説明

下半身下着

【課題】 血行障害要因を除去し、保温性が向上し、リンパ節への圧迫を解除することができる下半身下着を提供する。
【解決手段】 腹部を覆う前面側部及び臀部を覆う後面側部がシック部を介して連続した下半身下着において、ウエスト開口部の後側の縁部中央が人体の第2腰椎部の上縁部から第3腰椎の上縁部までの範囲内に位置するように設定し、前記ウエスト開口部の前側の縁部中央が第2腰椎から第3腰椎の間の部位よりも100〜150mmの範囲の下方に位置するように設定したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に負担をかけないショーツ状の下半身下着に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の下半身下着を構成部材の1つである後身頃は、人体の第2腰椎まで覆うような形状にはなっていなかったので、当該部分に相当する位置にある腎臓の保温機能に乏しく、血流が滞り易くなるという問題があった。
【0003】
また、ウエスト開口部の前縁部中央の人体の腰部付近に位置していたので、前身頃が尿管や下大静脈を圧迫して尿管を圧搾し、尿の膀胱への排出障害、下大静脈の圧迫による血行障害の要因になっていた。
【0004】
また、ウエスト開口部の開口縁は、人体の腸骨稜を横切るようになっていたので、人体の外腹斜筋の筋繊維方向に対して横断して外腹斜筋を圧迫することになり、ウエスト開口部の締め付け作用によって外腹斜筋が圧迫されて血行が阻害されるという問題があった。
また、人体の臀部が垂下すれば、大伏在静脈を屈曲させて捻転を引き起こし、通過断面積を減少させて血流の障害が発生する。
【0005】
また、図7のように前身頃と縫合により結合されるシック部片100の結合辺101は円弧状をなし、該結合部は、人体の恥骨結合部を横切る部位に位置していたので、前身頃とシック部片100の縫合線が人体の陰核包皮、陰核亀頭、浅鼠径リンパ節、腹部表在性静脈等を圧迫することになってリンパ液循環不良や血行不良が生じさせるという問題があった。
【0006】
更に、シック部片100の股下部分の幅Wは、人体の股下域とほぼ同幅となるように70〜100mmに設定されていたので、人体の鼠径部(太ももの付け根)がシック部片によって圧迫されて鼠径リンパ節のリンパ液の循環が阻害され、また、大伏在静脈を圧迫して大腿静脈への環流が阻害されるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、血行障害要因を除去し、保温性が向上し、リンパ節への圧迫を解除することができる下半身下着を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねて完成されたものである。
1.腹部を覆う前面側部及び臀部を覆う後面側部がシック部を介して連続した下半身下着において、ウエスト開口部の後側の縁部中央が人体の第2腰椎部の上縁部から第3腰椎の上縁部までの範囲内に位置するように設定し、前記ウエスト開口部の前側の縁部中央が第2腰椎から第3腰椎の間の部位よりも100〜150mmの範囲の下方に位置するように設定したことを特徴とする下半身下着を提供する。
2.前記ウエスト開口部の左右上端部が人体の腸骨稜上端部に当接するように設定し、前記前面側部の脇端の下縁部が人体の外腹斜筋の筋繊維とほぼ同一方向に伸びるようにしたことを特徴とする前記1に記載の下半身下着を提供する。
3.前記後面側部の裾縁部が人体の臀部の下側に沿うようにしたことを特徴とする前記1又は2に記載の下半身下着を提供する。
4.前記前面側部を構成する前身頃の下縁部とシック部片の前縁部とを接合し、前記前身頃の下縁部を逆V字状に切り込む一方、前記シック部片の前縁部を逆V字状に突出し、前記シック部片の前縁部の頂部は人体の恥骨結合部よりも20〜50mmの範囲の上方に位置するように設定したことを特徴とする前記1から3のいずれかに記載の下半身下着を提供する。
5.前記シック部の股下部分の幅を、40〜60mmの範囲に設定したことを特徴とすることを特徴とする前記1から4のいずれかに記載の下半身下着。
【発明の効果】
【0009】
