説明

不織布積層体

【課題】各層における密度等の層状態が厚み方向に異なっている不織布積層体を、1枚の不織布原反から製造することができる不織布積層体、その製造方法及びそれを用いた吸収性物品を提供すること。
【解決手段】本発明の不織布積層体1は、不織布2が所定方向に折り重ねられて多層に形成された不織布積層体であって、不織布2は、前記所定方向に沿って層状態が変化した層状態変化領域3を有しており、層状態変化領域3が所定方向に折り重ねられることによって、不織布積層体1の各層11〜14の層状態は、不織布積層体1の厚み方向に異なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布が積層されてなる不織布積層体、その製造方法及びそれを用いた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸収性物品における吸収体を不織布の積層体から形成する技術が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。特許文献1記載の吸収体においては、上層を形成する不織布の密度と下層を形成する不織布の密度を異ならせることにより、上層の吸収特性と下層の吸収特性とを異ならせている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−229767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載の吸収体においては、上層の密度と下層の密度とを異ならせるために、上層を形成する不織布及び下層を形成する不織布としてそれぞれ異なる種類の不織布を用いている。そのため、吸収体の形成材料として、2種類以上の不織布原反を用意する必要があり、積層体の形成加工も煩雑であった。
【0005】
従って、本発明の目的は、各層における密度等の層状態が厚み方向に異なっている不織布積層体を、1枚の不織布原反から製造することができる不織布積層体、その製造方法及びそれを用いた吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、不織布が所定方向に折り重ねられて多層に形成された不織布積層体であって、不織布は、前記所定方向に沿って層状態が変化した層状態変化領域を有しており、層状態変化領域が所定方向に折り重ねられることによって、不織布積層体の各層の層状態は、不織布積層体の厚み方向に異なっている不織布積層体を提供することにより上記の目的を達成したものである。
【0007】
また、本発明は、前記不織布積層体の製造方法であって、不織布原反をその長手方向に繰り出す工程と、繰り出された不織布原反にその幅方向に沿って層状態が変化するように前記層状態変化領域を形成する工程と、不織布原反の層状態変化領域を幅方向に折り重ねる工程とを有する不織布積層体の製造方法を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在された吸収体を備えた吸収性物品であって、前記不織布積層体が表面シート若しくは吸収体又は表面シートと吸収体との間に介在された拡散層に用いられている吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の不織布積層体によれば、各層における密度等の層状態が厚み方向に異なっている不織布積層体を、1枚の不織布原反から製造することができる。また、本発明の不織布積層体の製造方法によれば、前記不織布積層体を効率的に製造することができる。また、本発明の吸収性物品によれば、吸収性能が向上し、効率的な製造工程で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の不織布積層体について、その好ましい一実施形態である第1実施形態に基づき図1を参照しながら説明する。
第1実施形態の不織布積層体1は、図1に示すように、不織布2が所定方向に折り重ねられて多層に形成された不織布積層体である。詳細には、不織布積層体1は、最上層である第1層11、第2層12、第3層13、最下層である第4層14の順で積層した4層積層体である。前記所定方向は、不織布2の素材である不織布原反20の幅方向〔図1(b)における横方向〕と一致している。この所定方向を以下「折り重ね方向」ともいう。尚、「長手方向」及び「幅方向」というときは、特に明記のない限り、それぞれ「不織布原反の長手方向」及び「不織布原反の幅方向」を意味する。
【0011】
不織布2としては、例えば、エアスルー不織布(エンボス加工されていないもの又はエンボス加工されているもの)、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンボンド/メルトブローン/スパンボンド複合不織布が用いられる。層状態変化領域3(後述)を良好に形成するには、不織布2の厚みは厚い方が好ましいため、不織布2としては、厚く形成し易いエアスルー不織布が好ましく用いられる。
