説明

一体形自動車車体の後部構造及びその製造方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一体形自動車車体の後部構造であって、2つの側壁区域を持ち、これらの側壁区域の間で後窓ガラス用開口より下に、側壁区域を互いに結合する横壁が設けられて、互いに離れた2つの横材を持ち、これらの横材の間に扁平部材が延びているもの及び後部構造の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】フランス国特許第2055636号明細書から、後部機関を持つ自動車用の床範囲が公知であり、正確に2つの縦材の間に位置して2つの横材が設けられ、これらの横材上へ扁平な床構造がぴったり載っている。それにより自動車機関及び一体形自動車車体用の保持枠が生じるが、部材相互の調節手段は示されていない。
【0003】ドイツ連邦共和国特許出願公開第19618258号明細書は、押出し異形材から成る複数の梁から構成される自動車枠を開示している。梁は平らな当接範囲を持ち、これらの当接範囲が車両の縦方向及び横方向における公差補償を保証している。
【0004】ドイツ連邦共和国特許出願公開第4431970号明細書は、車輪ハウジングを形成する車体範囲が対向する側で床板に溶接されている自動車車体を開示している。このため床板は対向する側に適当に溶接フランジを持ち、それぞれ条溝を介して床板に続いている。この条溝は、それぞれの溶接フランジの面に対して直角に床板の変形を可能にする。
【0005】ドイツ連邦共和国特許出願公開第3718841号明細書から、自動車用枠装置が公知であり、設定手段が設けられ、これらの設定手段により枠装置の縦材が、その縦方向に対して直角に向く軸線の周りに個々に又は一緒に揺動可能である。それによりフエンダ、前照灯、バンパ等のような車体部分の取付けの際、両方の縦材の対称な配置に関して生じることがある公差を補償することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、できるだけ簡単な手段で側壁区域の間の横壁の応力のない接合を可能にする、最初にあげた種類の後部構造及びその製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】この課題は、本発明によれば請求項1又は5の特徴によって解決される。扁平部材は、拡声器受入れ部又は他の付加機能がまとめられている車両内部空間の室内装飾部分である。請求項1による後部構造では、第1の横材が後窓ガラス用開口に隣接して側壁区域の間へはめられている。これらの横材を介して、車両後窓ガラスが設けられている個所で、側壁相互の精確な位置ぎめがまず可能になる。
【0008】更に両側でそれぞれ支持片を介して調節可能に、第2の横材を側壁区域の間に設けることが考慮されている。それにより製造公差の補償が可能になるので、側壁区域及び横材からなる装置が応力なしにかつ対称に整列され、それから固定されることができる。扁平部材も、位置ぎめされる横材に同様に応力なしに取付けられる。請求項5による本発明の方法によって、後部構造の組立てが存在する製造公差に応力なしに合わされ、後窓ガラス用開口の精確な整列も同時に保証される。
【0009】請求項2による本発明の有利な構成によって側壁区域の整列と共に、後窓ガラスの載置片を含めて後窓ガラス用開口の固定が行われるので、この個所で僅かな製造公差が保証される。
【0010】請求項3による構成によって、折畳み可能な後部座席背もたれを第2の横材に固定する鎖錠手段特に係止錠が設けられ、この横材と一緒に有利に整列される。
【0011】請求項4によれば、扁平部材がその機能従ってその質量又は安定性も著しく制限されるので、費用及び車両重量が減少される。
【0012】請求項6による本発明の方法の展開では、扁平部材が位置ぎめされた横材に取付けられ、扁平部材の適当な構成によって横材の位置公差を簡単に補償することができる。
【0013】本発明の利点及び特徴は、従属請求項からわかる。本発明の好ましい実施例が図面により以下に説明される。
【0014】
【実施例】図には、走行方向に見て左側に設けられる乗用自動車の本発明による後部構造が示されている。車両縦軸線に関して面対象に構成される後部構造の部分は、走行方向に見て乗用自動車の右側に設けられているが、図面には示されていない。従って以下の説明は図示した左側部分に関するものであるが、他方の部分に対しても同じように当てはまる。
