説明

三次元細胞培養構築物及びその製造のための装置

本発明は、生細胞を接着、増殖及び分化させる内部及び外部の空間を与える非生分解性ポリマー及び非細胞毒性ポリマーから形成される三次元構築物に関する。この構築物は、設計した三次元パターンで共に連結するポリマー支柱及び/又は繊維から構成される。三次元細胞培養構築物(細胞培養インサート)は、通常の細胞培養条件下で、細胞/組織培養プレート、組織培養フラスコ、バイオリアクタ等と共に使用するのを目的とする。本発明はさらに、三次元細胞培養構築物を製造する方法を提供する。最終的に本発明は、他の細胞培養供給物と共にパッケージ内に1つ又は複数の三次元多孔質細胞培養構築物を有するキット(組織培養プレート及びフラスコ等)を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生細胞を接着、増殖及び分化させる多孔質の三次元細胞培養構築物であって、非生分解性ポリマー材料、好ましくはポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド及びポリ塩化ビニルでできている、三次元細胞培養構築物に関する。本発明は、構築物を形成及び製造する方法であって、具体的には予め作製した構造体の層集合による層の使用を伴う、方法をさらに提供する。細胞培養構築物は、細胞培養皿、細胞培養プレート、細胞培養フラスコ、細胞培養バッグ及びバイオリアクタ等の従来の細胞培養容器内で使用することができる。
【0002】
本願は、米国仮特許出願第60/889580号(その開示は、参照により本明細書に援用される)の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
二次元(2D)で細胞を培養することは、細胞を調製、観察及び研究するのに、並びにin vitroでの調合薬、生物学的因子及び生体材料と細胞との相互作用を研究するのに都合の良い方法であるが、一方で、in vivoでの細胞成長様式を模倣しない。実際の生体では、細胞が三次元(3D)で成長し、三次元の生組織又は器官を構築することが多い。新たな証拠が、in vitroでの3D細胞培養系によって、正常及び病的な組織条件下での構造−機能の関連性の理解が容易になり得ることを示している。このような機能的且つ形態学的な相互作用を研究するために、何人かの研究者等は、コラーゲンゲル[非特許文献1]、ゼラチン、フィブリン、アガロース及びアルギン酸塩[非特許文献2、非特許文献3]等の三次元ゲル基材の使用を研究している。これらのゲル系は、細胞が三次元で成長するように、ゲル基質内で細胞を培養した。近年の研究によって、三次元のアルギン酸塩又はアガロースゲル系中で培養したヒト椎間円板細胞が、様々な形態、単層成長細胞に比べてのプロテオグリカン合成の増大、並びに細胞の周囲及び細胞間に付着した細胞外基質による多細胞(multi-celled)コロニーの形成を示したことが分かっている[非特許文献2、非特許文献3]。さらにまた、三次元のアルギン酸ゲル系で培養したヒト椎間円板細胞は、単層細胞培養では見出されなかったI型及びII型コラーゲン生成の兆候を示した[非特許文献4]。3Dでのin vitro動物細胞成長は、正常な上皮極性及び分化を促進する[非特許文献5]。細胞はより迅速に移動及び分裂し、生組織における細胞のものに対して、特徴的な非対称の形状を有する[非特許文献6]。
【0004】
細胞と成長因子との間、及び細胞と薬剤との間の相互作用を研究するのにも、三次元細胞培は利用された。例えば、腫瘍発生成長因子に対する受容体が標準的な二次元組織培養プレートに比して異なる方法で発現するので、癌細胞の三次元細胞培養によって、癌生物学に関する多くの基礎的な課題の検討が可能になる[非特許文献7、非特許文献8]。乳癌では、三次元培養物によって、癌細胞増殖の調節を理解するため及び様々な抗癌薬を評価するためのモデル系が与えられる[非特許文献9、非特許文献10]。3D培養で成長する細胞が、単層又は分散培養物における細胞よりも細胞毒性剤に耐性があるという証拠がかなりの量存在する。多くの研究によって、単層における細胞に比べてスフェロイド培養物の高レベルの薬剤耐性が実証されている[非特許文献11]。初めに、研究者等は、スフェロイドの薬剤耐性は内部細胞への薬剤の拡散が弱いことに起因すると考えたが、今日では三次元培養において、単に栄養素への接近が不可能であるというよりも、薬剤耐性を明らかにしたためにすぎないということが証明されている[非特許文献12、非特許文献13]。さらなる研究によって、3D培養が、in vitroでの抗癌薬の細胞毒性評価に対するより良好なモデルであることが確認された[非特許文献14]。
【0005】
証拠が増えつつあることで、三次元(3D)環境が、細胞機能の機能的機序も示すこと、及びin vitroでの3D培養系によって、正常及び病的な条件下での構造−機能の関連性の理解が容易になり得ることが示される[非特許文献15、非特許文献16、非特許文献17、非特許文献18、非特許文献19]。今日では、骨及び軟骨由来細胞が、三次元(3D)で二次元(2D)環境とは異なった挙動をすること、in vitroでの3D培養系が、二次元(2D)培養物よりも密接にin vivo状況を模倣することが広く受け入れられている[非特許文献20、非特許文献21、非特許文献22]。近年の研究では、3つのヒト骨形成細胞株及び正常なヒト骨形成(HOST)細胞をヒドロキシプロピルメチルセルロースヒドロゲル基質内で3Dで培養することで、骨肉腫細胞がコロニー形成スフェロイドとして増殖すること、及びHOSTコロニーが少なくとも3週間生存することが実証された。骨芽マーカー及びサイトカインの無機化アッセイ及び遺伝子発現解析によって、このヒドロゲル基質において3Dで培養した細胞は全て、プラスチック製の細胞培養プレート上に単層で培養した細胞よりもより成熟した分化状態を示したことが示されている[非特許文献23]。
【0006】
今までのところ、3D環境で細胞を培養することによって、2D培養環境を上回る大きな利点が与えられる証拠が明確に示されている。しかしながら、現行の3Dゲル系では培養細胞はゲル基質内に埋包されるため、ゲルの制限された拡散性によって培養細胞の栄養素及び代謝産物の交換が困難となっている。また、2D細胞培養プレートにおける培養細胞とは異なり(この場合、トリプシン溶液を使用して培養プレートから細胞を容易に分離した後、遠心分離によって単離することができる)、3Dゲル系で培養した細胞は、培養細胞がゲル内に埋包しているので回収又は単離するのが困難である。さらに、ゲル基質内の培養細胞は、培養する前に毎回ゲル系を調製する必要があり、これは特に大量の培養物を調製する必要がある場合に、研究者等にとって不都合であるだけでなく、様々な研究者等及び研究所間でゲル調製がわずかに変わるので、異なるゲル調製群間で不一致が起こる。
【0007】
現在利用可能な3Dゲル培養系の使用に関連する上記で言及した課題のために、3D培養物がもたらす利点があるにもかからわず、2D細胞培養が依然として細胞培養法としては好まれている。したがって、現行の2D細胞培養系の利便性を全てもたらす3D培養系は、薬学分野、ライフサイエンス分野及び生体工学研究分野で非常に価値がある。理想的な3D培養系には以下の特徴がある:
1.3D細胞又は組織の形成を促進する、外部表面及び内部空間で細胞接着を可能にする3D構造である。
2.細胞接着のために表面又は内部格子を与える、水平、垂直又は斜めに配置した支柱(struts)又は繊維を有する。
3.細胞が、3D構造の外面及び内面の両方と接着することができるような多孔質の3D構造を有する。多孔質構造は、栄養素及び代謝産物の比較的容易な交換を可能にする。
4.3D構造は、現行の2D細胞培養プレート及び2D細胞培養皿並びにバイオリアクタと共に使用するのが容易であるものとする。3D構築物は、2D細胞培養皿若しくは2D細胞培養プレートのウェル又はバイオリアクタのチャンバ内に簡単に入れることができる。
5.構造物は、現行の2D細胞培養系で使用する材料(特にポリスチレン)等の非細胞毒性材料及び非生分解性材料でできているものとする。非細胞毒性とは、細胞が死滅しないか、又は負の影響を受けないことを意味するのではなく、一般的な細胞集団が、そのままin vitro条件下で生存可能であることを意味する。
6.構造体は、細胞培養プロセス中に構造を変形及び変化させることなく、細胞培養法の正常な機械的取扱いに耐えるのに十分、堅固であるものとする。
【0008】
ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン及びポリカーボネートは、非生分解性ポリマーであり、二次元(2D)細胞培養を行うための基質材料として使用されている。上記で言及したポリマーでできている細胞培養容器及び膜が広く使用されており、多くの供給元から多くの様々なサイズ及び形状で市販されている。細胞又は組織の培養を行う研究者等はこれらのポリマーに非常に精通しているので、これらのポリマーでできている3D培養系には、3D培養環境の利点が与えられるだけでなく、2D細胞培養系では与えられ得ない多くの他の利点(規定の表面特性及び使いやすさ等)も与えられると考えられる。
【0009】
細胞培養のための3D基質の作製におけるポリスチレンの使用は、十分には研究されていない。近年、Baker et al.(非特許文献24)が、エレクトロスピニング法を用いて、3D多孔質繊維状ポリスチレン基質を作製したことを報告した。得られた3D繊維状ポリスチレン基質は、繊維間の空間が多孔質空間として働く不織マットであった。この研究によって、これらのポリスチレン3D繊維状スカフォールドが、2Dポリスチレン細胞培養プレート系を補完することが示唆された。しかしながら、これらの繊維状ポリスチレン基質の欠点は、以下の通りである:繊維のサイズを制御することが困難である;孔径及び基質の形状が十分に規定されていない;平均孔径が小さく(約15ミクロン)、元来繊維状基質が柔らかく、このことが基質を変形せずにはさらに細胞培養操作を行うことを困難にしている。哺乳動物細胞の平均サイズは、10ミクロン〜100ミクロンである。
