説明

一体型の吸引ポンプ及びカートリッジを備えた水晶体乳化用ハンドピース

眼科手術用ハンドピースが、ホーンにカップリングされたドライバを有する。ホーンはニードルにカップリングされている。吸引ポンプがハンドピースと一体的であり、ニードルに近接して配置されている。吸引ポンプは、シャフトにカップリングされたモータを有する。取り外し可能なカートリッジが、管ホルダによって保持された所定の長さの可撓管を有する。所定の長さの可撓管はシャフトと、管ホルダとの間に配置されている。取り外し可能なカートリッジは、吸引ラインの区分を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶体乳化術(phacoemulsification)、より具体的には、白内障手術中の眼内で被る圧力をより良好に調節する機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの眼は、角膜と呼ばれる透明な外側部分に光を透過させ、そして水晶体を通して網膜に像を集束することによって、視力を提供するように機能する。集束される像の質は、眼のサイズ及び形状、並びに角膜及び水晶体の透明度を含む数多くの要因に依存する。年齢又は疾患が水晶体の透明度を低くするようになると、網膜に伝達することができる光が減少するため、視力が低下する。眼の水晶体のこのような欠陥は白内障として医学的に知られている。このような状態に対して一般に認められている治療は、水晶体を外科的に除去し、そして水晶体の機能を人工的な眼内レンズ(IOL)によって代替させることである。
【0003】
米国内では、白内障水晶体の大部分は、水晶体乳化術と呼ばれる外科的技術によって除去される。水晶体乳化処置に適した典型的な手術用ハンドピースは、超音波駆動型の水晶体乳化ハンドピースと、灌流スリーブによって取り囲まれた付属の中空カッティング・ニードルと、電子制御コンソールとから成る。ハンドピース集成体は、電気的なケーブル及び可撓管によって制御コンソールに取り付けられている。電気的なケーブルを通して、コンソールは、ハンドピースによって付属のカッティング・ニードルに伝送される出力レベルを変化させる。可撓管は手術部位に灌流流体を供給し、そして眼からハンドピース集成体を通して吸引流体を引き出す。
【0004】
典型的なハンドピースにおける作業部分は、一連の圧電性結晶に直接的に取り付けられた、中央に配置された中空共鳴バー又はホーンである。結晶は、水晶体乳化処置中にホーン及び付属のカッティング・ニードルの両方を駆動するのに必要となる所要の超音波振動を供給し、そしてコンソールによって制御される。結晶/ホーン集成体は、可撓性の取り付け手段によってハンドピースの中空体又はシェル内部に懸吊されている。ハンドピース本体は、本体の遠位端部に設けられた減径部分又はノーズコーンで終わっている。典型的には、ノーズコーンは、中空灌流スリーブを受容するために雄ねじ山を備えている。灌流スリーブはカッティング・ニードルの長さのほとんどを取り囲んでいる。同様に、ホーンの孔は、カッティング先端の雄ねじ山を受容するために、その遠位端部に雌ねじ山を備えている。灌流スリーブはまた雌ねじ山付き孔を有していて、この雌ねじ山付き孔はノーズコーンの雄ねじ山に螺合する。カッティング・ニードルは、灌流スリーブの開放端部を超えて所定の量だけしか突出しないように調節される。
【0005】
水晶体乳化処置中に、眼の外側組織内を小切開することにより、カッティング・ニードルの先端及び灌流スリーブの端部を眼の前眼部内に挿入する。医師は、カッティング・ニードルの先端を眼の水晶体と接触させるので、振動する先端は水晶体を砕く。結果として生じた破片は、処置中に眼に灌流液を提供しながら、眼からカッティング・ニードルの内孔を通して廃棄物リザーバ内に吸引する。
【0006】
処置全体を通して、灌流流体が眼内にポンプ供給され、灌流流体は灌流スリーブとカッティング・ニードルとの間を通り、そして灌流スリーブの先端から、且つ/又は灌流スリーブの端部近くに切削された1つ又は2つ以上のポート又は開口から流出して眼内に入る。この灌流流体は、乳化された水晶体の除去中に眼が崩壊するのを防止するので、極めて重要である。灌流流体はまた、超音波カッティング・ニードルの振動によって発生する熱から眼組織を保護する。さらに、灌流流体は、眼から吸引するために、乳化された水晶体の破片を懸濁する。