【0015】図1に示すように、後部構造は複数の部分から成る側壁区域1〜5を持っている。詳細にはこれらの構成部分は、突出する溶接部分2を持つ外板1、C支柱(ピラー)の内壁3、車輪取付け片の外側部分4及び車輪取付け片の内側部分5である。これらの構成部分は従来のように1つの側壁区域にまとめられ、この側壁区域を更に別の側壁区域と共に完全な車両側壁にまとめることができる。
【0016】車両の後窓ガラス用開口の範囲でC支柱の内壁3に、中間片7が内方へ突するように接合されている。更に車輪取付け片の内側部分5の内側に、車両垂直軸線の方向に向く補強片6が設けられて、その上側が直接ブラケツト8へ移行している。ブラケツト8は、その外方へ向く側で、車輪取付け片の内側部分5及びC支柱の内壁3に結合されている。これは特に図5の断面図からわかる。従ってブラケツト8は、車輪取付け片又は後車軸の範囲で車体の特別な補強を行う補強片6用の上端部を形成している。
【0017】図示した左側側壁区域と対向する右側側壁区域との間に、帽子棚及び車体横控えとして用いられる横壁10,11,12がはめられ、この横壁は後部横材としての後部中央片10、前部横材11及び扁平部材としての被覆12から構成されている。
【0018】第1の横材として用いられる後部中央片10は、2つの板異形材10a及び10bから構成され、図3に示す断面を持っている。後部中央片10は、一方では車両横方向に充分精確なはまり合いで取付けられる中間片7を介して、C支柱の内へ壁3に結合されている。後部中央片10は他方ではフランジ10cにより溶接部分2に続いている。
【0019】図4からわかるように同様に2つの板異形材11a,11bから構成される第2の前部横材11は、車両横方向に直線移動可能にブラケツト8へ挿入されている。そのため図5からわかるように前部横材11は、14の所でブラケツト8に対して従って側壁区域1〜5に対しても、ある程度の組立て遊激を持っている。この組立て遊隙は、前部横材11を車両横方向に調節するのに役立つ。別の実施例では、前部横材の調節可能性を更に車両垂直軸線の方向にも設けることができる。他方支持片としてのブラケツト8内における前部横材11の案内は、側壁区域相互を調節しかつ横材11に対して側壁区域を調節する僅かな揺動運動を許すことができ、その際後部中央片10と溶接部分2との接触個所又は後部中央片10と中間片7との接触個所は、それぞれ基準点として設けることができる。なぜならば、自動車後窓ガラス用載置部分としてのフランジ部分10cは、側壁区域及び車両屋根に著しい公差なしに継続されねばならないからである。
【0020】前部横材11は、図示しない頭支えの受入れ部、及び後部座席背もたれ用ストツパも形成する前部横材11へ折畳み可能な後部背もたれを固定する鎖錠手段として用いられる係止錠13を形成している。従って前部横材11自体の位置特に係止錠13の位置も後部座席の取付け状態に合わせるために、前部横材11の調節可能性が利用可能である。
【0021】扁平部材として構成される被覆12は、後部中央片10及び前部横材11上へ載置可能であり、側壁区域に対する充分な取付け公差を持っている。従って被覆12も車両横方向に調節可能なので、車両の側壁区域の間へ完全に応力なしに挿入可能な装置が、両方の横材10,11及び被覆12から生じる。その際被覆12は、車体控えに関して副次的な機能のみを引受け、今や荷物室を覆い、拡声器受入れ部及び帽子棚として役立つ。
【0022】変わった実施例では、後部中央片10が溶接部分2及び中間片7に重なって、前部横材11におけるように車両横方向における組立て遊隙が得られるようにする。
【0023】一体形自動車車体の図示した後部構造の製造方法では、まず別々の製造過程で外板1、溶接部分2、C支柱の内壁3、車輪取付け片の外側部分4および車輪取付け片の内側部分5が1つの側壁区域にまとめられる。そのためこれらの構成部分は、前の製造区間で個別部品から組立てるか、又は構造群となるように互いにまとめることができる。続く製造区間で中間片7、補強片6及びブラケツト8が、前もって組立てられた側壁区域へ接合される。既に前述したように、車両縦軸線に関する後部構造の面対称性から、このような方法過程が右及び左の側壁区域に対して設けられることがわかる。
【0024】前述したように構成される側壁区域の間へ、本発明による方法の第1の方法段階において、後部中央片10が中間片7を介して、また前部横材11がブラケツト8を介して、側壁区域の間へ挿入される。その際後部中央片10は充分なはまり合いで中間片7及び溶接部分2に固定され、前部横材11は限られた範囲で車両横方向に移動可能にブラケツト8へ差込まれ、両方の側壁区域の中間に整列される。その際装置は構造群の精確な位置ぎめに関して整列され、続いてまず後部中央片10が、それから前部横材11が固定特に溶接される。続く方法段階で、扁平部材として構成される被覆12が後部中央片10及び前部横材11上に載置される。
