説明

一成分現像用トナー、現像剤入り容器、画像形成方法、プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】画像濃度低下を生じることなく、像担持体の摩耗、トナーのすり抜けによる帯電部材の汚染、及びクリーニングブレードの摩耗の全てを抑制し、かつ小型のプリンター、ファクシミリなどの省スペース化及び低コスト化が必要とされる機種に反映可能な、一成分現像用トナー、該トナーを含む現像剤入り容器、画像形成方法、プロセスカートリッジ及び画像形成装置の提供。
【解決手段】平均一次粒径が1μm〜40μmであり、かつ平均二次粒径が10μm〜40μmである窒化ホウ素を外添してなる一成分現像用トナーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一成分現像用トナー、現像剤入り容器、画像形成方法、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式による画像形成では、光導電性物質などの静電潜像担持体上に静電荷による潜像を形成し、この静電潜像に対して、帯電したトナー粒子を付着させ可視像を形成している。トナーにより形成された可視像は、最終的に紙などの転写媒体に転写後、熱、圧力、溶剤気体などによって転写媒体に定着され、出力画像となる。
この電子写真方式による画像形成の方式は、可視像化のためのトナー粒子を帯電させる方法により、トナー粒子とキャリア粒子の攪拌乃至混合による摩擦帯電を用いる、いわゆる二成分現像方式と、キャリア粒子を用いずにトナー粒子への電荷付与を行う、いわゆる一成分現像方式とに大別される。このうち一成分現像方式は、省スペース性、低コスト化に対して二成分現像方式よりも有利であることから、小型のプリンター、ファクシミリなどに多く採用されている。
【0003】
これらの電子写真方式による画像形成方法は、現像方式の違いによらず、一般的にドラム形状、ベルト形状などの像担持体(静電潜像担持体、感光体ともいう)を回転させつつ一様に帯電し、レーザー光などにより像担持体上に潜像パターンを形成し、これを現像装置により可視像化し、更に転写媒体上に転写を行っている。
また、転写媒体へトナー像を転写した後の像担持体上には、転写されなかったトナー成分が残留する。この残留トナー成分が、そのまま帯電工程に搬送されると、像担持体の均等な帯電を阻害することがしばしば有るため、一般的には、転写工程を経た後に、像担持体上に残留するトナー成分などを、クリーニング工程にて除去し、像担持体表面を十分に清浄な状態とした上で、帯電が行われる。
このように、画像形成方法の各工程においては、様々な物理的ストレス、電気的ストレスなどが存在し、像担持体、帯電部材、クリーニング部材が劣化していくという問題がある。
【0004】
一方、昨今、出力画像のカラー化が進み、画像の高画質化、及び画像品質の安定化に対する要求は、これまでにも増して強くなっている。
高画質化のためには、トナーの平均粒径を小さく、またその粒子形状は、角張った部分をなくし、より丸い形状とすることが求められている。このように小粒径化、円形化の方向にトナーの開発が進んでいることから、近年では、電子写真方式の画像形成方法において、クリーニングに対する課題が大きくなってきている。このようなトナーをクリーニングするためには、クリーニング部材の像担持体に対する摺擦力を従来よりも増加させることが対策となり得る。
しかしながら、この場合、像担持体やクリーニング部材自身の劣化を早めてしまうため、長期にわたって安定な画像を形成することができないという課題が生じる。
【0005】
上記課題を解消すべく、これまでにも像担持体、帯電部材、クリーニング部材の劣化を低減させるために各種潤滑剤(保護剤)、潤滑成分の供給方法乃至膜形成方法について、多くの提案がなされている。
例えば、像担持体乃至クリーニングブレードの寿命を延ばすため、像担持体表面にステアリン酸亜鉛を主成分とする固体潤滑剤を供給し、像担持体表面に潤滑皮膜を形成することが提案されている(特許文献1参照)。これによって像担持体表面の摩耗を抑え、像担持体の寿命を伸ばすことが可能となっている。
しかしながら、前記ステアリン酸亜鉛を始めとした脂肪酸金属塩は、帯電工程において像担持体近傍で行なわれる放電の影響により、早期にその潤滑性を失ってしまうことがわかっている。その結果、クリーニングブレードと像担持体との潤滑性が損なわれ、トナーがすり抜けてしまい、不良画像となると同時にクリーニングブレード自身の劣化も早めてしまうという問題がある。
【0006】
この問題に対して、脂肪酸金属塩と窒化ホウ素とを配合してなる像担持体保護剤が提案されている(特許文献2参照)。この像担持体保護剤を像担持体表面に塗布することによって、帯電工程において像担持体近傍で行なわれる放電の影響をうけた場合でも、窒化ホウ素の潤滑性の効果により、クリーニングブレードと像担持体との潤滑性が保たれ、トナーすり抜けを防止することが可能となる。
また、像担持体保護剤を塗布すると同時に、現像剤中に窒化ホウ素をはじめとする粉体潤滑剤を含有させることで、同様にトナーすり抜けを防止することが提案されている(特許文献3参照)。
しかしながら、これらの方式では、いずれも潤滑剤(保護剤)を像担持体表面に供給するための潤滑剤(保護剤)塗布機構が必要となるため、装置の小型化、低コスト化に対しては不利であり、特に小型のプリンター、ファクシミリなどには搭載することが難しい技術であるという問題がある。
【0007】
一方、特定の粒径、形状を有する非磁性一成分トナーに脂肪酸金属塩を外添する技術が提案されている(特許文献4参照)。
しかしながら、脂肪酸金属塩には、前述のように放電の影響により潤滑性が失われるという問題がある。
また、この場合、前記非磁性一成分トナーに外添された前記脂肪酸金属塩が、帯電付与部材(規制部材)に付着し、帯電性能に悪影響を及ぼし、画像濃度の低下やカブリが発生するため、画像濃度の低下などを発生させることなく、像担持体の摩耗、トナーのすり抜けによる帯電部材の汚染、クリーニングブレードの摩耗などを低減することが非常に困難となってしまう。したがって、トナーの特性や前記脂肪酸金属塩の添加量が限られた範囲となってしまい、プロセス設計に対する自由度が低いという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、画像濃度低下を生じることなく、像担持体の摩耗、トナーのすり抜けによる帯電部材の汚染、及びクリーニングブレードの摩耗の全てを抑制し、かつ小型のプリンター、ファクシミリなどの省スペース化及び低コスト化が必要とされる機種に反映可能な、一成分現像用トナー、該トナーを含む現像剤入り容器、画像形成方法、プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 平均一次粒径が1μm〜40μmであり、かつ平均二次粒径が10μm〜40μmである窒化ホウ素を外添してなることを特徴とする一成分現像用トナーである。
<2> 平均円形度が、0.97〜1.00である前記<1>に記載の一成分現像用トナーである。
<3> 体積平均粒径が、4μm〜6μmである前記<1>から<2>のいずれかに記載の一成分現像用トナーである。
<4> 窒化ホウ素の添加量が、前記一成分現像用トナーに対して0.01質量%〜1質量%である前記<1>から<3>のいずれかに記載の一成分現像用トナーである。
<5> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の一成分現像用トナーからなる現像剤を内包することを特徴とする現像剤入り容器である。
<6> 像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記像担持体上に形成された静電潜像を前記<1>から<4>のいずれかに記載の一成分現像用トナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体上に転写する記録媒体転写工程と、前記記録媒体上に転写された可視像を定着させる定着工程と、前記像担持体上に残存したトナーを弾性体ブレードによりクリーニングするクリーニング工程とを含むことを特徴とする画像形成方法である。
<7> 少なくとも像担持体と、前記像担持体上に形成された静電潜像を前記<1>から<4>のいずれかに記載の一成分現像用トナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記像担持体上に残存したトナーを弾性体ブレードによりクリーニングするクリーニング手段とを一体に具備することを特徴とするプロセスカートリッジである。
<8> 像担持体と、前記像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記像担持体上に形成された静電潜像を前記<1>から<4>のいずれかに記載の一成分現像用トナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体上に転写する記録媒体転写手段と、前記記録媒体上に転写された可視像を定着させる定着手段と、前記像担持体上に残存したトナーを弾性体ブレードによりクリーニングするクリーニング手段とを含むことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、画像濃度低下を生じることなく、像担持体の摩耗、トナーのすり抜けによる帯電部材の汚染、及びクリーニングブレードの摩耗の全てを抑制し、かつ小型のプリンター、ファクシミリなどの省スペース化及び低コスト化が必要とされる機種に反映可能な、一成分現像用トナー、該トナーを含む現像剤入り容器、画像形成方法、プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一実施形態であるプロセスカートリッジ主要部を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態であるプロセスカートリッジを備える画像形成装置主要部を示す断面図である。
【図3】図3は、実施例で用いた縦帯チャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(一成分現像用トナー)
本発明の一成分現像用トナー(トナー)は、少なくとも結着樹脂、着色剤、窒化ホウ素を含んでなり、更に必要に応じて、磁性材料、離型剤、帯電制御剤、樹脂微粒子などのその他の成分を含む。
前記一成分現像用トナーは、平均一次粒径が1μm〜40μmであり、かつ平均二次粒径が10μm〜40μmである窒化ホウ素を外添してなることを必要とする。
【0013】
<窒化ホウ素>
前記窒化ホウ素は、平均一次粒径が1μm〜40μmであり、かつ平均二次粒径が10μm〜40μmであることを必要とする。
窒化ホウ素は、原子がしっかりと組み合った六角網面が広い間隔で重なり、層間に働く力が弱いファンデルワールス力のみであるため、容易に劈開、潤滑することから成膜性に特に優れた材料である。
前記窒化ホウ素は、クリーニングブレードの作用などにより劈開し、自身が像担持体上に成膜することにより、クリーニングブレードと像担持体間の潤滑性を大幅に向上させることができる。また、ステアリン酸亜鉛などの脂肪酸金属塩と異なり、放電エネルギーが付与された場合にも潤滑性低下を生じない。この作用により、長期間にわたってクリーニングブレードのエッジ挙動が安定し、トナー粒子のすり抜けを低減できることが本発明者らの検討により明らかとなっている。
【0014】
前記窒化ホウ素の平均一次粒径としては、1μm〜40μmであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記窒化ホウ素の平均一次粒径は、窒化ホウ素の潤滑性に影響を及ぼし、該平均一次粒径が1μm未満であると、本来窒化ホウ素に期待する潤滑性が不足することがある。また、前記平均一次粒径が40μmを超えると、潤滑性には問題がないが、像担持体上に窒化ホウ素が固着しやすくなることがある。
【0015】
前記窒化ホウ素の平均二次粒径としては、10μm〜40μmであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、15μm〜25μmが特に好ましい。
窒化ホウ素の平均二次粒径は、主に一成分現像装置における現像ローラへの付着性に影響を与え、前記平均二次粒径が10μm未満であると、現像ローラ表面に窒化ホウ素が付着しやすくなることがある。現像ローラ表面に窒化ホウ素が付着すると、現像ローラ自身の摩擦係数が非常に低くなることから、トナーを安定して保持できなくなり画像濃度の低下を引き起こす。逆に、前記平均二次粒径が40μmを超えると、画像上に白抜けとなって現れることがある。このような窒化ホウ素の平均二次粒径と画像の関係は、窒化ホウ素を一成分現像剤に添加した場合のみに現れる特有の現象である。一方、前記平均二次粒径が、特に好ましい範囲であると、帯電ローラ汚れ低減と画像濃度低下抑制の両立に対して効果が大きい点で有利である。
【0016】
ここで、前記窒化ホウ素の平均一次粒径とは、前記窒化ホウ素の一次粒子の累積メディアン粒径を意味し、具体的には、島津製作所製のレーザー回析式粒度分布測定装置(SALD−2200)にて測定し、D50の値により表すことができる。
また、前記窒化ホウ素の平均二次粒径とは、前記窒化ホウ素の二次粒子の投影面積相当径における個数平均粒径を意味し、窒化ホウ素を走査型電子顕微鏡にて観察し、画像解析法により視野内の窒化ホウ素の個数平均粒径を求めた値である。
【0017】