【0007】
外科的処置全体を通して発生する流量の変動から、水晶体乳化処置中の共通の現象が生じる。流量が変動する結果、灌流流体供給部から眼までの灌流流体経路における圧力損失量が変動し、ひいては、前房内の圧力(眼圧又はIOPとも呼ばれる)の変化を引き起こす。流量が大きいほど、圧力損失が大きくなり、またIOPが低くなる。IOPが低くなるのに伴って,眼内部の作業スペースは小さくなる。
【0008】
吸引ニードルの目詰まり又は閉塞から、水晶体乳化処置中の別の共通の厄介な問題が生じる。灌流流体及び乳化された組織が、中空カッティング・ニードルを通して眼の内部から吸引されるので、ニードル孔の直径よりも大きい組織片はニードル先端内に詰まるようになることがある。先端が詰まっている間、先端内部には真空圧が形成される。詰まりが除去されたときに眼の前房内の圧力が結果として降下することは、閉塞後サージとして知られている。このような閉塞後サージによって、いくつかの事例では、比較的大量の流体及び組織が、あまりにも速く眼から吸引されることになるので、眼が崩壊し、且つ/又は水晶体嚢が裂断されるおそれがある。
【0009】
このようなサージを低減するために、例えば吸引ラインを通気するといった種々様々な技術が考えられている。しかしながら、閉塞後サージを低減し、また変動する流動条件全体を通して安定なIOPを維持する、改善された水晶体乳化機器が引き続き必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の原理と一致する一実施形態の場合、本発明は、眼科手術用ハンドピースであって、ドライバと、吸引ポンプと、取り外し可能なカートリッジとを含んでおり、ドライバは、ニードルにカップリングされたホーンにカップリングされており;吸引ポンプはハンドピースと一体的であり、ニードルに近接して配置されており;取り外し可能なカートリッジは、吸引ポンプと相互作用し;取り外し可能なカートリッジは、吸引ラインの区分を含む、眼科手術用ハンドピースである。
【0011】
本発明の原理と一致する別の実施形態の場合、本発明は、眼科手術用ハンドピースであって、ドライバと、吸引ポンプと、取り外し可能なカートリッジとを含んでおり、ドライバは、ニードルにカップリングされたホーンにカップリングされており;吸引ポンプはハンドピースと一体的であり、ニードルに近接して配置されていて、シャフトにカップリングされたモータを含み;そして取り外し可能なカートリッジは、管ホルダによって保持された所定の長さの可撓管を含み、所定の長さの可撓管はシャフトと管ホルダとの間に配置されており;取り外し可能なカートリッジは、吸引ラインの区分を含む、眼科手術用ハンドピースである。
【0012】
本発明の原理と一致する別の実施形態の場合、本発明は、眼科手術用ハンドピースであって、ドライバと、吸引ポンプと、所定の長さの剛性の吸引ラインとを含んでおり、ドライバは、ニードルにカップリングされたホーンにカップリングされており;吸引ポンプはハンドピースと一体的であり、ニードルに近接して配置されており;そして所定の長さの剛性の吸引ラインは、吸引ポンプとニードルと間に配置されている、眼科手術用ハンドピースである。
【0013】
言うまでもなく、前記の全般的な記述及び下記の詳細な記述は、例示的且つ説明的なものにすぎず、請求項に記載した本発明のさらなる説明を提供しようとするものである。下記説明、並びに本発明の実施は、本発明の付加的な利点及び目的を明らかにし、示唆する。
【0014】
本明細書中に組み入れられ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明のいくつかの実施形態を示しており,記述内容とともに本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の原理による一体型吸引ポンプを備えたハンドピースを含む水晶体乳化システムの流体経路内の構成部分を示すダイアグラムである。
