説明

不要光を除去して三次元座標を測定する三次元座標測定方法及び三次元座標測定装置

【目的】 窓ガラス等の反射体で反射された光による信号を除去することを目的とする。
【構成】 複数の平面光b1・b2を照射手段から照射して、測定点Q上に配置されたスタッフdが備える複数の返光手段e1・e2であるコーナープリズム3から返光された光を受光して、そのときの各平面光が基準方向と成す角度を検出して測定点Qの三次元座標を求める三次元座標測定方法において、前記複数の返光手段e1・e2から返光された光と他の反射面で反射された反射光の移動方向の相違に基いて、反射光による信号を除去することを特徴とする不要光を除去して三次元座標を測定する三次元座標測定方法及び三次元座標測定装置。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は三次元座標測定装置及び三次元座標測定方法に関し、特に、複数の返光手段と複数の平面光を用い、幾何学的に測定点との距離を求めて三次元座標の値を算出するものに関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、測定点の三次元の位置を測定するためには、基準点に測距儀及び測角儀を置き、該測定点の高度角と基準方向との水平角を測角儀で測定し、更に測距儀と反射板を使用して射出光と反射光との位相差から基準点と測定点との距離を求めていた。
【0003】しかしながら近年では、光の位相差を測定して距離を求めるのではなく、複数の平面光を複数の反射手段で反射させ、受光素子が反射光を受光したときの平面光の方向が基準方向と成す角度を測定し、前記角度を変数とする方程式を連立させ、これを解いて測定点の三次元座標の値を求めている。これを簡単に説明するために、図4に測定方法の原理を示す。
【0004】図4(a)を参照して、aは測定装置本体であり、互いに交叉する2つの平面光b1、b2を照射する照射手段cを備えている。前記複数の平面光はスタッフdの備える2つの返光手段e1、e2で返光され、前記測定装置本体aが備える受光手段に入射する。
【0005】前記測定装置本体aは、基準位置Pに配置されており、測定中心Oを原点として、既知点等がある基準方向の水平成分をX軸にとり、これと水平面内で直角な方向をY軸にとり、X−Y平面と垂直な方向をZ軸にとって座標軸を定めている。
【0006】なお、ここでは測定原理を簡単にするために、前記スタッフdは測定点Q上に鉛直に立てられており、前記2つの返光手段e1、e2は前記スタッフdの該鉛直線上に配置されているものとする。又、座標原点Oは、前記互いに交叉する2つの平面光b1、b2の張る平面内にあるものとする。
【0007】前記照射手段cが基準方向であるX軸方向を向いているとき、即ち前記照射手段cと基準方向との成す角度がゼロであるときの、前記2つの平面光b1、b2の張る平面の方程式をそれぞれ、 k・x+m・y+n・z = 0 …… (1) p・x+q・y+r・z = 0 …… (2)とする。なお、前記2つの平面光は互いに交叉するので、(1)式で表される平面の法線ベクトル(k,m,n)と(2)式で表される平面の法線ベクトル(p,q,r)とは相異なるものである。
【0008】前記2つの平面光b1、b2は、測定装置本体aの備える回転手段で図4(a)上では時計回りと反対方向に、Z軸を一の回転軸として回転移動させられる。
【0009】前記平面光b1が基準方向から角度θ1回転移動して前記返光手段e1に入射したときの該平面光b1の張る平面の方程式を、 k’・x+m’・y+n’・z = 0 …… (4)で表すと、該平面の法線ベクトル(k’,m’,n’)は、(1)式で表される元の平面の法線ベクトル(k,m,n)と次の関係がある。
【0010】
【数1】


【0011】又、前記平面光b2が基準方向から角度θ2回転移動して前記返光手段e1に入射したときの該平面光b2の張る平面の方程式を、 p’・x+q’・y+r’・z = 0 …… (7)で表すと、該平面の法線ベクトル(p’,q’,r’)は、(2)式で表される元の平面の法線ベクトル(p,q,r)と次の関係がある。
【0012】
【数2】


