説明

三次元多孔性有機金属錯体、それを用いた吸蔵物質及び錯体

【課題】ポルフィリン構造を有する有機金属錯体であって、吸蔵特性や触媒作用を発揮する三次元多孔性有機金属錯体の提供。
【解決手段】銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、亜鉛、タングステン、レニウム、テクネチウム及び鉄からなる群から選択される金属原子を有するカルボン酸金属錯体とポルフィリン誘導体との繰り返し単位からなるポルフィリン錯体層と、前記ポルフィリン錯体層の層間に存在するフラーレンとからなる三次元多孔性構造を有することを特徴とする三次元多孔性有機金属錯体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元多孔性有機金属錯体、それを用いた吸蔵物質及び錯体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、吸蔵物質や触媒として利用することが可能な有機金属錯体の研究が進められており、ポルフィリン構造を有する種々の有機金属錯体が開示されている。
【0003】
例えば、特開2004−67596号公報(特許文献1)においては、金属原子と、その金属原子に配位したポルフィリン構造を有する配位子とからなる特定の二次元格子構造を繰り返し単位として有する有機金属錯体が開示されており、特開2007−169267号公報(特許文献2)においては、ポルフィリン構造を有する配位子がカルボン酸二核錯体を介して結合された有機金属錯体が開示されている。
【0004】
また、このような有機金属錯体においては、ポルフィリン誘導体の他に更にフラーレンを含むものが知られている。例えば、2001年発行の刊行物「Chem.Eur.J.(vol.7)」の2605頁〜2616頁(非特許文献1)においては、ポルフィリン誘導体とフラーレン(C60,C70)とからなる一次元構造の有機金属錯体が開示されている。また、2002年発行の刊行物「PNAS(vol.99)」の5088頁〜5092頁(非特許文献2)においては、カルボン酸単核錯体と、ポルフィリン構造を有する配位子と、フラーレンC60とからなる三次元多孔性構造を有する有機金属錯体が開示されている。
【0005】
しかしながら、従来のポルフィリン誘導体を含む有機金属錯体においては、錯体の一次元細孔の細孔径や錯体の持つ空隙が必ずしも十分なものではなく、錯体の吸蔵特性や触媒作用が必ずしも十分なものでなかった。
【特許文献1】特開2004−67596号公報
【特許文献2】特開2007−169267号公報
【非特許文献1】D.V.Konarev,I.S.Neretin,Y.L.Slovokhotov,E.I.Yudanova et al.,“New Molecular Complexes of Fullerenes C60 and C70 with Tetraphenylporphyrins [M(tpp)],in which M=H2,Mn,Co,Cu,Zn,and FeCl”,Chem.Eur.J.,2001年発行,vol.7,2605頁〜2616頁
【非特許文献2】D.Sun,F.S.Tham,C.A.Reed,and P.D.W.Boyd,“Extending supramolecular fullerene−porphyrin chemistry to pillared metal−organic frameworks”,PNAS,2002年発行,vol.99,5088頁〜5092頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、ポルフィリン構造を有する有機金属錯体であって、三次元多孔性構造を有し、十分に高度な吸蔵特性や十分に優れた触媒作用を発揮することが可能な三次元多孔性有機金属錯体、並びに、それを用いた吸蔵物質及び触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のポルフィリン誘導体が特定のカルボン酸金属錯体を介して結合されている下記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるポルフィリン錯体層と、前記ポルフィリン錯体層の層間に存在するフラーレンとからなる有機金属錯体によって、十分に高度な吸蔵特性や十分に優れた触媒作用を発揮することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の三次元多孔性有機金属錯体は、下記一般式(1):
【0009】
【化1】

【0010】
[式中、Pは同一でも異なっていてもよく、それぞれ下記一般式(2)〜(3):
【0011】
【化2】

【0012】
(式(2)中、Mは窒素原子に配位している金属原子を示し、式(2)〜(3)中、R〜Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ一価の置換基を示す。)
で表されるポルフィリン誘導体群の中から選択されるいずれかを示し、
Lは同一でも異なっていてもよく、それぞれ下記一般式(4)〜(5):
【0013】
【化3】

【0014】
(Mは同一でも異なっていてもよく、それぞれ金属原子を示し、Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ一価の有機置換基を示す。)
で表されるカルボン酸金属錯体群の中から選択されるいずれかを示す。]
で表される繰り返し単位からなるポルフィリン錯体層と、