【図2】本発明の原理による一体型吸引ポンプを備えた水晶体乳化用ハンドピースを示すブロック・ダイアグラムである。
【図3】本発明の原理による一体型吸引ポンプを備えた水晶体乳化用ハンドピースを示すブロック・ダイアグラムである。
【図4】本発明の原理による一体型吸引ポンプを備えた水晶体乳化用ハンドピースの一部を示す側面図である。
【図5】本発明の原理による一体型吸引ポンプを備えた水晶体乳化用ハンドピースの一部を示す断面図である。
【図6】本発明の原理による一体型吸引ポンプを備えた水晶体乳化用ハンドピースと一緒に使用するための、取り外し可能なカートリッジを示す側面図である。
【図7】本発明の原理による一体型吸引ポンプを備えた水晶体乳化用ハンドピースと一緒に使用するための、取り外し可能なカートリッジを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の模範的な実施形態をここで詳細に参照する。これらの実施形態の例が添付の図面に示されている。可能な場合には、同じ又は同様の部分を示すために、図面全体を通して同じ符号を使用する。
【0017】
図1は、本発明の原理による一体型吸引ポンプを備えたハンドピースを含む水晶体乳化システムの流体経路内の構成部分を示すダイアグラムである。図1は、白内障手術中に眼145を通る流体経路を示している。構成部分は、灌流源120、任意の灌流圧力センサ130、任意の灌流弁135、灌流ライン140、ハンドピース150、吸引ライン155、任意の吸引圧力センサ160、任意の通気弁165、ポンプ170、リザーバ175、及びドレン・バッグ180を含む。灌流ライン140は、白内障手術中に灌流流体を眼145に提供する。吸引ライン155は、白内障手術中に流体と乳化された水晶体粒子とを眼から取り除く。
【0018】
灌流流体は灌流源120を出ると、灌流ライン140を通って眼内145内に移動する。灌流圧力センサ130が、灌流ライン140内の灌流流体の圧力を測定する。灌流のオン/オフ制御のために任意の灌流弁135も設けられている。灌流センサ130は、数多くの商業的に入手可能な流体圧力センサのうちのいずれかによって実現される。
【0019】
水晶体乳化処置中には、眼145に関連してハンドピース150が置かれる。ハンドピース150は中空のニードル(図2及び3の符号270)を有している。ニードルは、疾患のある水晶体を砕くために、眼内で超音波により振動させられる。ニードルの周りに配置されたスリーブが、灌流ライン140からの灌流流体を提供する。灌流流体は、ニードルの外側とスリーブの内側との間の空間を通過する。流体及び水晶体粒子が中空のニードルを通して吸引される。こうして、中空ニードルの内部通路は、吸引ライン155に流体カップリングされている。ポンプ170は、眼145から吸引された流体を引き出す。吸引圧力センサ160は吸引ライン内の圧力を測定する。ポンプ170によって形成された真空を放出するために、任意の通気弁を使用することができる。吸引された流体は、リザーバ175を通過してドレン・バッグ180に入る。
【0020】
図2は、本発明の原理による一体型吸引ポンプを備えた水晶体乳化用ハンドピースを示すブロック・ダイアグラムである。図2において、ハンドピース150は、モータ210と、シャフト220と、取り外し可能なカートリッジ230と、任意の吸引圧力センサ160と、ドライバ250と、ホーン260と、ニードル270と、吸引ライン280とを含んでいる。モータ210がシャフト220を回転させる。ポンプが動作中しているとき、取り外し可能なカートリッジ230はシャフト220に保持される。取り外し可能なカートリッジ230と眼145との間に、吸引圧力センサ160が配置されている。
【0021】
