説明

不溶化処理土壌の管理構造

【課題】シアンで汚染された土壌を不溶化処理して得られる不溶化処理土壌の管理構造であって、不溶化処理土壌から浸出するpHが低い水を適切に処理することができる安価な不溶化処理土壌の管理構造を提供する。
【解決手段】シアンで汚染された土壌を不溶化処理して得られる不溶化処理土壌12の管理構造であって、不溶化処理土壌12とその周辺の土壌18との間にアルカリ性材料からなる中和層14を設けるようにする。中和層14と不溶化処理土壌12との間に遮水層を設けてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアンで汚染された土壌を不溶化処理して得られる不溶化処理土壌の管理構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シアンで汚染された土壌を不溶化処理することが知られている(例えば、特許文献1および2参照)。不溶化処理して得られる不溶化処理土壌を管理するための一般的な構造としては、不溶化処理土壌を遮水シートや鋼矢板等で封じ込めた構造があり、既に実用化されている。
【0003】
この構造は、具体的には、不溶化処理土壌の底面、側面および上面に遮水層を敷設して不溶化処理土壌を地中に封じ込めることにより不溶化処理土壌と周囲の土壌との接触を防ぎ、さらに上部に盛土や舗装を施すことで風雨による浸食を防いだ構造となっている。遮水層としては、合成ゴム系、合成樹脂系、アスファルト系、ベントナイト系、積層タイプ複合系等の遮水シートや鋼矢板、粘性土、コンクリート、水密性アスファルトコンクリート等が一般に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−102591号公報
【特許文献2】特開2006−142150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の従来の不溶化処理土壌の管理構造は、遮水層の築造費用が膨大になるとともに、遮水層に亀裂等が生じた場合には、不溶化処理土壌からpHが低い水が周囲の土壌に浸出し、これにより、土壌中に元々存在していた鉛、ひ素、カドミウム、六価クロムといった有害な重金属類がイオン化して地下水中に溶出することが懸念される。このため、上記費用を縮減し、不溶化処理土壌から浸出するpHが低い水を適切に処理することができる技術の開発が求められていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、シアンで汚染された土壌を不溶化処理して得られる不溶化処理土壌の管理構造であって、不溶化処理土壌から浸出するpHが低い水を適切に処理することができる安価な不溶化処理土壌の管理構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に係る不溶化処理土壌の管理構造は、シアンで汚染された土壌を不溶化処理して得られる不溶化処理土壌の管理構造であって、前記不溶化処理土壌とその周辺の土壌との間にアルカリ性材料からなる中和層を設けたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る不溶化処理土壌の管理構造は、上述した請求項1において、前記中和層と前記不溶化処理土壌との間に遮水層を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シアンで汚染された土壌を不溶化処理して得られる不溶化処理土壌の管理構造であって、前記不溶化処理土壌とその周辺の土壌との間にアルカリ性材料からなる中和層を設けたので、不溶化処理土壌から浸出するpHが低い水は中和層で中和処理されてから周辺の土壌に排出される。周辺の土壌にpHが低い水が浸出しないので、周辺の土壌中に元々存在していた鉛、ひ素、カドミウム、六価クロムといった有害な重金属類がイオン化して地下水中に溶出することを防ぐことができる。したがって、不溶化処理土壌から浸出するpHが低い水を適切に処理することができる。また、遮水層を構築する必要がないので安価な不溶化処理土壌の管理構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明に係る不溶化処理土壌の管理構造の実施例1(中和層のみの場合)を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明に係る不溶化処理土壌の管理構造の実施例2(遮水層併用の場合)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る不溶化処理土壌の管理構造の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
[実施例1]
図1に示すように、本発明の実施例1の不溶化処理土壌の管理構造10は、シアンで汚染された土壌を不溶化処理して得られる不溶化処理土壌12の埋め戻し後の管理構造である。この管理構造10は、凹陥地2に埋め戻される不溶化処理土壌12を取り囲むようにその底面12aおよび側面12bにアルカリ性材料からなる中和層14を敷設し、不溶化処理土壌12の上面12cに盛土や舗装等16を施工したものである。
【0013】
このようにして不溶化処理土壌12を地中に封じ込め、不溶化処理土壌12とその周辺の土壌18との間にアルカリ性材料からなる中和層14を設けることで不溶化処理土壌12と周辺の土壌18との直接的な接触を防ぐとともに、上面12cに盛土や舗装等16を施すことで風雨による浸食を防いでいる。
【0014】
