説明

不正防止キャップ

【課題】 ヒンジキャップに切離し可能に連設した封緘部材により、不正の確認ができ、また、一つの箱などに多数入れて運搬しても、封緘部材同士が噛み込むことを防止し、簡単に分別廃棄できる不正防止キャップを提供すること。
【解決手段】 キャップ本体と蓋体とからなるヒンジキャップにおいて、キャップ本体は、外周壁部の外周に、間隔を隔てて挿入口を形成するように連設される封緘部材を具え、外周壁部には、縦方向に切り込み部と外周壁部と蓋係合部の間の円弧範囲にスリット溝が設けられ、スリット溝の底面には、外周壁部と蓋係合部を連結する薄肉の連結部が設けられ、封緘部材は、封緘部と封緘部の両側端から外周壁部の外周に向かう傾斜連結部とからなり、封緘部には、上端に上方に突設された封緘突部が設けられ、蓋体の外周壁には、外周下部にキャップ本体の外周壁部の挿入口に挿入され、封緘部材に係合する封緘リブが設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジキャップ、とくに不正な開封を防止する機構を具えた不正防止キャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体状あるいは粉体状などの流動性内容物を収納した容器本体の口筒部に、開閉自在なヒンジキャップが装着された各種容器においては、これらの内容物が不正に抜き取られたり、詰め替えられないように、また、内容物に有害物質が混入されることがないように、不正な開封を防止することが必要となっている。
【0003】
そこで、ヒンジキャップの蓋体またはキャップ本体に封緘部材を切離し可能に連設し、未開封状態時に、封緘部材をキャップ本体または蓋体と係合させて閉蓋状態を維持させ、封緘部材の有無で視覚的に開封状態を確認できるようにした不正防止キャップは、従来より知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4−35553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載のヒンジキャップは、蓋体(2)のヒンジ(3)の反対側に押圧片(4)を設け、キャップ本体(1)に薄肉部(6)を介して封緘部材に相当する係合片(7)を取り付けたものである。
【0006】
上記特許文献1記載のヒンジキャップでは、容器の生産過程において、キャップを未開封の状態で、一つの箱などに多数入れて運搬する際などに、係合片(7)同士が、互いの内側に侵入し、噛み込んだり、引っ張り合って、薄肉部(6)が切断され、係合片(7)がキャップ本体(1)から外れるという問題があった。
【0007】
また、最近では、ヒンジキャップを、内容物を充填した容器本体に装着し、容器として内容物を使用した後に、分別廃棄をすることが多々あるが、上記特許文献1記載のヒンジキャップでは、キャップを容器に装着しただけのものであり、キャップと容器本体とを分別廃棄する際に、分別が容易でないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決することを課題とし、ヒンジキャップに切離し可能に連設した封緘部材により、不正の確認ができるとともに、閉蓋状態をより強固に維持することができ、また、キャップを未開封の状態で、一つの箱などに多数入れて運搬する際などでも、封緘部材同士が噛み込むことを防止し、封緘部材が簡単にキャップ本体から外れないようにしている。
さらに、ヒンジキャップを容器本体に装着し、容器として内容物を使用した後、キャップと容器本体との分別廃棄に手間がかからず、構造も簡単で、コストの安い不正防止キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するため、不正防止キャップとして、容器本体の口筒部に装着されるキャップ本体と、キャップ本体とヒンジによって開閉可能に連結された蓋体とからなるヒンジキャップにおいて、キャップ本体は、注出筒と、蓋体と係合する蓋係合部と、蓋係合部の外縁に連設され、上端にヒンジを連設した外周壁部と、ヒンジの反対側に、外周壁部の外周から間隔を隔てて円弧状の幅広の挿