説明

不凍液

【課題】 適用される装置のメンテナンスの間隔を延長すること。
【解決手段】 本発明による不凍液は、第1成分と第2成分とを含んでいる。第1成分は、グリコールである。第2成分は、ベンゼンの分子の6つの水素原子のうちの少なくとも1つの水素原子は、炭化水素基−R−を用いて、次化学式:
−R−OH
により表現される基、または、炭化水素基−R′−を用いて、次化学式:
−O−R′−OH
により表現される基のいずれか1つの基に置換されている。残りの水素原子は、水酸基と、炭化水素基と、アルコキシル基とから選択される基に置換されてもよい。このような不凍液は、接触するゴムを硬化させにくく、その不凍液が適用される装置のメンテナンスの間隔を延長することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不凍液に関し、特に、クーラントとして利用される不凍液に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの推進のために適用される内燃機関は、クーラントにより冷却されている。そのクーラントとしては、寒期に凍結することを防止するために、不凍液が用いられている。その不凍液としては、一般には、凝固点降下剤として用いられているグリコール類にさび止め剤を加えて、水で希釈したものが利用されている。
【0003】
その内燃機関は、そのクーラントを循環させる冷却系統を備えている。その冷却系統は、ゴムから形成されるゴム部品を備えている。このようなゴム部品としては、コネクタのパッキング、ウォーターポンプのメカニカルシール、ラジエタホース、サーモスタットのカバーが例示される。このようなゴム部品は、クーラントに長期間接触することにより硬化する。ゴム部品の硬化は、冷却系統からクーラントが漏洩する一因となる。このため、その内燃機関は、定期的に点検されて、ゴム部品は、クーラントが漏洩する程度に硬化する前に新しいものに交換される。クーラントに接触するゴムの硬化を抑制して、装置のメンテナンスの間隔を延長することが望まれている。
【0004】
内燃機関のクーラント経路にはアルミニウム、鋳鉄、鋼、黄銅、はんだ、銅などの材料が存在する。このため、クーラントには、これら材料に対する腐食抑制効果が要求され、種々の腐食抑制剤が使用されている。特に、自動車の軽量化の観点からアルミニウムの使用量が増大してきており、特に、アルミニウムに対する腐食抑制効果が要求されている。このため、環境負荷が小さいプロピレングリコールを凝固点降下剤として用い、かつ、金属が腐食しにくい不凍液がさらに望まれている。
【0005】
国際公開WO99/57218号公報には、金属の防食性を向上させると共に、スケールの形成を抑制してウォーターポンプのメカニカルシールの潤滑性を向上させる希釈冷却液が開示されている。その希釈冷却液は、腐食性イオン及びスケール形成イオンを分離除去した脱イオン水、前記脱イオン水によるエチレングリコール水溶液、あるいは前記脱イオン水によるプロピレングリコール水溶液のいずれかを基材とすることで、金属の防食性を向上させると共に、スケールの形成を抑制してウォーターポンプのメカニカルシールの潤滑性を向上させている。
【0006】
特開2003−27047号公報には、メカニカルシールからの水漏れ現象を防止し、長期間の安定した冷却装置の運転を可能とする冷却液組成物が開示されている。その冷却液組成物は、少なくとも水と、ポリオキシアルキレングリコール誘導体とを含んでいる。
【0007】
【特許文献1】国際公開WO99/57218号公報
【特許文献2】特開2003−27047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、適用される装置のメンテナンスの間隔を延長する不凍液を提供することにある。
本発明の他の課題は、適用される装置のメンテナンスの間隔を延長し、環境負荷がより小さく、かつ、金属をより腐食させにくい不凍液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による不凍液は、第1成分と第2成分とを含んでいることが好ましい。第1成分は、グリコールから形成されている。第2成分は、ベンゼンの分子の6つの水素原子の一部または全部が置換基に置換される化合物から形成されている。その置換基のうちの少なくとも1つの第1基は、第2基または第3基のいずれか1つの基である。その第2基は、第1炭化水素基−R−を用いて、次化学式:
−R−OH
により表現され、第3基は、第2炭化水素基−R′−を用いて、次化学式:
−O−R′−OH
により表現される。その置換基のうちの第1基を除く基は、水酸基と、第3炭化水素基と、アルコキシル基とから選択される基である。また、その第2成分の化合物は、その置換基の全てが第1基であるときに、水酸基と炭化水素基とアルコキシル基とを有していない。すなわち、その化合物は、水酸基と炭化水素基とアルコキシル基とのいずれかを有していることが必須ではない。このような不凍液は、接触するゴムを硬化させにくく、その不凍液が適用される装置のメンテナンスの間隔を延長することができる。
【0010】
第1炭化水素基は炭素数が1〜8であり、かつ、第2炭化水素基は炭素数が1〜8であり、かつ、第3炭化水素基は炭素数が1〜8であり、かつ、アルコキシル基は、炭素数が1〜8であることが好ましい。
【0011】
第1成分は、エチレングリコールとプロピレングリコールと混合物とからなる集合から選択される物質であることが好ましい。その混合物は、エチレングリコールとプロピレングリコールとの混合物である。
【0012】
第2成分は、第1成分が100質量部に対して、0.001質量部〜10質量部の割合で含まれることが好ましい。
【0013】
その第2成分は、
次化学式:
【化1】

