説明

両親媒性物質による担体上への膜タンパク質の固定

本発明は、担体上への膜タンパク質の固定の分野に関する。本発明は、担体及びその表面に付着した少なくとも1つの膜タンパク質を含む製品であって、該膜タンパク質が、該膜タンパク質と複合体化された両親媒性分子を用いて該担体に付着していることを特徴とする、製品に関する。また本発明は、そのような製品の製造方法、並びに、診断、薬物設計、及びバイオテクノロジーの分野における種々の適用にも関する。更に本発明は、官能性両親媒性分子と共に、担体及び両親媒性分子を含む本発明の製品を製造するためのキットであって、該両親媒性分子と該担体とが、疎水結合、イオン結合、特異的結合又は共有結合を通して相互作用するものにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担体上への膜タンパク質の固定の分野に関する。本発明は、担体及びその表面に付着した少なくとも1つの膜タンパク質を含む製品であって、該膜タンパク質が、該膜タンパク質と複合体化された両親媒性分子を用いて該担体に付着していることを特徴とするものに関する。また本発明は、そのような製品の製造方法、並びに、診断、薬物設計、及びバイオテクノロジーの分野における種々の適用にも関する。更に本発明は、官能性両親媒性分子と共に、担体及び両親媒性分子を含む本発明の製品を製造するためのキットであって、該両親媒性分子と該担体とが、疎水結合、イオン結合、特異的結合又は共有結合を通して相互作用するものにも関する。
【背景技術】
【0002】
真核生物ゲノムのコード配列の約30%は、膜内在性タンパク質である。それらの膜タンパク質の機能、特にそれら膜タンパク質のうち細胞の形質膜中に挿入され外部環境に露出しているタンパク質の機能は、大変重要であり、生物医学及び薬理学の分野における特権的な標的である。事実、現在商業的に利用可能な治療薬の少なくとも60%が、それらを標的にしていると考えられている。膜タンパク質は、とりわけ結合部位、付着点又は特権的な標的として、複数の相互作用において役割を果たし、それらは、神経伝達物質又はホルモンなどの小さいリガンドの認識から、組織中への細胞の結合までに渡る。膜タンパク質は、更に、ウイルス、病原菌若しくは寄生体、又は免疫防御若しくは自己免疫疾患においては抗体の、最初の標的となることが最も多い。また膜タンパク質は、膜/DNA若しくは膜/細胞骨格の結合、細胞分裂の調節若しくは調節解除(癌)にも関与しており、Gタンパク質又はキネシンなどの高分子エフェクターに認識される。
【0003】
生物医学と薬理学の分野において重要であることから、膜タンパク質及びそれらのリガンドの研究手段の提供が、絶対不可欠である。特に、興味の対象となる膜タンパク質への、リガンド結合を検出できることが重要である。事実、リガンド結合を検出するための方法には、非常に価値のある適用がいくつかある:
−膜タンパク質が病原体の膜に由来する場合においては、そのような方法は、対象から入手した生体サンプルにおいて、この膜タンパク質に対して産生された抗体の存否を検出することにより、対象の病原体への暴露の存否を検出するのに、有用であり得る;
−ヒト若しくは動物の膜受容体で、疾患の原因に関わっていることが示されており、従って、該疾患の処置において治療の標的となる場合は、そのような方法は、この膜受容体のアゴニスト化合物又はアンタゴニスト化合物を同定するための化合物ライブラリーのスクリーニングに、有用であり得る。
【0004】
膜タンパク質に結合するリガンドを検出するための方法を実行するには、この膜タンパク質が担体上に固定されていることが、非常に有用である。可溶性タンパク質を担体上にどのように付着又は固定させるかは、すでに長らく公知である。しかし膜タンパク質においては問題がより複雑である。事実、膜タンパク質は、in situにて膜と相互作用する高度に疎水性の表面が必然的に露出されるため、それらの取り扱いが難しく、とりわけ膜からそれらを単離して可溶化するため一般に多量の界面活性剤を使用することが必要とされる点において難しい。細胞質タンパク質と比較すると、膜タンパク質の取り扱い、従ってそれらの担体上への固定は、それらの疎水性ゆえ、更に奮闘を要する。
【0005】
種々の固定技術が、担体の表面に膜タンパク質を置くために開発されてきた。例えば、タンパク質を遺伝学的又は化学的に改変することにより、タンパク質ポリペプチド鎖の末端の1つに官能基を挿入して(例えば、Ni2+又はCo2+イオンを配位したNTA基がグラフトされた担体と相互作用する末端His−タグを、タンパク質上に導入することによって)、官能性担体表面へのタンパク質の付着を促進させることができる(1.2)。
【0006】
しかしながらこのような技術は、興味の対象となるタンパク質を遺伝学的又は化学的に改変できる可能性に依存するため、少ない情報しか入手できない膜タンパク質について実行するのは難しく、或いは不可能である。その上遺伝学的又は化学的にタンパク質を改変するには、多くの工程を踏むことになり、厄介で退屈であり得る。最後に、興味の対象となる各々のタンパク質ごとに開発を繰り返さねばならず、従ってこの技術は、日常的に使用することができず、多数の膜タンパク質に同時に使用することもできない。
【0007】
別の技術では、タンパク質を本来の細胞膜に保持しつつ、又は人工膜(例えば小胞)の中に挿入することにより、疎水性鎖をグラフトした担体上へのタンパク質の付着を、該鎖と該膜との相互作用により促すことが可能である(3−5)。更なる技術は、タンパク質の膜外ドメインの荷電特性又はタンパク質が挿入された膜の脂質の親水性ヘッドを利用して、タンパク質の荷電担体との単純な静電相互作用を促進する技術を含む。
【0008】
しかしこれらの両技術においては、タンパク質を膜から抽出しており、一般に、界面活性剤の存在下で作業することが絶対に必要である。それによって、溶液特性が変更されること(例えば、溶液の表面張力を減少させることで、チップの表面におけるタンパク質のスポッティングを不正確にし得る)、及び、界面活性剤の存在が多くの膜タンパク質(特に膜複合体)の安定性に影響することの両方により、固定化法はかなり複雑となる。或いは、天然膜若しくは人工膜(脂質小胞)に挿入されたタンパク質が用いられるため、技術が複雑であり、感度の問題が起こる:興味の対象となるタンパク質の密度が低いと実験のシグナル/ノイズ比が減少し得、また天然膜の場合は、望ましくない成分(他のタンパク質、多種多様の天然脂質、種々の補因子)の存在により、実験のシグナルと、不利な副反応及びバックグラウンドノイズとの間に、干渉が起こり得る。
【0009】
膜タンパク質を担体上へ固定(又は付着)する既存の方法が満足のいくものではないことは、結果として明らかである。従って上記の欠点を克服した、即ち以下の特性を有する担体上へ膜タンパク質を付着させる方法が、必要とされている:
−完全に界面活性剤フリーで水溶性且つ生化学的に安定した形に膜タンパク質を維持し、これにより当該方法をより簡易化し、膜タンパク質の不安定化を防ぐ方法、
−タンパク質毎に実験的方法を特に調整することなく且つタンパク質のいかなる改変の必要もなく、任意の膜タンパク質に適用可能で、従って完全に公知ではないタンパク質、又はタンパク質の生化学及び遺伝的な特徴が制御されていない場合などにも使用可能な、普遍的方法、並びに
−膜タンパク質を担体表面に高密度で付着させることにより、実験結果の収率及び感度を向上させ、もってデータ解釈を向上させる方法。
【0010】
アンフィポル(amphipol)は、溶解度に優れ、多くの疎水性側鎖を有し、膜タンパク質の疎水性の膜貫通表面と複数の点で結合可能とさせる分子次元及び柔軟性を有する、両親媒性ポリマーである(図1、参考文献6、7)。複数点付着の原理は、非常に遅い脱着カイネティクスを保証し、それにより膜タンパク質とアンフィポルとの結合を本質的に不可逆的なものとすることである。
【0011】
更に、このアプローチは普遍的であることが示されている。即ち、これまで検査を行った全ての膜タンパク質、即ち20以上の膜タンパク質を、溶液中にアンフィポルとの複合体の形で維持できることを意味する(7、8)。更に、得られた捕獲タンパク質はそれらの天然構造を維持しており、遊離型の表面活性物質が存在しないときでも、溶液中で可溶性のままで(7−9)、それらの安定性は、界面活性剤溶液中での維持と比べ、悪くても同程度であり大抵は改善される(7、8、10)。最後に、膜タンパク質の混合物が適切な条件下でアンフィポルによって捕獲された場合、混合物の中の全ての膜タンパク質が別々に捕獲される(8)。
【0012】
従ってアンフィポルは、任意の膜タンパク質をその構造、機能、及び/又は由来の如何に関係なく溶液中で安定化させるツールである。しかしこれまでは、アンフィポルは、膜タンパク質の可溶化及び溶液中での操作、又は一時的な安定化のために使用されるのみで、膜タンパク質の担体への付着を媒介する中間介在物として更に使用し得る可能性についての研究は、開示されていなかった。逆にこれまでは、アンフィポルは、脂質膜の再生実験において、水性溶媒中で天然では不溶な膜タンパク質を一時的に安定化させるため、そのような膜タンパク質から、溶液中で自由に移動可能な水溶性複合体を与えるのに使用されただけであり(11)、或いは、通常のビオチン/アビジン相互作用で固体担体上に付着したビオチン化膜タンパク質を安定化させるために使用され、ここでアンフィポルは、固体担体への膜タンパク質の結合に全く関与せず、ただタンパク質を安定させるのに使用されるだけである(8)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の説明
発明者らは、膜タンパク質と複合体化したアンフィポルを、この膜タンパク質を担体上へと付着させる中間介在物として更に使用できることを見出した。ここで担体への結合は、アンフィポルを通して行われる。
【発明の効果】
【0014】
担体に結合させるための中間介在物としてのアンフィポルの使用は、公知技術と比較して多くの利点を有する。第一の大きな利点は、どのような膜タンパク質に対しても、その由来又はそのタンパク質の情報が入手可能であるかに関わらず、方法にいかなる変更もせず当該方法が使用可能なことである。特に当該方法は、アイデンティティ未知の膜タンパク質にも適用できる。更には、当該方法は、特に担体に膜タンパク質/アンフィポル複合体を付着させる工程において、界面活性剤を全く使用する必要がないことから、容易に行うことができる。また当該方法により、膜タンパク質が担体表面で高密度に付着するため、固定化膜タンパク質へのリガンド結合アッセイにて、より高い収率となり、また何よりも、より高い感度が達成される。
【0015】
最後に、膜タンパク質と複合体化されたアンフィポルが存在することにより、生化学的安定性が保証され、従って、固定化膜タンパク質へのリガンド結合アッセイの結果もまたより高い精度及び再現性で得られる。
【0016】
従って、本発明者らによって開発された該方法によれば、担体及びその表面に付着した1つ以上の既知又は未知の任意の種類の膜タンパク質を含む製品を、高密度で生産することが容易であり、ここで膜タンパク質は水性溶媒中で更に生化学的に安定化されるため、得られた製品を使用して、固定化膜タンパク質へのリガンド結合アッセイの実験が大変行い易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】アンフィポル及び膜タンパク質/アンフィポル複合体。A、アンフィポル(APol)の化学構造。アンフィポルA8−35の分子は、平均約10kDaの分子量を有し、疎水性及びタンパク質表面への非常に高い親和性に寄与する、約18のオクチル鎖を含む。B、500kDaの膜タンパク質複合体であるシトクロムbcを、アンフィポルと結合させて形成された複合体のモデル化。タンパク質に結合したアンフィポルベルトは、約8個のA8−35分子を含む(8)。
【図2】開発した方法の原理。工程a.タンパク質(淡灰色の長方形)を、界面活性剤で可溶化する。工程b.タンパク質をビオチン化アンフィポル(BApol)で捕獲し、界面活性剤を除去する。工程c.タンパク質/BAPol複合体を、アビジンがグラフトされた固体担体と、ビオチン/アビジンカップリングにより相互作用させる。工程d.リガンド(濃灰色の菱形)が標的タンパク質を認識する。
【図3】ユニバーサルアンフィポル(UApol)及びビオチン化アンフィポル(BAPol)の化学構造。ビオチン化反応の詳細。
【図4】表面プラズモン共鳴(SPR)によって追跡した、ビオチン化アンフィポル(BAPol)及び別の非ビオチン化アンフィポル(HAPol)の、アビジン保有チップ上への吸着の比較。NaCl−HEPES緩衝液(150mM NaCl、10mM HEPES、pH=7.4)中にて10μMに希釈した50μl HAPol(灰色ドット)又はBAPol(黒)を、2つの別々のチャネルにわけて注入し、記録を行った。注入間期には、これと同一の緩衝液を、チップ上に10μl/minで継続的に流した。縦矢印で表される、注入後に観察されたプラトーの振幅における差異は、チップへのポリマーの付着が、ビオチンによって媒介されることを示す。
【図5】SPRによって追跡した、膜タンパク質/アンフィポル複合体のアビジン保有チップ上への付着。30μMの定常BAPol濃度において、アビジン保有チップの種々のチャネルに各100μlのBAPol、tOmpA/BAPol、BR/BAPol、bf/BApol及びbc/BAPol溶液を注入し、記録を行った。循環緩衝液:NaCl−HEPES。
【図6】ビオチン化アンフィポルによりアビジン保有チップの表面に固定化された膜タンパク質に結合した抗体の、表面プラズモン共鳴(SPR)による検出。10μlの免疫前精製血清(pre−i.)に次いでtOmpA(Post−i.−OA)、BR(Post−i.−BR)、bf(Post−i.−b6f)又はbc1(Post−i.−bc1)の各々に対して産生された免疫後の精製血清を、あらかじめBAPol又はBAPol中に捕獲されたタンパク質でコーティングしたチャネルに、連続して注入した。注入は矢印で示した。各々の記録は、異なるサンプルでコーティングされたチャネルにて行った:黒太線の記録はtOmpA/BAPol複合体が固定されたチャネル、小点の薄黒線はBR/BAPolチャネル、大点の薄黒線はbf/BAPolチャネル、薄黒線はbc/BAPolチャネル、及び太灰色線はコントロールでBAPolのみのサンプルのチャネルを、それぞれ表している。循環緩衝液:NaCl−HEPES。
【図7】HAPol又はBAPolで捕獲後の、アビジン保有チップの表面に結合したタンパク質上の抗体結合の、SPRによる検出。BRでコーティングされたチャネルにて、HAPol(灰色ドット)又はBAPol(黒)のいずれかで捕獲後に、BRに対して産生された免疫後血清を注入して、記録を得た。循環緩衝液:NaCl−HEPES。実験により、官能性アンフィポルにより吸着が媒介されると、シグナルが増加することが示される。
【図8】質量分析による膜タンパク質の解析のための本発明の製品の使用。工程(a).タンパク質(淡灰色の長方形)を界面活性剤中に溶解する。工程(b).タンパク質をビオチン化アンフィポル(BApol)で捕獲し(又は複合体化し)、界面活性剤を除去する。工程(c).膜タンパク質/BAPol複合体を、アビジンがグラフトされた固体担体と、ビオチン/アビジンカップリングにより相互作用させる。工程(d).徹底的な洗浄の後、膜貫通ドメインを複合体形成したアンフィポルで保護したまま、プロテアーゼを加えて緩やかなタンパク質分解を行い、膜タンパク質断片を生成する。工程(e).ビオチン化アンフィポル BAPolと複合体化された膜タンパク質の部分の断片を保有したままの担体から(例えば磁気ビーズの場合は磁石で)分離後、残りの可溶性断片を質量分析により分析する。
【図9】バクテリオロドプシン膜タンパク質(BR)の、ストレプトアビジン標識・磁気ビーズ上への固定化。BRタンパク質のビオチン化アンフィポル(BAPol)との複合体溶液の、時刻0(ビーズと混合前)及びストレプトアビジン標識・磁気ビーズと共に1時間45分インキュベーションした後における、吸光度(又は光学密度)を波長に対して測定した。560nmにBRタンパク質に特徴的なピークがあるかどうかについて、分析を行った。
【図10】ポリヒスチジン−標識アンフィポルの合成図。DCC:ジシクロヘキシルカルボジイミド、NMP:N−メチルピロリジノン、HOBT:N−ヒドロキシベンゾトリアゾール、iPr:イソプロピル、FMOC:9−フルオレニルメトキシカルボニル、HIS:ヒスチジン、TFA:トリフルオロ酢酸、HBTU:O−ベンゾトリアゾール−N,N,N',N'−テトラメチル−ウロニウム−ヘキサフルオロ−ホスフェート、Tr:トリチル。
【発明を実施するための形態】
【0018】
このように、本発明は、担体及びその表面に付着した少なくとも1つの膜タンパク質を含む製品であって、該膜タンパク質が、該膜タンパク質と複合体化された両親媒性分子によって該担体に付着していることを特徴とする、製品に関する。
【0019】
「両親媒性」という用語は、分子の異なる部分により媒介される親水性と疎水性の両方の性質を示す有機分子に関する。従って「両親媒性」分子は(「両親媒性物質(amphiphile)」とも言われる)、一般に1つ以上の親水性基と1つ以上の疎水性基を含む。
【0020】
本発明の場合においては、両親媒性分子の疎水性基が、膜タンパク質のそれ自体疎水性である膜貫通表面に両親媒性分子を結合させ、親水性基が全体の両親媒性分子/膜タンパク質複合体を可溶化させる。好ましくは、該両親媒性分子は、複数点で膜タンパク質の疎水性の膜貫通表面と結合可能とする多くの疎水性側鎖を含み、該複数付着により非常に遅い脱着カイネティクスがもたらされることで、結合が本質的に不可逆的になる。疎水性側鎖の数が10より多いであると有利である。
【0021】
更に、該両親媒性分子は、両親媒性分子/膜タンパク質複合体を可溶化させるために、多くの親水性基を更に含むことが好ましい。親水性基の数が20より多いと有利である。
【0022】
疎水性側鎖の数と親水性基の数との比率は、好ましくは0.25から2.5の間;好ましくは0.25から2の間;0.25から1.5の間;0.25から1の間;又はより好ましくは0.25から0.5の間である。
【0023】
また本発明の製品の供給に使用される両親媒性分子は、タンパク質の疎水性の膜貫通表面と複数点で結合を可能とする、分子次元及び柔軟性を有すると有利である。従って、本発明の実施に適した両親媒性分子は、具体的には、全種類の両親媒性ポリマーを含む。この場合において、ポリマーの基本構造は、親水性若しくは疎水性の特性を有する種々の基で置換されているか、又はそれ自体が両親媒性であるはずである。従って、認容される両親媒性ポリマーは、1つ以上の親水性側鎖に加え、1つ以上の疎水性側鎖又は両親媒性側鎖を有しているべきである。疎水性側鎖又は両親媒性側鎖の数と親水性側鎖の数との比率は、好ましくは0.25から2.5の間;好ましくは0.25から2の間;0.25から1.5の間;0.25から1の間;又はより好ましくは0.25から0.5の間である。
【0024】
認容される両親媒性ポリマーとしては、具体的には、両親媒性ビニルポリマー、両親媒性ポリペプチド、両親媒性多糖類、及び両親媒性デンドリマーが挙げられる。従って、本発明の製品の有利な実施態様においては、両親媒性分子は、両親媒性ビニルポリマー、両親媒性ポリペプチド、両親媒性多糖類、又は両親媒性デンドリマーから選択される。
【0025】
「ビニルポリマー」という用語は、R及びRが種々の置換基であり且つnが1以上の範囲の整数である−(CH−)−CRaR−型のユニットから成るポリマーに関する。nが1から3の間であると有利であり、n=1であるとより有利である。
【0026】
好ましい実施態様においては、両親媒性分子は、両親媒性ビニルポリマー、即ち、親水的特徴を有する1つ以上の置換基及び疎水的特徴を有する他の1つ以上の置換基を有するビニルポリマーである。
【0027】
好ましくは、該両親媒性分子は、式(I)で表されるビニルポリマーである:
【0028】
【化1】