【0010】
他の研究者等は、日常的な細胞培養のためにより堅固な多孔質ポリスチレン基質を作製しようとも試みている。他の研究者等は、多孔質ポリスチレン構造を作製する鋳型として高内部相エマルジョン(HIPE)を使用した(非特許文献25)。高度に多孔質の発泡スチロールは、ポリ(スチレン/ジビニルベンゼン)系から調製した。ヒトの神経細胞が、ポリ−d−リシンコーティング表面にしっかりと接着し、神経突起を伸ばすことが研究によって示されている。また表面がラミニンコーティングを受けたときに、特に神経突起の伸長が高まった。しかしながら、発泡スチロールに関して、この発泡プロセスの固有の性質のために、孔径及び孔分布を十分に制御することができない、また非常に複雑で多孔質の構造が栄養素の交換を困難にしている等の幾つかの欠点もある。
【0011】
現在市販の3D培養基質に関する上記で言及した欠点のために、3D培養で与えられ得る利点があるにもかかわらず、依然として2D細胞培養が主要な細胞培養法である。したがって、日常的な三次元細胞培養に関して規定の孔径及び多孔率を有する3D培養系には非常に価値がある。本発明は、3D細胞培養を行うのに、細胞培養容器へのインサート(insert:挿入物)として使用することができる3D細胞培養構築物を製造する方法を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Douglas WHJ, Moorman GW, and Teel RW, In Vitro, 1976; 12:373-381
【非特許文献2】Gruber HE, Fisher EC Jr, Desai B, Stasky AA, Hoelscher G, Hanley EN, Exp. Cell Res, 1997, 235:13-21
【非特許文献3】Gruber HE, Stasky AA, Hanley EN Jr, Matrix Biol, 1997; 16:285-288
【非特許文献4】Gruber HE and Hanley EN, Jr, BMC Musculoskeletal Disorders, 2000; 1: 1
【非特許文献5】Roskelley CD, Bissell MJ, Biochem Cell Biol, 1995; 73(7-8):391-7
【非特許文献6】Cukierman E, Pankov R, Stevens DR, Yamada KM, Science, 2001; 294(5547):1708-12
【非特許文献7】Wang F, Weaver VM, Petersen OW, Larabell CA, Dedhar S, Briand P, Lupu R, Bissell MJ. Proc Natl Acad Sci USA, 1998; 95(25): 14821-6
【非特許文献8】Jacks T, Weinberg RA. Cell, 2002;111(7):923-5
【非特許文献9】Bissell MJ, Rizki A, Mian IS, Curr Opin Cell Biolm, 2003;15(6):753-62
【非特許文献10】Padron JM, van der Wilt CL, Smid K, Smitskamp-Wilms E, Backus HH, Pizao PE, Giaccone G, Peters GJ. Crit Rev Oncol Hematol, 2000:36(2-3): 141-57
【非特許文献11】Hoffman RM. Cancer Cells 1991 ; 3(3):86-92
【非特許文献12】Lawler EM, Miller FR, Heppner GH, In Vitro, 1983; 19(8):600-10
【非特許文献13】Miller BE, Miller FR, Heppner GH, Cancer Res, 1985; 45(9):4200-5
【非特許文献14】Harpreet K. Dhiman, Alok R Ray, Amulya K Panda, Biomaterials, 2005; 26 979-986
【非特許文献15】Abbott A. Nature, 2003; 424(6951):870-2
【非特許文献16】Hutmacher DW. J Biomater Sci Polym Ed, 2001; 12: 107-24
【非特許文献17】Schmeichel KL, Bissell MJ. J Cell Sci, 2003; 116(Ptl2):2377-88
【非特許文献18】Zahir N, Weaver VM, Curr Opin Genet Dev, 2004; 14:71-80
【非特許文献19】Martin I, Wendt D, Heberer M, Trends Biotechnol, 2004; 22:80-6
【非特許文献20】Kale S, Biermann S, Edwards C, Tarnowski C, Morris M, Long MW, Nat Biotechnol, 2000;18:954-8
【非特許文献21】Ferrera D, Poggi S, Biassoni C, Dickson GR, Astigiano S, Barbieri O, Favre A, Franzi AT, Strangio A, Federici A, Manduca P, Bone, 2002;30:718-25
【非特許文献22】Tallheden T, Karlsson C, Brunner A, Van Der Lee J, Hagg R, Tommasini R, Lindahl A. Osteoarthritis Cartilage, 2004; 12:525-35
【非特許文献23】Trojani C, Weiss P, Michiels JF, Vinatier C, Guicheux J, Daculsi G, Gaudray P, Carle GF, Rochet N., Biomaterials, 2005; 26(27):5509-17
【非特許文献24】Baker et al., Biomaterials, 2006; 27, 3136-46
【非特許文献25】Hayman, et al, J. Biochemical and Biophysical Methods, 2005, 62:231-240
【発明の概要】
【0013】
細胞培養構築物
したがって本発明の目的は、細胞培養用途のために、組織培養プレート等の現行の2D組織培養系で使用する非分解性の多孔質3D細胞培養構築物を提供することである。また本発明の目的は、細胞接着のために内部及び外部の空間を与える3D細胞培養構築物を製造する方法を提供することである。この細胞培養構築物は、多孔率、孔径、表面積及び表面化学を含む規定の構造を有する。好ましくは、細胞培養構築物は、非分解性のポリマー材料でできている。ポリマー材料はポリスチレンであるのが好ましく、これは2Dマルチウェル細胞/組織培養プレート及びフラスコを作製するのに使用する。
【0014】
3D構築物構造における支柱のサイズ及び形状、それぞれの単位体積における支柱/繊維の数、並びに支柱/繊維の構成パターンを含む構築物の設計によって、表面積、多孔率及び孔径が決定される。支柱は、繊維と同様に構造成分である。繊維は、糸長と同程度の分離した細片である。
【0015】
したがって一実施の形態において、本発明は、細胞が細胞培養培地中で接着するように、堅固な多孔質3Dパターンで連結する支柱及び/又は繊維を含む3D多孔質細胞培養構築物を提供する。構築物は、構築後にその最終的な発現(manifestation)/組成が、日常的な操作下でその形状を維持するか、又は実質的に維持する場合に堅固であると考えられる。
【0016】
したがって一実施の形態において、本発明は、細胞が細胞培養培地中で接着するように、多孔質の3Dパターンで連結する支柱及び/又は繊維を含む、3D多孔質細胞培養構築物であって、平均孔径が15ミクロン〜1000ミクロン、25ミクロン〜500ミクロン、又は50ミクロン〜100ミクロンである、3D多孔質細胞培養構築物を提供する。
【0017】
したがって一実施の形態において、本発明は、細胞が細胞培養培地中で接着するように、多孔質の3Dパターンで連結する支柱及び/又は繊維を含む、3D多孔質細胞培養構築物であって、孔分布が、約50%、約80%又は約95%を超える、3D多孔質細胞培養構築物を提供する。
【0018】
特定の実施の形態において、上記細胞培養構築物は、任意の所定の水平面で均等に分布した孔を有する三次元多孔質構造である。均等な分布は、所定の領域の孔の数と、同じサイズ及び寸法を持つ別の所定の領域の孔の数を比較することで、求められる。絶対的に均等な孔分布では、ある平面の2箇所の相当領域を比較した結果は100%である。同じ平面の2つの相当領域間の孔数の比(孔数が少ない領域を、孔数が多い領域と比較する)が50%、又は80%、又は95%を超えると、平面に均等に分布されていると考えられる。
【0019】
したがって一実施の形態において、本発明は、接合部において或る角度で共に連結する支柱及び/又は頑健な繊維から成る3D細胞培養構築物を提供する(図2及び図4)。さらに、支柱及び/又は繊維は共に織り込むことができる。
【0020】
したがって一実施の形態において、本発明は、接合部で互いに直交する支柱及び/又は頑健な繊維から成る3D細胞培養構築物を提供する(図1〜図3、図5)。他の実施の形態では、支柱及び/又は繊維は、鋭角(90度未満)又は鈍角(90度超)で連結する。
【0021】