なお、窒化ホウ素の粒子の種類としては、小さい粒径をもつ一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合と、大きい粒径をもつ一次粒子が凝集せずにそのまま存在している場合がある。本発明においては、後者の場合における一次粒子の粒径を前記一次粒子の粒径及び前記二次粒子の粒径として扱う。
一般に、平均一次粒径が10μm以上であるような大きな粒径をもつ一次粒子は、二次粒子を形成することなく、そのまま一次粒子として存在することが多い。
【0018】
前記窒化ホウ素を後述する本発明のプロセスカートリッジから供給するにあたり、トナーとは別途窒化ホウ素のみを供給する機構を設けてもよいが、省スペース化及び低コスト化の観点から、そのような機構を設けることなく、本発明のトナーのみを現像手段内に供給することが好ましい。ただし、本発明のトナーに係る窒化ホウ素は、シリカのような流動性向上剤とは働きが異なり、最終的には像担持体表面に供給することが目的であるため、強固にトナー表面に付着させてはならない。本発明のトナーは、平均一次粒径が1μm〜40μm、かつ平均二次粒径が10μm〜40μmである窒化ホウ素を含むことにより、該窒化ホウ素がトナー母体粒子と同程度から数倍の大きさを有するため、トナー母体粒子の表面に強固に付着することがなく、本発明の効果をより効率良く得ることができる。
【0019】
前記窒化ホウ素の添加量としては、プロセス条件によって異なり、一概に規定することができないが、前記一成分現像用トナーに対して0.01質量%〜1質量%が好ましい。前記添加量がこの範囲内にあると、十分な効果が発揮される。また、本発明の前記窒化ホウ素の粒径範囲であれば、添加量が多すぎる場合であっても、画像濃度低下などの悪影響は、画像品質面では現れないが、コスト面の点で、必要最小量を添加することが好ましい。
【0020】
前記窒化ホウ素のトナー母体粒子への添加条件としては、プロセス条件によって異なり、一概に規定することができないが、タンブラーミキサーなどの攪拌装置を用いて、攪拌速度10rpm〜200rpmにて1分間〜30分間攪拌することが好ましい。
【0021】
本発明の一成分現像用トナーは、上記条件を満たしていれば、特に制限はなく、製法や材料について、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高画質高精細の画像を出力させるべく、小粒径トナーであることが好ましい。このようなトナーの製造方法としては、粉砕法、水系媒体中で油相を乳化、懸濁乃至凝集させトナー母体粒子を形成させる、懸濁重合法、乳化重合法、ポリマー懸濁法などがある。
また、一成分現像方式には、磁性トナーを用いる磁性一成分現像方式と、非磁性トナーを用いる非磁性一成分方式があり、本発明は、いずれにも適用可能であるが、カラー画像形成装置に適用できる点、より低コスト化が実現できる点などから非磁性一成分現像方式が好ましい。
【0022】
前記粉砕法は、例えば、トナー材料を溶融乃至混練し、粉砕、分級などすることにより、前記トナー(粉砕トナー)の母体粒子を得る方法である。本発明は、前記粉砕法による不定形のトナー粒子に対しても適用でき、装置寿命を大幅に延ばすことができる。また、前記トナーの平均円形度を0.97〜1.00の範囲にする目的で、得られたトナーの母体粒子に対し、機械的衝撃力を与えて形状を制御してもよい。この場合、前記機械的衝撃力は、例えば、ハイブリタイザー、メカノフュージョンなどの装置を用いて前記トナーの母体粒子に付与することができる。
【0023】
前記懸濁重合法は、油溶性重合開始剤、重合性単量体中に着色剤、離型剤などを分散し、界面活性剤、その他固体分散剤などが含まれる水系媒体中で乳化乃至分散した後、重合反応を行い粒子化する方法である。その後に、得られたトナーの母体粒子の表面に前記窒化ホウ素を付着させる処理を行えばよい。その際、余剰にある界面活性剤などを洗浄除去したトナー粒子に処理を施すことが好ましい。
前記重合性単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等の酸類;アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド乃至これらのメチロール化合物;ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のアミノ基を有すアクリレート乃至メタクリレートなどを一部用いることによってトナー粒子表面に官能基を導入できる。
また、使用する分散剤として酸基乃至塩基性基を有すものを選ぶことよって粒子表面に分散剤を吸着残存させ、官能基を導入することができる。
【0024】
前記乳化重合法としては、水溶性重合開始剤、重合性単量体を水中で界面活性剤を用いて乳化し、通常の乳化重合の手法によりラテックスを合成する。別途、着色剤、離型剤などを水系媒体中分散した分散体を用意し、混合の後にトナーサイズまで凝集させ、加熱融着させることによりトナー粒子を得る。その後、前記窒化ホウ素を付着させる処理を行えばよい。前記重合性単量体としては、懸濁重合法に使用されうる重合性単量体と同様なものを用いればよく、これにより、トナー粒子表面に官能基を導入できる。
【0025】
本発明においては、これらの中でも、略球形の形状のトナーが得られ、樹脂の選択性が高く、低温定着性が高く、また、造粒性に優れ、粒径、粒度分布、形状の制御が容易であるため、前記トナーとしては、活性水素基含有化合物と、該活性水素基含有化合物と反応可能なプレポリマーと、着色剤とを少なくとも含むトナー材料を有機溶剤に溶解乃至分散させたトナー材料の溶解乃至分散液を、水系媒体中で樹脂微粒子の存在下で架橋乃至伸長反応させてなるトナーが好ましい。具体的には、前記トナー材料の溶解乃至分散液(トナー溶液)を調製した後、該トナー溶液を水性媒体中に乳化乃至分散させて分散液を調製し、該水系媒体中で、前記活性水素基含有化合物と、前記活性水素基含有化合物と反応可能なプレポリマーとを反応させて接着性基材を粒子状に生成させ、前記有機溶剤を除去して得られるトナーが好ましい。ここで、前記接着性基材は、結着樹脂(第1の結着樹脂)として機能する。この反応で製造されたトナーは、トナー表面を硬化させることで、ホットオフセットを少なくすることができ、よって、定着装置の汚れとなって、それが画像上に表れるのを抑えることができる。
前記トナー材料の溶解液は、前記トナー材料を溶媒中に溶解させてなり、前記トナー材料の分散液は、前記トナー材料を溶媒中に分散させてなる。
前記トナー材料は、更に必要に応じて、第2の結着樹脂、離型剤、樹脂微粒子、帯電制御剤などのその他の成分を含む。
【0026】
<活性水素基含有化合物>
前記活性水素基含有化合物は、前記水系媒体中で、前記活性水素基含有化合物と反応可能なプレポリマーが架橋乃至伸長反応する際の架橋剤乃至伸長剤として作用する。
前記活性水素基含有化合物としては、活性水素基を有していれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記活性水素基含有化合物と反応可能なプレポリマーがイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)である場合には、該イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)と伸長反応、架橋反応などの反応により高分子量化可能な点で、アミン類(B)が好適である。
前記活性水素基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸基(アルコール性水酸基乃至フェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アルコール性水酸基が特に好ましい。
【0027】
前記アミン類(B)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、前記B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジアミン(B1)単独、ジアミン(B1)と少量の3価以上のポリアミン(B2)との混合物が特に好ましい。
【0028】
前記ジアミン(B1)としては、例えば、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、脂肪族ジアミンなどが挙げられる。該芳香族ジアミンとしては、例えば、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。該脂環式ジアミンとしては、例えば、4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなどが挙げられる。該脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。
前記3価以上のポリアミン(B2)としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
前記アミノアルコール(B3)としては、例えば、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。
前記アミノメルカプタン(B4)としては、例えば、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。
前記アミノ酸(B5)としては、例えば、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。
前記B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、例えば、前記B1〜B5のいずれかのアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)から得られるケチミン化合物、オキサゾリゾン化合物などが挙げられる。
【0029】
<活性水素基含有化合物と反応可能なプレポリマー>
前記活性水素基含有化合物と反応可能なプレポリマー(以下「プレポリマー」と称することがある)としては、前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を少なくとも有しているものであれば特に制限はなく、公知の樹脂などの中から適宜選択することができ、例えば、ポリオール樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、これらの誘導体樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、溶融時の高流動性、透明性の点で、ポリエステル樹脂が特に好ましい。
【0030】
前記プレポリマーにおける前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位としては、特に制限はなく、公知の置換基などの中から適宜選択することができるが、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、カルボン酸、酸クロリド基などが挙げられる。これらは、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。これらの中でも、イソシアネート基が特に好ましい。
【0031】
前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオール(PO)とポリカルボン酸(PC)との重縮合物であり、かつ前記活性水素基含有ポリエステル樹脂をポリイソシアネート(PIC)と反応させてなるものなどが挙げられる。
【0032】
前記ポリオール(PO)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール(DIO)、3価以上のポリオール(TO)、ジオール(DIO)と3価以上のポリオール(TO)との混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記ジオール(DIO)単独、乃至前記ジオール(DIO)と少量の前記3価以上のポリオール(TO)との混合物が好ましい。
【0033】
前記ジオール(DIO)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキレングリコール、アルキレンエーテルグリコール、脂環式ジオール、脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノール類、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
前記アルキレングリコールとしては、炭素数2〜12のものが好ましく、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどが挙げられる。前記アルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。前記脂環式ジオールとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなどが挙げられる。前記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、前記脂環式ジオールに対し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加物したものなどが挙げられる。前記ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどが挙げられる。前記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、前記ビスフェノール類に対し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加物したものなどが挙げられる。
