説明

三次元レリーフの作成方法および装置

【課題】三次元レリーフの凹凸の状態を実際の状態に近づけることができ、しかも対象物の細かい凹凸をも表現することを可能にすること。
【解決手段】濃淡を有する原画像から三次元レリーフを作成する装置であって、原画像GFを複数の領域に区画する領域区画部12、区画された各領域に対して高さレベルを決定する高さレベル決定部13、各領域に対し高さレベルに応じた濃度を与えることにより、原画像の領域を濃淡で示した高さ画像GTを生成する高さ画像生成部14、高さ画像の各部の濃度を原画像の濃淡を用いて補正して補正高さ画像GDを生成する補正部16、材料に対して補正高さ画像GDに基づいて加工を施し、補正高さ画像GDで示される高さに応じた凹凸を有する三次元レリーフを作成する加工部21を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元の原画像から凹凸を有する三次元レリーフを作成する方法および装置、並びに、三次元レリーフの作成のための高さ画像データを作成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、美術品である絵画、彫刻などを三次元レリーフとして複製したものがある。また、人物や風景、または山や谷などの自然の地形の2次元画像に基づいて三次元レリーフを復元したものも知られている。
【0003】
このような三次元レリーフを自動的に作成する方法が提案されている(特許文献1)。つまり、特許文献1によると、デジタルカメラなどによってレリーフのモチーフとなる画像を入力すると、各画素の色調データに基づいて算出された階調データに基づきレリーフの高さを表すZ座標データが設定され、各画素の二次元位置データD(x,y)に基づきレリーフの平面位置を表すX−Y座標データが設定される。そして、これらをXYZ座標とする三次元形状データに基づいて工具のカッターパスが算出され、算出されたカッターパスに基づいて、被加工物の表面がNC加工機により研削加工される。
【0004】
NC加工機で表面を研削された被加工物に対し、画素情報の二次元位置データと対応する位置に、色調データで表された色乃至明るさのインクを噴霧して着色を行う。
【0005】
レリーフの高さを表すZ座標データは、階調データや輝度データに基づいて、変換テーブルや演算式を用いて算出される。具体的には、色の白い部分が低く、色の暗い部分が高くなるようにZ座標データが決定される
【特許文献1】特開平9−311707
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上に述べた特許文献1の方法による場合は、単に階調データや輝度データに応じてZ座標データが決定されるので、Z座標データが現物の実際の凹凸状態と一致しない。
【0007】
例えば、人物の三次元レリーフを作成する場合に、白いカッターシャツに黒の背広を着用している場合に、白いカッターシャツの襟首の部分がその周囲の黒の背広よりも低くなって奥まったり、黒の背広が人物の顔よりも高く浮き出てしまうということが起こり得る。また、色物のカッターシャツに白の背広を着用した場合に、色物のカッターシャツが白の背広よりも高く浮き出てしまうことが起こり得る。また、照明や光線の状態によっては、凹凸の関係が全く異なったものとなってしまう。
【0008】
したがって、例えば、背景を明るくしておいて対象物の写真を撮った場合には、三次元レリーフにおける対象物は背景部分から浮き出るようにはなる。しかし、作成された三次元レリーフの対象物内における凹凸の状態は実際とは異なったものとなってしまう。
【0009】
このような問題に対して、本出願人は、原画像を複数の領域に区画し、区画された各領域に対して高さレベルを付与し、グレースケールで表された高さ画像を生成することを、特願2006−166252号として先に提案した。これによると、高さ画像の凹凸の状態を実際の状態に近づけることができる。
【0010】
しかし、その場合において、全体的な凹凸の状態は実際の状態に近づけることが可能であるが、細かい凹凸を表現することは困難であるかまたは不可能であった。例えば、背広の皺の凹凸を表現したり、髪の毛や髭の凹凸を表現することはほとんど不可能に近かった。