特定の実施の形態において、上記細胞培養構築物は、三次元円板型多孔質構造物である。別の特定の実施の形態では、細胞培養構築物は、三次元立方型多孔質構造物である。
【0022】
したがって一実施の形態において、本発明は、ポリマーである、支柱及び/又は頑健な繊維から成る3D細胞培養構築物を提供する。構築物は、支柱及び/又は繊維の断面図が様々な形状である、一定直径又は可変直径の支柱及び/又は繊維を有し得る。
【0023】
したがって一実施の形態において、本発明は、細胞が互いとの、並びに支柱及び繊維との3D接着を介在及び形成する空間を与えるように、基材に対して水平、垂直又は斜めに配置する支柱及び/又は頑健な繊維から成る3D細胞培養構築物を提供する。
【0024】
したがって一実施の形態において、本発明は、細胞が細胞培養培地中で接着するように、多孔質3Dパターンで連結する支柱及び/又は繊維を含む3D多孔質細胞培養構築物であって、一定のサイズ及び/又は寸法の孔、又は可変のサイズ及び/又は寸法の孔を有する、構築物を提供する。
【0025】
したがって一実施の形態において、本発明は、支柱及び/又は繊維から成る3D細胞培養構築物を提供し、この支柱及び繊維は予め設計した様式又はパターンで共に連結する。特定の実施の形態では、該細胞培養構築物は、非細胞毒性及び非分解性のポリマーでできている支柱及び繊維から成る。細胞培養目的で現用されている標準的な材料(例えば細胞培養プレート及び細胞培養皿)と同様、材料は、非細胞毒性及び非分解性であると考えられる。より具体的な実施の形態では、該非分解性ポリマーはポリスチレンである。
【0026】
特定の実施の形態において、細胞培養構築物に、1つ又は複数の生体分子を含浸させる。生体分子は、タンパク質、ペプチド、グリコアミノグリカン、天然化合物若しくはポリマー、治療剤又はそれらの組合せであり得る。
【0027】
三次元細胞培養構築物上で細胞を成長させる別の方法は、スピナーフラスコ内で細胞懸濁液中に細胞培養構築物を浸すことであり、フラスコは細胞の維持に適したインキュベータに入れる。それから、細胞懸濁液中の細胞を十分な期間、細胞培養構築物に接着させた後、細胞培養プレート、細胞培養皿又はバイオリアクタ等の細胞培養装置内の成長培地中に細胞培養構築物を浸漬する。
【0028】
特定の実施の形態において、本発明は、細胞培養インサートを製造する方法である。支柱及び/又は繊維を含む連続層を加えることによって、細胞培養インサートを集合化させる(assembled:組み立てる)。集合化した細胞培養インサートの表面を、プラズマ処理又は表面コーティングで処理する。最終的に、放射線を用いて細胞培養インサートを滅菌し、パッケージングする。さらに、用いるポリマー処理法は、射出成形、繊維製織、結合又はそれらの組合せである。
【0029】
特定の実施の形態において、本発明は、三次元多孔質細胞培養構築物を製造する方法である。支柱及び/又は繊維を含む連続層を加えること、及び所定容量の細胞培養構築物に対して、支柱及び/又は繊維の数を変えること、所定容量の細胞培養構築物に対して、支柱及び/又は繊維の直径を変えることによって、細胞培養インサートを集合化させる。
【0030】
特定の実施の形態において、本発明は、三次元多孔質細胞培養構築物を製造する方法である。支柱及び/又は繊維を含む連続層を加えること、並びに所定のサイズ及び寸法の孔を与える角度で互いに関連して支柱及び/又は繊維を配置することによって、細胞培養インサートを集合化させる。互いに対する支柱及び/又は繊維の角度は、およそ直角(90度)である。代替的に、この角度は、鋭角(90度未満)又は鈍角(90度超)であり得る。
【0031】
特定の実施の形態において、本発明は、三次元多孔質細胞培養構築物のキットである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】共に連結及び集合化した多層整列ポリマー繊維を含む細胞培養構築物を示す図である。
【図2】繊維配向及び繊維が共に連結する様式を示す、細胞培養構築物の一実施形態の断面図である。
【図3】図1の実施形態を形成するのに集合化された予め作製した層を示す図である。
【図4】共に連結及び集合化した多層整列ポリマー繊維を含む細胞培養構築物の別の実施形態を示す図である。
【図5】異なる立体配置の3D細胞培養構築物を形成する、集合化された予め作製した層の別の実施形態を示す図である。
【図6】異なる立体配置の3D細胞培養構築物を形成する、集合化された予め作製した層の別の実施形態を示す図である。
【図7】予め作製した層を集合化するのに、且つ3D細胞培養構築物において適所にこれらの層を固定するのに使用する繊維クラップ(clap)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、非分解性ポリマー材料、好ましくはポリスチレン又は組織培養プレート及びフラスコを作製するのに使用されている別のポリマーでできている、細胞接着のために内部及び外部の空間を与える三次元培養構築物を提供する。細胞培養構築物は、予め設計された様式又はパターンで共に連結する多層の相互接続した支柱及び/又は頑健な繊維から成る。このような立体配置が、細胞培養構築物の孔相互接続が100%になるのを可能にする。細胞培養構築物の他に、本発明は、細胞培養構築物を作製する方法、細胞培養研究の場で細胞培養構築物を使用する方法も提供する。
【0034】
立体配置
本発明の細胞培養構築物は、手軽に特定目的を達成する任意のサイズ及び形状、例えば細胞/組織培養プレート、フラスコ、及びバイオリアクタに適合するサイズ及び形状で構成され得る。
【0035】
したがって一実施形態において、本発明は、支柱及び/又は繊維から成る3D細胞培養構築物を提供する。支柱及び繊維は、予め設計された様式又はパターンで共に連結する。一実施形態では、支柱及び/又は繊維は直角で連結する。別の実施形態では、支柱及び/又は繊維は鋭角(90度未満)又は鈍角(90度超)で連結する。
【0036】
3D構築物構造における支柱のサイズ及び形状、それぞれの単位体積における支柱の数、並びに支柱の構成パターンを含む構築物の設計によって、細胞培養構築物の表面積、多孔率及び孔径が決定される。
【0037】
したがって一実施形態において、本発明は、細胞が細胞培養培地中で接着するように、多孔質3Dパターンで連結した支柱及び/又は繊維を含む3D多孔質細胞培養構築物であって、直径が一定の支柱及び/又は繊維、又は直径が異なる支柱及び/又は繊維を有する、3D多孔質細胞培養構築物を提供する。さらに、支柱及び/又は繊維の横断面は、円形、三角形、四角形、長方形、星形、又は不規則形であり得る。
【0038】
したがって一実施形態において、本発明は、細胞が互いとの、並びに支柱及び繊維との3D接着を介在及び形成する空間を提供するように、基材に対して水平、垂直又は斜めに配置した支柱及び/又は頑健な繊維から成る3D細胞培養構築物を提供する。
【0039】
したがって一実施形態において、本発明は、結合部で互いに直交する支柱及び/又は頑健な繊維から成る3D細胞培養構築物を提供する。
【0040】
したがって一実施形態において、本発明は、全てが結合部で互いと直交する訳ではなく、様々な角度で連結する支柱及び/又は繊維から成る3D細胞培養構築物を提供する。
【0041】
特定の実施形態において、上記細胞培養構築物が、三次元円板型多孔質構造物である。別の特定の実施形態では、該細胞培養構築物は、三次元立方型多孔質構造物である。
【0042】
特定の実施形態において、上記細胞培養構築物は、孔のサイズ及び/又は寸法が一定又は可変である。また構築物は、各平面で一定のサイズ及び/又は寸法の孔を有し得るが、各平面上の孔は、サイズ及び/又は寸法に関して平面間で異なる。代替的に、孔サイズ及び/又は寸法が変化しているのは、他の平面上の孔と比べて或る平面上でほんの1つ又は数個の孔だけであり得る。さらに、各平面上の孔に関するサイズ及び/又は寸法は、拡大又は縮小し得る。
【0043】
寸法
本発明の細胞培養構築物は、標準サイズに予め作製してあってもよく、又は特定の細胞培養プレートウェル、チャンバ、フラスコ、バイオリアクタに適合するように特注してもよい。したがって一実施形態では、本発明は、市販の組織培養プレートの円形ウェルに適合するサイズ(直径及び高さの両方)で細胞培養構築物を提供する。別の実施形態では、本発明は、組織培養プレートの矩形ウェルに適合する立方型のサイズ(長さ×幅×高さ)で細胞培養構築物を提供する。別の実施形態では、細胞培養構築物は、バイオリアクタのチャンバに適合するサイズ及び形状を有する。特定の実施の形態では、細胞培養構築物のサイズは、組織培養フラスコに適合する。
【0044】
3D細胞培養構築物の支柱/繊維の直径は、50nm〜1mmで変わり得る。
【0045】
細胞培養構築物の平均孔径は、50nm〜1mmで変わり得る。
【0046】
材料
本発明の細胞培養構築物は、主に又は単独で非分解性ポリマーでできている。このよう
な非分解性ポリマーとしては例えば、非分解性合成ポリマー(ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル等であるが、それらに限定されない)が挙げられる。
【0047】
細胞培養構築物に、1つ又は複数の生体分子を含浸することができる。生体分子は、タンパク質、ペプチド、グリコアミノグリカン、天然化合物若しくはポリマー、治療剤又はそれらの組合せであり得る。天然化合物又はポリマーの例は、コラーゲン、ラミニン、又はフィブロネクチンである。治療剤としては、抗生剤、ホルモン剤、成長因子、抗腫瘍剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗感染剤、創傷治癒剤、創傷封止剤、細胞誘引剤、サイトカイン等が挙げられるが、それらに限定されない。治療剤は、細胞に適用すると、ヒトの健康に役立つものである。
【0048】