入口を形成するように連設される円弧状の封緘部材とを具え、外周壁部には、ヒンジの近傍に縦方向に切り込み部が設けられ、外周壁部と蓋係合部の間には、切り込み部の両側に、所定円周角の円弧範囲にわたって上方に開口を有するスリット溝が凹設され、切り込み部は、ヒンジ側にほぼ径方向に形成されたヒンジ側の端面と、該端面から周方向にわずかに離れたヒンジと反対側に、外周に向け広がるように傾斜した終端面とを形成し、端面と終端面との間の外周壁部に、薄肉外周壁を形成し、切り込み部の端面とスリット溝の間は、破断可能な上部薄肉部が形成され、終端面とスリット溝の間は、外周壁部と蓋係合部を連結する連結部が形成され、スリット溝の底面には、外周壁部と蓋係合部を連結する破断可能な薄肉の連結部が設けられ、封緘部材は、ヒンジの反対側の中央部から両側に延びる円弧状に形成され、幅広の封緘部と、封緘部の両側端から外周壁部の外周に向かう傾斜連結部とからなり、封緘部には、下部に、下端の両側から切り込まれた係止切欠けと、上端に、両側から中央部付近に向かい上方に突設された封緘突部とが設けられ、両側の傾斜連結部は、破断可能な弱化部を介して外周壁部の外周に連設され、蓋体は、頂壁と、所定の位置にヒンジが連設される外周壁と、外周壁のヒンジの反対側の外周下部に連設され、閉蓋時にキャップ本体の外周壁部の挿入口に挿入され、封緘部材の封緘部に係合する封緘リブが設けられ、外周壁には、ヒンジの反対側の外周に、指掛け凹部が凹設され、封緘リブの外面下端部には、閉蓋時に、上部がキャップ本体の封緘部の係止切欠けに係合する係止突部が配設されていることを特徴とする構成を採用する。
【0010】
封緘リブの実施例として、封緘リブの外面上部には、指掛け凹部の外面下部から連続する曲面が形成されていることを特徴とする構成、または、封緘リブの両側面は、上部の平坦側面と、平坦側面の下端から、閉蓋時に、キャップ本体の封緘部材のそれぞれの傾斜連結部の傾斜する内方面に係合する形状の傾斜側面が形成されていることを特徴とする構成を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の不正防止キャップは、ヒンジキャップにおいて、キャップ本体が、注出筒と、外周壁部と、蓋係合部と、外周上端にヒンジを連設する外周壁部と、外周壁の外周から間隔を隔てて円弧状の幅広の挿入口を形成するように連設される幅広の円弧状の封緘部材とを具え、最初の蓋体閉蓋時に、挿入口内に、蓋体に設けた封緘リブが挿入され、係合することによって、未開封の閉蓋状態をより強固に維持することができる。
【0012】
また、封緘部材に円弧状に形成された封緘突部で蓋体に設けた指掛け凹部を覆うとともに、封緘部材と封緘リブとの隙間を小さくし、キャップを未開封の状態で、一つの箱などに多数入れて運搬する際などでも、封緘部材同士が、上方または側方から噛み込むことを防止することができ、封緘部材が簡単にキャップ本体から外れないようにすることができる。
【0013】
また、開蓋の際には、封緘部材と外周壁とを連設する弱化部を破断し、封緘部材が除去されることによって、開蓋可能となるので、封緘部材の状況により、不正開蓋の有無が確認ができる。
【0014】
さらに、容器内の内容物を使用した後、キャップと容器本体を分別廃棄する際には、キャップ本体を少ない力で引き裂き、容器本体との嵌合を外すことができるので、より容易に分別廃棄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のキャップの説明図で、(a)は開蓋時の上面図、(b)は閉蓋時の断面側面図である。
【図2】キャップの斜視図である。
【図3】キャップの説明図で、(a)は蓋体の一部断面正面図、(b)はキャップ本体の一部断面正面図である。
【図4】キャップ本体の説明図で、(a)は上面図、(b)は(a)の要部拡大図、(c)は側面図である。
【図5】キャップの要部断面拡大図で、(a)はヒンジ付近の要部拡大断面図、(b)は図4(a)の0−A断面における要部拡大断面図である。
【図6】蓋体の説明図で、(a)は下面図、(b)は側面図である。
【図7】キャップ本体の封緘部材の作用説明図である。