【0012】
不織布2に使用される繊維としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリエステル、ナイロンのようなポリアミド等の合成繊維、レーヨン及びキュプラ等の再生セルロース繊維、コットン等の天然繊維が挙げられる。
【0013】
不織布2は、前記所定方向(折り重ね方向)に沿って層状態が変化した層状態変化領域3を有している。本実施形態においては、層状態変化領域3は、不織布2の全幅に亘っている。
本発明において「層状態」とは、不織布積層体の各層における吸収性能に関連する種々の状態を意味する。層状態を変化させる要因としては、典型的には、「密度」、「繊維空隙(繊維間距離)」、「厚み」、「エンボス数」(エンボス加工された層の場合)、「エンボス面積率」(エンボス加工された層の場合)、「繊維の太さ」、「繊維の分割の程度」(分割繊維を含む層の場合)等である。
【0014】
前記の層状態を変化させる要因は、複数含まれている場合も多い。例えば、各層について、密度、繊維空隙及び厚みの3要因が変化している場合がある。層状態を変化させる要因は、相互に関連している場合も多い。例えば、密度が異なっていれば、それに対応して繊維空隙や厚みも異なっている場合がある。
【0015】
不織布積層体1の各層11〜14の層状態は、層状態変化領域3が所定方向に折り重ねられることによって不織布積層体1の厚み方向に異なっている。詳細には、第1実施形態の不織布積層体1においては、層状態変化領域3の層状態の変化は、主として密度の変化に起因している。尚、前述の通り、密度以外の要因(例えば、エンボス面積率や厚み)も同時に変化している場合もあり、本実施形態においては、エンボス面積率等が同時に変化している。
【0016】
本実施形態においては、各層11〜14の密度は、最上層である第1層11から最下層である第4層14に亘って、第1層11、第2層12、第3層13、第4層14の順で順次増加している。この密度は、層ごとに平均密度として算出される。各層においては、密度は、巨視的に視て折り重ね方向に一定であってもよく、折り重ね方向に変化していてもよい。
【0017】
平均密度は、各層ごとに平均厚み及び面積を算出し、各層の質量を該平均厚み及び該面積で除算することにより得られる。平均厚みは、各層の上面又は下面に厚み方向の凹部(凹エンボス等)が形成されている場合には、該凹部を含まずに算出するが、各層の厚み方向内部に空隙が形成されている場合には、該空隙を含んで算出する。
各層11〜14の幅は同じとなっている。各層11〜14の幅は、例えば、子供用使い捨ておむつにおける拡散層(表面シートと吸収体との間に介在された層)として用いる場合には、好ましくは30〜120mmであり、各層11〜14の平均厚みは、好ましくは0.5〜2mmである。
【0018】
不織布2の層状態変化領域3は、折り重ねられる前においては、不織布積層体1における第1層11、第2層12、第3層13及び第4層14に対応して、それぞれ第1区域31、第2区域32、第3区域33及び第4区域34に区画されている。第1区域31、第2区域32、第3区域33及び第4区域34の密度は、この順に順次増加している。
【0019】
本実施形態においては、層状態変化領域3の各区域31〜34の上面に、エンボス加工による凹部(図示せず)が大きさ(面方向面積、深さ)、個数等を異ならせて形成されていることにより、各区域31〜34の密度が折り重ね方向に変化しており、延いては不織布積層体1の各層11〜14の密度が厚み方向に異なっている。
各区域31〜34の幅は同じとなっている。各区域の幅31〜34は、不織布積層体1の各層11〜14の幅とほぼ同じとなる。
【0020】
折り重ね方向に隣接する各区域31,32,33,34間は、不織布原反20に密度を変化させる加工が実質的に施されておらず、不織布原反20の密度とほぼ同じ密度を有する未加工低密度区域3A,3A,3Aとなっている。各未加工低密度区域3Aの幅は同じとなっている。未加工低密度区域3Aの幅は、好ましくは3〜10mmである。
【0021】
不織布2の層状態変化領域3は、第1区域31、第2区域32、第3区域33及び第4区域34がそれぞれ第1層11、第2層12、第3層13及び第4層14を形成するように、未加工低密度区域3Aを折り返し部として、W字を90回転させて上下方向に潰した形状に4層に折り重ねられている。
【0022】
不織布積層体1の各層11,12,13,14間は、接着剤で接合されてもよく、熱シール(エンボスシール等)や超音波シールにより接合されていてもよい。また、各層11,12,13,14間は、全面的に接合されていてもよく、部分的に(例えば各層の周縁のみが)接合されていてもよい。