【0029】
式中、Ra1からRanは、同一又は異なり、水素原子又はメチル基を表し:
b1からRbnは異なり、以下から選択され:
−以下から選択される親水性基
・Mが陽イオン性の対イオンである、カルボン酸基−COO、スルホン酸基−SO、又はホスホン酸基−PO
・(C−C)アルキルカルボン酸基、(C−C)アルキルスルホン酸基、又は(C−C)アルキルホスホン酸基
・フェニルスルホン酸基
・CONRc1Rc2であって、式中、Rc1及びRc2は同一であっても異なっていてもよく、(−C(CHORd1)(CHORd2)(CHORd3))基を表し、式中、Rd1、Rd2及びRd3は、独立に、水素原子、糖部分、特に4から10のアルキレンオキサイドユニットを含むポリオキシエチレンなどのポリオキシアルキレン、双性イオン基、mが1から4の範囲内である1級、2級、又は3級ヒドロキシアルキル−(CH)mOH、(C−C)アルキルカルボン酸基、(C−C)アルキルスルホン酸基、又は(C−C)アルキルホスホン酸基、糖部分を表すもの
・COOReであって、式中、Reが、糖部分、mが1から4の範囲内である1級、2級、又は3級ヒドロキシアルキル−(CH)mOH、特に4から10のアルキレンオキサイドユニットを有するポリオキシエチレンなどのポリオキシアルキレン、tが1から5までの整数であり且つRf1、Rf2が同一であっても異なっていてもよく水素原子又は(C1−C4)アルキル基を表す (CH)t−NRf1Rf2基、を表すもの、
・ヒドロキシル基
・mが1から4の範囲内である1級、2級、又は3級ヒドロキシアルキル−(CH)mOH、
・1級、2級、3級アミン
・4級アンモニウム
・N−ホルムアミド、N−アルキルホルムアミド、
・N−アセトアミド、N−アルキルアセトアミド、
・N−ピロリドニル、
・CONRg1Rg2であって、式中、Rg1及びRg2は、同一であっても異なっていてもよく水素原子、糖部分、特に4から10のアルキレンオキサイドユニットを含むポリオキシエチレンなどのポリオキシアルキレン、双性イオン基、mが1から4の範囲内である1級、2級、又は3級ヒドロキシアルキル−(CH)mOHであるもの、
・COORh又はCONRkRlであって、式中、Rhが(C−C)アルキル基、アルキルスルホン酸を表すか、又は水素原子でないという条件でRe若しくはRg1に与えた意味の1つを有し、Rk及びRlは独立に、Rhに与えた意味の1つを有し且つ更にそのうちの1つが水素原子を表し得るもの;
−以下から選択される疎水性基:
・水素原子、
・ハロゲン原子、
・−CONH(−C(CHORm1)(CHORm2)(CHORm3))基であって、式中、Rm1、Rm2、Rm3が独立に、3から50の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐のアルキル、アルケニル若しくはアルキニル、Rn及びRoが3から50の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐のアルキル、アルケニル若しくはアルキニル基であるアルキルカルバモイル(O=C−NH−Rn)若しくはアシル(O=C−Ro)であるもの、
・COORp、CORp、COSRp、C−NH−Rp又はCONRq1Rq2であって、式中、Rpは3から50の炭素原子を含む直鎖若しくは分岐及び/又は環状のアルキル、アルキニル若しくはアルケニル基であり、且つRq1及びRq2は同一であっても異なっていてもよくRpに与えた意味の1つを有し、更にそのいずれか1つが水素原子を表し得るもの、
・−Rr、−ORr、又は−SRr基であって、式中、Rrが3から50の炭素原子を含む直鎖若しくは分岐及び/又は環状のアルキル、アルケニル又はアルキニル基を表すもの;或いは
−以下から選択される両親媒性基:
・アルキル基−(CH)m−Rsであって、式中、mが6から20の間であり、且つRsがカルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、硫酸基、リン酸基、双生イオン基、アンモニウム基、ポリ(オキシエチレン) 基又は糖鎖などの親水性基であるもの、
・ポリ(オキシエチレン)−O−アルキル基(−(CHCHO)m−Rt)であって、式中、Rtが6から20の炭素原子をもつ直鎖、分岐若しくは環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基であるもの、
・COORu、CoRu、COSRu、CONRvRw基で、式中、Ruがポリ(オキシエチレン)−O−アルキル基(−(CHCHO)m−Rt)であって、Rtが6から20の炭素原子を持つ直鎖、分岐又は環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基であるもの、グリコシルアルキル基であって、式中、Rvが水素原子若しくはRuに与えた意味の1つを有し、式中、RwがRuに与えた意味の1つを有するもの、
・−CONH(−C(CHORx1)(CHORx2)(CHORx3))基であって、式中、Rx1、Rx2、Rx3の基のうち1つ若しくは2つが、Rm1、Rm2、Rm3に与えた意味の1つを有し、且つこれらの基のうち1つ若しくは2つが、水素原子でなく且つRd1、Rd2、Rd3、Ruに与えた意味の1つを有するもの、
・或いは、Rx1、Rx2、Rx3が同一又は異なり、且つそれらの基のうち少なくとも1つが水素原子でなく且つRuに与えた意味の1つを有するもの、
nは2以上の整数であり、好ましくは2から10の間、2から8の間、2から6の間、2から4の間であり、nが3であることが有利である;
からXは、それぞれ該ユニットの割合
【0030】
【数1】

【0031】
を表し、ここで、Rbiが疎水性基若しくは両親媒性基である基の割合の合計対、Rbiが親水性基である基の割合の合計の比率は、
【0032】
【数2】

【0033】
で表され、0.25から2.5の間;好ましくは0.25から2の間;0.25から1.5の間;0.25から1の間;或いはより好ましくは0.25から0.5の間であり;且つ平均分子量が500から100,000の間、有利には1,000から50,000の間、2,000から25,000の間、より有利には4,000から15,000の間、6,000から12,000の間、そして好ましくは8,000から10,000の間であり、更に好ましくは9,000から10,000g.mol−1の間である。
【0034】
本発明において「陽イオン性対イオン」という用語は、R1がCOO−Mである場合、R1のCOO基の負に帯電した酸素原子が持つ負電荷を中和可能な陽イオンに関する。このような対イオンは、具体的には、アルカリ属陽イオンであり得る。
【0035】
本発明において「糖部分」という用語は、単糖類若しくはヘテロ又はホモ多糖類基に関し、具体的には式(C2n−2n−1で表されるものがあるが、これらに限定されない。m=1の場合、該単糖類は、グルコシル、ガラクトシル、マンノシル基などであり得る。m=2の場合、該二糖類は、マルトシル、ラクトシル、サッカロシル基などであり得る。
【0036】
本発明において「ポリオキシアルキレン」という用語は、式(C2nO)で表される基に関し、式中nが1から6の間の整数であり且つmが2以上の整数であるものである。具体的には、n=2の場合であるポリオキシエチレンが挙げられる。
【0037】
本発明において「双性イオン」という用語は、本発明によれば、一般式 −(CH)−NRy1Ry2−(CH−COで表されるカルボキシベタイン基、一般式 −(CH)−NRz1Rz2−(CH)−SOで表されるスルホベタイン基であって、Ry1、Ry2 Rz1及びRz2が直鎖、分岐又は環状のアルキル、アルケニル、アルキニル(alcyl)基であり、nが1以上の整数であり且つmが2から4の範囲内の整数であるものなどのような、正電荷と負電荷の両方を保有する基に関することを意図する。
【0038】
本発明において「アルキルスルホン酸」という用語は、一般式 −(CH−SO−Mで表される基であって、Mが上記で定義されたものに関する。
【0039】
3から50の炭素原子を含む直鎖若しくは分岐のアルキル、アルケニル若しくはアルキニルに関する上記又は下記の全ての場合において、該直鎖若しくは分岐のアルキル、アルケニル若しくはアルキニル基は、3から40、3から30、3から25、3から20の炭素原子を有すると有利であり、或いは3から18の炭素原子を有するのが更に好ましい。
【0040】
該ビニルポリマーは、より詳細には、以下の式(II)で表されるものであると有利である:
【0041】
【化2】