これらの中でも、炭素数2〜12のアルキレングリコール、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などがより好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物と炭素数2〜12のアルキレングリコールとの混合物が特に好ましい。
【0034】
前記3価以上のポリオール(TO)としては、3価〜8価乃至それ以上のものが好ましく、例えば、3価以上の多価脂肪族アルコール、3価以上のポリフェノール類、3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
前記3価以上の多価脂肪族アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。前記3価以上のポリフェノール類としては、例えば、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどが挙げられる。前記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、前記3価以上のポリフェノール類に対し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加物したものなどが挙げられる。
【0035】
前記ポリカルボン酸(PC)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジカルボン酸(DIC)、3価以上のポリカルボン酸(TC)、ジカルボン酸(DIC)と3価以上のポリカルボン酸との混合物などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジカルボン酸(DIC)単独、乃至DICと少量の3価以上のポリカルボン酸(TC)との混合物が好ましい。
前記ジカルボン酸としては、例えば、アルキレンジカルボン酸、アルケニレンジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
前記アルキレンジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などが挙げられる。前記アルケニレンジカルボン酸としては、炭素数4〜20のものが好ましく、例えば、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。前記芳香族ジカルボン酸としては、炭素数8〜20のものが好ましく、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。
これらの中でも、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。
【0036】
前記3価以上のポリカルボン酸(TO)としては、3価〜8価乃至それ以上のものが好ましく、例えば、芳香族ポリカルボン酸などが挙げられる。
前記芳香族ポリカルボン酸としては、炭素数9〜20のものが好ましく、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。
【0037】
前記ポリカルボン酸(PC)としては、前記ジカルボン酸(DIC)、前記3価以上のポリカルボン酸(TC)、及び、前記ジカルボン酸(DIC)と前記3価以上のポリカルボン酸との混合物、から選択されるいずれかの酸無水物乃至低級アルキルエステル物を用いることもできる。前記低級アルキルエステルとしては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなどが挙げられる。
【0038】
前記ポリオール(PO)とポリカルボン酸(PC)とを重縮合反応させる際の混合比率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ポリオール(PO)における水酸基[OH]と、前記ポリカルボン酸(PC)におけるカルボキシル基[COOH]との当量比([OH]/[COOH])として、2/1〜1/1が好ましく、1.5/1〜1/1がより好ましく、1.3/1〜1.02/1が特に好ましい。
【0039】
前記ポリイソシアネート(PIC)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、イソシアヌレート類、これらのポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプローラクタム等でブロックしたものなどが挙げられる。
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネートなどが挙げられる。前記脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。前記芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、ジフェニレン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルジフェニル、3−メチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネートなどが挙げられる。前記芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。前記イソシアヌレート類としては、例えば、トリス−イソシアナトアルキル−イソシアヌレート、トリイソシアナトシクロアルキル−イソシアヌレートなどが挙げられる。これらは、1種単独でも使用することができ、2種以上を併用してもよい。
【0040】
前記ポリイソシアネート(PIC)と、前記活性水素基含有ポリエステル樹脂(例えば水酸基含有ポリエステル樹脂)とを反応させる際の混合比率としては、該ポリイソシアネート(PIC)におけるイソシアネート基[NCO]と、該水酸基含有ポリエステル樹脂における水酸基[OH]との混合当量比([NCO]/[OH])として、5/1〜1/1が好ましく、4/1〜1.2/1がより好ましく、3/1〜1.5/1が特に好ましい。
前記イソシアネート基[NCO]が、5を超えると、低温定着性が悪化することがあり、1未満であると、耐オフセット性が悪化することがある。
【0041】
前記ポリイソシアネート(PIC)の前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%〜40質量%が好ましく、1質量%〜30質量%がより好ましく、2質量%〜20質量%が特に好ましい。
前記含有量が、0.5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が悪化し、耐熱保存性と低温定着性とを両立させることが困難になることがあり、40質量%を超えると、低温定着性が悪化することがある。
【0042】
前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)の1分子当たりに含まれるイソシアネート基の平均数としては、1以上が好ましく、1.5〜3がより好ましく、1.8〜2.5が特に好ましい。
前記イソシアネート基の平均数が、1未満であると、前記ウレア結合生成基で変性されているポリエステル樹脂(RMPE)の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
【0043】
なお、必要により反応停止剤を用いて、前記活性水素基含有化合物と前記活性水素基含有化合物と反応可能なプレポリマーとの架橋乃至伸長反応を停止させることができる。該反応停止剤を用いると、前記接着性基材の分子量などを所望の範囲に制御することができる点で好ましい。該反応停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン等)、乃至これらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
【0044】
前記アミン類(B)と、前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)との混合比率としては、前記イソシアネート基含有プレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、前記アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の混合当量比([NCO]/[NHx])として、1/2〜2/1が好ましく、1/1.5〜1.5/1がより好ましく、1.2/1〜1/1.2が特に好ましい。
前記混合当量比([NCO]/[NHx])が、1/2未満であると、低温定着性が低下することがあり、2/1を超えると、前記ウレア変性ポリエステル樹脂の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
【0045】
<接着性基材(第1の結着樹脂)>
前記接着性基材は、紙などの記録媒体に対し接着性を示し、前記活性水素基含有化合物及び該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体を前記水系媒体中で反応させてなる接着性ポリマーを少なくとも含み、更に公知の結着樹脂から適宜選択した第2の結着樹脂を含んでいてもよい。
前記接着性基材の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリエステル系樹脂などが好ましい。前記ポリエステル系樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ウレア変性ポリエステル系樹脂などが特に好ましい。
前記ウレア変性ポリエステル系樹脂は、前記活性水素基含有化合物としてのアミン類(B)と、該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体としてのイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)とを前記水系媒体中で反応させて得られる。
前記ウレア変性ポリエステル系樹脂は、ウレア結合のほかに、ウレタン結合を含んでいてもよく、この場合、該ウレア結合と該ウレタン結合との含有モル比(ウレア結合/ウレタン結合)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100/0〜10/90が好ましく、80/20〜20/80がより好ましく、60/40〜30/70が特に好ましい。
前記ウレア結合が10未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
【0046】
前記ウレア変性ポリエステルの重量平均分子量(Mw)としては、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による分子量分布で、10,000以上が好ましく、20,000〜100,000がより好ましく、30,000〜1,000,000が特に好ましい。前記質量平均分子量が1万未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
【0047】
ここで、前記重量平均分子量の測定は、以下のようにして行うことができる。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定装置:GPC−8220GPC(東ソー株式会社製)
カラム:TSK gel SuperHZM−H 15cm 3連(東ソー株式会社製)
温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流速:0.35ml/min
試料:0.15質量%の試料を0.4ml注入
試料の前処理:試料をテトラヒドロフランTHF(安定剤含有 和光純薬株式会社製)に0.15質量%で溶解後、0.2μmフィルターで濾過し、その濾液を試料として用いる。前記THF試料溶液を100μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作製された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、昭和電工社製Showdex STANDARDのStd.No.S−7300、S−210、S−390、S−875、S−1980、S−10.9、S−629、S−3.0、S−0.580、トルエンを用いることができる。検出器としては、RI(屈折率)検出器を用いることができる。
【0048】
前記ウレア変性ポリエステルの数平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ウレア変性ポリエステルを単独で用いる場合、20,000が好ましく、1,000〜10,000がより好ましく、2,000〜8,000が特に好ましい。前記数平均分子量が20,000を超えると、低温定着性及びフルカラー装置に用いた場合の光沢性が悪化する。
なお、後述する未変性ポリエステル樹脂を併用する場合には、前記ウレア変性ポリエステルの数平均分子量としては、特に限定されるものではなく、前記重量平均分子量となる数平均分子量の範囲を適宜選択することができる。
【0049】
前記接着性基材のガラス転移温度としては、50℃〜70℃が好ましく、55℃〜65℃がより好ましい。前記ガラス転移温度が、50℃未満であると、トナーの高温保管時のブロッキングが悪化し、70℃を超えると、低温定着性が不十分となることがある。
