説明

三次元観察状態測定装置及び方法

【課題】3D映像機器を視聴者が視聴する場合に、視聴者に生ずる疲労メカニズムを探索できる三次元観察状態測定装置を提供すること。
【解決手段】三次元映像装置10により形成された三次元画像12の座標値を取得する画像座標取得部20と、被検眼14の視線方向を検出する視線方向検出部30と、視線方向検出部30で検出された視線から、被検眼14の注視点位置を求める注視点位置測定部32と、注視点位置測定部32で得られた注視点位置と、当該注視点位置を求めた時点の視線方向における三次元画像12の注視座標値とを比較する座標比較部40とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、例えば立体視可能な映像機器の3D映像を視聴する視聴者の視覚状態を測定する三次元観察状態測定装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
本出願人は、眼特性測定装置として各種の装置を製造・販売している。例えば、特許文献1で示すように、眼屈折力測定装置を提供して、被検眼の視力測定を容易にしている。また、特許文献2で示すように、視線監視装置を提供して、視野計や眼底カメラでの被検眼の検査を容易にしている。
【0003】
【特許文献1】
特公平5−88131号公報 第1図
【特許文献2】
特公平1−52012号公報 第2図
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
他方、従来のテレビ受像機のような平面スクリーンに平面画像を映写する映像表示装置を基礎として、立体視可能な3D映像機器が開発されており、家庭用電化製品としての販売が開始されようとしている。このような3D映像機器を民生用機器として販売する場合には、業務用機器と比較して製品の完成度を格段に高めると共に、視聴者との相性を適格に把握する必要がある。即ち、業務用機器の場合には、眼科医や医療検査技師のような専門家が被検者の状態を観察しながら、検査映像を被検者に視聴させている。そのため、被検者が特異体質である為に、検査画像に対して特異な反応を示した場合でも、専門家が適切な措置を被検者に施すことで、特段の問題が顕在化する事態を防止している。
【0005】
しかし、民生用機器の場合には、事情が相違している。例えば、単純なテレビ映像を視聴している場合に、5〜10Hz程度の周波数で明るい画像と暗い画像を交互に表示したところ、視聴者のなかに気分が悪くなった者が多数発生した事案が発生している。即ち、あるテレビ局が放映した『ポケモン』(登録商標)の漫画映像において、視聴者数百万人中、数千人の視聴者に気分が悪くなる事態が発生して、社会問題化した。このように、98%以上の視聴者には正常に視聴可能な映像であっても、数%以下の少数の割合で視聴者に異常が生ずると、大きな問題となる点が、マスメディアを通じて放映されるコンテンツ映像の特質である。
【0006】
そして、立体視可能な3D映像機器では、自然の対象物を視聴する場合に比較して、視聴者が疲労しやすいという課題がある。特に、3D映像機器で映写するコンテンツ映像が視聴者にとって非常に興味深い場合に、視聴者が集中して3D映像を視聴すると、視聴後に極度の疲労を感じる場合があった。そこで、3D映像機器の開発者にとって、視聴者が集中して3D映像を視聴しても、視聴後に極度の疲労を感じなくてすむ視聴条件を割り出して、視聴者に対して3D映像機器の視聴の仕方を適切に指導する必要性が発生してきた。また、3D映像機器向けのコンテンツ映像の放映者にとっても、どの点に配慮して3D映像を製作すれば、視聴者が集中して3D映像を視聴しても、視聴後に極度の疲労を感じなくてすむか認識する必要性が生じてきた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述する課題を解決したもので、第1の目的は、3D映像機器を視聴者が視聴する場合に、視聴者に生ずる疲労メカニズムを探索できる三次元観察状態測定装置及び方法を提供することである。本発明の第2の目的は、3D映像機器を視聴者が視聴する場合に、視聴者の被検眼における屈折力、輻輳(瞳孔径)等の眼特性を容易に計測できる三次元観察状態測定装置及び方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の三次元観察状態測定装置は、例えば図1に示すように、三次元映像装置10により形成された三次元画像12の座標値を取得する画像座標取得部20と、被検眼14の視線方向を検出する視線方向検出部30と、視線方向検出部30で検出された視線から、被検眼14の注視点位置を求める注視点位置測定部32と、注視点位置測定部32で得られた注視点位置と、当該注視点位置を求めた時点の視線方向における三次元画像12の注視点座標値とを比較する座標比較部40とを備えている。