【図8】封緘部材取外し時の斜視図である。
【図9】本発明のキャップを引き裂き破断する過程を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、容器本体の口筒部に装着する本発明の不正防止キャップについて、図面を参照して説明する。
図1、2において、Aは容器本体の口筒部に装着するキャップ本体、Bはキャップ本体AにヒンジCを介して開閉可能に取り付けられた蓋体である。
【0017】
キャップ本体Aは、図1〜4に示すように、注出筒1と、注出筒1の外周下部に連設され、蓋体Bと係合するリング状の蓋係合部2と、蓋係合部2内縁下面に垂設される内筒3と、蓋係合部2の外縁に連設され、外周上端にヒンジCを連設する外周壁部4と、ヒンジCの反対側に、外周壁部4の外周を上端部付近から下端付近まで覆う高さで形成されるとともに、外周壁部4の外周から間隔を隔てて円弧状の幅広の挿入口aを形成するように連設される幅広の円弧状の封緘部材5とを具えている。
【0018】
注出筒1の内周下部には、隔壁6が設けられ、隔壁6には、支柱を介してプルリング7によって抜栓されたときに除去され、内容液が注出される注出口を形成する除去部8が形成されている。
【0019】
外周壁部4の内周下部には、容器本体の口筒部の外周に係合する係合突部10が設けられている。
キャップ本体Aは、内筒3の外周と、外周壁部4の内周により、容器本体の口筒部を挟持するとともに、外周壁部4の係合突部10が口筒部の外周に係合し、また、蓋係合部2の下面が口筒部の上面に当接することで容器本体に装着される。
【0020】
外周壁部4のヒンジCの左右いずれかの近傍には、図1、4、5(b)に示すように、外周面に平面視で略V字状の外周切り込み部11が下端部に薄肉底壁12を残して上方から切り込まれている。
係合突部10の外周切り込み部11に対応する位置には、内周切り込み部13が縦方向に刻設されている。
【0021】
外周切り込み部11は、ヒンジC側にほぼ径方向に形成されたヒンジ側の端面11aと、端面11aから周方向にわずかに離れたヒンジCと反対側に、外周に向け広がるように傾斜した終端面11bとを形成している。
また、端面11aと終端面11bとの間には、外周壁部4に、わずかに周方向に幅を持ち、薄肉外周壁14を形成している。
【0022】
薄肉底壁12は、打栓時等キャップに大きな力が加わったときに、外周壁部4の薄肉外周壁14が破断しないように補強する役割を果たし、薄肉外周壁14が、小さい力で引き裂くことができるようにすると共に不用意に破断しないようにしている。
【0023】
図1、4、5(a)に示すように、外周切り込み部11のヒンジC側では、端面11aの内周側の上部薄肉部15を隔てた位置を起点として円周方向に延びるように、スリット溝16が上方から凹設され、反対側の終端面11b近くまで延びている。
ヒンジCの反対側の終端面11bでは、蓋係合部2と外周壁部4を強固に連結する終端連結部17が形成されている。
【0024】
上部薄肉部15、および、上部薄肉部15の下端部から延びる薄肉外周壁14の下部により、縦方向引き裂きラインが形成される。
【0025】
図1、3〜5に示すように、縦方向引き裂きラインの上部薄肉部15に隣接するスリット溝16の起点を引き裂き開始点として、スリット溝16の底面18の内周側には、外周壁部4と蓋係合部2を連結する薄肉の連結部19が設けられ、周方向引き裂きラインが円弧状に延びるように形成されている。
【0026】
連結部19は、周方向引き裂きラインの引き裂き開始点から一定範囲では、極薄肉または切れ目が入った弱化連結部19aとされ、弱化連結部19aの終端から、肉厚の変化する所定範囲の移行連結部19bを経て、弱化連結部19aより肉厚でかつ破断可能な一定の薄肉部からなる定常連結部19cとなり、これらの弱化連結部19a、移行連結部19b、定常連結部19cにより周方向引き裂きラインが形成され、縦方向引き裂きラインに接続されている。
【0027】
封緘部材5は、図1〜4に示すように、外周壁部4の外周から一定の間隔を隔て、ヒンジCの反対側の中央部から両側に延び、円弧状に形成された幅広の封緘部20と、封緘部20の両側端から外周壁部4の外周に向かう傾斜連結部21とからなっている。