抗生剤は、微生物(細菌、真菌又は原生動物等)の成長を阻害又は停止する化学療法剤である。一般的な抗生剤の例は、ペニシリン及びストレプトマイシンである。他の既知の抗生剤は、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、トブラマイシン、パロモマイシン、ゲルダナマイシン、ハービマイシン、ロラカルベフ、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム/シラスタチン、メロペネム、セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン又はセファロティン、セファレキシン、セファクロル、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジル、セフロキシム、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフジニル、セフェピム、テイコプラニン、バンコマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、スペクチノマイシン、アズトレオナム、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、ナフシリン、ピペラシリン、チカルシリン、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、マフェニド、プロントジル、スルファセタミド、スルファメチゾール(slfamethizole)、スルファニルイミド(slfanilimide)、スルファサラジン、スルフイソキサゾール、トリメトプリム、トリメトプリム−スルファメトキサゾール、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、アルスフェナミン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン(lincoamycin)、エタンブトール、ホスホマイシン、フシジン酸、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、プラテンシマイシン、ピラジンアミド、キヌプリスチン/ダルフォプリスチン、リファンピン又はリファンピシン及びチニダゾールである。
【0049】
ホルモン剤は、血液を介して或る細胞(又は細胞群)から別の細胞へとシグナルを伝える化学伝達物質である。ホルモン剤の例は、メラトニン、セロトニン、チロキシン、トリヨードチロニン、エピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミン、抗ミュラー管ホルモン、アディポネクチン、副腎皮質刺激ホルモン、アンギオテンシノゲン及びアンギオテンシン、抗利尿ホルモン、心房ナトリウム利尿性ペプチド、カルシトニン、コレシストキニン、コルチコトロピン放出ホルモン、エリスロポイエチン、卵胞刺激ホルモン、ガストリン、グレリン、グルカゴン、ゴナドトロピン放出ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ヒト胎盤性ラクトーゲン、成長ホルモン、インヒビン、インスリン、インスリン様成長因子、レプチン、黄体形成ホルモン、メラニン細胞刺激ホルモン、オキシトシン、副甲状腺ホルモン、プロラクチン、セクレチン、ソマトスタチン、トロンボポイエチン、甲状腺刺激ホルモン、チロトロピン放出ホルモン、コルチゾール、アルドステロン、テストステロン、デヒドロエピアンドロステロン、アンドロステンジオン、ジヒドロテストステロン、エストラジオール、エストロン、エストリオール、プロゲステロン、カルシトリオール、カルシジオール、プロスタグランジン、ロイコトリエン、プロスタサイクリン、トロンボキサン、プロラクチン放出ホルモン、リポトロピン、脳ナトリウム利尿ペプチド、神経ペプチドY、ヒスタミン、エンドセリン、膵臓ポリペプチド、レニン、及びエンケファリンである。
【0050】
成長因子は、細胞増殖及び細胞分化を刺激することができる天然タンパク質を指す。例としては、形質転換成長因子β(TGF−β)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン、血小板由来成長因子(PDGF)、エリスロポイエチン(EPO)、トロンボポイエチン(TPO)、ミオスタチン(GDF−8)、成長分化因子−9(GDF9)、酸性線維芽細胞成長因子(aFGF又はFGF−1)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF又はFGF−2)、上皮成長因子(EGF)、及び肝細胞成長因子(HGF)である。
【0051】
抗腫瘍剤又は抗新生物剤は、腫瘍の進行を阻害し、これに対抗する薬剤である。例としては、アクチノマイシン(例えばアクチノマイシン−D)、アントラサイクリン(例えばドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン)、ブレオマイシン、プリカマイシン、及びマイトマイシンである。
【0052】
抗真菌剤は、真菌感染を治療するのに使用する薬物である。例としては、ナタマイシン、リモシジン、フィリピン、ナイスタチン、アンホテリシンB、ミコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ビホナゾール、ブトコナゾール、フェンチコナゾール、イソコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、チオコナゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、イサブコナゾール、ラブコナゾール、ポサコナゾール、ボリコナゾール、テルコナゾール、テルビナフィン、アモロルフィン、ナフチフィン、ブテナフィン、アニデュラフンジン、カスポファンギン、ミカファンギン、安息香酸、シクロピロックス、フルシトシン、グリセオフルビン、ゲンチアナバイオレット、ハロプロギン、トルナフテート、ウンデシレン酸、ティーツリー油、シトロネラ油、レモングラス油、オレンジ油、パルマローザ油、パチョリ油、レモンマートル油、ニーム種子油、ココナッツ油、亜鉛、及びセレンである。
【0053】
抗ウイルス剤は、ウイルス感染を治療するのに特異的に使用される薬物群である。例としては、アバカビル、アシクロビル(aciclovir)、アシクロビル(acyclovir)、アデフォビル、アマンタジン、アンプレナビル、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ、ブリブジン、シドフォビル、コンビビル、ダルナビル、デラビルジン、ジダノシン、ドコサノール、エドクスジン、エファビレンツ、エムトリシタビン、エンフビリチド(enfuvirtide)、エンテカビル、侵入阻害剤(融合阻害剤)、ファムシクロビル、ホミビルセン、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、ガンシクロビル、ガーダシル、イバシタビン、イムノビル(imunovir)、イドクスウリジン、イミキモド、インジナビル、イノシン、インテグラーゼ阻害剤、III型インターフェロン、II型インターフェロン、I型インターフェロン、ラミブジン、ロピナビル、ロビリド(loviride)、MK−0518(ラルテグラビル)、マラビロク、モロキシジン、ネルフィナビル、ネビラピン、ネキサビル、ヌクレオシド類似体、オセルタミビル、ペンシクロビル、ペラミビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、プロテアーゼ阻害剤(薬理学)、逆転写酵素阻害剤、リバビリン、リマンタジン、リトナビル、サキナビル、スタブジン、相乗的エンハンサー(抗レトロウイルス性)、テノホビル、テノホビル、ジソプロキシル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルハダ、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビクリビロック、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル、及びジドブジンである。
【0054】
鎮痛薬又は鎮痛剤(口語的には痛み止めとして知られている)は、疼痛を緩和するのに使用される別の薬剤群成員である。例としては、パラセタモール/アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、COX−2阻害剤(例えばロフェコキシブ及びセレコキシブ)、モルフィン、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、ジアモルフィン、ぺチジン、トラマドール、ブプレノルフィン、三環系抗鬱剤(例えばアミトリプチリン)、カルバマゼピン、ガバペンチン及びプレガバリンである。
【0055】
抗ヒスタミン剤は、アレルギー反応中に放出される内因性化学媒介物質であるヒスタミンによって媒介する作用を低減するか又は取り除くのに有用なヒスタミンアンタゴニストである。例としては、H1抗ヒスタミン剤、アセプロメタジン、アリメマジン、アステミゾール、アザタジン、アゼラスチン、ベナドリル、ブルムフェニラミン、クロルシクリジン、クロロピラミン、クロルフェナミン、フェニルプロパノールアミン、シンナリジン、クレマスチン、シクリジン、シプロヘプタジン、デキスブロムフェニルアミン、デキスクロルフェニルアミン、ジフェンヒドラミン、ドキシラミン、エバスチン、エメダスチン、エピナスチン、フェキソフェナジン、ヒスタミンアンタゴニスト(例えばシメチジン、ラニチジン、及びファモチジン;ABT−239、チオペラミド、クロベンプロピット、インプロミジン、チオペラミド、クロモグリク酸、ネドクリミル)、ヒドロキシジン、ケトチフェン、レボカバスチン、メブヒドロリン、メピラミン、メタピリレン(mthapyrilene)、メトジラジン、オロパタジン、フェニラミン、フェニルトロキサミン、レスポラル(resporal)、センプレックス−D、ソミネックス、タラスチン、テルフェナジン、及びトリプロリジンである。
