説明

下半身用衣類装着補助具

【課題】 下半身用衣類を補助具に嵌めるのに大きな力が必要なく、引き上げも容易で、しかも下半身用衣類を履くときの微調整が簡単であり、両脚用の二股に分かれたストッキング等であっても自力で履くことができる下半身用衣類装着補助具を提供する。
【解決手段】 両端を開口させてなる柔らかい布筒部2と、上開口端部2bに設けられた長尺状の引き紐3aとを有する靴下等の下半身用衣類を装着するための補助具1Aであって、前記布筒部2は、下開口端部2aを片足が挿入可能な太さに形成しているとともに上開口端部2bを脚の大腿部が挿入可能な太さに形成し、前記下開口端部2aから前記上開口端部2bまでの長さを足首から大腿部までを覆う程度の長さに形成し、前記布筒部2の下開口端部2a側を折り畳んで下半身用衣類s内に挿入し、布筒部2の外面の摩擦力によって下半身用衣類sを装着位置まで引き上げることを特徴とする下半身用衣類装着補助具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴下やパンティストッキング等のタイツ類を履くときに使用する下半身用衣類装着補助具に関するものであり、特に人工股関節置換手術を受けた患者や高齢者など膝や腰の関節障害により前屈姿勢の不自由な人でも自力で下半身用衣類を装着することのできる補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチなどの病気や外傷のために人工股関節置換手術を受けた患者は、合併症の一つとして、人工関節がはずれて脱臼し易いという問題を抱えている。このような脱臼はごく日常的な動作によっても起こってしまうため、非常に注意を払って日常生活を過ごさなければならない。たとえば手術した股関節を90度の角度以上に屈曲すると当該股関節が脱臼するおそれがあり、靴下の脱着、爪を切る、床に落ちたものを拾う、脚を組む、手術側の脚を上にした横座りなど、しゃがんだり、腰を曲げたり、膝を内側にひねるなどの姿勢をとることは避けねばならない。
【0003】
一方、多くの高齢者にとっても同様な問題がある。高齢者は足腰の関節が硬くなり筋力も低下しているため、しゃがむ、腰を曲げるなどの動作をするのは極めて辛く、靴下の脱着、爪を切る、床に落ちたものを拾うなどの行為を自力で行うことが困難で、他人の助けを必要とすることも少なくない。
【0004】
このような問題に鑑みて、従来より遠くのものを引き寄せたり、床に落ちたものを拾ったり、手の届かないところのものを取るときに便利なリーチャーや靴下を履く手助けとなる靴下エイド、お風呂の洗い場で使用する座高の高い椅子で脚を深く曲げる必要のないシャワーチェアなど、人工股関節置換手術を受けた患者や高齢者が日常生活で関節に負担がかからないようにしながら、少しでも生活しやすく、様々なことをできる限り自分でできるように補助してくれる便利な道具が開発されている。
【0005】
特に、靴下やストッキング、ズボンなどの下半身用衣類を装着することは、日常生活において避けられない動作であり、補助具を使用して他者の助けを借りずに自力でできれば、日常生活での身体的な負担だけでなく、精神的な負担の軽減にもつながる。
【0006】
そのため近年では、人工股関節置換手術を受けた患者や高齢者を対象とした自力で靴下等を履くための様々な補助具が提案されている。
【0007】
例えば、特開2004−105292号には、半円状に形成された2つの拡開部を対向させて略円弧状に配置し、これら拡開部を一体的に連結するとともに持ち手としても利用される略U字状の把持部を有する靴下等の装着補助具、および、前記靴下等の装着補助具を把持部によって連結せずに、半円状に形成された2つの拡開部それぞれに棒状基部と把持部を配して構成する分割式の靴下等の装着補助具が開示されている。
【0008】
これらの装着補助具によれば、靴下の履き口を一対の略円弧状の拡開部よりも大きく広げて拡開部に嵌めた後、把持部を引っ張ることで拡開部の滑り止め部材に係止した靴下を引き上げて装着することが記載されている。また、分割式の装着補助具によれば、一つの靴下の履き口を水平に折り曲げるようにして分離した2つの拡開部に嵌めた後、左右それぞれに把持部を持ち、引っ張ることで靴下を引き上げて装着することが記載されている(特許文献1)。
【0009】
