説明

不燃性軽量マルチング材およびその製造方法

【課題】軽量で、不燃性を示し、景観形成特性などに優れる他、各種機能を具える中和型マルチング材を提案することにある。
【解決手段】石炭灰、焼却灰および火山灰のうちから選ばれるいずれか1種以上のアッシュに、セメント、消石灰およびドロマイトのうちから選ばれるいずれか1種以上の固化反応物質を加えてなる基材と水とを混合し造粒することによって得られる造粒物であって、その造粒物表面が、酸性ガスおよび/または酸性水いずれかを用いて中和処理された中和層である不燃性軽量マルチング材およびその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不燃性軽量マルチング材およびその製造方法に関し、特に、路面や人工構造物の屋上、その他の施設での緑化工事や造園工事、景観形成工事、園芸等の作業時に用いる資材として有用な、不燃性で軽量のマルチング材とその製造方法に関する提案である。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の屋上緑化工事や造園工事等では、雑草の生育防止、植栽植物の保護、水分の蒸発防止、景観形成等のための資材として、火山礫や軽石、化粧砂利、シート、マット、樹皮、木片等の天然素材を利用したマルチング材が使用されているが、これらのマルチング材の一般的な性質は、次のとおりである。
【0003】
(1)火山礫、軽石
軽量で不燃性であることから、特に屋上緑化工事等に利用されやすい資材であるが、色が黒色、赤褐色、薄白色の3種類しかなく美感に乏しい上、産地が、海外や日本の国立公園内およびその隣接地域で産出するものが多く、多量の入手が困難なことや環境破壊につながる。また、生産地からマルチング材使用地域までの距離が遠いことが多く、運賃や経費等が嵩んで、製品が割高になる。
(2)化粧砂利
赤色や緑色、黒色、白色等の色調を持った化粧砂利が販売されているが、比重が約2.5〜3と大きく、屋上緑化工事用資材としては多量に使用できない。さらに、火山礫や軽石と同様に産地が限られているため、製品価格が高価になる。
(3)樹皮、木片
比重が軽いため飛散しやすいことや、可燃物であることから火災を阻止することができない。そのため、出火しやすい場所で使用することができない。また、樹皮や木片は、腐食しやすいのでマルチング材としての寿命が短い。
(4)シート、マット
軽量で大面積を被覆する方法としは手軽であるが飛散しやすく、また耐久性が低く、可燃性であるため、火災等を引き起す危険がある。
【0004】
ところで、建築構造物の屋上緑化工事に着目した場合、この工事用資材としては、通常、耐震のための荷重制限(通常≦60kg/m)があり、軽量のマルチング材の使用が求められる。しかし、マルチング材というのは、軽すぎると風により吹き飛ばされて、実質的に機能しなくなる場合がある。そのため、特に屋上緑化工事に用いられるマルチング材としては、比重が0.9〜1.8程度(使用場所の条件によって異なる)のものが必要となる。
【0005】
この点、上述した火山礫や軽石は、前記範囲内の比重を持っており、かつ不燃性の資材であることから屋上緑化用マルチング材としては好適である。しかし、火山礫や軽石は、上述したとおり、生産地域が限定されていることから割高になるため、製品の価格もその分だけ高価になるだけでなく、美観も劣るという問題がある。
【0006】
また、これらのマルチング材(火山礫等)は、有害物質の浄化機能や殺菌、防虫、防臭、防汚の機能あるいは植物に養分を供給する肥効の機能がないのが普通である。しかも、造園工事用のマルチング材として販売されている国内外の天然化粧砂利等は、比重が約2.5〜3.0もあり重いので、屋上緑化工事で使用するには問題があることは上述したとおりである。
【0007】
さらに、化粧砂利等の天然石材については、比重が2.5〜3.0と重く、風による飛散はないが、埋蔵している地域を掘削し採取することから自然環境を破壊することにもなり、一方、樹皮等の有機物は、単価が安く取扱いも容易であるが、腐食の問題やタバコの投げ捨て等により火災を発生させるおそれがある他、風等による飛散の問題もある。
【0008】
また、マルチング材は、一般に、緑化基盤(通常:40kg/m〜150kg/m)の上に散布してこれをカバーするための資材であることが多く、その機能(雑草等の発生防止、水分の蒸発抑制、美感、その他)を発揮させるためには、ある程度の厚さ(約2〜5cm)で堆積させる必要がある。そのためには、できるだけ軽い資材であることが望ましい。一方で、屋上等で使用する場合、風当たりが強くなるため、軽量のマルチング材では、吹き飛ばされ、飛散したマルチング材による災害を招くという危険性がある。このことから、屋上緑化工事用資材として使用できるマルチング材は、立地条件や風速によっても異なるが、比重は0.9〜1.8程度のものが好適であると考えられる。
