴とする。
【0012】
更に、本発明の請求項4に記載のワーク搬送システムでは、前記ワーク供給域から前記ワーク加工域に搬送される間にローディング準備位置が存在し、前記ワーク保持装置が前記ワーク供給域から前記ローディング準備位置に搬送される間は、電気信号の大きさが小さい第1保持信号が前記電空レギュレータに送給され、また前記ワーク保持装置が前記ローディング準備位置から前記ワーク加工域に搬送される間は、前記信号の大きさが前記第1保持信号よりも大きく且つ前記プッシャ信号よりも小さい第2保持信号が前記電空レギュレータに送給されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に記載のワーク搬送システムによれば、ワーク保持装置は、ワークを保持するための開閉自在なハンドチャック爪と、ハンドチャック爪に保持されたワークを押し出すためのプッシャ部材と、プッシャ部材を駆動させるためのエアシリンダ機構と、を備え、このエアシリンダ機構の伸張側に圧縮空気を供給するための供給ラインに圧力制御手段が設けられているので、この圧力制御手段によりエアシリンダ機構に送給される圧縮空気の圧力を制御することができる。この圧力制御手段による圧力制御は、例えば、ワークの搬送中において圧縮空気の圧力が小さくなるように制御することによって、ワーク保持装置の保持されたワークに作用する力を小さくしてワークの落下を防止することができ、またワーク加工域にてワークを加工チャック手段に受け渡すときに圧縮空気の圧力が大きくなるように制御することによって、ワークに作用する押出し力が大きくなり、ワーク保持装置から工作機械の加工チャック手段への受渡しを短時間で行うことができる。
【0014】
また、本発明の請求項2に記載のワーク搬送システムによれば、圧力制御手段が電気信号の大きさに比例して圧縮空気の圧力を制御する電空レギュレータから構成されているので、電流値又は電圧値の大きい(又は小さい)電気信号を電空レギュレータに送給することによって、エアシリンダ機構に供給される圧縮空気の圧力を大きく(又は小さく)することができ、比較的簡単な構成及び制御でもって、圧縮空気の圧力を所要の通りに制御することができる。
【0015】
また、本発明の請求項3に記載のワーク搬送システムによれば、ワーク供給域からワーク加工域に搬送される間は、保持信号が前記電空レギュレータに送給されるので、エアシリンダ機構に送給される圧縮空気の圧力が小さく、これによって、ワーク保持装置に保持されたワークに作用する力が小さくなり、搬送中のワークの落下を防止することができる。また、ワーク加工域においてハンドチャック爪が開放されると、プッシャ信号が電空レギュレータに送給されるので、エアシリンダ機構に送給される圧縮空気の圧力が大きく、これによって、ワーク保持装置に保持されたワークに作用する押出し力が大きくなり、工作機械の加工チャック手段へのワークの受け渡しを短時間に行うことができる。
【0016】
更に、本発明の請求項4に記載のワーク搬送システムによれば、ワーク保持装置がワーク供給域からローディング準備位置に搬送される間は、第1保持信号が電空レギュレータに送給されるので、エアシリンダ機構に送給される圧縮空気の圧力が小さく、またワーク保持装置がローディング準備位置に搬送されると、第1保持信号より大きい第2保持信号が電空レギュレータに送給されるので、エアシリンダ機構に送給される圧縮空気の圧力が上昇し、このようにワーク供給域に搬送される前に圧縮空気の圧力を上昇させることによって、プッシャ信号が電空レギュレータに送給された際に所定圧力に達するまでの時間を短くし、ワークの受渡し時間の短縮化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明に従うワーク搬送システムの一実施形態について説明する。図1は、一実施形態のワーク搬送システムを装備した工作機械の一例を示す簡略図であり、図2は、図1のワーク搬送システムのワーク保持装置及びそのエア制御系を示す断面図であり、図3は、図2のエア制御系における電空レギュレータの一例を示す断面図であり、図4は、図2のワーク保持装置から工作機械の加工チャック手段へのワークの受け渡しを説明するための断面図であり、図5は、図1のワーク搬送システムのワーク保持装置の移動を説明するための簡略説明図であり、図6は、図3の電空レギュレータに送給される入力信号の電流値の変化を示す図であり、図7は、加工するワークの搬送の流れを説明するためのフローチャートである。