また、特開2004−180905号には、可撓性を有する素材で構成された主要断面がC字状に湾曲されたへら型の補助具本体と、補助具本体の両側後部に基端が固着された2本の紐部材を有する構造であり、補助具本体の外側表面の生地は内側表面の生地より表面摩擦抵抗が大きいことを特徴とする靴下履き用補助具が開示されている。
【0010】
この靴下履き用補助具によれば、補助具本体を丸めて靴下を被せ、足部を補助具本体に装入させた後、紐部材を手で持ち、補助具本体の外側表面生地の摩擦抵抗により補助具本体と共に靴下を引き上げて装着することが記載されている(特許文献2)。
【0011】
【特許文献1】特開2004−105292号公報
【特許文献2】特開2004−180905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特開2004−105292号公報に記載された発明のうち、連結された補助具においては、ステンレス製の丸棒などの堅い素材によって構成されているため、拡開部を簡単に変形できず、装着する靴下等を拡開部に嵌める際に、靴下等の履き口を大きく開くために大きな力が必要となる。人工股関節置換手術を受けた人や多くの高齢者は握力も低下していることが多いため、このような行為は手間が掛かり困難である。
【0013】
一方、仮に拡開部が小さければそれ程大きな力も不要であるかもしれないが、拡開部に脚を通すのが困難であるし足首を挿入する力が余計に必要となり意味がない。しかも装着する靴下の長さが限定されてしまい長い靴下には適用できないという問題もある。
【0014】
また、上まで引き上げられた靴下等を補助具から外す方法として、棒状基部を押し下げるか、手で外す方法が記載されている。しかし、棒状基部を押し下げる方法では、靴下等の口部は折り曲げて係止されているので、補助具を押し下げて外すと、靴下等の口部はそのまま折り曲げられた状態であるため手で直さなけれならないし、引き上げた靴下等が下がってしまうおそれもある。膝下より短い靴下を装着した場合には、補助具を手で外したり、靴下の口部を手で直すには、かがんだり、腰を曲げる動作を強いられることになるため、結局、実用性のないものといえる。
【0015】
そして、補助具を引き上げすぎたり、上に引っ張って補助具から靴下等を外した場合には、靴下等が上がりすぎて靴下の踵部分がずれてしまうし、係止される部分が靴下等の口部のみであるので、爪先部分と踵部分を所定の位置に装着するように微調整を行うことは難しい。
【0016】
さらに、二股になっているストッキングやズボン等では、片脚部分を装着後、もう一方の片脚部分を補助具に嵌めて拡開部に脚を通して引き上げるためには、脚腰を無理に曲げる必要があるし、両脚を装着後に装置を脚から外せないため適応できない。
【0017】
さらに、特開2004−105292号公報に記載された発明のうち、分割式の補助具において、一つの靴下を2つの分離された拡開部に嵌めて、その状態を保ちながら靴下と共に2つに分かれた補助具を上に引き上げる動作には、力の程度や作用方向に熟練を要し、慣れるまでに相当な時間や手間がかかるという問題もある。
【0018】
また、連結された補助具と同様に、上まで引き上げられた靴下を補助具から外して、外に折り返された靴下の口部を元に戻す操作を行う場合、短い靴下等では脚腰を屈曲させて靴下の口部まで手を伸ばさなければならない。
【0019】
さらに、上記特許文献1の補助具は堅い素材で形成されており、補助具の把持部から靴下等を係止めする拡開部までの長さは一定で変化しない。つまり、補助具を操作する手と装着する靴下等の距離が装着操作のどの時点においても一定であるので、補助具に足先を入れる時の姿勢と、靴下等の装着後に装置を外す時の姿勢のどちらかに無理が生じてしまう。
【0020】
なお、この補助具が連結・分離しているかに関わらず、小さく折り曲げたり畳んだりすることができないため、かさばってしまい旅行などの携行には不向きである。
【0021】
一方、特開2004−180905号公報に記載の発明においても、補助具本体の形状に合わせて靴下の踵位置やつま先位置を丁寧に嵌め合わせなければならない。補助具本体が可撓性を有するといっても軟質プラスチックを芯材としているため、可撓性には限界があり、足の形状に合わせて自在に変形できるわけではない。結局のところ、足を挿入する場合には相当な力を必要とするし、挿入角度や挿入後の微妙な調整には熟練が必要とされて不便である。特にプラスチックを芯材とする補助具本体に紐部材を取り付けていることから、この紐部材を操作しても補助具本体を周方向に微調整することは極めて難しく、現実的には靴下の履き具合を微調整できない。
