説明

一体化された流体取得、貯蔵、及び分配材料

【課題】液体が即座に取得され且つ着用者に対してZ軸方向に輸送され、しかも、液体が着用者に再度接触する問題を最小とするか又は除去する構造を提供する。
【解決手段】流体取得層、流体分配層、及びこれら流体取得層と流体分配層との間の流体貯蔵層を含む一体化された吸収構造を提供する。流体取得層、流体分配層、及び流体貯蔵層のそれぞれは互いに流体連通している。一体化構造は、予め形成された層からなる積層構造ではなく、各層が例えば空気堆積技術等によって連続的に統合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の取得、貯蔵及び分配用の領域としての個々の層を有する改良された繊維性吸収構造に関する。この構造は、おしめ、大人用おむつパッド、及び衛生ナプキン等の改良された使い捨て吸収製品の提供に有用である。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、大人用おむつパッド、衛生ナプキン等の吸収物品には、通常、吸収コア又は貯蔵層が設けられて、体液を受け取り、保持する。吸収コアは、普通は液体透過性トップシート(液体のコアへの通過を許容する機能を有する)と、液体を封じ込めて吸収物品を透過することを妨げる液体不透過性バックシートとの間に挟まれている。吸収コアは(例えばおむつや大人用おむつパッドでは)典型的には繊維状の、緩い、毛羽だった、親水性のセルロース繊維から構成された繊維性のかたまり(batt)又はウェブを含む。前記コアは超吸収性ポリマー(SAP)の粒子、造粒物、フレーク又は繊維をも含むことがある。更に、吸収物品は、液体を取得層から前記コアの貯蔵層へ迅速に輸送するのを助ける分配層を含むことがある。従来の吸収製品は(液体の)取得、分配、及び、貯蔵用に個別に形成された層を使用しており、製造ラインを複雑で込み入ったものとしていた。したがって、取得、分配、貯蔵機能が単一の統合された構造で発揮される吸収製品へのニーズが存在していた。
【0003】
より薄く、且つ、より快適な吸収物品を求める市場の要求は増大している。そのような物品は、おむつのコアの厚みを減少させるか、コア用の繊維材料の量を減らして代わりにSAP粒子の量を増大させるか、又は、厚みを減らすためにコアをカレンダー処理又は圧縮して密度を増大させることで得ることができる。しかし、コアの高密度化は有効孔サイズを小さくするので、高密度コアは低密度コアほど液体を迅速に吸収しない。したがって、適切な液体吸収速度を維持するためには、吸収物品上にもたらされた液体の取得速度を増大する高密度コアよりも、大きな孔サイズを有する低密度層を提供する必要がある。不適当な孔サイズのために、伝統的な吸収構造は大量の液体を吸収することができないという点に苦しんでいた。大量の液体を良好に吸収するために、十分な孔サイズの取得層を有する吸収構造が明らかに求められている。
【0004】
取得層、分配層及び貯蔵層を有する従来の多層吸収構造では、取得層が液体の来襲を取得し、毛細管現象により、濡れた皮膚から直ちに(Z軸方向へ)運び去る。次に、流体は分配層に突き当たる。分配層は典型的には高密度材料からなり、液体を濡れた皮膚から遠ざける方向へ(Z軸方向へ)移動させるとともに、構造に亘って(X軸−Y軸方向へ)広がらせる。最終的に、液体は貯蔵層に移動する。貯蔵層は一般に高密度セルロース繊維及びSAP粒子を含む。液体は貯蔵層、特に、そこに含まれるSAP粒子に吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5147343号明細書
【特許文献2】米国特許第5378528号明細書
【特許文献3】米国特許第5795439号明細書
【特許文献4】米国特許第5807916号明細書
【特許文献5】米国特許第5849211号明細書
【特許文献6】米国特許第2929154号明細書
【特許文献7】米国特許第3224986号明細書
【特許文献8】米国特許第3332909号明細書
【特許文献9】米国特許第4076673号明細書
【特許文献10】米国特許第5527171号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来の多層構造は有効かもしれないが、この配置の1つの欠点は、濡れた皮膚に向かって貯蔵層の側に分配層があるので、分配層の相対的に乏しい流体保持のために、液体が、貯蔵層によって吸収される前に濡れた皮膚に対して溜まってしまう可能性があるということである。着用者が動くと、圧力が生じて結果的に液体が解放され、再び着用者を濡らすことになりかねない。したがって、液体が即座に取得され且つ着用者に対してZ軸方向に輸送され、しかも、液体が着用者に再度接触する問題を最小とするか又は除去する構造を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、流体取得層;流体分配層;及び、前記流体取得層と分配層との間の流体貯蔵層を含む一体化された吸収構造を提供するものである。流体取得、分配、及び貯蔵層のそれぞれは互いに流体連通状態にある。