前記ウレア変性ポリエステル樹脂の共存により、本発明の乾式トナーにおいては、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。
【0050】
前記接着性基材の貯蔵弾性率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、測定周波数20Hzにおいて10,000dyne/cmとなる温度(TG’)が、通常100℃以上であり、110℃〜200℃が好ましい。該(TG’)が100℃未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
前記接着性基材の粘性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、測定周波数20Hzにおいて1,000ポイズとなる温度(Tη)が、通常180℃以下であり、90℃〜160℃が好ましい。該(Tη)が180℃を超えると、低温定着性が悪化することがある。
したがって、耐ホットオフセット性と低温定着性との両立を図る観点から、前記(TG’)は前記(Tη)よりも高いことが好ましい。即ち、(TG’)と(Tη)との差(TG’−Tη)としては、0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上が更に好ましい。該差は大きければ大きいほどよい。
また、低温定着性と耐熱保存性との両立を図る観点からは、前記(TG’−Tη)としては、0℃〜100℃が好ましく、10℃〜90℃がより好ましく、20℃〜80℃が特に好ましい。
【0051】
<第2の結着樹脂>
前記第2の結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル樹脂、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体等の単独重合体乃至共重合体、ポリオール樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油系樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ポリエステル樹脂が好ましく、未変性ポリエステル樹脂(変性されていないポリエステル樹脂)がより好ましい。
前記未変性ポリエステル樹脂を前記トナー中に含有させると、低温定着性及び光沢性を向上させることができる。
【0052】
前記未変性ポリエステル樹脂としては、前記ポリオール(PO)と前記ポリカルボン酸(PC)との重縮合物などが挙げられ、前記ポリオール(PO)及び前記ポリカルボン酸(PC)及びその好適な例としては、前記ウレア変性ポリエステル樹脂と同様のものを用いることができる。
また、前記未変性ポリエステル樹脂としては、未変性ポリエステル樹脂だけでなく、ウレア結合以外の化学結合で変性されているものでもよく、例えば、ウレタン結合で変性されていてもよい。前記ウレア変性ポリエステルと前記未変性ポリエステル樹脂とは少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。
したがって、前記ウレア変性ポリエステルのポリエステル成分と前記未変性ポリエステル樹脂とは類似の組成が好ましい。
前記未変性ポリエステル樹脂を含有させる場合、前記ウレア変性ポリエステル(RMPE)と前記未変性ポリエステル樹脂(PE)の混合質量比(RMPE/PE)としては、通常5/95〜80/20であり、5/95〜30/70が好ましく、5/95〜25/75がより好ましく、7/93〜20/80が特に好ましい。
前記ウレア変性ポリエステルの混合質量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。
【0053】
前記未変性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による分子量分布で、1,000〜30,000が好ましく、1,500〜15,000がより好ましい。前記重量平均分子量(Mw)が、1,000未満であると、耐熱保存性が悪化することがある。一方、前記重量平均分子量(Mw)が、30,000を超えると、低温定着性が悪化することがある。
【0054】
<着色剤>
前記着色剤としては、特に制限はなく、従来からトナー用着色剤として使用されてきた公知の染料及び顔料の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG、ローダミン6Cレーキ、カルコオイルブルー、クロムイエロー、キナクリドンレッド、ベンジジンイエロー、ローズベンガルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
また、本発明で用いられるトナー中の着色剤の個数平均粒径としては、0.5μm以下が好ましく、0.4μm以下がより好ましく、0.3μm以下が特に好ましく、0.1μm以下が最も好ましい。0.1μmより小さい微小粒径の着色剤は、可視光の半波長より十分小さいため、光の反射、吸収特性に悪影響を及ぼさないと考えられる。よって、前記個数平均粒径が、0.1μm未満であると、良好な色再現性と、定着画像を有するOHPシートの透明性が得られる点で有利である。一方、前記個数平均粒径が、0.5μmを超えると、顔料の分散性が充分なレベルには到らず、好ましい透明性が得られないことがある。また、0.5μmより大きな粒径の着色剤が多く存在していると、入射光の透過が阻害されたり、散乱されたりして、OHPシートの投影画像の明るさ及び彩かさが低下する傾向がある。さらに、0.5μmより大きな粒径の着色剤が多く存在していると、トナー粒子表面から着色剤が脱離し、カブリ、ドラム汚染、クリーニング不良といった種々の問題を引き起こしやすいため、好ましくない。特に、0.7μmより大きな粒径の着色剤としては、全着色剤に対し、10個数%以下が好ましく、5個数%以下がより好ましい。
【0056】
また、着色剤を結着樹脂の一部乃至全部と共に、予め湿潤液を加えた上で混練しておくことにより、初期的に結着樹脂と着色剤が十分に付着した状態となって、その後のトナー製造工程でのトナー粒子中における着色剤分散がより効果的に行なわれ、着色剤の分散粒径が小さくなり、一層良好な透明性を得ることができる。
予めの混錬に用いる結着樹脂としては、トナー用の結着樹脂として例示した樹脂類をそのまま使用することができるが、これらに限定されるものではない。
前記結着樹脂と前記着色剤の混合物を予め湿潤液と共に混練する具体的な方法としては、例えば、前記結着樹脂、前記着色剤及び前記湿潤液を、ヘンシェルミキサーなどのブレンダーにて混合した後、得られた混合物を二本ロール、三本ロールなどの混練機により、前記結着樹脂の溶融温度よりも低い温度で混練して、サンプルを得る。
また、前記湿潤液としては、特に制限はなく、前記結着樹脂の溶解性や、前記着色剤との塗れ性を考慮しながら、目的に応じて適宜一般的なものを使用できるが、特に、アセトン、トルエン、ブタノンなどの有機溶剤、乃至水が、着色剤の分散性の面から好ましい。これらの中でも、水が、環境への配慮及び、後のトナー製造工程における前記着色剤の分散安定性維持の点から好ましい。
この製法によると、得られるトナーに含有される着色剤粒子の粒径が小さくなるばかりでなく、該粒子の分散状態の均一性が高くなるため、OHPによる投影像の色の再現性がより一層良くなる。
【0057】
<<磁性材料>>
更に、必要により、トナー粒子自身に磁気特性を持たせるために、磁性材料をトナー粒子へ含有させることができる。
前記磁性材料としては、フェライト、マグネタイト、マグヘマイト等の酸化鉄類;鉄、コバルト、ニッケル等の金属;該金属と他の金属との合金;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、磁性材料は、トナーの色調の点から、白色のものが好ましく、着色剤成分として使用乃至併用することもできる。
【0058】
<有機溶剤>
前記イソシアネート基含有プレポリマー(A)と前記アミン類(B)とを反応させる際、及びさらに前記ポリイソシアネート(PIC)を反応させる際には、必要により有機溶剤を用いることができる。前記有機溶剤を用いることにより、トナー組成物の粘度を低くすることができ、得られるトナーの粒度分布がシャープになる点で好ましい。また、該有機溶剤は、除去が容易である点から揮発性であることが好ましい。
前記有機溶剤としては、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族溶剤;四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン等のハロゲン化炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;テトラヒドロフラン等のエーテル類などのポリイソシアネート(PIC)に対して不活性なものが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、及び塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましく、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒がより好ましい。
前記有機溶剤の使用量としては、前記イソシアネート基含有プレポリマー(A)100質量部に対して、0質量部〜300質量部が好ましく、0質量部〜100質量部がより好ましく、25質量部〜70質量部が特に好ましい。
前記有機溶剤を使用した場合は、伸長乃至架橋反応後、常圧乃至減圧下にて加温し除去する。
【0059】
<水系媒体>
前記水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。
前記水と混和可能な溶剤としては、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール;ジメチルホルムアミド;テトラヒドロフラン;メチルセルソルブ等のセルソルブ類;アセトン、メチルエチルケトン等の低級ケトン類などが挙げられる。
【0060】
<<分散剤>>
また、必要に応じて、トナー組成物が分散された油性相を前記水系媒体に乳化、分散するために分散剤を用いることもできる。分散剤を用いたほうが、粒度分布がシャープになるとともに分散が安定である点で好ましい。
前記分散剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、αーオレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等の陰イオン界面活性剤;アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等のアミン塩型の陽イオン界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等の四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤等の陽イオン界面活性剤;脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体等の非イオン界面活性剤;アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシン、NーアルキルーN,Nージメチルアンモニウムべタイン等の両性界面活性剤などが挙げられる。
【0061】
また、前記分散剤として、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることができる。これにより、非常に少量でその効果をあげることができる。
前記フルオロアルキル基を有する界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤、フルオロアルキル基を有するカチオン界面活性剤などが挙げられる。
【0062】
前記フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[オメガーフルオロアルカノイル(C6〜C8)一N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及びその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステル等のフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤などが好ましく、そのようなフルオロアルキル基を有するアニオン界面活性剤としては、市販品を用いることができる。該市販品としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−l29(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−l02、(タイキン工莱社製)、メガファックF−ll0、F−l20、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF−102、l03、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F150(ネオス社製)などが挙げられる。
【0063】