各層11,12,13,14間の接合は、必ずしも必須ではない。例えば、不織布積層体1全体が別体の被覆シート(図示せず)で被覆されている形態や、最上層である第1層11と最下層である第4層14とがその間の第2層12,第3層13を包むように接合されている形態においては、各層11,12,13,14間の接合を省略することができる。
【0023】
次に、第1実施形態の不織布積層体1の製造に好ましく用いられる本発明の不織布積層体の製造方法の第1実施態様及び第1実施態様の製造方法を実施する第1の製造装置について説明する。第1実施態様の不織布積層体の製造方法は、不織布原反20をその長手方向に繰り出す工程と、繰り出された不織布原反20にその幅方向に沿って層状態が変化するように層状態変化領域3を形成する工程と、不織布原反20の層状態変化領域3を幅方向に折り重ねる工程とを有している。
【0024】
第1の製造装置は、図1に示すように、不織布原反20をその長手方向に繰り出す繰り出し手段(図示せず)と、該繰り出し手段により繰り出された不織布原反20に層状態変化領域3を形成する一対の層状態変化領域形成用ロール(R1,R2)と、層状態変化領域形成用ロール(R1,R2)により層状態変化領域3が形成された不織布原反20をその幅方向に折り重ねる折り重ね手段Pと、折り重ね手段Pにより折り重ねられた不織布原反20を所定長さに切断する切断手段(図示せず)とを備えている。
【0025】
前記繰り出し手段としては、不織布原反20を長手方向に繰り出し可能な公知の手段が用いられる。
【0026】
層状態変化領域形成用ロールは、不織布原反20の上方に位置するエンボスロールR1と、不織布原反20の下方に位置する円筒形状のフラットロールR2とからなる。層状態変化領域形成用ロールを構成するロールは、加熱可能になっていてもよい。加熱されたロールによれば、ヒートエンボス加工やヒートシール加工等を行うことができる。
【0027】
エンボスロールR1の外周面は、不織布2の層状態変化領域3における第1区域31、第2区域32、第3区域33及び第4区域34に対応して、それぞれ第1エンボス領域R11、第2エンボス領域R12、第3エンボス領域R13及び第4エンボス領域R14に区画されている。各エンボス領域11〜14には、エンボスロールR1の径方向に延出する凸エンボス(図示せず)が設けられている。該凸エンボスは、層状態変化領域3における前記エンボスによる凹部の形状に対応している。
【0028】
各エンボス領域R11〜R14における有効エンボス面積は、第1エンボス領域R11、第2エンボス領域R12、第3エンボス領域R13、第4エンボス領域R14の順で順次大きくなっている。「有効エンボス面積」とは、エンボスロールR1の前記凸エンボスの頂部面積を言う。また、その頂部において仮想的に「基準円筒」を考えたときに、該基準円筒一周分の「有効エンボス面積」の総和を該基準円筒の周面の面積で割った値が「エンボス面積率」である。各区域31〜34の密度を異ならせるには、各エンボス領域R11〜R14におけるエンボス面積率(エンボス数、凸エンボスの頂部面積)、凸エンボスの高さ等を変更すればよい。
【0029】
折り重ね方向に隣接する各エンボス領域R11,R12,R13,R14間は、不織布2の層状態変化領域3における未加工低密度区域3Aに対応して、凸エンボスが設けられていない未エンボス領域R1Aとなっている。
【0030】
折り重ね手段Pは、層状態変化領域3が形成された不織布原反20をその幅方向に所定形状に折り重ねるものである。折り重ね手段Pによれば、第1区域31、第2区域32、第3区域33及び第4区域34がそれぞれ第1層11、第2層12、第3層13及び第4層14を形成するように、不織布2の層状態変化領域3を、W字を90回転させて上下方向に潰した形状に4層に折り重ねることができる。
【0031】
前記切断手段(図示せず)は、折り重ね手段Pにより折り重ねられた不織布原反20を所定長さに切断できるようになっている。
【0032】
第1の製造装置を用いた第1実施態様の不織布積層体の製造方法について説明する。まず、前記繰り出し手段により不織布原反20がその長手方向に繰り出される。次に、一対の層状態変化領域形成用ロール(R1,R2)間に不織布原反20が導入され、層状態変化領域形成用ロール(R1,R2)により、不織布原反20に、その幅方向に沿って密度が変化するように層状態変化領域3が形成される。このように、層状態変化領域3は1工程で形成される。
【0033】
詳述すると、層状態変化領域形成用ロール(R1,R2)に導入された不織布原反20におけるエンボスロールR1との対向面は、エンボスロールR1における各エンボス領域R11,R12,R13及びR14によりエンボス加工される。不織布原反20におけるエンボス領域R11,R12,R13及びR14との対向面は、それぞれ層状態変化領域3における第1区域31、第2区域32、第3区域33及び第4区域34となる。また、エンボスロールR1における未エンボス領域R1Aは、不織布原反20を実質的にエンボス加工しないため、不織布原反20における未エンボス領域R1Aとの対向面は、未加工低密度区域3Aとなる。
