説明

下水管迂回排水装置

【課題】排水ユニットにおける排送ポンプの目詰まり防止を図ることのできる下水管迂回排水装置を提供すること。
【解決手段】作業区間KKを迂回して、第2下水管22の汚水を第4下水管24へ流す下水管迂回排水装置であって、作業区間への汚水の流入を阻止する第2下水管止水栓42及び第3下水管止水栓43と、作業区間KKを迂回するフロントライン52及びリアライン53を介して排水する迂回排水装置50と、汚水マス31から排水管25への汚水の流入を阻止するマス止水栓60と、汚水マス31の汚水を、マス吸引ライン82を介してタンクに吸引し、汚水内の異物を粉砕する粉砕機構を備えた排送ポンプによりタンク内の汚水を作業区間KKの下流側に排送する排水ユニット70と、を備えていることを特徴とする下水管迂回排水装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設された下水管において清掃、補修、検査、交換等の作業を実施する際に、作業区間を迂回させて排水を行う下水管迂回排水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地中に埋設された下水管において清掃、検査、補修、交換等の作業を実施する際に、その作業区間に汚水が流れないように、作業区間を迂回させて排水を行う下水管迂回排水装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載された従来の下水管迂回排水装置は、家庭排水が流れ込む複数の排水用マスが排水管を介して接続された下水管における作業区間を迂回して下水を流す装置である。
このため、この従来技術は、作業区間の下水管の上流側及び下流側を止水する下水管止水栓と、その作業区間の下水管の上流側の汚水等を吸い上げて下流側の下水管止水栓よりも下流側に迂回させる迂回排水装置と、各排水用マスから各排水管内への汚水流れをそれぞれ阻止するマス止水栓と、作業区間の上流側の下水管止水栓よりも上流に流れ込む汚水を第1の吸引管を介して真空タンクに吸引すると共に、各排水用マス内の汚水を第2の吸引管を介して真空タンクに吸引し、この真空タンクに吸引した汚水を、排送ポンプにより排出管を介して作業区間の下流側の下水管止水栓よりも下流に排水する排水ユニットと、を備えている。
また、迂回排水装置は、作業区間よりも上流の下水管に接続されたマンホールに、異物が混ざった汚水を移送可能な水中ポンプを設置しており、さらに、この水中ポンプが設置されたマンホールと、その下流の作業区間側の下水管との間には、異物を除去するためのネットが設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−201707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来の下水管迂回排水装置にあっては、以下に述べる解決すべき課題を有していた。
一般的に、下水管を流れる汚水に含まれる大きな異物は、雨水マスから流れ込む雨水に含まれる。
そこで、上記の従来技術では、大きな異物が含まれる可能性がある下水管の汚水は、異物が含まれた汚水を吸引可能な水中ポンプを備えた迂回排水装置を用いて作業区間の下水管を迂回させるようにしている。
一方、真空タンクに吸引する排水ユニットは、基本的には大きな異物が混入されていないとされる家庭排水、及び、ネットにより異物を除去した下水管止水栓よりも上流の汚水とを真空タンクに吸引し、この真空タンク内の汚水を排送ポンプにより下流側の下水管止水栓よりも下流の下水管に排送するようにしている。
【0005】
しかし、家庭排水及びネットを通過した下水管の汚水にもある程度の異物が含まれることがある。この異物を含む汚水を真空タンクに吸引した場合、真空タンクの汚水を外部に排送する排送ポンプに、異物による目詰まりが生じるおそれがあった。
【0006】
本発明は、上述の問題を解決することを目的とするものであり、排水ユニットにおける排送ポンプの目詰まり防止を図ることのできる下水管迂回排水装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の下水管迂回排水装置は、
汚水マスから延びる排水管が接続された下水管を含む作業区間を迂回して、この作業区間の上流側の下水管の汚水を前記作業区間の下流側の下水管へ流す下水管迂回排水装置であって、
前記作業区間への上流側からの汚水の流入を阻止する上流側止水栓と、
前記作業区間への下流側からの汚水の流入を阻止する下流側止水栓と、
前記上流側止水栓よりも上流側と前記下流側止水栓よりも下流側とを接続する迂回路を介して、前記上流側の汚水を前記作業区間を迂回させて前記下流側に排水する迂回排水装置と、
前記汚水マスから前記排水管への汚水の流入を阻止するマス止水栓と、
前記汚水マスの汚水を、吸引ラインを介してタンクに吸引し、汚水内の異物を粉砕する粉砕機構を備えた排送ポンプにより前記タンク内の汚水を前記作業区間の下流側に排送する排水ユニットと、
を備えていることを特徴とする。
【0008】
なお、前記排水ユニットは、異常発生を検出する異常検出手段と、この異常検出手段の異常発生検出時に、公衆回線を介して異常発生を通知する通知装置を備えていることが好ましい。
また、前記排水ユニットの外周を覆うカバーは、少なくとも底面に防音材が設置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、排水ユニットのタンクに吸引した汚水は、粉砕機構を備えた排送ポンプにより作業区間の下流側に排送するようにした。このため、汚水マスからタンクに吸引した汚水に含まれる異物は、排送ポンプによる排送時に粉砕機構により粉砕され、排送ポンプにおける目詰まりの発生を防止できる。