【0011】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、三次元レリーフの凹凸の状態を実際の状態に近づけることができ、しかも対象物の細かい凹凸をも表現することを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る方法は、濃淡を有する原画像から三次元レリーフを作成する方法であって、前記原画像を複数の領域に区画する第1の工程と、区画された各領域に対して高さレベルを決定し、各領域に対し高さレベルに応じた濃度を与えることにより、原画像の領域を濃淡で示した高さ画像を生成する第2の工程と、前記高さ画像の各部の濃度を前記原画像の濃淡を用いて補正して補正高さ画像を生成する第3の工程と、材料に対して補正高さ画像に基づいて加工を施し、前記補正高さ画像で示される高さに応じた凹凸を有する三次元レリーフを作成する第4の工程とを有する。
【0013】
好ましくは、前記第3の工程において、前記高さ画像と前記原画像を濃淡で表した濃淡原画像とを重ね合わせ、前記高さ画像の各部の濃度に対し前記原画像の各部の濃度の所定割合の濃度を加算または減算する。
【0014】
また好ましくは、前記原画像の濃度を加算または減算する際に、前記原画像の濃度の中間の値を基準濃度とし、前記基準濃度との差の濃度を加算または減算する。
【0015】
好ましくは、前記所定割合の濃度は、前記原画像の濃度の10〜30パーセントの濃度とする。
【0016】
好ましくは、前記第2の工程において、前記領域においてその周辺部から中央部に向けて濃度のグラデーションを与えておく。
【0017】
好ましくは、前記第2の工程において、隣接する前記領域においてその境界部分の濃度が連続的に変化するようにぼかしを与える。
【0018】
好ましくは、前記第4の工程の後に、前記三次元レリーフに対して、前記原画像の原色に基づく画像印刷を行うことによって着色を行う第5の工程を有する。
【0019】
本発明に係る装置は、濃淡を有する原画像から三次元レリーフを作成する装置であって、前記原画像を複数の領域に区画する第1の手段と、区画された各領域に対して高さレベルを決定し、各領域に対し高さレベルに応じた濃度を与えることにより、原画像の領域を濃淡で示した高さ画像を生成する第2の手段と、前記高さ画像の各部の濃度を前記原画像の濃淡を用いて補正して補正高さ画像を生成する第3の手段と、材料に対して補正高さ画像に基づいて加工を施し、前記補正高さ画像で示される高さに応じた凹凸を有する三次元レリーフを作成する第4の手段とを有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、三次元レリーフの凹凸の状態を実際の状態に近づけることができ、しかも対象物の細かい凹凸をも表現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は本発明に係る三次元レリーフ作成装置1の構成を示すブロック図、図2は原画像GF1の例を示す図、図3は領域区画画像GR1の例を示す図、図4は高さレベル画像GL1の例を示す図、図5は高さ画像GT1の例を示す図、図6は補正用画像GH1と高さ画像GT1との合成の様子を示す図、図7は補正高さ画像GD1の例を示す図、図8は高さレベルを説明するための図、図9は高さ画像GTと補正用画像GHとの合成の様子を説明するための図である。
【0022】
図1において、三次元レリーフ作成装置1は、原画像格納部11、領域区画部12、高さレベル決定部13、高さ画像生成部14、補正用画像生成部15、補正部16、加工部21、および着色部22などからなる。
【0023】
原画像格納部11は、入力された原画像GFを格納する。原画像GFは画像データであるが、画像データの元になった画像を指すこともある。また、特に視覚可能な画像と画像データとを区別する際には、「原画像データGF」「原画像GFのデータ」「画像データ」などと記載することがある。他の画像についても同様である。
【0024】
さて、原画像GFとして、人物、動物、建築物、風景など、また、山や谷などの自然の地形の鳥瞰図や航空写真など、種々の画像が用いられる。
【0025】
図2示す原画像GF1は、人物のポートレートのカラー写真に基づいた画像である。図2ではよく現れていないが、人物は口髭を持ち、黒っぽい背広を着用している。
【0026】
原画像GFは、例えば、X方向およびX方向に直交するY方向にマトリックス状に配列された多数の画素からなる2次元画像である。各画素は、色情報を持つ。色情報は濃度情報を含む。例えば、各画素が、RGBまたはCMYKなどで表現されている場合は、各原色の濃度情報によって各画素の色、つまり、色相、彩度、および明度が決定される。画素は他の表色系のデータによって表現されていてもよい。
【0027】