により表現される第1化合物と、
次化学式:
【化2】

により表現される第2化合物と、
次化学式:
【化3】

により表現される第3化合物と、
次化学式:
【化4】

により表現される第4化合物と、
次化学式:
【化5】

により表現される第5化合物と、
次化学式:
【化6】

により表現される第6化合物と、
次化学式:
【化7】

により表現される第7化合物と、
次化学式:
【化8】

により表現される第8化合物と、
次化学式:
【化9】

により表現される第9化合物と、
次化学式:
【化10】

により表現される第10化合物と、
次化学式:
【化11】

により表現される第11化合物と、
次化学式:
【化12】

により表現される第12化合物と、
次化学式:
【化13】

により表現される第13化合物と、
次化学式:
【化14】

により表現される第14化合物と、
次化学式:
【化15】

により表現される第15化合物と、
次化学式:
【化16】

により表現される第16化合物と、
次化学式:
【化17】

により表現される第17化合物と、
次化学式:
【化18】

により表現される第18化合物と、
次化学式:
【化19】

により表現される第19化合物と、
次化学式:
【化20】

により表現される第20化合物と、
次化学式:
【化21】

により表現される第21化合物と、
次化学式:
【化22】

により表現される第22化合物と、
他の混合物とから形成される集合から選択される物質である。このとき、その混合物は、第1化合物と第2化合物と第3化合物と第4化合物と第5化合物と第6化合物と第7化合物と第8化合物と第9化合物と第10化合物と第11化合物と第12化合物と第13化合物と第14化合物と第15化合物と第16化合物と第17化合物と第18化合物と第19化合物と第20化合物と第21化合物と第22化合物とから形成される集合から選択される複数の化合物が混合された物質であることが好ましい。
【0014】
本発明による不凍液は、水を更に含んでいる。このとき、第1成分の濃度は、30〜60質量%であることが好ましい。
【0015】
本発明による不凍液は、第3成分と、第4成分とを更に含んでいる。このとき、第1成分は、プロピレングリコールである。第3成分は、炭素原子数が10〜12である直鎖脂肪族ジカルボン酸と、直鎖脂肪族ジカルボン酸の塩である直鎖脂肪族ジカルボン酸塩と、直鎖脂肪族ジカルボン酸と直鎖脂肪族ジカルボン酸塩との混合物とからなる集合から選択される物質である。第4成分は、ベンゾイミダゾール骨格を有するベンゾイミダゾール骨格化合物と、ベンゾイミダゾール骨格化合物の塩であるベンゾイミダゾール骨格化合物塩と、トリアジン骨格を有している。メルカプト基を有するトリアジン骨格化合物と、トリアジン骨格化合物の塩であるトリアジン骨格化合物塩と、ベンゾイミダゾール骨格化合物とベンゾイミダゾール骨格化合物塩とトリアジン骨格化合物とトリアジン骨格化合物塩とからなる集合から選択される複数の物質の混合物とからなる集合から選択される物質である。
【0016】
本発明による不凍液製造方法は、本発明による不凍液を製造するステップと、第1成分の濃度が30〜60質量%になるように、その不凍液に水を混合するステップとを備えていることが好ましい。
【0017】
本発明による内燃機関は、このような不凍液を用いて冷却される。すなわち、その内燃機関は、本発明による不凍液を循環させる冷却系統と、冷却系統により冷却される内燃機関本体とを備えている。冷却系統は、ゴムから形成され、かつ、不凍液に接触するゴム部品を備えている。このとき、そのゴム部品は硬化し難く、このような内燃機関のメンテナンスの間隔を延長することができる。このような内燃機関は、自動車を推進させる動力を生成することに好適である。
【0018】
本発明による不凍液添加剤は、ベンゼンの分子の6つの水素原子の一部または全部が置換基に置換される化合物を含む物質である。このとき、その置換基のうちの少なくとも1つの第1基は、第2基または第3基のいずれか1つの基である。第2基は、第1炭化水素基−R−を用いて、次化学式:
−R−OH
により表現され、第3基は、第2炭化水素基−R′−を用いて、次化学式:
−O−R′−OH
により表現される。その置換基のうちの第1基を除く基は、水酸基と、第3炭化水素基と、アルコキシル基とから選択される基であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明による不凍液は、適用される装置のメンテナンスの間隔を延長することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明による不凍液の実施の形態を記載する。その不凍液は、第1成分と第2成分と第3成分と第4成分と第5成分と第6成分と水とを含有している。
【0021】
第1成分は、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、または、エチレングリコールとプロピレングリコールとの混合物である。第1成分は、本発明による不凍液の凝固点を降下させるために添加されている。不凍液は、第1成分の濃度が極端に少ないときに、凍結を防止する効果が不十分となる。第1成分の濃度の下限は、不凍液を使用する環境温度に依存する。このため、その下限の濃度は、適宜設定される。本発明による不凍液は、自動車のエンジン冷却液として使用するときに、第1成分の濃度を30質量%以上とすることが好ましい。
【0022】
プロピレングリコールは、エチレングリコールより環境負荷が小さい物質であり、食品添加物としても利用されている。このため、本発明による不凍液は、エチレングリコールを含まないで、プロピレングリコールのみを第1成分として含むことができる。このような不凍液は、環境負荷を低減する点で好ましい。このとき、添加されるプロピレングリコールは、任意の製法によって得られたものを使用することができ、たとえば、市販のプロピレングリコールを使用することもできる。なお、第1成分は、エチレングリコールとプロピレングリコールと異なるグリコールを適用することもできる。
【0023】
第2成分は、芳香族アルコールであり、すなわち、ベンゼンの分子の6つの水素原子の一部または全部が水素原子以外の置換基に置換される化合物から形成されている。その置換基は、炭化水素基−R−を用いて、次化学式:
−R−OH
により表現される基であり、または、炭化水素基−R′−を用いて、次化学式:
−O−R′−OH
により表現される基である。ここで、その炭化水素基−R−と炭化水素基−R′−とは、炭化水素の分子から2個の水素原子を除いた基である。その炭化水素は、アルカン、アルケンまたはアルキンであり、その炭化水素の骨格は、直鎖または分岐鎖である。その炭化水素は、炭素数が1〜6であり、より好ましくは炭素数が1〜3である。
【0024】
なお、その置換基は、そのベンゼンの分子に1〜6個が結合されている。このとき、そのベンゼンの分子に結合する基−R−OHの個数は、複数0〜6個であり、より好ましくは0〜2個である。その基−R−OHは、そのベンゼンの分子に複数が結合されているときに、互いに異なっていてもよく、たとえば、その基−R−OHの炭素数が互いに異なっていてもよい。そのベンゼンの分子に結合する基−O−R′−OHの個数は、複数0〜6個であり、より好ましくは0〜2個である。その基−O−R′−OHは、そのベンゼンの分子に複数が結合されているときに、互いに異なっていてもよく、たとえば、その基−O−R′−OHの炭素数が互いに異なっていてもよい。
【0025】
第2成分の化合物は、さらに、ベンゼンの分子の残りの水素原子の一部または全部が水素原子以外の基に置換される化合物であってもよい。その基は、水酸基、炭化水素基、または、アルコキシル基である。
【0026】
その炭化水素基は、炭素数が1〜3である飽和炭化水素の分子から1個の水素原子を除いた基である。なお、その炭化水素基は、炭素数が1〜8である直鎖または分岐鎖の飽和炭化水素の分子から1個の水素原子を除いた基、または、炭素数が1〜8である直鎖または分岐鎖の不飽和炭化水素の分子から1個の水素原子を除いた基であってもよい。
【0027】
そのアルコキシル基は、炭素数が1〜3である飽和炭化水素の分子の1つ水素原子に1つの酸素原子が結合した基である。なお、そのアルコキシル基は、炭素数が1〜8である飽和炭化水素の分子の1つ水素原子に1つの酸素原子が結合した基、または、炭素数が1〜8である不飽和炭化水素の分子の1つ水素原子に1つの酸素原子が結合した基であってもよい。
【0028】
その第2成分の化合物としては、
次化学式:
【化23】

