説明

上衣

【課題】耐水性、耐久性等に優れ、安価に得られ、CO発生量も多くないことから、環境に対する負荷も小さい上衣を提供する。
【解決手段】56〜80重量%の無機鉱物粉末及び44〜20重量%のポリエチレンを含有する樹脂組成物から得られた合成紙からなることを特徴とする上衣。このような上衣は、樹脂であるポリエチレンをバインダーとして使用し、更に、無機鉱物粉末を多く含有するものであることから、耐水性・耐薬品性に優れ、焼却においても有毒ガスを発生することもない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着衣状態で衣服の汚れや濡れを防止するために使用される上衣に関するものである。
【背景技術】
【0002】
美容室や理容室での調髪時や洗髪時に使用されるケープ、調理時に使用されるエプロン、実験作業時等に使用される白衣、各種作業時に使用される作業着、赤ちゃんが使用するよだれかけ、介護において使用される介護用エプロン等、着衣状態で汚れや水を使用する作業を行う場合、衣服の濡れや汚れを防ぐために、上衣を使用することがしばしば行われる。
【0003】
このような上衣は、充分な強度を有し、耐水性、耐久性等を有するものであることが必要とされており、織物を耐水加工したものや、柔軟性を有する軟質塩化ビニル等の樹脂製のものが使用されている。
【0004】
このような上衣においては、使用時に汚れが付きやすいものである。しかしながら、調髪時や洗髪時に使用されるケープは、同一のケープを複数の顧客において共用する形となってしまう。したがって、別の顧客が使用した際の口紅、ファンデーション等の化粧に由来する汚れ、染毛剤、パーマ液等の調髪時に使用される薬剤による汚れが付着したものを使用することになる場合がある。
【0005】
近年、衛生意識の高まりに伴い、このような汚れを嫌う顧客が増加している。しかしながら、従来の布製や樹脂性の上衣は高価なものとなるため使い捨てとすることができず、繰り返し使用することが必要とされる。更に、樹脂製のものは、焼却時の二酸化炭素排出量が多いため、CO排出規制が厳しくなっている現在においては好ましい素材ではない。
【0006】
エプロン、白衣、作業衣等も、使用時に汚れが付着しやすいものであることから、使い捨てにすることができれば、好ましいものである。更に、よだれかけや介護用エプロンも衛生面という点から、使い捨てにできることが好ましい。
【0007】
これらと同様のシート状形状を有する安価な素材としては紙を挙げることができる。しかし、紙は耐水性や耐薬品性が充分ではないという問題を有する。このため、上記問題を生じることのない、使い捨ての上衣の素材としては好ましいものではない。
【0008】
一方、特許文献1には、無機鉱物粉末、ポリエチレン及び添加剤からなる合成紙が記載されている。このような合成紙は、樹脂及び無機鉱物粉末からなるものであることから、耐水性・耐薬品性に優れるものである。更に、高価な原料を使用したり、複雑な工程によって得られたものではないことから、安価に使用できる。更に、樹脂の使用割合が低いことから、燃焼時のCO発生量も少ない。しかし、このような素材を上衣に使用することは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−277623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記に鑑み、耐水性、耐久性等に優れ、安価に得られ、CO発生量も多くないことから、環境に対する負荷も小さい上衣を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、56〜80重量%の無機鉱物粉末及び44〜20重量%のポリエチレンを含有する樹脂組成物から得られた合成紙からなることを特徴とする上衣である。
本発明の上衣は、理髪店若しくは美容室用のケープ、エプロン、白衣、作業着、よだれかけ、介護用エプロン又は毛染め用ケープであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の上衣によって、上述した種々の問題を改善し、耐水性、耐久性等に優れ、安価に得られ、CO発生量も多くないことから、使い捨てにしても環境に対する負荷が小さい上衣を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をより具体的に説明する。
本発明において使用する合成紙は、56〜80重量%の無機鉱物粉末及び44〜20重量%のポリエチレンを含有する樹脂組成物から得られるものである。