そして、この目詰まり発生防止により、排送ユニットのメンテナンスの手間の削減及び耐久性の向上を図ることも可能となる。
【0010】
また、通知装置を備えたものは、目詰まり等の異常発生時に、通知装置が公衆回線を介して異常発生を通知する。
したがって、異常発生時には、管理者が即座に対応することが可能となる。
また、排水ユニットのカバーの少なくとも底面に防音材を設置したものでは、排水ユニット内で生じる騒音や振動が底面の防音材で吸収されて地盤等へ伝達するのが低減され、騒音レベルの改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施の形態の下水管迂回排水装置の使用例を説明するための全体説明図である。
【図2】図2は、実施の形態の下水管迂回排水装置の各ラインの接続状態を示す全体システム図である。
【図3】図3は、実施の形態の下水管迂回排水装置に用いる排水ユニットの平面図である。
【図4】図4は、実施の形態の下水管迂回排水装置に用いる排水ユニットの左側面図である。
【図5】図5は、実施の形態の下水管迂回排水装置に用いる排水ユニットの正面図である。
【図6】図6は、実施の形態の下水管迂回排水装置に用いる排水ユニットの右側面図である。
【図7】図7は、実施の形態の下水管迂回排水装置に用いる排水ユニットの背面図である。
【図8】図8は、実施の形態の下水管迂回排水装置に用いる排水ユニットの底面図である。
【図9】図9は、実施の形態の下水管迂回排水装置に用いる排水ユニットに設けたコントロールユニットの入出力の関係を示すブロック図である。
【図10】図10は、実施の形態の下水管迂回排水装置における水中ポンプ制御の処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】図11は、実施の形態の下水管迂回排水装置における真空ポンプ制御の処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】図12(a)は、実施の形態の下水管迂回排水装置における汚水マス制御の処理の流れを示すフローチャートであり、図12(b)は、実施の形態の下水管迂回排水装置におけるバキュームライン制御の処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】図13は、実施の形態の下水管迂回排水装置における排送ポンプ制御の処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】図14は、実施の形態の下水管迂回排水装置における異常判定制御の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
本発明の実施の形態の下水管迂回排水装置について説明するのにあたり、まず、下水管迂回排水装置を使用する下水管の構成について説明する。
【0013】
図1に示すように、地中に第1マンホール11、第2マンホール12、第3マンホール13が縦方向に穿設され、各マンホール11〜13の下部が、第1下水管21、第2下水管22、第3下水管23、第4下水管24により直列に接続されている。なお、各下水管21〜24は、汚水が、図において左側の第1下水管21から第4下水管24に向けて流れるよう設置されている。
【0014】
このような下水管において、本実施の形態では、第3下水管23及び、これを挟む第2マンホール12と第3マンホール13を作業区間として、第3下水管23の清掃、検査、補修、交換等の作業を行うものとして説明する。
【0015】
この第3下水管23には、複数の排水管25が接続されている。そして、各排水管25は、それぞれ家庭の汚水マス31に接続されている。すなわち、図2に示すように、第3下水管23には複数の排水管25が接続され、各排水管25は汚水マス31に接続され、各汚水マス31には、各家庭の台所、トイレ、浴室等からの汚水を流す排水パイプ26が接続されている。なお、図では排水管25及び汚水マス31は2組のみを図示しているが、実際にはそれ以上の複数が接続される場合もある。他の下水管21,22,24についても、同様に複数の排水管25を介して複数の汚水マス31に接続されているものとするが、図示は省略する。
【0016】
次に、実施の形態の下水管迂回排水装置の構成を説明する。
この実施の形態の下水管迂回排水装置は、図1に示すように、第1下水管止水栓(上流側止水栓)41、第2下水管止水栓(上流側止水栓)42、第3下水管止水栓(下流側止水栓)43、迂回排水装置50、マス止水栓60、排水ユニット70を備えている。
【0017】
第1〜第3下水管止水栓41〜43は、作業区間KKとなる第3下水管23及び第2,第3マンホール12,13に、汚水が流入しないように止水するために各下水管21〜24に設置する。すなわち、第1下水管止水栓41及び第2下水管止水栓42は、作業区間KKへの上流からの汚水の流入を阻止するためのもので、第1下水管止水栓41は、第2下水管22の上流側端部に設置し、第2下水管止水栓42は、第2下水管22の下流側端部に設置する。第3下水管止水栓43は、作業区間KKの下流からの汚水の流入を阻止するためのもので、第4下水管24の上流側端部に設置する。
なお、各下水管止水栓41〜43としては、排水ユニット70に設けられたコンプレッサ79(図3参照)からエアホース(図示省略)を介してエアーが供給されることで膨張して止水するバルーンストッパを用いている。
【0018】
迂回排水装置50は、水中ポンプ51、フロントライン(迂回路)52、リアライン(迂回路)53を備えている。本実施の形態では、迂回排水装置50は、図1等に示すように、第1下水管21から第1マンホール11に流入する汚水を、作業区間KKとなる第3下水管23を迂回させると共に、排水ユニット70の後述する排水管(迂回路)71を経由して第4下水管24に流すように設置している。