このような原画像GFを得るために、それらの実物をデジタルカメラやビデオカメラなどによって撮影してもよい。また、既に撮影された写真や印刷物などをスキャナなどで読み取ってデジタル化してもよい。また、既にデジタル化されて画像データとなった原画像GFを、CD−ROMやメモリチップなどの記憶媒体を介して、またはネットワークからダウンロードして取得することも可能である。また、コンピュータの内部において、種々のアプリケーションを用いて原画像GFを生成してもよい。
【0028】
なお、原画像GFは、ビットマップ状のデータとして格納しておいてもよいが、適当な圧縮方法によって圧縮された圧縮データとして格納しておいてもよい。原画像GFは、通常、フルカラー画像であるが、モノクロ画像でもよい。
【0029】
領域区画部12は、原画像GFを複数の領域に区画し、各領域の境界線(輪郭線)のみで示された領域区画画像GRを生成する。
【0030】
図3に示すように、領域区画画像GR1は、顔、目、鼻、口、睫毛、頭髪、口髭、背広の襟、肩部、腕部、カッターシャツの襟、ネクタイ、手などをそれぞれ領域として設定して区画されている。領域の区画は、例えば、原画像GFからエッジを検出してエッジ画像を生成することによって行うことも可能である。また、表示装置の表示面に原画像GFを表示し、ユーザがその原画像GFを見ながら手動で境界線を指定することによって領域の区画を行ってもよい。また、原画像GFを印刷し、印刷された原画像GFに、ユーザが筆記具で境界線を書き込んで領域の区画を行い、それをスキャナなどで読み込むことによって入力してもよい。
【0031】
高さレベル決定部13は、領域区画画像GRの各領域に対して、高さレベルを決定し、高さレベル画像GLを取得する。高さレベルの決定は、領域区画画像GR内における領域の状態をコンピュータで認識させることにより自動的に行ってもよい。また、表示装置の表示面に領域区画画像GRを表示し、それぞれの領域に対して、ユーザが高さレベルを入力してもよい。
【0032】
なお、高さレベルを決定する前に、領域区画画像GRの全ての領域に対して同じ高さレベル、例えば最も低い高さレベルを与えて高さレベルを揃えておいてもよい。
【0033】
図4に示す高さレベル画像GL1では、高さレベルが「1」〜「6」の6段階に設定されている。図8に示すように、レベル「6」が最も低く、レベル「1」が最も高い。背景部分にはレベル「6」が設定されており、最も低く奥まった位置となる。なお、この例では6段階のレベルに設定されているが、10段階、16段階、24段階、64段階、256段階など、任意の段階のレベルを設定することも可能である。
【0034】
高さ画像生成部14は、高さレベル画像GLの各領域に対し、高さレベルに応じた濃度を与えることにより、原画像の領域を濃淡で示した高さ画像GTを生成する。
【0035】
高さ画像GTは、X方向およびY方向にマトリックス状に配列された多数の各画素について、X方向およびY方向に直交するZ方向のデータである高さデータTDを記録したものである。高さ画像GTの画素のピッチまたは個数は、原画像GFの画素GSのピッチまたは個数と同じであってもよく、また原画像GFの画素を間引いたものであってもよい。
【0036】
図5に示す高さ画像GT1では、レベル「6」からレベル「1」に向かって、黒から白へと段階的に移行する6段階のグレースケールが適用されている。 このようなグレースケールは、高さレベルに対応して予め設定しておき、設定されたグレースケールに応じて、高さレベルに対応する濃度を自動的に割り当ててもよい。高さレベルに対応して割り当てられた濃度が高さデータTDとなる。
【0037】
高さデータTDは、例えば、最も低い位置(例えば背景位置)から最も高い位置までの間における高さ位置を示す。また、高さデータTDが、最も低い位置からの距離を直接的に示すようにしてもよい。高さデータTDは、原画像GFにおいては高さを示すものであるが、加工部21の切削工具や着色部22のプリントヘッドからから見れば、奥行きまたは深さを示すものと言えるので、奥行きデータまたは深さデータと言うこともできる。
【0038】
なお、高さレベル決定部13における高さレベルの決定とそれに対応する濃度の付与とを、同時に、または高さ画像生成部14のみによって行ってもよい。
【0039】
補正用画像生成部15は、高さ画像GTの濃度を補正するために用いる補正用画像GHを生成する。補正用画像GHは、例えば、原画像GFをグレースケールで表した濃淡画像(モノクロ画像)に変換するとともに、その各部の濃度の所定割合の濃度を持つように濃度を低下させた画像である。例えば、原画像GFの濃度の10〜30パーセントの濃度からなる濃淡画像である。つまり、補正用画像GHは、原画像GFの濃度を淡く(薄く)した濃淡画像である。
【0040】