【0008】
本願明細書において引用される全ての文献は参照によって全て組み込まれている。矛盾がある場合には、定義を含むここでの記載がそれらに優先する。
【0009】
本発明は、液体の来襲を取得し、着用者の皮膚から毛細管現象により(Z軸方向へ)素早く運び去る取得層;高密度マトリックス繊維及びSAP粒子を含む貯蔵層;及び、貯蔵層を通り抜けた過剰の液体の一部を吸収し保持する分配層を有する一体化された多ゾーン又は多層(multi−strata)吸収構造を含む。ここで使用される用語「層(strata)」とは、一体化構造を構成する重ねられた領域を意味する。一体化構造の「層」は多くの分離した層の積層構造を構成する予め形成された層の集合体やラミネートではない。むしろ、一体化構造は層を連続的に統合させることによって構成される。エアーレイド(Airlaid:空気堆積)技術が本発明の一体化構造の層を組み立てるのに好ましい方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来の多層吸収体構造の概略断面図。
【図2】本発明の単一の多層吸収体構造の1つの可能な実施例の概略断面図。
【図3】本発明の単一の多層吸収体構造を通過する吸収された流体の流路の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一実施形態では、分配層は繊維性マトリックス材料を含み、液体を前記構造に亘って(X−Y軸方向へ)側面に移動させ、貯蔵層に戻し、液体は貯蔵層のSAP粒子によって吸収され貯留される。この配置は当該構造に進入した液体を着用者の皮膚から構造全体を通して運び去り、貯蔵層中に吸収するので、着用者の皮膚と当該構造との境界面に湿気が貯まる傾向が少ない。この発明は、また、増大された孔サイズを有する取得層の吸収構造をも含む。
【0012】
好ましい実施態様では、本発明の吸収構造は少なくとも3つの層を含み、それらは互いに全て流体連通状態にある。これら層は、流体取得(上方)層、流体貯蔵(中間)層、及び、流体分配(下方)層を含む。
【0013】
流体取得(上方)層は、ポリエステル(すなわちPET)、及び/又は、合成ホモポリマー繊維;0〜10%のSAP;及び、サーマル又はラテックスバインダー樹脂を含むことができ、典型的には、20〜120gsm(g/m2)の坪量を有する。流体貯蔵(中間)層は、綿毛セルロース及び/又は化学修飾されたセルロース繊維;10〜75%のSAP;及び、サーマルバインダー樹脂を含むことができ、典型的には、60〜400gsmの坪量を有する。流体分配(下方)層は、綿毛セルロース、及び/又は、化学修飾されたセルロース繊維;0〜10%のSAP;及びサーマル又はラテックスバインダー樹脂を含み、典型的には、20〜200gsmの坪量を有する。
【0014】
本発明の第2の好ましい態様では、4つの層を含む。それらは、合成繊維取得層(最上位);セルロース繊維取得層(中上位);貯蔵層(中下位);及び分配層(下位)である。
【0015】
これらの複合体の全体の坪量の範囲はSAP含有量が10〜75%として、100〜720gsmである。好ましい坪量範囲とSAP含有量は意図する用途によって異なる。女性用衛生製品及び少許容量の大人用おむつ用途には、坪量とSAP含有量は上記範囲の下限方向に向かう傾向がある。幼児用おむつ及び大容量の大人用おむつ用途には、坪量とSAP含有量は上記範囲の上限方向に向かう傾向がある。
【0016】
取得層は流体保持が最小となるように設計される。好ましい態様では、取得層のマトリックス繊維は少なくとも2デニールのサイズであるとともに、ラテックスで接着することができる合成繊維である。好ましい合成繊維の例には、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン類がある。別の好ましい態様では、取得層は3〜40デニールのカット長3〜12mmのひだ付きPET繊維を含むマトリックス繊維を含む。
【0017】
貯蔵層は比較的高濃度の超吸収性ポリマー(SAP)によって特徴づけられる。本発明で使用可能な超吸収性ポリマーのタイプは、例えば、不規則顆粒、球形顆粒、ステープル(staple)繊維及び他の伸びた形の粒子等の粒状形態のSAPである。特許文献1〜5には様々な超吸収性ポリマーと超吸収性ポリマーの製造方法が記載されている。超吸収性ポリマー形成系の1つの例は、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の他のモノマー又はアクリルアミドとアクリル酸の金属塩との架橋したアクリル共重合体である。多くの従来のペレット型超吸収性ポリマーは当該技術分野で周知の多くの多機能共モノマー架橋剤のいずれかによって重合中に架橋されたポリ(アクリル酸)に基づいている。多機能架橋剤の例は特許文献6〜9に記載されている。