【0034】
次いで、折り重ね手段Pにより不織布原反20の層状態変化領域3が幅方向に折り重ねられる。詳述すると、不織布2の層状態変化領域3は、第1区域31、第2区域32、第3区域33及び第4区域34がそれぞれ第1層11、第2層12、第3層13及び第4層14を形成するように、未加工低密度区域3Aを折り返し部として、W字を90回転させて上下方向に潰した形状に4層に折り重ねられる。
その後、折り重ねられた不織布原反20は、前記切断手段により所定長さに切断される。必要に応じ、不織布原反20の切断前、切断後又は切断と同時に、各層11〜14が接合されることにより、不織布2が折り重ねられて多層に形成された不織布積層体1が得られる。
【0035】
このような不織布積層体1は、様々な製品の構成部位に適用することができるが、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在された吸収体を備えた吸収性物品(使い捨ておむつ、生理用ナプキン等。図示せず)における表面シート、吸収体、拡散層(表面シートと吸収体との間に介在されて、表面シートを通過した液を、面方向に拡散させながら吸収体に移行させる層)等に好ましく用いられる。
【0036】
本発明の不織布積層体を前記拡散層に用いる場合には、一般的には、下層に行くほど高密度になる構造を有する不織布積層体がよい。このような密度勾配を持つ不織布積層体によれば、液の吸収速度が速くなり、液を吸収体に素早く移行させて吸収できる。また、表面シートへの液の逆戻り防止にも効果がみられる。
【0037】
前記拡散層に、上層に行くほど高密度になる構造を有する不織布積層体を用いることもできる。このような密度勾配を持つ不織布積層体によれば、拡散層の厚み方向の液の透過を抑えながら、液を面方向に拡散させることができ、吸収体の広い面積を吸収面として活用できる。
【0038】
第1実施形態の不織布積層体1は、層状態変化領域3を有する不織布2が所定方向に折り重ねられて多層に形成されているため、クッション性が高く、また、吸収性物品の吸収体に用いた場合には、ズレやヨレが生じ難い。
また、不織布積層体1は、1枚の不織布原反20から形成することができ、不織布積層体1の形成加工が簡便である。
【0039】
また、不織布積層体1の折り返し部は、未加工低密度区域3Aから形成されており、密度が低くなっている。この密度の低い折り返し部が各層11〜14の一側部又は両側部に位置することになるため、不織布積層体1の各層11〜14には、両側部から幅方向中央に向けて毛管力が働く。従って、不織布積層体1は、吸収体に用いた場合には漏れ防止性能が高い。
本実施形態の不織布積層体1は、各層の一側部又は両側部が折り返されているため、各層間を接合するのに使用する接着剤の量を減らすことができ、不織布積層体1のクッション性の低下を抑制することができる。
【0040】
第1実施態様の不織布積層体の製造方法によれば、第1実施形態の不織布積層体1を効率的に製造することができる。また、本発明の吸収性物品によれば、吸収性能が向上し、効率的な製造工程で得ることができる。
【0041】
次に、別の実施形態の不織布積層体並びにその製造に用いられる別の実施態様の製造方法及び該製造方法に用いられる別の製造装置について説明する。別の実施形態の不織布積層体、別の実施態様の製造方法及び別の製造装置については、それぞれ第1実施形態の不織布積層体、第1実施態様の製造方法及び第1の製造装置とは異なる点を中心に説明し、同じ点について説明を省略する。従って、前述した第1実施形態の不織布積層体、第1実施態様の製造方法及び第1の製造装置についての説明が適宜適用される。
別の実施形態の不織布積層体及び別の実施態様の製造方法においても、それぞれ第1実施形態の不織布積層体及び第1実施態様の製造方法と同様の効果が奏される。
【0042】
第2実施形態の不織布積層体1は、図2に示すように、4層積層体であること、折り重ね形態、各層の密度が最上層の第1層11から最下層の第4層14に亘って順次増加している点等については、第1実施形態の不織布積層体1と同様である。また、第2実施形態の不織布積層体1における不織布2の層状態変化領域3には、不織布積層体1の第1層11、第2層12、第3層13及び第4層14に対応して、それぞれ第1区域31、第2区域32、第3区域33及び第4区域34が形成されている点、折り重ね方向に隣接する各区域31,32,33,34間に未加工低密度区域3Aが形成されている点等についても、第1実施形態の不織布積層体1と同様である。
【0043】
而して、第2実施形態の不織布積層体1は、層状態変化領域3の密度を変化させる手段が異なる。具体的には、第1実施形態における層状態変化領域3においては、エンボス面積率等を変化させることにより、密度を変化させているが、第2実施形態における層状態変化領域3においては、エンボス加工による凹部を設けることなく、厚みを異ならせることにより、密度を変化させている。