図6に示す補正用画像GH1は、図ではよく示されないが、図2に示す原画像GF1の濃度を淡くした画像である。
【0041】
補正部16は、高さ画像GTの各部の濃度を、補正用画像GHの濃淡を用いて補正して、補正高さ画像GDを生成する。
【0042】
すなわち、補正部16は、図6に示すように、高さ画像GTの濃度と補正用画像GHの濃度とを加算または減算することによって合成する。濃度を加算または減算する際に、図9(A)に示すように、高さ画像GTの濃度と補正用画像GHの濃度とを単純に加算または減算してもよい。この例では、高さ画像GTの濃度から補正用画像GHの濃度を単純に減算している。つまり、高さ画像GTの明度または濃度に対して、補正用画像GHの明度を加算している。
【0043】
この場合には、例えば透明フィルム上に対象物である人物を濃度を落として表したものを補正用画像GH1として作成し、作成した透明フィルムを高さ画像GT1の上に重ねて得られる画像を補正高さ画像GD1としたものと考えることが可能である。
【0044】
なお、「濃度」と「明度」とは表裏の関係にあり、本明細書においては「濃度」および「明度」を代表して「濃度」と記載する。
【0045】
また、図9(B)に示すように、補正用画像GHの濃度の中間の値を基準濃度とし、補正用画像GHの各部の濃度と基準濃度との差の濃度を加算または減算するようにしてもよい。この例では、基準濃度を補正用画像GHにおける2つの濃度の中央の濃度としたので、高さ画像GTに対して、1つの部分(画素)には差分が加算され、他の1つの部分(画素)には差分を減算することとなる。
【0046】
このように、補正部16は、要は、高さ画像GTに対して、原画像GFの濃淡を用いて補正し、原画像GFの持つ細かい濃淡つまり凹凸を付与するのである。
【0047】
補正部16による補正の結果、図7に示すような補正高さ画像GD1が得られる。
【0048】
図5に示す高さ画像GT1と図7に示す補正高さ画像GD1とを比較すると、高さ画像GT1では、各領域において同じ濃度であり、領域内における細かい濃淡は全く現れていないのに対して、補正高さ画像GD1では、各領域内においても、原画像GFに実際に現れている濃淡が現れている。例えば、図ではよく示されないが、補正高さ画像GD1では、人物の頭髪の部分には頭髪の濃淡が現れ、口髭の部分には口髭の濃淡が現れ、背広の部分には背広の皺が現れている。
【0049】
なお、原画像GFから補正用画像GHを生成する場合に、まず原画像GFを濃淡のみで表した濃淡画像を生成し、その濃度の所定割合の濃度を持つように濃度を低下させるのであるが、所定割合は、上に述べたように、通常、10〜30パーセントの範囲とされる。所定割合が大きい場合は、原画像GFの特徴がより大きく現れ、所定割合が小さい場合は、原画像GFの特徴が小さく現れる。10〜30パーセントの範囲以外の所定割合を用いることも可能である。
【0050】
このように、高さ画像GTに対して、原画像GFの濃度(明度)を反映した補正用画像GHを用いて濃度(明度)を補正することによって、のっぺらぼうになり勝ちな高さ画像GTに対して原画像GFの細かい凹凸の変化が反映するように補正し、より実際の原画像GFに近づけることができる。
【0051】
加工部21は、補正高さ画像GDを用い、材料RZに対して補正高さ画像に基づいて加工を施し、前記補正高さ画像で示される高さに応じた凹凸を有する三次元レリーフ原形RGを作成する。
【0052】
すなわち、加工部21は、補正部16から出力された補正高さ画像GDに基づいて、数値制御加工装置を制御するための制御データの生成などを行い、制御データに基づいて、材料RZに対して加工を施し、原画像GFに対応した三次元レリーフ原形RGを作成する。このような数値制御加工装置を含んだ加工部21として、種々のNC旋盤、マシニングセンター、レーザ加工機、サンドブラスト、ルーターなどを用いることが可能である。なお、材料RZには、材木、石膏、合成樹脂、または金属など、種々の材料が用いられ、また、その形状として、直方体状、板状、円柱状、各柱状、球状など、種々の形状のものが用いられる。三次元レリーフ原形RGは、材料RZに加工を施したものであるから、加工された表面は、通常、材料RZと同じ色である。
【0053】
着色部22は、例えばインクジェットプリンタであり、三次元レリーフ原形RGの表面に、原画像GFに基づく画像印刷を行うことによって着色を行い、三次元レリーフRRを作成する。着色部22がインクジェットプリンタである場合には、例えば、Y,M,C,Kの各色のインクを保持し、原画像GFの色データに応じて、高速でパルス状に微量のそれぞれのインクを噴射し、三次元レリーフ原形RGの凹凸の表面にフルカラーの画像を生成する。このように、着色部22として、従来から存在する種々の公知のインクジェットプリンタを用いることができる。