【0019】
水中ポンプ51は、破砕機構を持つ小型水中汚水ポンプであって、第1マンホール11に設置され、第1マンホール11内の汚水を、フロントライン52を介して排水ユニット70まで移送する。排水ユニット70は、図3に概略を示すように、排水ユニット70を貫通する排水管(迂回路)71を備えており、フロントライン52は、この排水管71の上流側端部に接続されている。一方、リアライン53は、一端が排水管71の下流側端部に接続され、他端が、第3下水管止水栓43を貫通して、第4下水管24に接続されている。
なお、水中ポンプ51には、図2に示す水中ポンプフロートスイッチ103が設けられており、第1マンホール11内の汚水の水位を検出できる。
【0020】
次に、排水ユニット70について説明する。
排水ユニット70は、図1に示すように、作業区間KKの近傍の地上に設置して使用するもので、図示を省略した電力供給ラインを介して電力が供給され、かつ、同じく図示を省略した電力供給ラインを介して排水ユニット70から水中ポンプ51、後述のマス吸引ボックス80及び接続卜す800に電力を供給する。
【0021】
さらに、排水ユニット70は、図2、図3に示すように、内部に真空タンク72を備えている。
真空タンク72は、円筒状を成し、真空ポンプ73により内部を負圧にして汚水マス31及び第2下水管22の汚水を吸引する。
真空ポンプ73のポンプ吸引パイプ73aが、図5に示すように、真空タンク72の上部に接続されている。この真空タンク72の上部には、ラビリンス部74が設けられており、真空タンク72の内部に吸引した汚水が真空ポンプ73に吸引されないようになっている。
【0022】
一方、真空タンク72のラビリンス部74において真空ポンプ73による吸引側とは反対側の近傍に、タンク吸引パイプ72aが接続されている。そして、このタンク吸引パイプ72aの反対側の端部は、接続ライン81を介して図2に示す接続ボックス800に接続されている。
【0023】
なお、ポンプ吸引パイプ73aには、図3に示すように、大気開放する三方弁73bが設けられている。この三方弁73bは真空ポンプ73を緊急停止した時に、大気側に開弁して真空タンク72を大気に開放し、接続ライン81からの汚水の吸引を停止する役割をもつ。
また、真空タンク72は、ドレーンパイプ72dを介して排水管71に接続されている。このドレーンパイプ72dは、真空タンク72内の点検時等に、タンク内の汚水を排出するためのもので、通常は閉弁している手動バルブにより開閉可能となっている。
【0024】
図2に示すように、真空タンク72に接続ライン81を介して接続された接続ボックス800は、さらに、マス吸引ボックス80に接続されていると共に、バキュームライン83を介して第2下水管22に接続されている。
すなわち、接続ボックス800は、接続ライン81を、複数に分岐し、この分岐の1本を、バキュームライン開閉バルブ120を介してバキュームライン83に接続し、他の分岐は、マス吸引ライン(吸引ライン)82を介してマス吸引ボックス80に接続して使用する。
なお、バキュームライン開閉バルブ120は、バキュームライン83に接続された常閉のバルブで、開弁することにより第2下水管22の第2下水管止水栓42よりも上流を、バキュームライン83及び接続ライン81を介して真空タンク72に接続する。
【0025】
また、図2では、マス吸引ライン82に接続する分岐部分は、2本のみ示しているが、例えば、10本程度に分岐されている。そして、この分岐部分は、通常は栓やカバーなどにより閉塞されており、接続する汚水マス31の数に応じて副マス吸引ライン82bを接続して使用する。そこで、図2では、接続対象の汚水マス31として2カ所を示していることから、分岐部分及び副マス吸引ライン82bとして2本のみ示し、他は、図示を省略している。
【0026】
マス吸引ボックス80は、図2に示すように、汚水マス31毎に独立して設置され、かつ、各汚水マス31にマス吸引ライン82を介して接続されている。さらに、マス吸引ボックス80には、両吸引ライン82,82bの間を開閉するマス吸引ライン開閉バルブ110が設けられている。
【0027】
マス吸引ライン82の先端部には、汚水マス31の水位が設定高さになると信号を出力するマスフロートスイッチ102が設置されている。このマスフロートスイッチ91の信号は、マス吸引ボックス80の信号ターミナル80a、接続ボックス800の信号ターミナル800a及び信号ライン190を介して排水ユニット70内に設置されているコントロールユニット100に入力される。
【0028】
また、コントロールユニット100は、詳細は後述するが、マス吸引ライン開閉バルブ110及びバキュームライン開閉バルブ120の開閉制御により、汚水マス31の水位が所定の高さになるとその汚水を真空タンク72に吸引し、かつ、設定時間毎に第2下水管22の汚水を吸引する制御を行う。
なお、各汚水マス31では、排水管25の入口は、マス止水栓60で塞がれている。このマス止水栓60としても、各下水管止水栓41〜43と同様に、コンプレッサ79(図3参照)から、エアホース(図示省略)を介してエアーが供給されることで膨張して止水するバルーンストッパを用いている。
【0029】
上述のようにして、真空タンク72に吸引された汚水は、排送ポンプ75により排水管71に吐出され、リアライン53を介して第3下水管止水栓43よりも下流の第4下水管24へ移送される。排送ポンプ75は、図5に示すように、真空タンク72の底部に設置されている。そして、排送ポンプ75の吐出側には排送パイプ76が接続され、この排送パイプ76が、図3及び図7に示すように、真空タンク72の外部に延在されて排水管71に接続されている。排送パイプ76の途中には逆止弁76aが設けられており、排水管71内の汚水が排送パイプ76を通って真空タンク72に逆流しないようになっている。