【0022】
また、装着できるのは、補助具本体に被せてずれ落ちない太さの靴下のみであり、それも靴下と共に補助具を安定して引き上げられるのはふくらはぎまでであるので、ふくらはぎよりも長い靴下は、途中から体を曲げて手で引き上げることになる。よって、補助具を使用して体を曲げずに履くことができるのは、膝下程度の長さの靴下に限定されてしまい、長い靴下やストッキング、ズボンなどを最後まで履くことはできない。
【0023】
なお、補助具本体は、足首を除く足部本体を入れる高さと幅があり、内部に芯材があるため、これ以上小さくすることはできず携帯には不便である。
【0024】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたものであって、人工股関節置換手術を受けた患者や高齢者など、前屈姿勢のできない人であっても靴下等を自力で楽に履くことができ、また靴下がよじれて踵がずれたりするのを簡単に微調整することができ、しかも短い靴下だけでなく長い靴下やストッキング、ズボンなどの二股の衣類であっても自力で履くことのできる下半身用衣類装着補助具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明に係る下半身用衣類装着補助具の特徴は、布地を筒状に縫製して両端を開口させてなる柔らかい布筒部と、この布筒部を脚に装着したときに脚の付け根側となる上開口端部に設けられた長尺状の引き紐とを有する靴下等の下半身用衣類を装着するための補助具であって、前記布筒部は、下開口端部を片足が挿入可能な太さに形成しているとともに上開口端部を脚の大腿部が挿入可能な太さに形成し、前記下開口端部から前記上開口端部までの長さを足首から大腿部までを覆う程度の長さに形成し、前記布筒部の下開口端部側を折り畳んで下半身用衣類内に挿入し、布筒部の外面の摩擦力によって下半身用衣類を装着位置まで引き上げる点にある。
【0026】
そして、このような構成を採用したことにより、布地の布筒部の下開口端部を縦に折り畳めば容易に靴下等の下半身用衣類に嵌入でき、引き紐によって布筒部を大腿部まで引き上げれば布筒部自体を持って操作することができるのでコントロールしやすく、更なる引き上げや微調整が簡単にできる。
【0027】
また、本発明において、柔らかい布筒部は、外面の摩擦抵抗が内面の摩擦抵抗よりも大きい生地によって構成され、前記布筒部の内面では脚を滑らかに挿通可能とし、前記筒部の外面では下半身用衣類を装着位置まで摩擦力によって引き上げ可能とすることが好ましい。特に、前記布筒部としてアセテートサテン生地を使用し、表地を前記布筒部の内面にし、裏地を前記布筒部の外面にすることが望ましい。
【0028】
このような構成を採用したことにより、アセテートサテンの粗い裏地をもって靴下等との間に強めの摩擦を生じさせ、アセテートサテンの滑らかな表地をもって素肌側を滑らせることにより、表裏面の適度な摩擦バランスで下半身用衣類を引き上げることができる。
【0029】
そして、本発明において、前記布筒部の下開口端部から上開口端部にかけてファスナー等の開閉自在な接合手段を取り付け、前記布筒部を展開可能に構成することが好ましい。
【0030】
このような構成によれば、ズボンやストッキングなどの二股の下半身用衣類を装着する場合に、本件補助具を使ってまず片脚を履いてから接合手段を展開することによって取り外し、再度、接合手段を閉じて筒状にしてからもう一方の脚を履いて、再び接合手段を展開することによって取り外し、両脚用の二股に分かれた下半身用衣類であっても補助具を使って自力で装着することができる。
【0031】
本発明において、前記布筒部の前記上開口端部には、折り畳む場合の基準となる所定の長さの芯部材が周方向に沿って縫い込まれていることが好ましく、このような芯部材によれば上開口端部が開口して足を挿入し易く、また折り畳む際には芯部材の左右端部に沿って折り畳むとともに芯部材の幅に合わせて上下を折り畳むことができて極めて小さく折り畳め、携帯に便利である。
【0032】