により表現される化合物1と、
次化学式:
【化24】

により表現される化合物2と、
次化学式:
【化25】

により表現される化合物3と、
次化学式:
【化26】

により表現される化合物4と、
次化学式:
【化27】

により表現される化合物5と、
次化学式:
【化28】

により表現される化合物6と、
次化学式:
【化29】

により表現される化合物7と、
次化学式:
【化30】

により表現される化合物8と、
次化学式:
【化31】

により表現される化合物9と、
次化学式:
【化32】

により表現される化合物10と、
次化学式:
【化33】

により表現される化合物11と、
次化学式:
【化34】

により表現される化合物12と、
次化学式:
【化35】

により表現される化合物13と、
次化学式:
【化36】

により表現される化合物14と、
次化学式:
【化37】

により表現される化合物15と、
次化学式:
【化38】

により表現される化合物16と、
次化学式:
【化39】

により表現される化合物17と、
次化学式:
【化40】

により表現される化合物18と、
次化学式:
【化41】

により表現される化合物19と、
次化学式:
【化42】

により表現される化合物20と、
次化学式:
【化43】

により表現される化合物21と、
次化学式:
【化44】

により表現される化合物22とが例示される。ここで、化合物11と化合物12とは、二重結合に関してcis−、trans−の2種類の幾何異性体が存在するが、両方の幾何異性体を適用することができる。
【0029】
すなわち、本発明による不凍液は、第2成分として、化合物1と化合物2と化合物3と化合物4と化合物5と化合物6と化合物7と化合物8と化合物9と化合物10と化合物11と化合物12と化合物13と化合物14と化合物15と化合物16と化合物17と化合物18と化合物19と化合物20と化合物21と化合物22とから形成される集合から選択される1つの化合物、または、その集合から選択される複数の化合物が混合された混合物が含有される。
【0030】
本発明による不凍液は、第2成分として、化合物1と化合物2と化合物3と化合物4と化合物5と化合物6と化合物7と化合物8と化合物9と化合物10と化合物11と化合物12と化合物13と化合物14と化合物15と化合物16とから形成される集合から選択される1つの化合物、または、その集合から選択される複数の化合物が混合された混合物が含有されることがさらに好ましい。
【0031】
第3成分は、炭素原子数10〜12の直鎖脂肪族ジカルボン酸またはその直鎖脂肪族ジカルボン酸の塩であり、不凍液の金属に対する腐食抑制効果を向上させるために添加されている。このような直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸が例示される。直鎖脂肪族ジカルボン酸の塩としては、アルカリ金属の塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩が例示される。そのアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが例示される。有機アンモニウム塩としては、アルキルアンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩が例示される。直鎖脂肪族ジカルボン酸の塩としては、さらに、直鎖脂肪族ジカルボン酸が有する2つのカルボキシル基のうちの一方の酸に水素が残っている酸性塩であってもよく、その2つのカルボキシル基が2つの異なるカチオンにイオン結合している塩であってもよい。
【0032】
第3成分は、例示された複数の化合物のうちの1つの化合物であっても、その複数の化合物のうちから選択された複数の化合物の混合物であってもよい。第3成分は、その混合物であるときに、3種以上のカチオンを含有することもできる。
【0033】
さらに、本発明による不凍液は、第1成分100質量部に対して、第3成分を0.1〜5.0質量部含有することが、腐食抑制効果が十分となり、濁りや沈殿物が発生しにくくなる点で好ましい。本発明による不凍液は、第1成分100質量部に対して、第3成分を0.3〜3.0質量部含有することがより好ましい。
【0034】
第4成分は、ベンゾイミダゾール骨格化合物と、ベンゾイミダゾール骨格化合物塩と、トリアジン骨格化合物と、トリアジン骨格化合物塩と、これらの化合物から選択される複数の化合物の混合物である。第4成分は、不凍液の金属に対する腐食抑制効果を向上させるために添加されている。
【0035】
ベンゾイミダゾール骨格化合物は、ベンゾイミダゾール骨格を有する化合物である。ベンゾイミダゾール骨格化合物としては、次化学式:
【化45】

により表現される化合物が例示される。このようなベンゾイミダゾール骨格化合物は、環境負荷をより小さくし、かつ、腐食抑制効果を向上させる点で好ましい。
【0036】
このとき、第1基Rは、水素原子、水酸基、カルボキシル基、または、炭化水素基である。その炭化水素基としては、直鎖もしくは分岐のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基が例示される。その炭化水素基は、炭素原子数が1〜20であることが好ましく、炭素原子数が1〜8であることがより好ましい。その炭化水素基は、水素原子がカルボキシル基または水酸基で置換されていても良い。すなわち、第1基Rは、炭化水素基の一部の水素原子が水酸基に置換された基、炭化水素基の一部の水素原子がカルボキシル基に置換された基、または、炭化水素基の一部の水素原子が水酸基に置換され、他の一部の水素原子がカルボキシル基に置換された基であってもよい。
【0037】
第2基Rは、第1基Rと同様に設計される。すなわち、第2基Rは、水素原子、水酸基、カルボキシル基、または、炭化水素基である。その炭化水素基としては、直鎖もしくは分岐のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基が例示される。その炭化水素基は、炭素原子数が1〜20であることが好ましく、炭素原子数が1〜8であることがより好ましい。その炭化水素基は、水素原子がカルボキシル基または水酸基で置換されていても良い。すなわち、第2基Rは、炭化水素基の一部の水素原子が水酸基に置換された基、炭化水素基の一部の水素原子がカルボキシル基に置換された基、または、炭化水素基の一部の水素原子が水酸基に置換され、他の一部の水素原子がカルボキシル基に置換された基であってもよい。
【0038】
第3基Rは、第1基Rと同様に設計される。すなわち、第3基Rは、水素原子、水酸基、カルボキシル基、または、炭化水素基である。その炭化水素基としては、直鎖もしくは分岐のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基が例示される。その炭化水素基は、炭素原子数が1〜20であることが好ましく、炭素原子数が1〜8であることがより好ましい。その炭化水素基は、水素原子がカルボキシル基または水酸基で置換されていても良い。すなわち、第3基Rは、炭化水素基の一部の水素原子が水酸基に置換された基、炭化水素基の一部の水素原子がカルボキシル基に置換された基、または、炭化水素基の一部の水素原子が水酸基に置換され、他の一部の水素原子がカルボキシル基に置換された基であってもよい。
【0039】
第1基Rと第2基Rと第3基Rとは、互いに一致していても異なっていてもよい。
【0040】
第4基Rは、水素原子、炭化水素基、硫黄を含む基、窒素を含む基、または、硫黄と窒素とを含む基である。その炭化水素基としては、直鎖もしくは分岐のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基が例示される。その炭化水素基は、炭素原子数が1〜20であることが好ましく、炭素原子数が1〜8であることがより好ましい。その硫黄を含む基としては、次化学式:
−SR10
により表現される基が例示される。このとき、第10基R10は、水素原子、または、直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基である。その窒素を含む基としては、次化学式:
−NR1112
により表現される基が例示される。このとき、第11基R11は、水素原子または炭化水素基である。その炭化水素基としては、直鎖もしくは分岐のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基が例示される。第12基R12は、水素原子または炭化水素基である。その炭化水素基としては、直鎖もしくは分岐のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基が例示される。第11基R11と第12基R12とは、互いに一致していても異なっていてもよい。
【0041】
その硫黄と窒素とを含む基としては、次化学式:
−S−N=R13
により表現される基、すなわち、環上に硫黄および窒素を有する5員複素環または6員複素環を有する基が例示される。このとき、第13基R13は、窒素を含む複素環の部分であり、炭素原子数が3〜6であり、主鎖に酸素または窒素を有していてもよい。すなわち、次化学式:
−S−N=R13
により表現される基としては、次化学式:
【化46】

により表現される基、次化学式:
【化47】

により表現される基が例示される。
【0042】
第4基Rとしては、水素原子、メチル基、エチル基、メルカプト基、ジブチルアミノ基、フェニルアミノ基、チアゾリル基、化46により表現される基、化47により表現される基であることが好ましい。
【0043】
そのベンゾイミダゾール骨格化合物は、チアベンダゾールであることが特に好ましい。チアベンダゾールは、CAS登録番号148−79−8により表現される化合物である。
【0044】
そのベンゾイミダゾール骨格化合物塩は、既述のベンゾイミダゾール骨格化合物の塩である。その塩としては、アルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩が例示される。そのアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが例示される。有機アンモニウム塩としては、アルキルアンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩が例示される。そのベンゾイミダゾール骨格化合物塩は、ベンゾイミダゾール骨格化合物のアルカリ金属の塩であることが好ましく、ベンゾイミダゾール骨格化合物のナトリウム塩、ベンゾイミダゾール骨格化合物のカリウム塩であることが特に好ましい。
【0045】
なお、第4成分としては、さらに、化45に示されるベンゾイミダゾール骨格化合物の第4基Rと第4基Rに結合される炭素原子とが窒素原子に置換されたベンゾトリアゾールを適用することもできる。
【0046】
そのトリアジン骨格化合物は、メルカプト基を有している。このようなトリアジン骨格化合物としては、次化学式:
【化48】