本実施の形態では、排送ポンプ75として、一般にカッタポンプと呼ばれ、内部に切刃、破砕羽根車等の粉砕機構75aを有し、汚水に含まれる固形物を細かく破砕可能なポンプを用いている(図5参照)。
【0030】
また、図7に示すように、排水ユニット70の側面には、真空タンク72の内部を見ることができる窓77が設けられている。
さらに、排水ユニット70の側面には、図6に示すように、操作盤101が設けられており、操作盤101の下方には、配線類を接続するための配電パネル701が設けられている。配電パネル701は、ドア702により下部を除いて覆われ、このドア702により覆われていない下部を通して、配電パネル701に接続された信号ライン190や電力供給ライン(図示省略)が配索される。また、図4に示すように、排水ユニット70において操作盤101が設けられているのと反対側の側面には、換気扇70fが設けられている。
加えて、排水ユニット70の底部には、このユニットを支持する架台78が設けられている。この架台78は、図8に示すように、梯子状であり脚を備えた骨格部材78fと、この骨格部材78fの上面に配置されてユニットの底面全体を覆う底板(図示省略)とを備えている。そして、底板の内側面は、全面が防音材78aにより覆われている。
【0031】
次に、図9に基づいてコントロールユニット100について説明する。
コントロールユニット100の入力側には、操作盤101、マスフロートスイッチ102、水中ポンプフロートスイッチ103、上部レベルセンサ104、中間レベルセンサ105、下部レベルセンサ106、圧力センサ107、異常検出用センサ108が接続されている。
一方、コントロールユニット100の出力側には水中ポンプ51、真空ポンプ73、排送ポンプ75、マス吸引ライン開閉バルブ110、バキュームライン開閉バルブ120、通知装置130が接続されている。
【0032】
操作盤101は、装置全体の駆動、駆動停止等の操作を行うためのもので、図示を省略した起動スイッチ、停止スイッチ、モード切換スイッチなどの複数のスイッチが設けられている。なお、モード切換スイッチは、装置の使用時間帯、朝、昼、夜、深夜等により、一般的な時間帯による汚水量の変化に応じ、駆動パターンを切り換えるスイッチである。なお、この駆動パターンの違いについては、詳細な説明は省略する。
【0033】
マスフロートスイッチ102は、マス吸引ライン82の先端部に取り付けられ、信号ライン190、マス吸引ボックス80及び接続ボックス800の信号ターミナル80a,800aを介してコントロールユニット100に接続されている。したがって、装置の使用時には、マスフロートスイッチ102は、マス吸引ライン82の先端部と共に汚水マス31に設置され、汚水マス31の水位を示す信号(本実施の形態では、設定された水位となったことを示す信号)を、コントロールユニット100に入力する。
【0034】
水中ポンプフロートスイッチ103は、水中ポンプ51と共に第1マンホール11内に設置され、第1マンホール11の水位を示す信号に応じて信号(本実施の形態では、設定された水位となったことを示す信号)を出力する。
【0035】
上部レベルセンサ104、中間レベルセンサ105、下部レベルセンサ106は、それぞれ、図5に示すように、真空タンク72内に設置されている。
下部レベルセンサ106は、真空タンク72の下部に設置され、真空タンク72内の汚水の水位が、排送ポンプ75により排送可能な最低限の水位まで低下したことを検出するセンサである。後述するが、真空タンク72の汚水の水位が、下部レベルセンサ106による検出水位まで低下すると、コントロールユニット100は、排送ポンプ75による汚水の排送を停止させる。
【0036】
中間レベルセンサ105は、真空タンク72の中間部に設けられ、真空タンク72の水位が排送ポンプ75による排送を開始する水位となったことを検出する。後述するが、真空タンク72の汚水の水位が中間レベルセンサ105の検出水位まで上昇すると、コントロールユニット100は、排送ポンプ75を駆動させて真空タンク72内の汚水を、作業区間KKよりも下流の第4下水管24に排送する。
【0037】
上部レベルセンサ104は、真空タンク72の上部に設置され、異常水位を検出する。後述するが、コントロールユニット100は、上部レベルセンサ104が異常水位を検出すると、真空ポンプ73を緊急停止させ真空タンク72への汚水の吸引を停止する。
【0038】
圧力センサ107は、真空タンク72に設置されて真空タンク72の圧力を検出するセンサである。
異常検出用センサ108は、マス吸引ボックス80におけるマス吸引ライン開閉バルブ110、各止水栓41,42,43などの異常を検出するために設けられているセンサであって、詳細については後述する。
【0039】
次に、コントロールユニット100の出力側に接続されたマス吸引ライン開閉バルブ110及びバキュームライン開閉バルブ120について説明する。
マス吸引ライン開閉バルブ110は、常閉のバルブで、開弁することにより汚水マス31と真空タンク72とを、接続ライン81、副マス吸引ライン82b、マス吸引ライン82を介して接続させ、汚水マス31の汚水を真空タンク72に吸引する。また、コントロールユニット100からマス吸引ライン開閉バルブ110への開閉信号は、信号ターミナル800a,80aを介して伝達される。
なお、前述のように、接続ボックス800に接続された副マス吸引ライン82b、マス吸引ボックス80及びマス吸引ライン開閉バルブ110、マス吸引ライン82は、図2では、2組のみ示しているが、これらは、接続ボックス800に、それ以上の複数(例えば、10個程度)接続可能となっている。そして、作業区間KKに接続された汚水マス31の数に応じ、マス吸引ボックス80を設置し、各マス吸引ライン82を各汚水マス31内に設置する。