【0054】
このようにして作成された三次元レリーフRRは、その凹凸の状態が対象物の実際の凹凸の状態に近くなり、しかも対象物の細かい凹凸をも表現することが可能である。
【0055】
しかし、領域の区画の仕方やその領域に対する濃度の決定の仕方によっては、領域内における盛り上がり感や湾曲感などがで難かったり、隣接する領域間における連続性が不自然になる可能性がある。
【0056】
そのような場合には、高さ画像生成部14において高さ画像GTを生成する際に、次に述べるような処理を施す。
【0057】
すなわち、高さレベル画像GLまたは高さ画像GTにおける必要な領域に対して、その周辺部から中央部に向けて濃度のグラデーションを与えておく。例えば、高さレベル画像GL1の背広の腕の部分において、中央が膨らんだ丸みを出すために、領域の周辺部よりも中央部に向かうにしたがって白っぽくなるようにグラデーションを与える。人物の顔面においても同様に、領域の周辺部よりも中央部に向かうにしたがって白っぽくなるようにグラデーションを与える。これとは逆に、中央が周辺部よりも凹んでいる場合には、領域の周辺部よりも中央部に向かうにしたがって黒っぽくなるようにグラデーションを与えておけばよい。
【0058】
また、隣接する領域間において不自然な段差が生じないように、隣接する領域においてその境界部分の濃度が連続的に変化するようにぼかしを与える。また、背景部分と接する領域の背景部分との境界線、つまり対象物の全体の輪郭の部分において、背景部分に対して不自然な段差が生じないように、境界部分の濃度が連続的に変化するようにぼかしを与える。ぼかしは、領域の部分や周囲の状況などに応じて、例えば、強、中、弱の3段階の強さで行う。
【0059】
なお、原画像GFに対して、ホクロ、黒目、襟元の影、不必要に黒い部分などを、前処理によって削除してもよい。
【0060】
上に述べたような三次元レリーフ作成装置1は、コンピュータを用いて実現することができる。そのようなコンピュータは、CPUやDSPなどによる処理装置、半導体メモリや磁気ディスクなどの記憶装置、キーボードやマウスなどの入力装置、表示装置、および種々のインタフェース回路などを含んで構成することができる。それらによって、ソフトウエア的にまたはハードウエア的に、コンピュータ内に、上に述べた種々の機能を実現することができる。
【0061】
次に、三次元レリーフ作成装置1における三次元レリーフの作成方法について、フローチャートを用いて説明する。
【0062】
図10は三次元レリーフの作成の手順を示すフローチャートである。
【0063】
図10において、原画像GFを取得し(#11)、領域に区画する(#12)。各領域に対して高さレベルを決定し(#13)、領域に対し高さレベルに応じた濃度を与えることにより高さ画像GTを生成する(#14)。必要な領域に対して、その周辺部から中央部に向けて濃度のグラデーションを与える(#15)。必要な領域の境界部分の濃度が連続的に変化するようにぼかしを与える(#16)。
【0064】
高さ画像GTの各部の濃度を補正用画像GHを用いて補正して補正高さ画像GDを生成する(#17)。材料RZに対して、補正高さ画像GDに基づいて加工を施し、補正高さ画像GDで示される高さに応じた凹凸を有する三次元レリーフ原形RGを作成する(#18)。三次元レリーフ原形RGの表面に原画像GFに応じた印刷を行って三次元レリーフRRを完成させる(#19)。
【0065】
上に述べた実施形態において、領域区画画像GR1、補正用画像GH1、高さレベル画像GL1などは、三次元レリーフRRの作成の手順を説明する上で表示したものであり、必ずしも実際に存在しなくてもよい。その他、三次元レリーフ作成装置1の全体または各部の構造、構成、形状、寸法、個数、材質、画像の内容、処理の内容または順序などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る三次元レリーフ作成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】原画像の例を示す図である。
【図3】領域区画画像の例を示す図である。
【図4】高さレベル画像の例を示す図である。
【図5】高さ画像の例を示す図である。
【図6】補正用画像と高さ画像との合成の様子を示す図である。
【図7】補正高さ画像の例を示す図である。
【図8】高さレベルを説明するための図である。
【図9】高さ画像と補正用画像との合成の様子を説明するための図である。