前記ポルフィリン錯体層の層間に存在するフラーレンと、
からなる三次元多孔性構造を有することを特徴とするものである。
【0015】
上記本発明の三次元多孔性有機金属錯体においては、前記一般式(4)〜(5)中のMが、それぞれ、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、亜鉛、タングステン、レニウム、テクネチウム及び鉄からなる群から選択される金属原子であることが好ましい。
【0016】
また、上記本発明の三次元多孔性有機金属錯体においては、前記一般式(2)中のMが、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、亜鉛、タングステン、レニウム及び鉄からなる群から選択される金属原子であることが好ましい。
【0017】
また、上記本発明の三次元多孔性有機金属錯体においては、前記一般式(2)〜(3)中のR〜Rが、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、シリル基、ジアゾ基、シアノ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、メルカプト基、アリール基及びハロゲン化アリール基からなる群から選択される一価の置換基であることが好ましい。
【0018】
また、上記本発明の三次元多孔性有機金属錯体においては、前記一般式(4)〜(5)中のRが、水素原子、アセチル基、フェニル基、トルイル基、ナフチル基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、フェニルメルカプト基、ベンゾイル基、シクロヘキシル基、アントラセン基及びピレン基からなる群より選ばれる一価の有機置換基であることが好ましい。
【0019】
さらに、上記本発明の三次元多孔性有機金属錯体においては、前記フラーレンが、C60フラーレン、C70フラーレン、炭素原子数が70を超える高次フラーレン、並びに、これらの水酸化物、水素化物及び酸化物からなるフラーレン誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0020】
また、上記本発明の三次元多孔性有機金属錯体においては、前記一般式(1)中のPが前記一般式(2)で表されるポルフィリン誘導体であり、前記一般式(2)中のMが銅であり、且つ、前記フラーレンがC70フラーレンであることが好ましい。
【0021】
また、本発明の吸蔵物質は、上記本発明の三次元多孔性有機金属錯体を含有することを特徴とするものである。
【0022】
さらに、本発明の触媒は、上記本発明の三次元多孔性有機金属錯体を含有することを特徴とするものである。
【0023】
なお、本発明の三次元多孔性有機金属錯体によって、上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の三次元多孔性有機金属錯体は、上記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるポルフィリン錯体層と、前記ポルフィリン錯体層の層間に存在するフラーレンとからなる。このような三次元多孔性有機金属錯体においては、ポルフィリン誘導体がフラーレンと相互作用し、例えば、前記フラーレンが本発明において好適に用いられるC70フラーレンである場合には、前記ポルフィリン錯体層の平面の垂直方向において、前記錯体層中のポルフィリン誘導体とC70フラーレンとがスタッキングして、図1に示すような、ポルフィリン錯体層の平面間をC70フラーレンがスタッキングした三次元格子構造が形成される(図1は、前記ポルフィリン錯体層(二次元格子)とC70フラーレンとで構成された本発明の三次元多孔性有機金属錯体の構造の一部を示す概念図である。)。なお、本発明の三次元多孔性有機金属錯体においては、パッキングの性質上、C70フラーレンを選択的に捕集する傾向にあるものと推察される。そして、このようなスタッキングにより、ポルフィリン錯体層の層間の平均距離を十分に大きくすることが可能(例えば、ピラジンなどでポルフィリン錯体層間を架橋した場合、層間距離は約0.7nmとなるが、フラーレンをスタッキングさせた場合には、約1.3nmにまで広げることが可能)となるため、三次元多孔性有機金属錯体に十分な空隙が形成された細孔構造を形成させることが可能となる。また、本発明の三次元多孔性有機金属錯体においては、図1に示すようなポルフィリン錯体層の平面間をC70フラーレンがスタッキングした三次元格子構造の空隙に他の三次元格子構造が入り込むようにして、ポルフィリン錯体層が交互に積層された構造を取り得る(図2に、このような構造の本発明の三次元多孔性有機金属錯体の構造の一部を示す概念図を示す。)。すなわち、本発明の三次元多孔性有機金属錯体は、図2に示すように、三次元格子構造1中のポルフィリン錯体層の細孔の中心からややずれた位置に三次元格子構造2のフラーレンが入り、ポルフィリン錯体層が交互に積層した構造を取り得る(図5参照)。このような構造は、ポルフィリン錯体層により構成される二次元格子構造が、垂直方向にポルフィリン錯体層−フラーレン−ポルフィリン錯体層の順序でスタッキングしていく過程において、三次元格子構造1の空隙に三次元格子構造2が貫入するようにして形成されることで構築される。なお、非常に嵩高い溶媒分子を反応溶媒として用いて、本発明の三次元多孔性有機金属錯体を形成せしめた場合には、このような貫入構造をとらずに、一辺が約2.2nm程度となるような大きな一次元細孔を持った集積形態をとることが可能であると推察される。