説明

不定形画像に基づく色付きコンタクトレンズ

瞳孔区域および瞳孔区域を囲む虹彩区域を有する、透明なコンタクトレンズを提供する工程と、コンタクトレンズの表面に着色剤を適用する工程とを包含する、色付きコンタクトレンズを製造する方法。着色剤は、不定形パターンとしてコンタクトレンズに適用され、同一の虹彩区域の有効量をカバーする。不定形パターンは、レンズを装用した人の虹彩の見かけの色を変化させる一方、非常に自然な外観を与える能力を有する、レンズを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、色付きコンタクトレンズの分野に関し、より詳細には、非常に自然な外観をレンズに与える、色付きコンタクトレンズに使用するためのパターンに関する。
【背景技術】
【0002】
目の色を修正または強化する初期の試みでは、目の虹彩部分をカバーする、単純な一様に色付けされた領域を持つ、色付きコンタクトレンズが利用された。しかし、この種類の不透明な色付けを持つコンタクトレンズは、非常に不自然な外観を与えた。他の種類の色付きコンタクトレンズとして開発された、例えばWichterleの米国特許第3,679,504号は、芸術的に描画されるか写真的に再現されている、単一よりも多い色の虹彩を有する不透明なレンズを開示している。しかし、そのようなレンズは、自然に見えず、そのため、決して商業的な成功を達成しなかった。自然な外観を持つ不透明なレンズを作製するための他の試みは、米国特許第3,536,386号(Spivak);米国特許第3,712,718号(LeGrand)、米国特許第4,460,523号(Neefe)、米国特許第4,719,657号(Bawa)、米国特許第4,744,647号(Meshelら)、米国特許第4,634,449号(Jenkins);欧州特許公開第0309154号(Allergan)および英国特許出願第2202540A号(IGEL)で開示されている。
【0003】
その好ましい実施態様において、色付きの不透明なドットを有するコンタクトレンズを開示している、Knapp(米国特許第4,582,402号)に記載された色付きコンタクトレンズにより、商業的な成功が達成された。Knappレンズは、印刷された単純な1色のドットパターンを使用し、作製が単純かつ安価なレンズで自然な外観を提供する。ドットの断続的なパターンは、虹彩を全体的にカバーしないものの、マスキング作用により、健常観察者が視認したときに連続色の外観をもたらす、十分なドット密度を提供する。Knappは、近接した検査において、虹彩が一つよりも多い色を含有することが確認されるため、異なる色の異なるパターンを使用し、印刷工程を一回以上にわたって繰り返すことができることも開示している。印刷されたパターンは、完全に均一であることが要望されず、虹彩の微細構造の強化を許容する。現在、商業的な成功を達成している1色のKnappレンズは、虹彩の構造を強化するため、不規則なパターンで配置されたドットを有する。しかし、Knappの商業的レンズまたはKnappの特許のいずれも、より自然な外観を達成するため、一つよりも多い色を有するドットのパターンをどのように配置するであろうかを開示または提示していない。
【0004】
Knappレンズを改良するため、様々な取り組みが行われてきた。Jahnkeの米国特許第5,414,477号は、より自然な外観を提供するため、着色剤の明確な陰の二つ以上の部分において、断続的なインクパターンを適用することを開示している。
【0005】
より自然な外見のレンズを作製するための他の試みは、瞳孔部分の周辺部から虹彩部分の周辺部まで放射状に延びている、相互接続ラインの群を開示している、Rawlingsの米国特許第5,120,121号を包含する。さらに、欧州特許第0472496A2号は、虹彩内で確認されたラインの複製を試みている、ラインのパターンを有する、コンタクトレンズを示唆している。
【0006】
なおより自然に見えるレンズを作製するためのより最近の試みは、コンタクトレンズ上に順番に印刷されている、三つ以上の色付きパターンの使用を開示している、Ocampoの米国特許第7,438,412号を包含する(図1a−1cを参照されたい)。Ocampoで開示されている層は、一般的に、主虹彩層、内側星形層および外側星形層を包含する。組み合わせでは、三つ(以上)の層は、−装用者から少なくとも3フィートの距離において、20/20の視力を持つ観察者が立っている限り−観察者に対して自然な外観を作成する。図2に示すように、そのようなパターンは、時として、(そこに描出された人間の虹彩の概略により、表されるように)下方の虹彩が透けて見えることを許容するため、十分に拡散している。しかし、そのようなレンズをパッケージ化するか、近接して観察したときには、印刷領域の規則性および大きいサイズにより、観察者にとってパターンが不自然に見えることが引き起こされる。
【0007】