【0009】
このように構成された装置においては、画像座標取得部20は、三次元映像装置10により形成された三次元画像12の座標値を取得するもので、座標値の基準点を、例えば被検眼14とする。注視点位置測定部32は、視線方向検出部30で検出された視線から、被検眼14の注視点位置を求める。座標比較部40は、注視点位置測定部32で得られた注視点位置と、当該注視点位置を求めた時点の視線方向を視線方向検出部30で検出して、当該視線方向における三次元画像12の座標値とを比較して、偏差を求める。座標比較部40により求められる偏差は、三次元映像装置10により形成された三次元画像12を視聴者が視聴する場合に、視聴者に生ずる疲労メカニズムを探索するのに有用な情報と考えられる。
【0010】
上記目的を達成する本発明の三次元観察状態測定装置は、例えば図3に示すように、三次元映像装置により形成された三次元画像12の座標値を取得する画像座標取得部20と、被検眼14の視線方向を検出する視線方向検出部30と、被検眼14の屈折力を測定する屈折力測定部34と、屈折力測定部34で得られた被検眼14のピント位置と、当該ピント位置を求めた時点の視線方向における三次元画像12の座標値とを比較する第2の座標比較部42とを備えている。
【0011】
このように構成された装置においては、画像座標取得部20は、三次元映像装置10により形成された三次元画像12の座標値を取得するもので、座標値の基準点を、例えば被検眼14とする。屈折力測定部34は、被検眼14の屈折力を測定するもので、被検眼14のピント位置情報を得ることができる。第2の座標比較部42は、屈折力測定部34で得られた被検眼14のピント位置と、当該ピント位置を求めた時点の視線方向を視線方向検出部30で検出して、当該視線方向における三次元画像の注視座標値とを比較する。第2の座標比較部42により求められる偏差は、三次元映像装置10により形成された三次元画像12を視聴する場合に、視聴者に生ずる疲労メカニズムを探索するのに有用な情報と考えられる。また、屈折力測定部34により、3D映像機器を視聴者が視聴する場合に、視聴者の被検眼における屈折力、輻輳、瞳孔径等の眼特性を容易に計測できる。
【0012】
上記目的を達成する本発明の三次元観察状態測定装置は、例えば図6に示すように、三次元映像装置により形成された三次元画像12の座標値を取得する画像座標取得部20と、被検眼14の視線方向を検出する視線方向検出部30と、被検眼14の屈折力を測定する屈折力測定部34と、視線方向検出部30で検出された視線方向から、被検眼14の注視点位置を求める注視点位置測定部32と、注視点位置測定部32で得られた注視点位置と、当該注視点位置を求めた時点の視線方向における三次元画像12の座標値とを比較する第1の座標比較部40と、屈折力測定部34で得られたピント位置と、ピント位置を求めた時点の視線方向における三次元画像12の座標値とを比較する第2の座標比較部42とを備えている。
【0013】
上記三次元観察状態測定装置において、好ましくは、三次元画像12は、二次元の左右画像を有するステレオ画像を用いて、三次元映像装置10により形成され、画像座標取得部20は、三次元画像12の座標値を前記ステレオ画像の画像データから求める構成とするとよい。
【0014】
上記三次元観察状態測定装置において、好ましくは、さらに被検眼14の前に配置され、赤外反射するダイクロイックミラー16を備え、屈折力測定部34が、被検眼14のダイクロイックミラー16を含む反射光軸上に配置される構成とすると、視線方向検出部30、屈折力測定部34等の眼特性を測定する装置を並列に設ける場合の装置配列がコンパクト化される。
【0015】
上記三次元観察状態測定装置において、例えば図6に示すように、好ましくは、さらに、被検眼14の瞳孔径を測定する瞳孔径測定部37、または、被検眼14のまばたきを測定するまばたき測定部38を備える構成とすると、視聴者に生ずる疲労徴候としての眼の生理的機能を測定できる。