【0018】
図1において、工作機械の一例としての図示のNC旋盤2は、工場の床面などに設置される旋盤本体4を備え、この旋盤本体4の左上部に主軸部6が設けられ、この主軸部6に回転自在に支持された主軸(図示せず)に加工チャック手段8が装着されている。加工チャック手段8は周方向に間隔をおいて配設された三つの加工チャック爪10(図1において二つ示す)を備え、これら加工チャック爪10が径方向に移動自在に装着されている。この旋盤本体4には、更に、移動テーブル12が横方向(図1において左右方向)に移動自在に支持され、この移動テーブル12には工具取付テーブル14が前後方向(図1において紙面に垂直な方向)に移動自在に支持され、かかる工具取付テーブル14に、ワーク16に所望の加工を施すための加工工具(図示せず)が取り付けられる。
【0019】
このNC旋盤2には、加工すべきワーク16を所要の通りに搬送するためのワーク搬送システム18が装備されている。このワーク搬送システム18は、加工前のワーク16を保持するための第1ワーク保持装置20(加工前ワーク保持装置)と、加工後のワーク16を保持するための第2ワーク保持装置(図示せず)(加工後ワーク保持装置)と、これら第1及び第2ワーク保持装置20を後述する如く移動させるためのワーク支持移動装置22とから構成され、第1ワーク保持装置20及び第2ワーク保持装置はワーク支持移動装置22によって一体的に移動される。ワーク支持移動装置22は、ワーク16を供給するワーク供給域(図示せず)からNC旋盤2のワーク加工域24を超えて延びる案内支持部材26を備え、この案内支持部材26に昇降支持アーム28が移動自在に支持され、この昇降支持アーム28の先端部に第1ワーク保持装置20(加工前ワーク保持装置)及び第2ワーク保持装置(図示せず)(加工後ワーク保持装置)が取り付けられている。
【0020】
このようなワーク搬送システム18では、ワーク支持移動装置22(案内支持部材26、昇降支持アーム28)は、例えば、図5に示すように第1及び第2ワーク保持装置20を搬送する。ワーク供給域の供給位置P2において加工すべきワーク16が第1ワーク保持装置20に供給され、加工前のワーク16を保持する第1ワーク保持装置は、供給位置P2から図1及び図5において右方に位置P1に移動し、この位置P1から上昇して位置P0に移動し、かく上昇した状態で位置P0から図1及び図5において右方に待機位置P3まで移動して待機する。
【0021】
その後、この第1ワーク保持装置20は、待機位置P3から位置P6に下降し、かく下降した状態で図1及び図5において左方に移動し、ローディング準備位置P7を経て加工域のローディング位置P8に移動し、このローディング位置P8において、第1ワーク保持装置20に保持された加工前のワーク16がNC旋盤2の加工チャック手段8に取り付けられる。
【0022】
また、この実施形態では、後述するように、加工後のワーク16が第2ワーク保持装置に受け渡された後に、第1ワーク保持装置20に保持された加工前のワーク16が加工チャック手段8に取り付けられるように構成されており、従って、この位置P4から下方に位置P6に移動し、この位置P6からローディング準備位置P7を経てローディング位置P8に移動し、更にローディング位置P8から位置P6に戻り、その後上昇して待機位置P3に移動する。
【0023】
その後、この第2ワーク保持装置は、待機位置P3から図1及び図5において左方に位置P0に移動し、この位置P0から位置P1まで下降し、かく下降した状態で図1及び図5において左方に排出位置P2(この位置P2は、第1ワーク保持装置20の供給位置に対応する)まで移動し、この排出位置にて第2ワーク保持装置に保持された加工後のワーク16が排出され、第1及び第2ワーク保持装置20は、上述したようにして一体的に移動される。
【0024】