コンタクトレンズ画像の他の例は、先行技術、例えば、Streibigの米国特許第7,296,891号で開示されているコンタクトレンズに見られる。図5は、そのようなパターンを装用者の虹彩上に設置したとき、長および短距離において、事実上、パターンが下方の虹彩を遮蔽することを示す。このように、コンタクトレンズ画像が自然の虹彩と混合せず、レンズは、目に適用されたシールのように見え、非常に不自然な外見になる。
【0008】
したがって、当技術分野において、非常に短い距離でもなお、自然かつリアルに見えることを提供する、色付きコンタクトレンズおよびレンズパターンが依然として要望されていることが見てとれる。本発明が主に向けられているのは、これらの要望および他を満たす、色付きコンタクトレンズおよびレンズパターンの提供である。
【発明の概要】
【0009】
例示的な実施態様では、本発明は、不定形画像パターン−必ずしも任意の反復領域を包含しないパターン−がコンタクトレンズの虹彩区域の少なくとも部分上に転写されていることから、極めて自然な外観を有する、色付きコンタクトレンズを提供する。レンズパターンは、レンズ画像が装用者の下方の虹彩と混合するように、虹彩の少なくとも20%、より好ましくは、少なくとも40%を無印刷で残して、レンズ上に転写されている。一般的に、本明細書において開示された不定形画像パターンは、不規則な形状および変動する色の値を有する区画からなることから、そのようなコンタクトレンズは、任意の距離からコンタクトレンズを観察する観察者にとって、審美的に快適かつ自然な外観を有する。そのようなレンズパターンは、装用者から16インチ未満で観察されたときもなお、自然な外見のリアルな色付きコンタクトレンズを許容する。公知の色付きコンタクトレンズは、多くの場合、1メートル未満の距離から観察したときに非リアルに見える。
【0010】
一つの態様では、本発明は、色付きコンタクトレンズに使用するための虹彩の不定形パターンを作る方法に関する。方法は、一般的に、(1)少なくとも二つの色を有するベース画像を含有する、画像ファイルを写真編集ソフトウェアアプリケーションで開く工程、(2)一つ以上のフィルタでベース画像を変形させ、変形画像を作成する工程、(3)変形画像の不透明度を低減し、透過画像を作成する工程、(4)透過画像のサイズを修正し、サイズ調整画像を作成する工程および(5)カットアウトフィルタを使用し、そこから除去されるより小さい内側の実質的な円を有する、実質的に輪状の外径により画定されるレンズ形状をサイズ調整画像から作成する工程を包含する。
【0011】
もう一つの態様では、本発明は、色付きコンタクトレンズを製造する方法に関する。方法は、瞳孔区域および瞳孔区域を囲む虹彩区域を有する、透明なコンタクトレンズを提供する工程と、コンタクトレンズの表面に着色剤を適用する工程とを包含する。着色剤は、不定形パターンとしてコンタクトレンズに適用され、同一の虹彩区域の有効量をカバーする。不定形パターンは、レンズを装用した人の虹彩の見かけの色を変化させる一方、非常に自然な外観を与える能力を有する、レンズを提供する。
【0012】
依然としてもう一つの態様では、本発明は、不透明でない瞳孔区域と、瞳孔区域を囲む虹彩区域と、虹彩区域の少なくとも部分上に転写された色付きの不定形パターンとを包含する、色付きコンタクトレンズに関する。場合により、不定形パターンは、透明および/または半透明インクでコンタクトレンズ上に転写されている。依然として、場合により、不定形パターンは、不透明インクでコンタクトレンズ上に転写されている。
【0013】
本発明のこれらおよび他の態様、特徴および効果は、本明細書における図面の図および詳細な説明を参照しながら理解され、特に、請求の範囲で指摘されている様々な要素および組み合せを手段として現実化される。上記の一般的な説明ならびに以下の図面の簡単な説明および本発明の詳細な説明の両方は、本発明の好ましい実施態様を例証および解説するものであり、請求されるように、本発明を制限しないことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1a】公知の色付きコンタクトレンズパターンを図示する。
【図1b】公知の色付きコンタクトレンズパターンを図示する。
【図1c】公知の色付きコンタクトレンズパターンを図示する。
【図2】人間の虹彩の概略描写と組み合わされている、公知の色付きコンタクトレンズパターンおよび同一の拡大図を描出する。
【図3】本発明の例示的な実施態様による不定形パターンを有する、色付きコンタクトレンズである。
【図4】人間の虹彩の概略描写と組み合わされている、本発明の例示的な実施態様による不定形画像パターンおよび同一の拡大図を描出する。
【図5】人間の虹彩の概略描写と組み合わされている、虹彩の80%が印刷された公知の色付きコンタクトレンズパターンおよび同一の拡大図を描出する。
【図6】本発明の例示的な方法による編集のためのベース画像である。