【0042】
式中、Ra、Ra及びRaは、同一又は異なり、水素原子又はメチル基を表し;
Rbは以下から選択される親水性基であり:
・Mが陽イオン性の対イオンである、カルボン酸基−COO、スルホン酸基−SO、又はホスホン酸基−PO
・(C−C)アルキルカルボン酸基、(C−C)アルキルスルホン酸基、又は(C−C)アルキルホスホン酸基
・フェニルスルホン酸基
・CONRc1Rc2であって、式中、Rc1及びRc2は同一であっても異なっていてもよく、(−C(CHORd1)(CHORd2)(CHORd3))基を表し、Rd1、Rd2及びRd3は、独立に、水素原子、糖部分、特に4から10のアルキレンオキサイドユニットを含むポリオキシエチレンなどのポリオキシアルキレン、双性イオン基、mが1から4の範囲内である1級、2級、又は3級ヒドロキシアルキル−(CH)mOH、(C−C)アルキルカルボン酸基、(C−C)アルキルスルホン酸基、又は(C−C)アルキルホスホン酸基、糖部分であるもの、
Rbは:
−以下から選択される疎水性基:
・水素原子、
・ハロゲン原子、
・−CONH(−C(CHORm1)(CHORm2)(CHORm3))基であって、式中、Rm1、Rm2、Rm3が独立に、3から50の炭素原子を含む直鎖若しくは分岐のアルキル、アルケニル若しくはアルキニル、Rn及びRoが3から50の炭素原子を含む直鎖若しくは分岐のアルキル、アルケニル若しくはアルキニル基であるアルキルカルバモイル(O=C−NH−Rn)若しくはアシル(O=C−Ro)であるもの、
・COORp、CORp、CSRp、C−NH−Rp又はCONRq1Rq2であって、式中、Rpは3から50の炭素原子を含む直鎖若しくは分岐及び/又は環状のアルキル、アルキニル若しくはアルケニル基であり、且つRq1及びRq2は同一であっても異なっていてもよくRpに与えた意味の1つを有し、更にそのいずれか1つが水素原子を表し得るもの、
・−Rr、−ORr、又は−SRr基であって、式中、Rrが3から50の炭素原子を含む直鎖若しくは分岐及び/又は環状のアルキル、アルケニル又はアルキニル基を表すもの;或いは
−以下から選択される両親媒性基:
・アルキル基−(CH)m−Rsであって、式中、mが6から20の間であり、Rsがカルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、硫酸基、リン酸基、双生イオン基、アンモニウム基、ポリ(オキシエチレン) 基、糖鎖などの親水性基であるもの、
・ポリ(オキシエチレン)−O−アルキル基(−(CHCHO)m−Rt)であって、式中、Rtが6から20の炭素原子を持つ直鎖、分岐若しくは環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基であるもの、
・COORu、CORu、COSRu、CONRvRw基であって、式中、Ruがポリ(オキシエチレン)−O−アルキル基(−(CHCHO)m−Rt)であって、Rtが6から20の炭素原子を持つ直鎖、分岐若しくは環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基であるもの、グリコシルアルキル基であって、式中、Rvが水素原子を表すか若しくはRuに与えた意味の1つを有するものであって、式中、RwがRuに与えた意味の1つを有するもの、
・−CONH(−C(CHORx1)(CHORx2)(CHORx3))基であって、式中、Rx1、Rx2、Rx3の基のうち1つ若しくは2つが、Rm1、Rm2、Rm3に与えた意味の1つを有し、且つこれらの基のうち1つ若しくは2つが、水素原子でなく且つRd1、Rd2、Rd3、Ruに与えた意味の1つを有するもの、
或いは、Rx1、Rx2、Rx3が同一又は異なり、且つそれらの基のうち少なくとも1つが水素原子でなく且つRuに与えた意味の1つを有するものであり、
−Rbは以下から選択される親水性基であり:
・COOReであって、式中、Reが、糖部分、mが1から4の範囲内である1級、2級、又は3級ヒドロキシアルキル−(CH)mOH、特に4から10のアルキレンオキサイドユニットを有するポリオキシエチレンなどのポリオキシアルキレン、tが1から5までの整数であり且つRf1、Rf2が同一であっても異なっていてもよく水素原子又は(C−C)アルキル基を表す (CH)t−NRf1Rf2基、
・ヒドロキシル基
・mが1から4の範囲内である1級、2級、又は3級ヒドロキシアルキル−(CH)mOH、
・1級、2級、3級アミン
・4級アンモニウム
・N−ホルムアミド、N−アルキルホルムアミド、
・N−アセトアミド、N−アルキルアセトアミド、
・N−ピロリドニル、
・CONRg1Rg2であって、式中、Rg1及びRg2が、同一であっても異なっていてもよく水素原子、糖部分、特に4から10のアルキレンオキサイドユニットを含むポリオキシエチレンなどのポリオキシアルキレン、双性イオン基、mが1から4(R3)の範囲内である1級、2級、又は3級ヒドロキシアルキル−(CH)mOHであるもの、
・COORh又はCONRkRlであって、式中、Rhが(C−C)アルキル基、アルキルスルホン酸を表すか、又は水素原子でないという条件でRe若しくはRg1に与えた意味の1つを有し、Rk及びRlは独立に、Rhに与えた意味の1つを有し且つ更にそのうちの1つが水素原子を表し得るもの;
【0043】
x1、x2、x3は、それぞれ該ユニットの割合を表し、ここで、
−x1が20から90%の間
−x2が10から80%の間
−x3が 0から60%の間であり、且つ
−x/x+xが、0.25から2.5の間;好ましくは0.25から2の間;0.25から1.5の間;0.25から1の間;或いはより好ましくは0.25から0.5の間であり;且つ
平均分子量が500から100,000の間、有利には1,000から50,000の間、2,000から25,000の間、より有利には4,000から15,000の間、6,000から12,000の間、そして好ましくは8,000から10,000の間であり、更に好ましくは9,000から10,000g.mol−1の間である。
【0044】
式(II)で表される両親媒性ビニルポリマーにおいては、以下が有利である:
Ra、Ra及びRaは同一又は異なり、水素原子、又はメチル基を表し;
Rbは、Mが陽イオン性の対イオンであるカルボン酸基COOを表し;
RbはCONRq1Rq2であって、式中、Rq1及びRq2は独立に、3から50の炭素原子を含む直鎖若しくは分岐及び/又は環状のアルキル、アルキニル又はアルケニル基を表し、更にそのいずれか1つが水素原子を表し得;
Rbは、CONRkRlであって、式中、Rk及びRlは独立に、(C−C)アルキル基、アルキルスルホン酸、糖部分、mが1から4の範囲内である1級、2級、又は3級ヒドロキシアルキル−(CH)mOH、特に4から10のアルキレンオキサイドユニットを有するポリオキシエチレンなどのポリオキシアルキレン、双性イオン基、tが1から5までの整数であり且つRf1、Rf2が同一又は異なり水素原子又は(C−C)アルキル基を表し、更にRk及びRlのいずれか1つが水素原子を表し得るものである (CH)t−NRf1Rf2基であるもの、を表す。
【0045】
より詳細には、式(II)で表されるビニルポリマーの特に有利な実施態様においては:
Ra、Ra及びRaは同一又は異なり、水素原子、又はメチル基を表し;
Rbは、MがNa又はKであるCOOを表し;
RbはCONRq1Rq2を表し、Rq1はn−オクチル、Rq2はHであり;
x1が70から80%の間、x2が20から30%の間、且つx3が0%であり;且つ
平均分子量が2,000から50,000g.mol−1の間である。
【0046】
式(II)で表されるビニルポリマーの、特に有利な別の実施態様においては:
Ra、Ra及びRaは同一又は異なり、水素原子、又はメチル基を表し;
Rbは、Mが陽イオン性の対イオンであるCOOを表し;
RbはCONRq1Rq2を表し、Rq1はn−オクチル、Rq2はHであり;
Rbは、上記式(II)にて定義のとおり、即ち、CONRkRlであって、式中、Rk及びRlは独立に、(C−C)アルキル基、アルキルスルホン酸、糖部分、mが1から4の範囲内である1級、2級、又は3級ヒドロキシアルキル−(CH)mOH、特に4から10のアルキレンオキサイドユニットを有するポリオキシエチレンなどのポリオキシアルキレン、双性イオン基、tが1から5までの整数であり且つRf1、Rf2が同一又は異なり水素原子又は(C−C)アルキル基を表し、更にRk及びRlのいずれか1つが水素原子を表し得るものである (CH)t−NRf1Rf2基であるもの、を表し;
x1が30から40%の間、x2が20から30%の間、且つx3が30から50%の間であり;且つ
平均分子量が2,000から50,000g.mol−1の間である。
【0047】
別の実施態様においては、該両親媒性分子は、両親媒性ポリペプチド型の両親媒性ポリマー、即ち、両親媒性アミノ酸ポリマーである。両親媒性であるためには、ポリペプチドは、疎水性アミノ酸と親水性アミノ酸の混合物を、上記量含んでいなければならない。或いは親水性ペプチドを、疎水性側鎖をグラフトすることによって修飾し、それによって両親媒性の特徴を備えさせることができる。
【0048】
更なる実施態様においては、該両親媒性分子は、両親媒性多糖類型の両親媒性ポリマーである。本明細書において「多糖類」という用語は、多くの単糖類から構成されるポリマーを意味し、ここで「単糖類」は単純な炭水化物を意味する。
【0049】
更なる実施態様においては、該両親媒性分子は、両親媒性デンドリマー型の両親媒性ポリマーである。「デンドリマー」という用語は、少なくとも3つの反応部位を有する分岐モノマーを加え、それにより通常の樹枝状構造を与えることを含む反復過程によって構築された通常の分岐構造を有する、樹枝状ポリマーに関する。更に、両親媒性であるためには、デンドリマーは、親水性基を含むいくつかのユニットと、疎水性側鎖を含む他のユニットから構成されるべきである。
【0050】
本発明の上記の任意の製品の有利な実施態様において、該担体は、固体担体である。事実、この特定の実施態様は、特に、膜タンパク質を保有するチップ、膜タンパク質でコートされたビーズ、膜タンパク質でコートされた膜、膜タンパク質でコートされた繊維若しくはナノチューブの提供などの多くの適用に有利である。従って該固体担体は、チップ、ビーズ、多孔質膜若しくは非多孔質膜、繊維又はナノチューブから選択するのが好ましい。
【0051】
「チップ」という用語は、核酸又はタンパク質などの生体分子をグラフト可能な表面を有する固形材料の小板又はスライドに関する。
【0052】
「ビーズ」という用語は、球形、例えば球体の粒子に関する。そのようなビーズは適用のために必要であれば、任意の有用な特性を更に有していて良く、例えば、ビーズが含まれる溶媒から容易に分離するため磁気ビーズとしてもよい。
【0053】
「多孔質膜」という用語は、多孔性且つ柔軟な材料の薄層であって、材料の孔サイズにより、設定値よりも小さいサイズを有する分子を通過させ、それより大きいサイズを有する分子を遮断するものに関する。
【0054】
「非多孔質膜」という用語は、柔軟な材料の薄層であって、任意で、表面を数倍に増加させるよう薄チューブの束、多層性構造又は他のデバイスの形をしているものに関する。
【0055】
「繊維」という用語は、ユニットのフィラメント様の編成に関し、一般に束の形である。繊維は、「天然」、即ち天然に存在するものであっても、「化学的」、即ち人工的に作製されたものであってもよい。天然繊維の例としては、綿、リネン、麻、ラミー、ジュート、マニラアサ、アフリカハネガヤ、カポック、ヤシ、エニシダ、ヘニケン、ケナフ、リュウゼツラン、サイザル麻、竹などの植物繊維、羊毛、アルパカ、ラクダ、カシミヤ、野生ラマ、アンゴラウサギ、モヘア、ビクーニャ羊毛、ヤク、絹などの動物繊維、並びにアスベストなどの鉱物由来繊維が挙げられる。化学繊維の例としては、ビスコース、キュプラ、モダールなどの植物セルロース由来の人工繊維、アルギン酸塩などの非セルロース由来の人工繊維、キチンなどの動物由来繊維、ポリアミド、ポリエステル、クロロ繊維、アクリル、モドアクリル、ポリプロピレン、エラストジエン、エラスタン、ポリウレタン、ビニラールなどの有機物由来の合成繊維、並びにアラミド、ガラス、織物などの鉱物由来の合成繊維が挙げられる。
【0056】
「ナノチューブ」という用語は、いくつかの材料、特に炭素及び窒化ホウ素から得られた、空洞、チューブ状の形状を有し、多角形、特に五角形、六角形及び/又は七角形などの形に定分布された原子から成る、特定の結晶構造に関する。各種のナノチューブ、特にカーボンナノチューブは、当業者に周知である。
【0057】
本発明の上記の任意の製品の別の実施態様においては、担体は、ポリマー、デンドリマー、小胞又はミセルから選択される、可溶性高分子又は粒子である。
【0058】
「小胞」という用語は、外部環境から隔離された1つ(又は複数)の水性の内部空洞(単数又は複数)を決定する、1つ(又は複数)の閉じた二重層(単数又は複数)又は膜(単数又は複数)から成る、両親媒性分子の集合体に関する。
【0059】
「ミセル」という用語は、親水性の極性頭部を溶媒側へ向け、疎水性鎖を内部へ向けた、球状、円盤状又は直線状の分子凝集体に関する。
【0060】
いかなる担体であっても、後者は、上記両親媒性分子と相互作用し、該担体と、該両親媒性分子と複合体形成した該膜タンパク質との間に、結合を形成するはずである。該担体と該両親媒性分子との間には、種々の形式の結合が形成され得る。
【0061】
従って、本発明の上記の任意の製品の1つの実施態様としては、両親媒性分子の担体上への付着は、疎水結合、イオン結合、両親媒性分子中の少なくとも1つの官能基と担体表面の少なくとも1つの官能基との間の特異的な受容体−リガンド結合、又は両親媒性分子中の少なくとも1つの反応性官能基と担体表面の少なくとも1つの反応性官能基との間の共有結合により、媒介される。
【0062】
事実、両親媒性分子は多くの疎水性側鎖を有するため、これらの側鎖のいくつかは、疎水性材料で作られているか、或いは、例えばアルキル基(例えばオクチル基又はステアリル基)のような疎水性基でコーティングされているか(シリカ、ガラス、クォーツ若しくは樹脂、又はnが4から30の間であるC−グラフトされた他の担体)の如何に関わらず、それ自体が疎水性である担体と、相互作用することができる。
【0063】
或いは、担体と両親媒性分子との間の結合は、両親媒性分子中の荷電基と担体における荷電基との間でのイオン結合であってもよい。例えば、両親媒性分子が上記の式(II)で表される任意のビニルポリマーである場合には、該ビニルポリマー中のCO基は、担体上に位置する正荷電基と、自然に、又は担体の処理後に、若しくは(例えばQAEポリオシド(polyoside)などの陰イオン樹脂の合成に使用される4級アンモニウム基などの)正荷電基を担体にグラフト後に、イオン結合を形成し得る。
【0064】
両親媒性分子に担体を結合させる代替法は、両親媒性分子中の少なくとも1つの基と担体表面の少なくとも1つの分子との間の特異的な受容体−リガンド結合、又はその逆のリガンド−受容体結合から成る。事実この受容体−リガンド型、即ち特異的に互いと相互に作用し得る分子ペアは、多く存在する。よって受容体−リガンド分子ペアの第1の半分を代表する1つ以上の官能基を両親媒性分子にグラフトし、且つ受容体−リガンド分子ペアの第2の半分を代表する1つ以上の官能基を、任意の手段により担体上にグラフト、吸着、又は付着させることにより、担体と両親媒性分子との間で特異的結合を形成し得る。
【0065】
従って、本発明の上記の任意の製品の1つの有利な実施態様においては、製品は以下の特徴を有する:
a)該両親媒性分子が、受容体−リガンド分子ペアの第1の半分を与える少なくとも1つの官能基を更に含み、
b)該担体が、該受容体−リガンド分子ペアの第2の半分を与える、担体表面に付着した少なくとも1つの官能基を更に含み、且つ
c)該担体上への該両親媒性分子の付着が、該両親媒性分子の該官能基(単数又は複数)と該担体に付着した該官能基(単数又は複数)との間の、特異的な受容体−リガンド結合を通して媒介される。
【0066】
上記に示すとおり、互いに特異的に相互作用し得る受容体−リガンド型の分子ペアは、多く存在する。例えば本発明の製品に適したペア(両親媒性分子中の官能基/担体に付着した官能基)であって、担体と両親媒性分子との間の相互作用が特異的な受容体−リガンド結合により媒介されるものは、アフィニティクロマトグラフィーにて慣用的に使用されるペアから選択し得、とりわけ以下から選択し得る:
−酵素−基質型の相互作用を伴うペアは、当該基質に高い親和性を有するタンパク質により認識される小分子から成り、以下のペアなどである:
(ビオチン/アビジン)、(グルタチオン/グルタチオンS−転移酵素、グルタチオン−結合タンパク質若しくはグルタチオンS−転移酵素を含む融合タンパク質)、(カルモジュリン/ATPアーゼ、プロテインキナーゼ、ホスホジエステラーゼ若しくは神経伝達物質)、(L−アルギニン若しくはp−アミノベンズアミジン/セリンプロテアーゼ)、(L−リジン/プラスミノーゲン(及びアクチベーター)若しくはrRNA)、(AMP、ADP若しくはATP/酵素補因子)、(レクチン/グルカンタンパク質、糖脂質(glucolipid)若しくは多糖類)、(へパリン/成長因子及び凝固因子、ステロイド受容体、エンドヌクレアーゼ、リポタンパク質若しくはリパーゼ)、又は (シバクロンブルー(登録商標)/NAD若しくはNADP酵素補因子、アルブミン、凝固因子若しくはインターフェロン)、並びにそれらに対応する逆のペア。
−(抗原/抗体)若しくは(ハプテン/抗体)型、又はその逆の(抗体/抗原)若しくは(抗体/ハプテン)型、
−(ニトリロ三酢酸(NTA)/遷移金属)、(EDTA/遷移金属)などのように、遷移金属のキレート化を伴う基から成る、キレート化型の相互作用を伴うペア、
−(核酸/相補的核酸)型のペア、特に(オリゴヌクレオチド/相補的なオリゴヌクレオチド)型のペア、並びに
−(フェニルボロン酸(APB)/サリチルヒドロキサム酸 (ASH))型のアフィニティーペア。
【0067】
前記ペア(両親媒性分子中の官能基/担体に付着した官能基)は、(ビオチン/アビジン)、(アビジン/ビオチン)、(グルタチオン/グルタチオンS−転移酵素)、(グルタチオン/S−転移酵素グルタチオン(glutathion/S-transferase glutathion))、(抗原/抗体)、(ハプテン/抗体)、(抗体/抗原)、(抗体/ハプテン)、(オリゴヌクレオチド/相補的なオリゴヌクレオチド)から選択すると有利である。
【0068】
従って本発明の製品であって、両親媒性分子と担体が両親媒性分子中の官能基(単数又は複数)と、担体に付着した官能基(単数又は複数)との間の特異的な受容体−リガンド結合を通して結合するものにおいては、両親媒性分子として、上記で一般的に定義されたように式(I)又は(II)で表されるビニルポリマー、或いは、式(I)又は(II)で表される上記のポリマーの有利な実施態様として提供されるビニルポリマーであって、以下の式で表されるモノマーを0から4%の間の割合で更に含むビニルポリマーを使用することが、とりわけ有利である。
【0069】
【化3】