【0009】
(1)この点、上記火山礫や軽石は、上述したとおり、適当な重さ(比重:約0.6〜1.2)を有するが、それでも風当たりが強い場所では、その上に網等をかけて風に吹き飛ばされないようにすることが必要である。また、化粧砂利や樹脂、シート、マット等は、色調を自由に調整できないという問題や環境破壊、供給量についても問題を残している。
(2)また、屋上緑化工事や造園工事等では、比重の問題以外にも、マルチング材の使用によって良好な景観を形成したいとの要望がある場合、火山礫や軽石、化粧砂利、樹皮、シート、マット等だけでは色や形状が限定されるため、要求される景観や美感を満足する状況を創出することは難しいのが実情である。
(3)さらに、天然に産出する上記マルチング材は、都市部の屋外や室内で使用する場合、これらのマルチング材に対し、窒素酸化物やホルムアルデヒド等の有害ガスの浄化や消臭、殺菌、肥効作用を付与することが難しい。
【0010】
前述したように、従来、マルチング材としては主に、天然に産出する資材が利用されてきたが、最近では、使途に応じて種々の機能が付与された人工的に製造されたマルチング材も提案されている。例えば、不燃性で適当な重さを有し、経済的で作業性や耐候性にも優れていて、特に屋上緑化工事用マルテチング材として好適に用いられる人工的(工業的)に製造した合成マルチング材(特許文献1、2、3)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特願平11−243793号公報
【特許文献2】特開2000−253754号公報
【特許文献3】特開2007−228904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記特許文献1の合成マルチング材は、粘土の酸処理工程で排出される酸性廃液とゼオライトの合成工程で排出されるアルカリ性廃液とを混合中和処理する際に発生する濾過ケーキの造粒物からなるものである。このマルチング材は、透水性や耐風性、難燃性などの諸特性には優れるが、素材の供給が安定せず、製造性が悪く高価である。また、比重が約2.2以上もあって、かつ散水時に有害物質の溶出を招いて、生育植物に悪影響をおよぼすことがある。
【0013】
前記特許文献2の合成マルチング材は、セメント系粉粒体と水とを混練した後、100℃未満の炭酸ガス雰囲気中で養生したものであり、主として防草効果の向上を目的として、アルカリ度を8〜13に調整した、不燃性の無機材料系資材である。しかし、この資材は、比重が1.2〜2.5と大きく、文献1と同様に散水時等にアルカリ成分を溶出し、生育植物に悪影響をおよぼすので、屋上緑化工事や造園、園芸用資材としては不向きである。
【0014】
前記特許文献3では、ガラス材を含む無機材料や砂に発泡剤を添加し、加熱(ガラス軟化温度以上)焼成して得られるマルチング材を提案している。しかし、このマルチング材は、ガラスに含まれるアルカリ成分の溶出を前提としたものであって、用途が限られる他、価格が高くなる問題がある。また、このマルチング材については、土壌をアルカリ性にするため、植物を枯死されるおそれがあり、使用場所に制限がある他、マルチング材が、角張っているため、作業中等に怪我をする危険性がある。
【0015】
そこで、本発明の目的は、従来技術や先行技術(特許文献1〜3)が抱えている上述した問題等のないマルチング材を提案すること、特に、軽量(ただし、耐飛性を有すること)で、不燃性を示し、景観形成特性に優れる他、各種機能を具える中和型マルチング材を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、石炭灰、焼却灰および火山灰のうちから選ばれるいずれか1種以上のアッシュに、セメント、消石灰およびドロマイトのうちから選ばれるいずれか1種以上の固化反応物質を加えてなる基材と水とを混合し造粒することによって得られる造粒物であって、その造粒物表面が、酸性ガスおよび/または酸性水いずれかを用いて中和処理された中和層であることを特徴とする不燃性軽量マルチング材を提案する。
【0017】