【0044】
即ち、不織布2の層状態変化領域3における第1区域31、第2区域32、第3区域33及び第4区域34の厚みは、この順に順次薄くなっている。不織布2は、層状態変化領域3を形成する前においては、等厚で等密度となっている。従って、プレス加工(詳細は後述)等により厚みを変化させると、厚みに反比例して密度が変化し、層状態変化領域3における第1区域31、第2区域32、第3区域33及び第4区域34の密度は、この順で順次大きくなっている。
【0045】
このような不織布2の層状態変化領域3は、第1実施形態と同様に、第1区域31、第2区域32、第3区域33及び第4区域34がそれぞれ第1層11、第2層12、第3層13及び第4層14を形成するように、W字を90回転させて上下方向に潰した形状に4層に折り重ねられている。
このような不織布2の層状態変化領域3が折り重ね方向に折り重ねられることにより、最上層である第1層11、第2層12、第3層13、最下層である第4層14の順で密度が順次増加している不織布積層体1(換言すると、この順で厚みが順次減少している不織布積層体1)が形成される。
【0046】
第2実施形態の不織布積層体1は、例えば第2実施態様の不織布積層体の製造方法により製造される。第2実施態様の製造方法の実施に用いられる第2の製造装置においては、第1の製造装置に比して、層状態変化領域形成用ロールにおいて、フラットロールR2と対になるエンボスロールR1に代えて、段付ロールR3が用いられている。その他の構成は第1の製造装置と同様である。
【0047】
段付ロールR3の外径は、不織布2の層状態変化領域3の第1区域31、第2区域32、第3区域33及び第4区域34の厚みに対応して、第1段差領域R31、第2段差領域R32、第3段差領域R33、第4段差領域R34の順で順次大きくなっている。段付ロールR3には、層状態変化領域3における未加工低密度区域3Aに対応して、不織布原反20を実質的にプレス加工しない小径領域R3Aが設けられている。
【0048】
第2の製造装置を用いた第2実施態様の製造方法によれば、不織布2の層状態変化領域3は次のように形成される。
不織布原反20は、層状態変化領域3が形成される前においては、等厚で等密度である。而して、不織布原反20が一対の段付ロールR3、フラットロールR2間でプレス加工されることにより、段付ロールR3における第1段差領域R31、第2段差領域R32、第3段差領域R33及び第4段差領域R34の外径の大きさに対応して、不織布2の層状態変化領域3は、第1区域31、第2区域32、第3区域33及び第4区域34の順で厚みが薄くなるように形成される。
【0049】
その結果、層状態変化領域3は、第1区域31、第2区域32、第3区域33、第4区域34の順で、厚みに反比例して密度が順次増加する。
このように層状態変化領域3が形成された不織布2は、第1実施態様と同様に、折り重ね手段Pにより4層に折り重ねられ、前記切断手段により所定長さに切断されて、不織布積層体1となる。
【0050】
第3実施形態の不織布積層体1は、図3に示すように、第2実施形態に比して、不織布2の層状態変化領域3に未加工低密度区域3Aが設けられておらず、折り重ね方向に隣接する各区域31,32,33,34が隣接している。そのため、第3実施形態の不織布積層体1においては、折り重ね方向に隣接する各区域31,32,33,34の境界近傍を折り返し部として4層に折り重ねられている。その他の構成は、第2実施形態の不織布積層体1と同様である。
【0051】
第3実施形態の不織布積層体1を製造する第3の製造装置においては、層状態変化領域形成用ロールにおける段付ロールR3には、層状態変化領域3の形態(未加工低密度区域3Aを有していない)に対応して、小径領域R3Aが設けられていない。
第3の製造装置を用いた第3実施態様の不織布積層体の製法方法によれば、折り重ね方向に各区域31,32,33,34が隣接した層状態変化領域3が形成され、第3実施形態の不織布積層体1を製造することができる。
【0052】
第4実施形態の不織布積層体1は、第2実施形態の不織布積層体1に比して、図4に示すように、不織布2の層状態変化領域3における厚みの変化パターン、即ち密度の変化パターンが異なる。具体的には、不織布2の層状態変化領域3の厚みは、第1区域31、第2区域32、第3区域33、第4区域34の順で、厚、薄、厚、薄の順で交互になっている。そのため、不織布2の層状態変化領域3の密度は、厚みに反比例して、第1区域31、第2区域32、第3区域33、第4区域34の順で、小、大、小、大の順で交互になっている。
【0053】
このような不織布2の層状態変化領域3が折り重ね方向に折り重ねられることにより、最上層である第1層11、第2層12、第3層13、最下層である第4層14の順で密度が小、大、小、大の順で交互になっている不織布積層体1(換言すると、この順で厚みが厚、薄、厚、薄の順で交互になっている不織布積層体1)が形成される。