【0013】ところで、前記返光手段e1は、(4)式の平面と(7)式の平面とのいずれの平面にも含まれるので、両平面の交線である直線s上に位置することになる。又、2つの平面光b1、b2は原点を含むものとしたので、該直線sは原点Oを通り、その方程式は x/A = y/B = z/C ……(11)で表すことができる。そして、該直線sの方向余弦(A,B,C)と、前記(4)式と(7)式の平面の法線ベクトル(k’,m’,n’)、(p’,q’,r’)とには、 k’・A + m’・B +n’・C = 0 ……(12) p’・A + q’・B +r’・C = 0 ……(13)の関係があるので、前記2つの平面光b1、b2が返光手段e1に入射したときに基準方向と成す角度θ1、θ2を測定し、元の2つの平面の方程式(1)、(2)を順次(5)式、(8)式、(12)式、(13)式を用いて変形すれば、(11)式で表した直線sの方向余弦の値を得ることができる。
【0014】次に、前記平面光b1が基準方向から角度φ1回転移動して前記返光手段e2に入射したときの該平面光b1の張る平面の方程式を k”・x+m”・y+n”・z = 0 ……(21)で表すと、該平面の法線ベクトル(k”,m”,n”)は、(1)式で表した元の平面の法線ベクトル(k,m,n)と次の関係がある。
【0015】
【数3】


【0016】又、前記平面光b2が基準方向から角度φ2回転移動して前記返光手段e2に入射したときの該平面光b2の張る平面の方程式を、 p”・x+q”・y+r”・z = 0 ……(23)で表すと、該平面の法線ベクトル(p”,q”,r”)は、(2)式で表した元の平面の法線ベクトル(p,q,r)と次の関係がある。
【0017】
【数4】


【0018】従って、(11)式を導いたのと同様に、該返光手段e2は、(21)式の平面と(23)式の平面の交線である次式で表せる直線t上に位置する。
【0019】
x/D = y/E = z/F ……(25)又、該直線tの方向余弦(C,E,F)と、(21)式と(22)式の平面の法線ベクトル(k”,m”,n”)、(p”,q”,r”)とは、 k”・D + m”・E +n”・F = 0 ……(26) p”・D + q”・E +r”・F = 0 ……(27)
の関係がある。従って、(11)式で表した直線sの法線ベクトルの各要素を得るのと同様に、元の2つの平面の方程式(1)、(2)を、順次(22)式、(24)式、(26)式、(27)式を用いて変形すれば、(25)式で表した直線tの方向余弦の値を得ることができる。
【0020】なお、ここでは返光手段e1と返光手段e2とを結ぶ線分がX−Y平面に垂直であるので、直線sと直線tの方向余弦のx軸要素の間で、 D = v・A ……(28)なるスカラー量vを導入すれば、y軸要素とz軸要素との間には次の関係が成立する。
【0021】
E = v・B 、 F ≠ v・C ……(29)
なお、2つの平面光が必ず一定の順序でスタッフに入射する様に、前記平面光b1と平面光b2をV字形に射出すれば、スタッフ上の上方に位置する返光手段から順に返光されるので、入射光がどの方程式に属するものであるかを特定することができる。そして、そのときの各平面光が基準方向と成す角度θ1、θ2、φ1とφ2を測定すれば、直線sの方程式(11)式と直線tの方程式(25)式を得ることができる。
【0022】前記2つの直線s、tと前記2つの返光手段e1、e2の位置関係を図4(b)に示す。図4(b)を参照して、Q’は前記測定点QからX−Y平面に降ろした垂線の足であり、前記返光手段e1とe2とは予め定められた長さh1を隔てて両方ともこの垂線上に位置している。
【0023】前記原点Oと前記垂線の足Q’とを結ぶ線分をu、その長さをLとすると、長さL及びh1と、直線sと線分uの成す角度α及び直線tと線分uの成す角度βとの間には次の関係が成り立つ。
【0024】
L・tan(α) − L・tan(β) = h1 ……(31)
従って、線分uの長さLは、 L = h1/(tan(α)−tan(β)) ……(32)と表すことができる。ここで、ベクトル(x,y,z)の大きさを、‖(x,y,z)‖で表すものとすると、(32)式のtan(α)とtan(β)は、それぞれ、 tan(α) = ‖(A,B,C)‖/‖(A,B,0 )‖ ……(33) tan(β) = ‖(D,E,F)‖/‖(E,F,0 )‖ ……(34)で表せるので、前記2つの直線s、tの方向余弦、(11)式と(25)式から、角度αと角度βを測定しなくてもその値を求めることができ、(32)、(33)、(34)式から、線分uの長さLを得ることができる。