【0016】
上記三次元観察状態測定装置において、好ましくは、被検眼の屈折力と視線方向の経時変化を測定するように構成されていると、座標比較部40や第2の座標比較部42の求めた偏差の経時変化を用いて、視聴者に生ずる疲労メカニズムを観察できる。
【0017】
上記目的を達成する本発明のコンピュータを用いた三次元観察状態測定方法は、例えば図2R>2に示すように、画像座標取得部20により三次元映像装置10により形成された三次元画像の座標値を取得し(S102)、視線方向検出部30により被検眼14の視線方向を検出し(S108)、注視点位置測定部32により、視線方向検出部30で検出された視線から、被検眼14の注視点位置を求め(S110)、注視点位置測定部32で得られた注視点位置と、当該注視点位置を求めた時点の視線方向における三次元画像12の注視座標値とを比較する(S114、S116)工程を有している。
【0018】
上記目的を達成する本発明のコンピュータを用いた三次元観察状態測定方法は、例えば図4R>4に示すように、画像座標取得部20により三次元映像装置10により形成された三次元画像の座標値を取得し(S202)、視線方向検出部30により被検眼14の視線方向を検出し(S208)、屈折力測定部34により被検眼14の屈折力を測定すると共にピント位置を求め(S212)、屈折力測定部34で得られたピント位置と、当該ピント位置を求めた時点の視線方向における三次元画像の注視座標値とを比較する(S214、S216)工程を有している。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面により説明する。図1は本発明の第1の実施の形態を説明する構成ブロック図である。三次元観察状態測定装置としての眼特性計測装置は、ダイクロイックミラー16、画像座標取得部20、視線方向検出部30、注視点位置測定部32、座標比較部40並びに視線方向画像座標演算部41を備えているもので、被検者が三次元映像装置10により形成された三次元画像12を視聴している状態を計測するものである。
【0020】
三次元映像装置10は、三次元画像12を形成するもので、偏光メガネを使用するタイプと使用しないタイプとがある。偏光メガネを使用するタイプは、直交する偏光成分を持つ独立な映像を、偏光メガネを用いて左右眼で見るものである。ここで独立な映像としては、被検者が偏光メガネを使用して独立な映像を視聴したとき三次元映像に見えるように、基線間隔を隔てて設置されたカメラであって、同一特性を有するカメラによって撮影された対象物の左右画像が用いられる。偏光メガネを使用しないタイプは、例えば無限遠結像系の変形二次元配置と拡散板による垂直表示角度範囲の融合により、多数の水平視差画像を表示可能とする構成である。偏光メガネを使用しないタイプは、三次元映像装置だけで被検者が独立な映像を視聴したとき三次元映像に見える。
【0021】
ダイクロイックミラー(Dichroic Mirror)16は、薄膜による光の干渉を利用して、特定波長領域の光のみを反射して、残りの波長領域の光を透過する鏡である。ここでは、ダイクロイックミラー16は、被検眼14と三次元画像12との間に設置され、視線方向検出部30で放射される赤外光を被検眼14方向に反射すると共に、三次元画像12から放射される可視光を透過している。
【0022】
画像座標取得部20は、三次元画像12の座標値を取得するもので、例えば被検眼14を基準点として三次元映像装置10により形成される三次元画像12の方向、距離並びに結像面の凸凹を測定する。画像座標取得部20は、巻尺や標尺のような測距儀でもよく、また通常の視力検査のように被検眼14から一定距離(例えば2m)離れた位置に所定寸法(例えば20インチ)の三次元画像12の表示面を設置するような設置基準値であってもよい。さらに、画像座標取得部20は、三次元画像12の座標値における細部の凸凹を三次元映像装置10により形成されるステレオ画像の画像データから求めてもよい。
【0023】
視線方向検出部30は、被検眼14の視線方向を検出するもので、代表的な検出原理としては角膜検出方式と強膜反射方式とがある。角膜検出方式は、角膜上に赤外LED(Light Emitting Diode)の放射光による虚像を作り、眼球の移動に従ってその虚像が移動するのを検出する方式である。強膜反射方式は、眼に弱い赤外線を照射し、赤外光の反射光量が黒目と白目で異なることを利用する。
