説明

下着

【課題】ごく軽い「尿漏れ」に悩む比較的若い世代の女性が、周りの人に気付かれることなく、また、抵抗感無く着用でき、しかも水分が容易に身生地に滲むことが無い下着を提供する。
【解決手段】前身頃3と後身頃4とマチ部5を備え、前記マチ部5の肌側に吸水性の生地片6を備えている下着1であって、前記吸水性の生地片6が、熱融着弾性糸とそれ以外の糸をプレーティング編みで編成し、ヒートセット加工で前記熱融着弾性糸を溶融することによりほつれ止め加工した編地で構成されるとともに、肌側とは反対面が撥水加工されており、前記マチ部5の前縁部5aと後縁部5bで身生地2に縫着処理され、左右の脇部6c,6dが前記マチ部5の幅5c,5dより幅狭に切りっ放し処理されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前身頃と後身頃とマチ部を備え、前記マチ部の肌側に吸水性の生地片を備えている下着に関し、特に軽度の尿失禁に対応可能な下着に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、女性は出産時の体への負荷や、加齢によるホルモンバランスの変化などが原因で、30代以降の世代で軽い「尿漏れ」があることが知られている。そして、更年期を迎える40代半ばを境目に、軽い「尿漏れ」に悩む中高年女性の数は増加する。この年代の「尿漏れ」は、加齢とともに筋肉の弾力性が低下して、骨盤底筋や尿道括約筋が緩むことによって生じる腹圧性尿失禁が多く、更に加齢を重ねると、尿意を感じたときに我慢できない切迫性尿失禁の症状も現れる場合がある。
【0003】
老齢者の比較的多量の尿失禁に対応するために、成人用オムツや、吸水パッドが装着または縫着された下着が開発されている。そのような下着の例が、特許文献1,2に開示されている。
【0004】
特許文献1には、吸水性パッドをパンツの内面に装着する際、遮断片を介して装着することにより、ミシンの穿孔穴や縫目から尿などの体液が伝播し、滲み出す現象を未然に防止できるようにした失禁用パンツが提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、着用者の体液が外部に漏れるのを抑えるパッドが縫着又は装着可能なクロッチ部を備え、吸水パッドからの漏れが生じた場合であっても、着用時の不快感を抑えるための下着が提案されている。
【0006】
当該下着は、パッドの縫着面又は装着面を有する吸収性の肌側布と、肌側布に対して縫着面又は装着面の反対側に配置された撥水性及び防水性の少なくとも一方を有する裏当布と、肌側布の脇縁部及び裏当布の脇縁部に沿って配置された撥水性及び防水性の少なくとも一方を有する第1の脇布とを備えたクロッチ部を有し、裏当布の脇縁部は、肌側布の脇縁部から張り出す張出部分を有し、第1の脇布は、張出部分よりも広い幅を有し、第1の脇布の脇縁部が折り返された状態で肌側布の脇縁部に縫着されることにより、縫着面又は装着面に対して隆起する隆起部が形成されている。
【0007】
更に、特許文献3には、表生地、保水層、吸水拡散層、防水生地がこの順番で設けられている尿漏れ対策生地を用いた下着が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4266604号公報
【特許文献2】特開2010‐261135号公報
【特許文献3】特開2005‐111181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1,2に記載された下着は、比較的多量の尿漏れに対応するための厚手の吸水パッドが装着された下着であり、心理的な抵抗感が強く、装着していることが外衣から認識され易いこともあり、軽度な尿失禁に悩む30代から50代の比較的若い世代の女性にとって容易に使用できるものではなかった。
【0010】