【0054】
第4実施形態の不織布積層体1を製造する第4の製造装置においては、第2の実施装置に比して、層状態変化領域形成用ロールにおける段付ロールR3は、層状態変化領域3の各区域31,32,33,34に対応して、第1段差領域R31、第2段差領域R32、第3段差領域R33及び第4段差領域R34の外径が、小、大、小、大の順で交互になっている。
第4の製造装置を用いた第4実施態様の不織布積層体の製法方法によれば、層状態変化領域3は、幅方向(折り重ね方向)に亘って厚みが大、小、大、小の順に交互になるように、即ち密度が小、大、小、大の順で交互になるように形成され、第4実施形態の不織布積層体1を製造することができる。
【0055】
第5実施形態の不織布積層体1は、第3実施形態の不織布積層体1に比して、図5に示すように、不織布2の層状態変化領域3の厚みが折り畳み方向に亘って徐々に(直線的に)薄くなっている。そのため、不織布2の層状態変化領域3の密度は、厚みに反比例して徐々に大きくなっている。
このような不織布2の層状態変化領域3が折り重ね方向に折り重ねられることにより、最上層である第1層11、第2層12、第3層13、最下層である第4層14の順で密度が順次増加している不織布積層体1(換言すると、この順で厚みが順次減少している不織布積層体1)が形成される。
【0056】
第5実施形態の不織布積層体1を製造する第5の製造装置においては、第3の製造装置に比して、層状態変化領域形成用ロールにおける段付ロールR3に代えて、円錐台形状の円錐台ロールR4が用いられている。円錐台ロールR4の外径は、不織布2の層状態変化領域3の厚みの変化(徐々に直線的に変化)に対応して、幅方向に徐々に直線状に大きくなっている。
【0057】
第5の製造装置を用いた第5実施態様の製造方法によれば、層状態変化領域3が形成されていない不織布原反20を一対の円錐台ロールR4とフラットロールR2との間でプレス加工することにより、層状態変化領域3は、幅方向(折り重ね方向)に亘って徐々に厚みが薄くなるように、即ち徐々に密度が高くなるように形成され、第5実施形態の不織布積層体1を製造することができる。
【0058】
第6実施形態の不織布積層体1においては、図6に示すように、不織布2の層状態変化領域3には、折り重ね方向と直交する方向に延びる等幅のエンボス溝41〜48が、折り重ね方向に沿って順次間隔を狭くして8本設けられている。尚、第6実施形態においては、エンボス溝が8本設けられているが、エンボス溝の本数が多い程、密度の変化を滑らかにすることができ、好ましい。各エンボス溝41〜48は、不織布2の層状態変化領域3の両面に、厚み方向位置を一致させて設けられている。
【0059】
複数のエンボス溝41〜48が折り重ね方向に沿って順次間隔を狭くして設けられていると、層状態変化領域3を折り重ね方向に所定幅で区画したときに、例えば折り重ね方向に3等分に区画したときに、エンボス溝の少ない区画は密度及びエンボス面積率が小さくなり、エンボス溝が多い区画は密度及びエンボス面積率が大きくなる。このように、折り重ね方向に密度及びエンボス面積率が変化した層状態変化領域3が形成されている。
【0060】
このような不織布2の層状態変化領域3が折り重ね方向に折り重ねられることにより、最上層である第1層11、第2層12、最下層である第3層13の順で密度及びエンボス面積率が順次増加している不織布積層体1が形成される。
第6実施形態の不織布積層体1においては、直線状のエンボス溝41〜48で液が直線状に方向性をもって拡散するため、好ましい。
【0061】
第6実施形態の不織布積層体1を製造する第6の製造装置においては、第1の製造装置に比して、層状態変化領域形成用ロールが一対の周エンボスロールR5,R5から構成されている。周エンボスロールR5の周面には、層状態変化領域3におけるエンボス溝41〜48に対応して、周方向全周に亘って設けられたエンボス条R51〜R58が軸方向(折り重ね方向に対応する方向)に所定間隔をおいて8条設けられている。
各エンボス条R51〜R58は等幅で、隣接するエンボス条R51〜R58の軸方向間隔は、層状態変化領域3におけるエンボス溝41〜48に対応して、順次狭くなっている。
【0062】
第6の製造装置を用いた第6実施態様の製造方法によれば、層状態変化領域3が形成されていない不織布原反20を一対の周エンボスロールR5,R5間でプレス加工することにより、不織布原反20には、等幅のエンボス溝41〜48が、折り重ね方向(幅方向)に順に間隔が狭くなるように形成され、層状態変化領域3が形成される。従って、第6実施態様の製造方法によれば、層状態変化領域3においては、巨視的に視て、エンボス溝41〜48の間隔に反比例して密度及びエンボス面積率が大きくなり、第6実施形態の不織布積層体1を製造することができる。