【0024】
注視点位置測定部32は、視線方向検出部30で検出された視線から、被検眼14の注視点位置を求める。被検者は左右眼で三次元画像12を視聴しているので、視線方向検出部30で左右の被検眼14の視線方向を検出し、左右の視線方向の交点を求めることで、被検眼14の注視点位置を求めることができる。
【0025】
視線方向画像座標演算部41は、注視点位置測定部32によって注視点位置を求めた時点の視線方向における三次元画像12の座標値との交点である注視座標値を演算する。即ち、三次元画像12には映像としての広がりがあるので、視線方向画像座標演算部41は、視線方向検出部30で検出された左右の被検眼14の視線方向情報を用いて、左右の被検眼14で注視点に相当する画素位置の座標値を求める。なお、左右の被検眼14の視線方向と三次元画像12とが実質的に同一画素でない場合には、左右の被検眼14の一方しか三次元画像12の特定画素を注視していない状態と考えられるので、視線方向画像座標演算部41において、有効な側の眼の視線方向のみを採用するとか、左右の被検眼14により三次元画像12を見ている方向の中間位置を採用する等適宜の措置をとるとよい。
【0026】
座標比較部40は、注視点位置測定部32で得られた注視点位置と、視線方向画像座標演算部41で取得した三次元画像12の座標値とを比較して、両者の乖離量を求める。そして、座標比較部40は、被検者の疲労度を識別する為に設定した基準値に対して、注視点と注視座標値との乖離量を比較して、左右の被検眼14が健康な状態にあるか疲労した状態にあるかの判定を行なう。なお、座標比較部40に設定してある基準値は、集団検診等で標準的な被検者の疲労度を用いて設定するとよい。また、個別の被検者向けに設定する場合には、当該個人の被検者の検査履歴を用いて設定するとよい。
【0027】
このように構成された装置の動作を次に説明する。図2は図1の装置を用いた三次元観察状態測定方法の一例を示すフローチャートである。まず、三次元映像装置10を三次元観察状態測定装置の近傍に設置する(S100)。そして、画像座標取得部20により三次元映像装置10により形成された三次元画像の座標値を取得する(S102)。次に、被検者を三次元観察状態測定装置の所定位置、例えばダイクロイックミラー16と三次元映像装置10の光軸上に案内する(S104)。そして、三次元映像装置10により三次元画像12を映写する(S106)。
【0028】
すると、三次元観察状態測定装置は、視線方向検出部30により被検眼14の視線方向を検出し(S108)、注視点位置測定部32により、視線方向検出部30で検出された左右の被検眼14の視線方向から、被検眼14の注視点位置を求める(S110)。また、視線方向画像座標演算部41により、視線方向検出部30によって注視点位置を求めた時点の視線方向であって、三次元画像12の座標値との交点である注視座標値を演算する(S112)。
【0029】
そして、座標比較部40は、座標注視点位置測定部32で得られた注視点位置と、S112で求めた注視座標値とを比較して、乖離量を演算する(S114)。そして、座標比較部40は、乖離量が基準値よりも大きいか比較して(S116)、大きい場合には被検眼の疲れが大きくなっていると判断して(S118)、被験者が三次元画像を視聴することを停止させて、休息を取るように指示する(S120)。他方、S116で小さい場合には、被検眼の疲れは小さいと判断できるから、被検者による三次元画像12の視聴を許可する(S122)。被検者は、S106に戻って三次元画像12の視聴を継続してもよい。
【0030】
図3は本発明の第2の実施の形態を説明する構成ブロック図である。三次元観察状態測定装置は、ダイクロイックミラー16、ハーフミラー8、画像座標取得部20、視線方向検出部30、屈折力測定部34、視線方向調整部36、視線方向画像座標演算部41並びに第2座標比較部42を備えている。なお、図3において、図1で説明した構成要素と同一要素に関しては同一符号を付して、説明を省略する。
【0031】