により表現される化合物が例示される。このようなトリアジン骨格化合物は、環境負荷をより小さくし、かつ、腐食抑制効果を向上させる点で好ましい。このとき、第5基Rは、第4基Rと同様に設計される。すなわち、第5基Rは、水素原子、炭化水素基、硫黄を含む基、窒素を含む基、または、硫黄と窒素とを含む基である。その炭化水素基としては、直鎖もしくは分岐のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基が例示される。その炭化水素基は、炭素原子数が1〜20であることが好ましく、炭素原子数が1〜8であることがより好ましい。その硫黄もしくは窒素を含有する基は、直鎖、分岐鎖または環状の基である。その硫黄を含む基としては、次化学式:
−SR10
により表現される基が例示される。このとき、第10基R10は、水素原子、または、直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基である。その窒素を含む基としては、次化学式:
−NR1112
により表現される基が例示される。このとき、第11基R11は、水素原子または炭化水素基である。その炭化水素基としては、直鎖もしくは分岐のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基が例示される。第12基R12は、水素原子または炭化水素基である。その炭化水素基としては、直鎖もしくは分岐のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基が例示される。第11基R11と第12基R12とは、互いに一致していても異なっていてもよい。
【0047】
その硫黄と窒素とを含む基としては、次化学式:
−S−N=R13
により表現される基、環上に硫黄および窒素を有する5員複素環または6員複素環を有する基が例示される。このとき、第13基R13は、窒素を含む複素環の部分であり、炭素原子数が3〜6であり、主鎖に酸素または窒素を有していてもよい。
【0048】
第5基Rとしては、水素原子、メチル基、エチル基、メルカプト基、ジブチルアミノ基、フェニルアミノ基、チアゾリル基、次化学式:
【化49】

により表現される基、次化学式:
【化50】

により表現される基がより好ましい。
【0049】
第6基Rは、第5基Rと同様に設計される。すなわち、第6基Rは、水素原子、炭化水素基、硫黄を含む基、窒素を含む基、または、硫黄と窒素とを含む基である。その炭化水素基としては、直鎖もしくは分岐のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基が例示される。その炭化水素基は、炭素原子数が1〜20であることが好ましく、炭素原子数が1〜8であることがより好ましい。その硫黄もしくは窒素を含有する基は、直鎖、分岐鎖または環状の基である。その硫黄を含む基としては、次化学式:
−SR10
により表現される基が例示される。このとき、第10基R10は、水素原子、または、直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基である。その窒素を含む基としては、次化学式:
−NR1112
により表現される基が例示される。このとき、第11基R11は、水素原子または炭化水素基である。その炭化水素基としては、直鎖もしくは分岐のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基が例示される。第12基R12は、水素原子または炭化水素基である。その炭化水素基としては、直鎖もしくは分岐のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基が例示される。第11基R11と第12基R12とは、互いに一致していても異なっていてもよい。
【0050】
その硫黄と窒素とを含む基としては、次化学式:
−S−N=R13
により表現される基、環上に硫黄および窒素を有する5員複素環または6員複素環を有する基が例示される。このとき、第13基R13は、窒素を含む複素環の部分であり、炭素原子数が3〜6であり、主鎖に酸素または窒素を有していてもよい。
【0051】
第6基Rとしては、水素原子、メチル基、エチル基、メルカプト基、ジブチルアミノ基、フェニルアミノ基、チアゾリル基、化49により表現される基、化50により表現される基がより好ましい。
【0052】
そのトリアジン骨格化合物は、ジメルカプト−s−トリアジンまたはトリメルカプト−s−トリアジンであることが特に好ましい。トリメルカプト−s−トリアジンは、CAS登録番号638−16−4により表される化合物である。
【0053】
そのトリアジン骨格化合物塩は、既述のトリアジン骨格化合物の塩である。その塩としては、アルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩が例示される。そのアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが例示される。有機アンモニウム塩としては、アルキルアンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩が例示される。そのトリアジン骨格化合物塩は、トリアジン骨格化合物のアルカリ金属の塩であることが好ましく、トリアジン骨格化合物のナトリウム塩、トリアジン骨格化合物のカリウム塩であることが特に好ましい。
【0054】
第4成分は、第4成分として例示された複数の物質のうちの1つの化合物であっても、その複数の化合物のうちから選択された複数の化合物の混合物であってもよい。第4成分は、その混合物であるときに、3種以上のカチオンを含有することもできる。
【0055】
さらに、本発明による不凍液は、第1成分100質量部に対して、第4成分を0.01〜5.0質量部含有することが腐食抑制効果が十分となる点で好ましい。ここで、第1成分の質量100に対するベンゾイミダゾール骨格化合物とベンゾイミダゾール骨格化合物塩との質量Tと、第1成分の質量100に対するトリアジン骨格化合物とトリアジン骨格化合物塩との質量Sとを用いて、値Xを、次数式:
X=T+S×3
により定義する。本発明による不凍液は、値Xが0.06〜1.2であることが好ましく、0.08〜0.9であることがさらに好ましい。このとき、質量Sと質量Tとは、いずれかが0であってもよい。
【0056】
第5成分は、芳香族カルボン酸、その芳香族カルボン酸の塩、または、これらの化合物の混合物であり、不凍液の金属に対する腐食抑制効果を向上させるために添加されている。その芳香族カルボン酸は、次化学式:
【化51】