【図10】三次元レリーフの作成の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
1 三次元レリーフ作成装置
11 原画像格納部
12 領域区画部
13 高さレベル決定部
14 高さ画像生成部
15 補正用画像生成部
16 補正部
21 加工部
22 着色部
GF 原画像
GR 領域区画画像
GL 高さレベル画像
GT 高さ画像
GH 補正用画像
GD 補正高さ画像
RR 三次元レリーフ
RZ 材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃淡を有する原画像から三次元レリーフを作成する方法であって、
前記原画像を複数の領域に区画する第1の工程と、
区画された各領域に対して高さレベルを決定し、各領域に対し高さレベルに応じた濃度を与えることにより、原画像の領域を濃淡で示した高さ画像を生成する第2の工程と、
前記高さ画像の各部の濃度を前記原画像の濃淡を用いて補正して補正高さ画像を生成する第3の工程と、
材料に対して補正高さ画像に基づいて加工を施し、前記補正高さ画像で示される高さに応じた凹凸を有する三次元レリーフを作成する第4の工程と、
を有してなることを特徴とする三次元レリーフの作成方法。
【請求項2】
前記第3の工程において、
前記高さ画像と前記原画像を濃淡で表した濃淡原画像とを重ね合わせ、前記高さ画像の各部の濃度に対し前記原画像の各部の濃度の所定割合の濃度を加算または減算する、
請求項1記載の三次元レリーフの作成方法。
【請求項3】
前記原画像の濃度を加算または減算する際に、
前記原画像の濃度の中間の値を基準濃度とし、前記基準濃度との差の濃度を加算または減算する、
請求項2記載の三次元レリーフの作成方法。
【請求項4】
前記所定割合の濃度は、前記原画像の濃度の10〜30パーセントの濃度である、
請求項2または3記載の三次元レリーフの作成方法。
【請求項5】
前記第2の工程において、
前記領域においてその周辺部から中央部に向けて濃度のグラデーションを与えておく、
請求項2ないし4のいずれかに記載の三次元レリーフの作成方法。
【請求項6】
前記第2の工程において、
隣接する前記領域においてその境界部分の濃度が連続的に変化するようにぼかしを与える、
請求項2ないし4のいずれかに記載の三次元レリーフの作成方法。
【請求項7】
前記第4の工程の後に、
前記三次元レリーフに対して、前記原画像の原色に基づく画像印刷を行うことによって着色を行う第5の工程を有する、
請求項2ないし6のいずれかに記載の三次元レリーフの作成方法。
【請求項8】
濃淡を有する原画像から三次元レリーフを作成する装置であって、
前記原画像を複数の領域に区画する第1の手段と、
区画された各領域に対して高さレベルを決定し、各領域に対し高さレベルに応じた濃度を与えることにより、原画像の領域を濃淡で示した高さ画像を生成する第2の手段と、
前記高さ画像の各部の濃度を前記原画像の濃淡を用いて補正して補正高さ画像を生成する第3の手段と、
材料に対して補正高さ画像に基づいて加工を施し、前記補正高さ画像で示される高さに応じた凹凸を有する三次元レリーフを作成する第4の手段と、
を有してなることを特徴とする三次元レリーフの作成装置。
【請求項9】
前記第3の手段において、
前記高さ画像と前記原画像を濃淡で表した濃淡原画像とを重ね合わせ、前記高さ画像の各部の濃度に対し前記原画像の各部の濃度の所定割合の濃度を加算または減算する、
請求項8記載の三次元レリーフの作成装置。
【請求項10】
濃淡を有する原画像から三次元レリーフを作成するための高さ画像データを作成する方法であって、
前記原画像を複数の領域に区画する第1の工程と、
区画された各領域に対して高さレベルを決定し、各領域に対し高さレベルに応じた濃度を与えることにより、原画像の領域を濃淡で示した高さ画像を生成する第2の工程と、
前記高さ画像の各部の濃度を前記原画像の濃淡を用いて補正して補正された高さ画像データを生成する第3の工程と、
を有してなることを特徴とする三次元レリーフの作成のための高さ画像データを作成する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−284821(P2008−284821A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133439(P2007−133439)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(591243893)株式会社フオトクラフト社 (26)