図において、ハーフミラー8は、ダイクロイックミラー16で反射された左右の被検眼14からの赤外光を、屈折力測定部34と視線方向検出部30とに分枝する。屈折力測定部34は、被検眼14の屈折力を測定するもので、所謂他覚式の眼屈折力測定装置が用いられる。他覚式の眼屈折力測定装置では、例えば被検眼の眼底に測定ターゲット像を投影し、この測定ターゲット像の合焦状態に基づいて被検眼の屈折度を測定すると共に、眼の屈折力より視軸上のピント位置を求めることができる。この場合に、被検眼14は左右眼のうち片側だけでもよく、また左右両側の眼を用いる場合には、輻輳角を用いてピント情報を更に精緻に求めることができる。ここで、輻輳(vergence)とは、見ようとする対象物に両眼の視軸を集中させることを言い、両眼の視軸のなす角度を輻輳角という。
【0032】
視線方向調整部36は、視線方向検出部30によって眼球の向きも視線方向測定と同時に観測し、視線方向の動きに合わせてダイクロイックミラー16と屈折力測定部34を同時に回転・移動させ、光軸をあわせる。視線方向調整部36により、屈折力測定部34の測定する光軸が眼球運動によってずれてしまうのを防止できる。第2の座標比較部42は、屈折力測定部34で得られたピント位置と、視線方向画像座標演算部41で取得した三次元画像12の座標値とを比較して、両者の乖離量を求める。そして、第2の座標比較部42は、被検者の疲労度を識別する為に設定した基準値に対して、ピント位置と注視座標値との乖離量を比較して、左右の被検眼14が健康な状態にあるか疲労した状態にあるかの判定を行なう。
【0033】
このように構成された装置の動作を次に説明する。図4は図3の装置を用いた三次元観察状態測定方法の一例を示すフローチャートである。まず、三次元映像装置10を三次元観察状態測定装置の近傍に設置する(S200)。そして、画像座標取得部20により三次元映像装置10により形成された三次元画像の座標値を取得する(S202)。次に、被検者を三次元観察状態測定装置の所定位置、例えばダイクロイックミラー16と三次元映像装置10の光軸上に案内する(S204)。そして、三次元映像装置10により三次元画像12を映写する(S206)。
【0034】
すると、三次元観察状態測定装置は、視線方向検出部30により被検眼14の視線方向を検出し(S208)、視線方向画像座標演算部41により、視線方向検出部30によって注視点位置を求めた時点の視線方向であって、三次元画像12の座標値との交点である注視座標値を演算する(S210)。また、屈折力測定部34により、被検眼14のピント位置を求める(S212)。この場合に、屈折力測定部34により測定される輻輳角の情報も加味するとよい。
【0035】
そして、第2の座標比較部42は、屈折力測定部34で得られたピント位置と、S210で求めた注視座標値とを比較して、乖離量を演算する(S214)。
次に、第2の座標比較部42は、乖離量が基準値よりも大きいか比較して(S216)、大きい場合には被検眼の疲れが大きくなっていると判断して(S218)、被験者が三次元画像を視聴することを停止させて、休息を取るように指示する(S220)。他方、S216で小さい場合には、被検眼の疲れは小さいと判断できるから、被検者による三次元画像12の視聴を許可する(S222)。被検者は、S206に戻って三次元画像12の視聴を継続してもよい。
【0036】
図5は図4のS210の詳細を説明するフローチャートである。まず、屈折力測定部34により赤外光を被検眼14に入射する(S252)。そして、屈折力測定部34は、リング状指標を眼底に投影し、粗アライメントに続いて精密アライメントを行なう(S254、S256)。そして、ダイクロイックミラー16を輻輳に応じて変化させる(S258)。そして、屈折力測定部34は、眼底と共役関係に配置される眼底像検出部で眼底上に投影されたリング状の形状を測定し、その形状の変形を測定して屈折力を求める(S260)。更に、屈折力測定部34は、瞳孔径や必要な場合には輻輳も測定できる。屈折力測定部34は、測定した屈折力から眼が焦点を合わせているピント位置を求めることができる。そして、測定時間が終了したか判断し(S262)、未了であればS256に戻って測定を継続する。終了であれば、戻しとする。
【0037】
図6は本発明の第3の実施の形態を説明する構成ブロック図である。第3の実施の形態においては、第1の実施の形態における座標比較部40と、第2の実施の形態における第2の座標比較部42を組合せたものである。さらに、ハーフミラー19が、ダイクロイックミラー16と三次元画像12との間に設置され、被検眼14の像を瞳孔径測定部37とまばたき測定部38に導く。瞳孔径測定部37は、瞳孔径を測定する。まばたき測定部38は、被検眼14のまばたきの回数を測定する。疲労判定部39は、瞳孔径測定部37が測定した瞳孔径と、被検者が近いところの像を見るときの瞳孔径の基準値と比較して、瞳孔収縮が正常に行なわれるか判断することで疲労の判定を行なう。また、疲労判定部39は、まばたき測定部38が測定した被検眼14のまばたきの回数と、眼が疲労していない状態の標準的なまばたきの回数と比較して、まばたきの回数が低下している場合に疲労状態と判定する。