【0070】
式中:
Raaは、水素原子又はメチル基であり;
Rbbは、COORcc、又は−COSRcc若しくは−CORcc若しくはCONRccRdd基を表し、
式中、
Rccは、該受容体−リガンドペアの第1の半分を与える両親媒性分子中の官能基を表し、且つ、
Rddは、(C−C)アルキル基、アルキルスルホン酸、水素原子、糖部分、mが1から4の範囲内である1級、2級、又は3級ヒドロキシアルキル−(CH)mOH、特に4から10のアルキレンオキサイドユニットを有するポリオキシエチレンなどのポリオキシアルキレン、双性イオン基、tが1から5までの整数であり且つRf1、Rf2が同一又は異なり、水素原子又は(C−C)アルキル基である (CH)−NRf1Rf2基を表す。
【0071】
これらの特に有利な製品においては、該ペア(両親媒性分子中の官能基/担体に付着した官能基)は、上記のものから選択するのが有利である。
【0072】
最後に、両親媒性分子の少なくとも1つの反応性官能基と担体中の少なくとも1つの反応性官能基との間での共有結合により、担体上に両親媒性分子を付着させることも想定し得る(12−15)。従って、両親媒性分子に1つ以上の官能基がグラフトされ、且つ該両親媒性分子の1つ以上の基と化学的に反応可能である1つ以上の官能基が担体上に任意の手段により吸着若しくはグラフトされる場合、担体と両親媒性分子との間で共有結合を形成するのに好適な条件下で、種々の官能基を共に化学反応させることが想定され得る。好適な条件下で共有結合を形成可能である両親媒性分子中の反応性官能基及び担体中の反応性官能基に関しては、従って、「化学反応性ペア」と呼ぶ。
【0073】
従って、本発明の上記の任意の製品の1つの有利な実施態様においては、製品は以下の特徴を有する:
a)該両親媒性分子が、化学反応性ペアの第1の半分を与える少なくとも1つの官能基を更に含み、
b)該担体が、該化学反応性ペアの第2の半分を与える、担体表面に付着した少なくとも1つの官能基を更に含み、且つ
c)該担体上への該両親媒性分子の付着が、該両親媒性分子の官能基(単数又は複数)と該担体に付着した官能基(単数又は複数)を化学反応させることにより行われる。
【0074】
例として、表面でキノン誘導体を吸着させることを含む、高い選択性を有することが知られている方法の使用が想定され得、我々の実験と適合する特定の条件下では、このキノン誘導体は両親媒性分子に付着したシクロペンタジエニル基とディールス−アルダー機構を通して自発的に反応する。結果として起こる結合は共有結合である。
【0075】
また、表面にアジド基(N)を有する担体と、アルキニル基(三重結合)を有する両親媒性ポリマーとの間での、同じタイプの選択性反応が想定され得る。
【0076】
また、担体の表面に付着したカルボニル官能基(又はアルコキシルアミン基)に関して高い選択性で縮合可能なアルコキシルアミン基(又はカルボニル基)で、両親媒性分子に官能性を持たせることも想定し得る。結果として起こる結合(アルコキシルイミン)は共有結合である。
【0077】
従って本発明の製品であって、両親媒性分子と担体が、両親媒性分子中の反応性官能基(単数又は複数)と担体に付着した反応性官能基(単数又は複数)を通して共有結合しているものにおいては、両親媒性分子として、上記で一般的に定義されたように式(I)又は(II)で表されるビニルポリマー、或いは、式(I)又は(II)で表される上記のポリマーの有利な実施態様として提供されるビニルポリマーであって、以下の式で表されるモノマーを0から4%の間の割合で更に含むビニルポリマーを使用することが、とりわけ有利である。
【0078】
【化4】