また、前記フルオロアルキル基を有するカチオン界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、フルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級乃至二級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6一C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩などが好ましく、そのようなフルオロアルキル基を有するカチオン界面活性剤としては、市販品を用いることができる。該市販品としては、サーフロンS−l21(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(タイキン工莱杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEF−l32(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)などが挙げられる。
【0064】
また、前記分散剤として、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイトなどの水に難溶の無機化合物も用いることができる。
【0065】
<<高分子系保護コロイド>>
また、必要に応じて、トナー組成物が分散された油性相を前記水系媒体に乳化乃至分散し、分散液滴を安定化するために高分子系保護コロイドを用いてもよい。
前記高分子系保護コロイドとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸、無水マレイン酸等の酸類;アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等の水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体;ビニルアルコール;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル等のビニルアルコールとのエーテル類;酢酸ピニル、プロピオン酸ピニル、酪酸ビニル等のビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、及びこれらのメチロール化合物;アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド等の酸クロライド類;ピニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン等の窒素原子乃至その複素環を有するもの等のホモポリマー乃至共重合体;ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステル等のポリオキシエチレン系;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類などが挙げられる。
【0066】
なお、前記分散剤として、リン酸カルシウム塩等の酸乃至アルカリに溶解可能な分散剤を用いた場合には、塩酸等の酸によりリン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、微粒子から分散剤を除去することができる。また、その他酵素による分解などの操作によっても前記分散剤を除去できる。
前記分散剤を使用した場合には、該分散剤がトナー粒子表面に残留したままとすることもできるが、伸長乃至架橋反応後、洗浄除去することがトナーの帯電面から好ましい。
【0067】
<<離型剤>>
本発明の一成分現像用トナーは、トナー中に結着樹脂、着色剤などとともにワックスに代表される離型剤を含有させることもできる。
前記離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワッックス;パラフィンワッックス、サゾールワックス等の長鎖炭化水素;カルボニル基含有ワックスなどが挙げられる。これらの中でも、カルボニル基含有ワックスが好ましい。
【0068】
前記カルボニル基含有ワックスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート等のポリアルカン酸エステル;トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等のポリアルカノールエステル;エチレンジアミンジベヘニルアミド等のポリアルカン酸アミド;トリメリット酸トリステアリルアミド等のポリアルキルアミド;ジステアリルケトン等のジアルキルケトンなどが挙げられる。これらの中でも、ポリアルカン酸エステルが好ましい。
【0069】
前記離型剤の融点としては、40℃〜160℃が好ましく、50℃〜120℃がより好ましく、60℃〜90℃が特に好ましい。前記融点が、40℃未満であると、耐熱保存性に悪影響を与えることがあり、160℃を超えると、低温での定着時にコールドオフセットを起こしやすい。
また、前記離型剤の溶融粘度としては、融点より20℃高い温度での測定値として、5cps〜1000cpsが好ましく、10cps〜100cpsがより好ましい。前記溶融粘度が、1000cpsを超えると、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果に乏しいことがある。
前記離型剤のトナーにおける含有量としては、0質量%〜40質量%が好ましく、3質量%〜30重量%がより好ましい。
【0070】
<<帯電制御剤>>
本発明の一成分現像用トナーは、トナー帯電量及びその立ち上がりを早くするために、トナー中に、必要に応じて帯電制御剤を含有してもよい。ここで、前記電荷制御剤としては、有色材料を用いると色の変化が起こるため、無色、白色に近い材料が好ましい。
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリフェニルメタン系染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体乃至化合物、タングステンの単体乃至化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
前記帯電制御剤としては、市販品を用いてもよく、そのような市販品としては、例えば、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSYVP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物などが挙げられる。
【0072】
帯電制御剤のトナー組成物における含有量としては、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部〜10質量部が好ましく、0.2質量部〜5質量部がより好ましい。前記含有量が、10質量部を超えると、トナーの帯電性が大きすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招くことがある。
前記帯電制御剤は、マスターバッチ、結着樹脂と共に溶融混練した後、溶解分散させることもでき、有機溶剤に直接溶解、分散する際に加えてもよく、トナー表面にトナー粒子作成後固定化させてもよい。
【0073】
<<樹脂微粒子>>
また、本発明の一成分現像用トナーは、トナー製造過程で水系媒体中にトナー組成物を分散させるに際して、主に分散安定化のための樹脂微粒子を添加してもよい。
前記樹脂微粒子としては、特に制限はなく、水性分散体を形成しうる樹脂であればいかなる樹脂も使用でき、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られやすい点から、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びそれらの併用が好ましい。
前記ビニル系樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等のビニル系モノマーを単独重合、乃至共重合したポリマーなどが挙げられる。
【0074】
<<無機微粒子>>
本発明の一成分現像用トナーは、トナーに流動性、現像性、帯電性などを付与するための外添剤として、無機微粒子を好ましく用いることができる。
前記無機微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
前記無機微粒子の一次粒径としては、5nm〜2μmが好ましく、5nm〜500nmがより好ましい。また、前記無機微粒子のBET法による比表面積としては、20m/g〜500m/gが好ましい。
前記無機微粒子のトナーにおける含有量としては、0.01質量%〜5.0質量%が好ましく、0.01質量%〜2.0質量%がより好ましい。
【0076】
<<流動化剤>>
前記無機微粒子の他、好適に用いられる流動化剤として、例えば、ソープフリー乳化重合、懸濁重合、分散重合等によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル共重合体等の高分子系微粒子;シリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロン等の重縮合系微粒子;熱硬化性樹脂による重合体粒子などが挙げられる。
また、前記無機微粒子を含めた前記流動化剤は、流動性向上剤で表面処理されていることが好ましい。これにより、前記流動化剤の疎水性が向上し、高湿度下においても流動性や帯電性の低下を抑制することができる。
前記流動性向上剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが挙げられる。シリカ、酸化チタンは、流動性向上剤で表面処理し、疎水性シリカ、疎水性酸化チタンとして用いることが好ましい。
【0077】
前記接着性基材は、例えば、以下の方法などで製造することができる。
ポリオール(PO)とポリカルボン酸(PC)とを、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150℃〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を溜去して、水酸基を有するポリエステルを得る。
次いで40℃〜140℃にて、これにポリイソシアネート(PIC)を反応させ、イソシアネート基含有プレポリマー(A)を得る。
さらにイソシアネート基含有プレポリマー(A)にアミン類(B)を0℃〜140℃にて伸長乃至架橋反応を行い、前記ウレア変性ポリエステルを得る。
前記イソシアネート基含有プレポリマー(A)から前記ウレア変性ポリエステルを合成する方法としては、水系媒体中に分散する前に、トナー組成物にアミン類(B)を加えて反応させてもよいし、水系媒体中に分散した後に、アミン類(B)を加えて粒子界面から反応を起こしてもよい。後者の場合、製造されるトナー表面に優先的にウレア変性ポリエステルが生成するため、粒子内部で濃度勾配を設けることもできる。
前記未変性ポリエステルを併用する場合は、水酸基を有するポリエステルと同様な方法で前記未変性ポリエステルを製造し、これを前記ウレア変性ポリエステルの反応完了後の溶液に溶解し、混合する。
【0078】
前記伸長乃至架橋反応の反応時間としては、前記イソシアネート基含有プレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造と前記アミン類(B)の組み合わせによる反応性により選択されるが、10分〜40時間が好ましく、2時間〜24時間がより好ましい。
前記伸長乃至架橋反応の反応温度としては、0℃〜150℃が好ましく、40℃〜98℃がより好ましい。また、前記伸長乃至架橋反応において、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。そのような触媒としては、例えば、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
【0079】
前記トナー粒子の製造方法としては、水系媒体中でイソシアネート基含有プレポリマー(A)を含む分散液を、アミン類(B)と反応させて形成してもよいし、あらかじめ製造した前記ウレア変性ポリエステルを用いてもよい。
前記水系媒体中で前記ウレア変性ポリエステル、及びイソシアネート基含有プレポリマー(A)を含む分散液を安定して形成させる方法としては、前記水系媒体中に前記ウレア変性ポリエステル、及びイソシアネート基含有プレポリマー(A)を含むトナー材料の組成物を加えて、せん断力により分散させる方法などが挙げられる。
前記イソシアネート基含有プレポリマー(A)と他のトナー材料である着色剤、着色剤マスターバッチ、離型剤、荷電制御剤、未変性ポリエステル樹脂などは、水系媒体中で分散液を形成させる際に混合してもよいが、予め前記イソシアネート基含有プレポリマー(A)以外のトナー材料を混合した後、水系媒体中にその混合物を加えて分散させたほうがより好ましい。
また、本発明においては、着色剤、離型剤、荷電制御剤などの他のトナー原料は、必ずしも、水系媒体中で粒子を形成させる時に混合しておく必要はなく、粒子を形成せしめた後、添加してもよい。例えば、着色剤を含まない粒子を形成させた後、公知の染着の方法で着色剤を添加することもできる。
【0080】
分散の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて、例えば、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備を適用することができる。
前記分散液中の粒径を2μm〜20μmにするために、高速せん断式を用いることが好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1,000rpm〜30,000rpmが好ましく、5,000rpm〜20,000rpmがより好ましい。
分散時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、バッチ方式の場合、0.1分〜5分が好ましい。