図2において、ポンプ170は、モータ210と、シャフト220と、取り外し可能なカートリッジ230内の可撓管とを含んでいる。本発明の一実施形態の場合、シャフト220は螺旋構造を有している。この螺旋構造は、取り外し可能なカートリッジ230内の可撓管に圧着する。このように、モータ210と、シャフト220と、取り外し可能なカートリッジ230内の可撓管とによって、スクリュー型又は渦巻き型の吸引ポンプが実現される。これについては、図4及び5においてより明確に示し説明する。ポンプ170がスクリュー型ポンプとして記述されてはいるものの、他のタイプのポンプを使用してもよい。
【0022】
取り外し可能なカートリッジ230には、吸引ライン280が流体カップリングされている。吸引ラインはまた、ドライバ250、ホーン260及びニードル270を通って又はこれを巡って延びている。吸引ライン280には、ニードル270内のルーメン(lumen)が流体カップリングされている。上述のように、流体及び水晶体粒子がニードル270のルーメンを通って吸引される。吸引ポンプ170は、流体及び水晶体粒子を、ニードル270のルーメンを通して引き出す。
【0023】
ドライバ250は典型的には、ホーン260内の超音波振動を生成する超音波ドライバである。ホーン260は典型的には、ドライバ250及びニードル270にカップリングされた金属塊である。こうして、ドライバ250によって生成された振動がホーン260及びニードル270に転送される。ニードル270は眼内に置かれ、白内障水晶体を砕くために振動させられる。
【0024】
吸引圧力センサ160が吸引ライン280内の吸引圧力を測定する。吸引圧力センサは、取り外し可能なカートリッジ230とドライバ250との間に配置されているものとして示されてはいるが、しかしポンプ170と眼145との間のいかなる場所に配置されていてもよい。吸引圧力センサ160は、数多くの周知の圧力センサ装置のうちのいずれかによって実現することができる。
【0025】
図3は、本発明の原理による一体型吸引ポンプを備えた水晶体乳化用ハンドピースを示すブロック・ダイアグラムである。図3の例は、図2のエレメントに加えて任意の通気弁165を有している。任意の通気弁165が存在する場合には、この通気弁は、吸引ポンプ170のための通気路を提供するように作用する。こうしてポンプ170は、通気弁165が開かれると例えば大気に通気することができる。或いは、ポンプ170は、灌流ライン140に通気することもできる。図3に示されているように、吸引ライン280は、2つの経路、すなわち、取り外し可能なカートリッジ230を通って延びる一方の経路、及び取り外し可能なカートリッジ230を巡って延びる他方の経路を有している。この第2の経路(取り外し可能なカートリッジ230を巡って延びる経路)、及び連携する通気弁165は、取り外し可能なカートリッジ230内に組み入れられていてもよい。通気弁165が開かれると、ポンプ170によって生成された吸気又は真空は、ポンプが大気に通気される結果として低減される。
【0026】
図4及び5はそれぞれ本発明の原理による一体型吸引ポンプを備えた水晶体乳化用ハンドピースの一部を示す側面図及び断面図である。図4及び5は、取り外し可能なカートリッジ230及びポンプ170の一例の詳細をより明確に示している。図示の例において、取り外し可能なカートリッジ230は吸引ライン・カップリング部材405と、第1管カップリング部材420と、管ホルダ440と、レバー430とを含んでいる。これらの構成部分は図示のフレーム内に組み込まれている。取り外し可能なカートリッジ230は、ハンドピースの残りから取り外すことができる。
【0027】
図4及び5に示された取り外し可能なカートリッジの例では、吸引ライン・カップリング部材405を吸引管に取り付けることができる。吸引管は手術コンソールにカップリングされている。このように、吸引ライン・カップリング部材405は、手術コンソールに接続されたハンドピースの端部の近くに位置している。吸引ライン・カップリング部材405から第1管カップリング部材420に、管が延びている。この管は、取り外し可能なカートリッジの一部であり、そして流体的には、吸引ライン280の部分である。
【0028】