【0056】
抗炎症剤は、炎症を低減する物質に関する。例としては、コルチコステロイド、イブプロフェン、ジクロフェナク及びナプロキセン、ヘレナリン、サリチル酸、カプサイシン及びω−3脂肪酸である。
【0057】
抗感染剤は、感染を予防するか又は感染に対抗することができる任意の作用物質である。抗感染剤は、幾つかの群に分けることができる。駆虫薬(Anthelminthics)は、アルベンダゾール、レベミゾール、メベンダゾール、ニクロサミド、プラジカンテル、及びピランテルから成る抗感染剤の群の1つである。別の群は、抗フィラリア薬、例えばジエチルカルバマジン、イベルメクチン、スラミンナトリウム、抗住血吸虫薬及び抗吸虫薬(antitrematode medicine)、オキサムニキン、プラジカンテル、及びトリクラベンダゾールである。別の群は、抗菌薬であり、これをさらに細分化することができる。βラクタム薬は、アモキシシリン、アンピシリン、ベンザチンベンジルペニシリン、ベンジルペニシリン、セファゾリン、セフィキシム、セフタジジム、セフトリアキソン、クロキサシリン、コ−アモキシクラブ、イミペネム/シラスタチン、フェノキシメチルペニシリン、及びプロカインベンジルペニシリンである。他の抗菌薬は、アジスロマイシン、クロラムフェニコール、シプロフロキサシン、クリンダマイシン、コ−トリモキサゾール、ドキシシクリン、エリスロマイシン、ゲンタマイシン、メトロニダゾール、ニトロフラントイン、スペクチノマイシン、スルファジアジン、トリメトプリム、及びバンコマイシンである。抗ハンセン病薬の例は、クロファジミン、ダプソン、及びリファンピシンである。抗結核薬の例は、アミカシン、p−アミノサリチル酸、カプレオマイシン、シクロセリン、エタンブトール、エチオンアミド、イソニアジド、カナマイシン、オフロキサシン、ピラジンアミド、リファンピシン、及びストレプトマイシンである。抗真菌薬の例は、アンフォテリシンB、シクロトリマゾール、フルコナゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、ナイスタチン(nnystatin)、ヨウ化カリウムである。抗ウイルス剤は、抗感染剤でもある。抗ヘルペス薬の例は、アシクロビルである。抗レトロウイルス薬の例は、ヌクレオシド/ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤である。他の例は、アバカビル、ジダノシン、エムトリシタビン、ラミブジン、スタブジン、フマル酸テノフォビルジソプロキシル、ジドブジン、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、エファビレンツ、ネビラピン、プロテアーゼ阻害剤、インジナビル、ロピナビル+リトナビル、ネルフィナビル、リトナビル、サキナビル及びリバビリンである。抗原虫薬の例は、ジロキサニド、メトロニダゾール等の抗アメーバ薬及び抗ジアルジア虫症薬;アンホテリシンB、アンチモン酸メグルミン、ペンタミジン等の抗リーシュマニア症薬;アモジアキン、アルテメテル、アルテメテル+ルメファントリン、アーテスネート、クロロキン、ドキシシクリン、メフロキン、プリマキン、キニーネ、スルファドシン+ピリメタミン、クロロキン、及びプログアニル等の抗マラリア薬である。抗ニューモシスティス肺炎症(Antipneumocytosis)症薬及び抗トキソプラズマ症(antioxoplasmosis)薬は、ペンタミジン(pentamindine)、ピリメタミン、スルファメトキサゾール+トリメトプリムである。抗トリパノソーマ薬は、エフロルニチン、メラルソプロール、ペンタミジン、スラミンナトリウム、ベンズニダゾール、及びニフルチモックスである。抗偏頭痛薬は、アセチルサリチル酸、パラセタモール、及びプロプラノロールである。
【0058】
創傷治癒剤は、皮膚及び表皮組織を再生する身体の自然過程を促進する。例としては、フィブリン、フィブロネクチン、コラーゲン、セロトニン、ブラジキニン、プロスタグランジン、プロスタシクリン、トロンボキサン、ヒスタミン、神経ペプチド、キニン、コラゲナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子、亜鉛依存性メタロプロテイナーゼ、乳酸、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、糖タンパク質、グリコサミノグリカン(GAG)、エラスチン、成長因子(PDGF、TGF−β)、一酸化窒素、及び基質メタロプロテイナーゼである。創傷封止剤の例は、血小板ゲル及びフィブリンである。
【0059】
細胞誘引剤又は走化性剤は、体細胞、細菌及びそれらの動きに影響を与える他の単細胞又は多細胞の有機体によって検知される環境下での化学物質又は分子である。例としては、アミノ酸、ホルミルペプチド[例えばN−ホルミルメチオニル−ロイシル−フェニルアラニン(参考文献中、fMLF又はfMLP)]、補体3a(C3a)及び補体5a(C5a)、ケモカイン(例えばIL−8);ロイコトリエン[例えばロイコトリエンB4(LTB4)]である。
【0060】
サイトカインは、互いに伝達するために動物細胞で生成されたシグナル化合物であるタンパク質群及びペプチド群である。サイトカインは、幾つかのファミリーに分けることができる。例としては、4つのα−へリックス束ファミリーであり、:IL−2サブファミリー[例えばエリスロポイエチン(EPO)及びトロンボポイエチン(THPO)]、インターフェロン(IFN)サブファミリー、IL−10サブファミリーの3つのサブファミリーから成る。他の例は、IL−1ファミリー(例えばIL−1及びIL−18)、IL−17ファミリー、ケモカイン、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリー、造血成長因子(1型)ファミリー、インターフェロン(2型)ファミリー、腫瘍壊死因子(TNF)(3型)ファミリー、7回膜貫通へリックスファミリー、及び形質転換成長因子βスーパーファミリーである。
【0061】
細胞培養構築物の表面又は部分表面は、生理化学的手段、化学的手段、コーティング手段又はそれらの組合せでさらに処理し、細胞接着を改善させることができる。
【0062】
細胞培養構築物の表面は、より良好な細胞接着のために構築物の表面特性を改善する、当該技術分野で既知の生理化学的手段に関する表面修飾法(プラズマ又はグロー放電等であるが、それらに限定されない)でさらに処理することができる。
【0063】
細胞培養構築物の表面は、化学的手段、特に酸又は塩基によってさらに表面処理することができる。特定の実施形態では、細胞培養構築物を、HSO、HNO、HCl、HPO、HCrO、又はそれらの組合せで処理する。特定の実施形態では、細胞培養構築物は、NaOH、KOH、Ba(OH)、CsOH、Sr(OH)、Ca(OH)、LiOH、RbOH又はそれらの組合せで処理する。
【0064】
細胞培養構築物の表面は、支柱及び/又は繊維の材料とは異なる物質を表面上に塗布することである、コーティング手段によってさらに表面処理することができる。物質は、支柱及び/又は繊維の表面に共有結合又は物理的に吸着することができる。代替的に、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力又はそれらの組合せによって、この物質を構築物の表面に結合させることができる。生体分子コーティングの安定性を増大させるために、化学架橋、放射線、熱処理、又はそれらの組合せ等の様々な架橋法を使用してコーティングを架橋することができる。さらに、室温を超える高温で、真空下で架橋を行うことができる。架橋に使用する放射線は、電子線、ガンマ線、紫外線又はそれらの組合せであり得る。
【0065】
コーティング物質は、タンパク質、ペプチド、グリコアミノグリカン、天然物質、無機物質、治療剤、又はそれらの組合せであり得る。
【0066】
細胞培養構築物の表面は、生体分子又は天然化合物又はポリマー(コラーゲン(I型、II型、III型、IV型、V型、IV型等)、フィブロネクチン、ラミニン、又は他の細胞外基質分子等であるが、それらに限定されない)でさらにコーティングすることができる。細胞外基質分子の例は、へパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、ヒアルロン酸、エラスチン、ヘミセルロース、ペクチン、及びエクステンシンである。生体分子は、表面に共有結合するか、又は細胞培養構築物の表面に物理的に吸着する。
【0067】
細胞培養構築物の表面は、合成ポリマー(ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルポリピロリドン、ポリ(L−ラクチド)、ポリリシン等であるが、それらに限定されない)でさらに表面コーティングすることができる。
【0068】
三次元多孔質細胞培養構築物は、有機物質(ゼラチン、キトサン、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びそれらの組合せ等であるが、それらに限定されない)でコーティングすることができる。
【0069】
特定の実施形態において、細胞培養構築物は、無機材料(リン酸カルシウム、TiO、Al、又はそれらの組合せ等)でコーティングする。
【0070】
特定の実施形態において、細胞培養構築物は、2つ以上の有機材料をコーティングした複合材料(ゼラチン及びキトサン、ポリアクリル酸及びポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドン等であるが、それらに限定されない)でコーティングする。