【0079】
式中:
Raaaは、水素原子又はメチル基であり;
Rbbbは、COORccc、又は−COSRccc若しくは−CORccc若しくはCONRcccRddd基を表し、
式中、
Rcccは、化学反応性ペアの第1の半分を与える両親媒性分子中の反応性官能基を表し、且つ、
Rddは、(C−C)アルキル基、アルキルスルホン酸、水素原子、糖部分、mが1から4の範囲内である1級、2級、又は3級ヒドロキシアルキル−(CH)mOH、特に4から10のアルキレンオキサイドユニットを有するポリオキシエチレンなどのポリオキシアルキレン、双性イオン基、tが1から5までの整数であり且つRf1、Rf2が同一又は異なり、水素原子又は(C−C)アルキル基を表す (CH)−NRf1Rf2基を表す。
【0080】
これらの特に有利な製品においては、該ペア(両親媒性分子中の反応性官能基/担体に付着した反応性官能基)は、上記のものから選択するのが有利である。
【0081】
上記の本発明の製品は、該両親媒性分子により、任意の膜タンパク質を、その表面に付着していてもよい。本発明が与える大きな利点の1つは、任意の膜タンパク質を、その構造、機能の如何に関わらず、また公知か未知かに関わらず、本発明の製品の形で、担体上に固定し得ることである。実施態様のいくつかにおいては、担体表面に固定された1つ以上の膜タンパク質(単数又は複数)は、抗原、抗体、酵素、細胞受容体、イオンチャネル、又は、ウイルス、細菌若しくは真核生物由来の膜タンパク質から選択される。担体表面に固定された1つ以上の膜タンパク質(単数又は複数)は、本発明の製品の必要な最終用途に応じて選択してよい。
【0082】
本発明は、以下の工程を含む、上記の本発明の製品の製造方法にも関する:
a)上記の任意の実施態様における、少なくとも1つの膜タンパク質、担体、及び両親媒性分子を提供し、
b)該両親媒性分子と該膜タンパク質との間で複合体を形成させ、且つ
c)該複合体の該両親媒性分子を、疎水結合、イオン結合、該両親媒性分子中の少なくとも1つの官能基と該担体表面の少なくとも1つの官能基の間での特異的な受容体−リガンド結合、又は該両親媒性分子中の少なくとも1つの反応性官能基と該担体表面の少なくとも1つの反応性官能基との間での共有結合により、該担体へ付着させる。
【0083】
例えば、両親媒性分子と膜タンパク質との間での複合体の形成(工程B)は、以下のように行うことができる(7−10):
−界面活性剤により臨界ミセル濃度よりも高濃度において可溶化した膜タンパク質(単数又は複数)の溶液に、タンパク質の重量の0.5から10倍の重量の両親媒性分子を加える。
−4℃で15分インキュベート後、バイオビーズ(Bio-beads)(登録商標)上での吸着、若しくは透析、又は界面活性剤の臨界ミセル濃度より低濃度に希釈後に界面活性剤は通すがタンパク質は通さない濾過システム(例えばセントリコン(登録商標)方式又はアミコン(登録商標)方式)での調製物の濃縮、或いは、界面活性剤を沈殿させる、などにより、界面活性剤を除去する。界面活性剤を完全に取り除くため、これらの工程のいくつかを連続して行っても良い。
−次いでこの段階で、使用するタンパク質の性質及びサイズに応じて、ショ糖勾配によって調製物を遠心分離することにより、又は分子ふるい若しくはアフィニティー・カラムで両親媒性分子と複合体を分離することにより、複合体を洗浄し、過量の両親媒性分子を取り除くことができる。
−或いは、膜タンパク質(単数又は複数)/両親媒性分子の複合体の形成は、開始調製物(生体膜、封入体など)から、任意で界面活性剤の存在を助けとしてタンパク質の直接抽出、再変性の過程での捕獲、無細胞合成などの、他の種々の経路によっても行える。
【0084】
該複合体の両親媒性分子の担体への付着(工程c)には、種々の方法がある:従って、例えば固体担体の場合は、両親媒性分子と担体との相互作用を形成する最適条件下であれば(例えばアビジン/ビオチン相互作用に関しては、NaCl、pH=7.4緩衝液中)、該膜タンパク質(単数又は複数)−両親媒性分子複合体の溶液を、担体上に堆積させてもよい:インキュベーション時間は、担体の性質及び選択した両親媒性分子/担体の相互作用のタイプの両方に依存する。
【0085】
上記の方法により得られた本発明の製品は、とりわけ診断、薬物設計、又はバイオテクノロジーにおいて、多くの適用可能性を有する。
【0086】
従って本発明は特に、生物試料中における少なくとも1つの膜タンパク質に対するリガンドの存否の検出のための、担体及びその表面に付着した少なくとも1つの該膜タンパク質を含む本発明の製品の使用に関する。
【0087】
「生体サンプル」という用語は、生物学的な物質を含む任意のタイプのサンプルに関する。具体的には、そのような生物試料は、血液サンプル、リンパサンプル、血清サンプル、尿サンプル、糞便サンプル、唾液サンプル、組織サンプル、又はバイオプシーなどから選択し得る。サンプルは任意の生物から得ることができ、特に人間、動物、微生物、ウイルス又は植物から得ることができる。興味の対象となる生物から収集した生サンプルは、次に続くアッセイ法にて許容されるように処理してよい。これは、検出すべき分子がサンプル中で直接利用可能である場合は、該当しない。逆に、検出すべき分子がサンプル中で直接利用可能でない場合は、利用可能にするために、当該サンプルを処理しなければならない。例えばサンプルが、溶解していない細胞を含んでおり、検出すべきリガンドがそれ自体膜様であるなら、直接検出可能なリガンドが細胞表面にあるような細胞溶液を与えるように該サンプルを処理してよい。もし検出すべきリガンドが細胞内分子であるならば、リガンドを直接利用できるように該サンプルを処理しなければならない。例えば、検出すべきリガンドが細胞内タンパク質である場合は、生物試料から該タンパク質を抽出するために、当業者に周知の多くの技術がある。検出すべきリガンドが核酸である場合も、生物試料から核酸を抽出するために、やはり当業者に周知の多くの技術がある。脂質や糖類のような他のタイプのリガンド類の場合も同様である。
【0088】
生物試料中の膜タンパク質リガンドの存否の検出は、当業者に公知の種々の技術により行うことができる。例えば、アッセイ用担体としてのチップと循環分子との間の相互作用に起因する表面プラズモン共鳴の変化を連続観察することにより、循環分子と1以上の固定された分子(単数又は複数)との間の相互作用の検出及びリアルタイム・モニタリングを可能にする表面プラズモン共鳴法の技術を使用して、膜タンパク質に結合したリガンドを検出することができる。とはいえ固定化膜タンパク質へのリガンド結合の検出は、他の技術によっても可能である。具体的には、その存否を検査したリガンドが既知であれば、周知のELISA−型の技術を使用可能であり、膜タンパク質に付着した該リガンドは、このリガンドに特異的に結合する第三の分子(例えば特異的抗体、又は該リガンドが同時にいくつかの膜タンパク質と結合可能であれば、可溶型の第二の膜タンパク質)により検出され、この第三の分子は、蛍光発光、酵素反応、その放射能、又はこのタイプの技術にて慣用される任意の他の手段によって、検出可能である。
【0089】
より詳細には、生物試料中における、前記の少なくとも1つの膜タンパク質のリガンドの存否を検出するための本発明の製品の使用は、生物試料中の膜タンパク質リガンドの存否の診断に適用が可能である。とりわけ該少なくとも1つの膜タンパク質が病原体の膜抗原である場合には、担体及びその表面に上記のように付着した該病原体の膜抗原を含む本発明の製品は、対象の血清中で該抗原に対して産生された抗体の存否を検出することにより、その対象における該病原体への曝露の存否を診断するのに使用することができる。従って、このような使用の有利な実施態様においては、前記の少なくとも1つの膜タンパク質は、病原体の膜抗原であり、該生物試料は、血清サンプルであり、且つ検出すべき該リガンドは、該抗原に対して産生された抗体である。
【0090】
また本発明は、前記の少なくとも1つの膜タンパク質のリガンドを化合物バンクからスクリーニングするための、担体及びその表面に上記のように付着した少なくとも1個の膜タンパク質を含む本発明の製品の使用にも関する。
【0091】
事実、このような使用は、治療標的を与える膜タンパク質の薬理学においては、非常に有用である。新規に同定された各々の膜標的に対し、一般に、問題とされる標的の種々のアゴニスト若しくはアンタゴニスト、潜在的な薬物候補となるリガンドを同定するため、化合物ライブラリーのスクリーニングが行われ、これらの候補が、次にその効果と非毒性において最適化される。
【0092】
上記に示すように、そういった適用のための本発明の製品の利点は、担体に固定された膜タンパク質が、両親媒性分子と複合体形成している故に水溶液中で完全に可溶性であり、且つそれらの天然の立体構造で生化学的に安定化されていることである。従って水性溶媒にて、該膜タンパク質の天然の構造を保ちながらの検出が可能であり、従って単に結合の検出方法を単純化するのみならず、検査している膜タンパク質が確実に天然状態にあり、従って生体内と同様に、同一の化合物に、同一の親和性をもって結合し得ることを確実にすることを可能とする。
【0093】
この場合においては、膜タンパク質へのリガンドの結合を検出するため、上記の技術の他にも、蛍光、比色分析又は任意の他のタイプの検出方法により直接検出可能な、試験化合物を使用することができる。
【0094】
更に本発明は、担体及びその表面に上記のように付着した少なくとも1つの膜タンパク質を含む本発明の製品であって、該少なくとも1つのタンパク質が酵素であり該酵素の基質を制御条件下で変換させるものの使用に関する。事実、本発明の製品は、具体的には、機能性膜、即ち本発明の方法により概ね通常の酵素分布がもたらされている膜酵素の「芝生」が固定された膜、であり得る。事実これにより、特に膜酵素基質溶液を、このように機能化された膜を通して単に溶液を濾過することにより、又は本発明に従い膜酵素が付着されている内部表面を有するチューブの束を通して溶液を送ることにより、この基質上の酵素反応後に生成される生成物の溶液に変換することを可能とする。
【0095】
一般に本発明は、界面活性剤なしで若しくは臨界ミセル濃度(CMC)よりも低い界面活性剤濃度下で、且つ膜タンパク質が生化学的に安定な条件下で、任意の膜タンパク質の担体上への固定に両親媒性分子を使用することを伴う原理に関する。
【0096】
従って本発明はまた、担体及び両親媒性分子を含む上記の本発明の製品の製造方法を実行するためのキットであって、該両親媒性分子と該担体が、疎水結合、イオン結合、両親媒性分子中の少なくとも1つの官能基と担体表面の少なくとも1つの官能基との間の特異的な受容体−リガンド結合、又は、両親媒性分子中の少なくとも1つの反応性官能基と担体表面の少なくとも1つの反応性官能基との間の共有結合を通して相互作用することを特徴とする、キットに関する。該担体及び該両親媒性分子は、キットの両部分即ち該担体及び該両親媒性分子が、疎水結合、イオン結合、両親媒性分子中の少なくとも1つの官能基と担体表面の少なくとも1つの官能基との間の特異的な受容体−リガンド結合、又は、両親媒性分子中の少なくとも1つの反応性官能基と担体表面の少なくとも1つの反応性官能基との間の共有結合を通して相互作用するものであれば、上記の任意の担体及び両親媒性分子であってよい。
【0097】
本発明のそのようなキットの1つの有利な実施態様においては、該担体及び該両親媒性分子は、該両親媒性分子中の少なくとも1つの官能基と該担体表面の少なくとも1つの官能基との間の特異的な受容体−リガンド結合を通して、相互作用する。より詳細には、該キットは以下のような特徴であることが好ましい:
a)該両親媒性分子が受容体−リガンド分子ペアの第1の半分を与える少なくとも1つの官能基を更に含み、
b)該担体が、該受容体−リガンド分子ペアの第2の半分を与える、担体表面に付着した少なくとも1つの官能基を更に含み、且つ
c)該担体上への該両親媒性分子の結合が、該両親媒性分子の該官能基(単数又は複数)と該担体に付着した該官能基(単数又は複数)との間の、特異的な受容体−リガンド結合を通して媒介される。
【0098】
前記ペア(両親媒性分子中の官能基/担体に付着した官能基)は、以下のペアから選択されるのが有利である:
(ビオチン/アビジン)、(グルタチオン/グルタチオンS−転移酵素、グルタチオン−結合タンパク質若しくはグルタチオンS−転移酵素を含む融合タンパク質)、(カルモジュリン/ATPアーゼ、プロテインキナーゼ、ホスホジエステラーゼ若しくは神経伝達物質)、(L−アルギニン若しくはp−アミノベンズアミジン/セリンプロテアーゼ)、(L−リジン/プラスミノーゲン(及びアクチベーター)若しくはrRNA)、(AMP、ADP若しくはATP/酵素補因子)、(レクチン/グルカンタンパク質、糖脂質(glucolipid)若しくは多糖類)、(へパリン/成長因子及び凝固因子、ステロイド受容体、エンドヌクレアーゼ、リポタンパク質若しくはリパーゼ)、又は (シバクロンブルー(登録商標)/NAD若しくはNADP酵素補因子、アルブミン、凝固因子若しくはインターフェロン)、又は対応する逆のペア、(抗原/抗体)、(ハプテン/抗体)、(抗体/抗原)、(抗体/ハプテン)、(ニトリロ三酢酸(NTA)/遷移金属)、(EDTA/遷移金属)、(フェニルボロン酸(APB)/サリチルヒドロキサム酸(ASH))又は(オリゴヌクレオチド/相補的なオリゴヌクレオチド)。
【0099】
本発明のキットであって、両親媒性分子と担体が、両親媒性分子中の官能基(単数又は複数)と、担体に付着した官能基(単数又は複数)との間の特異的な受容体−リガンド結合により結合するものにおいては、両親媒性分子として、上記で一般的に定義されたように式(I)又は(II)で表されるビニルポリマー、或いは、式(I)又は(II)で表される上記のポリマーの有利な実施態様として提供されるビニルポリマーであって、以下の式で表されるモノマーを0から4%の間の割合で更に含むビニルポリマーを使用することが、とりわけ有利である。
【0100】
【化5】

【0101】
式中:
Raaは、水素原子又はメチル基であり;
Rbbは、COORcc、又は−COSRcc若しくは−CORcc若しくはCONRccRdd基を表し、
式中、
Rccは、該受容体−リガンドペアの第1の半分を与える両親媒性分子中の官能基を表し、且つ、
Rddは、(C−C)アルキル基、アルキルスルホン酸、水素原子、糖部分、mが1から4の範囲内である1級、2級、又は3級ヒドロキシアルキル−(CH)mOH、特に4から10のアルキレンオキサイドユニットを有するポリオキシエチレンなどのポリオキシアルキレン、双性イオン基、tが1から5までの整数であり且つRf1、Rf2が同一又は異なり水素原子又は(C−C)アルキル基を表す (CH)−NRf1Rf2基を表す。
【0102】
この場合において、該ペア(両親媒性分子中の官能基/担体に付着した官能基)は、上記のものから選択するのが有利である。
【0103】
本発明のキットの別の有利な実施態様においては、該担体と該両親媒性分子が、該両親媒性分子中の少なくとも1つの反応性官能基と、該担体に付着した少なくとも1つの反応性官能基との間の共有結合により相互作用する。より詳細には、該キットは以下のような特徴であることが好ましい:
a)該両親媒性分子が、化学反応性ペアの第1の半分を与える少なくとも1つの官能基を更に含み、
b)該担体が、該化学反応性ペアの第2の半分を与える、担体表面に付着した少なくとも1つの官能基を更に含み、且つ
c)該担体上への該両親媒性分子の結合が、該両親媒性分子の官能基(単数又は複数)と該担体に付着した官能基(単数又は複数)と化学反応させることにより行われる。
【0104】
本発明のキットであって、両親媒性分子と担体が、両親媒性分子中の少なくとも1つの反応性官能基(単数又は複数)と、担体に付着した反応性官能基(単数又は複数)との間で共有結合するものにおいては、両親媒性分子として、上記で一般的に定義されたような式(I)又は(II)で表されるビニルポリマー、或いは、式(I)又は(II)で表される上記のポリマーの有利な実施態様として提供されるビニルポリマーであって、以下の式で表されるモノマーを0から4%の間の割合で更に含むビニルポリマーを使用することが、とりわけ有利である。
【0105】
【化6】

【0106】
式中:
Raaaは、水素原子又はメチル基であり;
Rbbbは、COORccc、又は−COSRccc若しくは−CORccc若しくはCONRcccRddd基を表し、
式中、
Rcccは、該化学反応性ペアの第1の半分を与える両親媒性分子中の反応性官能基を表し、且つ、
Rddは、(C−C)アルキル基、アルキルスルホン酸、水素原子、糖部分、mが1から4の範囲内である1級、2級、又は3級ヒドロキシアルキル−(CH)mOH、特に4から10のアルキレンオキサイドユニットを有するポリオキシエチレンなどのポリオキシアルキレン、双性イオン基、tが1から5までの整数であり且つRf1、Rf2が同一又は異なり、水素原子又は(C−C)アルキル基を表す (CH)−NRf1Rf2基を表す。
【0107】
これらのキットにおいては、該ペア(両親媒性分子中の反応性官能基/担体に付着した反応性官能基)は、上記のものから選択するのが有利である。
【0108】
更に本発明は、膜タンパク質を複合体化させ、担体上へと付着させるための、両親媒性分子の使用に関する。該両親媒性分子、該膜タンパク質、及び該担体は、上記の両親媒性分子、膜タンパク質、及び担体からなる群のいずれであってもよい。
【0109】
最後に本発明は、上記で定義された任意の両親媒性分子であって、受容体−リガンド分子ペアの第1の半分又は化学反応性ペアの第1の半分を与える、少なくとも1つの官能基を更に含むものにも関する。
【0110】
1番目の実施態様においては、該両親媒性分子は、受容体−リガンド分子ペアの第1の半分を与える少なくとも1つの官能基を更に含む。そのような官能性両親媒性分子は、該受容体−リガンド分子ペアの第2の半分を与える少なくとも1つの官能基をその表面に任意の手段により付着した任意の膜タンパク質を、両親媒性分子中の官能基(単数又は複数)と担体に付着した官能基(単数又は複数)との間の特異的な受容体−リガンド結合により、担体に結合させることができる。両親媒性分子中の該官能基(単数又は複数)は、ビオチン、アビジン、グルタチオン、グルタチオンS−転移酵素、カルモジュリン、ATPアーゼ、プロテインキナーゼ、ホスホジエステラーゼ、神経伝達物質、L-アルギニン、p−アミノベンズアミジン、セリンプロテアーゼ、L-リジン、プラスミノーゲン(及びアクチベーター)、rRNA、AMP、ADP、ATP、酵素補因子、レクチン、グルカンタンパク質、糖脂質(glucolipid)、多糖類、へパリン、成長因子及び凝固因子、ステロイド受容体、エンドヌクレアーゼ、リポタンパク質、リパーゼ、シバクロンブルー(登録商標)、NAD若しくはNADP酵素補因子、アルブミン、凝固因子、インターフェロン、抗原、ハプテン、抗体、ニトリロ三酢酸(NTA)、EDTA、フェニルボロン酸(APB)、サリチルヒドロキサム酸(ASH)、オリゴヌクレオチド、シクロペンタジエニル基、アルキニル基又はアルコキシルアミン基から選択するのが有利である。好ましくは、両親媒性分子中の該官能基(単数又は複数)は、ビオチン、アビジン、グルタチオン、グルタチオンS−転移酵素、抗原、ハプテン、抗体、ニトリロ三酢酸(NTA)、EDTA又はオリゴヌクレオチドから選択する。
【0111】
更に、該両親媒性分子は、式(I)又は(II)で表されるポリマーであって、以下の式で表されるモノマーを0から4%の間の割合で更に含むものであることが有利であり、式中、Raa及びRbbは上記で定義されたものである。
【0112】
【化7】