【0040】
次に、図9に戻り、通知装置130について説明する。
通知装置130は、下水管迂回排水装置に後述する異常が発生したときに、電話回線及びインターネットを含む公衆回線200を介して、予め設定された登録者に異常を報せる装置である。本実施の形態では、公衆回線200を介して、登録者の複数の携帯電話202及びパーソナルコンピュータ203に異常を報せるメールを配信する。なお、メールの他にも、登録者の固定電話201や携帯電話202に音声ガイダンスにより異常を報せたり、あるいはFAXにより異常を報せたりするようにしてもよい。
【0041】
次に、コントロールユニット100において実施する制御を、図10〜図14のフローチャートに基づいて説明する。
(水中ポンプ51の制御)
図10は水中ポンプ51の駆動制御の処理を示している。
この制御は、操作盤101(図9参照)により駆動開始のスイッチ(図示省略)が投入された時点でスタートし、駆動停止のスイッチ(図示省略)が投入されて終了する。
【0042】
この水中ポンプ51は、S511において水中ポンプフロートスイッチ103がONになったか否か、すなわち、第1マンホール11の汚水の水位が設定値よりも高いか否か判定し、ONの場合(水位が設定値よりも高い場合)水中ポンプ51を駆動させ(S512)、OFFの場合、水中ポンプ51を停止させる(S513)。
【0043】
したがって、水中ポンプ51は、装置の使用中、第1マンホール11の汚水の水位が設定値よりも高くなると、この水位が設置値よりも低くなるまで駆動する。
なお、水中ポンプ51が駆動した場合、第1マンホール11の汚水は、フロントライン52から、排水ユニット70の排水管71を経由し、リアライン53を通り、第3下水管止水栓43の下流の第4下水管24に移送される。
【0044】
(真空ポンプの駆動制御)
図11は真空ポンプ73の駆動制御の処理を示している。この制御も、操作盤101(図9参照)により駆動開始のスイッチ(図示省略)が投入された時点でスタートし、駆動停止のスイッチ(図示省略)が投入されて終了する。
この真空ポンプ73の駆動制御において、コントロールユニット100は、圧力センサ107が検出する真空タンク72内の圧力に基づいて、真空タンク72内の圧力を設定された負圧に調節する制御を実施する。
すなわち、図11のフローチャートに示すように、ステップS731では、圧力センサ107の検出圧力Ptが、あらかじめ設定された第1閾値Pset1(例えば、Pset1=−700mmHg程度の値)以上であるか判定し、Pt≧Pset1であればステップS732に進んで、真空ポンプ73を駆動させる。
【0045】
次のステップS733では、検出圧力Ptがあらかじめ設定された第2閾値Pset2(Pset2<Pset1であり、Pset2は、例えば、−760〜800mmHg程度の値である)以下であるか判定し、検出圧力Ptが第2閾値Pset2よりも大きければ真空ポンプ73の駆動を続け、検出圧力Ptが第2閾値Pset2以下となるとステップS734に進んで真空ポンプ73を停止させる。
したがって、真空タンク72は、装置の駆動中は、常時、第1閾値Pset1と第2閾値Pset2との間の負圧に維持される。
【0046】
(真空タンク72における吸引及び排送)
図12は真空タンク72における吸引及び排送制御の処理の流れを示している。
この制御も、操作盤101(図10参照)により駆動開始のスイッチ(図示省略)が投入された時点でスタートし、駆動停止のスイッチ(図示省略)が投入されて終了する。また、真空タンク72の吸引にあたり、図12(a)に示す汚水マス制御と図12(b)に示すバキュームライン制御とを並列に実行している。
【0047】
まず、汚水マス制御について説明すると、この汚水マス制御は、汚水マス31に所定の水位の汚水が溜まった場合に、これを真空タンク72に吸引する制御である。
この汚水マス制御では、ステップS111において複数のマスフロートスイッチ102のいずれかがONになったか否か判定する。そして、このステップS111においてONと判定された場合、ステップS112に進んで、ONとなっているマスフロートスイッチ102が設置されているマス吸引ライン82に接続されているマス吸引ライン開閉バルブ110を開弁させる。
したがって、汚水マス31に溜まった汚水は、マス吸引ライン82、マス吸引ボックス80、副マス吸引ライン82b、接続ボックス800、接続ライン81を介して真空タンク72に吸引される。
【0048】
そして、マス吸引ライン開閉バルブ110の開弁は、ステップS113の処理に基づいて、ONとなったマスフロートスイッチ102がOFFに切り換わるまで続行し、マスフロートスイッチ102がOFFになると、ステップS114に進んで、開弁していたマス吸引ライン開閉バルブ110を閉弁させる。
【0049】
以上のように、複数の汚水マス31の何れかに汚水が溜まると、その汚水マス31の水位が設定値になるまで真空タンク72に吸引される。この作動は、汚水マス31ごとに独立して実行される。なお、マスフロートスイッチ102には、水位上昇時にONとなる水位よりもと水位下降時にOFFとなる水位を低くするようにヒステリシスを与えるのが好ましい。
【0050】
次に、図12(b)に示すバキュームライン制御について説明する。
このバキュームライン制御は、一定時間が経過する毎に、バキュームライン83を介して第2下水管22に溜まった汚水を吸引する制御である。
【0051】
この場合、まず、ステップS121において、コントロールユニット100に内蔵の第1タイマのカウント値Tn1が、あらかじめ設定された第1設定時間Tset1を超えたか否か判定し、第1設定時間Tset1を超えた場合、ステップS122に進んでバキュームライン開閉バルブ120を開弁させる。