両方の傾斜連結部21は、ヒンジCの反対側から見て、上端側部が広く、下端側部が狭い、逆ハの字を形成するように傾斜して外周壁部4側に向かうとともに、封緘部20の反対側端が破断可能な弱化部22を介して外周壁部4の外周に連設されている。
【0028】
封緘部20には、下部に、下端の両側から切り込まれ、中央部付近に平坦な係止下面23aを形成した係止切欠け23と、上端に、両側から中央部付近に向かい上方に突設され、封緘部20とともに円弧状に形成された封緘突部24とが設けられている。
【0029】
蓋体Bは、図1〜3、6に示すように、頂壁25と、頂壁25の外周縁に垂設され、外周下部の所定の位置にヒンジCが連設される外周壁26と、外周壁26のヒンジCの反対側の外周下部に連設され、閉蓋時にキャップ本体Aの外周壁部4の挿入口aに挿入されるとともに、封緘部材5の封緘部20に係合する高さに形成された円弧状の封緘リブ27が設けられている
【0030】
頂壁25の下面には、閉蓋時に外周がキャップ本体Aの注出筒1の内周と係合する密封筒28が垂設されている。
【0031】
外周壁26には、内周下部に、閉蓋時にキャップ本体Aの蓋係合部2の上部外周と係合し、閉蓋状態を維持する係合部30が設けられている。
外周壁26のヒンジCの反対側には、外周に、開蓋時に指先が引掛かるような適切な形状の指掛け凹部31が凹設され、下端面に、外周壁部4のスリット溝16に挿入される円弧状の突部32が垂設されている。
キャップ本体Aの封緘部材5の封緘部20の封緘突部24は、指掛け凹部31を覆うように形成されている。
【0032】
封緘リブ27は、内面上部が外周壁26の外周下部に連設されており、外面上部は、指掛け凹部31の外面下部から連続する曲面27aが形成され、両側面は、上部の平坦側面27bと、平坦側面27bの下端から、閉蓋時に、キャップ本体Aの封緘部材5のそれぞれの傾斜連結部21の傾斜する内方面に係合する形状の傾斜側面27cが形成されている。
【0033】
封緘リブ27の外面下端部には、閉蓋時に、上部がキャップ本体Aの封緘部20の係止切欠け23に係合する係止突部33が配設され、係止突部33には、上部に係止切欠け23の係止下面23aに係合する上面33aと、下部に傾斜面33bが形成されている。
【0034】
次に、本発明のキャップの作用効果について、説明する。
容器の生産過程においては、まず、キャップを生産し、キャップ本体Aに蓋体Bを閉蓋する。
【0035】
キャップを最初に閉蓋する際には、蓋体Bの封緘リブ27の係止突部33の傾斜面33bがキャップ本体Aの封緘部材5の封緘部20内面に当接し、封緘部材5を僅かに変形させながら、封緘リブ27をキャップ本体Aの外周壁部4の挿入口a内に挿入させていく。
【0036】
最後は、封緘リブ27の係止突部33が封緘部材5の係止切欠け23内に嵌挿され、封緘部材5の変形が解かれるとともに、封緘部材5の封緘部20の内側面および両側の傾斜連結部21の内面に、封緘リブ27の外側面および両側面の傾斜側面27cが当接し、封緘リブ27が挿入口a内に嵌入する。
また、キャップ本体Aの蓋係合部2の上部外周と蓋体Bの係合部30の内周が係合し、未開封状態として閉蓋される。
【0037】
容器本体にキャップの装着前、または、容器本体にキャップを装着した後の、キャップの未開封状態では、キャップ本体Aの蓋係合部2と蓋体Bの係合部30の係合の他に、封緘リブ27の係止突部33が封緘部材5の係止切欠け23内に嵌挿され、封緘リブ27の係止突部33の上面33aが封緘部材5の係止切欠け23の係止下面23aに係合することによって、閉蓋状態をより強固に維持することができる。
【0038】
未開封状態から、無理に開蓋しようとしても、封緘リブ27の係止突部33の上面26aが封緘部材5の係止切欠け23の係止下面23aに係合しているとともに、封緘リブ27の外面と封緘部材5の内面とが当接して抵抗となっているので、簡単に開蓋することができない。
【0039】
未開封状態では、キャップ本体Aの封緘部材5の封緘部20の封緘突部24が、蓋体Bの外周壁26の指掛け凹部31を覆うので、封緘部材5を外さないと、指などを指掛け凹部31に掛けることができず、開蓋を防止することができる。