また、本発明は、石炭灰、焼却灰および火山灰のうちから選ばれるいずれか1種以上のアッシュ1000リットルに、セメント、消石灰およびドロマイトのうちから選ばれるいずれか1種以上の固化反応物質を50kg〜300kg加えてなる基材に対し、250kg〜400kgの水を混合して造粒し、次いで、造粒によって得られた造粒物を養生工程を経て固化させ、その後、養生後の造粒物を酸性ガス含有雰囲気中に曝して表面を中和する処理および/または酸性水を散布して表面を中和する処理を行うことを特徴とする不燃性軽量マルチング材の製造方法を提案する。
【0018】
本発明に係る上記マルチング材ならびにその製造方法においては、
(1)前記アッシュは、可溶性珪酸および可溶性アルミナを30mass%以上含有すること、
(2)前記基材にはさらに、ゼオライト、細砂、フライアッシュ、粉末石膏、ベントナイトおよび粉末炭から選ばれるいずれか1種以上の比重調整資材を含有すること、
(3)前記基材に対し、着色剤を1kg〜50kg混合すること、
(4)前記基材に対し、肥料を1kg〜10kg混合すること、
(5)前記基材に対し、酸化チタンを1kg〜50kg/m混合すること、
(6)養生固化後の造粒物表面は、酸性ガスとして炭酸ガスまたは亜硫酸ガスを用い、酸性水としては硫酸、硝酸または酢酸を用いて中和処理することにより、PH:5.0〜7.5に調整された中和層を形成したものであること、
にすることが、上記課題解決手段として、より好ましいものになる。
【発明の効果】
【0019】
以上のような構成をもつ本発明によれば、次のような機能を具えるマルチング材の製造が可能になる。
(1)屋上緑化工事等の資材として有用な、軽量で不燃性のマルチング材を安価に製造することができる。即ち、強風に接しても飛散することがなく、一方で、耐震特性に優れると共に、防火、防炎特性にも優れ、しかも、腐食等の問題を招くことなく、長期の耐用性にも優れたものの製造が可能になる。
(2)産業廃棄物の一種と考えられる石炭灰等のアッシュを利用するので、安価なマルチング材の製造が可能になる。
(3)マルチング材の使用地域に限定されたり、製造の場所が限定されたりするようなことがなく、製造コストや手間が大幅に軽減される。
(4)景観形成に適した種々の色調や形状のマルチング材を自由に製造することが可能になり、望ましい景観形成資材が得られる。
(5)植物に栄養分を補給するという肥効作用をもち、殺菌作用や害虫の発生を抑える作用をもつマルチング材の製造が可能になる。
(6)防汚機能や有害ガス等の浄化機能を有するマルチング材の製造が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るマルチング材の平面図である。
【図2】天然産出マルチング材(富士火山礫、伊豆火山礫)の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明において開発しようとするマルチング材は、次のような要求特性を満たす資材とすることを目標としている。
A.人工構造物の屋上等で使用されるマルチング材;
(1)不燃性で、かつ風等による飛散がない一方で軽量(比重約0.9〜1.8)でもあること。
(2)色彩や形状を、景観に対応できるように自由に変えられるものであること。
(3)窒素酸化物やホルムアルデヒド等の有害ガスの浄化や消臭、防虫、追肥回数の低減化等の特性を容易に付与できるものであること。
(4)製品の品質が一定で安価であること。
【0022】
B.屋内で使用するマルチング材;
(1)不燃性で装飾的機能を有すること
(2)窒素酸化物やホルムアルデヒド等の有害ガスの浄化や消臭、防虫作用を具えると共に、肥料を含む資材であること。
【0023】
C.造園等で使用するマルチング材;
(1)多量に供給でき品質が一定で安価であること。
(2)窒素酸化物やホルムアルデヒド等の有害ガスの浄化や消臭、防虫作用を具えると共に、肥料を含む資材であること。
【0024】
本発明は、上述した望ましい機能や各種の条件を満たすために、以下のような構成を付与してなるマルチング材を提案する。
(イ)基材成分として、全国各地の火力発電所や焼却炉等から廃棄物として発生する多孔質の石炭灰(クリンカーアッシュ)や焼却灰、または火山活動で発生した火山灰のうちから得らばれるいずれか1種以上の、平均粒径が0.2〜5mm程度の大きさのアッシュを、骨材として用いることにある。これらの基材(アッシュ)は、多孔質で空隙が多いため比重(約0.7〜0.9)が小さくて軽く、保水性、通気性、排水性に優れる他、カルシウム等のアルカリ性物質と容易に固化反応する可溶性珪酸(S−SiO)や可溶性アルミナ(Al・3HO)を多く含有している点に特徴がある。なお、これらの可溶性珪酸や可溶性アルミナは、下記のセメントや消石灰等の固化反応物質と容易にポゾラン反応を起こして、容易に固化するという作用がある。