また、本発明において、前記芯部材の両端部には引き紐を上方に向けて縫着しているとともに、クリップ等の衣服狭持部材を下方に向けて縫着していることが好ましく、このような構成により、引き紐によって靴下等を脚の付け根側に容易に引き上げやすく、衣服狭持部材によりズボン等の重い衣類であっても布筒部の摩擦に頼ることなく自力で引き上げられる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、下半身用衣類を本発明の補助具に嵌めるのに大きな力が必要なく、引き上げも容易に行え、しかも下半身用衣類を履いたときの捻れを直したり、靴下の踵の位置合わせ等の微調整が簡単であり、また、両脚用の二股に分かれたストッキング等であっても自力で履くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明に係る下半身用衣類装着補助具の第1の実施形態について図1〜図5を用いて説明する。
【0035】
図1から図3は、それぞれ本第1実施形態の下半身用衣類装着補助具1Aを示す平面図、正面図、および断面図であり、図4および図5は本第1実施形態の使用方法を示す説明図である。
【0036】
図1から図3に示すように、本第1実施形態の下半身用衣類装着補助具1Aは、アセテートサテン等から構成される生地を使用して両端が開口した筒状の布筒部2と、この布筒部2の脚の付け根側となる上開口端部2bに縫着された引き紐3aと、前記上開口端部2bの周方向に沿って縫着された芯部材4とを有している。
【0037】
上記各構成についてより詳細に説明する。布筒部2は、アセテートサテン生地を略台形状に裁断し、台形の上底および下底がそれぞれ下開口端部2aおよび上開口端部2bとなるように筒状に縫合して形成される。布筒部2の足先側となる下開口端部2aは片足(特に踵から足首)が挿入可能な太さに形成され、布筒部2の脚の付け根側となる上開口端部2bは大腿部(膝から付け根付近(以下同様))が挿入可能な太さになるように形成される。前記下開口端部2aから前記上開口端部2bまでの布筒部2の長手方向の長さは、足首から大腿部を覆う程度の長さに形成される。
【0038】
引き紐3aは、布筒部2の長手方向の長さと同程度の長さに形成されており、前記布筒部2の上開口端部2bから上方向に伸びるように縫着されている。引き紐3aは、布筒部2を両手で把持できる位置まで引き上げるためのものであるため、本第1実施形態では、一本の紐として構成しているが、複数本から構成してもよい。また、引き紐3aが縫着された位置を下開口端部2aへ延長した位置には、当該引き紐3aの縫着位置に対応する位置の目印として中心マーク7が縫製されている。
【0039】
芯部材4は、幅が2〜3cm、長さが布筒部2の上開口端部2b周囲長の3分の1程度に形成されており、収納時に折り畳み基準となるように、上開口端部2bの周方向に沿って縫い込まれている。そして、芯部材4の周方向中央部分に前記引き紐3aが縫着されている。芯部材4の素材は、例えばナイロン製の厚生地など、容易に折り曲げられる素材で形成されているのが好ましい。
【0040】
次に、本第1実施形態の下半身用衣類装着補助具1Aの作用および使用方法について、靴下sを装着する場合を例に説明する。
【0041】
まず、図4に示すように、布筒部2の下開口端部2aを中心マーク7が中央に位置するように縦に折り畳んで窄め、装着する靴下sの足先あたりまで挿入する。このとき前記中心マーク7が靴下sの中心付近に挿入されるようにすれば、中心マーク7は引き紐3aの直線上に配置されているため、引き紐3aを引っ張れば靴下sのほぼ中心部分を引っ張ることになり、よじれたりしにくく、踵や爪先の位置合わせが簡単になる。
【0042】
次に、引き紐3aを持ったまま布筒部2の上開口端部2bを足先よりも遠くに置く。このとき引き紐3aは芯部材4のほぼ中央位置に縫着されているため、引き紐3aを持ち上げるだけで上開口端部2bが芯部材4に支えられて大きく開口することになる。そして、その大きく開口した上開口端部2bに足先を挿入し、踵、くるぶし、脹ら脛、膝、大腿部を順次入れて上開口端部2bに手が届く位置まで引き紐3aを引き上げる。
【0043】
つづいて、図5に示すように、布筒部2の上開口端部2bを両手で持てる位置まで引き上げると、丁度、つま先あたりが靴下sの口部にあたるので、靴下sを履けるように足首を伸ばして足を靴下s内に挿入しつつ上開口端部2bを両手でもって引き上げる。このとき、布筒部2の内面は摩擦抵抗の小さい滑らかな面であるので脚を挿入しやすく、一方、布筒部2の外面は脚が挿入されたときの力で靴下sが外れない程度の摩擦抵抗の大きい粗い面から構成されており、内外面において絶妙な摩擦抵抗のバランスが保たれているので、靴下sを布筒部2と共に引き上げることができる。