【0025】一方、測定点Qが基準方向であるX軸と成す水平角、即ち、前記線分uがX軸と成す角度をγとおくと、その正接は該線分uの方向余弦(A,B, 0)より直ちに、 tan(γ) = A/B ……(35)として求めることができる。
【0026】又、スタッフdの下端部に位置する測定点Qとスタッフd上にある返光手段e2との長さをh2が予め定められているものとすると、測定点Qの高度角ζの正接は、 tan(ζ) = (L・tan(β)−h2)/L ……(41)により直ちに求めるられる。
【0027】以上により、測定点Qの三次元座標(x,y,z)は、 x = L・cos(γ) ……(45) y = L・sin(γ) ……(46) z = L・tan(ζ) ……(47)で求めることができる。
【0028】以上概説した様に、2つの平面光b1とb2が2つの返光手段により返光されたときの角度θ1、θ2、φ1、及びφ2を測定すれば、位相差測定等により直接測定点との水平距離を測定したり、測角儀等により直接水平角γや高度角ζを測定しなくても、測定点までの水平距離や水平角及び高度角の正接を算出することができ、これらの値により測定点Qの三次元座標の値を求めることができる。
【0029】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記測定点Qの周囲に窓ガラス等の光学的な反射面を有する建造物が存在する場合があり、前記測定装置本体から照射された各平面光が返光手段で返光された入射光だけではなく、窓ガラス等により反射された発生した入射光をも受光してしまい、かかる場合には三次元座標測定を行うことができなくなってしまう。
【0030】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、互いに交叉する複数の平面光を照射する照射手段と入射光を受光して信号を出力する受光手段とを備えた測定装置本体と、複数の返光手段を備えたスタッフとから成る三次元座標測定システムを用いる三次元座標測定方法であって、測定点上に前記スタッフを配置し、前記複数の平面光を一の回転軸を中心に回転移動させて前記スタッフの備える複数の返光手段に照射し、各々の返光手段が返光した光を前記受光手段により受光し、前記受光手段が受光したときの各平面の回転角度と各々の返光手段がスタッフ上の配置された位置とにより測定点の三次元座標を求める三次元座標測定方法において、前記複数の返光手段にコーナープリズムを用い、前記複数の平面の回転移動に伴い、コーナープリズムにより返光された光が移動する方向と、コーナープリズム以外の反射面により反射された光が移動する方向とを検出して両者を判別し、コーナープリズムにより返光された光が受光手段に入射したときの前記回転角度に基いて、測定点の三次元座標の値を算出することを特徴とし、請求項2記載の発明は、請求項1記載の三次元座標測定法方において前記受光手段は第1受光部と第2受光部とを有し、それぞれが前記一の回転軸を中心に周設して成り、前記第1受光部と前記第2受光部が光を受光した順番を検出して、受光したものが前記コーナープリズムにより返光された入射光か、コーナープリズム以外の面により反射された反射光かを検出することを特徴とし、請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の三次元座標測定方法に用いられる三次元座標測定装置であって、前記受光手段は、前記入射光を受光して第1検出信号を出力する第1受光部と、前記反射光を受光して第2受光信号を出力する第2受光部から成り、前記第1受光部と第2受光部は前記一の回転軸を中心にして前記回転手段の回転方向と同じ方向に配置され、前記測定装置本体は、前記第1受光信号から前記第2受光信号を差し引いた差信号を出力する減算手段と、前記第1受光信号と前記第2受光信号を加えた和信号を出力する加算手段と、第1閾値を基準として、該第1閾値よりも大きい場合をハイ状態とし、小さい場合をロー状態として前記差信号を2値化した2値化差信号を出力する差信号比較器と、第1閾値よりも大きい第2閾値を基準として、該第2閾値よりも大きい場合をハイ状態とし、小さい場合をロー状態として前記和信号を2値化した2値化和信号を出力する和信号比較器と、前記2値化差信号と前記2値化和信号とを受信して、前記2値化和信号がハイ状態であって前記2値化差信号がロー状態からハイ状態に変わったときにパルス信号を出力するパルス回路と、前記パルス信号を受信したときの前記回転手段の回転角度を記憶する角度記憶手段を備え前記角度記憶手段に記憶された角度に基いて測定点の三次元座標を算出する演算装置を備えたことを特徴とする。