【0025】
(ロ)また、基材成分としては、上記のアッシュの他に、各種セメント、消石灰およびドロマイトのうちから選ばれるいずれか1種以上の粉粒体からなる固化反応物質を用いる。これらのアルカリ性固化反応物質は、水を介在することで前記骨材(アッシュ)と固化反応を起して基材を固化させる作用がある。従って、前記骨材(アッシュ)、固化反応物質(セメント等)および水とを混合した上で、人的手段もしくは機械的手段で造粒し、所定の時間養生すれば、その混合物は礫状の5mm〜70mmの大きさの成形物となる。
【0026】
(ハ)また、上記の基材にはさらに、ゼオライト(沸石)や細砂、粉末石膏、フライアッシュ、ベントナイト、粉末炭等の添加材からなる比重調整資材を混合してもよい。この比重調整資材の添加により、本発明のマルチング材の比重は、いつでも0.9〜1.8程度に調整することができ、耐飛散性、耐震特性に優れ、荷重制限の面で有利な資材となる。
【0027】
このようにして得られたマルチング材は、製造当初は、未反応のまま残存しているカルシウム等のアルカリ成分が、その表面から溶出し、周辺土壌をアルカリ性にすることから、植物を枯死させるおそれがある。その予防のために、本発明では、前記のようにして製造したマルチング材に対し、炭酸ガスまたは亜硫酸ガス等の酸性ガスを、0.04vol.%以上30vol.%以下含有する空気雰囲気中に約2週間以上曝すことにより、該マルチング材表面のアルカリ成分を中和させて、植物に対して上述した影響がない程度に中和処理(PH:5.0〜7.5)することが必要である。
【0028】
また、本発明では、上記の中和処理に代え、またはこの処理と共に、前記マルチング材の表層部の中和処理を短時間で行うために、そのマルチング材の表面に、硫酸や硝酸、酢酸等の酸を水で薄く希釈した水溶液(酸性水)を散布する方法で中和処理を行うことにした。
さらに、これらの資材に肥料を混合すると散水や降雨時に肥料成分が溶出するため、追肥の回数を低減化できる。
【0029】
即ち、上述したように固化−養生したままのマルチング材は、一般に、PH10以上の強アルカリ性であり、例えば、2週間以上好ましくは4週間以上もの間、養生したとしても未反応のカルシウム等が溶出する傾向がある。そのため、植物の周辺をマルチングする場合は、溶出したカルシウム等が土壌をアルカリ性にするため、植物の生育を阻害する可能性がある。この点、本発明では、前記中和処理により、PH:5.0〜7.5程度にする。中性化することができるマルチング材をこのPH範囲内のものにすると、植物を良好に発芽生育させることができる。なお、マルチング材のPHは7.5超になると植物の生育障害がでる可能性がある。
【0030】
以上、要するに、本発明では、製造したマルチング材を、炭酸ガスや亜硫酸ガス等の酸性ガスを含有する空気雰囲気中に2週間以上曝して表層のアルカリ成分に反応させて中和するか、あるいは、硫酸や硝酸、酢酸等を水で薄く希釈した酸性水を散布し、表層部を中和することにより、マルチング材からのアルカリ成分の溶出を防ぎ、植物に対する影響を防ぐことにしたのである。
【0031】
次に、本発明のマルチング材製造方法について説明する。上記の構成に係るマルチング材を製造するために、例えば、クリンカーアッシュ等のアッシュ(骨材)1000リットルに対して、セメントや消石灰、ドロマイドなどの固化反応物質を50kg以上300kg以下を加え、さらに水を300kg〜400kg添加混合することにより、ポゾラン反応を起させて固化させる。この配合例において、固化反応物質が50kg未満、水が300kg未満では、固化反応が不十分となり、一方、固化反応物質が300kg超、水400kg超としても、ポゾラン反応が飽和して経済的でない。
【0032】
こうして得られた固化物(以下、これを「資材」という)は、固化反応物質使用量により異なるが、色は灰色で比重は、0.9〜1.4程度である。なお、強く風圧を受ける場所(屋上緑化資材)では、風に飛ばされないようにするためには比重を1.4以上にする必要があるが、この場合は、さらにゼオライトや細砂、粉末石膏、ベントナイト等の添加材を、前記クリンカーアッシュ等100リットルに対し5kg〜100kg添加することにより、これらを前記資材の空隙中に充填させることにより、比重を約1.4〜1.8程度に調整する。
【0033】