分散時の温度としては、加圧下で、0℃〜150℃が好ましく、40℃〜98℃がより好ましい。前記温度が高温な方が、前記ウレア変性ポリエステル、前記イソシアネート基含有プレポリマー(A)からなる分散体の粘度が低く、分散が容易な点で好ましい。
【0081】
前記ウレア変性ポリエステル、前記イソシアネート基含有プレポリマー(A)などを含むトナー組成物100質量部に対する水系媒体の使用量は、50質量部〜2,000質量部が好ましく、100質量部〜1000質量部がより好ましい。前記使用量が、50質量部未満であると、トナー組成物の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られないことがあり、20,000質量部を超えると、経済的でない。
【0082】
得られた乳化分散体から前記有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に昇温し、液滴中の前記有機溶媒を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。また、前記乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の非水溶性の前記有機溶媒を完全に除去してトナー微粒子を形成し、合せて水系分散剤を蒸発除去することも可能である。前記乳化分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガスなどを加熱した気体が挙げられる。これらの中でも、使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。具体的手段としては、スプレイドライアー、ベルトドライアー、ロータリーキルンなどが挙げられ、これらの手段による短時間の処理で十分目的とする品質が得られる。
【0083】
乳化分散時の粒度分布が広く、その粒度分布を保って洗浄、乾燥処理が行われた場合、所望の粒度分布に分級して粒度分布を整えることができる。具体的には、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離などによる分級操作により、微粒子部分を取り除くことができる。また、乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行ってもよいが、液体中で行うことが効率の面で好ましい。
前記分級操作により得られた不要の微粒子乃至粗粒子は、再び混練工程に戻して粒子の形成に用いることができる。その際、該微粒子乃至粗粒子は、ウェットの状態でも構わない。用いた分散剤は、得られた分散液からできるだけ取り除くことが好ましく、該分散剤の除去は、先に述べた分級操作と同時に行うことが好ましい。
【0084】
得られた乾燥後のトナーの粉体を、離型剤、帯電制御剤、流動化剤、着色剤などの異種粒子とともに混合すること、混合粉体に機械的衝撃力を与えることなどによって表面で固定化、融合化させ、得られる複合体粒子の表面からの異種粒子の脱離を防止することができる。そのような具体的手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士乃至複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。これらの方法に用いることができる装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などがあげられる。
【0085】
本発明の一成分現像用トナーのトナー母体粒子として、上述の通り、前記粉砕法による不定形のトナー粒子に対しても適用でき、このような粉砕法によるトナーを構成する結着樹脂、着色剤などの材料としては、通常、電子写真用トナーとして使用されるものが、特に制限なく、適用可能である。
前記結着剤樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン/p−クロロスチレン共重合体、スチレン/プロピレン共重合体、スチレン/ビニルトルエン共重合体、スチレン/ビニルナフタレン共重合体、スチレン/アクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリル酸エチル共重合体、スチレン/アクリル酸ブチル共重合体、スチレン/アクリル酸オクチル共重合体、スチレン/メタクリル酸メチル共重合体、スチレン/メタクリル酸エチル共重合体、スチレン/メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン/α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ビニルメチルケトン共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/イソプレン共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体等のスチレン系共重合体;ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル系単重合体及びその共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等のポリビニル誘導体;ポリエステル系重合体、ポリウレタン系重合体、ポリアミド系重合体、ポリイミド系重合体、ポリオール系重合体、エポキシ系重合体、テルペン系重合体、脂肪族乃至脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、スチレン−アクリル系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂より選ばれる少なくとも1種が、電気特性、コスト面などの点から好ましく、ポリエステル系樹脂乃至ポリオール系樹脂が、良好な定着特性を有する点でより好ましい。
また、上述と同じ理由により、帯電部材の被覆層に含まれる樹脂成分としては、前記トナーの結着樹脂と同じものであり、線状ポリエステル樹脂組成物、線状ポリオール樹脂組成物、線状スチレンアクリル樹脂組成物、及びこれらの架橋物より選ばれる少なくとも1種を好ましく用いることができる。
前記粉砕法によるトナーでは、前記結着樹脂と共に、前述の重合法によるトナーに用いる前記着色剤、及び離型剤、電荷制御剤などのその他の成分を、必要により前混合後、樹脂成分の溶融温度近傍以下で混練して、これを冷却後、粉砕分級工程を経て、トナーを作製すればよく、また、必要により前述の重合法によるトナーに用いる外添剤を、適宜、添加混合すればよい。
【0086】
本発明において、前記一成分現像用トナーの平均円形度が、0.97〜1.00であることが好ましい。前記平均円形度が、0.97〜1.00であると、トナー粒子の形状がほぼ球に近い状態であり、トナー粒子同士、トナー粒子と像担持体との接触面積が小さいために転写性に特に優れる点で有利である。また、トナー粒子に角がないため、現像装置内での現像剤の攪拌トルクが小さく、攪拌の駆動が安定するために異常画像が発生しない点で有利である。更には、ドットを形成するトナーの中に、角張ったトナー粒子がいないため、転写で転写媒体に圧接する際に、その圧がドットを形成するトナー全体に均一にかかり、転写中抜けが生じにくい点で有利である。また、トナー粒子が角張っていないことから、トナー粒子そのものの研磨力が小さく、像担持体の表面を傷つけたり、摩耗させたりしない点で有利である。
しかしながら、このような平均円形度が高いトナーは、一般に、トナー粒子の表面が滑らかであるために、後述するクリーニング工程において、クリーニング部材をすり抜けやすいという欠点がある。また、すり抜けたトナーが接触帯電ローラに到達し、ローラ表面に付着するためローラを汚染してしまう。さらに、トナーがすり抜ける際にブレードを摩耗させ、クリーニング部材自身の劣化にもつながることがわかっている。したがって、接触帯電ローラのような帯電部材、及びクリーニング部材を長期にわたって安定に使用するためには、トナーのすり抜けを抑制する必要がある。本発明では、上記のような課題を、特定粒径の窒化ホウ素を含有させることで解決できる。
また、このような略球形の形状のトナーとしては、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマー、ポリエステル、着色剤、離型剤を含むトナー組成物を水系媒体中で樹脂微粒子の存在下で架橋乃至伸長反応させて得られるトナーが好ましい。
【0087】
−平均円形度−
前記一成分現像用トナーの平均円形度は、下記式(A)で定義される。
【数1】

次に、円形度の測定方法について説明する。
前記一成分現像用トナーの平均円形度は、例えば、フロー式粒子像分析装置(「FPIA−2100」、シスメックス社製)を用いて計測し、解析ソフト(FPIA−2100 Data Processing Program for FPIA version00−10)を用いて解析を行なうことにより測定することができる。
具体的な測定方法としては、容器中の予め不純固形物を除去した水100ml〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスフォン酸塩を0.1ml〜0.5ml加え、更に測定試料を0.1g〜0.5g程度加える。試料を分散した懸濁液を、超音波分散器を用いて約1分間〜3分間分散処理し、分散液濃度を3,000個/μl〜10,000個/μlとして前記装置によりトナーの形状、粒度を測定する。
【0088】
また、本発明において、前記一成分現像用トナーの体積平均粒径としては、3μm〜10μmが好ましく、4μm〜6μmがより好ましい。
前記体積平均粒径が、3μm未満であると、転写効率の低下が発生しやすくなることがあり、10μmを超えると、文字やラインの飛び散りを抑えることが難しくなることがある。一方、前記体積平均粒径が、4μm〜6μmであると、微小な潜像ドットに対して、十分に小さい粒径のトナー粒子を有していることから、ドット再現性に特に優れる一方で、やはりクリーニング部材をすり抜けやすい。円形度の高い場合と同様、従来の技術では、この粒径範囲のトナーを安定にクリーニングすることが困難であったが、本発明の技術を以てすれば達成可能である。
【0089】
−体積平均粒径−
前記トナーの体積平均粒径は、例えば、粒度測定器(「マルチサイザーIII」、ベックマン・コールター社製)を用い、解析ソフト(Beckman Coulter Multisizer 3 Version3.51)にて解析を行なうことにより、測定することができる。
以下に測定方法について述べる。
まず、電解水溶液100ml〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1ml〜5ml加える。ここで、電解液とは、1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調製したもので、例えばISOTON−II(コールター社製)が使用できる。
ここで、更に測定試料を2mg〜20mg加える。
試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1分間〜3分間分散処理を行い、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子乃至トナーの体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた体積分布から、体積平均粒径(D4:各チャンネルの中央値をチャンネルの代表値とする)を求める。
チャンネルとしては、2.00μm以上2.52μm未満;2.52μm以上3.17μm未満;3.17μm以上4.00μm未満;4.00μm以上5.04μm未満;5.04μm以上6.35μm未満;6.35μm以上8.00μm未満;8.00μm以上10.08μm未満;10.08μm以上12.70μm未満;12.70μm以上16.00μm未満;16.00μm以上20.20μm未満;20.20μm以上25.40μm未満;25.40μm以上32.00μm未満;32.00μm以上40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上40.30μm未満の粒子を対象とする。
【0090】
(現像剤入り容器)
本発明の現像剤入り容器は、本発明の前記一成分現像用トナーを含む現像剤を容器中に収容してなる。
前記現像剤入り容器としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、現像剤容器本体とキャップとを有してなるものなどが好適に挙げられる。
前記現像剤容器本体としては、その大きさ、形状、構造、材質などにつき、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記現像剤容器本体の形状としては、例えば、前記円筒状などが好ましく、内周面にスパイラル状の凹凸が形成され、回転させることにより内容物であるトナーが排出口側に移行可能であり、かつ該スパイラル部の一部乃至全部が蛇腹機能を有しているものなどが特に好ましい。
前記現像剤容器本体の材質としては、特に制限はなく、寸法精度がよいものが好ましく、例えば、樹脂が好適に挙げられ、その中でも、例えば、ポリエステル樹脂,ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂などが好適に挙げられる。
前記現像剤入り容器は、保存、搬送などが容易であり、取扱性に優れ、後述するプロセスカートリッジに着脱可能に取り付けて現像剤の補給に好適に使用することができる。
【0091】
(画像形成方法及び画像形成装置)