例えば、架橋されたカルボキシル化ポリ電解質は超吸収性ポリマーを形成するのに使用可能である。他の水溶性ポリ電解質ポリマーは架橋によって超吸収体を製造するのに有用であることが知られている。それらポリマーは、カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルセルロース、キトサン塩、ゼラチン塩等を含む。しかし、これらは、主にそのハイコストのために、使い捨て吸収物品の吸収性を向上させるために商業的スケールで広く使用されることはない。本発明の実施において有用な超吸収性ポリマー粒子は、ダウケミカル(ミシガン州ミッドランド)、ストックハウゼン(ノースカリフォルニア州グリーンスボロ)及びケムダル(イリノイ州アーリントンハイツ)等の多くの製造元から市販されている。好ましい態様では、SAPはストックハウゼン(Stockhausen)9350又はSX70等の表面架橋アクリル酸ベースの粉末である。
【0018】
個々の綿毛セルロース繊維のカール及び堅さの程度を増大するために修飾されたセルロース(例えば、Buckeye HPF修飾綿毛セルロース)は、本発明の流体取得及び保持を向上させるために標準的な綿毛(fluff)セルロース繊維に加えて、又はそれに代えて貯蔵層において使用することができる。
【0019】
X−Y方向に流体を分配することによって、分配層は流体の進入点から離れた貯蔵層中の超吸収粒子が流体を吸収することを可能とする。分配層は貯蔵層のSAPによって直ちには吸収されなかった流体を着用者の皮膚からZ軸方向に離れるように引っ張るようにも働く。
【0020】
分配層のマトリックス繊維は綿毛パルプ、修飾された綿毛セルロース、または、これらの混合物を含むことができる。好ましい態様では、分配層のセルロース繊維は繊維の堅さを減少させるように修飾されており、それによって、当該層はより容易に高密度化される。
【0021】
本発明の好ましい態様では、流体分配層は主に流体取得層の平均孔サイズよりも小さい平均孔サイズ、及び、貯蔵層の孔サイズ以下の孔サイズを有するセルロース繊維からなる。一般に、より小さい平均孔サイズはより高密度と相関する。好ましくは、分配層の密度は、取得及び貯蔵層の密度より大きい。分配層の密度が取得層及び貯蔵層の密度より大きい場合、高い流体取得速度、及び、高密度構造の特徴である高い流体保持、及び、低密度吸収構造の低いしみサイズ要因が達成可能である。
【0022】
好ましい態様では、本願発明の吸収構造の層はエアーレイド(airlaid:空気堆積)ウェブとして形成される。好ましくは、ウェブ形成過程中にSAP粉末を含むように作用する軽量(すなわち、10〜20gsm)セルロースティッシュ又は類似の支持層上に吸収層が空気堆積され、繊維収集ワイヤがSAP粒子で詰まるのを防止する。
【0023】
エアーレイドウェブは、まず、典型的には1つ以上のセルロースパルプシートを、典型的にはハンマーミルで、分解又は繊維化して、個々の繊維とすることによって製造される。個々の繊維は次にエアーレイドウェブ形成装置上のフォーミングヘッドへ空気搬送される。いくつかのエアーレイドウェブ形成装置の例が特許文献10に詳しく記述されている。フォーミングヘッドは繊維が孔(foraminous)濃縮ドラム又は孔コンベア(又はフォーミングワイヤ)へ真空で引っ張られるまで繊維分離を維持するように機能する回転又は撹拌ドラムを含むことができる。合成熱可塑性繊維等の他の繊維が、繊維開口部、供給ユニット及びエアコンベアを含む繊維供給システムを通してフォーミングヘッドに導入されてもよい。綿毛パルプ分配層及び合成繊維取得層等の2つの定義された層が必要な場合、それぞれのタイプの繊維のために2つの異なるフォーミングヘッドを使用することができる。繊維がエアーレイドされた後、得られた構造物は高密度化され、各繊維は互いに結合される。
【0024】
典型的には、カレンダーが得られた構造物の高密度化に使用される。全ての層がエアーレイドされる前に圧縮が行われてもよい。例えば、エアーレイドされた最初のかたまり(batt)を圧縮し、次の繊維かたまりをエアーレイドする前に約0.08〜約0.20gr/ccの密度を有する分配層を形成することができる。
【0025】
取得、分配、及び/又は、貯蔵層の繊維は、ウェブ繊維と共に存在する熱可塑性バインダー繊維を熱軟化することによって一緒に結合することができる。熱可塑性バインダー繊維はセルロース性繊維を過度に損傷することのない温度で溶融可能なあらゆる熱可塑性ポリマーを含む。好ましくは、熱可塑性バインダー材料の溶融温度は約175℃未満である。好ましい熱可塑性材料の例は、熱可塑性微小繊維、熱可塑性粉末、ステープル形状の結合繊維、及び、2成分系ステープル繊維を含む。特に、熱可塑性バインダー材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロライド、ポリビニリレンクロライドとすることができる。熱接着ウェブに利用可能な他の繊維状合成材料は上記のとおりである。熱可塑性繊維はセルロース繊維とエアーレイドウェブ形成装置中で混合することができ、または、エアーレイド後に続く適当な層に添加することもできる。