本発明において、混合後の固化物(資材)は、次に造粒(成形)されるが、その造粒(または成形)の方法としては、上記配合固化物(資材)を混合したのち直ちに造粒装置または成形装置にかけるか、あるいは混合した資材を人力等で目的物の大きさ以上の形状にし、これを半日から1日かけて養生し、半固化状態にした後、篩等を用いて目的物の大きさにする方法が有効である。
【0034】
このようにして製造した本発明のマルチング材(図1)は、図2に示す富士火山礫や伊豆火山礫のような灰黒色、薄赤褐色ではなく、必要に応じて赤や黄、緑に着色して美観(意匠性)を向上させた景観形成資材にすることができる。即ち、前記資材を着色する場合は、この資材にベンガラやインディゴ(酸化鉄)、鶏冠石(酢酸銅)などの着色剤を1〜50kg程度混合することにより、目的とした各種の色に着色することが可能である。
【0035】
また、本発明に係るマルチング材中には、酸化チタンを1〜50kg混合するか、あるいは製造したマルチング材を酸化チタンの塗料を用いて被覆することにより、酸化チタンがマルチング材の表層に露出し、光が当たることにより、光触媒効果を発揮し、有害ガス等の浄化、殺菌、防臭、脱臭、防汚等の機能を付与することができる。
【0036】
さらに、本発明に係るマルチング材中には、化学肥料や緩効性肥料、有機肥料などの各種の肥料を1〜10kg混合することができる。この混合によって、該マルチング材は肥料成分を含有することになり、その結果として、散水時等にその各種肥料成分が徐々に溶出していく。従って、追肥の回数を減らすことができるようになると共に、肥効作用をもつマルチング材とすることができる。
【実施例】
【0037】
(実施例1)
この実施例では、クリンカーアッシュ(石灰灰)1リットルに対し、普通ポルトランドセメント150gと水300gを混合し、人力で粒径約20mmの大きさに成形し、その成形体を常温で2日間養生して固化させてマルチング材とした。このマルチング材を容器に移し、水5リットルを入れて1日放置し、PHを測定した。その結果、PHは11.1を示した。
次に、このマルチング材を乾燥した後、炭酸ガスを1vol.%以上含有している空気を、常温で14日間この資材に向けて吹き込んで中性化処理を行った。そして、そのマルチング材に水5リットルを入れて1日放置した後、PHを計測した。その結果、PHは7.5まで下がっていた。また、このマルチング材(資材)の乾燥した状態での比重を計測した結果、1.15であった。(水分を含むものだと1.5)
【0038】
次に、上記資材を、コマツナを植えた周囲に、厚さ3cmに敷き詰め、コマツナの生育状況を観察した。その結果、マルチング材を使用しない比較区と同様に生育し、マルチング材使用の悪影響は認められなかった。
【0039】
(実施例2)
表1〜表3に示す配合例をもつマルチング材を製造して、下記の試験を行った。その結果を一覧表として示す。
(1)マルチング材の製造方法
表1に示した比率で各種の資材を混合し、人力で粒径約20mmの大きさの成形体とし、次いで、常温で4週間養生して固化させた。その後、下記の酸性ガスおよび/または酸性水による中和処理を施した。
(2)比重、PH測定
試料について、水分含有時および乾燥時の比重を測定し、さらに、その試料を1リットル容器にとり、これに蒸留水を5リットル散布し、回収した水のPHを計測した。
(3)酸性ガスによる中和処理
20リットル入る密閉容器に試料を1リットル入れ、これに炭酸ガス10vol.%以上、窒素酸化物0.01vol.%以上含有する車の排気ガスを充填し、2週間放置し中和処理した。
(4)酸性水による中和処理
水に硫酸を0.1N溶かし、試料1リットルに対して5リットルの0.1N硫酸水を散布して中和処理した。
(5)有害物質浄化、脱臭効果
日光が当たる密閉容器内に試料を充填し、その中に排気ガス等の有害ガスを入れ、濃度を計測して除去能を検討した。また、臭気も検討した。
(6)生育植物への影響
この資材をコマツナを植えた周囲に厚さ3cmに敷き詰め、コマツナの生育状況を観察した。
(7)防汚、殺菌
マルチング材の汚れの状況を調査した。
(8)追肥低減化効果
ポットに植物を植え植物の生育が衰退した時に行う追肥の回数を調査した。
【0040】