【0044】
また、アセテートサテン生地の適度な柔らかさと、引き紐3aではなく靴下sを挿入した布筒部2を直接手で持って調整するため、生地がよれずに微妙な装着位置を操作しやすいというメリットが生じる。特に布筒部2は靴下sと足との間に広い範囲で介在(接触)しているため、靴下sから離れた位置にある上開口端部2bを操作しても力がうまく伝わり、微妙な調整が可能となる。
【0045】
そして、布筒部2をさらに引き上げて、靴下sから布筒部2を抜いた後、布筒部2から手を離して引き紐3aに持ち替え、布筒部2をずり落として脚から補助具1Aを外す。なお、布筒部2の外面にアセテートサテンの裏地を用いて靴下sとの適度な摩擦抵抗を与えているため、補助具1Aから靴下sを外す際に、布筒部2をさらに引き上げても靴下sの踵部分がずれ上がることなく引き抜くことができる。また、布筒部2の内面が摩擦抵抗の小さい素材であるため、靴下s装着後に引き紐3aに持ち替えれば、自重により自然と布筒部2が下に落ちて、脚から補助具1Aを簡単に外すことができる。
【0046】
したがって、以上のような本第1実施形態によれば、下半身用衣類sを本発明の補助具に嵌めるのに大きな力が必要なく、補助具への脚の装入、引き上げおよび取り外しも容易に行え、しかも、捻れを直したり、靴下sの踵の位置合わせ等の微調整をしながら、簡単に分離した下半身用衣類sを自力で履くことができる。
【0047】
次に、本発明に係る下半身用衣類装着補助具の第2実施形態について図6から図9を用いて説明する。なお、本第2実施形態のうち、第1実施形態の構成と同一若しくは相当する構成は、同一の符号を付して再度の説明を省略する。
【0048】
図6から図8は、それぞれ本第2実施形態の下半身用衣類装着補助具1Bを示す平面図、背面図、および布筒部展開図であり、図9は本第1実施形態の使用方法を示す説明図である。
【0049】
本第2実施形態の下半身用衣類装着補助具1Bの特徴は、第1実施形態の下半身用衣類装着補助具1Aの特徴に加え、ファスナー等の接合手段5が布筒部2の下開口端部2aから上開口端部2bにかけて取り付けられている点、布筒部2に設置された引き紐3aが2本で略U字ループ状に形成されている点、上開口端部2bにクリップ等の衣服狭持部材6,6が取り付けられている点の3点にある。
【0050】
つまり、本第2実施形態の下半身用衣類装着補助具1Bは、図6から図8に示すように、アセテートサテン生地を素材とする下開口端部2aおよび上開口端部2bを備えた布筒部2と、この布筒部2の前記上開口端部2bに縫製などにより取り付けられた略U字ループ状引き紐3bと、前記布筒部2の前記下開口端部2aから前記上開口端部2bにかけて開閉自在に取り付けられている接合手段5と、前記布筒部2の上開口端部2bの周方向に縫い込まれた芯部材4と、前記略U字ループ状引き紐3bの基端部に縫着された衣服狭持部材6,6とを有している。
【0051】
より詳細に説明すると、本第2実施形態の布筒部2は、アセテートサテン生地の表地を内面、裏地を外面にして、足先から大腿部までを挿入可能な内径と長さを備えるように開口した筒状に縫製され、芯部材4は、幅が幅2〜3cm、長さが布筒部2の上開口端部2b周囲長の3分の1程度で、上開口端部2bの周方向に沿って縫い込まれている。
【0052】
接合手段5は、長尺状のファスナー等から構成され、布筒部2の下開口端部2aから上開口端部2bの全長にわたって縫着されており、上開口端部2bから下開口端部2aに向けて開放されるようになっている。また、接合手段5を縫着する側面は、芯部材4を避けるため、円周方向のうち上開口端部2bの芯部材4が縫い込まれた周縁位置とは反対側の面に縫着されている。前記接合手段5を閉じると無底筒状の布筒部2となり、接合手段5を開くと前記布筒部2が略台形の一枚の布に展開されるようになっている。
【0053】
略U字ループ状引き紐3bは、アセテートサテン生地からなり、布筒部2より2倍程度長い紐の両端部を前記芯部材4の両端部に縫い合せ、布筒部2の上開口端部2bの周方向に対して垂直に伸びてU字状のループを構成している。
【0054】
衣服狭持部材6,6は、略U字ループ状引き紐3bの縫合位置にそれぞれ各1個ずつ、合計2個取り付けられている。各衣服狭持部材6,6は下開口端部2a方向に向いて縫着されており、ズボン等を狭持して引き上げるためのものである。