このような人々の要望に応えるべく、前身頃と後身頃とマチ部を備え、少なくともマチ部に薄形の吸水パッドが装着可能なショーツが提供されているが、吸水パッドを取り替える等の作業が煩わしいという問題がある。
【0011】
そこで、特許文献3に記載されたような吸水層、保水層、防水層等を備えた多層の生地片を予めマチ部に縫着した下着も提案されているが、マチ部が厚手になり着心地に違和感があり、また、僅かな量であっても生地片に浸潤した水分がミシンの穿孔穴や縫目を伝って身生地に滲み出して不快感を与え、場合によっては身生地に滲み出した水分で外衣が汚れる虞があるという問題があった。
【0012】
水分がミシンの穿孔穴や縫目を伝って身生地へ滲み出すという問題を回避するために、薄手のショーツに対して許文献1,2に記載されたような構成を採用するのは困難であり、仮に採用しても、マチ部が厚手になりヘムラインが外衣に現れ易いという問題もあった。
【0013】
本発明の目的は、上述した問題に鑑み、ごく軽い「尿漏れ」に悩む比較的若い世代の女性が、周りの人に気付かれることなく、また、抵抗感無く着用でき、しかも水分が容易に身生地に滲むことが無い下着を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の目的を達成するため、本発明による濡れ戻り防止生地の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、前身頃と後身頃とマチ部を備え、前記マチ部の肌側に吸水性の生地片を備えている下着であって、前記吸水性の生地片が、熱融着弾性糸とそれ以外の糸をプレーティング編みで編成し、ヒートセット加工で前記熱融着弾性糸を溶融することによりほつれ止め加工した編地で構成されるとともに、肌側とは反対面が撥水加工されており、前記マチ部の前縁部と後縁部で身生地に縫着処理され、左右の脇部が前記マチ部の幅より幅狭に切りっ放し処理されている点にある。
【0015】
身体から微量の体液の漏出、例えば軽度の尿漏れ等があると、マチ部の肌側に備えた吸水性の生地片によって尿が吸収されて吸水性の生地片で拡散するが、当該生地片の肌側とは反対面、つまり、身生地側に対向する面が撥水加工されているため、尿が身生地側に滲み出すようなことが回避される。仮に当該生地片に浸潤した尿がマチ部の左右脇部に徐々に拡散しても、左右の脇部がマチ部の幅より幅狭に切りっ放し処理されているため、身生地の脇部の縫着部のミシンの穿孔穴や縫目を伝って身生地に滲み出すようなことが無い。
【0016】
このような吸水性の生地片は、熱融着弾性糸とそれ以外の糸をプレーティング編みで編成し、ヒートセット加工で熱融着弾性糸を溶融することによりほつれ止め加工した編地が採用されているので、洗濯を繰り返しても、切りっ放し処理された脇部から繊維がほつれるようなことも無く、見栄えの悪化を招くことが無い。また、マチ部の前縁部と後縁部で身生地に縫着処理され、脇部が身生地に縫着されていないため、当該下着を装着したときに、股部への脇部の当たりが柔らかく、良好な着心地が確保できる。
【0017】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記吸水性の生地片が複数枚重畳されて、前記マチ部の前縁部と後縁部で縫着処理され、肌側に近い側の生地片の左右脇部の幅が、肌側から遠い側の生地片の左右脇部の幅よりも幅狭に切りっ放し処理されている点にある。
【0018】
吸水性の生地片を複数枚重畳することにより、身体から漏出した体液の量が多少増えた場合でも十分に吸収できるようになり、各生地片の撥水加工面で体液の身生地への滲み出しを確実に回避できるようになり、また、各生地片の間に形成される空気層による保温効果等で比較的速く湿気が放出されるようになる。さらに、肌側に近い側の生地片の左右脇部の幅が、肌側から遠い側の生地片の左右脇部の幅よりも幅狭に切りっ放し処理されているため、脇部にかけて次第に厚みが薄くなり、良好な着心地が確保できる。