管ホルダ440は、シャフト220と管ホルダ440との間に配置された可撓管(図示せず)を保持している。シャフト220は可撓管を管ホルダ440に押し付ける。シャフト220が回転すると、軸220に設けられた螺旋状の突起が、可撓管を通して流体をポンピングする(ひいては、スクリュー型又は渦巻き型の蠕動ポンプを実現する)。管ホルダ440は、可撓管を保持するのに適した硬質材料から形成されている。可撓管の一方の端部は、第1管カップリング部材420に流体カップリングされており、そして可撓管の他方の端部は第2管カップリング部材425に流体カップリングされている。このように、可撓管は吸引ライン280の一部である。
【0029】
レバー430は、取り外し可能なカートリッジ230をハンドピースの残りに固定するように働く。レバーとして示されてはいるものの、他のメカニズムを採用して、取り外し可能なカートリッジ230をハンドピースの残りに固定することもできる。
【0030】
シャフト220にはモータ210がカップリングされており、このモータはシャフト220を回転させるのに役立つ。モータ210は、より明確に下述するように、シャフト220の動きを制御するために制御することができる。モータ210は典型的にはDCモータであるがしかし、シャフト220を回転させるのに適したいかなるタイプのモータ又はドライブであってもよい。
【0031】
図4及び5の例では、コネクタ450が、管ホルダ440によって保持された可撓管を、ハンドピース・カップリング部材415に接続する。コネクタ・カップリング部材410は、ハンドピース・カップリング部材415と、直接に又は別の部分を介して相互作用する。こうして、吸引経路はハンドピース・カップリング部材415と、コネクタ・カップリング部材410と、コネクタ450と、第2管カップリング部材425と、管ホルダ440によって保持された可撓管と、第1管カップリング部材420と、吸引ライン・カップリング部材405とを通る。コネクタ450はシャフト220の一方の端部に接続されている。このように、コネクタ450、シャフト220、及びモータ210は(これらの部材を保持するフレームとともに)、ドライバ250(ホーン260及びニードル270にカップリングされている)に取り付けられている。
【0032】
ポンプと眼との間(すなわち第2管カップリング部材425とニードル270との間)の吸引ラインの長さは最小限(又は数インチのオーダー)である。加えて、ポンプと眼との間のこのような長さの吸引ラインは、非コンプライアント(non-compliant)であり得る(すなわち、硬質であり得る)。ポンプ170と眼との間に短い非コンプライアント管を有することにより、従来技術のシステムに付随するサージが排除される。
【0033】
作業中、モータ210はシャフト220を回転させる。コントローラ(図示せず)がモータ210の作業を制御する。こうして、シャフト220を任意の所望の速度で回転させることにより、任意の所望の吸引流及び/又は真空を生成することができる。さらに、シャフト220は停止させ、又は所望の場合には反対方向に回転させることもできる。こうしてモータ210はシャフト220をいずれの方向にも回転させるように制御することができる。シャフト220は回転させられると、可撓管を通して流体を引き出し、そして吸引ラインを通して流体をポンピングするように作用する。
【0034】
別の例では、シャフト220は管ホルダ440に向かって、そして管ホルダ440から離れる方向に動かされうる。こうして、シャフト220と管ホルダ440との間で異なる程度に可撓管を挟むことができるように、管ホルダ440とシャフト220との間の空間を変化させることができる。換言すれば、シャフト220は、管ホルダ440によって保持される可撓管を極めて緊密に保持することにより、漏れを許さないポンピング作用をもたらすことができる。或いは、シャフト220が管ホルダ440から離れる方向に動かされると、可撓管はあまり緊密には挟まれなくなり、ひいては漏れをもたらし、真空又はポンピング力を小さくする。管ホルダ440に対するシャフト220の位置は、可撓管を通る漏れを調節し、そしてポンプによって生成される真空を調節するように可変制御することができる。
【0035】