により表現される。このとき、第7基Rは、水素原子、水酸基、アミノ基、または、炭素原子数1〜6の炭化水素基である。第8基Rは、水素原子、水酸基、アミノ基、または、炭素原子数1〜6の炭化水素基である。第9基Rは、水素原子、水酸基、アミノ基、または、炭素原子数1〜6の炭化水素基である。第7基Rと第8基Rと第9基Rとは、互いに一致していても異なっていてもよい。
【0057】
その芳香族カルボン酸としては、安息香酸、トルイル酸、p−ターシャリブチル安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸、p−アミノ安息香酸、アントラニル酸が例示される。その芳香族カルボン酸は、p−ターシャリブチル安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸、p−アミノ安息香酸、アントラニル酸であることが環境負荷をより小さくし、かつ、腐食抑制効果を向上させる点で好ましい。その芳香族カルボン酸は、特に、p−ヒドロキシ安息香酸、p−アミノ安息香酸であることがさらに好ましい。
【0058】
その芳香族カルボン酸の塩としては、本発明による不凍液に対して溶解することができる塩が適用される。このような塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩が例示される。そのアルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が例示される。その有機アンモニウム塩としては、アルキルアンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩が例示される。
【0059】
第5成分は、第5成分として例示された複数の物質のうちの1つの物質であっても、その複数の物質のうちから選択された複数の物質の混合物であってもよい。第5成分は、その混合物であるときに、3種以上のカチオンを含有することもできる。
【0060】
さらに、本発明による不凍液は、第1成分100質量部に対して、第5成分を0.02〜4.0質量部含有することが腐食抑制効果を向上させる点でより好ましい。本発明による不凍液は、第1成分100質量部に対して、第5成分を0.07〜2.0質量部含有することがより好ましい。
【0061】
第6成分は、硝酸または硝酸塩であり、不凍液の金属に対する腐食抑制効果を向上させるために添加されている。その硝酸は、任意の製法によって得られたものを使用することができ、市販の硝酸を使用することもできる。その硝酸塩としては、本発明による不凍液に対して可溶性の塩が適用される。このような塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩が例示される。そのアルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が例示される。その有機アンモニウム塩としては、アルキルアンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩が例示される。
【0062】
第6成分は、第6成分として例示された複数の物質のうちの1つの物質であっても、その複数の物質のうちから選択された複数の物質の混合物であってもよい。このため、第6成分は、その混合物であるときに、3種以上のカチオンを含有することもできる。
【0063】
さらに、本発明による不凍液は、第1成分100質量部に対して、第6成分を0.02〜1.0質量部含有することが腐食抑制効果をより向上させる点で好ましい。本発明による不凍液は、第1成分100質量部に対して、第6成分を0.07〜0.8質量部含有することがより好ましい。
【0064】
本発明による不凍液は、経済性のために、すなわち、質量当たりの価格を低減するために水が添加されている。その水は、浮遊した粒子が少なく、溶解しているイオンが少ない水が適用される。このような水としては、イオン交換水が例示される。本発明による不凍液は、水を添加しないでそのまま使用することもできる。本発明による不凍液は、水で希釈して使用するときに、水酸化物がさらに添加されることもできる。水酸化物は、不凍液のpHを調整するために添加される。水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが例示される。不凍液は、pHが7.0〜9.0であることが確実に腐食抑制効果を発現させる点で好ましく、pHが7.4〜8.4であることがより好ましい。本発明による不凍液は、水で希釈して使用するときに、さらに、第1成分の濃度が60質量%以下となるように希釈することが経済性の点で好ましい。
【0065】
本発明による不凍液は、たとえば、熱を機械的動力に変換し、自動車などの推進のために適用される内燃機関に適用される。その内燃機関は、クーラントを循環させてその内燃機関の本体を冷却するラジエータを備えている。そのラジエータは、ゴムから形成されるゴム部品を備えている。このようなゴム部品としては、コネクタのパッキング、ウォーターポンプのメカニカルシール、ラジエタホース、サーモスタットのカバーが例示される。そのゴムとしては、NBR、SBR、EPDMが例示される。このようなゴム部品は、一般に、クーラントに長期間接触することにより硬化する。ゴム部品の硬化は、冷却系統からクーラントが漏洩する一因となる。このため、その内燃機関は、定期的に点検されて、ゴム部品は、クーラントが漏洩する程度に硬化する前に新しいものに交換される。
【0066】
本発明による不凍液は、第2成分を含有しない不凍液に比較して、接触するゴムの硬化を抑制することができる。このため、本発明による不凍液がクーラントとして適用される内燃機関は、第2成分を含有しない不凍液に比較して、ゴム部品をより長期間使用することができる。すなわち、本発明による不凍液は、適用される内燃機関のゴム部品を点検する間隔を延長することができる。
【0067】
本発明による不凍液は、さらに、その第3成分と第4成分と第5成分と第6成分とを含有することにより、接触する金属をより腐食させにくくすることができる。なお、その第3成分と第4成分と第5成分と第6成分とは、本発明による不凍液の必須成分ではなく、本発明による不凍液は、第3成分と第4成分と第5成分と第6成分のうちの一部または全部をに含有しなくてもよい。本発明による不凍液は、さらに、ゴムの硬化の抑制を妨げない程度に、pH調整剤、消泡剤、着色剤を添加することもできる。
【0068】
本発明による不凍液の製造方法は、第1中間生成物を調製するステップと第2中間生成物を調製するステップと不凍液を調製するステップとを備えている。その第1中間生成物を調製するステップでは、第1成分と第2成分と第3成分と第4成分と第5成分と第6成分とが混合されて、第1中間生成物が調製される。このとき、第1成分と第2成分と第3成分と第4成分と第5成分と第6成分とは、各々が水に溶解している水溶液を用いることができる。さらに、このとき、水酸化物を混合することもできる。さらに、第1成分に第1成分の濃度が25質量%以下にならない量の水を混合することもできる。その第2中間生成物を調製するステップでは、pHが7.0〜9.0になるように、その第1中間生成物に水酸化物が添加されて、第2中間生成物が調製される。その不凍液を調製するステップでは、第1成分の濃度が30質量%以上60質量%以下になるようにイオン交換水が添加されて、不凍液が調製される。
【0069】
本発明による不凍液添加物は、本発明による不凍液に含まれる第2成分から形成されている。このとき、本発明による不凍液の製造方法では、まず、第2成分を含有しない不凍液が製造される。次いで、その不凍液に本発明による不凍液添加物が添加され混合されて、本発明による不凍液が製造される。このような不凍液添加物によれば、本発明による不凍液は、市場販売される不凍液に不凍液添加物が添加されることにより、容易に製造されることができる。
【0070】
不凍液は、JIS K6253に規定される浸漬試験により、ゴムを硬化させる程度を評価することができる。その浸漬試験では、複数のゴム試験片の硬さを測定し、そのゴム試験片を60℃の不凍液に1ヶ月間浸漬し、そのゴム試験片の浸漬後の硬さを測定し、その測定結果から硬度変化を算出する。その複数のゴム試験片は、それぞれ、NBR、SBR、EPDMから形成されている。その硬さは、ゴム試験片に与えられる応力に対するにゴム試験片の歪みの比を示している。その硬度変化Vは、浸漬後硬さHaと浸漬前硬さHbとを用いて次式:
V=(Ha−Hb)÷Hb×100
により算出される。すなわち、その硬度変化Vは、値が小さい程、不凍液がゴムを硬化させ難くて好ましいことを示している。
【0071】
図面を参照して、本発明による不凍液の実施例に関して記載する。図1は、比較例1〜5の組成と比較例1〜5の浸漬試験の結果である硬度変化とを示している。
【0072】
比較例1における不凍液は、プロピレングリコールの濃度が45質量%であり、水の濃度が55質量%である。
【0073】
比較例1における不凍液は、浸漬試験によれば、NBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が0.5%であり、SBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が8.3%であり、EPDMから形成されたゴム試験片の硬度変化が11.1%である。
【0074】
比較例2における不凍液は、エチレングリコールの濃度が45質量%であり、水の濃度が55質量%である。
【0075】
比較例2における不凍液は、浸漬試験によれば、NBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が0.2%であり、SBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が7.8%であり、EPDMから形成されたゴム試験片の硬度変化が12.0%である。
【0076】
比較例3における不凍液は、プロピレングリコールの濃度が45質量%であり、セバシン酸カリウムの濃度が1.5質量%であり、ベンゾトリアゾールの濃度が0.2質量%であり、リン酸カリウムの濃度が0.3質量%であり、硝酸ナトリウムの濃度が0.3質量%であり、水の濃度が52.7質量%である。
【0077】
比較例3における不凍液は、浸漬試験によれば、NBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が3.0%であり、SBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が9.7%であり、EPDMから形成されたゴム試験片の硬度変化が11.1%である。
【0078】
比較例4における不凍液は、プロピレングリコールの濃度が45質量%であり、化合物1の濃度が0.0005質量%であり、セバシン酸カリウムの濃度が1.5質量%であり、ベンゾトリアゾールの濃度が0.2質量%であり、リン酸カリウムの濃度が0.3質量%であり、硝酸ナトリウムの濃度が0.3質量%であり、水の濃度が52.6995質量%である。
【0079】
比較例4における不凍液は、浸漬試験によれば、NBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が2.5%であり、SBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が9.2%であり、EPDMから形成されたゴム試験片の硬度変化が9.9%である。
【0080】
比較例5における不凍液は、プロピレングリコールの濃度が45質量%であり、化合物11の濃度が0.0005質量%であり、セバシン酸カリウムの濃度が1.5質量%であり、ベンゾトリアゾールの濃度が0.2質量%であり、リン酸カリウムの濃度が0.3質量%であり、硝酸ナトリウムの濃度が0.3質量%であり、水の濃度が52.6995質量%である。
【0081】
比較例5における不凍液は、浸漬試験によれば、NBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が2.8%であり、SBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が9.2%であり、EPDMから形成されたゴム試験片の硬度変化が10.6%である。
【実施例1】
【0082】
図2は、実施例1〜7の組成と実施例1〜7の浸漬試験の結果とを示している。実施例1における不凍液は、プロピレングリコールの濃度が45質量%であり、化合物1の濃度が0.01質量%であり、水の濃度が54.99質量%である。
【0083】
実施例1における不凍液は、浸漬試験によれば、NBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が−3.3%であり、SBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が6.8%であり、EPDMから形成されたゴム試験片の硬度変化が6.9%である。すなわち、この試験結果は、実施例1による不凍液が比較例1〜比較例5による不凍液よりゴムを硬化させにくいことを示している。
【実施例2】
【0084】