【0019】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第二の特徴構成に加えて、前記吸水性の生地片のうち、身生地と接する最外側の生地片の左右脇部が前記マチ部の幅と同幅に形成され、当該最外側の生地片の脇部が身生地の脇部に縫着されている点にある。
【0020】
吸水性の生地片を複数枚重畳する場合に、全ての吸水性の生地片をマチ部の幅より幅狭に形成する場合、縫製工程で位置ずれ等が発生すると、肌側の生地片の左右脇部よりも幅広に形成された最外側の生地片が、身生地の脇部より外側にはみ出すような不都合が生じる。仮に縫製工程で位置ずれしなくとも、装着時に同様の不都合が生じる虞もある。しかし、身生地と接する最外側の生地片の左右脇部をマチ部の幅と同幅に形成して、当該最外側の生地片の脇部を身生地の脇部に縫着すれば、そのような不都合が回避され、所期の性能が十分に発揮できるようになる。
【0021】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記吸水性の生地片が、前記熱融着弾性糸に低融点ポリウレタン弾性糸、それ以外の糸に綿糸または綿を含む混紡糸が選択されるとともに、フライス編みまたはスムース編みで編成された編地で構成され、前記マチ部の幅方向と直交する方向に前記編地のウェールが沿う姿勢で配置されている点にある。
【0022】
熱融着弾性糸に低融点ポリウレタン弾性糸、それ以外の糸に綿糸または綿を含む混紡糸を採用して、ほつれ止め加工された編地を採用することにより皮膚に優しい下着が提供できる。また、フライス編みまたはスムース編みで編成された編地で、マチ部の幅方向と直交する方向に編地のウェールが沿う姿勢で配置しているので、マチ部の幅方向に沿って伸縮性に富み良好なフィット感が得られるとともに、身体から漏出した体液を編地のウェールに沿って浸潤させることができ、マチ部の幅方向に浸潤することを効果的に抑制できる。従って、マチ部の身生地の脇部に滲み出すような事態の発生を効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明した通り、本発明によれば、周りの人に気付かれることなく、また、抵抗感無く容易に着用でき、しかも水分が容易に身生地に滲むことが無い、軽度の尿失禁等に良好に対応可能な下着を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による下着を正面から見た説明図
【図2】本発明による下着を背面から見た説明図
【図3】(a)は本発明による下着に組み込まれる吸水性の生地片の説明図、(b)は吸水性の生地片が組み込まれた下着のマチ部の説明図
【図4】(a)は吸水性の生地片が組み込まれた下着の他の実施形態を示すマチ部の説明図、(b)は吸水性の生地片が組み込まれた下着の更に他の実施形態を示すマチ部の説明図
【図5】本発明による下着を用いて軽度の体液の漏出の影響をシミュレーションした結果の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明による下着の一例であるショーツを図面に基づいて説明する。
図1及び図2には、一枚のショーツ1の正面及び背面が示されている。当該ショーツ1は、前身頃3及び後身頃4とマチ部5に裁断された身生地2が互いに縫製されている。
【0026】
当該ショーツ1の身生地2として綿糸によるフライス編みが好適に用いられる。本実施形態では、丸編み機によって前身頃3及び後身頃4が筒状に一体的に編成され、編成された筒状の編地が胴部側及び脚部側に対応する端部で裁断された後に、脚部側にマチ部5が縫着されて二本の脚部8が形成されている。尚、本発明によるショーツ1は、前身頃3と後身頃4がそれぞれ裁断されて縫製されるものであってもよい。
【0027】