【0038】
このように構成すると、視線方向画像座標演算部41で取得した三次元画像12の座標値に対して、注視点位置測定部32で得られた注視点位置と、屈折力測定部34で得られたピント位置の二つの情報を用いて被検眼の疲労度が測定でき、測定の信頼性がます。
【0039】
また、健康な状態の眼の生理的機能としては、近いところを見るときには、瞳孔が小さくなる傾向が存在しているが、瞳孔径測定部37による瞳孔径測定によって、瞳孔の大小を調節する機能が正しく応答しているか判断できる。また、健康な状態の眼の生理的機能としては、一定頻度でまばたきを行なっているが、眼精疲労の状態ではまばたきの回数が減少して、角膜の表面が乾燥してしまうために、眼の疲労度が更に増す現象が知られている。そこで、まばたき測定部38により、被検者のまばたきの回数を測定して、眼の疲労徴候を観測すると良い。
【0040】
なお、上記の実施の形態においては、三次元観察状態測定装置として視線方向検出部や屈折力測定部を用いて、数分程度の比較的短時間の視力測定により被検眼の疲労度を測定しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば数時間程度の比較的長時間における注視点位置やピント位置の経時変化情報を用いて、疲労度の経時変化を計測するようにしてもよい。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の三次元観察状態測定装置によれば、三次元映像装置により形成された三次元画像の座標値を取得する画像座標取得部と、被検眼の視線方向を検出する視線方向検出部と、視線方向検出部で検出された視線から、前記被検眼の注視点位置を求める注視点位置測定部と、注視点位置測定部で得られた注視点位置と、当該注視点位置を求めた時点の視線方向における三次元画像の注視座標値とを比較する座標比較部を備える構成としているので、3D映像機器を視聴者が視聴する場合に、視聴者に生ずる疲労メカニズムを探索できる。
【0042】
また、本発明の三次元観察状態測定装置によれば、三次元映像装置により形成された三次元画像の座標値を取得する画像座標取得部と、被検眼の視線方向を検出する視線方向検出部と、被検眼の屈折力を測定する屈折力測定部と、屈折力測定部で得られた前記被検眼のピント位置と、当該ピント位置を求めた時点の視線方向における三次元画像の注視座標値とを比較する第2の座標比較部を備える構成としているので、3D映像機器を視聴者が視聴する場合に、視聴者の被検眼における屈折力、輻輳、瞳孔径等の眼特性を容易に計測できる。また、被検眼のピント位置は左右の片眼でも測定できるので、注視点位置測定部のように注視点位置を求めるために必ず左右両眼を必要とする場合に比較して、光学系を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態を説明する全体構成ブロック図である。
【図2】図1の装置を用いた三次元観察状態測定方法の一例を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2の実施の形態を説明する全体構成ブロック図である。
【図4】図3の装置を用いた三次元観察状態測定方法の一例を示すフローチャートである。
【図5】図4のS210の詳細を説明するフローチャートである。
【図6】本発明の第3の実施の形態を説明する構成ブロック図である。
【符号の説明】
10 三次元映像装置
12 三次元画像
14 被検眼
20 画像座標取得部
30 視線方向検出部
32 注視点位置測定部
34 屈折力測定部
37 瞳孔径測定部
38 まばたき測定部
40、42 座標比較部
41 視線方向画像座標演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元映像装置により形成された三次元画像の座標値を取得する画像座標取得部と;
被検眼の視線方向を検出する視線方向検出部と;