実施例2における不凍液は、プロピレングリコールの濃度が45質量%であり、化合物1の濃度が0.01質量%であり、水の濃度が54.99質量%である。
【0085】
実施例2における不凍液は、浸漬試験によれば、NBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が−2.9%であり、SBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が7.5%であり、EPDMから形成されたゴム試験片の硬度変化が6.1%である。すなわち、この試験結果は、実施例2による不凍液が比較例1〜比較例5による不凍液よりゴムを硬化させにくいことを示している。
【実施例3】
【0086】
実施例3における不凍液は、プロピレングリコールの濃度が45質量%であり、化合物1の濃度が0.01質量%であり、セバシン酸カリウムの濃度が1.5質量%であり、ベンゾトリアゾールの濃度が0.2質量%であり、リン酸カリウムの濃度が0.3質量%であり、硝酸ナトリウムの濃度が0.3質量%であり、水の濃度が52.69質量%である。
【0087】
実施例3における不凍液は、浸漬試験によれば、NBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が0.4%であり、SBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が6.5%であり、EPDMから形成されたゴム試験片の硬度変化が6.9%である。すなわち、この試験結果は、実施例3による不凍液が比較例1、3、4、5による不凍液よりNBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりSBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりEPDMを硬化させにくいことを示している。
【実施例4】
【0088】
実施例4における不凍液は、プロピレングリコールの濃度が45質量%であり、化合物2の濃度が0.01質量%であり、セバシン酸カリウムの濃度が1.5質量%であり、ベンゾトリアゾールの濃度が0.2質量%であり、リン酸カリウムの濃度が0.3質量%であり、硝酸ナトリウムの濃度が0.3質量%であり、水の濃度が52.69質量%である。
【0089】
実施例4における不凍液は、浸漬試験によれば、NBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が0.2%であり、SBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が7.1%であり、EPDMから形成されたゴム試験片の硬度変化が6.6%である。すなわち、この試験結果は、実施例4による不凍液が比較例1〜比較例5による不凍液よりゴムを硬化させにくいことを示している。
【実施例5】
【0090】
実施例5における不凍液は、プロピレングリコールの濃度が45質量%であり、化合物3の濃度が0.01質量%であり、セバシン酸カリウムの濃度が1.5質量%であり、ベンゾトリアゾールの濃度が0.2質量%であり、リン酸カリウムの濃度が0.3質量%であり、硝酸ナトリウムの濃度が0.3質量%であり、水の濃度が52.69質量%である。
【0091】
実施例5における不凍液は、浸漬試験によれば、NBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が0.8%であり、SBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が7.8%であり、EPDMから形成されたゴム試験片の硬度変化が7.5%である。すなわち、この試験結果は、実施例5による不凍液が比較例3、4、5による不凍液よりNBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりSBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりEPDMを硬化させにくいことを示している。
【実施例6】
【0092】
実施例6における不凍液は、プロピレングリコールの濃度が45質量%であり、化合物4の濃度が0.01質量%であり、セバシン酸カリウムの濃度が1.5質量%であり、ベンゾトリアゾールの濃度が0.2質量%であり、リン酸カリウムの濃度が0.3質量%であり、硝酸ナトリウムの濃度が0.3質量%であり、水の濃度が52.69質量%である。
【0093】
実施例6における不凍液は、浸漬試験によれば、NBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が1.3%であり、SBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が8.2%であり、EPDMから形成されたゴム試験片の硬度変化が8.4%である。すなわち、この試験結果は、実施例6による不凍液が比較例3、4、5による不凍液よりNBRを硬化させにくいことを示し、比較例1、3、4、5による不凍液よりSBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりEPDMを硬化させにくいことを示している。
【実施例7】
【0094】
実施例7における不凍液は、プロピレングリコールの濃度が45質量%であり、化合物5の濃度が0.01質量%であり、セバシン酸カリウムの濃度が1.5質量%であり、ベンゾトリアゾールの濃度が0.2質量%であり、リン酸カリウムの濃度が0.3質量%であり、硝酸ナトリウムの濃度が0.3質量%であり、水の濃度が52.69質量%である。
【0095】
実施例7における不凍液は、浸漬試験によれば、NBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が1.9%であり、SBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が6.5%であり、EPDMから形成されたゴム試験片の硬度変化が6.7%である。すなわち、この試験結果は、実施例7による不凍液が比較例3、4、5による不凍液よりNBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりSBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりEPDMを硬化させにくいことを示している。
【実施例8】
【0096】
図3は、実施例8〜14の組成と実施例8〜14の浸漬試験の結果とを示している。実施例8における不凍液は、プロピレングリコールの濃度が45質量%であり、化合物6の濃度が0.01質量%であり、セバシン酸カリウムの濃度が1.5質量%であり、ベンゾトリアゾールの濃度が0.2質量%であり、リン酸カリウムの濃度が0.3質量%であり、硝酸ナトリウムの濃度が0.3質量%であり、水の濃度が52.69質量%である。
【0097】
実施例8における不凍液は、浸漬試験によれば、NBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が−0.3%であり、SBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が7.3%であり、EPDMから形成されたゴム試験片の硬度変化が7.1%である。すなわち、この試験結果は、実施例8による不凍液が比較例1〜比較例5による不凍液よりゴムを硬化させにくいことを示している。
【実施例9】
【0098】
実施例9における不凍液は、プロピレングリコールの濃度が45質量%であり、化合物7の濃度が0.01質量%であり、セバシン酸カリウムの濃度が1.5質量%であり、ベンゾトリアゾールの濃度が0.2質量%であり、リン酸カリウムの濃度が0.3質量%であり、硝酸ナトリウムの濃度が0.3質量%であり、水の濃度が52.69質量%である。
【0099】
実施例9における不凍液は、浸漬試験によれば、NBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が1.5%であり、SBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が7.7%であり、EPDMから形成されたゴム試験片の硬度変化が7.3%である。すなわち、この試験結果は、実施例9による不凍液が比較例3、4、5による不凍液よりNBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりSBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりEPDMを硬化させにくいことを示している。
【実施例10】
【0100】
実施例10における不凍液は、プロピレングリコールの濃度が45質量%であり、化合物8の濃度が0.01質量%であり、セバシン酸カリウムの濃度が1.5質量%であり、ベンゾトリアゾールの濃度が0.2質量%であり、リン酸カリウムの濃度が0.3質量%であり、硝酸ナトリウムの濃度が0.3質量%であり、水の濃度が52.69質量%である。
【0101】
実施例10における不凍液は、浸漬試験によれば、NBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が0.8%であり、SBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が6.9%であり、EPDMから形成されたゴム試験片の硬度変化が7.3%である。すなわち、この試験結果は、実施例10による不凍液が比較例3、4、5による不凍液よりNBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりSBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりEPDMを硬化させにくいことを示している。
【実施例11】
【0102】
実施例11における不凍液は、プロピレングリコールの濃度が45質量%であり、化合物9の濃度が0.01質量%であり、セバシン酸カリウムの濃度が1.5質量%であり、ベンゾトリアゾールの濃度が0.2質量%であり、リン酸カリウムの濃度が0.3質量%であり、硝酸ナトリウムの濃度が0.3質量%であり、水の濃度が52.69質量%である。
【0103】
実施例11における不凍液は、浸漬試験によれば、NBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が0.5%であり、SBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が7.0%であり、EPDMから形成されたゴム試験片の硬度変化が6.7%である。すなわち、この試験結果は、実施例11による不凍液が比較例3、4、5による不凍液よりNBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりSBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりEPDMを硬化させにくいことを示している。
【実施例12】
【0104】
実施例12における不凍液は、プロピレングリコールの濃度が45質量%であり、化合物10の濃度が0.01質量%であり、セバシン酸カリウムの濃度が1.5質量%であり、ベンゾトリアゾールの濃度が0.2質量%であり、リン酸カリウムの濃度が0.3質量%であり、硝酸ナトリウムの濃度が0.3質量%であり、水の濃度が52.69質量%である。
【0105】
実施例12における不凍液は、浸漬試験によれば、NBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が0.4%であり、SBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が7.2%であり、EPDMから形成されたゴム試験片の硬度変化が7.7%である。すなわち、この試験結果は、実施例12による不凍液が比較例1、3、4、5による不凍液よりNBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりSBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりEPDMを硬化させにくいことを示している。
【実施例13】
【0106】
実施例13における不凍液は、プロピレングリコールの濃度が45質量%であり、化合物11の濃度が0.01質量%であり、セバシン酸カリウムの濃度が1.5質量%であり、ベンゾトリアゾールの濃度が0.2質量%であり、リン酸カリウムの濃度が0.3質量%であり、硝酸ナトリウムの濃度が0.3質量%であり、水の濃度が52.69質量%である。
【0107】
実施例13における不凍液は、浸漬試験によれば、NBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が1.3%であり、SBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が7.8%であり、EPDMから形成されたゴム試験片の硬度変化が8.1%である。すなわち、この試験結果は、実施例13による不凍液が比較例3、4、5による不凍液よりNBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりSBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりEPDMを硬化させにくいことを示している。