また、本発明の三次元多孔性有機金属錯体においては、上述のように十分に大きな層間距離を有する三次元格子構造が形成されるため、細孔の空隙をより拡大することが可能である。そのため、本発明の三次元多孔性有機金属錯体においては、その細孔構造により、高度な吸蔵性能を発揮させることが可能となるとともに、前記ポルフィリン錯体層中に含まれる前記一般式(1)中においてLで表されるカルボン酸金属錯体(リンカー)中の金属原子(前記一般式(4)〜(5)中においてMで表される原子)を適宜選択することにより、十分に優れた触媒活性を発揮させることが可能となるものと本発明者らは推察する。更に、本発明においては、特異的な機能を持ったリンカーを用いることにより、細孔を利用してリンカー独自の機能を発現させることが可能となる。例えば、前記カルボン酸金属錯体中の前記一般式(4)〜(5)中においてRで表される一価の有機置換基を炭素鎖の長いアルキル鎖とすることにより、液晶性を備えた細孔物質を形成させることまでもが可能となるものと推察される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ポルフィリン構造を有する有機金属錯体であって、三次元多孔性構造を有し、十分に高度な吸蔵特性や十分に優れた触媒作用を発揮することが可能な三次元多孔性有機金属錯体、並びに、それを用いた吸蔵物質及び触媒を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0026】
先ず、本発明の三次元多孔性有機金属錯体について説明する。すなわち、本発明の三次元多孔性有機金属錯体は、下記一般式(1):
【0027】
【化4】

【0028】
[式中、Pは同一でも異なっていてもよく、それぞれ下記一般式(2)〜(3):
【0029】
【化5】

【0030】
(式(2)中、Mは窒素原子に配位している金属原子を示し、式(2)〜(3)中、R〜Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ一価の置換基を示す。)
で表されるポルフィリン誘導体群の中から選択されるいずれかを示し、
Lは同一でも異なっていてもよく、それぞれ下記一般式(4)〜(5):
【0031】
【化6】

【0032】
(Mは同一でも異なっていてもよく、それぞれ金属原子を示し、Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ一価の有機置換基を示す。)
で表されるカルボン酸金属錯体群の中から選択されるいずれかを示す。]
で表される繰り返し単位からなるポルフィリン錯体層と、
前記ポルフィリン錯体層の層間に存在するフラーレンと、
からなる三次元多孔性構造を有することを特徴とするものである。
【0033】
本発明にかかるポルフィリン錯体層は、前記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるものである。このような一般式(1)中のPは同一でも異なっていてもよく、それぞれ前記一般式(2)〜(3)で表されるポルフィリン誘導体群の中から選択されるいずれか1種のポルフィリン誘導体である。このようなポルフィリン誘導体としては、金属の持つ特性、例えば触媒能等を付加的に向上させるという観点から、上記一般式(2)で表されるポルフィリン誘導体が好ましい。
【0034】
また、前記一般式(2)中のMは窒素原子に配位している金属原子を示す。このようなMとして選択され得る金属原子としては、ポルフィリン環の内部の窒素原子が配位することが可能な金属原子であればよく、特に制限されず、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、亜鉛、タングステン、レニウム、鉄、セリウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、バナジウム、ケイ素、カルシウム、マンガン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオブ、テクネチウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、オスミウム、イリジウム等が挙げられる。このようなMとして選択され得る金属原子としては、配位能力の高さと形成されるポルフィリン誘導体の安定性及び毒性の観点から、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、タングステン、レニウム及び鉄からなる群から選択される金属原子が好ましい。また、Mとしては、触媒能がより向上するという観点からは、ロジウム、ルテニウム、チタン、鉄及びセリウムがより好ましく、製造時に構造内にC70フラーレンを選択的に取り込むことができるという観点からは、銅がより好ましい。なお、一般式(1)中のPとして上記一般式(2)で表されるポルフィリン誘導体が複数選択される場合において、各ポルフィリン誘導体中のMは同一でも異なっていてもよい。
【0035】