【0031】
【作用】スタッフの備える各返光手段をコーナープリズムとしたので、測定装置本体が照射し、回転移動させる平面光の移動方向と、該平面光がコーナープリズムで返光されて成る入射光との移動方向とは互いに逆方向となる。一方、平面光が窓ガラス等の反射面で反射された場合には、該反射光の移動方向と平面光の移動方向とは同じ方向になるので、受光手段が受光した光の移動方向を測定装置本体が照射した平面光の移動方向と比較することでいずれの光を受光したかを区別することができる。これにより、測定に不要な反射光を受光して生じた信号を除去することができる。
【0032】又、特に受光手段に第1受光部と第2受光部とを設けこれを平面光の回転する一の回転軸を中心として回転方向と同じ方向に配置しておけば、コーナープリズムにより反射された光は先ず第2受光部に入射し、次いで第1受光部に入射するが、窓ガラス等の反射面により反射された光は、先ず第1受光部に入射し、次いで第2受光部に入射する。従って、第1受光部が入射光を受光して出力した第1受光信号から第2受光部が入射光を受光して出力した第2受光信号を減算した差信号は、コーナープリズムから返光された光による場合には、41のように凹−凸になり、窓ガラス等の反射面が反射した光による場合には41’のように凸−凹になる。
【0033】一方、第1受光信号と第2受光信号とを加算した和信号はコーナープリズムで返光された光が入射した場合と、反射面で反射された光が入射した場合と同じ波形になるが、前記差信号と和信号とを2値化して2値化差信号と2値化和信号にする際に、差信号を2値化する閾値よりも和信号を2値化する閾値を大きくしておけば、2値化和信号と2値化差信号の立ち上がる順序は、コーナープリズムが返光した光による場合には2値化和信号の方が早く、反射面で反射された光による場合には2値化差信号の方が早くなる。
【0034】そこで、2値化和信号が先にハイ状態になっており、2値化差信号がロー状態からハイ状態に変わったときにのみパルスを出力するパルス回路を用いれば、コーナープリズムが返光した光が入射したときにのみパルス出力が得られるので、これにより、窓ガラス等の反射面で反射された光により発生する信号を除去することができる。
【0035】
【実施例】図1は本三次元座標測定方法の一手順を示すフローチャートであり、処理開始後、照射手段側ルーチン1と受光手段側ルーチン2とで並行して処理を進める。
【0036】照射手段側ルーチン1はステップS1で回転手段や照射手段への電力供給を開始する等の初期化を行いS2に処理を移行させる。
【0037】S2は回転照射ステップであり、測定装置本体の備える照射手段から、互いに交叉する複数の平面光を該測定装置本体の備える回転手段によって一の回転軸線を中心に回転させつつ測定装置外部に照射し、該回転照射ステップS2は、前記平面光を360°回転させたらステップS3に処理を移行させる。
【0038】一方、測定点上にはスタッフが配置されており、該スタッフ上の予め定められた位置には複数の返光手段3が配置されている。そして、該スタッフに前記複数の平面光が照射されると前記複数の返光手段3が平面光を返光して測定装置本体の備える受光手段に入射させる。
【0039】S3は回転回数が規定回数に達したか否かを判断する判断ステップであり、回転回数が規定回数未満であれば回転照射ステップS2に処理を戻し、規定回数に達していた場合には処理を終了させる。
【0040】前記受光手段側ルーチン2は前記照射手段側ルーチン1の処理の開始と同時に初期化ステップT1から処理を開始する。該初期化ステップT1では、記憶装置内の諸変数の初期化の他、前記平面光の回転移動する方向を回転方向変数Rに記憶させておき、処理をT2に移行させる。
【0041】T2は受光ステップであり、測定装置本体の備える受光手段が、前記複数の返光手段3が返光した光を受光するまで待機している。そして、何らかの入射光を受光した場合には、平面光が基準方向から回転移動した角度を一旦記憶バッファM内に記憶させ、処理をT3に移行させる。
【0042】T3は入射光移動方向検出ステップであり、入射光の移動方向を検出し、入射光移動方向変数Gに検出した方向を記憶させてT4に処理を移行させる。