図2をも参照して、図示のワーク保持装置20(加工前ワーク保持装置)について説明すると、このワーク保持装置20は、昇降支持アーム28の先端部に取り付けられた保持装置本体34を備え、この保持装置本体34の一端部(図2において左端部)には、相互に対向して配設された一対のハンドチャック爪36を備え、一対のハンドチャック爪36が径方向に移動自在に装着され、かかる一対のハンドチャック爪36間に、図2に実線で示すように、加工すべきワーク16が挟持される。この保持装置本体34の他端部(図2において右端部)には、エアシリンダ機構38が配設されている。このエアシリンダ機構38は、保持装置本体34に取り付けられたシリンダ本体40を備え、このシリンダ本体40内にピストン42が移動自在に装着され、このピストン42に出力軸44が固定されている。出力軸44は保持装置本体34を貫通して一端側に突出し、この突出端部に押圧部材46が取付ねじ48により取り付けられ、この出力軸44及び押圧部材46がワーク16を押し出すプッシャ部材47として機能する。この出力軸44を被嵌してコイルばね49が配設され、このコイルばね49はピストン42とシリンダ本体40の端壁(図2において左端壁)との間に介在されている。コイルばね49はピストン42を図2において右方に弾性的に偏倚し、図2に示すように出力軸44が収縮する収縮状態にエアシリンダ機構38を保持する。
【0025】
このエアシリンダ機構38は、図2に示すエア制御系によって制御される。このエア制御系は、圧縮空気を供給する圧縮空気供給源54(例えば、エアコンプレッサから構成される)を備えている。圧縮空気供給源54は供給ライン52を介してエアシリンダ機構38の伸張側に接続されている。また、エアシリンダ機構38の収縮側は大気ライン58を介して大気開放されている。このように構成されているので、供給ライン52を通して供給される圧縮空気の圧力が大きいと、この圧力によってピストン42が図2において左方に移動され、これによって、出力軸44が伸張し、プッシャ部材47は、図4に示す押出し状態となる。また、この圧縮空気の圧力が小さいと、コイルばね49の弾性偏倚力が圧縮空気の圧力よりも大きく、コイルばね49の作用によってピストン42が図2において右方に移動され、これによって、出力軸44が収縮され、プッシャ部材47は、図2に示す収縮状態となる。
【0026】
このワーク搬送システム18においては、エアシリンダ機構38に送給される圧縮空気の圧力を制御するための圧力制御手段を設けることが重要であり、この実施形態では、圧力制御手段として電空レギュレータ62が用いられている。図3を参照して、電空レギュレータ62は、それ自体周知のものであり、流入口64から流出口66に至る流路68が設けられたレギュレータ本体70を備え、流入口64が圧縮空気供給源54に接続され、流出口66がエアシリンダ機構38の伸張側に接続されている。このレギュレータ本体70には排出口72が設けられ、この排出口72は大気中に開放されている。流路68には給気弁74が配設され、この流路68と排出口72との間に排気弁76が配設されている。
【0027】
このレギュレータ本体70には、更に、ダイヤフラム78が配設され、このダイヤフラム78に取り付けられた作動軸80が排気弁76を貫通して給気弁74に作用するように構成されている。この給気弁74には第1コイルばね82が設けられ、第1コイルばね82は給気弁74を給気弁座83に向けて弾性的に偏倚し、給気弁74を閉状態に保持する。また、排気弁76には第2コイルばね84が設けられ、第2コイルばね84は排気弁76を排気弁座85に向けて弾性的に偏倚し、排気弁76を閉状態に保持する。また、作動軸80には排気弁76に作用するフランジ86が設けられている。
【0028】
電空レギュレータ62は、更に、給気弁74及び排気弁76を開閉制御するための給気電磁弁88及び排気電磁弁90を含んでいる。レギュレータ本体70の流路68の流入側(流入口64側)が第1ライン92を介して給気電磁弁88の流入ポートに接続され、ダイヤフラム78の第1室94が第2ライン96を介して給気電磁弁88の流出ポート及び排気電磁弁90の流入ポートに接続され、排気電磁弁90の流出ポートが大気中に開放されている。
【0029】
また、ダイヤフラム78の第2室98は、連通流路100を介してレギュレータ本体70の流路68の流出側(流出口66側)に連通されている。この連通流路100にはその空気圧力を検知するための圧力センサ102が配設されている。圧力センサ102の検知信号は制御手段104に送給され、またこの制御手段104には入力信号、即ちエアシリンダ機構38に送給される圧縮空気の圧力を制御するための信号が送給され、制御手段104は、上記入力信号及び上記検知信号に基づいて給気電磁弁88及び排気電磁弁90を制御する。