【0063】
不織布積層体1の折り重ね形態は、前述の第1実施形態〜第6実施形態の折り重ね形態に制限されない。
例えば、図7(a)に示すように、不織布2の層状態変化領域3における等幅の第1区域31、第2区域32を2つ折りで折り重ねて、第1層11及び第2層12からなる2層の不織布積層体1を形成することができる。
【0064】
図7(b)に示すように、不織布2の層状態変化領域3における第1区域31、第2区域32及び第3区域33(第1区域31と第3区域33とは等幅。第2区域32は第1区域31の2倍幅)を第1区域31及び第3区域33からそれぞれ第1層11の左半分及び第1層11の右半分が形成され、第2区域32から第2層12が形成されるように2回折り返して折り重ねて、第1層11及び第2層12からなる2層の不織布積層体1を形成することができる。
【0065】
図7(c)に示すように、不織布2の層状態変化領域3における等幅の第1区域31、第2区域32及び第3区域33を第1区域31、第3区域33及び第2区域32からそれぞれ第1層11〜第3層13が形成されるように3回折り返して折り重ねて、第1層11〜第3層13からなる3層の不織布積層体1を形成することができる。
【0066】
図7(d)に示すように、不織布2の層状態変化領域3における等幅の第1区域31、第2区域32及び第3区域33を第1区域31〜第3区域33からそれぞれ第1層11〜第3層13が形成されるように3回折り返して折り重ねて、第1層11〜第3層13からなる3層の不織布積層体1を形成することができる。
【0067】
図8(a)に示すように、不織布2の層状態変化領域3における等幅の第1区域31、第2区域32、第3区域33、第4区域34を第1区域31、第4区域34、第3区域33及び第2区域32からそれぞれ第1層11〜第4層14が形成されるように4回折り返して折り重ねて、第1層11〜第4層14からなる4層の不織布積層体1を形成することができる。
【0068】
図8(b)に示すように、不織布2の層状態変化領域3における等幅の第1区域31、第2区域32、第3区域33、第4区域34を第1区域31、第3区域33、第4区域34及び第2区域32からそれぞれ第1層11〜第4層14が形成されるように4回折り返して折り重ねて、第1層11〜第4層14からなる4層の不織布積層体1を形成することができる。
【0069】
図8(c)に示すように、不織布2の層状態変化領域3における第1区域31、第2区域32、第3区域33、第4区域34、第5区域35、第6区域36及び第7区域37(第4区域34は第1区域31の2倍幅。第4区域34以外の区域は等幅)を、第1区域31、第7区域37、第2区域32、第6区域36、第3区域33、第5区域35及び第4区域34からそれぞれ第1層11の左半分、第1層11の右半分、第2層12の左半分、第2層12の右半分、第3層13の左半分、第3層13の右半分及び第4層14が形成されるように6回折り返して折り重ねて、第1層11〜第4層14からなる4層の不織布積層体1を形成することができる。
【0070】
本発明の不織布積層体及びその製造方法は、それぞれ前述の各実施形態及び各実施態様に制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。前述の各実施形態及び各実施態様を適宜組み合わせることもできる。
本発明の不織布積層体においては、不織布積層体の層数、折り重ね形態については制限はない。層状態変化領域3における層状態(密度、エンボス面積率、厚み等)の変化パターン(順次増加、順次減少、大小交互、ランダム等)には制限はない。同様に、不織布積層体の各層の層状態の変化パターン(順次増加、順次減少、大小交互、ランダム等)にも制限はない。
【0071】
層状態変化領域3は、不織布2の全幅に亘ってなくてもよい。層状態変化領域3は、不織布原反20の幅方向以外の方向、例えば長手方向に沿って層状態が変化するように形成することができる。
不織布の全面ないし一部に歯溝ロール等で処理を行い、液の拡散を幅方向に誘導できるパターンを成形することもできる。
【0072】
不織布に、部分的に立体的な開孔を形成したり、部分的にエンボスを形成することにより、不織布の密度を所定方向に変化させることができる。
不織布積層体の最上層に部分的に開孔を形成することにより、液の浸透性を向上させることができる。
【0073】
本発明の不織布積層体の製造方法においては、層状態変化領域形成用ロールを、一対のエンボスロールR1,R1、一対の段付ロールR3,R3又は一対の周エンボスロールR5,R5から構成することができ、一方のロールをフラットロールR2から構成することもできる。
【0074】
層状態変化領域形成用ロールを用いずに、熱風回復装置を用いて熱風の強さを不織布の幅方向に変化させることにより、層状態変化領域の層状態を所定方向に変化させることができる。