【実施例14】
【0108】
実施例14における不凍液は、プロピレングリコールの濃度が45質量%であり、化合物12の濃度が0.01質量%であり、セバシン酸カリウムの濃度が1.5質量%であり、ベンゾトリアゾールの濃度が0.2質量%であり、リン酸カリウムの濃度が0.3質量%であり、硝酸ナトリウムの濃度が0.3質量%であり、水の濃度が52.69質量%である。
【0109】
実施例14における不凍液は、浸漬試験によれば、NBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が1.1%であり、SBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が7.5%であり、EPDMから形成されたゴム試験片の硬度変化が8.1%である。すなわち、この試験結果は、実施例14による不凍液が比較例3、4、5による不凍液よりNBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりSBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりEPDMを硬化させにくいことを示している。
【実施例15】
【0110】
図4は、実施例15〜22の組成と実施例15〜22の浸漬試験の結果とを示している。実施例15における不凍液は、プロピレングリコールの濃度が45質量%であり、化合物13の濃度が0.01質量%であり、セバシン酸カリウムの濃度が1.5質量%であり、ベンゾトリアゾールの濃度が0.2質量%であり、リン酸カリウムの濃度が0.3質量%であり、硝酸ナトリウムの濃度が0.3質量%であり、水の濃度が52.69質量%である。
【0111】
実施例15における不凍液は、浸漬試験によれば、NBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が0.5%であり、SBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が7.3%であり、EPDMから形成されたゴム試験片の硬度変化が7.9%である。すなわち、この試験結果は、実施例15による不凍液が比較例3、4、5による不凍液よりNBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりSBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりEPDMを硬化させにくいことを示している。
【実施例16】
【0112】
実施例16における不凍液は、プロピレングリコールの濃度が45質量%であり、化合物14の濃度が0.01質量%であり、セバシン酸カリウムの濃度が1.5質量%であり、ベンゾトリアゾールの濃度が0.2質量%であり、リン酸カリウムの濃度が0.3質量%であり、硝酸ナトリウムの濃度が0.3質量%であり、水の濃度が52.69質量%である。
【0113】
実施例16における不凍液は、浸漬試験によれば、NBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が0.3%であり、SBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が7.3%であり、EPDMから形成されたゴム試験片の硬度変化が6.9%である。すなわち、この試験結果は、実施例16による不凍液が比較例3、4、5による不凍液よりNBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりSBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりEPDMを硬化させにくいことを示している。
【実施例17】
【0114】
実施例17における不凍液は、プロピレングリコールの濃度が45質量%であり、化合物15の濃度が0.01質量%であり、セバシン酸カリウムの濃度が1.5質量%であり、ベンゾトリアゾールの濃度が0.2質量%であり、リン酸カリウムの濃度が0.3質量%であり、硝酸ナトリウムの濃度が0.3質量%であり、水の濃度が52.69質量%である。
【0115】
実施例17における不凍液は、浸漬試験によれば、NBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が0.4%であり、SBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が6.4%であり、EPDMから形成されたゴム試験片の硬度変化が6.7%である。すなわち、この試験結果は、実施例17による不凍液が比較例3、4、5による不凍液よりNBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりSBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりEPDMを硬化させにくいことを示している。
【実施例18】
【0116】
実施例18における不凍液は、プロピレングリコールの濃度が45質量%であり、化合物16の濃度が0.01質量%であり、セバシン酸カリウムの濃度が1.5質量%であり、ベンゾトリアゾールの濃度が0.2質量%であり、リン酸カリウムの濃度が0.3質量%であり、硝酸ナトリウムの濃度が0.3質量%であり、水の濃度が52.69質量%である。
【0117】
実施例18における不凍液は、浸漬試験によれば、NBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が0.4%であり、SBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が6.5%であり、EPDMから形成されたゴム試験片の硬度変化が6.6%である。すなわち、この試験結果は、実施例18による不凍液が比較例3、4、5による不凍液よりNBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりSBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりEPDMを硬化させにくいことを示している。
【実施例19】
【0118】
実施例19における不凍液は、プロピレングリコールの濃度が45質量%であり、化合物1の濃度が0.01質量%であり、セバシン酸カリウムの濃度が1.5質量%であり、ベンゾトリアゾールの濃度が0.2質量%であり、リン酸カリウムの濃度が0.3質量%であり、硝酸ナトリウムの濃度が0.3質量%であり、水の濃度が52.69質量%である。
【0119】
実施例19における不凍液は、浸漬試験によれば、NBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が0.8%であり、SBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が8.2%であり、EPDMから形成されたゴム試験片の硬度変化が8.3%である。すなわち、この試験結果は、実施例19による不凍液が比較例3、4、5による不凍液よりNBRを硬化させにくいことを示し、比較例1、3、4、5による不凍液よりSBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりEPDMを硬化させにくいことを示している。
【実施例20】
【0120】
実施例20における不凍液は、プロピレングリコールの濃度が45質量%であり、化合物1の濃度が0.01質量%であり、セバシン酸カリウムの濃度が1.5質量%であり、ベンゾトリアゾールの濃度が0.2質量%であり、リン酸カリウムの濃度が0.3質量%であり、硝酸ナトリウムの濃度が0.3質量%であり、水の濃度が52.69質量%である。
【0121】
実施例20における不凍液は、浸漬試験によれば、NBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が0.1%であり、SBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が6.0%であり、EPDMから形成されたゴム試験片の硬度変化が6.2%である。すなわち、この試験結果は、実施例20による不凍液が比較例1〜比較例5による不凍液よりゴムを硬化させにくいことを示している。
【実施例21】
【0122】
実施例21における不凍液は、プロピレングリコールの濃度が45質量%であり、化合物11の濃度が0.01質量%であり、セバシン酸カリウムの濃度が1.5質量%であり、ベンゾトリアゾールの濃度が0.2質量%であり、リン酸カリウムの濃度が0.3質量%であり、硝酸ナトリウムの濃度が0.3質量%であり、水の濃度が52.69質量%である。
【0123】
実施例21における不凍液は、浸漬試験によれば、NBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が1.7%であり、SBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が8.1%であり、EPDMから形成されたゴム試験片の硬度変化が8.4%である。すなわち、この試験結果は、実施例21による不凍液が比較例3、4、5による不凍液よりNBRを硬化させにくいことを示し、比較例1、3、4、5による不凍液よりSBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりEPDMを硬化させにくいことを示している。
【実施例22】
【0124】
実施例22における不凍液は、プロピレングリコールの濃度が45質量%であり、化合物11の濃度が0.01質量%であり、セバシン酸カリウムの濃度が1.5質量%であり、ベンゾトリアゾールの濃度が0.2質量%であり、リン酸カリウムの濃度が0.3質量%であり、硝酸ナトリウムの濃度が0.3質量%であり、水の濃度が52.69質量%である。
【0125】
実施例22における不凍液は、浸漬試験によれば、NBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が0.7%であり、SBRから形成されたゴム試験片の硬度変化が7.0%であり、EPDMから形成されたゴム試験片の硬度変化が7.3%である。すなわち、この試験結果は、実施例22による不凍液が比較例3、4、5による不凍液よりNBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりSBRを硬化させにくいことを示し、比較例1〜比較例5による不凍液よりEPDMを硬化させにくいことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】図1は、比較例1〜5の組成と比較例1〜5の浸漬試験の結果とを示す表である。
【図2】図2は、実施例1〜7の組成と実施例1〜7の浸漬試験の結果とを示す表である。
【図3】図3は、実施例8〜14の組成と実施例8〜14の浸漬試験の結果とを示す表である。
【図4】図4は、実施例15〜22の組成と実施例15〜22の浸漬試験の結果とを示す表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1成分と、
第2成分とを含み、
前記第1成分は、グリコールから形成され、
前記第2成分は、ベンゼンの分子の6つの水素原子の一部または全部が置換基に置換される化合物から形成され、
前記置換基のうちの少なくとも1つの第1基は、第2基または第3基のいずれか1つの基であり、
前記第2基は、第1炭化水素基−R−を用いて、次化学式:
−R−OH
により表現され、
前記第3基は、第2炭化水素基−R′−を用いて、次化学式:
−O−R′−OH
により表現され、
前記置換基のうちの前記第1基を除く基は、
水酸基と、
第3炭化水素基と、
アルコキシル基とから選択される基である
不凍液。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1成分は、
エチレングリコールと、
プロピレングリコールと、
エチレングリコールとプロピレングリコールとの混合物とからなる集合から選択される物質である
不凍液。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1炭化水素基は、炭素数が1〜8であり、
前記第2炭化水素基は、炭素数が1〜8であり、
前記第3炭化水素基は、炭素数が1〜8であり、
前記アルコキシル基は、炭素数が1〜8である
不凍液。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかにおいて、
前記第2成分は、前記第1成分が100質量部に対して、0.001質量部〜10質量部の割合で含まれる
不凍液。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかにおいて、
前記第2成分は、
次化学式:
【化1】

