説明

上掛け用流動状食品

【課題】解決しようとする問題点は、カレーやシチュー等の上掛け用流動状食品を常温で用いた場合に、粘性等の食感がわるくなる点である。
【解決手段】アミロースを実質的に含まないアミロペクチン系澱粉及び微細食物繊維を含み、粘度1000〜6000mPa・s(25℃、B型粘度計で測定した値)であることを特徴とする上掛け用流動状食品。温かいご飯、パン、麺類等に常温のまま掛けて食べるものである上記の上掛け用流動状食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上掛け用流動状食品に関し、特に温かいご飯、パン、麺類等に常温のまま掛ける用途等に適した上掛け用流動状食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、カレー、シチュー等を調理するための固形ルウが市販されており、野菜及び肉類等の具材を炒め、加水して煮込んだ後、固形ルウを加えてさらに煮込むという方法でカレー、シチュー等を調理する。これらは、温かい状態で食するもので、常温で食する場合は、固形ルウの原料として用いられている高融点の固体脂や小麦粉の澱粉が固まって、ボテボテ感やザラツキ感のある食感になってしまう。
【0003】
一方、本出願人は、冷蔵〜常温といわれる5〜25℃程度の温度で喫食するのに適した、加熱調理せずにそのまま喫食可能なカレーやシチュー等の流動状ルウ食品を発明し、特許出願した(特許文献1〜3)。上記発明によれば、水、室温で液状の油脂、α化した澱粉及び増粘物質等を含んで、冷蔵〜常温で喫食する際の口溶けがよい流動状のカレー、シチュー等を提供することができる。
本発明者らは、前記の先行技術とは別に、温かいご飯、パン、麺類等に常温のまま掛ける用途に適した、上掛け用のカレー、シチュー等を新規に提案する。この場合には、当該用途において、カレー、シチュー等を口溶けがよい粘性としたり、上掛け材として、ご飯等の上に適当に拡がって層状に載りやすく、ご飯等にしみ込んでしまうことがない物性とする等の改善が求められる。
【特許文献1】特開平9−206034号公報
【特許文献2】特開平9−206036号公報
【特許文献3】特開平9−206037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、カレーやシチュー等の上掛け用流動状食品を常温で用いた場合に、粘性等の食感がわるくなる点である。
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく、鋭意研究を進めた結果、次の知見を得るに至った。
1)アミロースを実質的に含まないアミロペクチン系澱粉(アミロペクチン含有量100質量%)及び微細食物繊維を粘性付与材として含み、粘度1000〜6000mPa・sの上掛け用流動状食品を調製する。これにより、常温での保存中乃至使用時に、離水が抑制され、粘性が安定して、温かいご飯、パン、麺類等に常温のまま掛けると、口溶けがよい粘性の食感となる。また、上掛け材(トッピング材)として、ご飯等の上に適当に拡がって、層状に載りやすい物性となる。つまり、上掛け材がご飯等にほぼしみ込んでしまうことがない。
【0006】
2)上掛け用流動状食品に、特定の細かい粒径の固形食品を特定量含むと、前記の流動状食品の粘性と固形食品の粒感が合わさって、口溶けがよい物性の食感となり、上掛け材としてご飯等の上に層状に載りやすい。さらに、低融点の油脂を特定量含むことでも、口溶けのよい粘性の食感となる。
3)上記の上掛け用流動状食品は、温かいご飯、パン、麺類等に常温のまま掛け、上掛け材として食品の上に層状に載せ、そのまま食べることができる新規喫食形態のものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記の知見に基づいて成されたもので、アミロースを実質的に含まないアミロペクチン系澱粉及び微細食物繊維を含み、粘度1000〜6000mPa・s(25℃、B型粘度計で測定した値)であることを特徴とする上掛け用流動状食品を主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上掛け用流動状食品は、種々の食品に常温のまま掛けて、口溶けがよい粘性の食感となり、新規喫食形態の上掛け材となるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の上掛け用流動状食品は、アミロースを実質的に含まないアミロペクチン系澱粉及び微細食物繊維を含み、粘度1000〜6000mPa・s(25℃、B型粘度計で測定した値)のものである。