また、前記一般式(2)〜(3)中のR〜Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれが一価の置換基である。このようなR〜Rとして選択され得る一価の置換基としては特に制限されないが、立体障害と前記置換基が結合するピロール環の電子密度の観点から、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、シリル基、ジアゾ基、シアノ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、メルカプト基、アリール基及びハロゲン化アリール基からなる群から選択される一価の置換基が好ましく、中でも、細孔容積を減少させないために置換基のかさ高さによる影響を小さくするという観点から、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、エチル基がより好ましく、水素原子、メチル基が特に好ましい。
【0036】
また、R〜Rとして選択され得るハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられ、中でもフッ素、塩素が好ましい。また、R〜Rとして選択され得る前記アリール基、前記ハロゲン化アリール基としては、炭素数が1〜5(更に好ましくは1〜2)のものがより好ましい。
【0037】
また、前記一般式(1)中のLは同一でも異なっていてもよく、それぞれ前記一般式(4)〜(5)で表されるカルボン酸金属錯体群の中から選択されるいずれか1種のカルボン酸金属錯体(リンカー)である。このようなカルボン酸金属錯体は、前記一般式(4)で表される二核の錯体であっても、前記一般式(5)で表される単核の錯体であってもよいが、前記ポルフィリン誘導体がより直線的に架橋でき、しかも前記一般式(1)で表される繰り返し単位の一辺の長さ(式(1)中、P−L−Pで表される部位の長さ)が単核の錯体よりも二核の錯体で架橋した方がより長くなるという観点から、前記一般式(4)で表される二核の錯体を用いることが好ましい。
【0038】
前記一般式(4)〜(5)中のRは同一でも異なっていてもよく、それぞれが一価の有機置換基である。このようなRとして選択され得る一価の有機置換基としては特に制限されないが、水素原子、アセチル基、フェニル基、トルイル基、ナフチル基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、フェニルメルカプト基、ベンゾイル基、シクロヘキシル基、アントラセン基及びピレン基が好ましく、細孔容積をより十分なものとするという観点から、アセチル基が特に好ましい。
【0039】
また、前記一般式(4)〜(5)中のMは同一でも異なっていてもよく、それぞれ金属原子である。このようなMとして選択され得る金属原子としては特に制限されないが、例えば、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、クロム、亜鉛、タングステン、レニウム、テクネチウム、鉄、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、カルシウム、チタン、バナジウム、マンガン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオブ、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、オスミウム、イリジウムが挙げられる。このようなMとして選択され得る金属原子としては、カルボン酸と金属の配位能力の強さの観点及び二核金属錯体を形成し得るという観点から、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、亜鉛、タングステン、レニウム、テクネチウム及び鉄が好ましく、中でも銅、ルテニウム、ロジウム又は亜鉛がより好ましい。
【0040】
また、上述のように、本発明にかかるポルフィリン錯体層は、前記一般式(1)で表される繰り返し単位からなる。すなわち、本発明にかかるポルフィリン錯体層は、前記一般式(1)中においてPで表されるポルフィリン誘導体が、前記一般式(1)中においてLで表されるカルボン酸金属錯体(リンカー)により架橋されて形成される二次元格子構造を繰り返し単位として有する。このような二次元格子構造を繰り返し単位として有することで、ポルフィリン錯体の平面構造が形成される。
【0041】
また、本発明においては、前記ポルフィリン錯体層の層間にフラーレンが存在する。このようなフラーレンは、ポルフィリン錯体層からなる二次元構造の平面に対して垂直な方向に存在し、且つ、ポルフィリン錯体層間において各錯体層中のポルフィリン誘導体間にスタッキングして存在する。そのため、本発明の三次元多孔性有機金属錯体は、前記ポルフィリン誘導体とカルボン酸金属錯体とからなる二次元格子と、フラーレンとの組み合わせによって形成される三次元格子構造を有する超分子錯体となり、例えば、図1に示すような構造を有するものとなる。なお、このような三次元構造は、ポルフィリン誘導体とフラーレンとがスタッキング相互作用し、前記ポルフィリン錯体層がフラーレンを挟み込むようにして捕集することにより形成されるものと推察される。また、このような三次元格子構造は、単結晶X線構造解析により確認することができる。
【0042】
また、本発明にかかるフラーレンとしては、C60フラーレン、C70フラーレン、炭素原子数が70を超える高次フラーレン、並びに、これらの水酸化物、水素化物及び酸化物からなるフラーレン誘導体が好ましく、本発明の三次元多孔性有機金属錯体の製造容易性の観点から、C70フラーレン並びにその水酸化物、水素化物及び酸化物からなる誘導体がより好ましい。なお、本発明の三次元多孔性有機金属錯体においては、パッキングの性質上、その製造時にC70フラーレンを選択的に捕集する傾向にある。