【0026】
或いは、さらに、取得及び分配層はラテックススプレーによって一緒に結合されてもよい。ラテックス形態で使用可能なエラストマー重合体の例は、ブタジエン−スチレン、ブタジエン−アクリロニトリル、及び、クロロプレン(ネオプレン)である。ラテックスで使用可能な合成ポリマーの他の例は、アルキルアクリレート類、エチレンビニルアセテート等のビニルアセテート類、及び、スチレン−ブタジエンアクリル等のアクリル類のポリマー又はコポリマーである。産業上の衛生、及び、溶媒循環ステップの除去のために、合成ラテックスは有機溶媒エマルジョンではなく水系ベースエマルジョンとして塗布することができる。本発明で有用なラテックスはあるオレフィン性(エチレン性不飽和)モノマー類の乳化重合によって製造することができる。乳化重合は、得られたラテックスを安定化するための、アルキル硫酸塩、アルキルアリールアルコキシ硫酸塩、アルキルアリールスルホネート、及び、アルキル−及びアルキルアリール−ポリグリコールエーテル硫酸塩のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩;オキシエチレン化脂肪アルコール又はオキシエチレン化アルキルフェノール、並びに、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのブロック共重合体;第1級、第2級又は第3級脂肪アミン又は脂肪アミンオキシエチレートと、有機又は無機酸、並びに、第4級アンモニウム界面活性剤とのカチオン性付加物;及び、アルキルアミドプロピルベタイン類を含む様々なアニオン性、非イオン性、カチオン性、2イオン性すなわち両性の乳化剤を用いて慣用の方法で行うことができる。オレフィン性モノマーは1種類のモノマーでもよく、また、水性相に分散又は乳化する共重合体粒子を形成するために異なるオレフィン性モノマーの混合物でもよい。ラテックスポリマーを形成するのに使用可能なオレフィン性モノマーの例は、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、エチルアクリレート、及びそれらの混合物の群から選択されるようなC2−C4アルキル及びヒドロキシアルキルアクリレート類を含む。他の例は、プロピルメタリレート、n−ブチルメタリレート、イソブチルメタリレート、2−ヒドロキシエチルメタリレート、2−ヒドロキシプロピルメタリレート、エチルメタリレート、メチルメタクリレート、ビニルアセテート及びそれらの混合物の群から選択されるようなC1−C4アルキル又はヒドロキシアルキルメタクリレート類である。また、適当なものは、上記したC2−C4アルキル及びヒドロキシアルキルアクリレート類及びC1−C4アルキル又はヒドロキシアルキルメタクリレート類の混合物である。ラテックスを塗布する方法は、被覆、浸漬、ブラッシング、スプレー、及び、泡立てを含む。好ましい方法では、ラテックスはスプレーによって塗布される。ラテックス樹脂は繊維ウェブの圧縮の前後に塗布することができる。
【0027】
2成分ステープル繊維は、低融点殻ポリマー(典型的にはポリエチレン(例えば、Hoechst−Trevira型−225(NC,シャルロット))、修飾ポリエチレン又は共ポリエステル類)によって囲まれた高融点コアポリマー(典型的にはポリエチレンテレフタラート(PET)又はポリプロピレン)によって特徴づけられる。
【0028】
結合されたウェブは強度増強或いはデザイン又はパターンをエンボス加工するために再度カレンダー処理することができる。熱可塑性繊維が存在する場合は、ウェブにパターン化された結合を与えるために熱カレンダー処理を行うことができる。ダストを最小とし、又は、静電気の蓄電を低減するための特定の、又は望ましい湿気量を維持するために、必要であれば、ウェブに水を添加することができる。最終的に得られたウェブは将来の使用のために巻き取られてロールとされる。
【実施例】
【0029】
以下の実施例は本発明を例証するためのものであり、その範囲を何ら制限するものではない。
【0030】
本発明の好ましい実施態様のいくつかの例が表1及び2に記載される。表1、2及び3に記載される実施態様の原料は特に断らない限り以下のとおりである。
綿毛セルロース: Buckeye Foley Fluff(Buckeye
Technology社、メンフィス、TN)
接着繊維: Hoechst−Trevira T−255(Hoechst−Trevira社、シャルロット、NC)
ラテックスバインダー:AirFlex 192(Air Products社、アレンタウン、PA)
PET繊維: D2645型6テ ゛ニ ール×6mmひだ付き繊維(Hoechst−Trevira社、独)
ティッシュ: 18gsm(g/m2)ウエットレイド(wet laid)
【0031】
[例1]
【0032】
【表1】