【0071】
特定の実施形態において、細胞培養構築物は、無機材料の複合材料(リン酸カルシウム及びTiO、リン酸カルシウム及びAl等)でコーティングする。コーティングする無機複合材料は、上記細胞培養構築物の表面に化学結合するか、又は表面に物理的に吸着する。
【0072】
特定の実施形態において、細胞培養構築物は、無機材料と有機材料とをコーティングした複合材料(リン酸カルシウム/コラーゲン、リン酸カルシウム/ゼラチン、リン酸カルシム/ポリエチレングリコール等であるが、それらに限定されない)でコーティングする。コーティングする複合材料は、上記細胞培養構築物の表面に化学結合するか、又は表面に物理的に吸着する。
【0073】
細胞培養構築物を作製する方法
細胞培養構築物は、幾つかの方法(層間集合化法及び層間作製法等であるが、それらに限定されない)を使用して作製することができる。以下に一例を示す。
【0074】
この方法は、本発明者等が、スカフォールド集合化法として説明するものである。本発明の細胞培養構築物を製造する一例示的方法には、以下の工程が含まれる。
【0075】
工程I。 構造設計に従って、好適なポリマー処理法によって、スカフォールドの各層を予め作製する。ポリマー処理法は、射出成形、繊維製織プロセス、及び結合であり、これらがポリマー部及びポリマースクリーンを作製するのに最も効果的且つ費用効率が高い方法であるが、これらに限定されない。
【0076】
工程II。 それから、互いの上部に幾つかのスカフォールド層を置くことによって、スカフォールド層を共に集合化させる。各スカフォールド層は、様々な構造を有してもよく、また最終産物の面積よりも面積が大きくてもよい。構築物の面積が所望の最終産物よりも大きい場合、ダイカッター又はレーザービーム等の機械装置を使用して、所望の最終産物を、集合化した大きい構築物から正しいサイズ及び形状に切断することができる。1つ又は複数の最終細胞培養構築物は、単一の集合化した大きい構築物から切断し得る。別の実施形態では、各スカフォールド層を所望のサイズに予め作製し、機械装置を用いて、細胞培養構築物を共に集合化させて、集合化プロセス中にスカフォールド層を導き、配向させる。例えば、円盤型の細胞培養構築物を作製する場合、機械装置は直径が適当な中空管であり、これが幾つかの予め作製した円形のスカフォールド部を適合させる。管ガイドは、集合化後に規定の立体配置を達成する或る特定の方法で、予め作製した部分を整列させる機械的機序を有してもよい。機械的な集合化装置を用いて、スカフォールド部を適所に組み立てた後、非細胞毒性であり、好ましくは細胞培養構築物と同じ種類の材料でできているポリマー繊維又はフリップ等を使用して、この部分を束ねる。立方型の細胞培養構築物を集合化させるために、断面積が正方形又は長方形の機械的な集合化ガイドを使用して同じ集合化プロセスを適用することができる。
【0077】
集合化ガイドは、予め整列したポリマー繊維でもあり得る。これらの予め整列した繊維は、予め作製したスカフォールド部の穴又は孔の幾つかを通り、最終的に集合化後、規定の立体配置を達成するようにこれらの部分を束ねる。
【0078】
このスカフォールド集合化法は、幾つかの異なる構造設計を有する予め作製した部分を幾つか組み立てることによって、不均一な構造の細胞培養構築物を集合化させる可能性も与える。或る部分と他の部分との相対的位置を変えること、例えば幾つかの部分を或る程度まで回転させることによって、細胞培養構築物の構造も変えることができる。
【0079】
上記の集合化法を使用して細胞培養構築物を作製する利点は、個々の部分をまとめる集合化フリップ又は集合化繊維を、細胞培養液中で使用した後に単純に取り除くことで、構築物を容易に脱集合化することができることである。光学顕微鏡、走査電子顕微鏡等の従来の顕微鏡法によって、脱集合化した部分を容易に評価することができる。
【0080】
当業者にとって既知のプラズマ法及びグロー放電法等の様々な表面修飾法で集合化した細胞培養構築物をさらに処理することができる。ディップコーティング、化学グラフト化、及び/又は当業者にとって既知の他の技法によって、無機材料、有機材料、及び無機/有機材料で細胞培養構築物をコーティングすることもできる。表面処理した細胞培養構築物をパッケージング及び滅菌することができる。
【0081】
キット
本発明は、1つのパッケージ容器内で組織培養プレートに、1つ又は複数の細胞培養構築物を与えるキットをさらに含む。本発明のキットは、1つ又は複数の細胞培養構築物を含み、細胞培養構築物を、組織培養プレート、滅菌パッケージング発泡体(foam:フォーム)又は他のディスポ等から取り出し、または挿入する機械装置等の他の構成要素を含み得る。
【0082】
本発明のキットは、滅菌包装して、即時に使用することができる状態にある単一細胞培養構築物を含み得る。一実施形態では、本発明のキットは、2つ以上の同じサイズの細胞培養構築物を含み得る。別の実施形態では、本発明のキットは、2つ以上の異なるサイズの細胞培養構築物を含み得る。
【0083】
本発明のキットは、滅菌包装して、即時に使用することができる状態にある単一又は複数の細胞/組織培養プレートウェルに挿入された単一の細胞培養構築物又は複数の細胞培養構築物を含み得る。
【0084】
細胞培養構築物の細胞培養使用
組織培養ポリスチレンプレートによる使用
本発明は、組織培養ポリスチレンプレート内で生細胞を培養するのに、細胞培養構築物を使用する方法も提供する。細胞培養構築物は、組織培養プレートのウェルに適合する円板型又は立方型であり得る。動的播種法又は静的播種法を使用して、細胞を細胞培養構築物に播種することができる。
【0085】
静的播種法を使用した一例において、或る特定容量の細胞懸濁液を、細胞培養構築物の上面に擦り付け、或る特定時間接着させた後、培地に漬けた。細胞を播種した後、成長培地中に浸漬させたウェルプレートで細胞培養構築物を維持し、空気中、5%〜10%二酸化炭素の90%加湿雰囲気下、37℃のインキュベータ内で培養した。
【0086】
動的播種法を使用した別の例において、細胞培養構築物をスピナーフラスコ内の細胞懸濁液中に浸すことによって播種を行い、37℃の加湿5%COインキュベータに入れた。播種後、37℃の加湿5%COインキュベータ内でさらに培養するために、培地の入った組織培養プレートのウェルに細胞培養構築物を入れた。定期的に細胞培地を取り替えた。
【0087】
細胞培養を或る特定時点で終了させた後、細胞培養構築物を細胞培養プレートから取り出し、従来のアッセイにかけた。顕微鏡で、細胞培養構築物の様々な層又は位置内で細胞接着及び細胞活性を視覚化するために、細胞培養構築物を脱集合化した。
【0088】
細胞を回収する必要がある場合、トリプシン−EDTA溶液を使用して、細胞をトリプシン処理した。細胞培養構築物から分離した後、少ない容量の新鮮血清含有培地中で細胞を再懸濁し、トリプシンを不活性化した。それから、これらの細胞を他の目的に使用することができる。
【0089】
バイオリアクタによる使用
本発明は、バイオリアクタ内で生細胞を培養するのに、細胞培養構築物を使用する方法も提供する。細胞培養構築物は、円板型又は立方型であってもよく、バイオリアクタに適合する。
【0090】
静的播種法を使用した一例において、或る特定容量の細胞懸濁液を、細胞培養構築物の上面に擦り付け、或る特定時間接着させた後、培地に漬けた。静的播種法又は動的播種法のいずれかによって細胞を播種した後、成長培地中に浸漬させたバイオリアクタ内でこれらの細胞を播種した細胞培養構築物を維持し、空気中、5%〜10%二酸化炭素の90%加湿雰囲気下で、37℃で培養した。定期的に培養培地を取り替え、細胞培養構築物によって絶えず循環させた。
【0091】
細胞培養を或る特定時点で終了させた後、細胞培養構築物を細胞培養プレートから取り出し、従来のアッセイにかけた。顕微鏡で、細胞培養構築物の様々な層又は位置内で細胞接着及び細胞活性を視覚化するために、細胞培養構築物を脱集合化した。
【0092】
細胞を回収する必要がある場合、トリプシン−EDTA溶液を使用して、細胞をトリプシン処理した。細胞培養構築物から分離した後、少ない容量の新鮮血清含有培地中で細胞を再懸濁し、トリプシンを不活性化した。それから、これらの細胞を他の目的に使用することができる。
【実施例】
【0093】
実施例1:細胞培養構築物を作製する方法
ポリスチレン材料を使用して、細胞培養構築物を作製する。図5に示す細胞培養構築部を使用して、細胞培養構築物に集合化させた。設計に従って、これらの部分を射出成形した。この部分を作製した後、初めに集合化ガイドに第1の層を入れた後、そのガイドに第2、第3及び第4の層部分を入れた。そのため、層部分の総数は4であった。それから、図7に示すポリスチレン繊維クラップを使用して、これらの4つの部分を束ねた。クラップの2つの末端が構築物の穴から延出しないように、束(tie)を形成するか、又は2つの末端を変形させることによって、2つの末端をさらに固定した。集合化した後、ポラーロンPT7300RFプラズマバレルエッチャー(Quorum Technology, East Sussex, UK)を使用してアルゴン下で細胞培養構築物をプラズマ処理した。高周波電力、圧力及び処理時間をそれぞれ、296W、1×10−1mbar及び5分に固定した。
【0094】
プラズマ処理した細胞培養構築物を個々にパッケージングし、20KGyの線量でγ放射線を使用して最終滅菌した。
【0095】
実施例2:細胞培養への細胞培養構築物の使用