【0040】
容器の生産過程において、容器本体にキャップを装着する前に、キャップを未開封の状態で、一つの箱などに多数入れて運搬することは多々ある。
その際、本発明のキャップでは、キャップ本体Aの封緘部材5の封緘突部24が、円弧状に形成されているので、多数入れられたキャップの封緘突部24同士が、図7に示すように、互いの内側に侵入し、噛み込み、引っ張り合って、封緘部材5を外周壁部4から外してしまうことを防止することができる。
【0041】
また、キャップ本体Aの封緘部材5の挿入口a内に、蓋体Bの封緘リブ27の傾斜側面27cの部分が嵌入して挿入口aを塞ぎ、未開封状態の封緘部材5と封緘リブ27との間に隙間を小さくするとともに、封緘リブ27の平坦側面27bおよびその付近の部分がキャップ本体Aの挿入口aより上方に突出する。
【0042】
封緘リブ27の側面を平坦な平坦側面27bとしていることで、封緘リブ27の側面の端部が湾曲したものに比べ、多数入れられた他のキャップの封緘突部17や他の部分が封緘リブ27の側面に当接する個所が広くなるので、キャップ本体Aの挿入口aより上方に突出した封緘リブ27の平坦側面27bおよびその付近の部分が、封緘突部24の内方に、他のキャップの封緘突部24や他の部分が侵入することを防ぐことができる。
また、封緘リブ27の側面の端部が湾曲したものに比べ、封緘部材5内側面と封緘リブ27のキャップ本体Aの挿入口aより上方に突出する部分との間の隙間を小さくすることができるので、横側の隙間から、多数入れられた他のキャップの封緘突部24や他の部分が封緘部材5の内方に侵入し、噛み込み、引っ張り合ったりすることを防止することができる。
【0043】
次に、閉蓋したキャップを、内容物を充填した容器本体の口筒部に打栓などによって装着し、キャップを閉蓋した容器とする。
【0044】
本発明の容器内の内容物を使用するために、キャップを最初に開蓋する際には、まず、キャップ本体Aの封緘部材5の封緘突部24の上部の中央部より左右いずれか側に指を掛け、前方に引っ張る。
【0045】
封緘部材5の封緘突部24の上部の左右いずれか側を引っ張ることで、その側の封緘部材5の封緘部20および傾斜連結部21を引っ張り、その側の弱化部22を上方から切断していき、最後は、図8に示すように、その側の傾斜連結部21を外周壁部4から完全に離す。
【0046】
本発明のキャップ本体Aの封緘部材5と外周壁部4は、両側の傾斜連結部21および弱化部22が外周壁部4に対して、上側部が下側部に向かい中央部側に傾斜するように形成されているので、傾斜のないものに比べ、弱化部22を上方から下方に切り裂いていく抵抗となり、ある程度の力を加えないと切り裂けないようになっている。
【0047】
また、封緘部材5は、外周壁部4に対して、両側の弱化部22を介して、ヒンジCの反対側から見て逆ハの字状に傾斜して連設されているので、封緘部材5の中央部を引っ張っても、抵抗となり、余程強く引っ張らないと、弱化部22を切り裂いて封緘部材5を外周壁部4から外すことができないようになっている。
【0048】
左右のいずれかの傾斜連結部21を切り離したら、さらに封緘部材5を引っ張り、逆側の弱化部22を切断し、外周壁部4から傾斜連結部21を切り離し、封緘部材5をキャップ本体Aから除去する。
【0049】
左右のいずれかの傾斜連結部21を切り離した後、または、封緘部材5をキャップ本体Aから除去した後は、蓋体Bの封緘リブ27と封緘部材5との係合が外され、キャップ本体Aの蓋係合部2と蓋体Bの係合部30の係合で閉蓋状態を維持することとなる。
【0050】
次に、蓋体Bの外周壁26の指掛け凹部31に指を掛け、蓋体Bを押し上げ、開蓋する。
その際、閉蓋状態を維持しているのが、キャップ本体Aの蓋係合部2と蓋体Bの係合部30との係合のみとなり、簡単に開蓋することができる。
【0051】
蓋体Bを押し上げる際に、指掛け凹部31に掛けた指の外周壁26より下方に位置する部分が、封緘リブ27の外面に当接することにより、指がキャップ本体Aの注出筒1の外方に接触することを防止でき、指または注出筒1を汚すこと無く清潔に開蓋することができる。