【図7】例示的な編集段階において、トリミングして示され、選択的に修正された明度およびコントラストを有する、図6の画像である。
【図8】もう一つの例示的な編集段階において、オーシャンリップルフィルタで変形されて示されている、図7の画像である。
【図9】もう一つの例示的な編集段階において、カットアウトフィルタを適用した後の図8の画像である。
【図10a】もう一つの例示的な編集段階において、グレースケールに変換され、それぞれ、50%、75%および95%まで修正された不透明度を有する、図9のトリミングされた部分を示す。
【図10b】もう一つの例示的な編集段階において、グレースケールに変換され、それぞれ、50%、75%および95%まで修正された不透明度を有する、図9のトリミングされた部分を示す。
【図10c】もう一つの例示的な編集段階において、グレースケールに変換され、それぞれ、50%、75%および95%まで修正された不透明度を有する、図9のトリミングされた部分を示す。
【図11a】もう一つの例示的な編集段階において、バイナリ形式であり、本発明の例示的な実施態様による色付きコンタクトレンズに使用するため、不定形レンズパターンを作成するようにレンズ形状に形成されている、図10a−10cの画像を示す。
【図11b】もう一つの例示的な編集段階において、バイナリ形式であり、本発明の例示的な実施態様による色付きコンタクトレンズに使用するため、不定形レンズパターンを作成するようにレンズ形状に形成されている、図10a−10cの画像を示す。
【図11c】もう一つの例示的な編集段階において、バイナリ形式であり、本発明の例示的な実施態様による色付きコンタクトレンズに使用するため、不定形レンズパターンを作成するようにレンズ形状に形成されている、図10a−10cの画像を示す。
【図12a】それぞれ、三つの層:主虹彩層、内側虹彩層および外側星形層に分離している、本発明の例示的な実施態様による不定形画像を示す。
【図12b】それぞれ、三つの層:主虹彩層、内側虹彩層および外側星形層に分離している、本発明の例示的な実施態様による不定形画像を示す。
【図12c】それぞれ、三つの層:主虹彩層、内側虹彩層および外側星形層に分離している、本発明の例示的な実施態様による不定形画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
例示的な実施態様の詳細な説明
本開示の一部を形成する添付図面の図に関連して、本発明の以下の詳細な説明を参照することにより、より容易に本発明を理解することができる。本発明は、本明細書において記載および/または示す特有の装置、方法、条件またはパラメータに限定されず、本明細書において使用される用語は、例としてのみ、具体的な実施態様を記載することを目的とし、請求されている本発明を限定することを意図していないことが理解される。本明細書で特定された任意およびすべての特許および他の刊行物は、本明細書において全体的に明記されているのと同様に、参照により組み入れられる。
【0016】
請求の範囲を包含する明細書でも使用されているように、単数形「a」、「an」および「the」は、複数を包含し、文脈から明らかに別段の指示がない限り、具体的な数量値の参照は、少なくともその具体的な値を包含する。範囲は、本明細書において、「およそ」もしくは「約」一つの具体的な値から、および/または「およそ」もしくは「約」もう一つの具体的な値までとして表現することができる。そのような範囲を表現するとき、もう一つの実施態様は、一つの具体的な値から、および/または他の具体的な値までを包含する。同じように、先行詞「およそ」の使用により、値を近似として表現するときには、具体的な値がもう一つの実施態様を形成することが理解される。
【0017】
用語「不定形(又は無定形)画像」は、本明細書において使用されているように、20/20の視力を有する健常視認者により、補助の使用なしで視認されるような、識別可能な繰り返しパターンがない、連続階調画像を意味するものとする。この画像は、多色であることが好ましいが、単色であることができる。通常、コンタクトレンズ上に印刷された不定形画像は、それ自体、装用者の目において自然に見えないであろう。
【0018】
用語「加工された不定形(又は無定形)画像」は、本明細書において使用されているように、本明細書において画定された新規な画像変換プロセスを通じ、一連のバイナリ画像に変換された不定形画像を意味するものとし、不定形画像は、色付きコンタクトレンズ印刷技術に適合した印刷可能なアートワークに転換される。
【0019】
用語「離散画像」は、本明細書において使用されているように、認識可能な繰り返しパターンを持つ画像を意味するものとする。
【0020】
用語「健常視認者」は、本明細書において使用されているように、20/20の視力を有し、拡張または他の視認補助による補助を受けていない人を意味するものとする。
【0021】