したがって、第2下水管22において両下水管止水栓41,42に溜まった汚水が、バキュームライン83、接続ボックス800、接続ライン81を経由して真空タンク72に吸引される。
【0052】
また、この吸引が開始された時点から、第2タイマのカウントが開始される。そして、ステップS123に基づいて、そのカウント値Tn2が予め設定された第2設定時間Tset2に達するまではバキュームライン開閉バルブ120の開弁が維持され(ステップS123→S122)、カウント値Tn2が第2設定時間Tset2に達すると、ステップS124に進んで、バキュームライン開閉バルブ120が閉弁されて、上記吸引が停止される。
【0053】
なお、第1タイマのカウントは、操作盤101の操作により装置の作動が開始された時点から開始される。そして、第1タイマのカウント値Tn1が第1設定時間Tset1に達するとクリアされて再び0からカウントされる。
第2タイマのカウントは、上述のようにバキュームライン開閉バルブ120が開弁されると開始される。そして、第2タイマのカウント値Tn2が第2設定時間Tset2に達するとクリアされる。
したがって、第2下水管22の汚水は、一定時間(Tset1)毎に、設定時間(Tset2)だけ吸引される。
【0054】
(真空タンクの汚水の排送)
次に、真空タンク72に溜まった汚水を第4下水管24に排送する制御について図13のフローチャートに基づいて説明する。この制御も、操作盤101(図10参照)により駆動開始のスイッチ(図示省略)が投入された時点でスタートし、駆動停止のスイッチ(図示省略)が投入されて終了する。
この制御は、真空タンク72に設置された中間レベルセンサ105及び下部レベルセンサ106の検出に基づいて行う。
すなわち、ステップS751において中間レベルセンサ105がONであるか否か判定し、ONである場合、ステップS752に進んで、排送ポンプ75を駆動させる。また、排送ポンプ75の駆動後は、ステップS753において下部レベルセンサ106がOFFであるか、すなわち真空タンク72の水位が、下部レベルセンサ106がOFFとなるまで低下したか否か判定し、OFFとなるまでステップS752(排送ポンプ75の駆動)を繰り返す。
そして、下部レベルセンサ106がOFFとなるとステップS754に進んで、排送ポンプ75を停止させる。
【0055】
以上の処理に基づいて、真空タンク72の水位上昇により中間レベルセンサ105がONとなるたびに、排送ポンプ75が駆動されて、真空タンク72の汚水が排送パイプ76を介して排水管71に排出される。また、排水管71に排出された汚水は、リアライン53を経由して第4下水管24に排送される。
【0056】
さらに、本実施の形態では、排送ポンプ75が真空タンク72内の汚水を上記のように排水管71に排水する際に、粉砕機構75aにより汚水に含まれる異物を破砕する。したがって、汚水マス31の家庭排水や、第1下水管止水栓41を通過して第2下水管22に流れ込んだ汚水に異物が含まれていても、排送ポンプ75において目詰まりすることなく円滑に排送される。
【0057】
(異常判定制御)
次に、異常判定制御を図14のフローチャートにより説明する。この制御も、操作盤101(図10参照)により駆動開始のスイッチ(図示省略)が投入された時点でスタートし、駆動停止のスイッチ(図示省略)が投入されて終了する。
この異常判定制御では、最初のステップS721において、異常が検出されたか否か判定し、異常が検出されれば次のステップS722に進み、異常が検出されなければ、ステートに戻る。なお、コントロールユニット100において、この異常検出判定を行う部分、及びこの判定に使用するセンサが、異常検出手段に相当する。
異常検出時に進むステップS722では、異常に対応した処理を実行し、さらに、次のステップS723に進んで、通知装置130により異常発生を通知する。
【0058】
次に、異常検出、異常対応処理、異常通知について説明する。
本実施の形態では、異常検出として、真空タンク72の異常、マス吸引ボックス80の異常、各止水栓41〜43、60の異常を検出するようにしている。
まず、真空タンク72の異常の検出は、真空タンク72に設置した上部レベルセンサ104により行う。すなわち、排送ポンプ75の異常により汚水が排送されずに真空タンク72の水位が異常に上昇し、上部レベルセンサ104がOFFからONに切り換わると、真空タンク72に異常が発生したと判定する。
この場合、異常に対応する異常対応処理として、まず、真空ポンプ73及び排送ポンプ75を緊急停止させる。そして、三方弁73bを大気開放させる。さらに、前述した汚水マス31の汚水を吸引する汚水マス制御及び第2下水管22の下水を設定時間毎に吸引するバキュームライン制御を停止する。
【0059】
また、マス吸引ボックス80の異常は、一例として、マス吸引ライン開閉バルブ110の正常な開閉を検出できるセンサ(これが、異常検出用センサに相当する)を設置しておき、コントロールユニット100が、マス吸引ライン開閉バルブ110の開弁を指令しているのに、異物の詰まりなどにより開弁されない場合、あるいは閉弁を指示しているのに異物の詰まりなどにより閉弁されない場合、異常と判定する。あるいは、このようなマス吸引ライン開閉バルブ110における異物の詰まりによる開弁異常を検出するのにあたり、このようなセンサを設置することなく、コントロールユニット100が、マス吸引ライン開閉バルブ110の開弁を指令しているのに、マスフロートスイッチ102が切り換わらない場合に、マス吸引ボックス80が正常に機能していないと判定することもできる。
この場合、異常に対応する異常対応処理として、マス吸引ライン開閉バルブ110の開弁指令の出力を停止する。
【0060】