【0052】
また、封緘リブ27に当接する指が、指掛け凹部31の外面下部から連続する曲面27aに当接するので、押し上げる際の指に当たる感触が柔らかくなり、指を痛めたり、不快な感じがすることを防止することができる。
【0053】
開蓋後に、キャップ本体Aの隔壁6から除去部8を抜栓して注出口を開口し、容器を傾けることによって、注出筒1を介して内容物を注出する。
【0054】
本発明のキャップは、未開封状態から開蓋する際に、キャップ本体Aの外周壁部4から弱化部22を切断しないと開蓋されないので、封緘部材5および弱化部22の状態により、開封されたことを容易に視認することができるとともに、不正に開封されたことが外観から容易に確認できる。
【0055】
蓋体Bをキャップ本体Aに再び閉蓋することで、蓋体Bの密封筒28外周下部がキャップ本体Aの注出筒1の内周上部に係合し、キャップA内を密封することができ、キャップ本体Aの隔壁6の開封後も、繰り返し蓋体Bを開閉して内容液を使用することができる。
【0056】
本発明のキャップは、容器内の内容物を全部使用した後、容器本体から分別して廃棄することができる。
その際には、キャップを開蓋し、蓋体Bを把持し外方に引っ張ると、外周壁部4のヒンジCとの連設部位が引っ張られて変形し、上部薄肉部15が上方から引き裂かれ、スリット溝16の底面18の位置まで破断される。
さらに蓋体Bを引っ張ると、上部薄肉部15の引き裂きが、薄肉外周壁14に移り、縦方向に薄肉外周壁14の下部を引き裂いていくとともに、周方向引き裂きラインを形成する弱化連結部19aが破断を始める。
弱化連結部19aは極薄肉または切れ目が入れられているので、縦方向引き裂きラインが引き裂かれるとともに周方向引き裂きラインが引き裂かれ始める時、両引き裂きラインを同時に引き裂く力は大きくならず、縦方向引き裂きラインから周方向引き裂きラインへとスムーズに破断を進めることができる。
【0057】
薄肉外周壁14の下部が引き裂かれ、次いで、薄肉底部12が完全に引き裂かれて、縦方向引き裂きラインの破断が完了するとともに、弱化連結部19aの破断が進行すると、図9に示すように、蓋体Bがキャップ本体Aから離れていく。
そして、弱化連結部19aの終端までは容易に破断が進行して、蓋体Bはキャップ本体Aから大きく離れ、さらに移行連結部19bで引き裂き力を増大させながら定常連結部19cに至ると一定の引き裂き力で破断が進行していく。
蓋体Bがキャップ本体Aから大きく離れると、蓋体Bを引っ張る力が入れやすくなるため、移行連結部19bから引き裂き力が増大しても容易に破断することができる。
【0058】
周方向引き裂きラインの引き裂き開始点の弱化連結部19aより厚肉の定常連結部19cを設けることにより、キャップの強度とシール性を高めることができるので、本実施例のように定常連結部19cの範囲を弱化連結部19aの範囲より大きくすることが望ましい。
また、弱化連結部19aに切れ目を入れた場合は、極薄肉とした場合より破断を容易に行うことができるが、キャップの強度とシール性を低下させるので、切れ目を入れるかどうかは、容器に充填する内容物の種類など必要性に応じて適宜選択すればよい。
【0059】
スリット溝16の終端部まで連結部19の切断が完了し、さらに蓋体Bを引っ張ると、蓋係合部2と外周壁部4が強固に連結している終端連結部17が外方に引っ張られ、キャップ本体Aと容器本体の口筒部との嵌合が外され、キャップと容器本体とを分別廃棄することができる。
スリット溝16の円弧範囲を大きくして、終端連結部17の円弧範囲を小さくすれば、キャップを分離する力が小さくてすむが、キャップの強度やシール性は低下するので、スリット溝16の円弧範囲は、キャップ強度や内容物の種類との兼ね合いで適宜決定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の不正防止キャップは、開封後も繰り返し蓋体を開閉して内容物を使用することができ、また、キャップと容器本体とを分別廃棄する際に、キャップ本体を引き裂くための力が小さくてすむとともに、キャップの強度やシール性を有利に確保することができ、構造が簡単でコストを低くすることができるヒンジキャップとして広く採用することができ、とくに安全を確保することが強く要求される飲料用、食品用などの容器のキャップに採用して好適である。