1.アミロペクチン系澱粉
アミロペクチン系澱粉は、アミロースを実質的に含まない澱粉であって、通常アミロペクチン含有量が100%の澱粉である。アミロペクチン系澱粉としては、小麦澱粉、米澱粉、コーンスターチが挙げられ、これらを単独で、あるいは2つ以上組合わせて含むことができる。アミロペクチン系澱粉は、所謂α化澱粉や加工澱粉等の加工処理を施したものでもよいが、α化処理を施していない澱粉を好適に使用し得る。
上記のアミロペクチン系澱粉を含むことで、常温での保存中乃至使用時に、離水が抑制され、粘性が安定して、上掛け用流動状食品を冷蔵〜常温で喫食する際の良好な口溶けを達成することができる。また、上掛け材としてご飯等の上に層状に載りやすい物性を達成することができる。以上の性能を得る上で、種類の違うアミロペクチン系澱粉の2つ以上を併用することが望ましい。
【0010】
前記のアミロペクチン系澱粉は、流動状食品中に乾燥物換算で1〜4質量%(以降質量%を%と略称する)、好ましくは1.5〜3.5%を含むのが望ましい。1%に満たないと、流動状食品を冷蔵〜常温で喫食する際の良好な口溶けと、上掛け材の性能が達成されにくい(上掛けした食品に載らず、しみ込んでしまう)場合があり、一方4%を超えると、流動状食品の粘度が極端に上がって、口溶け、食感がわるくなる場合がある。前記の範囲の含有量により、流動状食品を冷蔵〜常温で喫食する際の良好な口溶けと、上掛け材の性能とを達成することができる。
【0011】
2.微細食物繊維
微細食物繊維は、水不溶性食物繊維の微細な粒子、糸状物等である。水不溶性食物繊維としては、玉葱ペースト、リンゴパルプ、ポテトペースト、トマトペースト、小麦ファイバー、ニンジンパルプ、生姜、ガーリック等からなる群から選択される少なくとも1種が好適に使用できる。セルロース、ヘミセルロース、水不溶性海草多糖類、水不溶性ペクチン質、キチン、キトサン、及びリグニンからなる群から選択される少なくとも1種も使用できる。結晶セルロースなどの高純度のものも使用できる。微細食物繊維は、単独であるいは様々な組合せで、あるいは他の原料との混合物等として含むことができる。通常、微細食物繊維の粒子は粒径50〜500μm程度のものが、糸状物は長さ0.3〜3mm程度のものが好適である。
【0012】
微細食物繊維は、流動状食品中に乾燥物換算で1〜7%、好ましくは2〜6%を含むのが望ましい。微細食物繊維の含有量が上記の範囲を外れると、流動状食品を冷蔵〜常温で喫食する際の良好な口溶けと、上掛け材の性能が達成されにくい場合がある。前記の範囲の含有量により、流動状食品を冷蔵〜常温で喫食する際の良好な口溶けと上掛け材の性能を達成することができる。
【0013】
3.固形食品
上掛け用流動状食品は、粒径2〜15mm程度、好ましくは3〜10mm程度の固形食品を、生の原料換算で5〜50%、好ましくは10〜40%含むことができる。上記の粒径、含有量で固形食品を含むことで、流動状食品の粘性と固形食品の粒感が合わさって、口溶けがよい物性の食感となり食べやすく、上掛け材としてご飯等の上に層状に載りやすい物性となる。
固形食品としては、野菜、果実、豆類、きのこ類、肉類、魚介類、チーズ、大豆たんぱくが挙げられ、任意の組合せで含むことができる。固形食品は粉砕、成形等で前記の粒径にすることができる。勿論、前記の粒径を超える固形食品を含むことも何ら差し支えはない。なお、本明細書において、流動状食品中の各原料の含有量は、前記の粒径を超える固形食品を除いた系中における含有量である。
【0014】
4.油脂
また、上掛け用流動状食品に、融点25℃以下の油脂を1〜10%、好ましくは2〜7%含むことができる。上記の低融点の油脂を特定量含むことで、流動状食品が口溶けのよい粘性の食感となる。また、アミロペクチン系澱粉との併用で、流動状食品に光沢とてり感を付与することができる。
5.その他の原料
さらに、上掛け用流動状食品に、スパイス、前記のアミロペクチン系澱粉以外の澱粉、増粘材、調味料、塩類、糖類、乳原料、乳化材、香料等を含むことができる。