各止水栓41〜43、60の異常は、排水ユニット70において、コンプレッサ79と各止水栓41〜43、60を結ぶ図示を省略したエアホース内の圧力を検出する圧力センサ(これが異常検出用センサに相当する)を用い、この圧力センサの検出圧力が異常値まで低下した場合、異常発生と判定する。
この場合には、異常に対応する異常対応処理として、この検出値が異常値に低下したエアホース(図示省略)に、コンプレッサ79からエアーを供給し、止水を確実に行う。
なお、ステップS723で実行する異常通知は、前述したように、登録された携帯電話202及びパーソナルコンピュータ203へメールにより通知を行う。この場合、検出された異常の内容についても報せるようにするのが好ましい。
【0061】
(実施の形態の作用)
以下に、実施の形態の下水管迂回排水装置の使用方法について説明する。
まず、作業区間KKとしての第3下水管23の上流及び下流に配置された第2マンホール12及び第3マンホール13の間の地上に排水ユニット70を設置する。また、第3下水管23に接続された各汚水マス31に応じてマス吸引ボックス80を設置し、さらに、各マス吸引ボックス80と排水ユニット70との間に接続ボックス800を設置する。
【0062】
そして、排水ユニット70にフロントライン52、リアライン53、接続ライン81を接続する。また、フロントライン52には、水中ポンプ51を接続すると共に、図示を省略した電力供給ライン及び水中ポンプ51に設けられた水中ポンプフロートスイッチ103の信号ライン190を排水ユニット70の配電パネル701に接続する。そして、マス吸引ボックス80と排水ユニット70とを信号ライン190及び電力供給ライン(図示省略)で接続する。
【0063】
一方、マス吸引ボックス80には、マス吸引ライン82及び副マス吸引ライン82bを接続する。そして、各副マス吸引ライン82bを接続ボックス800に接続し、この接続ボックス800のバキュームライン開閉バルブ120にバキュームライン83を接続する。また、マス吸引ライン82の先端部に取り付けられたマスフロートスイッチ102に接続された信号ライン190を接続ボックス800の信号ターミナル800aに接続する。
【0064】
次に、作業区間KKとしての第3下水管23及びその上下流の第2マンホール12、第3マンホール13に汚水が流れ込まないように第2下水管22の上下両端部に第1下水管止水栓41及び第2下水管止水栓42を設置する。このとき、第2下水管止水栓42にはバキュームライン83を接続しておく。
さらに、各汚水マス31において、排水管25の開口部分にマス止水栓60を設置する。
以上の作業により、作業区間KKには汚水が流れ込まないようになる。
その後、作業区間KKの下流の第4下水管24の上流側端部にリアライン53を接続した第3下水管止水栓43を設置する。
【0065】
そして、フロントライン52に接続した水中ポンプ51を第1マンホール11に設置する。この状態で、排水ユニット70を起動させると、水中ポンプ51が、作業区間KKの上流の第1マンホール11の汚水を、作業区間KKを迂回して、その下流の第4下水管24に流す。
【0066】
また、作業区間KKの第3下水管23に接続された汚水マス31の汚水は、汚水マス31の水位が設定水位になると真空タンク72に吸引される。
さらに、第2下水管22に流入した汚水も、設定時間毎に真空タンク72に吸引される。
そして、真空タンク72に吸引された汚水は、汚水の水位が高くなるたびに、排送ポンプ75により排水管71からリアライン53を介して第4下水管24に排送される。
【0067】
したがって、家庭の排水を止めることなく、かつ、下水道を使用しながら、作業区間KKの第3下水管23において、清掃、検査、補修、交換等の作業を行うことができる。
また、水中ポンプ51による第1マンホール11の汚水の吸引、汚水マス31の汚水の吸引、第2下水管22の汚水の吸引は、コントロールユニット100による自動制御により工事中、継続して実行される。
【0068】
この場合に、各汚水は、外部に露出されないため、外部に汚水の異臭を与えにくく、家庭等の外部環境に悪影響を与え難い。同時に、作業員も、汚水、汚泥に直接触れないようにでき、作業環境にも優れる。
【0069】
(実施の形態の効果)
以下に、実施の形態の下水管迂回排水装置の効果を列挙する。
1)本実施の形態では、真空タンク72内の汚水を外部に排送する排送ポンプ75として、粉砕機構75aを備えたカッタポンプを用いた。
したがって、汚水マス31から吸引した家庭排水や、作業区間KKの上流の第2下水管22から吸引した汚水に異物が混入していても、この異物は粉砕機構75aで破砕され、排送ポンプ75の目詰まりを防止できる。
さらに、この目詰まり防止により、真空タンク72のメンテナンスの手間を削減でき、かつ、真空タンク72の耐久性を向上できる。
【0070】
2)実施の形態では、異常発生時には、通知装置130により公衆回線200を介して、複数の携帯電話202、パーソナルコンピュータ203に対し、メールにより異常発生を通知するようにした。
このように、複数の携帯電話202、パーソナルコンピュータ203に対し、記録に残るメールにより異常発生を通知するため、工事管理者は、音声などの通知のみの場合よりも、確実に異常発生を知って対応することができ、メンテナンス性を向上できる。
さらに、異常の検出内容に応じ、真空タンク72の異常か、マス吸引ボックス80の異常か、各止水栓41〜43,60の異常かを報せるようにすれば、管理者は、より迅速で的確な対応が可能となる。
加えて、音声ガイダンスやFAXによる通知も並行して行うようにすれば、管理者により確実に異常を報せることができる。
特に、本実施の形態では、異常検出として、マス吸引ライン開閉バルブ110における異物の詰まりになどよる開閉異常を検出するようにした。これにより、上記1)のように真空タンク72に至る前の異物を原因とする異常を検出し、これに対応することが可能であり、家庭排水に含まれる異物に対する信頼性がより高くなる。