本発明は、組織培養ポリスチレンプレート内で生細胞を培養するのに、細胞培養構築物を使用する方法も提供する。この研究で使用する細胞培養構築物のサイズは、10mm幅×10mm長×0.3mm厚であり、平方孔開口が200μm、繊維径が400μmであった。静的播種法を使用して、平滑筋細胞を播種した。構築物の上面に、平滑筋細胞懸濁液500μl(1×10細胞/ml)をピペッティングし、37℃で2時間接着させた後、培地に漬けた。細胞を播種した後、成長培地に浸漬したウェルプレートで細胞培養構築物を維持し、空気中、5%〜10%二酸化炭素の90%加湿雰囲気下、37℃のインキュベータ内で培養した。細胞培養成長培地は、5%(v/v)胎児ウシ血清を含有するダルベッコ変性イーグル培地(DMEM)から成っていた。動的播種法を使用した場合、細胞培養構築物を、60rpmで撹拌するスピナーフラスコ内の細胞懸濁液中に浸すことによって播種を行い、37℃の加湿5%COインキュベータ内で細胞培養構築物を含有した。播種後、37℃の加湿5%COインキュベータ内でさらに培養するために、培地の入った組織培養プレートのウェルに細胞培養構築物を入れた。定期的に培養培地を取り替えた。
【0096】
細胞培養を或る特定時点で終了させた後、細胞培養構築物を細胞培養プレートから取り出し、従来のアッセイにかけた。顕微鏡で、細胞培養構築物の様々な層又は位置の細胞接着及び細胞活性を視覚化するために、細胞培養構築物を脱集合化した。
【0097】
細胞を回収する必要がある場合、トリプシン−EDTA溶液(Sigma T4049)を使用して、細胞をトリプシン処理した。細胞培養構築物から分離した後、少ない容量の新鮮血清含有培地中で細胞を再懸濁し、トリプシンを不活性化した。それから、これらの細胞を他の目的に使用することができる。
【0098】
実施例3:バイオリアクタにおける細胞培養への細胞培養構築物の使用
本発明は、バイオリアクタ内で生細胞を培養するのに、細胞培養構築物を使用する方法も提供する。実施例3で使用する細胞培養構築物は円板型であり(厚さ0.8mm、多孔率80%及び繊維径200μmである10mm径の円板)、バイオリアクタに適合する。
【0099】
初めにラット骨髄間質細胞(MSC)を細胞培養構築物上に静的に播種した。250000個のラットMSCを有するMSC懸濁液500μlを細胞培養構築物の上面にピペッティングし、37℃で2時間接着させた後、培地に漬けた。細胞を播種した後、灌流培養バイオリアクタでこれらの播種細胞培養構築物を維持した。これらの細胞を播種した細胞培養構築物を完全骨分化培地に浸漬して、空気中、5%〜10%二酸化炭素の90%加湿雰囲気下、37℃で培養した。1ml/分の速度で設定した蠕動ポンプで、バイオリアクタ系の動作を駆動した。培養期間中、培養培地をかき混ぜ、構築物の孔を介して細胞培養構築物に通した。したがって、細胞を動的せん断条件下で培養した。48時間毎に完全培地を交換して、4日、8日及び16日、バイオリアクタ内で細胞を培養した。
【0100】
培養期間の終了時に、PBSで全ての細胞培養構築物を洗い、さらに分析するまで、−20℃で蒸留した脱イオン水1.5mlで保存した。顕微鏡で、細胞培養構築物の様々な層又は位置で細胞接着及び細胞活性を視覚化するために、細胞培養構築物を脱集合化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞が細胞培養培地中で接着するように、堅固な多孔質の三次元設計パターンで連結する支柱及び/又は繊維を含む、三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項2】
細胞が細胞培養培地中で接着するように、多孔質の三次元設計パターンで連結する支柱及び/又は繊維を含む、三次元多孔質細胞培養構築物であって、平均孔径が15ミクロン〜1000ミクロン、25ミクロン〜500ミクロン、又は50ミクロン〜100ミクロンである、三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項3】
細胞が細胞培養培地中で接着するように、多孔質の三次元設計パターンで連結する支柱及び/又は繊維を含む、三次元多孔質細胞培養構築物であって、孔分布が、約50%、約80%又は約95%を超える、三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項4】
前記支柱及び/又は繊維が共に互いに織り込まれているか、又は互いに角度を成して連結する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項5】
前記角度が、直角、鋭角及び鈍角から成る群から選択される、請求項4に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項6】
前記支柱及び/又は繊維がポリマーを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項7】
前記ポリマーが、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項6に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項8】
前記支柱及び/又は繊維の直径が一定である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項9】
前記支柱及び/又は繊維の直径が様々である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項10】
横断面が、円形、三角形、四角形、長方形、星形、不規則形又はそれらの組合せから成る群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項11】
前記支柱及び/又は繊維を、基材に対して斜めに、水平に、垂直に及びそれらの組合せから成る群から選択されるように配置する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項12】
前記孔の平均孔径が、15ミクロン〜1000ミクロン、25ミクロン〜500ミクロン、又は50ミクロン〜100ミクロンを超える、請求項1又は3のいずれか一項に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項13】
前記孔のサイズ及び/又は寸法が一定である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項14】
前記孔のサイズ及び/又は寸法が可変である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項15】
前記構築物の基材に対して水平である面上の前記孔のサイズ及び/又は寸法が一定である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項16】
前記構築物の基材に対して水平である面上の孔のサイズ及び/又は寸法が、該構築物の基材に対して水平である別の面上の孔とは異なる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項17】
前記構築物の基材に対して水平である面上の孔のサイズ及び/又は寸法が、さらに該基材の隣接面上の孔と同じであるか又は減少している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項18】
前記構築物の基材に対して水平である少なくとも1つの面上の孔のサイズ及び/又は寸法が、さらに該基材の隣接面上の孔に対して減少している、請求項17のいずれか一項に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項19】
前記基材に対して水平である面上の前記孔のサイズ及び/又は寸法が、同じ面上の孔とは異なる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項20】
前記構築物中に含浸させた生体分子をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項21】
前記生体分子が、タンパク質、ペプチド、グリコアミノグリカン、天然化合物又はポリマー、治療剤及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項20に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項22】
前記天然化合物又はポリマーが、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項21に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項23】
前記治療剤が、抗生剤、ホルモン剤、成長因子、抗腫瘍剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗感染剤、創傷治癒剤、創傷封止剤、細胞誘引剤、サイトカイン及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項21に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項24】
前記表面の少なくとも一部分を、前記支柱及び/又は繊維との細胞接着を改善するように修飾する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項25】
生理化学的手段、化学的手段、コーティング手段及びそれらの組合せから成る群から選択される技法で前記表面を修飾する、請求項24に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項26】
前記生理化学的手段が、プラズマ処理、グロー放電及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項25に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項27】