【0043】
また、本発明の三次元多孔性有機金属錯体としては、製造容易性の観点から、前記一般式(1)中のPが前記一般式(2)で表されるポルフィリン誘導体であり、前記一般式(2)中のMが銅であり、且つ、前記フラーレンがC70フラーレンであることが好ましい。前記一般式(1)中のPが前記一般式(2)で表されるポルフィリン誘導体であり且つMが銅である場合においては、三次元多孔性有機金属錯体を製造する際に、C70フラーレンを選択的に取り込むことが可能である。
【0044】
また、本発明の三次元多孔性有機金属錯体においては、前記ポルフィリン錯体層の層間にフラーレンが存在することにより細孔が形成され、多孔構造が形成される。なお、ここにいう細孔とは、ポルフィリン錯体層とフラーレンとが自己集積する際に形成される三次元格子構造内の空孔である。
【0045】
さらに、本発明の三次元多孔性有機金属錯体としては、一次元細孔の最大の細孔径が0.24〜20nmであることが好ましく、0.98〜2.5nmであることがより好ましい。このような一次元細孔の最大の細孔径が前記下限未満では細孔径が小さすぎて十分な吸蔵能及び触媒能を発揮できない傾向にあり、他方、前記上限を超えると吸着される分子が物理吸着され難い空間として認識される傾向にある。なお、ここにいう「一次元細孔」とは、X線構造解析装置として理学電子株式会社製の商品名「Rigaku CCD Mercury」を用い、解析ソフトとして理学電子株式会社製の商品名「Crystal Structure」を用いてX線構造解析を行い、三次元多孔性有機金属錯体のポルフィリン錯体層に対して垂直な方向から観測される細孔(図5参照)をいう。また、「一次元細孔の最大の細孔径」とは、原子のファンデルワールス半径を考慮し、他の原子や分子が存在しない空間内の最大距離を算出することによって求められる。
【0046】
また、本発明の三次元多孔性有機金属錯体としては、前記ポルフィリン錯体層の層間の平均距離が、0.8〜2.0nmであることが好ましく、1〜1.5nmであることがより好ましい。このようなポルフィリン錯体層の層間の平均距離が、前記下限未満では十分な吸蔵能及び触媒能が低減する傾向にある。他方、前記上限を超えさせるためには、それだけ大きなフラーレンをポルフィリン錯体層間に挿入する必要があり、現状では困難である。なお、ここにいう「層間の平均距離」とは、フラーレンを介して結合しているポルフィリン錯体層の間の距離の平均値をいう。また、このような層間の距離は、単結晶X線構造解析により算出できる。
【0047】
さらに、本発明の三次元多孔性有機金属錯体の比表面積としては特に制限はないが、10〜2000m/gであることが好ましく、50〜1000m/gであることがより好ましい。このような比表面積が前記下限未満では十分な吸蔵能や触媒能を発揮できない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、構造が大変弱いものとなり、安定な結晶体が得られなくなる傾向にある。なお、このような比表面積の値は、吸着等温線からBET等温吸着式を採用して算出する。
【0048】
次に、本発明の三次元多孔性有機金属錯体を製造するための好適な方法について説明する。このような三次元多孔性有機金属錯体を製造するための好適な方法においては、先ず、テトラピリジルポルフィン及び/又はテトラピリジルポルフィン金属錯体(前記一般式(2)〜(3)で表されるポルフィリン誘導体:以下、「ポルフィリン誘導体」と示す。)を溶媒に溶解させた溶液(A)と、カルボン酸金属二核錯体又はカルボン酸金属単核錯体(前記一般式(4)〜(5)で表されるカルボン酸金属錯体:以下、「カルボン酸金属錯体」という。)を反応用有機溶媒に溶解させた溶液(B)と、フラーレンを溶媒に溶解させた溶液(C)とを混合して反応溶液を得る。次に、前記反応溶液中に結晶が析出するまでの数日間、前記反応溶液を十分に撹拌する。そして、析出した結晶をろ過した後、得られた結晶を反応に用いた溶媒で数回洗浄し、真空乾燥することにより、本発明の三次元多孔性有機金属錯体を得ることができる。このように、本発明の三次元多孔性有機金属錯体は、溶液(A)〜(C)を混合して、ポルフィリン誘導体と、カルボン酸金属錯体と、フラーレンとを一度に混合することにより製造することが可能である。そのため、本発明の三次元多孔性有機金属錯体は、フラーレンが含有された従来の有機金属錯体と比較して、製造方法の点でも有利である。
【0049】
このようなポルフィリン誘導体、カルボン酸金属錯体及びフラーレンは、目的とする本発明の有機金属錯体の構造によって適宜選択することができる。また、前記一般式(2)中のMが銅であるポルフィリン誘導体を用いた場合には、フラーレンとしてC70フラーレンを用いることが好ましい。これによりフラーレンが容易に構造内に取り込まれる傾向にある。なお、前記一般式(2)中のMが銅であるポルフィリン誘導体を用いた場合において、フラーレンとしてC60フラーレンやC70フラーレン等の各種フラーレンの混合物を用いた場合には、C70フラーレンが選択的に構造内に取り込まれる可能性がある。
【0050】
また、前記反応溶液中に含有されるポルフィリン誘導体、カルボン酸金属錯体及びフラーレンの含有割合としては特に制限されないが、バルクで均一な目的物を得るという観点から、モル比(ポルフィリン誘導体:カルボン酸金属錯体:フラーレン)が、1:0.1:0.1〜1:20:20程度の範囲にあることが好ましい。
【0051】