【0071】
3)実施の形態では、架台78の底板の内側に防音材78aを設けた。
したがって、排水ユニット70の下側から地盤等に伝達される振動が吸収されて、効率よく騒音レベルを改善できる。
【0072】
4)実施の形態では、各マス吸引ボックス80に接続された副マス吸引ライン82b、汚水マス31の水位を検出するマスフロートスイッチ102の信号ライン190、マス吸引ライン開閉バルブ110に接続された信号ライン190を、接続ボックス800にまとめて接続するようにした。加えて、接続ボックス800には、バキュームライン開閉バルブ120を設置した。
したがって、コントロールユニット100と、各バルブ110,120及びマスフロートスイッチ102との通信を行う信号ライン190の接続を、1つの信号ターミナル800aによりまとめて行うことができ、信号ライン190の接続作業や信号ライン190の配索作業の簡略化を図ることができる。
【0073】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形および置換を加えることができる。
【0074】
実施の形態では、異常検出手段は、真空タンクにおける水位の上昇、マス吸引ライン開閉バルブの異常、各止水栓の異常を検出するようにしたが、異常の検出はこの2つに限定されることはない。例えば、真空ポンプや排送ポンプにおける温度異常を検出するようにしたり、迂回路における流量に基づいて流量が異常を検出したり、真空タンクの圧力異常を検出するようにしたりしてもよい。
【0075】
また、実施の形態では、バキュームラインによる第2下水管の汚水の吸引は、一定時間毎に、設定時間だけ吸引するようにしたがこれに限定されない。例えば、第2下水管の水位を検出し、この水位に応じて吸引を行うようにしてもよい。
【0076】
また、実施の形態では、排水ユニットの底面を覆うカバー(架台)の内側に防音材を設置したが、防音材の設置位置は、底面のみに限定されるものではない。例えば、底面に加え、側面や上面に設置した場合、より騒音レベルを改善可能である。
【0077】
また、実施の形態では、作業区間KKの上流側止水栓としての第2下水管止水栓の上流に直列に第1下水管止水栓を用いた例を示したが、この第1下水管止水栓に代えて従来技術のようにネットを用いてもよい。
【0078】
また、実施の形態では、作業区間を迂回する迂回路として、フロントライン、排水管、リアラインを用い、排水ユニットに設置された排水管を経由する例を示したが、これに限定されず、迂回路は、排水ユニットの外部に独立して設けてもよい。この場合、排送ポンプからの汚水は、この外部の迂回路に配送してもよいし、迂回路とは独立して作業区間の下流側に排送してもよい。
【符号の説明】
【0079】
11 第1マンホール
12 第2マンホール(作業区間)
13 第3マンホール(作業区間)
21 第1下水管(上流の下水管)
22 第2下水管
23 第3下水管(作業区間)
24 第4下水管(下流の下水管)
25 排水管
31 汚水マス
41 第1下水管止水栓(上流側止水栓)
42 第2下水管止水栓(上流側止水栓)
43 第3下水管止水栓(下流側止水栓)
50 迂回排水装置
51 水中ポンプ
52 フロントライン(迂回路)
53 リアライン(迂回路)
60 マス止水栓
70 排水ユニット
71 排水管(迂回路)
72 真空タンク
73 真空ポンプ
75 排送ポンプ
75a 粉砕機構
78 架台(底面)
78a 防音材
80 マス吸引ボックス
82 マス吸引ライン(吸引ライン)
100 コントロールユニット(異常検出手段)
104 上部レベルセンサ(異常検出手段)
108 異常検出用センサ(異常検出手段)
130 通知装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚水マスから延びる排水管が接続された下水管を含む作業区間を迂回して、この作業区間の上流側の下水管の汚水を前記作業区間の下流側の下水管へ流す下水管迂回排水装置であって、
前記作業区間への上流側からの汚水の流入を阻止する上流側止水栓と、
前記作業区間への下流側からの汚水の流入を阻止する下流側止水栓と、
前記上流側止水栓よりも上流側と前記下流側止水栓よりも下流側とを接続する迂回路を介して、前記上流側の汚水を前記作業区間を迂回させて前記下流側に排水する迂回排水装置と、
前記汚水マスから前記排水管への汚水の流入を阻止するマス止水栓と、
前記汚水マスの汚水を、吸引ラインを介してタンクに吸引し、汚水内の異物を粉砕する粉砕機構を備えた排送ポンプにより前記タンク内の汚水を前記作業区間の下流側に排送する排水ユニットと、
を備えていることを特徴とする下水管迂回排水装置。
【請求項2】
前記排水ユニットは、異常発生を検出する異常検出手段と、この異常検出手段の異常発生検出時に、公衆回線を介して異常発生を通知する通知装置を備えていることを特徴とする請求項1に記載の下水管迂回排水装置。
【請求項3】
前記排水ユニットの外周を覆うカバーは、少なくとも底面に防音材が設置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の下水管迂回排水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−112946(P2013−112946A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257972(P2011−257972)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(599070743)株式会社日晃機械商会 (2)
【Fターム(参考)】