【0025】後部構造を製造するため提案された方法は、大抵の部材では大きい製造公差を許容するにもかかわらず、後部構造の側壁区域を互いに結合する横壁の応力のない接合を可能にする。最初にあげた種類の後部構造の構成の際、従来の方法において存在した部材の冗長性はなくなり、それにより後窓ガラスの載置フランジ及び後部座席背もたれの係止錠の構成の際の付加的な自由空間が生じる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による後部構造の運転者側部分の分解斜視図である。
【図2】図1による後部構造の部分の組立てた状態における斜視図である。
【図3】図2の切断線III−IIIに沿う第1の横材の断面図である。
【図4】図2の切断線IV−IVに沿う第2の横材の断面図である。
【図5】図2の切断線V−Vに沿う後部構造の一部の断面図である。
【図6】図2の切断線VI−VIに沿う第2横材の支持片として用いられるブラケツトの断面図である。
【符号の説明】
1〜5 側壁区域
8 支持片(ブラケツト)
10,11,12 横壁(横材,扁平部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一体形自動車車体の後部構造であって、2つの側壁区域を持ち、これらの側壁区域の間で後窓ガラス用開口より下に、側壁区域を互いに結合する横壁が設けられて、互いに離れた2つの横材を持ち、これらの横材の間に扁平部材が延びているものにおいて、第1の横材(10)が後窓ガラス用開口に隣接して両方の側壁区域(1〜5)の間へ遊隙なくはめられ、第2の横材(11)のため両側にそれぞれ支持片(8)が設けられ、これらの支持片(8)が、両方の側壁区域(1〜5)の間で第2の横材(11)の少なくとも車両横方向における調節可能性を保証し、扁平部材(12)が両方の横材(10,11)にのみ結合されていることを特徴とする、一体形自動車車体の後部構造。
【請求項2】 第1の横材(10)が、側壁区域(1〜5)にあるフランジ(2a,1a)と一致する自動車後窓ガラス用載置部分としてのフランジ(10c)を持っていることを特徴とする、請求項1に記載の後部構造。
【請求項3】 第2の横材(11)が、折畳み可能な後部座席背もたれをこの横材(11)に固定するための鎖錠手段(13)を持っていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の後部構造。
【請求項4】 扁平部材(12)が荷重を支持しない被覆部分として構成されていることを特徴とする、請求項1〜3の1つに記載の後部構造。
【請求項5】 2つの側壁区域を持ち、これらの側壁区域より下で後部窓ガラス用開口より下に、側壁区域を互いに結合する横壁が設けられ、この横壁が、互いに離れた2つの横材とこれら横材の間に延びる扁平部材とから構成される、一体形自動車車体の後部構造の製造方法において、第1の横材(10)を遊隙なしに、第2の横材(11)を少なくとも車両横方向に遊隙をもって、両方の側壁区域(1〜5)の間へはめ、第2の横材を側壁区域(1〜5)の中央に対して合わせ、続いて両方の横材(10,11)を側壁区域(1〜5)に固定することを特徴とする、自動車一体車体の後部構造の製造方法。
【請求項6】 固定された横材(10,11)と扁平部材(12)を接合することを特徴とする、請求項5に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【特許番号】特許第3383909号(P3383909)
【登録日】平成14年12月27日(2002.12.27)
【発行日】平成15年3月10日(2003.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−285825
【出願日】平成11年9月1日(1999.9.1)
【公開番号】特開2000−85629(P2000−85629A)
【公開日】平成12年3月28日(2000.3.28)
【審査請求日】平成11年9月1日(1999.9.1)
【出願人】(598051819)ダイムラークライスラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【参考文献】
【文献】特開 平5−213234(JP,A)