また、このようなポルフィリン誘導体を溶解させる溶媒としては特に制限されず、前記ポルフィリン誘導体を溶解させることが可能なものであればよく、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、(o−、m−、p−)ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、n−ヘプタノール、n−オクタノール、n−デカノール等が挙げられる。なお、細孔径のより大きな構造の有機金属錯体を得るという観点からは、このような溶媒としてn−ヘプタノール、n−オクタノール、n−デカノール等のような非常に嵩高い溶媒分子を用いることが好ましい。
【0052】
また、前記反応用有機溶媒としては特に制限されず、水酸基を有する溶媒であっても水酸基を有していない溶媒であってもよい。このような水酸基を有する溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールが挙げられる。また、前述の水酸基を有していない溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、ペンタン、エチルベンゼン、n−ヘキサン、3−メチルペンタン、n−ヘプタン、スチレン、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、アリルエチルエーテル、アセトン、エチルメチルケトンが挙げられる。また、フラーレンを溶解させる溶媒としては特に制限されず、フラーレンを溶解することが可能なものであればよく、前記反応用有機溶媒と同様の溶媒を適宜用いることができる。
【0053】
また、溶液(A)〜(C)を混合する方法としては特に限定されず、公知の方法を適宜選択して採用することができる。このような溶液(A)〜(C)の混合方法としては、例えば、細管を用いて、細管の下層にフラーレンを溶媒に溶解させた溶液(C)を仕込んだ後、ポルフィリン誘導体を溶媒に溶解させた溶液(A)を静かに加え、最後に、カルボン酸金属錯体を溶媒に溶解させた溶液(B)を加える、いわゆる液−液拡散法を採用してもよい。
【0054】
また、結晶が析出するまでの数日間の温度条件としては、0〜200℃程度が好ましく、室温(25℃)〜80℃程度であることがより好ましい。また、結晶が析出するまでの数日間の圧力条件としては、0.1MPa以下程度であることがより好ましい。
【0055】
なお、本発明の三次元多孔性有機金属錯体は、後述するように、触媒や吸蔵物質等として有用である。また、本発明の三次元多孔性有機金属錯体は、上述のように前記ポルフィリン錯体層(二次元格子構造)がフラーレンを挟み込むような構造を有するため、動摩擦係数がゼロのナノギアとして応用することが期待される。例えば、ナノレベルの潤滑剤やナノベアリングとしての応用することが期待される。また、本発明の三次元多孔性有機金属錯体においては、フラーレンが錯体中に存在することからフラーレンの溶解性を変化させることができるとともに、ポルフィリン錯体層がフラーレンを挟み込むような構造を有するため、余計な分子が近づいて反応しないようにフラーレンを保護することができる。そのため、本発明の三次元多孔性有機金属錯体は、フラーレンの輸送材料として応用することが期待される。例えば、フラーレンを利用するための研究として、エイズウイルスの増殖の際に生成されるHIVプロテアーゼと呼ばれる酵素に対し、フラーレンがその酵素に空いている丸い穴にぴったりとはまり込み、この酵素の働きを止めてしまうという研究がなされているが、このような酵素等に対してフラーレンを輸送するために、本発明の三次元多孔性有機金属錯体を利用することが期待される。
【0056】
以上、本発明の三次元多孔性有機金属錯体について説明したが、以下において、本発明の吸蔵物質及び触媒について説明する。
【0057】
本発明の吸蔵物質は、上記本発明の三次元多孔性有機金属錯体を含有することを特徴とする。また、本発明の触媒は、上記本発明の三次元多孔性有機金属錯体を含有することを特徴とする。このように、本発明の吸蔵物質又は触媒は、それぞれ上記本発明の三次元多孔性有機金属錯体を含有しているものであることから、ともに優れた吸蔵能及び触媒能を有している。
【0058】
また、本発明の吸蔵物質及び触媒は上記本発明の三次元多孔性有機金属錯体を含有するものであればよく、上記本発明の三次元多孔性有機金属錯体そのものが本発明の吸蔵物質又は触媒を構成していても、或いは上記本発明の三次元多孔性有機金属錯体を他の基材に担持せしめて本発明の吸蔵物質又は触媒が構成されていてもよい。更に、本発明の吸蔵物質及び触媒の形状は特に限定されず、粉末、顆粒、膜状、球状、繊維状等を挙げることができる。また、円柱状、破砕状、球状、ハニカム状、凹凸状、波板状等に成形したものであってもよい。
【0059】
このような本発明の吸蔵物質は、例えば水素吸蔵物質等として有用である。また、本発明の触媒は、例えば、酸化反応用の触媒等として特に有用であり、飽和、不飽和炭化水素の選択的酸化反応を行うことによって有機合成反応の中間体として重要なアルコール化合物やエポキシ化合物等の含酸素化合物を合成するための触媒、或いは水素、窒素、一酸化炭素、含硫黄化合物等の低分子を酸化する触媒等としても使用可能である。また、本発明の触媒は、例えば、種々の悪臭成分、揮発性有機化合物(VOC)若しくは有害成分を(吸着し)分解除去する環境浄化触媒として、工場、車両等において排出される廃ガスの脱臭、浄化装置等に使用可能である。更に、本発明の触媒は、化学工場、食品製造工場、畜産農業、下水・屎尿処理場等の産業用分野だけでなく、例えば、住居、オフィス、車、共用施設、飲食店等における脱臭・消臭剤、脱臭・消臭製品、脱臭・消臭装置として活用できる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