身生地2を編成する原糸には、綿等の天然繊維以外に、キュプラ、ビスコースレーヨン等の再生セルロース繊維、吸水性加工されたポリエステル等の合成繊維等、吸水性を有する極細繊維が用いることができ、また、編地としてフライス編みやスムース編み、更には天竺編み等が好適である。
【0028】
脚部8及び胴部側端部9には、幅狭の平目ゴム8a,9a、及び装飾用の伸縮性レース生地8b,9bがナイロン等の伸縮糸によって縫着されている。以後、各部の縫着部位を縫着部10と記す。
【0029】
当該ショーツ1は、約3cc前後の量の軽い「尿漏れ」に悩む女性向けのショーツであり、マチ部5の肌側に吸水性の生地片6が設けられている。当該生地片6は、熱融着弾性糸とそれ以外の糸をプレーティング編みで編成し、ヒートセット加工で熱融着弾性糸を溶融することによりほつれ止め加工した編地で、肌側とは反対面が撥水加工されている。
【0030】
プレーティング編みは、複数本の糸をそれぞれ別の給糸口から、編み針に給糸する方法で、編成ループそれぞれの糸の配置が安定的に定まる。従って、熱融着弾性糸とそれ以外の糸とを別の給糸口から編み針に給糸して編み立てられたプレーティング編地は、各編成ループにおける熱融着弾性糸とそれ以外の糸との配置が安定しているため、全てのループに熱融着弾性糸を隣接させることができ、ヒートセット加工等により熱融着弾性糸を溶融すれば、編地の全てのループで確実にほつれ止め機能が実現できるのである。
【0031】
また、フッ素を主成分とする加工薬剤を用いた撥水加工によって、着用者の肌に悪影響を与えることなくアウターウェアへの体液の移行を防止することができる。ロール捺染やパッド捺染等の捺染手段により、吸水性の生地片6として使用するほつれ止め防止生地の片面に撥水加工を容易に施すことができる。
【0032】
捺染による撥水加工は、ほつれ止め防止生地の20〜80%に施されていることが好ましい。ほつれ止め防止生地の片面に対して、捺染による撥水加工が20%未満では、アウターウェアへの体液の移行を防止するための撥水性が不足し、80%を超える場合は、放湿性が悪化して熱がこもる不具合がある。
【0033】
また、ドット状に捺染することにより撥水加工されていることが好ましい。この構成によれば、ほつれ止め防止生地の片面に撥水機能と放湿機能をバランス良く均等に分布させて付与させることができる。
【0034】
撥水加工は、上述の捺染手段以外の手段(例えば、スプレー式)を用いて行なってもよく、その際も、ほつれ止め防止生地の20〜80%に撥水加工が施されているのが好ましい。
【0035】
さらに、ほつれ止め防止生地が、消臭・抗菌加工されていることが好ましく、ほつれ止め防止生地に吸収させた体液の臭いを消臭機能によって消臭させて、長時間快適な状態を維持することができる。
【0036】
例えば、特許第3787675号に開示されているように、原糸となる繊維をキトサン及び/または修飾キトサン、カルボン酸ポリマー、酸化亜鉛及びバインダー樹脂を含む処理液で処理し、これらの被覆層が形成された繊維を用いることにより、優れた消臭効果を奏し、かつ耐洗濯性(耐久性)の良好な肌着等の生地が得られる。
【0037】
図3(a)には、ほつれ止め防止生地が裁断された吸水性の生地片6が示され、図3(b)には、当該生地片6が身生地2のマチ部5に縫着された状態の一部が示されている。図3(a)に一点差線で示されているように、吸水性の生地片6は、左右の脇部6c,6dがマチ部5の脇部5c,5d幅Wより幅狭WLに裁断され(図3(a)には、身生地2と生地片6のマチ部の幅W,WLが補助線により明示されている)、そのエッジが切りっ放し処理され、縫製等の特別のほつれ止め処理が行なわれていない。そして、図3(b)に示すように、マチ部5の前縁部5aと後縁部5b、及び、前縁部5aと後縁部5bからその近傍の脇部にかけた縫着部10で身生地2に縫着処理されている。
【0038】