により表現される第1化合物と、
次化学式:
【化2】

により表現される第2化合物と、
次化学式:
【化3】

により表現される第3化合物と、
次化学式:
【化4】

により表現される第4化合物と、
次化学式:
【化5】

により表現される第5化合物と、
次化学式:
【化6】

により表現される第6化合物と、
次化学式:
【化7】

により表現される第7化合物と、
次化学式:
【化8】

により表現される第8化合物と、
次化学式:
【化9】

により表現される第9化合物と、
次化学式:
【化10】

により表現される第10化合物と、
次化学式:
【化11】

により表現される第11化合物と、
次化学式:
【化12】

により表現される第12化合物と、
次化学式:
【化13】

により表現される第13化合物と、
次化学式:
【化14】

により表現される第14化合物と、
次化学式:
【化15】

により表現される第15化合物と、
次化学式:
【化16】

により表現される第16化合物と、
次化学式:
【化17】

により表現される第17化合物と、
次化学式:
【化18】

により表現される第18化合物と、
次化学式:
【化19】

により表現される第19化合物と、
次化学式:
【化20】

により表現される第20化合物と、
次化学式:
【化21】

により表現される第21化合物と、
次化学式:
【化22】

により表現される第22化合物と、
他の混合物とから形成される集合から選択される物質であり、
前記他の混合物は、
前記第1化合物と、
前記第2化合物と、
前記第3化合物と、
前記第4化合物と、
前記第5化合物と、
前記第6化合物と、
前記第7化合物と、
前記第8化合物と、
前記第9化合物と、
前記第10化合物と、
前記第11化合物と、
前記第12化合物と、
前記第13化合物と、
前記第14化合物と、
前記第15化合物と、
前記第16化合物と、
前記第17化合物と、
前記第18化合物と、
前記第19化合物と、
前記第20化合物と、
前記第21化合物と、
前記第22化合物とから形成される集合から選択される複数の化合物が混合された物質である
不凍液。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかにおいて、
水を更に含み、
前記第1成分の濃度は、30〜60質量%である
不凍液。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかにおいて、
第3成分と、
第4成分とを更に含み、
前記第1成分は、プロピレングリコールであり、
前記第3成分は、
炭素原子数が10〜12である直鎖脂肪族ジカルボン酸と、
前記直鎖脂肪族ジカルボン酸の塩である直鎖脂肪族ジカルボン酸塩と、
前記直鎖脂肪族ジカルボン酸と前記直鎖脂肪族ジカルボン酸塩との混合物とからなる集合から選択される物質であり、
前記第4成分は、
ベンゾイミダゾール骨格を有するベンゾイミダゾール骨格化合物と、
前記ベンゾイミダゾール骨格化合物の塩であるベンゾイミダゾール骨格化合物塩と、
トリアジン骨格を有し、メルカプト基を有するトリアジン骨格化合物と、
前記トリアジン骨格化合物の塩であるトリアジン骨格化合物塩と、
前記ベンゾイミダゾール骨格化合物と前記ベンゾイミダゾール骨格化合物塩と前記トリアジン骨格化合物と前記トリアジン骨格化合物塩とからなる集合から選択される複数の物質の混合物とからなる集合から選択される物質である
不凍液。
【請求項8】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載される不凍液を製造するステップと、
前記第1成分の濃度が30〜60質量%になるように、前記不凍液に水を混合するステップ
とを具備する不凍液製造方法。
【請求項9】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載される不凍液を循環させる冷却系統と、
前記冷却系統により冷却される内燃機関本体とを具備し、
前記冷却系統は、ゴムから形成され、かつ、前記不凍液に接触するゴム部品を備える
内燃機関。
【請求項10】
請求項9に記載される内燃機関により生成される動力により推進する自動車。
【請求項11】
ベンゼンの分子の6つの水素原子の一部または全部が置換基に置換される化合物を含む不凍液添加剤であり、
前記置換基のうちの少なくとも1つの第1基は、第2基または第3基のいずれか1つの基であり、
前記第2基は、第1炭化水素基−R−を用いて、次化学式:
−R−OH
により表現され、
前記第3基は、第2炭化水素基−R′−を用いて、次化学式:
−O−R′−OH
により表現され、
前記置換基のうちの前記第1基を除く基は、
水酸基と、
第3炭化水素基と、
アルコキシル基とから選択される基である
不凍液添加剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−188614(P2006−188614A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−1934(P2005−1934)
【出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)