【0033】
MJ998−MF−17材料はM&J型エアーフォーミングラインにて形成された。最初に、ティッシュ上にセルロース性分配層が形成された。次に、貯蔵層が分配層上に形成され、更に、取得層が貯蔵層上に形成された。得られた3つの層材料は熱的に結合され、更に、全体として0.142gr/ccの密度とするようにカレンダー処理によって圧縮された。
【0034】
[例2]
その他の実施態様では、他の層が空気堆積される前に分配層が最初に圧縮され、全ての層が一緒に圧縮された。
【0035】
【表2】

【0036】
MJ998−MF−18b材料はM&J型エアーフォーミングラインにて形成された。最初に、ティッシュ上にセルロース性分配層が形成され、0.15gr/ccの密度となるようにカレンダーで圧縮された。次に、貯蔵層が分配層上に形成され、更に、取得層が貯蔵層上に形成された。得られた3つの層材料は圧縮され、更に、全体として0.081gr/ccの複合体材料密度となるように熱的に接合された。
【0037】
[例3]
分配層のセルロース繊維は熱的に一緒に接合されることが好ましい。表3には、熱的に接合された綿毛セルロース分配層が貯蔵層上且つ取得層下に存在する複合体例が記載されている。
【0038】
【表3】

【0039】
MJ998−MF−9材料はM&J型パイロットラインにて形成された。この材料は、流体貯蔵層が最初に形成される点で既述した構造を反映している。分配層が貯蔵層上に形成され、次に、取得層が分配層上に形成された。分配層中の綿毛セルロースはBuckeye HPF繊維であった。この3つの層構造は熱的に接合され、全体として0.094gr/ccの密度となるように圧縮された。
【0040】
[液体取得及び液体保持テスト]
上記の複合体材料が流体取得テストにかけられた。各サンプル(10cm×25cmのサイズを有する)は適当な被覆貯蔵材料で包装され、ワイヤ付きボトム流体取り入れテスト(FIT)板上又は下に向いたキャリア側に載置された。サンプルの真ん中には印が付けられた。
【0041】
取得速度評価はテストサンプルを3つの連続した10mlの0.9%食塩水の注入にかけて為された。0.9%食塩水の最初の10mlの注入はFIT板の透明添加チューブに溢れさせることなくできるだけ早く行われた。注入の瞬間から食塩水がテストサンプルに届くまでの時間が測定された。食塩水全部がチューブの最下端から通過するとすぐストップウォッチが停止された。記録された時間は最上層による取得に要した時間である。1分のインターバル後、この工程が第2及び第3の10mlの注入が繰り返された。
【0042】
各流体の注入から取得速度が下記式に従って決定された。
取得速度(ml/s)=流体注入体積(ml)/取得時間(s)
【0043】
上記の複合体材料は、各流体注入後に0.1psi圧下の濾紙の堆積物によって、構造物の最上シートを通して戻って吸収されうる0.9%食塩水溶液の量を測定する流体保持テストにかけられた。3つの個別の測定(各測定81/2”×11”)用のサンプルが準備された。各サンプルはティッシュの側面を下にしてプラスチックの台上に載置され、真ん中に目印が付けられた。0.9%食塩水溶液の10ml(最初の注入)がサンプルの真ん中の約1.5”上の距離から漏斗を通して排出された。サンプルは20分間そのままとされた。12枚の濾紙の堆積物が秤量され、濡れた領域の真ん中に載置され、更に、最上面から円形のおもりによって圧縮された。2分後、濡れた濾紙が除去され、再度秤量された。この手順が10mlの第2の注入及び16枚の濾紙を用いて繰り返され、また、10mlの第3の食塩水の注入及び20枚の濾紙の堆積物を用いて繰り返された。再濡れ値及び流体保持率が下記式に従って第1、第2及び第3の注入に対して計算された。
再濡れ値1,2又は3 = 濡れた濾紙重量−乾燥した濾紙重量
流体保持率 = (50−再濡れ値)50×100%
更に、流体保持テストについて、第3の注入後の流体しみサイズが記録された。結果が表4に示されている。
【0044】
【表4】

【0045】
MF−9及びMF−17の比較は、流体分配層を中間位置(MF−9のように)から3層構造の最下部(MF−17のように)へ移動させると、流体取得速度のいくらかの減少及び流体しみサイズの増大という損失の代わりに流体保持がかなり増大することを示す。
本発明の2倍圧縮実施態様であるMF−18bは、流体取得速度、流体保持及びしみサイズにおいてMF−9よりも改善を示す。
【0046】
[追加実施例]
以下の実施例では、特に断らない限り、原料は以下のとおりである。
標準綿毛パルプ: Foley Fluff(Buckeye Technologies社、メンフィス、TN)
弾性綿毛パルプ: HPF(Buckeye Technologies社、メンフィス、TN)
圧縮綿毛パルプ: ND416(Weyerhaeuser社、タコマ、WA)
超弾性綿毛パルプ: 1180(Stockhausen社、グリーンスボロ、NC )
バインダー繊維: T−255、2.8dtex×4mm(Kosa社、シャルロット、NC)
PET繊維: T−224、17dtex×6mm(Kosa社、シャルロット、NC)
ラテックスバインダー:AirFlex 192(Air Products社、アレンタウン、PA)
上記の複合体材料は特に断らない限り上記の流体取得テスト及び流体保持テストを受けた。
【0047】
[例4及び5−取得層マトリックス繊維]
例4及び5は、複合吸収構造中の取得層中のラテックス結合綿毛セルロース繊維とラテックス結合合成繊維を比較している。
【0048】
例BU124−19はラテックス結合PET繊維取得層を有する本発明の実施態様であり、BU124−22は取得層がラテックス結合標準綿毛セルロース繊維からなることを除いてBU124−19を同一である。
【0049】
【表5】

【0050】
【表6】

【0051】
表A3(下記表6)は、BU124−22(ラテックス結合標準セルロース綿毛取得層を有する)及びBU124−19(ラテックス結合PET繊維取得層を有する)のサンプルの相対流体取得速度及び保持性能を示している。
【0052】
【表7】

【0053】
[例6及び7−3層一体化構造中の中間層のSAP対最下層のSAP]
例6及び7は、中間層中にSAPを有する吸収構造と3層一体化構造中の最下層中にSAPを有する吸収構造とを比較している。
【0054】
例X575は、中間層にSAPを有する本発明の好ましい実施態様である。例572は、超吸収体粉末が最下層に位置している以外はX575と類似している。
【0055】
【表8】