【0055】
また、略U字ループ状引き紐3bが縫着された位置のほぼ中央位置から延長した下開口端部2a位置には、下開口端部2aを折り畳む際の中央基準となる中心マーク7が目印としてカラー糸などで縫製されている。
【0056】
次に、本第2実施形態の下半身用衣類装着補助具1Bの作用および使用方法について、ストッキングsを装着する場合を例に説明する。
【0057】
まず、図9に示すように、布筒部2の下開口端部2aを中心マーク7が中央に位置するように縦に折り畳んで窄め、装着するストッキングsの足先あたりまで挿入する。その後、ストッキングsのウエスト部分または大腿部分を衣服狭持部材6,6によって狭持する。このとき前記中心マーク7がストッキングsの中心付近に挿入されるようにすれば、中心マーク7は略U字ループ状引き紐3bの中央から延長線上に配置されているため、よじれたりしにくく、踵や爪先の位置合わせが簡単になる。
【0058】
次に、略U字ループ状引き紐3bを持ったまま布筒部2の上開口端部2bを足先よりも遠くに置く。このとき略U字ループ状引き紐3b芯部材4の両端に縫着されているため、略U字ループ状引き紐3bを持ち上げるだけで上開口端部2bが芯部材4に支えられて大きく開口することになる。そして、その大きく開口した上開口端部2bに足先を挿入し、踵、くるぶし、脹ら脛、膝、大腿部を順次入れて上開口端部2bに手が届く位置まで略U字ループ状引き紐3bを引き上げる。このとき、略U字ループ状引き紐3bは長いので首に掛けることにより布筒部2を安定させ、手の負担をさらに軽減することもできる。そして、ストッキングsは衣服狭持部材6,6で狭持されているため、脚を装入して引き上げる一連の動作過程において補助具1Bから外れ落ちる心配がない。
【0059】
つづいて、布筒部2の上開口端部2bを両手で持てる位置まで引き上げると、丁度、つま先あたりがストッキングsの足首部分にあたるので、ストッキングsを履けるように足首を伸ばして足をストッキングs内に挿入しつつ上開口端部2bを両手でもって引き上げる。このとき、布筒部2の内面は摩擦抵抗の小さい滑らかな面であるので脚を挿入しやすく、一方、布筒部2の外面は脚が挿入されたときの力でストッキングsがずれない程度の摩擦抵抗の大きい粗い面から構成されており、内外面において微妙な摩擦抵抗のバランスが保たれているので、ストッキングsを布筒部2と共に引き上げることができる。
【0060】
この状態において、上開口端部2bの周囲を手で持ち、布筒部2に挿入されたストッキングsの装着向きを微調整しながら、爪先がストッキングsの先に届くまで布筒部2を折り畳みながら引き上げてストッキングsの片脚部分を装着する。本補助具1Bはストッキングsの一部を引っかけて引き上げるのではなく、ストッキングs内全体と摩擦し合って引き上げるように構成されているため引き上げ操作に無理が無く、容易に微調整できるので、踵位置や爪先位置などを所望の位置に装着することができる。
【0061】
また、アセテートサテン生地の適度な柔らかさと、略U字ループ状引き紐3bではなくストッキングsを挿入した布筒部2を直接手で持って調整するため、生地がよれずに微妙な装着位置の調整が可能である。特に布筒部2はストッキングsと足との間に広い範囲で介在(接触)しているため、ストッキングsから離れた位置にある上開口端部2bを操作しても力がうまく伝わり、微妙な調整が可能となる。
【0062】
そして、衣服狭持部材6,6を解除し、布筒部2を折り畳みながらさらに引き上げて、ストッキングsから布筒部2を抜いた後、ファスナー等の接合手段5を解除し、布筒部2を展開して脚から本補助具1Bを外す。そして、再び、接合手段5を閉じて筒状に構成してからもう一方の脚を同様の操作によって履いて、再び接合手段5を展開することにより本補助具1Bを脚から外す。このとき、接合手段5により、下半身用衣類sを本補助具1Bで引き上げて装着後、接合手段5を開いて本補助具1Bを無理なく取り外すことができるため、左右分離した靴下sのみならず左右結合したストッキングやズボンなどの二股構造の下半身用衣類sへの装着が容易に行えるという極めて大きなメリットがある。
【0063】
したがって、以上のような本第2実施形態によれば、第1実施形態の効果のように操作が簡便で微調整が可能であるのはもちろんのこと、靴下等に限らず、両脚用の二股に分かれたストッキングや重みのあるズボン等であっても、安定して上まで引き上げて自力で装着することができる。