スパイスを含む場合は、クミン、コリアンダー、クローブを含み、カルダモンを含まないかその含有量を減量することが望ましい。アミロペクチン系澱粉と微細食物繊維を含み、あるいはさらに低融点油脂を含む流動状食品では、常温でスパイスの香味をより感じやすくなり、前記の仕様でスパイスを用いることで、すっきりとして、後味が残りすぎない流動状食品の風味を達成することができる。
【0015】
6.上掛け用流動状食品の調製
上掛け用流動状食品は、以上の原料を混合し、必要によりクッキング等の加熱処理、殺菌処理等を施して調製することができる。原料配合、製法等は、流動状食品が前記の構成と性能を達成し得るように適宜構成される。
ここで、上掛け用流動状食品は、品温25℃においてB型粘度計で測定した値である粘度が1000〜6000mPa・s、好ましくは2000〜5000Pa・sとする。粘度測定はNO.4のローターを用いて、回転数60rpmで行えばよい。粘度は固形食品を除いた系の粘度である。
前記の原料と粘度との組合わせによって、流動状食品が常温での保存中乃至使用時に、離水が抑制され、粘性が安定して、温かいご飯等に常温のまま掛けると、口溶けがよい粘性の食感となる。また、上掛け材として、ご飯等の上に層状に載りやすい物性となる。つまり、喫食の間、ご飯等の上に流動して適当に拡がって載り、ご飯等にしみ込んでしまない状態が達成される。これにより、温かいご飯等から流動状食品へ熱が伝わりやすくなる作用も達成される。前記所望の粘度にするために、上掛け用流動状食品の水分含量を73〜88%にすることが望ましい。
流動状食品を柔軟性のあるチューブ状、袋状等の容器に入れておけば、押し出す等の操作で容易に容器から出して、対象食品に上掛けできるので好ましい。
【0016】
7.上掛け用流動状食品の形態
上掛け用流動状食品は、温かいご飯、パン、パスタ、うどん等の麺類等に常温のまま掛けて食べる形態のものとすることができる。この場合に、ご飯、パン、麺類等の一食分に丁度よい量の上掛け用流動状食品を容器に入れて供することができる。例えば、流動状食品を一食分60〜90gとする(例えば一食分のご飯約120〜180gに上掛け用として)。これにより、一食分のご飯等に流動状食品を上掛けして、簡単に食べることができ、準備と食器の片付け・洗浄が簡便である。食品の種類は、カレー、シチュー、ハヤシ、丼、あんかけが挙げられるが、これらに限らない。
以下、本発明について実施例に基づいて説明するが、本発明はこれに限らず種々変形応用が可能である。
【実施例】
【0017】
実施例1
(原料)
ワキシコーンスターチ(アミロペクチン含有量100%)3質量部(以降部と略称する)
ソテーオニオン 10部
リンゴパルプ 8部
(ソテーオニオンとリンゴパルプにより乾燥物換算で約4部の微細食物繊維が含まれる)
粒径5〜10mm程度に粉砕した馬鈴薯と人参 15部
パーム油(融点約10℃) 2部
スパイス 1部
(クミン、コリアンダー、ターメリック、フェヌグリーク、クローブの混合スパイス)
食塩 1部
砂糖 2部
水 59部(以上計100部)
【0018】
上記の原料を加熱釜に入れて、約90℃で20分間加熱混合後、75gずつレトルトパウチに充填密封し、120℃で20分間レトルト殺菌処理してレトルトカレーを調製した。上記カレー(固形食品の馬鈴薯と人参は除く)は、品温25℃におけるB型粘度計(ローターNO.4、回転数60rpm)で測定した粘度が約3000mPa・sのものであった。以下の例において、カレーの粘度は同様に測定した値を示す。
上記のレトルトカレーを常温で保存し、炊飯した米飯約150gに常温のまま掛けて食したところ、滑らかな粘度と口どけを有し、スパイス等の風味が十分に醸し出された高品質のものであった。カレーを米飯に上掛けした際に、カレーがご飯の上に拡がって層状に載り、光沢とてり感があり、喫食の間を通じてこの状態が維持され、カレーがご飯にしみ込まず、さっぱりして食べやすいものであった。
【0019】
比較例1(アミロペクチン系澱粉以外の澱粉を含む場合)
コーンスターチ(アミロペクチン含有量約75%、アミロース含有量約25%)3部を用いた以外は、実施例1と同様の手順でレトルトカレーを調製した。上記カレーの粘度は約3000mPa・sであった。