【0030】
この電空レギュレータ62による圧力空気の制御は、次のように行われる。制御手段104に入力される入力信号が大きくなる(入力信号の電流値又は電圧値が大きくなる)と、給気電磁弁88がオン(ON)になって連通状態に、また排気電磁弁90がオフ(OFF)となって遮断状態になる。このように切り換わると、圧縮給気供給源54からの圧縮空気が第1ライン92、給気電磁弁88及び第2ライン96を通してダイヤフラム78の第1室94に流れる。かくすると、この第1室の圧力が上昇し、ダイヤフラム78の図3において上面に作用し、作動軸80が給気弁74に作用して開放し、圧縮空気供給源54からの圧縮空気の一部が給気弁74を通して下流側に流れる。このように圧縮空気の一部が流れると、流路68の流出側の圧力が上昇し、この圧力が圧力センサ102により検知され、この圧力センサ102からの検知信号が制御手段104に送給され、圧縮空気の出力圧力が圧力センサ102を介して制御手段104にフィードバックされ、このようにして入力信号の大きさ(電流又は電圧の大きさ)に比例した出力圧力となるようにフィードバック制御され、入力信号に比例した圧縮空気の出力圧力が得られ、このように圧力制御された圧縮空気がエアシリンダ機構38に送給される。
【0031】
このワーク搬送システムにおいては、電空レギュレータ62の制御手段104に、図6に示す通りの入力信号が送給される。即ち、ワーク供給域の供給位置P2からワーク加工域24のローディング位置P8まで搬送する間は、入力信号の大きさが小さい、即ち電気信号の大きさが小さい保持信号が、この制御手段104に送給される。従って、この間は、圧縮空気供給源54から供給ライン52を通して圧力の小さい圧縮空気がエアシリンダ機構38(伸張側)に送給される。また、ローディング位置P8まで搬送されてワーク保持装置20の一対のハンドチャック爪36が図4に示すように開放されると、入力信号の大きさが大きい、即ち電気信号の大きさが大きいプッシャ信号が、この制御手段104に送給される。従って、このときには、圧縮空気供給源54から供給ライン52を通して圧力の大きい圧縮空気がエアシリンダ機構38(伸張側)に送給される。
【0032】
尚、図6に示すように、ローディング位置P8の上流側にローディング準備位置P7を設け、ワーク保持装置20がこのローディング準備位置P8に移動すると、電空レギュレータ62に供給される入力信号の大きさを上昇させるのが好ましい。即ち、ワーク保持装置20がワーク供給域からこのローディング準備位置P8まで移動する間は、電気信号が小さい第1保持信号が電空レギュレータ62に送給され、またこのローディング準備位置P8からローディング位置P8まで移動される間は、電気信号の大きさが上記第1保持信号よりも大きく且つプッシャ信号よりも小さい第2保持信号が送給されるようにするのが好ましく、このように圧縮空気の圧力を制御することによって、ワーク保持装置20のプッシャ部材47による押出し時間の短縮化を図ることができる。
【0033】
次に、主として図1、図2、図5及び図7を参照して、上述したワーク搬送システムによるワーク16のNC旋盤2への取付けについて説明する。ワーク供給域にてワーク16を保持した第1ワーク保持装置20(加工前ワーク保持装置)は、NC旋盤2によるワーク16の加工中は待機位置P3に保持されている(ステップS1)。このとき、制御手段104(図3)から電空レギュレータ62には入力信号の大きさが小さい保持信号(第1保持信号)が送給されている。従って、このときには、電空レギュレータ62によって圧力が小さくなるように制御された圧縮空気がエアシリンダ機構38送給され、プッシャ部材47は、シリンダ機構38に内蔵されたコイルばね49の作用によって収縮側に偏倚され、その押圧部材46が一対のハンドチャック爪36の底部に位置する収縮状態に保持される。
【0034】
このような待機状態において、NC旋盤2にてワーク16に対する所定の加工が終了すると、ステップS2からステップS3に進み、第2ワーク保持装置(図示せず)(加工後ワーク保持装置)が待機位置P3から位置P4を経てアンローディング位置P5に移動する。そして、このアンローディング位置P5にて、NC旋盤2の加工チャック手段8に保持された加工後のワーク16が第2ワーク保持装置に受け渡され、こようにして加工チャック手段8から加工後のワーク16が取り外されて第2ワーク保持装置に保持される(ステップS4)(このような第2ワーク保持装置の移動に伴って、第1ワーク保持装置20も一体的に移動する)。