【0113】
2番目の実施態様においては、該両親媒性分子は、化学反応性ペアの第1の半分を与える少なくとも1つの官能基を、更に含む。そのような官能性両親媒性分子は、任意の膜タンパク質を、該化学反応性ペアの第2の半分を与えるその表面に任意の手段により付着した少なくとも1つの反応性官能基を含む担体と、該両親媒性分子中の反応性官能基(単数又は複数)と該担体に付着した反応性官能基(単数又は複数)との間の共有結合を通して、結合させることができる。該両親媒性分子における反応性官能基ペア(単数又は複数)は、上記のものから選択するのが有利である。
【0114】
更に、該両親媒性分子は、式(I)又は(II)で表されるポリマーであって、以下の式で表されるモノマーを0から4%の間の割合で更に含むものであることが有利であり、式中、Raaa及びRbbbは上記で定義されたものである。
【0115】
【化8】

【0116】
本発明の製品であって、担体及び上記のように膜タンパク質と複合体化された両親媒性分子を用いて担体表面に付着した少なくとも1つの膜タンパク質を含むものの、他の適用は、そのような製品を、サンプル中の膜タンパク質の質量分析アッセイの過程における一過性の工程として、使用することを含む。
【0117】
事実、膜タンパク質の場合は、タンパク質同定のためのプロテオミクスの非常に有益な技術である質量分析が、界面活性剤の存在により、緩やかなタンパク質分解を受けた膜タンパク質由来のタンパク質又はペプチドの検出が妨げられるため、非常に難しい。上記のような両親媒性分子による固定は、界面活性剤を取り除きつつ、両親媒性分子を用いて担体上に固定された膜タンパク質の部分的なタンパク質分解をも可能とすることにより、この問題を克服するための非常に賢い手段を提供する(図8参照)。
【0118】
従って本発明は、担体及び上記のように膜タンパク質と複合体化された両親媒性分子を用いて担体表面に付着した少なくとも1つの膜タンパク質を含む本発明の製品を製造する工程を含む、サンプル中における膜タンパク質の分析方法にも関する。
【0119】
好ましい実施態様においては、該方法は以下の工程を含む:
a)膜タンパク質を界面活性剤中に溶解し、
b)該膜タンパク質を、上記の両親媒性分子と複合体化させ、界面活性剤を除去し、
c)該膜タンパク質を、上記の担体上へ、該両親媒性分子を通して固定し、
d)膜タンパク質のタンパク質断片を生成しつつ、膜貫通ドメインが該両親媒性分子と複合体形成して該担体へ付着したままとなるよう、徹底的に洗浄し、プロテアーゼを加え、
e)膜貫通ドメインが該両親媒性分子と複合体化して結合したままである該担体を取り除き、当該タンパク質断片を、質量分析により分析する。
【0120】
本発明のこの適用に対しては、上記の種々の担体、種々の両親媒性分子、両親媒性分子と担体の種々の結合型を用いることができる。
【0121】
有利な実施態様においては、該担体は特に磁気ビーズから成っていてもよく、この場合、工程e)にて、磁石により容易に分離できる。
【0122】
有利な両親媒性分子は、具体的には、上記の任意のビニルポリマーであってもよい。
【0123】
該両親媒性分子は、例えばビオチン付加し、該担体は該両親媒性分子を担体に結合させるためアビジンコーティングすることができる。
【0124】
これらの様々な好ましい実施態様は、当然のことながら組み合わせてもよい。
【実施例】
【0125】
実施例1.ビオチン化アンフィポルによる、ストレプトアビジン標識チップ表面への膜タンパク質の固定
1.1 原理
膜タンパク質の固体担体表面への固定のために開発された実験原理は以下のとおりである(図2):膜タンパク質は、界面活性剤にて可溶化し(工程a)次いで、ビオチン化アンフィポルで捕獲し、界面活性剤を除去する(固定b);得られた複合体を、ストレプトアビジン基をグラフトした担体と接触させ、特異的なビオチン/アビジン相互作用により複合体を担体と結合させる(工程c)。タンパク質リガンドを担体上にて循環させることで、リガンド/タンパク質相互作用を研究することができる(工程d)。
【0126】
固定化は、表面プラズモン共鳴(SPR)技術により実験的にモニターした。この技術によりアッセイ担体と相互作用する循環分子により引き起こされた表面プラズモン共鳴の変化を継続して観察することで、循環分子と1以上の固定化分子(単数又は複数)との間の相互作用を検出し、リアルタイム・モニタリングを行うことが可能である。SPR実験の結果から、担体と相互作用している物質の量を、時間でモニターすることができる。
【0127】
1.2 ビオチン化アンフィポル(BApol)の合成及び溶液中の挙動
1.2.1 ビオチン化アンフィポル(BApol)の合成
BApolの構造を図3に示す。
BApolの合成方法は、非官能性アンフィポルの合成方法(7、16−17)から派生したものであり、低分子量のポリアクリル酸のカルボン酸官能性と、イソプロピルアミン及びオクチルアミンなどの適切に選択されたアルキルアミン、並びにこの特定な場合においては、低い比率で、選択的に単保護されたエチレンジアミンとで、アミド結合を形成する工程を含む。ポリマーに結合していないアミン官能基の脱保護に際しては、官能性アンフィポル(「普遍的(universal)」アンフィポル、又は「UAPol」;図2)が得られ、それを任意の十分に活性な基質上にて反応し得る。従ってBApolは、UAPolのアミン官能基が、D−ビオチンサクシニミジルエステルと反応することで得られる(図3)。
【0128】
1.2.2 アッセイ
BAPolの溶液中特性は、非ビオチン化APolsのものと同一であり、特に、同サイズ、同分子量分布の粒子を形成する。
更にBAPolで捕獲された膜タンパク質は、(界面活性剤なしでも凝集せず)溶液中で適切に維持され、非ビオチン化アンフィポルと同様である。
要約するとBAPolは、ビオチン分子がグラフトされているが、アビジン又はストレプトアビジンに特異的に結合するという能力以外は、ビオチン−フリーのAPolと同じ物理化学的及び生化学特性を有しているため、膜タンパク質の複合体化させ、界面活性剤なしで水溶性として担体と結合させるために、使用することが可能である。
【0129】
1.3 ストレプトアビジン基がグラフトされた担体とアンフィポルの相互作用
非ビオチン化アンフィポル(HAPol)及びビオチン化アンフィポル(BApol)の溶液を、ストレプトアビジン基がグラフトされた担体(SA担体)の2つの別々のチャネルに、別々に注入した。
得られた結果によれば、注入後、両ポリマーとも、SA担体へ付着することが示されたが(図4)、結合したBApolの重量は、HAPolの重量の約3倍であった。
両者を区別しているのはビオチングラフトの有無だけであることから、この実験により、アンフィポルのチップへの高い吸着率は、ビオチンの存在に起因することが確認できた。
【0130】
1.4 BApolに捕獲された膜タンパク質の脱着及びリガンド認識検査
生化学が周知であり、そのAPolの挙動も事前に検査されている以下の4つのモデル膜タンパク質を用いて、本発明の膜タンパク質の固定の方法を検査した:OmpAタンパク質の膜貫通ドメイン(tOmpA)、バクテリオロドプシン(BP)、bfシトクロム(bf)及びbcシトクロム(bc)である。
更にSPRによって膜タンパク質/リガンド相互作用をモニターするためのリガンドとして、これら4つの各タンパク質に対して産生された抗体を含有するウサギ血清を調製した。
【0131】
1.4.1 SA担体上への膜タンパク質の結合方法
これらの4つのタンパク質をBAPolにて捕獲した:
−tOmpAは、6g/lのオクチルテトラオキシエチレン界面活性剤(C)存在下では、濃度1.2g/lで溶解して利用できる。100g/lのBAPol水溶液18μlを500μlのタンパク質溶液に加えることにより(即ち1gのtOmpAにつき4gのBAPol)、捕獲を行った。15分間インキュベーション後、30mgのバイオ−ビーズを加え、攪拌下で3時間、4℃にてインキュベーションを行い、その後に溶液を回収し、バイオ−ビーズを除去した。
−BR溶液は、界面活性剤オクチルチオグルコシド(OTG)中にて1g/lのタンパク質を含有し、OTGは20mMである。100g/lのBAPol水溶液23μlを450μlのタンパク質溶液に加えた(即ち1gのBRにつき5gのBAPol)。15分間インキュベーション後、30mgのバイオ−ビーズを加え、攪拌下で3時間、4℃にてインキュベーションを行い、その後に溶液を回収し、バイオ−ビーズを除去した。
−bf溶液は、界面活性剤ラウリルマルトシド(LM)中にて0.27g/lのタンパク質及び0,1g/lのLMを含有する。100g/lのBAPol水溶液1.2μlを150μlのタンパク質溶液に加えた(即ち1gのbfにつき3gのBAPol)。15分間インキュベーション後、140mgのバイオ−ビーズを加え、攪拌下で3時間、4℃にてインキュベーションを行い、その後に溶液を回収し、バイオ−ビーズを除去した。
−bc溶液は、LM溶液中35g/lのタンパク質及び0.1g/lのLMを含有する。100g/lのBAPol水溶液119μlを225μlのタンパク質溶液に加えた(即ち1gのbcにつき1.5gのBAPol)。15分間インキュベーション後、90mgのバイオ−ビーズを加え、攪拌下で3時間、4℃にてインキュベーションを行い、その後に溶液を回収し、バイオ−ビーズを除去した。
【0132】
次に、得られたタンパク質/BAPol複合体及びBAPol単体を別々のSA担体のチャネルに置いた:溶液は全てNaCl−HEPES緩衝液(150mM NaCl、10mM HEPES、pH7.4)で希釈してBAPolの濃度を30μMに調整し、次いで各々100μlの分量を、各溶液がSA担体上の別々のチャネルを通るように、ビアコア2000(Biacore 2000)機器に注入した。注入間期にはNaCl−HEPES緩衝液を循環させた。循環流は注入時、注入間期ともに10μl/分に設定した。
実験により、該物質が、該担体に、効果的且つ非可逆的に結合することが示された(図5)。
【0133】
1.4.2 BAPolによりSA担体上に固定された膜タンパク質へのリガンド結合アッセイ
続いて、任意の抗体のみを保持し、NaCl−HEPES緩衝液で100倍に希釈した精製血清を用いて、抗体/固定物質の認識実験を行った。
要約すると、あらかじめBAPol又はBAPolに捕獲されたタンパク質でコーティングしたチャネルに、10μlの免疫前精製血清(pre−i.)を注入し、続いてtOmpA(Post−i.−OA)、BR(Post−i.−BR)、bf(Post−i.−b6f)そして続いてbc1(Post−i.−bc1)に対して産生された免疫後の血清を注入した。注入期間は60秒で、時刻ゼロを矢印で示した。注入間期には、NaCl−HEPES緩衝液(150mM NaCl、HEPES 10mM pH=7.4)を担体上に流した。各々の記録は異なるサンプルでコーティングされたチャネルより得た。
【0134】
観察された応答は、全て特異的であった(図6参照):全体として、免疫後血清を検査し、且つ固定化に使用した(それに対して血清抗体が産生された)タンパク質を保有するチャネル上を流れる場合のみ、注入後もSPRシグナルが高いままである、という結果が示された。
【0135】
これにより膜タンパク質は、チャネル固体上に固定されたことが確かめられた。またこの開発された方法は、膜タンパク質とリガンドとの間の相互作用をモニターするために用いるのにも便利であることが示された。
【0136】
更に、非精製血清を用いて同様の実験を行ったところ、同様の結果となった。つまり特異的リガンドは、非精製血清のような極度に複雑な溶媒内においても検出され得ることが示された(データ示さず)。
【0137】
1.5 担体上のタンパク質固定媒介剤の決定
タンパク質のSA担体への結合が、特異的なビオチン/ストレプトアビジン結合によりポリマーに共有結合したビオチンにより媒介されているかについて調べるため、対照実験において、検査するタンパク質を(ビオチン化されていない)HAPol又は(ビオチン化された)BAPolのどちらかにて捕獲後にチップ上に置き、得られた応答を比較した。
結果から、タンパク質がBAPolに捕獲されていた場合にのみ、抗体はSA担体に有意に結合し、従って、SA担体に置かれたタンパク質を認識することが示された(図7参照)。
【0138】
1.6 結論
これらの結果から、担体上の膜タンパク質の固定のための本発明の方法の信頼性及び効力が実証された。事実、実験結果によって、アンフィポルが、化学的に適切に生成されたものであれば(この場合においてはビオチンのグラフトによるが、他の多くの取得方法が用いられてもよい)、過度の開発をせずとも、固体担体の表面における任意のタンパク質の固定に容易に用いることができることが示された。
【0139】
更に、得られた結果から、このように固定されたタンパク質はリガンドとの相互作用の研究(今回のケースにおいては、循環抗体の検出)に使用可能であることが示された。担体及びその表面に付着した1つ以上の膜タンパク質を含む本発明の製品は、従って、担体表面に固定された膜タンパク質のリガンドの生物試料中の存否を検出するために使用でき、従って、例えば以下のような、種々のタイプの適用が可能である:
・本明細書中にて示されたように、膜抗原に対して産生された循環抗体を検出する、又は
・薬理学的に価値のある膜受容体リガンドについて、化合物バンクをスクリーニングし、該受容体のアゴニスト若しくはアンタゴニストを同定する。
【0140】
更に、得られた結果から、このように固定されたタンパク質は、酵素反応装置を与えるのに使用し得ることが示された:担体(ビーズ、膜、繊維、ナノチューブなど)及びその表面に付着した1つ以上の膜タンパク質を含む本発明の製品は、該タンパク質が酵素作用を有する溶液中に循環している生産物を、該タンパク質に暴露するために、実際に使用可能である。
【0141】
実施例2. ビオチン化アンフィポルによるストレプトアビジン標識磁気ビーズ表面での膜タンパク質の固定
本発明者らは、ストレプトアビジンに結合させて官能基化した磁気ビーズ(SAビーズ)上におけるバクテリオロドプシン(BR)の固定を試験した。
【0142】
以下の方法により、BRとビオチン化アンフィポル(BAPol)を複合体化させた:界面活性剤オクチルチオグルコシド(OTG)中のBR溶液は、1.1g/lのタンパク質と、18mMのOTGを含有する。100g/lのBAPol水溶液17μlを300μlのタンパク質溶液に加えた(即ち1gのBRにつき5gのBAPol)。15分間インキュベーション後、80mgのバイオ−ビーズを加え、攪拌下で3時間、4℃にてインキュベーションを行い(OTGの吸着)、その後に溶液を回収し、バイオ−ビーズを除去した。
【0143】
SAビーズ100mgをNaCl−HEPES緩衝液(150mM NaCl、10mM HEPES、pH7.4)にて3回洗浄し、次いで過剰の液体を除去した;タンパク質溶液はNaCl−HEPES緩衝液中にて13mg/Lに希釈した。
【0144】
時刻0において、ビーズにタンパク質溶液を加え、混合物をボルテックスにて4℃で攪拌した。サンプルを1時間45分後に回収した。磁石でビーズを分離し、上清を解析した。BRの固定は、ビーズ存在下のインキュベーションの前後で溶液の光学密度を測定して、モニターした。
【0145】
結果を図9に図解する。結果から、インキュベーション後は、560nmにおけるBRに特徴的なピークが消失していることが示され、BRがSA磁気ビーズに結合したことが示される。
これらの結果より、ビーズに膜タンパク質を固定することも可能であることが実証された。
【0146】
実施例3.ポリヒスチジン標識アンフィポル(HISTAPol)の合成
ビオチン化アンフィポル(BAPol)の構造を図3に示す。
ポリヒスチジン標識アンフィポル(HISTAPol)の合成方法は、非官能性アンフィポルの合成方法(7、16−17)に由来し、3つの工程を含む。
【0147】
最初の工程は、低分子量のポリアクリル酸のカルボン酸官能基と、イソプロピルアミン及びオクチルアミンなどの適切に選択されたアルキルアミンで、アミド結合を形成することを含む。
二番目の工程は、ヒスチジンへキサマーの作成に関与する。この合成は、選択的に保護されたモノマーのダブルカップリングに関する自動化技術を用いて、固体担体上にて行われる。
最後の工程は、ペプチドのN末端と、合成の最初の工程の結果物であるアンフィポルの酸性官能基の縮合を含む。該ペプチドは、側鎖が保護され固体担体上に結合されたままの状態で用いる。使用したアンフィポル及びペプチドの量は、グラフトされたポリ(ヒスチジン)標識の量の2%を超えないように計算する。ペプチドを脱保護し、固体担体から切断後、HISTAPolを従来法により精製する。該合成を図10に図示した。
【0148】
このような合成は、別のタイプのアンフィポル又は両親媒性分子を用いて行うこともできる。更には、他の合成方法を用いて両親媒性分子、特にポリ(ヒスチジン)標識で標識されたアンフィポルの合成を行っても良い。
【0149】
このような官能性アンフィポルは、これらのアンフィポルと複合体化された膜タンパク質を、Ni−NTA基保有担体へ付着させるのに用いてもよい。
【0150】
文献目録
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体及びその表面に付着した少なくとも1つの膜タンパク質を含む製品であって、該膜タンパク質が、該膜タンパク質と複合体化された両親媒性分子を用いて該担体に付着されることを特徴とする、製品。
【請求項2】
前記両親媒性分子が、両親媒性ビニルポリマー、両親媒性ポリペプチド、両親媒性多糖類、又は両親媒性デンドリマーから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記両親媒性分子が、以下の式(I):
【化1】