先ず、C70フラーレン81.6mg(0.097mmol)を含有するm−ジクロロベンゼン溶液(200ml)を細管の下層に仕込み、次いで、前記細管内にテトラピリジルポルフィン60mg(0.097mmol)を含有するクロロホルム(200ml)溶液を静かに加えた後、酢酸銅(II)400mg(1.002mmol)を含有するメタノール溶液(200ml)を前記細管内に加え、常圧(0.1MPa程度)、常温(25℃程度)の条件下において、数日間放置し、液−液拡散法により単結晶を析出させた。次いで、得られた単結晶をろ過した後、前記単結晶をクロロホルムで洗浄し、更に、真空乾燥を施すことにより、本発明の三次元多孔性有機金属錯体を得た。
【0062】
このようにして得られた三次元多孔性有機金属錯体中のポルフィリン錯体層は、上記一般式(1)中のPが一般式(2)で表されるポルフィリン誘導体であり、上記一般式(1)中のLが、上記一般式(4)で表されるカルボン酸金属錯体である上記一般式(1)で表される繰り返し単位からなり、前記錯体中のフラーレンは全てC70フラーレンで構成されている。また、このような繰り返し単位中においては、前記一般式(2)中のMは銅(II)(繰り返し単位中の全てのMが銅(II))であり、前記一般式(2)中のR〜Rは全て水素原子であり、前記一般式(4)中のMは全て銅(II)であり、且つ前記一般式(4)中のRは全てメチル基である。
【0063】
[実施例1で得られた有機金属錯体の特性の評価]
〈単結晶X線構造解析〉
実施例1で得られた三次元多孔性有機金属錯体に対して単結晶X線構造解析を行った。このような単結晶X線構造解析においては、X線構造解析装置として理学電子株式会社製の商品名「Rigaku CCD Mercury」を用い、解析ソフトとして理学電子株式会社製の商品名「Crystal Structure」を用いた。また、X線構造解析により得られる三次元多孔性有機金属錯体の三次元格子構造の様子を図2〜5に示す。図3は、ベクトルaの方向から見た三次元多孔性有機金属錯体の三次元格子構造の様子を示し、図4は、ベクトルcの方向から見た三次元多孔性有機金属錯体の三次元格子構造の様子を示す。なお、図3〜4中、C70フラーレンについては図面を見易くするために原子のファンデルワールス半径を考慮したCPK表示により表す。また、図5は、ベクトルcの方向から見た三次元多孔性有機金属錯体の一次元細孔の様子を原子のファンデルワールス半径を考慮したCPK表示により表した図面である。なお、図3〜5中のベクトルa〜cは、それぞれ、ベクトルa及びbがポルフィリン錯体層により形成される平面と平行な方向であり、ベクトルcがポルフィリン錯体層により形成される平面と垂直な方向である。
【0064】
このようなX線構造解析の結果から、実施例1で得られた三次元多孔性有機金属錯体においては、ポルフィリン錯体層が上記一般式(1)中のPが一般式(2)で表されるポルフィリン誘導体であり、上記一般式(1)中のLが、上記一般式(4)で表されるカルボン酸金属錯体である上記一般式(1)で表される繰り返し単位からなることが確認された。また、このような繰り返し単位中においては、前記一般式(2)中のMは銅(II)(繰り返し単位中の全てのMが銅(II))であり、前記一般式(2)中のR〜Rは全て水素原子であり、前記一般式(4)中のMは全て銅(II)であり、且つ前記一般式(4)中のRは全てメチル基であることが確認された。
【0065】
また、図3〜5に示す結果からも明らかなように、ポルフィリン錯体層の層間にフラーレン(CPK表示)が存在し、三次元格子構造が形成されていることが確認された。更に、図3及び図4に示す結果から、実施例1で得られた有機金属錯体は、ポルフィリン錯体層の上層と下層が、互いに貫入し合ったような構造をとっていることが確認された。すなわち、実施例1で得られた有機金属錯体は、図2に模式的に示すような構造を有することが分かった。また、図5に示す結果から、c軸方向から見た場合に、二種類の一次元細孔が存在することが確認され、大きな細孔が縦0.98nm、横0.68nmの略長方形状の大きさの細孔であり、小さな細孔が縦0.41nm、横0.24nmの略長方形状の細孔であることが確認され、一次元細孔の最大の細孔の細孔径は0.98nmであった。さらに、実施例1で得られた有機金属錯体は、フラーレンを介して結合しているポルフィリン錯体層の層間距離の平均値は1.3nmであった。
【0066】
このような結果から、実施例1で得られた三次元多孔性有機金属錯体は、一次元細孔の最大の細孔の細孔径が十分に大きく、しかもポルフィリン錯体層の平均の層間距離も十分に大きいことが確認された。そのため、実施例1で得られた三次元多孔性有機金属錯体は、細孔の空隙が十分に拡大されて直径が1.0nmを超える分子に対しても吸着能及び触媒能を発揮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上説明したように、本発明によれば、ポルフィリン構造を有する有機金属錯体であって、三次元多孔性構造を有し、十分に高度な吸蔵特性や十分に優れた触媒作用を発揮することが可能な三次元多孔性有機金属錯体、並びに、それを用いた吸蔵物質及び触媒を提供することが可能となる。したがって、本発明の有機金属錯体は、吸蔵能及び触媒能に優れるため、水素吸蔵物質や酸化反応用の触媒の材料等として非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】ポルフィリン錯体層の平面間をC70フラーレンがスタッキングして形成された有機金属錯体の三次元格子構造の一部の状態を示す概念図である。