【0035】
このようにワーク16が外されると、第2ワーク保持装置がアンローディング位置P5から位置P4に移動し、その後第1ワーク保持装置20(加工前ワーク保持装置)が位置P6に移動し(ステップS5)、更にローディング準備位置P7に移動する(ステップS6)(このような第1ワーク保持装置20の移動に伴って、第2ワーク保持装置も一体的に移動する)。かくすると、制御手段104(図3)が第2保持信号を生成し、この第2保持信号が電空レギュレータ62に供給され(ステップS7)、エアシリンダ機構38の伸張側に供給される圧縮空気の圧力が上昇し、これによって、第1ワーク保持装置20に保持されたワーク16に作用するプッシャ部材47の押圧力が大きくなる(この押圧力が大きくなるが、第1ワーク保持装置20に保持されたワーク16が離脱することはない)。
【0036】
このようにして第1ワーク保持装置20がローディング位置P8に移動する(ステップS8)と、図4に示すように、第1ワーク保持装置20の一対のハンドチャック爪36が開放され(ステップS9)、この開放と同時に制御手段104はプッシャ信号を生成し、このプッシャ信号が電空レギュレータ62に送給される(ステップS10)。かくすると、圧縮エアシリンダ機構38の伸張側に送給される圧縮空気の圧力が急激に上昇し、図4に示すように、プッシャ部材47の押圧部材46が伸張してワーク16に強く作用してこれを押し出し(ステップS11)、このワーク16は開放された状態の加工チャック手段8(三つの加工チャック爪10の間)に受け入れられる。このとき、圧力の大きい圧縮空気がエアシリンダ機構38の伸張側に送給されるので、プッシャ部材47の伸張速度が速く、このプッシャ部材47の押圧作用によってワーク16を短時間で加工チャック手段8に受け渡すことができる。
【0037】
このようにワーク16の加工チャック手段8への受け渡しが終わると、NC旋盤2の加工チャック爪10が閉じられ(ステップS12)、加工すべきワーク16は加工チャック手段8に保持される。その後、ワーク16の受渡しが確実に行われたかの検知が行われる(ステップS13)。この実施形態では、図4に示すように、加工チャック手段8に関連して確認センサ51が配設されており、この確認センサ51はワーク16の受渡しの検知を行う。尚、このワーク16の受渡しに代えて、第1ワーク保持装置20のローディング位置P8への前進を検知するようにしてもよい。
【0038】
その後、第1ワーク保持装置20は位置P6を経て待機位置P3に戻る(ステップS14)と、加工チャック手段8に保持されたワーク16に対する加工が行われ(ステップS15)、このワーク16に対する加工中に、第2ワーク保持装置(加工後ワーク保持装置)が位置P0、位置P1を経て排出位置P2に移動し、第2ワーク保持装置に保持された加工後のワーク16の排出が行われ(ステップS16)、また第1ワーク保持装置20(加工前ワーク保持装置)が供給位置P2にて新しいワーク16を保持する(ステップS17)。
【0039】
このようにして新しいワーク16の保持が行われると、制御手段104からの第1保持信号が電空レギュレータ62に送給され(ステップS18)、上述したと同様に、圧縮空気供給源54から供給ライン52を通して圧力の小さい圧縮空気がエアシリンダ機構38の収縮側に送給され、これによって、プッシャ部材47による押圧が弱くなり、第1ワーク保持装置20に保持されたワーク16の脱着が防止される。
【0040】
そして、ワーク16を保持する第1ワーク保持装置20が上述したと反対に移動して待機位置P3に移動し、ワーク16に対する加工が終了するまでこの待機位置P3に保持され、ワーク16に対する加工が終了すると、上述したステップS2からステップS19が繰り返し遂行される。
【0041】
以上、本発明に従うワーク搬送システムをNC旋盤に適用して説明したが、このようなNC旋盤に限定されず、その他の工作機械、例えばタレット旋盤、フライス盤などにも同様に適用することができる。
【0042】