本実施形態では、吸水性の生地片6は、熱融着弾性糸に低融点ポリウレタン弾性糸、それ以外の糸に綿糸が選択され、フライス編みまたはスムース編みで編成された編地で構成されている。デリケートな肌に優しい糸として綿糸または綿を含む混紡糸が好適であるが、これに限るものではなく、吸水性を備えた糸であれば他の種類の糸を使用することも可能であり、特に綿糸に制限されるものではない。
【0039】
このようなショーツ1の装着者の身体から微量の体液の漏出、例えば軽度の尿漏れがあると、マチ部2の肌側に備えた吸水性の生地片6によって尿が吸収されながら拡散して保水される。そして、当該生地片6の肌側とは反対面、つまり、身生地2側に対向する面が撥水加工されているため、生地片6から身生地2側への尿の滲み出しが回避される。生地片6の左右の脇部6c,6dがマチ部5の脇部5c,5dの幅より幅狭に切りっ放し処理され、マチ部2の脇部で生地片6と身生地2が縁切りされているため、仮に当該生地片6に浸潤した尿がマチ部5の左右脇部5c,5dに徐々に拡散しても、身生地2の脇部5c,5dの縫着部10のミシンの穿孔穴や縫目を伝って身生地2に滲み出すようなことが無い。
【0040】
さらに、上述したように、当該生地片6はほつれ止め加工されているので、洗濯を繰り返しても、切りっ放し処理された脇部6c,6dから繊維がほつれるようなことも無く、見栄えの悪化を招くことが無い。また、当該生地片6はマチ部5の前縁部5aと後縁部5bで身生地2に縫着処理され、脇部6c,6dが身生地2に縫着されていないため、当該下着を装着したときに、股部への脇部の当たりが柔らかく、良好な着心地が確保できる。
【0041】
また、マチ部5の幅方向と直交する方向に生地片6を構成する編地のウェールが沿う姿勢で配置されていることが好ましく、マチ部5の幅方向に沿って伸縮性に富み良好なフィット感が得られるとともに、身体から漏出した体液を編地のウェールに沿って浸潤させることができ、マチ部5の幅方向に浸潤することを効果的に抑制できる。従って、マチ部5を構成する身生地2の脇部に体液が滲み出すような事態の発生を効果的に抑制することができる。少なくとも編地のウェールの方向とマチ部5の幅方向との交差角度が90度±45度の範囲が好ましく、90度±30度の範囲がより好ましい。
【0042】
このようなショーツ1は、軽度の尿失禁のみならず、閉経後の不正出血等、予期せず排出された微量の体液の吸収も十分に可能であり、周りの人に気付かれることなく、また、抵抗感無く着用でき、しかも水分が容易に身生地に滲むことが無い安心快適な下着となる。
【0043】
図5には、図1で説明した本発明によるショーツ1の着用状態でのマチ部の最下点肌側に、0.5cmの高さからピペットで3ccの水を滴下して放置し、1分経過後に滴下位置の上部にアクリル板を介して6.6g/cm2の荷重を1分間かけて、マチ部下部に配置した濾紙への漏れを確認したときの写真画像が示されている。
【0044】
図5の右側には、対比例として、従来の通常のショーツに対して0.4ccの水を滴下して、同様に濾紙への漏れを確認したときの写真画像が示されている。
【0045】
各々3回繰り返された結果、従来の通常のショーツでは僅か0.4ccの水であっても、濾紙に水が滲み出したのに対して、本発明によるショーツ1によれば、約8倍の3ccの水であっても、全く濾紙に水が滲み出すことが無く、極めて有効であることが確認された。
【0046】
以下、別実施形態を説明する。マチ部5に吸水性の生地片6が複数枚重畳されていてもよい。図4(a)には2枚の地片6(6A,6B)が重畳された場合が示されている。この場合には、生地片6A,6Bがマチ部5の前縁部5aと後縁部5bで共に身生地2に縫着され、肌側に近い側の生地片6Aの左右脇部の幅が、肌側から遠い側の生地片6Bの左右脇部の幅よりも幅狭に切りっ放し処理されていることが好ましい。
【0047】
吸水性の生地片6を複数枚重畳することにより、身体から漏出した体液の量が多少増えた場合でも十分に吸収できるようになり、各生地片6A,6Bの撥水加工面で体液の身生地2への滲み出しを確実に回避できるようになる。