で表されるビニルポリマーであり、
式中、
RaからRaは、同一又は異なり、水素原子又はメチル基を表し:
RbからRbは異なり、以下から選択され:
−以下から選択される親水性基
・Mが陽イオン性の対イオンである、カルボン酸基−COO、スルホン酸基−SO、又はホスホン酸基−PO
・(C−C)アルキルカルボン酸基、(C−C)アルキルスルホン酸基、又は(C−C)アルキルホスホン酸基
・フェニルスルホン酸基
・CONRc1Rc2であって、式中、Rc1及びRc2は、同一であっても異なっていてもよく、(−C(CHORd1)(CHORd2)(CHORd3))基を表し、式中、Rd1、Rd2及びRd3は、独立に、水素原子、糖部分、特に4から10のアルキレンオキサイドユニットを含むポリオキシエチレンなどのポリオキシアルキレン、双性イオン基、mが1から4の範囲内である1級、2級、又は3級ヒドロキシアルキル−(CH)mOH、(C−C)アルキルカルボン酸基、(C−C)アルキルスルホン酸基、又は(C−C)アルキルホスホン酸基、糖部分を表すもの
・COOReであって、式中、Reが、糖部分、mが1から4の範囲内である1級、2級、又は3級ヒドロキシアルキル−(CH)mOH、特に4から10のアルキレンオキサイドユニットを有するポリオキシエチレンなどのポリオキシアルキレン、tが1から5までの整数であり且つRf1、Rf2が同一であっても異なっていてもよく水素原子又は(C−C)アルキル基を表す (CH)t−NRf1Rf2基を表すもの、
・ヒドロキシル基
・mが1から4の範囲内である1級、2級、又は3級ヒドロキシアルキル−(CH)mOH、
・1級、2級、3級アミン
・4級アンモニウム
・N−ホルムアミド、N−アルキルホルムアミド、
・N−アセトアミド、N−アルキルアセトアミド、
・N−ピロリドニル、
・CONRg1Rg2であって、式中、Rg1及びRg2は、同一であっても異なっていてもよく、水素原子、糖部分、特に4から10のアルキレンオキサイドユニットを含むポリオキシエチレンなどのポリオキシアルキレン、双性イオン基、mが1から4の範囲内である1級、2級、又は3級ヒドロキシアルキル−(CH)mOHであるもの、
・COORh又はCONRkRlであって、式中、Rhが(C−C)アルキル基、アルキルスルホン酸を表すか、又は水素原子でないという条件でRe若しくはRg1に与えた意味の1つを有し、Rk及びRlは独立に、Rhに与えた意味の1つを有し且つ更にそのうちの1つが水素原子を表し得るもの;
−以下から選択される疎水性基:
・水素原子、
・ハロゲン原子、
・−CONH(−C(CHORm1)(CHORm2)(CHORm3))基であって、式中、Rm1、Rm2、Rm3が独立に、3から50の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐のアルキル、アルケニル若しくはアルキニル、Rn及びRoが3から50の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐のアルキル、アルケニル若しくはアルキニル基であるアルキルカルバモイル(O=C−NH−Rn)若しくはアシル(O=C−Ro)であるもの、
・COORp、CORp、COSRp、C−NH−Rp又はCONRq1Rq2であって、式中、Rpは3から50の炭素原子を含む直鎖若しくは分岐及び/又は環状のアルキル、アルキニル若しくはアルケニル基であり、且つRq1及びRq2は、同一であっても異なっていてもよくRpに与えた意味の1つを有し、更にそのいずれか1つが水素原子を表し得るもの、
・−Rr、−ORr、又は−SRr基であって、式中、Rrが3から50の炭素原子を含む直鎖若しくは分岐及び/又は環状のアルキル、アルケニル又はアルキニル基を表すもの;或いは
−以下から選択される両親媒性基:
・アルキル基−(CH)m−Rsであって、式中、mが6から20の間であり、且つRsがカルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、硫酸基、リン酸基、双生イオン基、アンモニウム基、ポリ(オキシエチレン) 基、糖鎖などの親水性基であるもの、
・ポリ(オキシエチレン)−O−アルキル基(−(CHCHO)m−Rt)であって、式中、Rtは6から20の炭素原子を持つ直鎖、分岐若しくは環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基であるもの、
・COORu、CORu、COSRu、CONRvRw基であって、式中、Ruがポリ(オキシエチレン)−O−アルキル基(−(CHCHO)m−Rt)であり、且つRtが6から20の炭素原子を持つ直鎖、分岐又は環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基であるもの、グリコシルアルキル基であって、式中、Rvが水素原子若しくはRuに与えた意味の1つを有するものであり、式中、RwがRuに与えた意味の1つを有するもの、
・−CONH(−C(CHORx1)(CHORx2)(CHORx3))基であって、式中、Rx1、Rx2、Rx3の基のうち1つ若しくは2つが、Rm1、Rm2、Rm3に与えた意味の1つを有し、且つこれらの基のうち1つ若しくは2つが、水素原子でなく且つRd1、Rd2、Rd3、Ruに与えた意味の1つを有するもの、
或いは、Rx1、Rx2、Rx3が同一又は異なり、且つそれらの基のうち少なくとも1つが水素原子でなく且つRuに与えた意味の1つを有するもの;
nは2以上の整数であり、好ましくは2から10の間、2から8の間、2から6の間、2から4の間であり、有利にはnが3であり;
からXは、それぞれ該ユニットの割合;
【数1】

を表し、ここで、Rbiが疎水性基若しくは両親媒性基である基の割合の合計対、Rbiが親水性基である基の割合の合計の比率は、
【数2】

で表され、0.25から2.5の間であり;且つ
平均分子量が500から100,000の間、より有利には500から50,000の間である、
ことを特徴とする、請求項2に記載の製品。
【請求項4】
nが3であり、該ビニルポリマーが、以下の式(II):
【化2】