また、上述した実施形態では、加工チャック手段が三つ爪のチャック爪から構成されているが、このようなチャック手段に限定されず、二つ爪又は四つ爪のチャック爪から構成されたもの、或いは異形チャック、コレットチャックなどの種々のチャック手段にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】一実施形態のワーク搬送システムを装備した工作機械の一例を示す簡略図。
【図2】図1のワーク搬送システムのワーク保持装置及びそのエア制御系を示す断面図。
【図3】図2のエア制御系における空電レギュレータの一例を示す断面図。
【図4】図2のワーク保持装置から工作機械の加工チャック手段へのワークの受け渡しを説明するための断面図。
【図5】図1のワーク搬送システムのワーク保持装置の移動を説明するための簡略説明図。
【図6】図3の空電レギュレータに送給される入力信号の電流値の変化を示す図。
【図7】加工するワークの搬送の流れを説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0044】
2 NC旋盤
6 主軸部
8 加工チャック手段
16 ワーク
18 ワーク搬送システム
20 ワーク保持装置
22 ワーク支持移動装置
24 ワーク加工域
34 保持装置本体
36 ハンドチャック爪
38 エアシリンダ機構
47 プッシャ部材
54 圧縮空気供給源
62 電空レギュレータ
104 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工すべきワークをワーク供給域から工作機械のワーク加工域に搬送するワーク搬送システムにおいて、
ワークを保持するためのワーク保持装置と、前記ワーク保持装置を前記ワーク供給域から前記ワーク加工域に所要の通りに移動するためのワーク支持移動装置と、を具備し、前記ワーク保持装置は、ワークを保持するための開閉自在なハンドチャック爪と、前記ハンドチャック爪に保持されたワークを押し出すためのプッシャ部材と、前記プッシャ部材を駆動させるためのエアシリンダ機構と、を備えており、
前記エアシリンダ機構に関連して、圧縮空気を供給する圧縮空気供給源と、前記圧縮空気供給源からの圧縮空気を前記エアシリンダ機構の伸張側に供給するための供給ラインとが設けられており、
更に、前記供給ラインには、前記圧縮空気供給源から供給される圧縮空気の圧力を制御するための圧力制御手段が設けられていることを特徴とするワーク搬送システム。
【請求項2】
前記圧力制御手段は、電気信号の大きさによって圧縮空気の圧力を制御する電空レギュレータから構成され、前記電空レギュレータは、電気信号の電流又は電圧の大きさに比例して前記供給ラインを通して供給される圧縮空気の圧力を制御することを特徴とする請求項1に記載のワーク搬送システム。
【請求項3】
前記ワーク保持装置が前記ワーク供給域から前記ワーク加工域に搬送される間は、電気信号の大きさが小さい保持信号が前記電空レギュレータに送給され、また前記ワーク加工域において前記ハンドチャック爪が開放されると、電気信号の大きさが大きいプッシャ信号が前記電空レギュレータに送給されることを特徴とする請求項2に記載のワーク搬送システム。
【請求項4】
前記ワーク供給域から前記ワーク加工域に搬送される間にローディング準備位置が存在し、前記ワーク保持装置が前記ワーク供給域から前記ローディング準備位置に搬送される間は、電気信号の大きさが小さい第1保持信号が前記電空レギュレータに送給され、また前記ワーク保持装置が前記ローディング準備位置から前記ワーク加工域に搬送される間は、前記信号の大きさが前記第1保持信号よりも大きく且つ前記プッシャ信号よりも小さい第2保持信号が前記電空レギュレータに送給されることを特徴とする請求項3に記載のワーク搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−5766(P2010−5766A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169966(P2008−169966)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(591014835)高松機械工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】