本発明の画像形成方法は、静電潜像形成工程と、現像工程と、記録媒体転写工程と、定着工程と、クリーニング工程とを含む。そして、現像工程において使用するトナーが、上述の本発明の一成分現像用トナーであることを必要とする。
本発明の画像形成装置は、像担持体と、静電潜像形成手段と、現像手段と、記録媒体転写手段と、定着手段と、クリーニング手段とを含む。そして、現像工程において使用するトナーが、上述の本発明の一成分現像用トナーであることを必要とする。
【0092】
<静電潜像形成工程及び静電潜像形成手段>
前記静電潜像形成工程は、像担持体上に静電潜像を形成する工程である。前記静電潜像形成工程は、前記静電潜像形成手段により実施することができる。
なお、帯電工程と、露光工程とを合わせて静電潜像形成工程と称することもある。前記帯電工程は、像担持体を帯電手段により帯電させる工程である。前記露光工程は、前記帯電された像担持体上に露光手段により静電潜像を形成する露光工程である。
【0093】
<現像工程及び現像手段>
前記現像工程は、像担持体上に形成された静電潜像を、トナーを用いて現像して可視像を形成する工程であり、現像工程において使用するトナーが、上述の本発明の一成分現像用トナーであることを必要とする。前記現像工程は、前記現像手段により実施することができる。
【0094】
<転写工程及び転写手段>
前記転写工程は、像担持体上に形成された可視像を記録媒体上に転写する工程である。前記転写工程は、前記転写手段により実施することができる。
【0095】
<定着工程及び定着手段>
前記定着工程は、記録媒体上に転写された可視像を定着させる工程である。前記定着工程は、前記定着手段により実施することができる。
【0096】
<クリーニング工程及びクリーニング手段>
前記クリーニング工程は、像担持体上に残存したトナーをクリーニング部材によりクリーニングする工程である。本発明において、前記クリーニング部材は、弾性体ブレードであることを必要とする。前記クリーニング工程は、前記クリーニング手段により実施することができる。
【0097】
<<弾性体ブレード>>
前記弾性体ブレードとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知のクリーニング部材の中でも小型化、低コスト化に対して特に有利である。
前記弾性体ブレードの材料としては、特に制限はなく、目的に応じて一般に公知の材料を適宜選択することができ、例えば、ゴムブレード、弾性金属ブレードなどが挙げられる。
前記ゴムブレードとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタンゴム、ヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらのゴムブレードとしては、像担持体との接点部部分を低摩擦係数材料によりコーティング、含浸処理などを行ってもよい。また、前記弾性体ブレードの硬度を調整するために、有機フィラー、無機フィラーなどに代表される充填材を分散してもよい。
【0098】
前記弾性金属ブレードとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステンレス鋼、焼入れリボン鋼、リン青銅、ベリリウム銅などを材料とするバネ板などが挙げられる。また、これらの弾性金属ブレード表面に、必要によりカップリング剤、プライマー成分などを介して、樹脂、ゴム、エラストマーなどの表面層をコーティング、ディッピングなどの方法により形成し、必要により熱硬化などを行い、更に必要であれば表面研摩などを施した弾性金属ブレードを用いてもよい。
前記弾性金属ブレードの厚みとしては、0.05mm〜3mmが好ましく、0.1mm〜1mmがより好ましい。
また、前記弾性金属ブレードでは、ブレードのねじれを抑止するために、取り付け後に支軸と略平行となる方向に、曲げ加工などの処理を施してもよい。
前記表面層を形成する材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、PFA、PTFE、FEP、PVdF等のフッ素樹脂、フッ素系ゴム、メチルフェニルシリコーンエラストマー等のシリコーン系エラストマーなどを、必要により充填剤と共に、用いることができる。
【0099】
前記弾性体ブレードは、ブレード支持体に、先端部が像担持体表面へ押圧当接できるように、接着、融着などの任意の方法によって固定される。
前記弾性体ブレードの厚みとしては、押圧で加える力との兼ね合いで一義的に定義できるものではないが、0.5mm〜5mmが好ましく、1mm〜3mmがより好ましい。
また、支持体から突き出し、たわみを持たせることができる弾性体ブレードの長さ(いわゆる自由長)としては、前記弾性体ブレードの厚みと同様に押圧で加える力との兼ね合いで一義的に定義できるものではないが、1mm〜15mmが好ましく、2mm〜10mmがより好ましい。
【0100】
(プロセスカートリッジ)
本発明のプロセスカートリッジは、少なくとも像担持体と、前記像担持体に形成された静電潜像を本発明の前記一成分現像用トナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記像担持体上に残留したトナーを弾性体ブレードによりクリーニングするクリーニング手段とを一体に具備するように形成される。
【0101】
図1に、本発明の一実施形態のプロセスカートリッジ主要部の断面図を示す。
現像装置は、トナーを収容するトナー収容室101と、トナー収容室101の下方に設けられたトナー供給室102から構成され、トナー供給室102の下部には、現像ローラ103と、現像ローラ上のトナーを介して現像ローラ103に当接して設けられた薄層形成部材即ち層厚規制部材104及び供給ローラ105が設けられる。現像ローラ103は、像担持体の代表例である感光体ドラム2に接触して配置され、図示しない高圧電源から所定の現像バイアスが印加される。
【0102】
トナー収容室101内には、トナー攪拌部材106が設けられ、反時計回りの方向で回転する。トナー攪拌部材106は、軸方向において、その先端部が開口部近傍を通過しない部分では、回転駆動によるトナー搬送面の面積を大きくしてあり、収容されたトナーを充分に流動させ攪拌する。また、その先端部が開口部近傍を通過する部分では、回転駆動によるトナー搬送面の面積を小さくした形状をしてあり、過剰な量のトナーを開口部107へ導くことを防止している。開口部107近傍のトナーは、トナー攪拌部材106によって適度にほぐされ、自重によって開口部107を通過しトナー供給室102へと落下移動する。供給ローラ105の表面には、空孔(セル)を有した構造の発泡材料が被覆されており、トナー供給室102内に運ばれてきたトナーを効率よく付着させて取り込むと共に、現像ローラ103との当接部での圧力集中によるトナー劣化を防止している。発泡材料は、10〜1014Ωの電気抵抗値に設定される。供給ローラ105には、現像バイアスに対してトナーの帯電極性と同方向にオフセットさせた値の供給バイアスが印加される。この供給バイアスは、現像ローラ103との当接部で予備帯電されたトナーを現像ローラ103押し付ける方向に作用する。ただし、オフセットの方向は、これに限ったものではなく、トナーの種類によってはオフセットを0としてもよく、オフセットの方向を変えてもよい。
【0103】
供給ローラ105は、反時計回りの方向に回転し、表面に付着させたトナーを現像ローラ103の表面に塗布供給する。現像ローラ103には、弾性ゴム層を被覆したローラが用いられ、さらに表面には、トナーと逆の極性に帯電し易い材料からなる表面コート層が設けられる。弾性ゴム層は、感光体ドラム2との接触状態を均一に保つために、JIS−Aで50度以下の硬度に設定され、さらに現像バイアスを作用させるために10〜1010Ωの電気抵抗値に設定される。表面粗さは、Raで0.2μm〜2.0μmに設定され、必要量のトナーが表面に保持される。現像ローラ103は、反時計回りの方向に回転し、表面に保持したトナーを層規制部材104及び感光体ドラム2との対向位置へと搬送する。
【0104】
層厚規制部材104は、SUS304CSP、SUS301CSP、リン青銅などの金属板バネ材料を用い、自由端側を現像ローラ103表面に10N/m〜100N/mの押圧力で当接させたもので、その押圧力下を通過したトナーを薄層化すると共に摩擦帯電によって電荷を付与する。さらに層厚規制部材104には、摩擦帯電を補助するために、現像バイアスに対してトナーの帯電極性と同方向にオフセットさせた値の規制バイアスが印加される。
【0105】
感光体ドラム2は、時計回りの方向に回転しており、したがって現像ローラ103表面は、感光体ドラム2との対向位置において感光体ドラム2の進行方向と同方向に移動する。薄層化されたトナーは、現像ローラ103の回転によって感光体ドラム2との対向位置へ搬送され、現像ローラ103に印加された現像バイアスと感光体ドラム2上の静電潜像によって形成される潜像電界に応じて、感光体ドラム2表面に移動し現像される。
【0106】
感光体ドラム2上に現像されずに現像ローラ103上に残されたトナーが再びトナー供給室102内へと戻る部分には、封止シール108が現像ローラ103に当接して設けられ、トナーが現像装置外部に漏れ出ないように封止される。
【0107】
なお図中、符号3は、接触帯電ローラ、符号5は、クリーニング部材、符号7は、ケーシングである。
【0108】
図2は、本発明の一実施形態のプロセスカートリッジユニットを備える画像形成装置主要部の断面図である。
各プロセスカートリッジユニット10は、感光体ドラム20、帯電ローラ30、現像手段40、及びクリーニング手段50を一体に具備している。各プロセスカートリッジユニット10は、各々のストッパーを解除することにより前記画像形成装置から着脱可能に形成されている。感光体ドラム20は、矢印方向に周速150mm/secで回転している。帯電ローラ30は、感光体ドラム20の表面に圧接されており、感光体ドラム20の回転により従動回転している。帯電ローラ30には、図示しない高圧電源により所定のバイアスが印加され、感光体ドラム20の表面を−500Vに帯電している。露光手段60は、感光体ドラム20に対して画像情報を露光し、静電潜像を形成する。この露光手段60には、レーザーダイオードを用いたレーザービームスキャナ、LEDなどが用いられる。現像手段40は、一成分接触現像であり、感光体ドラム20上の静電潜像をトナー像(可視像)として顕像化する。現像手段40には、図示しない高圧電源から所定の現像バイアスが供給される。感光体クリーニング手段50は、感光体ドラム20表面の転写残トナーのクリーニングを行う。
【0109】
各プロセスカートリッジユニット10は、中間転写ベルト70の移動方向に並列に4個配設され、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの順で可視像を形成する。一次転写ローラ80には、一次転写バイアスが印加され、感光体ドラム20表面のトナー像は、中間転写ベルト70表面に転写される。中間転写ベルト70は、図示しない駆動モータによって図中の矢印方向に回転駆動されるようになっており、各色の可視像が表面に順次重ね転写されることでフルカラー画像を形成する。形成されたフルカラー画像は、二次転写ローラ90に所定の電圧を印加することにより転写材である用紙100に転写され、図示しない定着装置にて定着され出力される。二次転写ローラ90で転写できず中間転写ベルト70上に残留したトナーは、転写ベルトクリーニング手段110に回収される。
【実施例】
【0110】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に制限されるものではない。
【0111】
(実施例1〜5)
一成分現像方式であるリコー製カラープリンターIpsio SP C310のブラック(Bk)用カートリッジからトナーを抜き出し、表1に示す粒径を有する窒化ホウ素を、トナー質量に対して0.25質量%添加し、ターブラミキサーを用い、攪拌速度96rpmの強撹拌を10分間実施した。得られた窒化ホウ素添加トナーをカートリッジに戻し、実施例1〜5のトナーを調製した。なお、窒化ホウ素の粒径は、一般的に製造方法及び条件により任意に調製可能である。また、Ipsio SP C310は、粉砕トナーを使用しており、該粉砕トナーの平均円形度は、0.93、体積平均粒径は、7.5μmであった。
【0112】
【表1】

【0113】
−平均円形度の測定方法−
前記トナーの平均円形度は、フロー式粒子像分析装置(「FPIA−2100」、シスメックス社製)を用いて計測し、解析ソフト(FPIA−2100 Data Processing Program for FPIA version00−10)を用いて解析を行なった。具体的には、容器中の予め不純固形物を除去した水100ml〜150ml中に10質量%界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩ネオゲンSC−A、第一工業製薬社製)を0.1〜0.5ml添加し、各トナー0.1g〜0.5g添加し、ミクロスパーテルでかき混ぜた。得られた分散液を超音波分散器(本多電子社製)で3分間分散処理した。前記分散液について前記FPIA−2100を用い、濃度3,000個/μl〜10,000個/μlが得られるまでトナーの形状及び分布を測定した。
【0114】
−体積平均粒径の測定方法−
前記トナーの体積平均粒径は、粒度測定器(「マルチサイザーIII」、ベックマン・コールター社製)を用い、解析ソフト(Beckman Coulter Multisizer 3 Version3.51)にて解析を行なうことにより、測定した。