【0043】T4は入射光判別ステップである。前記入射光には平面光が前記コーナープリズム3で返光されたものと、窓ガラス等の反射面で反射されたものとがあるので、回転方向変数Rに記憶された平面光が回転移動する方向と、前記入射光移動方向変数Gに記憶された入射光の移動方向を比較して、記憶バッファM内に記憶された角度を角度変数に記憶させるか否かを判断する。
【0044】ここで、前記回転照射ステップS2で照射された平面光が、窓ガラス等の反射面で反射された場合に受光手段に入射する光の移動方向と、返光手段であるコーナープリズムで返光された場合に受光手段に入射する光の移動方向との相違を図2に示す。
【0045】図2を参照して、(a)は測定装置本体の備える照射手段から照射された平面光が返光手段であるコーナープリズム3で返光された場合を示す図である。コーナープリズム3には平面光11aが入射して11bで示す光が返光されており、前記平面光11aは矢印16で示す図面右方向の12aの位置に移動するものとすると、前記コーナープリズム3で返光される光は11bの位置から矢印17で示す図面左方向の12bの位置に移動する。この様に、コーナープリズム3に入射する光は図面の右方向に移動するが、コーナープリズム3で返光される光は図面の左方向に移動する等、両者の移動方向は相異なるものとなる。
【0046】これに対し、窓ガラス等の反射面で平面光が反射される場合を図2(b)で示す。平面光13aが窓ガラス等の反射体5に入射して13bで示す光が反射されており、前記平面光13aは矢印18で示す図面右方向の14aの位置に移動するものとすると、前記反射体5で反射された光は矢印19で示す図面右方向の14bの位置に移動する。この様に反射体5に入射する光の移動方向と該反射体5で反射された光の移動方向とは等しくなる。
【0047】この様に、前記回転方向変数Rには平面光が回転移動する方向が記憶されており、入射光の移動方向は入射光移動方向変数Gに記憶されているので、両変数に記憶された内容を比較すれば、該入射光が窓ガラス等の反射面で反射されたものかコーナープリズムで返光されたものであるかを検出することができる。そして、入射光がコーナープリズムで返光されたものである場合には、処理はT5に移行して、記憶バッファM内に記憶された角度を記憶変数内に格納する。一方、入射光がコーナープリズム等で反射されたものであった場合には、処理をT2に戻して再度入射光を受光するまで待機する。
【0048】ところで、ステップT2からステップT5の行う働きを電気回路で実現できれば処理速度が高速なので、測定時間の短縮等の面から好ましい。その様な電気回路として、コーナープリズムから返光された光を受光した場合にのみパルス出力を行って平面光が基準方向から回転移動した角度を記憶させるトリガ回路の一例を図3R>3(a)に示す。
【0049】図3(a)を参照して、21は測定装置本体の備える受光手段であり、入射光を受光して第1検出信号を出力する第1受光部22aと、第2検出信号を出力する第2受光部22bから成っており、前記第1受光部22aと第2受光部22bは一の回転軸を中心にして図示するように配置され、照射手段が照射する複数の平面光と共に方向23へ回転移動する。
【0050】前記第1受光部の出力する前記第1検出信号は増幅器24aと検波器25aを経て加算手段26と減算手段27に入力される。一方、前記第2検出信号は増幅器24bと検波器25bを経て前記加算手段26と前記減算手段27とに入力される。
【0051】前記加算手段26は、前記増幅器24aと前記検波器25aを経て入力された前記第1検出信号と、前記増幅器24bと前記検波器25bを経て入力された前記第2検出信号とを加算した和信号を和信号比較器28に出力し、前記減算手段27は、前記増幅器24aと前記検波器25aを経て入力された前記第1検出信号から、前記増幅器24bと前記検波器25bを経て入力された第2検出信号を差し引いた差信号を差信号比較器29に出力する。
【0052】図3(b)はコーナープリズムで返光された光が前記受光手段21に入射した場合に前記差信号と前記和信号の波形を示した図である。コーナープリズムで返光された光は照射手段が照射する複数の平面光が回転移動する方向23とは逆向き方向31の方向に移動するので、前記第1受光部22aよりも第2受光部22bが先に入射光を受光する。従って、時間を横軸に、信号強度を縦軸にとれば、前記差信号は曲線41で示す特性となる。そして、差信号比較器29は、第1閾値42を基準として、該第1閾値よりも大きい場合をハイ状態とし、小さい場合をロー状態として前記曲線41の特性を有する差信号を2値化して、図3(c)の折線43で示す特性の2値化差信号をパルス回路30に出力する。