用語「バイナリ画像」は、本明細書において使用されているように、二つの潜在的な値を有する画像を意味するものとする。通常、従来の印刷では、これらが黒および白である。本出願では、バイナリ画像は、対象の色(すなわち、緑)が適用されている箇所および色が適用されていない箇所として画定することができる。多くのコンピュータソフトウェアシステムでは、これらは、「ビットマップ」形式で保存される画像である。
【0022】
用語「グレースケール画像」は、通常、各画素の値が明暗度情報のみを含有する、画像として公知である。印刷媒体産業では、伝統的に、白(印刷なし)から黒(すべて印刷)までの範囲の連続レベルにより、各画素が表されている。連続範囲の代わりに、グレースケール画像は、白と黒との間のグレーの複数の離散レベルを有することができる。しかし、本発明の例示的な実施態様では、用語「グレースケール」は、本明細書において使用されているように、画素なしと、任意の色で一様に色付けされた画素との間の色明暗度値の範囲およびその間のすべての明暗度値を意味するものとする。
【0023】
ここで、いくつかの図を通じて同じ符番が対応する部品を表す、図面の図を参照すると、図3は、本発明の例示的な実施態様によるコンタクトレンズ10を描出している。コンタクトレンズ10は、一般的に、不透明でない瞳孔区域を囲む環状の虹彩区域22と共に、レンズの中心において、不透明でない瞳孔区域20を包含する。図3に示すように、コンタクトレンズ10の虹彩区域22の部分内に色付きの不定形パターンが配設されている。代替実施態様では、色付きの不定形パターンは、虹彩区域の5%から100%をカバーすることができる。
【0024】
例示的な実施態様では、色付きの不定形パターン24は、要素、例えば、円形、正方形、六角形、三角形、細長または他のドット形状を非限定的に包含する、規則的または不規則である均一または不均一な形状を有する、ドットから作られていることができる。例示的な代替実施態様では、色付きの不定形パターン24は、ドットとは別の要素、例えば、ミミズ状のライン、螺旋、星形、スポーク、スパイク、細溝、放射状の縞、ジグザグおよび/または筋で構成されていることができる。
【0025】
もう一つの好ましい例示的な実施態様では、不定形画像パターン24は、およそ1200μm2(約40μmのドット径)を上回り、より好ましくは、およそ3000μm2(約60μmのドット径)を上回る、個々の領域を有する、無印刷要素サイズで構成されている。場合により、不定形画像パターン24は、所望のように、重複するドットで構成されていることができる。
【0026】
本発明は、一般的に、人間の目によって簡易に識別される、任意の大きい離散または反復領域を不定形画像パターン24が包含しないことから、極めて自然な外観を有する、色付きコンタクトレンズを提供する。公知の離散パターン、例えば、図1a−1cおよび図2に示すパターンは、一般的に、3フィートを上回る距離からコンタクトレンズを観察する観察者にとって、特に、そのような距離でドットが混合し合い、リアルに見える自然な虹彩パターンを形成するため、審美的に快適かつ自然な外観を有する。しかし、3フィート未満の距離では、観察者は、図1a−1cおよび図2に示すように、ドット設置のグリッド状の規則性および下方の虹彩とレンズパターンとの不自然な混合のため、印刷された画像が不自然および/または非リアルであることを識別する可能性がある。
【0027】
逆に、本明細書において開示された不定形画像パターンは、大きい不規則な形状および変動する色の値を有する、区画からなる−下方の対象物の反復画像を分解するため、カモフラージュされたパターンをどのように使用するかに類似している。そのようなレンズパターンは、非常に短い距離から観察したときもなお、自然な外見のリアルな色付きコンタクトレンズを許容する。事実、不定形画像パターンの使用により、観察者が装用者から16インチ未満であるとき、色付きコンタクトレンズを自然かつリアルな外見にレンダリングできることが発見されている。
【0028】
不定形画像は、自然界、数学から得ることができるか、そのような画像は、芸術家によって作成されることができる。残念ながら、これらの画像は、それ自体、従来の印刷手法を使用してコンタクトレンズ上に印刷することができない。むしろ、現行のコンタクトレンズ印刷手法で使用するため、不定形画像をバイナリ画像に変換する必要があることが確認されている。
【0029】
任意の画像は、高いカバー率で印刷された場合、画像が装用者の自然の目と良好に混合しないことから、健常視認者に不自然に見えることが確定されている。例として、図5は、下方の虹彩の80%以上がパターンでカバーされ、下方の虹彩がレンズと良好に混合することを許容しない、公知の色付きコンタクトレンズパターンを描出している。代わりに、より自然な外観のため、コンタクトレンズ画像は、隣接するドット間にいくらかの隙間空間を有し、レンズの画像と装用者の虹彩との混合を許容する必要がある。したがって、任意の不定形画像デザインを調整し、ドット密度を適切に制御する必要がある。
【0030】