前記化学的手段が、酸又は塩基による処理から成る群から選択される、請求項25に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項28】
前記酸が、HSO、HNO、HCl、HPO、HCrO及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項27に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項29】
前記塩基が、NaOH、KOH、Ba(OH)、CsOH、Sr(OH)、Ca(OH)、LiOH、RbOH及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項27に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項30】
前記コーティング手段が、前記支柱及び/又は繊維の材料とは異なるコーティング物質を塗布することを含む、請求項25に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項31】
前記コーティング物質が、前記支柱及び/又は繊維の表面と共有結合する、請求項30に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項32】
前記コーティング物質が、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力及びそれらの組合せによって前記支柱及び/又は繊維と結合する、請求項30に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項33】
前記コーティング物質を、前記支柱及び/又は繊維上で架橋する、請求項30に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項34】
前記コーティング物質を、化学的手段、熱的手段、放射線及びそれらの組合せから成る群から選択される技法によって架橋する、請求項33に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項35】
前記コーティング物質を高温真空下で架橋する、請求項33に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項36】
前記放射線が、電子線、ガンマ線、紫外線及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項34に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項37】
前記コーティング物質が、タンパク質、ペプチド、グリコアミノグリカン、天然化合物又はポリマー、合成化合物又はポリマー、有機物質、無機物質、治療剤及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項30に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項38】
前記天然化合物又はポリマーが、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、細胞外基質分子及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項37に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項39】
前記合成化合物又はポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルポリピロリドン、ポリ(L−ラクチド)、ポリリシン及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項37に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項40】
前記有機物質が、ゼラチン、キトサン、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項37に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項41】
前記無機物質が、リン酸カルシウム、TiO、SiO、Al及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項37に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項42】
前記コーティング物質が、2つ以上の有機材料をコーティングした複合材料である、請求項37に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項43】
前記コーティング物質が、2つ以上の無機材料をコーティングした複合材料である、請求項37に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項44】
前記コーティング物質が、無機材料と有機材料とをコーティングした複合材料である、請求項37に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項45】
前記コーティング物質が、少なくとも1つの無機材料と1つの有機材料とをコーティングした複合材料である、請求項44に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項46】
前記複合材料が、リン酸カルシウム/コラーゲン複合材料、リン酸カルシウム/ポリエチレングリコール複合材料、及びリン酸カルシウム/細胞外基質から成る群から選択される、請求項44に記載の三次元多孔質細胞培養構築物。
【請求項47】
三次元細胞培養構築物上で細胞を成長させる方法であって、
(a)請求項1〜3のいずれか一項に記載の細胞培養構築物の表面上に或る容量の細胞懸濁液を添加すること、
(b)十分な期間、細胞懸濁液中の前記細胞を前記細胞培養構築物に接着させること、
(c)細胞培養プレート、細胞培養皿又はバイオリアクタから成る群から選択される細胞培養装置内で、前記細胞培養構築物を成長培地に浸漬することを含む、三次元細胞培養構築物上で細胞を成長させる方法。
【請求項48】
三次元細胞培養構築物上で細胞を成長させる方法であって、
(a)スピナーフラスコ内で細胞懸濁液中に請求項1〜3のいずれか一項に記載の細胞培養構築物を浸すことであって、該フラスコは細胞の維持に適したインキュベータに入れられる、浸すこと、
(b)十分な期間、細胞懸濁液中の前記細胞を前記細胞培養構築物に接着させること、
(c)細胞培養プレート、細胞培養皿又はバイオリアクタから成る群から選択される細胞培養装置内で、前記細胞培養構築物を成長培地に浸漬することを含む、三次元細胞培養構築物上で細胞を成長させる方法。
【請求項49】
細胞培養インサートを製造する方法であって、
(a)支柱及び/又は繊維を含む連続した層を加えることによって、細胞培養インサートを集合化させること、
(c)プラズマ処理又は表面コーティングによって、集合化した細胞培養インサートの表面を処理すること、
(d)放射線を使用して、前記細胞培養インサートを滅菌すること、及び
(e)前記細胞培養インサートをパッケージングすることを含む、細胞培養インサートを製造する方法。
【請求項50】
前記製造方法が、押出成形、射出成形、繊維製織、結合及びそれらの組合せから成る群から選択されるポリマー処理法を含む、請求項49に記載の細胞培養インサートを製造する方法。
【請求項51】
三次元多孔質細胞培養構築物を製造する方法であって、
(a)支柱及び/又は繊維を含む連続した層を加えることによって、細胞培養インサートを集合化させること、及び
(b)所定容量の前記細胞培養構築物に対して、前記支柱及び/又は繊維の数を変えること、又は
(c)所定容量の前記細胞培養構築物に対して、前記支柱及び/又は繊維の直径を変えることを含む、三次元多孔質細胞培養構築物を製造する方法。
【請求項52】
三次元多孔質細胞培養構築物を製造する方法であって、
(a)支柱及び/又は繊維を含む連続した層を加えることによって、細胞培養インサートを集合化させること、及び
(b)所定のサイズ及び寸法の孔を与える角度で互いに関連して前記支柱及び/又は繊維を配置することを含む、三次元多孔質細胞培養構築物を製造する方法。
【請求項53】
前記角度が約90度である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記角度が90度より小さい、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記角度が90度より大きい、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の細胞培養構築物と細胞培養プレートとを有するキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−517590(P2010−517590A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549697(P2009−549697)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/053835
【国際公開番号】WO2008/101001
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(509228776)3ディー バイオテク,エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】