層状態変化領域形成用ロールの周面を、その軸方向に(即ち不織布原反の幅方向に)温度を変化させて、不織布の溶融の程度を変化させることにより、層状態変化領域の層状態を所定方向に変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1(a)は、本発明の不織布積層体の製造方法の第1実施態様の実施に用いられる第1の製造装置を示す斜視図、図1(b)は、第1の実施装置について一対のロールを通るように切断した縦断面図、図1(c)は、本発明の不織布積層体の第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図2(a)は、本発明の不織布積層体の製造方法の第2実施態様の実施に用いられる第2の製造装置を示す斜視図、図2(b)は、第2の実施装置について一対のロールを通るように切断した縦断面図、図2(c)は、本発明の不織布積層体の第2実施形態を示す縦断面図である。
【図3】図3(a)は、本発明の不織布積層体の製造方法の第3実施態様の実施に用いられる第3の製造装置を示す斜視図、図3(b)は、第3の実施装置について一対のロールを通るように切断した縦断面図、図3(c)は、本発明の不織布積層体の第3実施形態を示す縦断面図である。
【図4】図4(a)は、本発明の不織布積層体の製造方法の第4実施態様の実施に用いられる第4の製造装置を示す斜視図、図4(b)は、第4の実施装置について一対のロールを通るように切断した縦断面図、図4(c)は、本発明の不織布積層体の第4実施形態を示す縦断面図である。
【図5】図5(a)は、本発明の不織布積層体の製造方法の第5実施態様の実施に用いられる第5の製造装置を示す斜視図、図5(b)は、第5の実施装置について一対のロールを通るように切断した縦断面図、図5(c)は、本発明の不織布積層体の第5実施形態を示す縦断面図である。
【図6】図6(a)は、本発明の不織布積層体の製造方法の第6実施態様の実施に用いられる第6の製造装置を示す斜視図、図6(b)は、第6の実施装置について一対のロールを通るように切断した縦断面図、図6(c)は、本発明の不織布積層体の第6実施形態を示す縦断面図である。
【図7】図7(a)〜図7(d)は、それぞれ本発明の不織布積層体の各種折り重ね形態を示す縦断面図〔図1(c)相当図〕である。
【図8】図8(a)〜図8(c)は、それぞれ本発明の不織布積層体の各種折り重ね形態を示す縦断面図〔図1(c)相当図〕である。
【符号の説明】
【0076】
1 不織布積層体
11 第1層
12 第2層
13 第3層
14 第4層
2 不織布
20 不織布原反
3 層状態変化領域
31 第1区域
32 第2区域
33 第3区域
34 第4区域
3A 未加工低密度区域
P 折り重ね手段
R1 エンボスロール
R2 フラットロール
R3 段付ロール
R4 円錐台ロール
R5 周エンボスロール


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布が所定方向に折り重ねられて多層に形成された不織布積層体であって、
不織布は、前記所定方向に沿って層状態が変化した層状態変化領域を有しており、層状態変化領域が所定方向に折り重ねられることによって、不織布積層体の各層の層状態は、不織布積層体の厚み方向に異なっている不織布積層体。
【請求項2】
前記層状態変化領域の層状態の変化は、密度の変化に起因しており、前記不織布積層体の各層の密度は、最上層から最下層に亘って順次増加又は減少している請求項1記載の不織布積層体。
【請求項3】
前記層状態変化領域の層状態の変化は、エンボス面積率の変化に起因しており、前記不織布積層体の各層のエンボス面積率は、最上層から最下層に亘って順次増加又は減少している請求項1記載の不織布積層体。
【請求項4】
前記層状態変化領域の層状態の変化は、厚みの変化に起因しており、前記不織布積層体の各層の厚みは、最上層から最下層に亘って順次増加又は減少している請求項1記載の不織布積層体。
【請求項5】
請求項1記載の不織布積層体の製造方法であって、
不織布原反をその長手方向に繰り出す工程と、繰り出された不織布原反にその幅方向に沿って層状態が変化するように前記層状態変化領域を形成する工程と、不織布原反の層状態変化領域を幅方向に折り重ねる工程とを有する不織布積層体の製造方法。
【請求項6】
前記層状態変化領域を形成する工程は、一対のロール間に前記不織布原反を導入することで行われる請求項5記載の不織布積層体の製造方法。
【請求項7】
表面シート、裏面シート及び両シート間に介在された吸収体を備えた吸収性物品であって、請求項1記載の不織布積層体が表面シート若しくは吸収体又は表面シートと吸収体との間に介在された拡散層に用いられている吸収性物品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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