【0048】
また、各生地6A,6Bの間に形成される空気層による保温効果等で比較的速く湿気が放出されるようになる。さらに、肌側に近い側の生地片の左右脇部の幅が、肌側から遠い側の生地片の左右脇部の幅よりも幅狭に切りっ放し処理されているため、脇部にかけて次第に厚みが薄くなり、良好な着心地が確保できる。
【0049】
肌側に近い側の生地片6Aの撥水性能よりも、肌側から遠い側の生地片6Bの撥水性能が高いことが好ましく、肌側に近い側の生地片6Aでは放湿機能を高め、肌側から遠い側の生地片6Bでは撥水機能を高めることで、身生地への染み出しを効果的に防止しながら放湿性能を高めることができる。
【0050】
図4(b)に示すように、吸水性の生地片6(6A,6B)のうち、身生地2と接する最外側の生地片6Bの左右脇部がマチ部5の幅と同幅に形成され、当該最外側の生地片6Bの脇部が身生地2の脇部に縫着されていることが好ましい。
【0051】
吸水性の生地片6を複数枚重畳する場合に、全ての吸水性の生地片を身生地2のマチ部5の幅より幅狭に形成する場合に、縫製工程で位置ずれ等が発生すると、肌側の生地片6Bの左右脇部よりも幅広に形成された最外側の生地片6Aが、身生地2の脇部より外側にはみ出すような不都合が生じる。仮に縫製工程で位置ずれしなくとも、装着時に同様の不都合が生じる虞もある。しかし、身生地2と接する最外側の生地片6Bの左右脇部を身生地2のマチ部5の幅と同幅に形成して、当該最外側の生地片6Bの脇部を身生地2の脇部に縫着すれば、そのような不都合を回避しながらも、所期の性能が十分に発揮できるようになる。
【0052】
図1,2に示したショーツのデザインは一例であり、適宜変更可能であることはいうまでもなく、吸水性の生地片6の左右脇部の幅等もデザインやサイズに合わせて適宜設定可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明による下着は、軽い「尿漏れ」に悩む女性が、抵抗感無く日常的に着用できる快適な下着として、30代以降の幅の広い世代に提供できるようになる。
【符号の説明】
【0054】
1:下着(ショーツ)
2:身生地
3:前身頃
4:後身頃
5:マチ部
6,6A,6B:吸水性の生地片


【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃と後身頃とマチ部を備え、前記マチ部の肌側に吸水性の生地片を備えている下着であって、
前記吸水性の生地片が、熱融着弾性糸とそれ以外の糸をプレーティング編みで編成し、ヒートセット加工で前記熱融着弾性糸を溶融することによりほつれ止め加工した編地で構成されるとともに、肌側とは反対面が撥水加工されており、前記マチ部の前縁部と後縁部で身生地に縫着処理され、左右の脇部が前記マチ部の幅より幅狭に切りっ放し処理されている下着。
【請求項2】
前記吸水性の生地片が複数枚重畳されて、前記マチ部の前縁部と後縁部で身生地に縫着処理され、肌側に近い側の生地片の左右脇部の幅が、肌側から遠い側の生地片の左右脇部の幅よりも幅狭に切りっ放し処理されている請求項1記載の下着。
【請求項3】
前記吸水性の生地片のうち、身生地と接する最外側の生地片の左右脇部が前記マチ部の幅と同幅に形成され、当該最外側の生地片の脇部が身生地の脇部に縫着されている請求項2記載の下着。
【請求項4】
前記吸水性の生地片が、前記熱融着弾性糸に低融点ポリウレタン弾性糸、それ以外の糸に綿糸または綿を含む混紡糸が選択されるとともに、フライス編みまたはスムース編みで編成された編地で構成され、前記マチ部の幅方向と直交する方向に前記編地のウェールが沿う姿勢で配置されている請求項1または2記載の下着。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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