前記視線方向検出部で検出された視線から、前記被検眼の注視点位置を求める注視点位置測定部と;
前記注視点位置測定部で得られた注視点位置と、当該注視点位置を求めた時点の視線方向における三次元画像の注視座標値とを比較する座標比較部と;を備える三次元観察状態測定装置。
【請求項2】
三次元映像装置により形成された三次元画像の座標値を取得する画像座標取得部と;
被検眼の視線方向を検出する視線方向検出部と;
前記被検眼の屈折力を測定する屈折力測定部と;
前記屈折力測定部で得られた前記被検眼のピント位置と、当該ピント位置を求めた時点の視線方向における三次元画像の注視座標値とを比較する第2の座標比較部と;を備える三次元観察状態測定装置。
【請求項3】
三次元映像装置により形成された三次元画像の座標値を取得する画像座標取得部と;
被検眼の視線方向を検出する視線方向検出部と;
前記被検眼の屈折力を測定する屈折力測定部と;
前記視線方向検出部で検出された視線方向から、前記被検眼の注視点位置を求める注視点位置測定部と;
前記注視点位置測定部で得られた注視点位置と、当該注視点位置を求めた時点の視線方向における三次元画像の注視座標値とを比較する第1の座標比較部と;
前記屈折力測定部で得られたピント位置と、ピント位置を求めた時点の視線方向における三次元画像の注視座標値とを比較する第2の座標比較部と;を備える三次元観察状態測定装置。
【請求項4】
前記三次元画像は、二次元の左右画像を有するステレオ画像を用いて、三次元映像装置により形成され;
前記画像座標取得部は、三次元画像の座標値を前記ステレオ画像の画像データから求める;
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の三次元観察状態測定装置。
【請求項5】
前記三次元観察状態測定装置において、さらに被検眼の前に配置され、赤外反射するダイクロイックミラーを備え;
前記屈折力測定部が、前記被検眼の前記ダイクロイックミラーを含む反射光軸上に配置された;
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の三次元観察状態測定装置。
【請求項6】
前記三次元観察状態測定装置において、さらに、前記被検眼の瞳孔径を測定する瞳孔径測定部、または、前記被検眼のまばたきを測定するまばたき測定部を備えた;
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の三次元観察状態測定装置。
【請求項7】
被検眼の屈折力と視線方向の経時変化を測定するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の三次元観察状態測定装置。
【請求項8】
画像座標取得部により三次元映像装置により形成された三次元画像の座標値を取得し;
視線方向検出部により被検眼の視線方向を検出し;
注視点位置測定部により、前記視線方向検出部で検出された視線方向から、前記被検眼の注視点位置を求め;
前記注視点位置測定部で得られた注視点位置と、当該注視点位置を求めた時点の視線方向における三次元画像の注視座標値とを比較する;
コンピュータを用いた三次元観察状態測定方法。
【請求項9】
画像座標取得部により三次元映像装置により形成された三次元画像の座標値を取得し;
視線方向検出部により被検眼の視線方向を検出し;
屈折力測定部により前記被検眼の屈折力を測定すると共にピント位置を求め;前記屈折力測定部で得られたピント位置と、当該ピント位置を求めた時点の視線方向における三次元画像の注視座標値とを比較する;
コンピュータを用いた三次元観察状態測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2004−298289(P2004−298289A)
【公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−92920(P2003−92920)
【出願日】平成15年3月28日(2003.3.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成14年度、総務省、戦略的情報通信研究開発推進制度「人に優しい三次元情報ディスプレイの開発と実用化に関する研究」、産業再生法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)