実施例1と同様にして、保存し食したところ、カレーから水が分離しており(離水)、分離した水がご飯にしみ込んでしまい、上掛けした外観がわるいものであった。また、べたついた食感で口溶けがわるく、食べにくいものであった。
【0020】
実施例2〜5(アミロペクチン系澱粉及びリンゴパルプの含有量が異なる場合)
ワキシコーンスターチ、ソテーオニオン、リンゴパルプ及び水を以下の含有量とした以外は、実施例1と同様の手順でレトルトカレーを調製した。
ワキシコーンスターチ ソテーオニオン リンゴパルプ 水
実施例2 1部 2.5部(0.5部) 2部(0.5部) 72.5部
実施例3 1部 17部(3.5部) 14部(3.5部) 46部
実施例4 4部 2.5部(0.5部) 2部(0.5部) 69.5部
実施例5 4部 17部(3.5部) 14部(3.5部) 43部
(括弧内はソテーオニオンとリンゴパルプによる乾燥物換算での微細食物繊維量)
【0021】
各々のカレーの粘度は、実施例2が約1000mPa・s、実施例3が約2200mPa・s、実施例4が約4500mPa・s、実施例5が約6000mPa・sであった。
各々のレトルトカレーを実施例1と同様にして、保存し食したところ、実施例2のものは、実施例1のものに比べて粘度が低く、カレーが少し米飯にしみ込んだが、カレーがご飯の上に拡がって層状に載り、光沢とてり感があり、喫食の間を通じてこの状態が維持された。また、好ましい口どけとスパイス等の風味を有し、さっぱりして食べやすいものであった。
実施例3のものは、実施例1のものに比べて粘度が低く、カレーが少し米飯にしみ込んだが、実施例2のものとほぼ同等の上掛け性、口どけ、風味のものであった。
実施例4のものは、実施例1のものに比べて粘度が高く、少し離水がみられ、カレーが少し米飯にしみ込んだが、上掛け性はよいものであった。また、やや糊っぽい食感であるが口どけはよく、スパイス等の風味が良好で、さっぱりして食べやすいものであった。
実施例5のものは、実施例4のものに比べてさらに粘度が高く、カレーが米飯にしみ込まず、カレーがご飯の上に拡がって層状に載り、光沢とてり感があり、喫食の間を通じてこの状態が維持された。また、実施例4のものとほぼ同等の口どけ、風味のものであった。
【0022】
実施例6(低融点油脂を含まない場合)
パーム油を用いず、水61部を用いた以外は、実施例1と同様の手順でレトルトカレーを調製した。上記カレーの粘度は約3000mPa・sであった。
実施例1と同様にして、保存し食したところ、実施例1のものに比べて、光沢とてり感がないが、同等の上掛け性を有しており、やや風味にコクが欠け、糊っぽい食感であったが、適度な風味、粘度と口どけを有し、さっぱりして食べやすいものであった。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の上掛け用流動状食品は、温かいご飯、パン、麺類等に常温のまま掛ける用途等にも適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミロースを実質的に含まないアミロペクチン系澱粉及び微細食物繊維を含み、粘度1000〜6000mPa・s(25℃、B型粘度計で測定した値)であることを特徴とする上掛け用流動状食品。
【請求項2】
アミロペクチン系澱粉(乾燥物換算)1〜4質量%及び微細食物繊維(乾燥物換算)1〜7質量%を含む請求項1に記載の上掛け用流動状食品。
【請求項3】
アミロペクチン系澱粉が、小麦澱粉、米澱粉、コーンスターチからなる群から選択される1つ以上である請求項1又は2に記載の上掛け用流動状食品。
【請求項4】
種類の違うアミロペクチン系澱粉の2つ以上を含む請求項1〜3の何れか1項に記載の上掛け用流動状食品。
【請求項5】
微細食物繊維が、玉葱ペースト、リンゴパルプ、ポテトペースト、トマトペースト、小麦ファイバー、ニンジンパルプ、生姜、ガーリックからなる群から選択される1つ以上である請求項1〜4の何れか1項に記載の上掛け用流動状食品。
【請求項6】
粒径2〜15mm程度の固形食品を5〜50質量%含む請求項1〜5の何れか1項に記載の上掛け用流動状食品。
【請求項7】
融点25℃以下の油脂を1〜10質量%含む請求項1〜6の何れか1項に記載の上掛け用流動状食品。
【請求項8】
温かいご飯、パン、麺類等に常温のまま掛けて食べるものである請求項1〜7の何れか1項に記載の上掛け用流動状食品。