【0056】
【表9】

【0057】
表B3(下記表10)は、X575及びX572サンプルの流体取得及び保持性能を示している。
【0058】
【表10】

【0059】
[例8及び9−好ましい実施態様対商品化されている薄い衛生パッド]
例8及び9は、本願の好ましい吸収構造のいくつかと商品化されている薄い衛生パッドとを比較している。
例X573及びX574は本発明の好ましい実施態様である。それらは、X575サンプルとは坪量のみが異なっている。
【0060】
【表11】

【0061】
【表12】

【0062】
表C3(下記表13)は、本発明の好ましい実施態様対商品化されている薄い衛生パッドの流体取得及び保持性能を示している。
【0063】
【表13】

【0064】
[例10及び11−化学修飾された綿毛セルロース対標準綿毛セルロース]
例10及び11は分配層のために化学修飾された綿毛セルロース及び標準綿毛セルロースを含む構造を比較している。
【0065】
【表14】

【0066】
【表15】

【0067】
表D3(下記表16)は、MJ299−MF−2及びMJ299−MF−6サンプルの流体取得及び保持性能を与えている。表D3用のテスト手順は、0.9%食塩水溶液の10mlの多重注入が流体取得及び保持テストに利用される点でMQ3RD023流体取得及びMQ3RD022流体保持のそれとは異なる。
【0068】
【表16】

【0069】
[例12−好ましい実施態様 対 商品化されている幼児用おむつ]
例12は、本願の好ましい吸収構造のいくつかと市販されている幼児用おむつとを比較している。
例MJ998−HMF−3は、幼児用おむつコア/取得層が取り替えられるようにデザインされている本発明の実施態様である。
【0070】
【表17】

【0071】
表E2(下記表18)は、MJ998−HMF−3及びいくつかの市販のおむつの流体取得速度及び流体保持テスト結果を示している。テスト手順は、全ての流体注入が0.9%食塩水50mlであり、MJ998−NHF−3が10cm×25cmセクションにカ
ットされた以外は、他の例と類似している。
【0072】
【表18】