【0053】一方、加算手段26が出力する加算信号は、図3(b)の曲線45で示す特性となる。そして、和信号比較器28は、前記第1閾値42よりも大きい第2閾値46を基準として、該第2閾値46よりも大きい場合をハイ状態とし、小さい場合をロー状態として、前記曲線45の特性を有する和信号を2値化して、図3(c)の折線47で示す特性の2値化和信号をパルス回路30に出力する。
【0054】そして、パルス回路30は入力された前記2値化和信号がハイ状態であり、入力された前記2値化差信号がロー状態からハイ状態に変わったときにパルス信号を演算装置32に出力し、該演算装置32は、該パルス入力があったときの平面光の回転角度を記憶手段33に記憶させれば、受光手段がコーナープリズムで返光された光を受光したときの平面光が基準方向と成す角度を検出することができる。
【0055】一方、測定装置本体の備える照射手段が照射した平面光が窓ガラス等の反射面で反射された場合には、入射光の移動方向は平面光が回転移動する方向と同じになるので、第1受光部22aが第2受光部22bよりも先に入射光を受光する。この場合には、前記減算手段27で作られる差信号は図3(d)の曲線41’で示す特性となり、前記差信号比較器29が、第1閾値42を基準として、該第1閾値よりも大きい場合をハイ状態とし、小さい場合をロー状態として、前記曲線41’で示す特性の差信号を2値化するので、図3(e)の折線43’で示す特性の2値化差信号がパルス回路30に出力される。又、前記加算手段26は入力された信号を加算し曲線45’で示す特性の和信号を和信号比較器28に出力し、該和信号比較器28は、前記第1閾値42よりも大きい第2閾値46を基準として、該第2閾値46よりも大きい場合をハイ状態とし、小さい場合をロー状態として前記曲線45’の特性の和信号を2値化して、図3R>3(e)の折線47’で示す特性の2値化和信号を前記パルス回路30に出力する。
【0056】そして、この場合には、2値化差信号43’がロー状態からハイ状態に変わるときは2値化和信号47’はロー状態であり、パルス回路30はパルスを出力しないので、前記演算手段32が平面光の回転角度を記憶手段33に記憶させることはない。
【0057】この場合、第1および第2受光部の配置順や、増巾器、検波器、減算手段、信号比較器などの極性により、図3(b)、(d)に示す波形は変わるが、どちらの場合でも選択的に動作させられることは言うまでもない。
【0058】この様に、照射手段の照射する平面光が回転移動する方向と、受光手段が受光した光の移動方向とを比較して、コーナープリズムから返光された光か否かを検出して平面光が基準方向から回転移動した角度を記憶しても、コーナープリズムから返光された光を受光した場合に動作するトリガ回路の働きにより、コーナープリズムから返光された光を検出して平面光が基準方向から回転移動した角度を記憶しても良い。
【0059】そして、前記平面光の回転移動した角度を記憶した後は処理はT6に移行する。
【0060】T6は角度の測定が終了したか否かを判断する。前記角度変数の全てに角度が記憶されていなければ、測定は終了していないので処理をT2に戻し、前記角度変数の全てに角度が記憶されていれば処理をT7に移行させる。
【0061】T7は三次元座標算出ステップであり、前記複数の返光手段のスタッフ上の位置と前記角度変数に記憶された移動手段の回転角度とにより測定点の三次元座標の値を算出する。
【0062】ところで、測定原理を簡単に説明するため、図4(a)では返光手段を2つ用い、該2つの返光手段を測定点上に鉛直に配置したが、3つの返光手段をスタッフに設け、該3つの返光手段をスタッフ上に一の平面を張る様に配置すれば、スタッフを測定点上に鉛直に立てる必要はなくなるが、この場合でも本三次元座標測定法方及び三次元座標測定装置を用いることができることは言うまでもない。
【0063】なお、該ステップT7では、三次元座標の計算結果を表示装置33で表示して、処理をT8に移行させる。