【図2】本発明の有機金属錯体の一実施形態の三次元格子構造の一部の状態を示す概念図である。
【図3】ベクトルaの方向から見た三次元多孔性有機金属錯体(実施例1)の三次元格子構造の様子を示した図である。
【図4】ベクトルcの方向から見た三次元多孔性有機金属錯体(実施例1)の三次元格子構造の様子を示した図である。
【図5】ファンデルワールス半径を考慮してCPK表示により、ベクトルcの方向から見た三次元多孔性有機金属錯体(実施例1)の一次元細孔の様子を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】

[式中、Pは同一でも異なっていてもよく、それぞれ下記一般式(2)〜(3):
【化2】

(式(2)中、Mは窒素原子に配位している金属原子を示し、式(2)〜(3)中、R〜Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ一価の置換基を示す。)
で表されるポルフィリン誘導体群の中から選択されるいずれかを示し、
Lは同一でも異なっていてもよく、それぞれ下記一般式(4)〜(5):
【化3】

(Mは同一でも異なっていてもよく、それぞれ金属原子を示し、Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ一価の有機置換基を示す。)
で表されるカルボン酸金属錯体群の中から選択されるいずれかを示す。]
で表される繰り返し単位からなるポルフィリン錯体層と、
前記ポルフィリン錯体層の層間に存在するフラーレンと、
からなる三次元多孔性構造を有することを特徴とする三次元多孔性有機金属錯体。
【請求項2】
前記一般式(4)〜(5)中のMが、それぞれ、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、亜鉛、タングステン、レニウム、テクネチウム及び鉄からなる群から選択される金属原子であることを特徴とする請求項1に記載の三次元多孔性有機金属錯体。
【請求項3】
前記一般式(2)中のMが、銅、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、亜鉛、タングステン、レニウム及び鉄からなる群から選択される金属原子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の三次元多孔性有機金属錯体。
【請求項4】
前記一般式(2)〜(3)中のR〜Rが、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、シリル基、ジアゾ基、シアノ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、メルカプト基、アリール基及びハロゲン化アリール基からなる群から選択される一価の置換基であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の三次元多孔性有機金属錯体。
【請求項5】
前記一般式(4)〜(5)中のRが、水素原子、アセチル基、フェニル基、トルイル基、ナフチル基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、フェニルメルカプト基、ベンゾイル基、シクロヘキシル基、アントラセン基及びピレン基からなる群より選ばれる一価の有機置換基であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の三次元多孔性有機金属錯体。
【請求項6】
前記フラーレンが、C60フラーレン、C70フラーレン、炭素原子数が70を超える高次フラーレン、並びに、これらの水酸化物、水素化物及び酸化物からなるフラーレン誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の三次元多孔性有機金属錯体。
【請求項7】
前記一般式(1)中のPが前記一般式(2)で表されるポルフィリン誘導体であり、前記一般式(2)中のMが銅であり、且つ、前記フラーレンがC70フラーレンであることを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の三次元多孔性有機金属錯体。
【請求項8】
請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の三次元多孔性有機金属錯体を含有することを特徴とする吸蔵物質。
【請求項9】
請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の三次元多孔性有機金属錯体を含有することを特徴とする触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−167123(P2009−167123A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6829(P2008−6829)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】