【0064】
なお、下半身用衣類装着補助1Aおよび下半身用衣類装着補助1Bを使用しない時には、芯部材4を基準として布筒部2を折り畳み、引き紐3aまたは略U字ループ状引き紐3bを巻いて留め、小さくして、例えばポーチなどに収納して気軽に携帯することができる。
【0065】
なお、本発明に係る下半身用衣類装着補助1Aおよび下半身用衣類装着補助1Bは、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0066】
例えば、布地はアセテートサテン1枚でなくとも、本発明の効果を奏すれば、内側、外側各々に適度なバランスの摩擦抵抗を備えた素材を選んで2重にしてもよい。また、固定クリップ6を略U字ループ状引き紐3bの両端に一つずつ設置するのではなく、上開口端部2bに複数取り付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る下半身用衣類装着補助具の第1実施形態を示す平面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図1の3X−3X線断面図である。
【図4】本第1実施形態において足を挿入する前の使用状態を示す図である。
【図5】本第1実施形態において足を挿入した後の使用状態を示す図である。
【図6】本発明に係る下半身用衣類装着補助具の第2実施形態を示す平面図である。
【図7】図6の背面図である。
【図8】本第2実施形態の布筒部展開図である。
【図9】本第2実施形態の使用状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0068】
1A,1B 下半身用衣類装着補助具
2 布筒部
2a 下開口端部
2b 上開口端部
3a 引き紐
3b 略U字ループ状引き紐
4 芯部材
5 接合手段
6 衣服狭持部材
7 中心マーク
s 下半身用衣類

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布地を筒状に縫製して両端を開口させてなる柔らかい布筒部と、この布筒部を脚に装着したときに脚の付け根側となる上開口端部に設けられた長尺状の引き紐とを有する靴下等の下半身用衣類を装着するための補助具であって、
前記布筒部は、下開口端部を片足が挿入可能な太さに形成しているとともに上開口端部を脚の大腿部が挿入可能な太さに形成し、前記下開口端部から前記上開口端部までの長さを足首から大腿部までを覆う程度の長さに形成し、前記布筒部の下開口端部側を折り畳んで下半身用衣類内に挿入し、布筒部の外面の摩擦力によって下半身用衣類を装着位置まで引き上げることを特徴とする下半身用衣類装着補助具。
【請求項2】
請求項1において、柔らかい布筒部は、外面の摩擦抵抗が内面の摩擦抵抗よりも大きい生地によって構成され、前記布筒部の内面では脚を滑らかに挿通可能とし、前記筒部の外面では下半身用衣類を装着位置まで摩擦力によって引き上げ可能とすることを特徴とする下半身用衣類装着補助具。
【請求項3】
請求項2において、前記布筒部としてアセテートサテン生地を使用し、表地を前記布筒部の内面にし、裏地を前記布筒部の外面にすることを特徴とする下半身用衣類装着補助具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかにおいて、前記布筒部の下開口端部から上開口端部にかけてファスナー等の開閉自在な接合手段を取り付け、前記布筒部を展開可能に構成することを特徴とする下半身用衣類装着補助具。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかにおいて、前記布筒部の前記上開口端部には、折り畳む場合の基準となる所定の長さの芯部材が周方向に沿って縫い込まれていることを特徴とする下半身用衣類装着補助具。
【請求項6】
請求項5において、前記芯部材の両端部には、引き紐を上方に向けて縫着しているとともに、クリップ等の衣服狭持部材を下方に向けて縫着していることを特徴とする下半身用衣類装着補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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