【0064】T8では、予め定められた回数の測定が行われたか否かを判断し、行われていなければ処理をT2に戻し、行われた場合には、処理を終了させる。
【0065】
【発明の効果】コーナープリズムで返光された光か、反射面で反射された光かを検出することができるので、窓ガラス等の反射体が多数存在する市街地においても誤りなく三次元座標測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本三次元座標測定方法の一実施例の処理手順
【図2】 コーナープリズムで返光された光と反射面で反射された光の移動方向の相違を示す図
【図3】 (a) 本三次元座標測定装置に用いられるトリガ回路の一例
(b)〜(e)前記トリガ回路中の各ブロックの作る信号波形を示す図
【図4】 三次元座標測定の原理を示す図
【符号の説明】
a 測定装置本体 b1・b2 平面光 c 照射手段
d スタッフ e1・e2 返光手段
Q 測定点
3 コーナープリズム 5 反射体
21 受光手段 22a 第1受光部 22b 第2受光部
26 加算手段 27 減算手段
28 和信号比較器 29 差信号比較器
30 パルス回路 33 角度記憶手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 互いに交叉する複数の平面光を照射する照射手段と入射光を受光して信号を出力する複数の受光手段とを備えた測定装置本体と、複数の返光手段を備えたスタッフとから成る三次元座標測定システムを用いる三次元座標測定方法であって、測定点上に前記スタッフを配置し、前記複数の平面光を一の回転軸を中心に回転移動させて前記スタッフの備える複数の返光手段に照射し、各々の返光手段が返光した光を前記受光手段により受光し、前記受光手段が受光したときの各平面光の回転角度と各々の返光手段がスタッフ上の配置された位置とにより測定点の三次元座標を求める三次元座標測定方法において、前記複数の返光手段にコーナープリズムを用い、前記複数の平面光の回転移動に伴い、コーナープリズムにより返光された光が移動する方向と、コーナープリズム以外の反射面により反射された光が移動する方向とを検出して両者を判別し、コーナープリズムにより返光された光が受光手段に入射したときの前記回転角度に基いて測定点の三次元座標の値を算出する、不要光を除去して三次元座標を測定する三次元座標測定方法。
【請求項2】 前記複数の受光手段はそれぞれ第1受光部と第2受光部とが前記一の回転軸を中心にして周設して成り、前記第1受光部と前記第2受光部が光を受光した順番を検出して、受光したものが前記コーナープリズムにより返光された入射光か、コーナープリズム以外の面により反射された反射光かを検出することを特徴とする請求項1記載の三次元座標測定方法。
【請求項3】 前記受光手段は、前記入射光を受光して第1検出信号を出力する第1受光部と、前記反射光を受光して第2受光信号を出力する第2受光部から成り、前記第1受光部と第2受光部は前記一の回転軸を中心にして前記平面光の回転方向と同じ方向に配置され、前記測定装置本体は、前記第1受光信号から前記第2受光信号を差し引いた差信号を出力する減算手段と、前記第1受光信号と前記第2受光信号を加えた和信号を出力する加算手段と、第1閾値を基準として、該第1閾値よりも大きい場合をハイ状態とし、小さい場合をロー状態として前記差信号を2値化した2値化差信号を出力する差信号比較器と、第1閾値よりも大きい第2閾値を基準として、該第2閾値よりも大きい場合をハイ状態とし、小さい場合をロー状態として前記和信号を2値化した2値化和信号を出力する和信号比較器と、前記2値化差信号と前記2値化和信号とを受信して、前記2値化和信号がハイ状態であって前記2値化差信号がロー状態からハイ状態に変わったときにパルス信号を出力するパルス回路と、前記パルス信号を受信したときの前記回転手段の回転角度を記憶する角度記憶手段を備え前記角度記憶手段に記憶された角度に基いて測定点の三次元座標を算出する演算装置を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の三次元座標測定方法に用いられる、不要光を除去して三次元座標を測定する三次元座標測定装置。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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