本発明の一つの態様は、したがって、不定形画像を修正し、コンタクトレンズ上に印刷するための画像を準備するためのプロセスである。このプロセスを使用することにより、結果として作製された色付きコンタクトレンズは、レンズが装用者の自然の目における下方の虹彩構造と良好に混合することから、装用者がその自然な目の外観の大部分を保持することを許容することができる。事例として、図4は、レンズのパターンを通じ、装用者の下方の虹彩が見られることを許容することにより、本発明の優れた混合特性を描出している。連続階調の不定形画像を複数のバイナリ層に変換するためのプロセスを慎重に制御することにより、これが実現され、その後、従来の手法(すなわち、パッド印刷、インクジェット、色素昇華、トナー)を使用し、バイナリ層をレンズ上に印刷することができる。本明細書において記載した変換プロセスを慎重に制御し、ドット密度が連続階調画像を模擬するために十分に高いが、装用者の下方の「背景」虹彩が透けて見えることを許容するために十分に低いことを確保する必要がある。
【0031】
もう一つの態様では、本発明は、色付きコンタクトレンズでの使用に好適である、加工された不定形画像を作る方法である。加工された不定形画像を作る例示的な方法は、第一に、任意の不定形画像(色またはグレースケール)を写真編集ソフトウェアアプリケーション(例を挙げれば、Adobe Photoshop(登録商標))で開くか、第一に、不定形画像をデジタル化またはコンピュータにスキャンする工程を包含する。画像は、写真、レンダリング、芸術家もしくはグラフィックデザイナが作成した画像またはユーザの要望に合致した任意の他の画像であることができる。事例として、一つの例示的な実施態様では、不定形画像は、任意の目の構造とまったく無関係であり、例えば、カモフラージュされたパターン、雲パターンであることができる。あるいは、自然の目(または単に虹彩)の写真またはスキャンをデジタル化することにより、画像を生成することができるか、自然の目の二つ以上の写真/スキャンを一つの画像に組み合わせることにより、画像を生成することができる。ソースにかかわりなく、写真編集ソフトウェアアプリケーションで画像が特定され、開かれると、ユーザは、場合により、所望のように画像をトリミングし、サイズ変更することができる。例示的な実施態様では、レンズ形状は、一般的に、直径として、およそ12mmからおよそ18mm、より好ましくは、およそ14mmの外径を有し、さらに、およそ4mmからおよそ6mm、より好ましくは、およそ5mmの直径を有する、そこから除去された内側円を有する、円である。次に、ユーザは、イメージング手法を使用し、画像の鮮明度を調整ならびに/または画像の明度およびコントラストを修正することができる。
【0032】
続いて、最終製品に所望される色および層の数に基づき、画像を単一または複数のグレースケール画像に変換する。これらのグレースケール画像(または画像の部分)の不透明度を調整し、レンズの各画像または部分について、着色剤の所望の量を得る。
【0033】
そのうえで、その後、手法、例えば、ハーフトーン(周波数または振幅ハーフトーンのいずれか、誤差拡散)、ディザリング(すなわち、Floyd-Stinberg、拡散ディザリング)、異なるパターンでのグレースケールの畳み込みまたは当技術分野において公知の他の手法を使用し、グレースケール画像をバイナリ画像に変換する。
【0034】
特有の例示的な実施態様では、色付きコンタクトレンズに使用するための不定形画像を作る方法は、以下の工程:
a. 図6に見られるように、8.5インチ×11インチにサイズ調整された180dpi画像である、「ガラスフラワー」と題する標準的な不定形画像をAdobe Photoshop(登録商標)で開く;
b. 図7に示すように、花のみを示すように画像をトリミングし、;画像の上部一部を選択し(Magnetic Selection Toolを使用し、周囲形状を選択する)、選択を2画素だけぼかして端部の鮮明度を低減し、明度およびコントラストをそれぞれ+117および+64だけ修正する。
c. 図8に描出するように、以下の設定を利用してオーシャンリップルフィルタを適用し、変形画像を作成する:
i. リップルサイズ=12;
ii. 振幅=10;
d. 図9に見られるように、以下の設定でカットアウトフィルタを適用する:
i. レベル数=5;
ii. 端部の簡潔性=4;
iii. 端部の忠実度=2;
e. 画像をグレースケールに変換する;
f. 三つの異なるグレースケール画像を作成する:
i. 50%に修正された不透明度を有する、第一の画像;
ii. 75%に修正された不透明度を有する、第二の画像;
iii. 95%に修正された不透明度を有する、第三の画像;
g. 所望のように各画像をトリミングする(図10a、10bおよび10cは、工程e−gの結果を描出する);
h. 約1600dpiの解像度を有する、15mmの正方形(または実質的に正方形)に各画像サイズを修正する。