【0073】
[例13]
【0074】
【表19】

【0075】
表F(表19)は、様々な綿毛セルロース繊維とPET繊維の与えられた圧縮力への反応の比較を提供する。表Fの繊維は:15デニール×6mm×4ひだ/インチPET繊維(Kosa社、サリスバリー、NC);HPF 化学的に堅くされた綿毛セルロース繊維(Buckeye Technologies社);Foley Fluff 標準的な綿毛セルロース繊維(Buckeye Technologies社);ND−416 化学的に軟化された綿毛セルロース繊維(Weyerhaeuser社、タコマ、WA)である。
【0076】
各繊維の90gsmサンプルとT−255バインダー繊維の10gsmを含む混合物がオープンされ、100gsmの繊維のかたまりへと空気を用いて形成された。繊維のかたまりは熱空気オーブン中で結合された。各材料の個々の片は0psi、45psi、900psi及び1350psiの圧縮力を1分間受けた。各圧縮サンプルの圧みが測定され、密度が決定された。圧縮力の関数としての密度が表Fに示されている。この表は、様々な繊維が、負荷圧縮力に応じた密度の、結合された空気堆積材料を生産することを示す。
【0077】
PET繊維からなる最上層とBuckeye HPF繊維を含む中間層と、Weyerhaeuser ND−416繊維からなる最下層を備えた、圧縮された一体化構造は最上面から底面にかけて一定の密度をもたない。その代わり、表Fに示されたデータは、3層密度勾配が、最低密度を有する最上位PET層と再考密度を有する最下位ND−416層を備える圧縮された構造中で生じることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリエステル及び/又は合成ホモポリマー繊維、又はフラフセルロース若しくは合成繊維、及び熱バインダー及び/又はラテックスバインダーを備える流体取得層であって、20〜120gsm(1平方メータ当たりのグラム数)の坪量を有する、前記流体取得層と、
(b)フラフセルロース及び/又は化学的に修飾されたセルロース繊維、及び熱バインダー及び/又はラテックスバインダーを含み、20〜120gsmの坪量を有する流体分配層と、
(c)前記流体取得層と前記流体分配層との間の流体貯蔵層であって、10〜75重量%の超吸収性ポリマーを含むとともに60〜400gsmの坪量を有する、前記流体貯蔵層と、
を備え、
前記流体取得層、前記流体分配層、及び前記流体貯蔵層のそれぞれが互いに流体連通しており、
前記流体分配層の密度が、前記流体取得層の密度及び前記流体貯蔵層の密度より大きいことを特徴とする一体化吸収構造。
【請求項2】
前記流体分配層は、前記流体取得層及び前記流体貯蔵層の総計密度の少なくとも2倍の密度を有することを特徴とする請求項1に記載の一体化吸収構造。
【請求項3】
前記一体化吸収構造は、多層構造を形成する、予備形成された複数の層の集合体又は積層体ではなく、好ましくはエアーレイド技術によって、層を連続的に統合することによって構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の一体化吸収構造。
【請求項4】
前記層は、担持層の頂面、好ましくは10〜20gsmの坪量を有するセルロースティシューの頂面にエアーレイドされることを特徴とする請求項3に記載の一体化吸収構造。
【請求項5】
前記層それぞれの平均弾性は、前記流体取得層から前記流体分配層への方向に勾配を持って減少することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の一体化吸収構造。
【請求項6】
前記流体取得層は、水性ラテックスバインダー樹脂、2成分系繊維、又はそれらの混合物を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の一体化吸収構造。
【請求項7】
前記流体取得層は、少なくとも2デニールのサイズである合成繊維を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の一体化吸収構造。
【請求項8】