このような上衣は、樹脂であるポリエチレンをバインダーとして使用し、更に無機鉱物粉末を多く含有するものであることから、耐水性・耐薬品性に優れるものである。更に、原料として安価なものを使用することから、使い捨てとして使用してもコスト上それほど問題とならない。更に、焼却においても有毒ガスを発生することもないため、処分に際して特別な設備も必要としない。更に、無機鉱物粉末を多く含有することから、焼却時の二酸化炭素排出量も低減され、環境への負荷も少ないものである。
【0014】
本発明において使用する合成紙は、56〜80重量%の無機鉱物粉末を含有するものである。上記無機鉱物粉末が56重量%未満であると、無機鉱物粉末の量が少ないことによって、充分に有機物の含有量を低減することができず、CO削減への寄与が少なくなってしまう点で好ましくない。80重量%を超えるものは、製造が困難である点で好ましくない。
【0015】
このような無機鉱物粉末としては特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、マイカ、酸化亜鉛、ドロマイト、ガラス繊維、中空ガラスミクロビーズ、シリカ、チョーク、タルク、ピグメント、二酸化チタン、二酸化ケイ素、ベントナイト、クレー、珪藻土等を挙げることができる。これらのうち、2種以上を混合して使用するものであってもよい。なかでも、炭酸カルシウムを使用することが好ましい。
【0016】
本発明において使用する合成紙は、44〜20重量%のポリエチレン樹脂を含有するものである。ポリエチレン樹脂としては、特に限定されず、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン(すなわち、線状低密度ポリエチレン)、低密度ポリエチレン等を挙げることができ、又は、これらの混合物であってもよい。
【0017】
本発明において使用する合成紙は、必要に応じてその他の添加剤を使用してもよい。必要に応じて使用するその他の添加剤としては特に限定されず、例えば、カップリング剤、潤滑剤、分散剤、および静電防止剤を挙げることができる。
【0018】
上記カップリング剤としては、例えば、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランのようなシランカップリング剤等を挙げることができる。
【0019】
潤滑剤としては、N−オレイルパルミトアミドである。上記静電防止剤は、例えば、N,N−ビス (2−ヒドロキシエチル)ココアミン(N,N−bis(2−hydroxyethyl)cocoamine)またはN,N−ビス (2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン等を挙げることができる。
【0020】
これらの必要に応じて使用するその他の添加剤の配合量は特に限定されるものではないが、添加剤の合計量で2重量%以下であることが好ましい。
【0021】
上記合成紙は、2層以上の複層構造からなるものであってもよい。この場合、少なくとも1層の基材層が、56〜80重量%の無機鉱物粉末、44〜20重量%のポリエチレン及び必要に応じて添加するその他の添加剤を含有する樹脂組成物からなるものであることが好ましく、一部に上述した特定の配合の樹脂組成物からなるものでない層を有するものであってもよい。
【0022】
また、加工のための接着層を一部又は全部に形成したものであってもよい。この場合、接着層として、56〜80重量%の無機鉱物粉末、44〜20重量%のポリエチレン及び必要に応じて添加するその他の添加剤を含有する樹脂組成物に該当しない組成からなる層を片面又は両面に有するものであってもよい。
【0023】
本発明において使用する合成紙は、その紙の厚みを30〜300μmの範囲内に、その幅を0.2〜3.2mに、およびその密度が0.4〜1.4g/cmであるものを使用することができる。
【0024】
上記合成紙は、少なくとも一方の面に耐水層を備えるものであることが好ましい。本発明の用途は、水や油を含有する汚れ成分が浸透して着衣に汚れが付着することを防止する必要がある。このため、水等の浸透を防止するための層を設けてもよい。耐水層としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等の任意の公知の樹脂からなるものを使用することができ、接着剤によるラミネート、ヒートシールによるラミネート、多層押出等の任意の公知の方法によって形成したものを使用することができる。また、印刷加工性を向上させるために、片面又は両面にコロナ処理を施したものであってもよい。更に、上記合成紙は、その片面又は両面に印刷を施したものであってもよい。