【符号の説明】
【0061】
A キャップ本体
B 蓋体
C ヒンジ
a 挿入口
2 蓋係合部
3 内筒
4 外周壁部
5 封緘部材
6 隔壁
7 プルリング
8 除去部
10 係合突部
11 外周切り込み部
11a 端面
11b 終端面
12 薄肉底壁
13 内周切り込み部
14 薄肉外周壁
15 上部薄肉部
16 スリット溝
17 終端連結部
18 底面
19 連結部
19a 弱化連結部
19b 移行連結部
19c 定常連結部
20 封緘部
21 傾斜連結部
22 弱化部
23 係止切欠け
23a 係止下面
24 封緘突部
25 頂壁
26 外周壁
27 封緘リブ
27a 曲面
27b 平坦側面
27c 傾斜側面
28 密封筒
30 係合部
31 指掛け凹部
32 突部
33 係止突部
33a 上面
33b 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口筒部に装着されるキャップ本体と、キャップ本体とヒンジによって開閉可能に連結された蓋体とからなるヒンジキャップにおいて、
キャップ本体は、注出筒と、蓋体と係合する蓋係合部と、蓋係合部の外縁に連設され、上端にヒンジを連設した外周壁部と、ヒンジの反対側に、外周壁部の外周から間隔を隔てて円弧状の幅広の挿入口を形成するように連設される円弧状の封緘部材とを具え、
外周壁部には、ヒンジの近傍に縦方向に切り込み部が設けられ、
外周壁部と蓋係合部の間には、切り込み部の両側に、所定円周角の円弧範囲にわたって上方に開口を有するスリット溝が凹設され、
切り込み部は、ヒンジ側にほぼ径方向に形成されたヒンジ側の端面と、該端面から周方向にわずかに離れたヒンジと反対側に、外周に向け広がるように傾斜した終端面とを形成し、端面と終端面との間の外周壁部に、薄肉外周壁を形成し、
切り込み部の端面とスリット溝の間は、破断可能な上部薄肉部が形成され、終端面とスリット溝の間は、外周壁部と蓋係合部を連結する連結部が形成され、
スリット溝の底面には、外周壁部と蓋係合部を連結する破断可能な薄肉の連結部が設けられ、
封緘部材は、ヒンジの反対側の中央部から両側に延びる円弧状に形成され、幅広の封緘部と、封緘部の両側端から外周壁部の外周に向かう傾斜連結部とからなり、
封緘部には、下部に、下端の両側から切り込まれた係止切欠けと、上端に、両側から中央部付近に向かい上方に突設された封緘突部とが設けられ、
両側の傾斜連結部は、破断可能な弱化部を介して外周壁部の外周に連設され、
蓋体は、頂壁と、所定の位置にヒンジが連設される外周壁と、外周壁のヒンジの反対側の外周下部に連設され、閉蓋時にキャップ本体の外周壁部の挿入口に挿入され、封緘部材の封緘部に係合する封緘リブが設けられ、
外周壁には、ヒンジの反対側の外周に、指掛け凹部が凹設され、
封緘リブの外面下端部には、閉蓋時に、上部がキャップ本体の封緘部の係止切欠けに係合する係止突部が配設されていることを特徴とする不正防止キャップ。
【請求項2】
封緘リブの外面上部には、指掛け凹部の外面下部から連続する曲面が形成されていることを特徴とする請求項1記載の不正防止キャップ。
【請求項3】
封緘リブの両側面は、上部の平坦側面と、平坦側面の下端から、閉蓋時に、キャップ本体の封緘部材のそれぞれの傾斜連結部の傾斜する内方面に係合する形状の傾斜側面が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の不正防止キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−214242(P2012−214242A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80274(P2011−80274)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】