本発明の下半身下着によれば、ウエスト開口部の後側の縁部中央が人体の第2腰椎部の上縁部から第3腰椎の上縁部までの範囲内に位置するように設定したので、人体の第2腰椎部分を後面側部で覆って腎臓を保温して血行を促進させることができる。しかも、ウエスト開口部の前側の縁部中央が第2腰椎から第3腰椎の間に部位よりも100〜150mmの範囲の下方に位置するように設定したので、尿管や下大静脈への圧迫を防止でき、尿管が圧搾されて尿の膀胱への排出障害、下大静脈の圧迫による血流障害を改善することができる。
【0010】
また、前記ウエスト開口部の左右上端部が人体の腸骨稜上端部に当接するように設定し、前記前面側部の脇端の下縁部が人体の外腹斜筋の筋繊維とほぼ同一方向に伸びるようにすれば、前記前面側部の脇端が外腹斜筋の筋繊維方向に対して横断して外腹斜筋を圧迫するのを防止できる。
【0011】
また、後面側部の裾縁部が臀部の下側に沿うように設定すれば、人体の臀部を後面側部で下から支えることができるので、大臀筋に下垂による大伏在静脈の屈曲によって捻転を引き起こして血流障害が発生するのを防止できる。
【0012】
また、前記前面側部を構成する前身頃の下縁部とシック部片の前縁部とを接合し、前記前身頃の下縁部を逆V字状に切り込む一方、前記シック部片の前縁部を逆V字状に突出し、シック部片の前縁部の頂部が人体の恥骨結合部よりも20〜50mmの範囲の上方に位置するように設定すれば、前身頃とシック部の結合部によって人体の陰核包皮や陰核亀頭が圧迫されるのを防止できる。
【0013】
しかも、着用時に前身頃の上縁部が引き上げられた状態では、前身頃を上方に引っ張る力によって前身頃の下縁部の開口角度が拡がろうとするので、接合部による圧迫力を裾口部の縁部の方向に逃がすことができる。
【0014】
更に、シック部の股下部分の幅を40〜60mmの範囲に設定すれば、股下部分の側縁によって鼠径部が圧迫されるのを回避でき、鼠径部の締め付け感から開放される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る下半身下着の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0016】
下半身下着1は、人体の腹部aを覆う前身頃(前面側部)2と、人体の臀部fを覆う後身頃(後面側部)3と、人体の下股bを覆うシック部4を構成するシック部片41とを備える。
【0017】
下半身下着1の生地は例えば綿、ナイロン、ポリエステル或いはポリウレタン等の混紡である。
【0018】
後身頃3は、ウエスト開口部5を構成する上縁部31の中央が人体の第2腰椎部cの上縁部から第3腰椎dの上縁部までの範囲内に位置するように形成されている。これによって着用時には後身頃3は、少なくとも人体の第2腰椎c部分を覆うことができて当該部分に位置する腎臓を保温できる。なお、図4中の符号c1は第2腰椎部cの上縁部を、符号dは第3腰椎dの上縁部のレベルを示している。
【0019】
また、後身頃3は、裾口部6の裾縁部32がシック部4の後端を起点として左右に分岐し、人体の太腿eと臀部fとの境界に沿い、かつ、臀部の両側を経て前面のウエスト開口部5の近傍に到達するように形成されている。すなわち、後身頃3の裾縁部32がウエスト開口部5の近傍を始点とし、臀部fの下側に沿うように形成されている。これによって人体の臀部fを下から支持できるようになっている。
【0020】
前身頃2は、ウエスト開口部5を構成する上縁部21からシック部4の前端に至り、かつ、上縁部21の中央部分は人体の第2腰椎cから第3腰椎dの間に部位から100〜150mmの範囲の下方に位置するように形成されている。これにより、着用時には、図6のように前身頃2の上縁部21が人体の下腹部のトップ位置よりも50〜100mmの範囲に下方を通過し、膀胱と尿管の接点から下方に膀胱の丈の3分の1〜2分の1を支えることができるようになり、尿管、下大静脈が圧迫されるのを防止できる。
【0021】
また、下半身下着1は、シック部4を下側として後身頃3を折り返して前身頃2に重ね、後身頃3の左右の脇端34と前身頃2の左右脇端24とを重ね合わせ、縫合によって結合されている。
【0022】