上記各試験の結果によると、酸性ガスまたは酸性水による中和処理を施していないNo.1、3、6、8、10については、生育植物に悪影響が見られた。なお、No.4は固化反応物質(普通ポルトランドセメント)無添加の例であるが、踏圧に対する強度が小さく簡単に潰れて粉化した。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係るマルチング材は、特に、軽量で不燃性を示すマルチング材の提供を目的として開発したものであり、その他、生育植物への影響、有害物浄化、脱臭効果、防汚、殺菌効果、追肥低減効果、着色性(美感性)、踏圧に対する強度に優れたものである。これは緑化工事、造園工事、園芸、景観形成のための資材として用いられる。従って、構造物の屋上や公園、その他、道路や堤防等の公共施設の緑化に際して有効に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭灰、焼却灰および火山灰のうちから選ばれるいずれか1種以上のアッシュに、セメント、消石灰およびドロマイトのうちから選ばれるいずれか1種以上の固化反応物質を加えてなる基材と水とを混合し造粒することによって得られる造粒物であって、その造粒物表面が、酸性ガスおよび/または酸性水いずれかを用いて中和処理された中和層であることを特徴とする不燃性軽量マルチング材。
【請求項2】
前記アッシュは、可溶性珪酸および可溶性アルミナを含有することを特徴とする請求項1に記載の不燃性軽量マルチング材。
【請求項3】
前記基材はさらに、ゼオライト、細砂、フライアッシュ、粉末石膏、ベントナイトおよび粉末炭から選ばれるいずれか1種以上の比重調整資材を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の不燃性軽量マルチング材。
【請求項4】
前記基材は、着色剤が混合されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の不燃性軽量マルチング材。
【請求項5】
前記基材は、肥料が混合されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の不燃性軽量マルチング材。
【請求項6】
前記基材は、酸化チタンが混合されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の不燃性軽量マルチング材。
【請求項7】
石炭灰、焼却灰および火山灰のうちから選ばれるいずれか1種以上のアッシュ1000リットルに、セメント、消石灰およびドロマイトのうちから選ばれるいずれか1種以上の固化反応物質を50kg〜300kg加えてなる基材に対し、250kg〜400kgの水を混合して造粒し、次いで、造粒によって得られた造粒物を養生工程を経て固化させ、その後、養生後の造粒物を酸性ガス含有雰囲気中に曝して表面を中和する処理および/または酸性水を散布して表面を中和する処理を行うことを特徴とする不燃性軽量マルチング材の製造方法。
【請求項8】
前記アッシュは、可溶性珪酸および可溶性アルミナを30mass%以上含有することを特徴とする請求項7に記載の不燃性軽量マルチング材の製造方法。
【請求項9】
前記基材にはさらに、ゼオライト、細砂、フライアッシュ、粉末石膏、ベントナイトおよび粉末炭から選ばれるいずれか1種以上の比重調整資材を含有させることを特徴とする請求項7または8に記載の不燃性軽量マルチング材の製造方法。
【請求項10】
養生固化後の造粒物表面は、酸性ガスとして炭酸ガスまたは亜硫酸ガスを用い、酸性水としては硫酸、硝酸または酢酸を用いて中和処理することにより、PH:5.0〜7.5に調整された中和層を形成したものであることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1に記載の不燃性軽量マルチング材の製造方法。
【請求項11】
前記基材に対し、着色剤を1kg〜50kg混合することを特徴とする請求項7〜10のいずれか1に記載の不燃性軽量マルチング材の製造方法。
【請求項12】
前記基材に対し、肥料を1kg〜10kg混合することを特徴とする請求項7〜11のいずれか1に記載の不燃性軽量マルチング材の製造方法。
【請求項13】
前記基材に対し、酸化チタンを1kg〜50kg/m混合することを特徴とする請求項7〜12のいずれか1に記載の不燃性軽量マルチング材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−223939(P2011−223939A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97555(P2010−97555)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000158965)技研興業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】