(図3に示された)別の例では、管ホルダ440に対するシャフト220の位置を固定することができ、そして通気弁165を使用して、ポンプによって生成される真空を調節する漏れをもたらすことができる。このように、吸引ライン内に存在する真空の量を制御するために、(通気弁165を通る漏れ量を制御することによって)通気弁165を可変制御することができる。
【0036】
吸引真空の制御は吸引圧力センサ160からの読み取り値に基づいて行うことができる。吸引圧力センサ160は、ポンプと眼との間に配置されている。このように、吸引圧力センサ160は、眼に極めて近い吸引ライン内の圧力状態を正確に読み取る。このような読み取り値を使用して、眼に加えられる吸引真空を正確に制御することができる。
【0037】
図6及び7はそれぞれ、本発明の原理による一体型吸引ポンプを備えた水晶体乳化用ハンドピースと一緒に使用するための、取り外し可能なカートリッジを示す側面図及び斜視図である。図6及び7の例では、取り外し可能なカートリッジは吸引ライン・カップリング部材405と、第1管カップリング部材420と、管ホルダ440と、レバー430と、開口605とを含んでいる。開口605は図5に示されているように、第2管カップリング部材425と相互作用する。第1管カップリング部材420と開口605との間に、一片の可撓管が配置されている。図6及び7の取り外し可能なカートリッジ230は、再使用可能又は使い捨て可能であってよい。1つの例において、取り外し可能なカートリッジは再使用可能であり、そして可撓管は使い捨て可能である。別の例において、取り外し可能なカートリッジは可撓管とともに使い捨て可能である。
【0038】
本発明の構成は、吸引ポンプ170が眼145に極めて近接して位置するのを可能にする。吸引ポンプ170と眼145との間の距離は、極めて小さく、すなわち数インチのオーダーにすることができる。吸引ポンプ170を眼145に近接して配置することによって、極めて短い吸引ラインがポンプ170と眼145との間に配置されるのを可能にする。さらに、ポンプ170と眼145との間に配置された所定の長さの吸引ラインは硬質であることが可能である(例えばこれはステンレス鋼から形成することができる)。ポンプ170と眼145との間の吸引ラインを形成するこの短い非コンプライアント材料は、コンベンショナルな水晶体乳化システムに付随するいかなるサージ効果をも排除する。
【0039】
コンベンショナルな水晶体乳化システムにおいて、吸引ポンプはコンソール内に配置されている、比較的長い可撓管(6フィート以上)が吸引ポンプと眼との間に配置されている。この比較的長い可撓管は大きいコンプライアンスを有している。すなわちこれは、真空圧の変化に応答して伸張することができる。このようなコンプライアンスの結果、前述のようなサージが引き起こされる。吸引ポンプをハンドピース内に組み入れ(そしてこれを眼に著しく近接させ)、そして極めて短い非コンプライアント管を吸引ポンプと眼との間に有することによって、これらのサージを排除しひいてはより安全でより効率的な手術を可能にすることができる。
【0040】
上記から明らかなように、本発明は水晶体乳化術のための加圧輸液・吸引システムを提供する。本発明は、流体の圧力及び/又は流量をより正確に制御する機器を提供する。本発明は例によって本明細書中に示され、また当業者によって種々の変更を施すことができる。
【0041】
本明細書を考察し、本明細書中に開示された本発明を実施することから、本発明の他の実施形態が当業者に明らかになる。明細書及び例はただの一例として考えられることが意図されており、本発明の真の範囲及び思想は、続く請求項によって示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科手術用ハンドピースであって、ドライバと、吸引ポンプと、取り外し可能なカートリッジとを含んでおり、
前記ドライバは、ニードルにカップリングされたホーンにカップリングされており、
前記吸引ポンプは前記ハンドピースと一体的であり、前記ニードルに近接して配置されており、