中和層14は、pHが低い水を中和処理する透水性の層であり、貝殻、石灰石、炭酸カルシウム等のアルカリ性の材料で構成することができる。このような材料は、わが国に多く存在し、安価で何処でも容易に入手できるものである。特に、貝殻のような廃棄物として取り扱われるアルカリ性の材料は、この中和層14の材料として有効利用を図ることができる。
【0015】
上記実施例1の構成の動作および作用について説明する。
不溶化処理土壌12から浸出するpHが低い水は、不溶化処理土壌12の底面12aおよび側面12bに設けたアルカリ性材料からなる中和層14で中和処理されてから周辺の土壌18に浸出する。このため、周辺の土壌18にpHが低い水が浸出しないので、周辺の土壌18中に元々存在していた鉛、ひ素、カドミウム、六価クロムといった有害な重金属類がイオン化して地下水中に溶出することを防ぐことができる。
【0016】
したがって、不溶化処理土壌12から浸出するpHが低い水を適切に処理することができる。また、遮水層を構築する必要がないので、遮水層構築に要する施工費用を節減でき、安価な不溶化処理土壌の管理構造を提供することができる。
【0017】
[実施例2]
図2に示すように、本発明の実施例2の不溶化処理土壌の管理構造20は、シアンで汚染された土壌を不溶化処理して得られる不溶化処理土壌12の埋め戻し後の管理構造である。この管理構造20は、凹陥地2に埋め戻される不溶化処理土壌12の周囲を遮水層22で覆い、この遮水層22で覆われた不溶化処理土壌12を取り囲むように、その底面12aおよび側面12bにアルカリ性材料からなる中和層14を敷設し、上面12cに盛土や舗装等16を施工したものである。
【0018】
このようにして不溶化処理土壌12を地中に封じ込め、不溶化処理土壌12とその周辺の土壌18との間に遮水層22とアルカリ性材料からなる中和層14とを設けることで不溶化処理土壌12と周辺の土壌18との直接的な接触を防ぐとともに、上面12cに盛土や舗装等16を施すことで風雨による浸食を防いでいる。
【0019】
中和層14は、pHが低い水を中和処理する透水性の層であり、貝殻、石灰石、炭酸カルシウム等のアルカリ性の材料で構成することができる。このような材料は、わが国に多く存在し、安価で何処でも容易に入手できるものである。特に、貝殻のような廃棄物として取り扱われるアルカリ性の材料は、この中和層14の材料として有効利用を図ることができる。
【0020】
遮水層22は、水の透過を防止する層であり、合成ゴム系、合成樹脂系、アスファルト系、ベントナイト系、積層タイプ複合系等の遮水シートや鋼矢板、粘性土、コンクリート、水密性アスファルトコンクリート等の材料で構成することができる。
【0021】
上記実施例2の構成の動作および作用について説明する。
万一、遮水層22に亀裂等が生じ、不溶化処理土壌12からpHが低い水が浸出した場合であっても、当該浸出水はアルカリ性材料からなる中和層14で中和処理されてから周辺の土壌18に浸出する。このため、周辺の土壌18にpHが低い水が浸出しないので、周辺の土壌18中に元々存在していた鉛、ひ素、カドミウム、六価クロムといった有害な重金属類がイオン化して地下水中に溶出することを防ぐことができる。
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、シアンで汚染された土壌を不溶化処理して得られる不溶化処理土壌の管理構造であって、前記不溶化処理土壌とその周辺の土壌との間にアルカリ性材料からなる中和層を設けたので、不溶化処理土壌から浸出するpHが低い水は中和層で中和処理されてから周辺の土壌に排出される。周辺の土壌にpHが低い水が浸出しないので、周辺の土壌中に元々存在していた鉛、ひ素、カドミウム、六価クロムといった有害な重金属類がイオン化して地下水中に溶出することを防ぐことができる。したがって、不溶化処理土壌から浸出するpHが低い水を適切に処理することができる。また、遮水層を構築する必要がないので安価な不溶化処理土壌の管理構造を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上のように、本発明に係る不溶化処理土壌の管理構造は、シアンで汚染された土壌を不溶化処理して得られる不溶化処理土壌の管理に有用であり、特に、不溶化処理土壌から浸出するpHが低い水を適切に処理することに適している。
【符号の説明】
【0024】
2 凹陥地
12 不溶化処理土壌
14 中和層
16 盛土や舗装等
18 周辺の土壌
22 遮水層
10 不溶化処理土壌の管理構造(実施例1)
20 不溶化処理土壌の管理構造(実施例2)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアンで汚染された土壌を不溶化処理して得られる不溶化処理土壌の管理構造であって、前記不溶化処理土壌とその周辺の土壌との間にアルカリ性材料からなる中和層を設けたことを特徴とする不溶化処理土壌の管理構造。
【請求項2】
前記中和層と前記不溶化処理土壌との間に遮水層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の不溶化処理土壌の管理構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−194372(P2011−194372A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66864(P2010−66864)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】