図6のように着用時には前身頃2の上縁部21が人体の腸骨稜上端部に当接し、かつ、前身頃2の裾縁部22及び前身頃2の脇端24の下縁部のうちの少なくとも脇端24の下縁部が、図6の矢印で示すように人体の外腹斜筋gの筋繊維とほぼ同一方向に伸びるように設定されている。これによって前身頃2の脇端24が外腹斜筋gの筋繊維方向に対して横断して該外腹斜筋gを圧迫するのを防止できる。なお、図6のように後身頃3の脇端34を前身頃2の脇端24に上側から覆うように重ねられることによってかかる効果をより一層顕著になる。
【0023】
前身頃2の下縁部23はシック部片41の前縁部41aに、後身頃3の下縁部33はシック部片41の後縁部41bにそれぞれ縫合により接合されている。
前身頃2の下縁部23は逆V字状に切り込まれ、シック部片41の前縁部41aは前身頃2の下縁部23と合致するように逆V字状に突出され、シック部片41の前縁部41aの頂部41cは人体の恥骨結合部よりも20〜50mmの範囲の上方に位置するように設定されている。なお、V字の開き角度は100°±10°に設定するのが好ましい。
また、前記シック部4の股下部分の幅Wは、人体の股下の幅よりも狭い40〜60mmの範囲に設定されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の下半身下着の実施形態を示す斜視図である。
【図2】(a)は同実施形態の下半身下着の前身頃を示す展開平面図、(b)は後身頃を示す展開平面図、(c)はシック部を示す展開平面図である。
【図3】同実施形態の下半身下着の展開平面図である。
【図4】同実施形態の下半身下着の着用状態を示す正面図である。
【図5】同実施形態の下半身下着の着用状態を示す背面図である。
【図6】同実施形態の下半身下着の着用状態を示す側面図である。
【図7】従来の下半身下着のシック部の展開平面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 下半身下着
2 前身頃(前面側部)
3 後身頃(後面側部)
4 シック部
41 シック部片
5 ウエスト開口部
6 裾口部
a 腹部
b 下股
c 第2腰椎部
d 第3腰椎
c1 第2腰椎の上縁部のレベル
d 第3腰椎の上縁部のレベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹部を覆う前面側部及び臀部を覆う後面側部がシック部を介して連続した下半身下着において、
ウエスト開口部の後側の縁部中央が人体の第2腰椎部の上縁部から第3腰椎の上縁部までの範囲内に位置するように設定し、
前記ウエスト開口部の前側の縁部中央が第2腰椎から第3腰椎の間の部位よりも100〜150mmの範囲の下方に位置するように設定したことを特徴とする下半身下着。
【請求項2】
前記ウエスト開口部の左右上端部が人体の腸骨稜上端部に当接するように設定し、前記前面側部の脇端の下縁部が人体の外腹斜筋の筋繊維とほぼ同一方向に伸びるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の下半身下着。
【請求項3】
前記後面側部の裾縁部が人体の臀部の下側に沿うようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の下半身下着。
【請求項4】
前記前面側部を構成する前身頃の下縁部とシック部片の前縁部とを接合し、前記前身頃の下縁部を逆V字状に切り込む一方、前記シック部片の前縁部をV字状に突出し、前記シック部片の前縁部の頂部は人体の恥骨結合部よりも20〜50mmの範囲の上方に位置するように設定したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の下半身下着。
【請求項5】
前記シック部の股下部分の幅を、40〜60mmの範囲に設定したことを特徴とすることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の下半身下着。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−9372(P2007−9372A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193538(P2005−193538)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(503302986)株式会社 宙 (2)
【Fターム(参考)】