前記取り外し可能なカートリッジは、前記吸引ポンプと相互作用し、
前記取り外し可能なカートリッジは、吸引ラインの区分を含む、眼科手術用ハンドピース。
【請求項2】
前記吸引ポンプは、モータと、前記取り外し可能なカートリッジと相互作用するシャフトであって前記モータにカップリングされたシャフトとをさらに有する、請求項1に記載のハンドピース。
【請求項3】
前記シャフトは、該シャフトから外方に向かって延びる螺旋状の突起をさらに有する、請求項2に記載のハンドピース。
【請求項4】
前記取り外し可能なカートリッジは、所定の長さの可撓管を保持するための管ホルダと、前記取り外し可能なカートリッジを前記吸引ポンプに固定するためのレバーとをさらに有する、請求項1に記載のハンドピース。
【請求項5】
前記ニードルと前記吸引ポンプとの間に位置する吸引ラインであって、所定の長さの硬質な吸引ラインをさらに有する、請求項1に記載のハンドピース。
【請求項6】
前記吸引ポンプと前記ニードルとの間に配置された吸引圧力センサをさらに有する、請求項1に記載のハンドピース。
【請求項7】
前記吸引ポンプと並列に配置された通気弁であって、前記吸引ポンプによって生成された真空を可変制御するために可変制御される通気弁をさらに有する、請求項1に記載のハンドピース。
【請求項8】
前記取り外し可能なカートリッジに対する前記シャフトの位置が、前記吸引ポンプによって生成される真空圧力の量を決定するように、前記シャフトは、前記取り外し可能なカートリッジに向かって、また、前記取り外し可能なカートリッジから離れるように移動しうる、請求項2に記載のハンドピース。
【請求項9】
眼科手術用ハンドピースであって、ドライバと、吸引ポンプと、取り外し可能なカートリッジとを含んでおり、
前記ドライバは、ニードルにカップリングされたホーンにカップリングされており、
前記吸引ポンプは前記ハンドピースと一体的であり、前記ニードルに近接して配置されていて、シャフトにカップリングされたモータを含み、
前記取り外し可能なカートリッジは、管ホルダによって保持された所定の長さの可撓管を含み、該所定の長さの可撓管は前記シャフトと前記管ホルダとの間に配置されており、
前記取り外し可能なカートリッジは、吸引ラインの区分を含む、眼科手術用ハンドピース。
【請求項10】
前記シャフトは、該シャフトから外方に向かって延びる螺旋状の突起をさらに有する、請求項9に記載のハンドピース。
【請求項11】
前記取り外し可能なカートリッジは、該取り外し可能なカートリッジを前記吸引ポンプに固定するためのレバーをさらに有する、請求項9に記載のハンドピース。
【請求項12】
前記ニードルと前記可撓管との間に位置する吸引ラインであって、所定の長さの硬質な吸引ラインをさらに有する、請求項9に記載のハンドピース。
【請求項13】
前記吸引ポンプと前記ニードルとの間に配置された吸引圧力センサをさらに有する、請求項9に記載のハンドピース。
【請求項14】
前記吸引ポンプと並列に配置された通気弁であって、前記吸引ポンプによって生成された真空を可変制御するために可変制御される通気弁をさらに有する、請求項9に記載のハンドピース。
【請求項15】
前記管ホルダに対する前記シャフトの位置が、前記吸引ポンプによって生成される真空圧力の量を決定するように、前記シャフトは、前記管ホルダに向かって、また、前記管ホルダから離れるように移動しうる、請求項9に記載のハンドピース。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2013−513455(P2013−513455A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544595(P2012−544595)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/059032
【国際公開番号】WO2011/075332
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(508185074)アルコン リサーチ, リミテッド (160)