i. 以下の設定を使用し、三つの異なるグレースケール画像をバイナリに変換する:
i. 出力=1600ppi(インチ当たりの画素);
ii. ハーフトーンスクリーニング
1. スクリーン周波数=230lpi(インチ当たりのライン)
2. スクリーン角度=0°
3. スクリーン形状=円形
j. 15mmの外側円および5mmの内側円を持つ、レンズ形状を各グレースケール画像から切り出す(図11a、11bおよび11cは、工程h−jの結果を描出する)
で具現化される(この具体的な実施態様では、Adobe Photoshop(登録商標)を利用するが、しかし、他の例示的な実施態様では、他の写真編集ソフトウェアパッケージを利用することに留意されたい)。
【0035】
−写真編集ソフトウェアを使用するか、他の手段を通じてのいずれかで−加工された不定形画像が作成されると、画像を処理して、レンズの自然な外観を最適化し、印刷のための画像を準備することができる。例として、好ましい例示的な実施態様では、図12a−12cに示すように、加工された不定形画像を三つの個別の層として形成することができる。図12aは、色付きコンタクトレンズのベース層として機能することができる、主虹彩層30を描出している。図12bは、主虹彩層30を重畳し、主虹彩層の固有の放射状対称の分解を支援することができる、内側虹彩層32を描出している。同じように、図12cは、所望のように、主虹彩層30および内側虹彩層32の下部または上部のいずれかに配設することができる、外側星形層34を描出している。加工された不定形画像に三次元作用を追加するため、場合により、同一に対し、放射状勾配フィルタを適用することができる。加工された画像に任意の放射状勾配フィルタを適用することにより、湾曲した外側表面を有するコンタクトレンズ上に画像を印刷するときに、構造化された虹彩の外観を与えることが支援される。
【0036】
依然として他の特有の例示的な実施態様では、グレースケール画像のハーフトーンスクリーニングは、慎重に制御され、層毎に変動することができる。以下の設定が特に良好に実行されることが発見されている(図12A−12Cを参照されたい)。
【0037】
【表1】

【0038】
従来の印刷手法を使用し、結果的なバイナリ画像をコンタクトレンズ上に個別に配置することができる。個別のバイナリ画像を重畳することができるか、個別のままであることができる。複数の色を使用し、プロセス色を使用したレンズの色外観を変動させることができる。追加して、複数のバイナリ画像に同一の色を使用し、その具体的な色(すなわち、その色の異なるグレースケールレベル)の一層の制御をもたらすことができる。
【0039】
代替実施態様では、自然な外見のレンズパターンは、既存の色付きの不定形画像、例えば、人間の虹彩の写真または芸術家のレンダリングに由来することができる。そのような実施態様では、不定形画像の色情報を異なる色層(例を挙げれば、シアン、黄、マゼンタおよび黒)に分解することができる。各色層に基づき、異なる色付き層を最適化し、任意の繰り返しパターンを低減することができ、その後、先に述べたグレースケール画像と類似した方式でこれらの層を処理し、加工された不定形画像を形成することができる。色付きの不定形画像を使用する一つの効果として、異なる色付き層の重畳は、リアルな外観のため、より簡易に混合し合うことが確認されている。
【0040】
もう一つの態様では、本発明は、一般的に、先に記載した方法により、作成された一つ以上の加工された不定形パターンが転写されている、色付きコンタクトレンズである。一つのそのような例示的な実施態様では、半透明および/または透明インクでのパッド印刷により、加工された不定形画像全体を直接的にコンタクトレンズに適用することができる。半透明および/または透明インクを利用し、不定形画像を転写することにより、光がコンタクトレンズを通して通過し、コンタクトレンズから反射した光と良好に混合するであろう、装用者の自然の虹彩から反射することを許容する。他の例示的な実施態様では、単一のクリシェにおける異なるクリシェ深さを使用することにより、加工された不定形画像内のグレースケールの異なるレベルをコンタクトレンズに与えることができる。例として、クリシェのより深い空隙を使用し、グレースケールのより暗い領域をレンズ上に印刷することができる一方、クリシェのより浅い空隙を使用し、より明るい領域をレンズ上に印刷することができる。依然として他の例示的な実施態様では、当業者は、レーザエッチング設定(もしくはレーザエッチングされたクリシェ)の変動、複数のマスク(もしくは酸エッチングされたクリシェ)または別段を包含する、様々な手段を介し、エッチングの深さを制御できることを理解する。代替実施態様では、色付きインクを利用した均一な深さの複数のクリシェにより、所望のようにグレースケール画像を構築することができる。
【0041】