で表され、
式中、Ra、Ra及びRaは、同一又は異なり、水素原子又はメチル基を表し;
Rbは以下から選択される親水性基であり:
・Mが陽イオン性の対イオンである、カルボン酸基−COO、スルホン酸基−SO、又はホスホン酸基−PO
・(C−C)アルキルカルボン酸基、(C−C)アルキルスルホン酸基、又は(C−C)アルキルホスホン酸基
・フェニルスルホン酸基
・CONRc1Rc2であって、式中、Rc1及びRc2は、同一であっても異なっていてもよく、(−C(CHORd1)(CHORd2)(CHORd3))基を表し、式中、Rd1、Rd2及びRd3は、独立に、水素原子、糖部分、特に4から10のアルキレンオキサイドユニットを含むポリオキシエチレンなどのポリオキシアルキレン、双性イオン基、mが1から4の範囲内である1級、2級、又は3級ヒドロキシアルキル−(CH)mOH、(C−C)アルキルカルボン酸基、(C−C)アルキルスルホン酸基、又は(C−C)アルキルホスホン酸基、糖部分を表すもの
Rbは:
−以下から選択される疎水性基:
・水素原子、
・ハロゲン原子、
・−CONH(−C(CHORm1)(CHORm2)(CHORm3))基であって、式中、Rm1、Rm2、Rm3は、独立に、3から50の炭素原子を含む直鎖若しくは分岐のアルキル、アルケニル若しくはアルキニル、Rn及びRoが3から50の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐のアルキル、アルケニル若しくはアルキニル基であるアルキルカルバモイル(O=C−NH−Rn)若しくはアシル(O=C−Ro)であるもの、
・COORp、CORp、CSRp、C−NH−Rp又はCONRq1Rq2であって、式中、Rpは3から50の炭素原子を含む直鎖若しくは分岐及び/又は環状のアルキル、アルキニル若しくはアルケニル基であり、且つRq1及びRq2は、同一であっても異なっていてもよく、Rpに与えた意味の1つを有し、更にそのいずれか1つが水素原子を表し得るもの、
・−Rr、−ORr、又は−SRr基であって、式中、Rrが3から50の炭素原子を含む直鎖若しくは分岐及び/又は環状のアルキル、アルケニル又はアルキニル基を表すもの;或いは
−以下から選択される両親媒性基:
・アルキル基−(CH)m−Rsであって、式中、mが6から20の間であり、Rsがカルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、硫酸基、リン酸基、双生イオン基、アンモニウム基、ポリ(オキシエチレン) 基、糖鎖などの親水性基であるもの、
・ポリ(オキシエチレン)−O−アルキル基(−(CHCHO)m−Rt)であって、式中、Rtが6から20の炭素原子を持つ直鎖、分岐若しくは環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基であるもの、
・COORu、CORu、COSRu、CONRvRw基であって、式中、Ruがポリ(オキシエチレン)−O−アルキル基(−(CHCHO)m−Rt)であり、且つRtが6から20の炭素原子を持つ直鎖、分岐若しくは環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基であるもの、グリコシルアルキル基であって、式中、Rvが水素原子若しくはRuに与えた意味の1つを有するものであって、式中、RwがRuに与えた意味の1つを有するもの、
・−CONH(−C(CHORx1)(CHORx2)(CHORx3))基であって、式中、Rx1、Rx2、Rx3の基のうち1つ若しくは2つが、Rm1、Rm2、Rm3に与えた意味の1つを有し、且つこれらの基のうち1つ若しくは2つが、水素原子でなく且つRd1、Rd2、Rd3、Ruに与えた意味の1つを有するもの、
又は、Rx1、Rx2、Rx3が同一又は異なり、且つそれらの基のうち少なくとも1つが水素原子でなく且つRuに与えた意味の1つを有するものであり、
Rbは以下から選択される親水性基であり:
・COOReであって、式中、Reが、糖部分、mが1から4の範囲内である1級、2級、又は3級ヒドロキシアルキル−(CH)mOH、特に4から10のアルキレンオキサイドユニットを有するポリオキシエチレンなどのポリオキシアルキレン、tが1から5までの整数であり且つRf1、Rf2が同一であっても異なっていてもよく水素原子又は(C−C)アルキル基を表す (CH)t−NRf1Rf2基、を表すもの
・ヒドロキシル基
・mが1から4の範囲内である1級、2級、又は3級ヒドロキシアルキル−(CH)mOH、
・1級、2級、3級アミン
・4級アンモニウム
・N−ホルムアミド、N−アルキルホルムアミド、
・N−アセトアミド、N−アルキルアセトアミド、
・N−ピロリドニル、
・CONRg1Rg2であって、式中、Rg1及びRg2が、同一であっても異なっていてもよく、水素原子、糖部分、特に4から10のアルキレンオキサイドユニットを含むポリオキシエチレンなどのポリオキシアルキレン、双性イオン基、mが1から4の範囲内である1級、2級、又は3級ヒドロキシアルキル−(CH)mOHであるもの(R3)、
・COORh又はCONRkRlであって、式中、Rhが(C−C)アルキル基、アルキルスルホン酸を表すか、又は水素原子でないという条件でRe若しくはRg1に与えた意味の1つを有し、且つRk及びRlは独立に、Rhに与えた意味の1つを有し且つ更にそのうちの1つが水素原子を表し得るもの;
x1、x2、x3は、それぞれ該ユニットの割合を表し、ここで、
−x1が20から90%の間
−x2が10から80%の間
−x3が 0から60%の間であり、且つ
/x+xが、0.25から2.5の間であり;且つ
平均分子量が500から100,000の間、より有利には500から50,000の間であること;
を特徴とする、請求項3に記載の製品。
【請求項5】
Ra、Ra及びRaは同一又は異なり、水素原子、又はメチル基を表し;
Rbは、Mが陽イオン性の対イオンであるCOOを表し;
Rbは、CONRq1Rq2を表し、式中、Rq1及びRq2が、独立に、3から50の炭素原子を含む直鎖若しくは分岐及び/又は環状のアルキル、アルキニル若しくはアルケニル基を表し、且つ更にそのいずれか1つが水素原子を表し得;
Rbは、CONRkRlを表し、式中、Rk及びRlが、独立に、(C−C)アルキル基、アルキルスルホン酸、糖部分、mが1から4の範囲内である1級、2級、又は3級ヒドロキシアルキル−(CH)mOH、特に4から10のアルキレンオキサイドユニットを有するポリオキシエチレンなどのポリオキシアルキレン、双性イオン基、tが1から5までの整数であり、Rf1、Rf2が同一又は異なり且つ水素原子又は(C−C)アルキル基を表し、且つ更にRk及びRlのいずれか1つが水素原子を表し得るものである (CH)t−NRf1Rf2基、を表すもの、
であることを特徴とする、請求項4に記載の製品。
【請求項6】
前記担体が固体担体であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の製品。
【請求項7】
前記担体が、チップ、ビーズ、膜、繊維又はナノチューブから選択されることを特徴とする、請求項6に記載の製品。
【請求項8】
前記担体が、ポリマー、デンドリマー、小胞又はミセルから選択される、可溶性高分子又は粒子であることを特徴とする、請求項6に記載の製品。
【請求項9】
前記両親媒性分子の前記担体への結合が、疎水結合、イオン結合、両親媒性分子中の少なくとも1つの官能基と担体表面の少なくとも1つの官能基との間の特異的な受容体−リガンド結合、又は両親媒性分子中の少なくとも1つの反応性官能基と担体表面の少なくとも1つの反応性官能基との間の共有結合により、媒介されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の製品。
【請求項10】
a.前記両親媒性分子が、受容体−リガンド分子ペアの第1の半分を与える少なくとも1つの官能基を更に含み、
b.前記担体が、該受容体−リガンド分子ペアの第2の半分を与える、担体表面に付着した少なくとも1つの官能基を更に含み、且つ
c.該担体上への該両親媒性分子の結合が、該両親媒性分子中の官能基(単数又は複数)と該担体に付着した官能基(単数又は複数)との間の、特異的な受容体−リガンド結合を通して媒介される:
ことを特徴とする、請求項9に記載の製品。
【請求項11】
前記受容体−リガンドペア(両親媒性分子中の官能基/担体に付着した官能基)が以下のペア:(ビオチン/アビジン)、(グルタチオン/グルタチオンS−転移酵素、グルタチオン−結合タンパク質若しくはグルタチオンS−転移酵素を含む融合タンパク質)、(カルモジュリン/ATPアーゼ、プロテインキナーゼ、ホスホジエステラーゼ若しくは神経伝達物質)、(L−アルギニン若しくはp−アミノベンズアミジン/セリンプロテアーゼ)、(L−リジン/プラスミノーゲン(及びアクチベーター)若しくはrRNA)、(AMP、ADP若しくはATP/酵素補因子)、(レクチン/グルカンタンパク質、糖脂質(glucolipid)若しくは多糖類)、(へパリン/成長因子及び凝固因子、ステロイド受容体、エンドヌクレアーゼ、リポタンパク質若しくはリパーゼ)、又は (シバクロンブルー(登録商標)/NAD若しくはNADP酵素補因子、アルブミン、凝固因子若しくはインターフェロン)、(抗原/抗体)、(ハプテン/抗体)、(抗体/抗原)、(抗体/ハプテン)、(ニトリロ三酢酸(NTA)/遷移金属)、(EDTA/遷移金属)、(フェニルボロン酸(APB)/サリチルヒドロキサム酸(ASH))又は(オリゴヌクレオチド/相補的なオリゴヌクレオチド)、又はそれらに対応する逆のペア、
から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の製品。
【請求項12】
前記両親媒性分子が、式(I)又は(II)で表されるポリマーであって、以下の式
【化3】

で表されるモノマーを0から4%の間の割合で更に含み、
式中:
Raaは、水素原子又はメチル基であり;
Rbbは、COORcc、又は−COSRcc若しくは−CORcc若しくはCONRccRdd基を表し、
式中、
Rccは、前記受容体−リガンドペアの第1の半分を与える該両親媒性分子中の官能基を表し、且つ、
Rddは、(C−C)アルキル基、アルキルスルホン酸、水素原子、糖部分、mが1から4の範囲内である1級、2級、又は3級ヒドロキシアルキル−(CH)mOH、特に4から10のアルキレンオキサイドユニットを有するポリオキシエチレンなどのポリオキシアルキレン、双性イオン基、tが1から5までの整数であり、Rf1、Rf2が同一又は異なり且つ水素原子又は(C−C)アルキル基を表す (CH)t−NRf1Rf2基を表す、
ことを特徴とする、請求項11に記載の製品。
【請求項13】
a.前記両親媒性分子が、化学反応性ペアの第1の半分を与える少なくとも1つの官能基を更に含み、
b.前記担体が、該化学反応性ペアの第2の半分を与える、担体表面に付着した少なくとも1つの官能基を更に含み、且つ
c.該担体上への該両親媒性分子の結合が、該両親媒性分子中の官能基(単数又は複数)と該担体に付着した官能基(単数又は複数)を化学反応させることにより行われる:
ことを特徴とする、請求項9に記載の製品。
【請求項14】
前記少なくとも1つの膜タンパク質が、抗原、抗体、酵素、細胞受容体、イオンチャネル、又は、ウイルス、細菌若しくは真核生物由来の膜タンパク質から選択されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の製品。
【請求項15】
a)請求項2〜5及び10〜13のいずれかにて定義された、少なくとも1つの膜タンパク質、1つの担体及び1つの両親媒性分子を提供し、
b)該両親媒性分子と該膜タンパク質との間で複合体を形成させ、且つ
c)該複合体の両親媒性分子を、疎水結合、イオン結合、両親媒性分子中の少なくとも1つの官能基と担体表面の少なくとも1つの官能基との間での特異的な受容体−リガンド結合、又は両親媒性分子中の少なくとも1つの反応性官能基と担体表面の少なくとも1つの反応性官能基との間の共有結合により該担体へ付着させる:
ことを含む、請求項1〜14のいずれかに記載の製品の製造方法。
【請求項16】
生物試料中における、前記少なくとも1つの膜タンパク質のリガンドの存否を検出するための、請求項1〜14のいずれかに記載の製品の使用。
【請求項17】
前記少なくとも1つの膜タンパク質が、病原体の膜抗原であり、前記生物試料が血清サンプルであり、且つ前記検出されるリガンドが該抗原に対して産生された抗体であることを特徴とする、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記少なくとも1つの膜タンパク質のリガンドのための化合物バンクのスクリーニングのための、請求項1〜14のいずれかに記載の製品の使用。
【請求項19】
前記少なくとも1つのタンパク質が酵素であり、該酵素の基質を制御条件下で変換させるものである、請求項1〜14のいずれかに記載の製品の使用。
【請求項20】
担体及び両親媒性分子を含み、該両親媒性分子と該担体が、疎水結合、イオン結合、両親媒性分子中の少なくとも1つの官能基と担体表面の少なくとも1つの官能基との間の特異的な受容体−リガンド結合、又は、両親媒性分子中の少なくとも1つの反応性官能基と担体表面の少なくとも1つの反応性官能基との間の共有結合を通して相互作用することを特徴とする、請求項15に記載の方法を実行するためのキット。
【請求項21】
a)前記両親媒性分子が、受容体−リガンド分子ペアの第1の半分を与える少なくとも1つの官能基を更に含み、
b)前記担体が、該受容体−リガンド分子ペアの第2の半分を与える、担体表面に付着した少なくとも1つの官能基を更に含み、且つ
c)該担体への該両親媒性分子の結合が、該両親媒性分子中の官能基(単数又は複数)と該担体に付着した官能基(単数又は複数)との間での特異的な受容体−リガンド結合を通して媒介される:
ことを特徴とする、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
前記受容体−リガンドペア(両親媒性ビニルポリマーの官能基/担体に付着した官能基)が以下のペア:(ビオチン/アビジン)、(グルタチオン/グルタチオンS−転移酵素、グルタチオン−結合タンパク質若しくはグルタチオンS−転移酵素を含む融合タンパク質)、(カルモジュリン/ATPアーゼ、プロテインキナーゼ、ホスホジエステラーゼ若しくは神経伝達物質)、(L−アルギニン若しくはp−アミノベンズアミジン/セリンプロテアーゼ)、(L−リジン/プラスミノーゲン(及びアクチベーター)若しくはrRNA)、(AMP、ADP若しくはATP/酵素補因子)、(レクチン/グルカンタンパク質、糖脂質(glucolipid)若しくは多糖類)、(へパリン/成長因子及び凝固因子、ステロイド受容体、エンドヌクレアーゼ、リポタンパク質若しくはリパーゼ)、又は (シバクロンブルー(登録商標)/NAD若しくはNADP酵素補因子、アルブミン、凝固因子若しくはインターフェロン)、或いはそれらの対応する逆のペア、(抗原/抗体)、(ハプテン/抗体)、(抗体/抗原)、(抗体/ハプテン)、(ニトリロ三酢酸(NTA)/遷移金属)、(EDTA/遷移金属)、(フェニルボロン酸(APB)/サリチルヒドロキサム酸(ASH))又は(オリゴヌクレオチド/相補的なオリゴヌクレオチド)、
から選択されることを特徴とする、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
前記両親媒性分子が式(I)又は(II)で表されるポリマーであって、以下の式
【化4】

で表されるモノマーを0から4%の間の割合で更に含み、
式中、Raa及びRbbが、請求項12にて定義されたものであることを特徴とする、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
a)前記両親媒性分子が、化学反応性ペアの第1の半分を与える少なくとも1つの官能基を更に含み、
b)前記担体が、該化学反応性ペアの第2の半分を与える、担体表面に付着した少なくとも1つの官能基を更に含み、且つ
c)該担体への該両親媒性分子の結合が、該両親媒性分子の官能基(単数又は複数)と該担体に付着した官能基(単数又は複数)を化学反応させることにより行われる、
ことを特徴とする、請求項20に記載のキット。
【請求項25】
膜タンパク質を複合体化させ、担体に付着させるための、請求項2〜5及び10〜13のいずれかにて定義された両親媒性分子の使用。
【請求項26】
受容体−リガンド分子ペアの第1の半分を与える官能基を更に含む、請求項2〜5のいずれかにて定義された両親媒性分子。
【請求項27】
前記官能基が、ビオチン、アビジン、グルタチオン、グルタチオンS−転移酵素、カルモジュリン、ATPアーゼ、プロテインキナーゼ、ホスホジエステラーゼ、神経伝達物質、L-アルギニン、p−アミノベンズアミジン、セリンプロテアーゼ、L-リジン、プラスミノーゲン(及びアクチベーター)、rRNA、AMP、ADP、ATP、酵素補因子、レクチン、グルカンタンパク質、糖脂質(glucolipid)、多糖類、へパリン、成長因子及び凝固因子、ステロイド受容体、エンドヌクレアーゼ、リポタンパク質、リパーゼ、シバクロンブルー(登録商標)、NAD若しくはNADP酵素補因子、アルブミン、凝固因子、インターフェロン、抗原、ハプテン、抗体、ニトリロ三酢酸(NTA)、EDTA又はオリゴヌクレオチドから選択されることを特徴とする、請求項26に記載の両親媒性分子。
【請求項28】
前記両親媒性分子が式(I)又は(II)で表されるポリマーであって、以下の式
【化5】

で表されるモノマーを0から4%の間の割合で更に含み、
式中、Raa及びRbbが、請求項12にて定義されたものであることを特徴とする、請求項26に記載の両親媒性分子。
【請求項29】
化学反応性ペアの第1の半分を与える官能基を更に含む、請求項2〜5のいずれかにて定義された両親媒性分子。
【請求項30】
請求項1〜14のいずれかに記載の製品を製造することを含む、サンプル中の膜タンパク質の分析方法。
【請求項31】
以下の工程:
a)膜タンパク質を界面活性剤中に溶解し、
b)該膜タンパク質を、請求項1〜5にて定義された両親媒性分子と複合体化させ、界面活性剤を除去し、
c)該膜タンパク質を、請求項1及び6〜8にて定義された担体上へ、該両親媒性分子を通して固定し、
d)膜タンパク質のタンパク質断片を生成しつつ、膜貫通ドメインが該両親媒性分子と複合体形成して該担体へ付着したままとなるよう、徹底的に洗浄し、プロテアーゼを加え、
e)該膜貫通ドメインが該両親媒性分子と依然として複合体化して結合したままである該担体を取り除き、該タンパク質断片を、質量分析により分析する:
を含むことを特徴とする、請求項30に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−509602(P2010−509602A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536722(P2009−536722)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/062277
【国際公開番号】WO2008/058963
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(503466808)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィーク(セーエヌエールエス) (8)
【出願人】(504154676)ユニベルシテ、パリ、セット‐ドニ、ディドロ (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS 7−DENIS DIDEROT