【0025】
本発明の合成紙の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の方法によって製造することができる。例えば、上記原料を混合・押出という工程によって無機鉱物粉末、ポリエチレン及び必要に応じて添加するその他の添加剤とを混合し、これを押出成形し、更に同時二軸延伸することによって、得ることができる。これらの製造工程における製造条件は特に限定されるものではなく、通常の樹脂の加工方法に基づいて行うことができる。複層の合成紙を使用する場合は、多層押出による製造方法、単層の合成紙を製造した後に、コーティング剤を塗布して乾燥させる方法、2以上のフィルムを貼り合わせる方法等の公知の方法によって複層化されたものを使用することができる。
【0026】
また、このような合成紙としては市販のものを使用することもできる。上述した原料からなる市販の合成紙としては、株式会社TBM社が販売するKeeplusシリーズ等を挙げることができる。
【0027】
本発明は、このような合成紙を外衣に使用するものである。本明細書における「外衣」とは、通常の衣服ではなく、衣服の上から羽織って汚れや濡れや有害物質が衣服に付着することを防ぐために使用されるものを指す。具体的には、理髪店若しくは美容室用のケープ、エプロン、白衣、作業着、よだれかけ、毛染め用ケープ等を挙げることができる。なお、本明細書において、「ケープ」とは、各種の布状物をそのまま巻きつけて使用するものの他に、縫製、接着等の加工を行って袖のある形に成形した「クロス」と呼ばれるものも包含するものである。
また、家庭で毛染めをする場合の毛染め用ケープとして使用することもできる。このような毛染め用ケープは、染毛剤の付属品として販売することもできる。
【0028】
本発明の上衣は、用途に応じて所望の形状に加工されたものであってもよい。その形状としては特に限定されず、それぞれの用途において使用される公知の形状とすればよい。また、上衣の全体をすべて上記合成紙からなるものとする場合だけではなく、特に汚れや濡れが付着しやすい部分にのみ上記合成紙を使用したものであってもよい。例えば、エプロン、白衣、作業着等においては、前面部を覆う箇所において特に、汚れや濡れが生じやすいため、この部分のみ上記合成紙を使用したものであってもよい。また、当該合成紙のみを取りかえられるような形状の上衣としてもよい。
【0029】
上記上衣の製造に際しては、例えば、縫製、接着剤によるシール、ヒートシール等の任意の方法を必要に応じて適用することができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例によって更に詳細に本発明を説明する。なお、本発明は実施例によって限定されるものではない。
TBM社から販売されているKeeplus SAO100を1.1×1.5mの略長方形にカットし、これを美容室におけるケープとして使用し、カット、パーマ、染毛、洗髪を行った。これらの作業中において、薬液や水がケープを透過することはなく、衣類の汚れを生じなかった。更に、被験者にケープの使用感について確認したところ、特段の不快感はないとの回答を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の上衣は、安価でかつ従来のものと変わりのない性能を有するものであることから、使い捨てとして使用することができる。これによって、繰り返し使用されていた外衣についての汚れを気にすることなく使用することができる。更に、無機鉱物粉末の使用割合が高い合成紙を使用するものであることから、重量あたりの二酸化炭素排出量も少なく、環境負荷の小さいものである点からみても、使い捨て用途の外衣に特に適したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
56〜80重量%の無機鉱物粉末及び44〜20重量%のポリエチレンを含有する樹脂組成物から得られた合成紙からなることを特徴とする上衣。
【請求項2】
樹脂組成物は、更に、その他の添加剤を含有する請求項1記載の上衣。
【請求項3】
理髪店若しくは美容室用のケープ、エプロン、白衣、作業着、よだれかけ、介護用エプロン又は毛染め用ケープである請求項1又は2の上衣。
【請求項4】
合成紙は、少なくとも一方の面に耐水層を備える請求項1,2又は3記載の上衣。