あるいは、半透明コンタクトレンズベース上にインクを印刷することができる。例として、1または2色の透過ベースとしてベースレンズを形成することができる。一つのそのような実施態様では、ベースレンズの虹彩部分は、透過色調で色付けすることができる。もう一つの実施態様では、レンズの瞳孔区域は、レンズが装用者の目の暗い瞳孔に対しているときに可視ではない、不透明でない色調で色付けすることができる。
【0042】
依然として他の例示的な実施態様では、不透明インクを使用し、不定形画像をコンタクトレンズ上に印刷することができる。しかし、透明または半透明インクではなく、むしろ不透明インクを使用するときには、通常、ある量の無印刷領域により、不定形パターンと下方の虹彩とのより良い混合が促進されることを許容するのが有利である(が、要求されない)。一般的に、不透明インクを使用するときには、コンタクトレンズのおよそ5%からおよそ90%(有効量と見なされる)を無印刷で残すことが推奨される。例示的な実施態様では、虹彩をカバーすることが意図されている、コンタクトレンズの領域の80%未満が印刷されていることが好ましく、より好ましくは、同一の領域のおよそ60%未満、なおより好ましくは、45%が印刷されている。コンタクトレンズ上に無印刷領域を残すように不定形画像を用意するため、先に記載したように、場合により、Adobe Photoshop(登録商標)のハーフトーンスクリーン設定(または代替の画像処理ソフトウェアアプリケーションにおける類似の特徴)を使用し、不定形画像をバイナリ画像に変換することができる。依然として他の例示的な実施態様では、場合により、グレースケール画像に勾配を適用し、コンタクトレンズの視覚的な見栄えをさらに強化することができる。これらの後処理手法、例えば、先に述べたハーフトーン手法を最適化して、近接した距離でのパターン識別性を低減または排除し、同時に、コンタクトレンズが下方の虹彩と混合することを許可することができる。
【0043】
さらなる態様では、本発明は、色付きのヒドロゲルコンタクトレンズを作るための転送印刷方法であって:
(a) コンタクトレンズ上に印刷される、加工された不定形パターンを有する、少なくとも一つのクリシェに色インクでインク付けし、インク付けされた画像をクリシェに形成する工程;
(b) 少なくとも一つの転送パッドを手段として、クリシェから、少なくとも一つのコンタクトレンズ形成金型の少なくとも一つの表面に対し、インク付けされた画像を転送する工程、
(c) 金型表面上に転送された、インク付けされた画像を少なくとも部分的に硬化させ、色付き膜を形成する工程;
(d) 金型の少なくとも一つのレンズ形成空洞にヒドロゲルレンズ形成材料を分注する工程;および
(e) レンズ形成空洞内のレンズ形成材料を硬化させ、コンタクトレンズを形成し、それにより、色付き膜が金型表面から取り外され、コンタクトレンズの本体と一体になる工程
を含む、方法を提供する。
【0044】
色付きコンタクトレンズを作るためのパッド転送印刷方法は、参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,160,463号;第5,302,978号;第6,811,259号;第7,354,959号;第7,255,438号に開示されている。
【0045】
好ましく、かつ、例示的な実施態様を参照しながら本発明を記載したが、当業者により、以下の請求項によって画定されるように、多様な変形、追加および削除が本発明の範囲内であることが理解される。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
色付きコンタクトレンズに使用するための加工された不定形の模擬虹彩パターンを作る方法であって:
少なくとも一つの色を有する不定形画像を含有する、画像ファイルを写真編集ソフトウェアアプリケーションで開くか、スキャンする工程;
変形画像の不透明度を低減し、透過画像を作成する工程;
透過画像のサイズを修正し、サイズ調整画像を作成する工程;および
カットアウトフィルタを使用し、そこから除去されるより小さい内側の実質的な円を有する、実質的に輪状の外径により画定されるレンズ形状をサイズ調整画像から作成する工程
を含む方法。
【請求項2】
さらに、ベース画像を選択的にトリミングする工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
さらに、ベース画像の鮮明度、コントラストおよび/または明度を選択的に修正する工程を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
さらに、変形画像にカットアウトフィルタを適用する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
カットアウトフィルタがレベル数、端部の簡潔性および/または端部の忠実度の画像設定を包含する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