前記流体取得層は、2成分系繊維、ポリオレフィン粉末、及びそれらの混合物からなるグループから選択されたバインダーをさらに備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の一体化吸収構造。
【請求項9】
前記流体取得層は、少なくとも2デニールのサイズであるポリエチレンテレフタレート(PET)繊維を備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の一体化吸収構造。
【請求項10】
前記流体取得層は、カット長3〜15mmを有する3〜15デニールのひだ付きPET繊維を備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の一体化吸収構造。
【請求項11】
前記流体取得層は、セルロース繊維からなる第1の部分層、及び合成繊維を備える第2の部分層を備え、第1の部分層は第2の部分層よりも前記流体著創造に近いことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の一体化吸収構造。
【請求項12】
前記流体貯蔵及び前記流体分配層がそれぞれ熱可塑性結合繊維を含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の一体化吸収構造。
【請求項13】
前記流体貯蔵層がセルロース繊維及び超吸収性ポリマーを含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の一体化吸収構造。
【請求項14】
前記流体貯蔵層が、繊維のカール及び/又は堅さを増大するように修飾されたセルロース繊維を備えることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の一体化吸収構造。
【請求項15】
前記流体分配層の平均孔サイズは、前記流体取得層の平均孔サイズより小さく、且つ、前記流体貯蔵層の平均孔サイズ以下であることを特徴外する請求項1〜14のいずれか一項に記載の一体化吸収構造。
【請求項16】
前記流体分配層の平均孔サイズが、前記流体取得層又は前記流体貯蔵層のいずれの平均孔サイズより小さいことを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の一体化吸収構造。
【請求項17】
前記流体分配層の平均孔サイズが、前記流体取得層の平均孔サイズの1/2より小さいことを特徴とする請求項1に記載の一体化吸収構造。
【請求項18】
前記層それぞれの平均孔サイズが、前記流体取得層から前記流体分配層への方向に勾配を持って減少することを特徴とする請求項1に記載の一体化吸収構造。
【請求項19】
前記流体分配層は、前記繊維の硬さを減少させるように修飾されたセルロース繊維を備えることを特徴と刷る請求項1〜18のいずれか一項に記載の一体化吸収構造。
【請求項20】
前記流体貯蔵層に対抗する前記流体分配層の面に接触するティシュー層をさらに備えることを特徴とする請求項1〜19のじれ嘉一項に記載の一体化吸収構造。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の一体化吸収構造を組み込んだオムツ。
【請求項22】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の一体化吸収構造を組み込んだ女性用生理パッド。
【請求項23】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の一体化吸収構造を組み込んだ大人用失禁パッド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−125597(P2012−125597A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−50169(P2012−50169)
【出願日】平成24年3月7日(2012.3.7)
【分割の表示】特願2001−501158(P2001−501158)の分割
【原出願日】平成12年6月8日(2000.6.8)
【出願人】(500562215)ビーケイアイ・ホールディング・コーポレーション (6)
【Fターム(参考)】