まず、電解水溶液(ISOTON−II、コールター社製)100ml〜150ml中に分散剤として界面活性剤界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩ネオゲンSC−A、第一工業製薬社製)を0.1ml〜5ml加え、更に測定試料を2mg〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器(本多電子社製)で約1分間〜3分間分散処理を行い、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子乃至トナーの体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出した。得られた体積分布から、体積平均粒径(D4:各チャンネルの中央値をチャンネルの代表値とする)を求めた。
【0115】
<評価>
上記のように作製したカートリッジをリコー製カラープリンターIpsio SP C310のBkステーションに搭載し、Bk単色で、図3に示す縦帯チャートを用い、トナーすり抜けを促進する条件である10℃RH15%環境下において、4,000枚のランを行った。ラン後の感光体摩耗量、ブレード摩耗量、帯電ローラ汚れ、画像濃度低下、及びその他異常の有無の5項目について下記の評価基準に従って評価した。結果を表2に示す。
【0116】
<<感光体摩耗量>>
感光体摩耗量は、以下のようにして評価した。渦電流式膜厚計(フィッシャースコープMMS、フィッシャーインストゥルメンタル社製)を用いて、ラン前後の感光体膜厚を、端部を除いて10mmおきに20点測定し、平均の感光体摩耗量を算出した。結果を表2に示す。
【0117】
<<ブレード摩耗量>>
ブレード摩耗量は、以下のようにして評価した。超深度形状測定顕微鏡(Vk−9500、キーエンス社製)を用いて、ラン前後のブレード摩耗深さを、端部を除く長手方向5点について測定し、平均値を算出してブレード摩耗量とした。結果を表2に示す。
【0118】
<<帯電ローラ汚れ>>
帯電ローラ汚れは、以下のようにして評価した。4,000枚のラン後、帯電ローラ表面の目視観察を行い、汚れ(スジ)が発生している場合は、2×2画像を出力して、汚れに対応した部分の異常画像(黒スジ)を目視確認し、下記評価基準により判定した。結果を表2に示す。
[評価基準]
○:帯電ローラ表面に汚れ未発生
△:帯電ローラ表面に汚れが発生しているが、画像には現れない
×:帯電ローラ表面に汚れが発生しており、画像にも現れる(不良)
【0119】
<<画像濃度低下>>
画像濃度低下は、以下のようにして評価した。
原稿中央及び左右にベタ部を含む画像を出力し、中央及び左右のベタ部3点をX−Rite938にて測定して濃度の平均値を求め、下記評価基準により判定した。結果を表2に示す。
[評価基準]
○:平均値が1.4以上
△:平均値が1.2以上1.4未満
×:平均値が1.2未満(不良)
【0120】
(比較例1)
実施例1において、トナーに窒化ホウ素を添加しなかった以外は、実施例1と同様に比較例1のトナーを調製し、上記評価を実施した。
【0121】
(比較例2〜5)
実施例1において、トナーに添加する窒化ホウ素の粒径を、表2に示す通り変えた以外は、実施例1と同様に比較例2〜5のトナーを調製し、上記評価を実施した。
【0122】
(比較例6)
実施例1において、窒化ホウ素の代わりに平均粒径18μmのステアリン酸亜鉛を、トナー質量に対して0.25質量%添加した以外は、実施例1と同様に比較例6のトナーを調製し、上記評価を実施した。なお、このステアリン酸亜鉛は、フレーク状であり、二次粒子が存在しない。
【0123】
(実施例6〜10)
実施例1〜5において、窒化ホウ素を添加するトナーとして、平均円形度0.93、体積平均粒径7.5μmの粉砕トナーに代えて、平均円形度0.98、体積平均粒径7.5μmの重合トナーを使用した以外は、実施例1〜5と同様にそれぞれ実施例6〜10のトナーを調製し、上記評価を実施した。なお、このトナーの外添剤処方は、実施例1〜5で使用したものと同一とした。
【0124】
(比較例7)
実施例6において、トナーに窒化ホウ素を添加しなかった以外は、実施例6と同様に比較例7のトナーを調製し、上記評価を実施した。
【0125】
(比較例8〜11)
実施例6において、トナーに添加する窒化ホウ素の粒径を表2に示す通り変えた以外は、実施例6と同様に比較例8〜11のトナーを調製し、上記評価を実施した。
【0126】
(比較例12)
実施例6において、窒化ホウ素の代わりに比較例6と同一のステアリン酸亜鉛を、トナー質量に対して0.25質量%添加した以外は、実施例6と同様に比較例12のトナーを調製し、上記評価を実施した。
【0127】
(実施例11〜15)
実施例6〜10において、窒化ホウ素を添加するトナーとして、平均円形度0.98、体積平均粒径7.5μmの重合トナーに代えて、平均円形度が同じで体積平均粒径を5μmとしたトナーを使用した以外は、実施例1〜5と同様に実施例11〜15のトナーを調製し、上記評価を実施した。なお、このトナーの外添剤処方は、実施例1〜5で使用したトナーと外添剤の被覆率が一致するように、処方量を1.5倍したものを用いた。
【0128】
(比較例13)
実施例11において、トナーに窒化ホウ素を添加しなかった以外は、実施例11と同様に比較例13のトナーを調製し、上記評価を実施した。
【0129】
(比較例14〜17)
実施例11において、トナーに添加する窒化ホウ素の粒径を表2に示す通り変えた以外は、実施例11と同様に比較例14〜17のトナーを調製し、上記評価を実施した。
【0130】
(比較例18)
実施例11において、窒化ホウ素の代わりに比較例6と同一のステアリン酸亜鉛を、トナー質量に対して0.25質量%添加した以外は、実施例6と同様に比較例18のトナーを調製し、上記評価を実施した。
【0131】
(比較例19)
実施例11において、窒化ホウ素の代わりに平均粒径10μmのステアリン酸カルシウムを、トナー質量に対して0.015質量%添加した以外は、実施例6と同様に比較例19のトナーを調製し、上記評価を実施した。なお、このステアリン酸カルシウムは、フレーク状であり、二次粒子が存在しない。
【0132】
実施例1〜15、及び比較例1〜19の結果をまとめて表2に示す。
【表2】

【0133】
(実施例16〜20)
一成分現像方式であるリコー製カラー複写機Imagio Neo C200のブラック(Bk)用現像器からトナーを抜き出し、表1に示す粒径を有する窒化ホウ素を、トナー質量に対して0.10質量%添加し、ターブラミキサーにて強撹拌を10分間実施した。できあがった窒化ホウ素添加トナーを現像器に戻し、実施例16〜20のトナーを調製した。また、補給用のトナーカートリッジにも同様に作製したトナーを充填した。なお、Imagio Neo C200は、粉砕トナーを使用しており、該粉砕トナーの円形度は、0.94、体積平均粒径は、6.5μmであった。
【0134】
<評価>
上記のように作成した現像器及び補給用トナーカートリッジをリコー製カラー複写機Imagio Neo C200改造機(帯電方式を接触ローラに変更し、かつ感光体及び中間転写ベルトへのステアリン酸塗布機構を取り除いたもの)のBkステーションに搭載し、Bk単色で(図3)に示す縦帯チャートを用いて、常温環境下で20,000枚のランを行い、ラン後の感光体摩耗量、ブレード摩耗量、帯電ローラ汚れ、画像濃度低下、及びその他異常の有無の5項目について上記の評価基準に従って評価した。
【0135】
(比較例20)
実施例16において、トナーに窒化ホウ素を添加しなかった以外は、実施例16と同様に比較例20のトナーを調製し、上記評価を実施した。
【0136】
(比較例21〜24)
実施例16において、トナーに添加する窒化ホウ素の粒径を表2に示す通り変えた以外は、実施例16と同様に比較例21〜24のトナーを調製し、上記評価を実施した。
【0137】
(比較例25)
実施例16において、窒化ホウ素の代わりに比較例6と同一のステアリン酸亜鉛を、トナー質量に対して0.10質量%添加した以外は、実施例6と同様に比較例25のトナーを調製し、上記評価を実施した。
【0138】
実施例16〜20、及び比較例20〜25の結果を表3に示す。
【表3】

【0139】
以上のことからわかるように、実施例1〜20では、本発明の効果により、感光体摩耗、ブレード摩耗、帯電ローラ汚れ、画像濃度低下のいずれも少なく、長期にわたって良好な品質を維持できる。
窒化ホウ素を添加しない場合は、例えば、比較例1のように感光体摩耗、ブレード摩耗、帯電ローラ汚れとも多い。また、比較例7、比較例13のように、トナーの条件によっては、クリーニング不良が早期に発生してしまう。また、比較例6、12、18、24のように、添加する潤滑剤をステアリン酸亜鉛としても、ブレード摩耗及び帯電ローラ汚れに対して効果が得られず、画像濃度低下に対しても余裕度がない。また、比較例19は、特許文献4に記載の技術に類似した条件であるが、本実施例の構成に対しては、ステアリン酸カルシウムの添加量が少なすぎると考えられ、十分な潤滑効果を得られていない。
窒化ホウ素を添加する場合も、例えば、比較例2のように、一次粒径、二次粒径とも小さすぎる場合は、本発明の効果が得られない。例えば、比較例3のように、一次粒径が小さすぎる場合は、帯電ローラ汚れに対する効果が小さい。例えば、比較例4のように、二次粒径が大きすぎる場合は画像に白抜けが発生してしまう。例えば、比較例5のように、二次粒径が小さすぎる場合は画像濃度低下が発生してしまう。
また、実施例6〜10より、トナーの円形度が高い場合、より本発明の効果が大きく発揮される。また、実施例11〜15より、トナーの体積平均粒径が小さい場合にも、より本発明の効果が大きく発揮される。
また、実施例16〜20より、機種構成が異なっていても本発明の効果は、同様に発揮されるため、本発明は、一般性を有する。
【符号の説明】
【0140】
2 感光体ドラム
3 接触帯電ローラ
5 クリーニング部材
7 ケーシング
10 プロセスカートリッジユニット
20 感光体ドラム
30 帯電ローラ
40 現像手段
50 クリーニング手段
60 露光手段
70 中間転写ベルト
80 一次転写ローラ
90 二次転写ローラ
100 転写材
110 転写ベルトクリーニング手段
101 トナー収容室
102 トナー供給室
103 現像ローラ
104 層規制部材
105 供給ローラ
106 トナー攪拌部材
107 開口部
108 封止シール
【先行技術文献】
【特許文献】
【0141】
【特許文献1】特公昭51−22380号公報
【特許文献2】特開2009−300861号公報
【特許文献3】特開2009−048107号公報
【特許文献4】特許4093023号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均一次粒径が1μm〜40μmであり、かつ平均二次粒径が10μm〜40μmである窒化ホウ素を外添してなることを特徴とする一成分現像用トナー。
【請求項2】
平均円形度が、0.97〜1.00である請求項1に記載の一成分現像用トナー。
【請求項3】
体積平均粒径が、4μm〜6μmである請求項1から2のいずれかに記載の一成分現像用トナー。
【請求項4】
窒化ホウ素の添加量が、前記一成分現像用トナーに対して0.01質量%〜1質量%である請求項1から3のいずれかに記載の一成分現像用トナー。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の一成分現像用トナーからなる現像剤を内包することを特徴とする現像剤入り容器。
【請求項6】
像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記像担持体上に形成された静電潜像を請求項1から4のいずれかに記載の一成分現像用トナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体上に転写する記録媒体転写工程と、前記記録媒体上に転写された可視像を定着させる定着工程と、前記像担持体上に残存したトナーを弾性体ブレードによりクリーニングするクリーニング工程とを含むことを特徴とする画像形成方法。
【請求項7】
少なくとも像担持体と、前記像担持体に形成された静電潜像を請求項1から4のいずれかに記載の一成分現像用トナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記像担持体上に残存したトナーを弾性体ブレードによりクリーニングするクリーニング手段とを一体に具備することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項8】
像担持体と、前記像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記像担持体上に形成された静電潜像を請求項1から4のいずれかに記載の一成分現像用トナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体上に転写する記録媒体転写手段と、前記記録媒体上に転写された可視像を定着させる定着手段と、前記像担持体上に残存したトナーを弾性体ブレードによりクリーニングするクリーニング手段とを含むことを特徴とする画像形成装置。


【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−83670(P2012−83670A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231942(P2010−231942)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】