さらに、変形画像をグレースケールに変換する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
さらに、変形画像を少なくとも三つのグレースケール画像ファイルに変換する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
不定形画像が目ではない画像である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
ラインスクリーン範囲が20から400ライン/インチである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
画像の解像度がインチ当たりおよそ100ドットを上回るように修正される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
さらに、サイズ調整画像をバイナリ画像に変換する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
ハーフトーン、ディザリングおよび/または拡散誤差を通じ、サイズ調整画像がバイナリ画像に変換される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
色付きコンタクトレンズを製造する方法であって:
a) コンタクトレンズ上に印刷される、加工された不定形パターンを有する、少なくとも一つのクリシェに色インクでインク付けし、インク付けされた画像をクリシェに形成する工程;
b) 少なくとも一つの転送パッドを手段として、クリシェから、少なくとも一つのコンタクトレンズ形成金型の少なくとも一つの表面に対し、インク付けされた画像を転送する工程、
c) 金型表面上に転送された、インク付けされた画像を少なくとも部分的に硬化させ、色付き膜を形成する工程;
d) 金型の少なくとも一つのレンズ形成空洞にヒドロゲルレンズ形成材料を分注する工程;および
e) レンズ形成空洞内のレンズ形成材料を硬化させ、コンタクトレンズを形成し、それにより、色付き膜が金型表面から取り外され、コンタクトレンズの本体と一体になる工程
を含む、方法。
【請求項14】
少なくとも一つの色を有する不定形画像を含有する、画像ファイルを写真編集ソフトウェアアプリケーションで開くか、スキャンする工程;
変形画像の不透明度を低減し、透過画像を作成する工程;
透過画像のサイズを修正し、サイズ調整画像を作成する工程;および
カットアウトフィルタを使用し、そこから除去されるより小さい内側の実質的な円を有する、実質的に輪状の外径により画定されるレンズ形状をサイズ調整画像から作成する工程を含む、方法により、加工された不定形の模擬虹彩パターンが作られる、請求項13記載の色付きコンタクトレンズを製造する方法。
【請求項15】
着色剤がリングまたは一連のリングとして適用される、請求項13記載の色付きコンタクトレンズを製造する方法。
【請求項16】
不定形画像が目状の画像である、請求項14記載の色付きコンタクトレンズを製造する方法。
【請求項17】
不透明でない瞳孔区域;
瞳孔区域を囲む虹彩区域;および
虹彩区域の少なくとも部分上に転写されている、色付きの加工された不定形パターン
を含み:
少なくとも二つの異なる色を有する不定形画像を含有する、画像ファイルを写真編集ソフトウェアアプリケーションで開く工程;
一つ以上のフィルタでベース画像を変形させ、変形画像を作成する工程;
変形画像の不透明度を低減し、透過画像を作成する工程;
透過画像のサイズを修正し、サイズ調整画像を作成する工程;および
カットアウトフィルタを使用し、そこから除去されるより小さい内側の実質的な円を有する、実質的に輪状の外径により画定されるレンズ形状をサイズ調整画像から作成する工程
の方法から、加工された不定形パターンが形成されている、色付きコンタクトレンズ。
【請求項18】
16インチ未満の距離からレンズを視認する健常観察者にとって、レンズが自然に見える、請求項17記載の色付きコンタクトレンズ。
【請求項19】
健常観察者により、視認されるような識別可能な繰り返しパターンがない、連続階調画像である、任意の画像を加工された不定形画像が含む、請求項17記載の色付きコンタクトレンズ。
【請求項20】
不定形画像が目ではない画像である、請求項17記載の色付きコンタクトレンズ。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2013−506159(P2013−506159A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530973(P2012−530973)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/049639
【国際公開番号】WO2011/037911
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】