説明

両軸受リール

【課題】両軸受リールにおいて、ハンドルと内輪とを確実に連結して、ハンドルのガタツキを抑える。
【解決手段】両軸受リールは、リール本体1と、ハンドル軸30と、ワンウェイクラッチ86と、ドラグ機構23と、スタードラグ3と、ハンドル2と、規制部材88と、スプール12と、回転伝達機構19と、を備える。ワンウェイクラッチ86は、外輪86aと、内輪86bと、転動体86cと、を有する。ドラグ機構23は、ドラグ座金51を含む。内輪86bは、ハンドル軸30に一体回転可能に連結される。ドラグ座金51は、ハンドル軸30に一体回転可能に連結されている。スタードラグ3は、ドラグ機構23のドラグ力を調整する。ハンドル2は、スタードラグ3とリール本体1との間に配置されている。内輪86bは、規制部材88によりスプール軸方向の移動が規制され、ハンドル2に一体回転可能に連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り用リール、特に、釣り糸が巻き付けられたスプールの回転により釣り糸を繰り出す両軸受リールに関する。
【背景技術】
【0002】
両軸受リールには、ドラグ機構を作動させるために、ハンドル軸の糸繰り出し方向の回転を規制するローラ型のワンウェイクラッチを有するものが従来知られている(例えば、特許文献1参照)。従来の両軸受リールは、リール本体と、リール本体に回転自在に装着されたハンドル軸と、ハンドル軸に一体回転可能に連結されたドラグ座金を含むドラグ機構と、を備えている。ワンウェイクラッチは、ハンドル軸の外周面に回転自在に装着され、ドラグ座金を介してハンドル軸と一体回転可能に連結された内輪を有している。ハンドル軸は、先端に一体回転可能に連結されたハンドルにより回転操作される。ドラグ機構のドラグ力は、ハンドル軸に螺合するナット部材を有するスタードラグにより調整される。ドラグ座金は、スタードラグのナット部材に内輪を介して押圧され、ドラグ機構は、押圧力に応じたドラグ力に設定される。
【0003】
ハンドル軸には、平行な二面を有する回転連結部が外周面に形成され、ドラグ座金の中心には、回転連結部に係合する非円形の第1連結部と、内輪に係合する第2連結部が形成されている。内輪の先端部には、第2連結部に連結された一対の係合突起が軸方向に突出して形成されている。第2連結部は、第1連結部の回転連結部と係合する部分の間に係合突起に係合する一対の係合凹部を有している。
【0004】
このような構成の従来の両軸受リールでは、ハンドルの回転がハンドル軸およびドラグ座金を介してワンウェイクラッチの内輪に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−168354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の構成では、ハンドルの回転は、ハンドル軸及びドラグ座金を介してワンウェイクラッチの内輪に伝達される。ハンドル軸とドラグ座金及びドラグ座金と内輪との間には、隙間があいている。このため、ドラグ力が弱い状態で巻き取り方向の回転および停止を行って仕掛けに動作を与えるハンドル操作を行うと、ハンドルが糸繰り出し方向にも隙間分だけ僅かに回転できるので、ハンドルにガタツキが生じるおそれがある。
【0007】
そこで、カシメ固定によりハンドルと内輪との回転方向及び軸方向に一体回転可能に連結することが考えられる。しかし、内輪は比較的硬い金属製の部材であるので、充分にかしめることができず、ハンドルと内輪とを確実に連結できないおそれがある。
【0008】
本発明の課題は、両軸受リールにおいて、ハンドルと内輪とを確実に連結して、ハンドルのガタツキを抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明1に係る両軸受リールは、リール本体と、ハンドル軸と、ワンウェイクラッチと、ドラグ機構と、ドラグ調整部材と、ハンドルと、規制部材と、スプールと、回転伝達機構と、を備えている。ハンドル軸は、リール本体に回転自在に支持されている。ワンウェイクラッチは、外輪と、内輪と、転動体と、を有している。外輪は、リール本体に回転不能に装着されている。内輪は、ハンドル軸に一体回転可能に連結される。転動体は、外輪と内輪との間に配置されている。ドラグ機構は、ドラグ座金を含んでいる。ドラグ座金は、ハンドル軸に一体回転可能に連結される。ドラグ調整部材は、ハンドル軸に装着され、ドラグ機構のドラグ力を調整するための部材である。ハンドルは、ドラグ調整部材とリール本体との間に配置されている。ハンドルは、リール本体に近い第1面と、リール本体から遠い第2面と、ハンドル軸が貫通する貫通孔と、を有している。規制部材は、ハンドルの第1面に固定され、内輪のハンドル軸方向の移動を規制する。ハンドルは、貫通孔の周囲で内輪に一体回転可能に連結される。スプールは、リール本体に回転自在に装着されている。回転伝達機構は、ハンドルの回転をスプールに伝達する。
【0010】
この両軸受リールでは、ハンドルとワンウェイクラッチの内輪とが貫通孔の周囲で一体回転可能に連結されている。また、内輪の軸方向の移動がハンドルの第1面に固定された規制部材により規制されている。このため、ハンドルを回転させると、その回転がワンウェイクラッチの内輪に伝達され、内輪からドラグ座金を介してハンドル軸に伝達される。このとき、内輪の軸方向の移動がハンドルの第1面に固定された規制部材により規制されている。ここでは、ハンドルの回転がワンウェイクラッチの内輪に直接伝達されるため、ハンドルのガタツキを抑えることができる。また、内輪とハンドルとを一体回転可能に連結し、かつ内輪のハンドル軸方向の移動をハンドルに固定される規制部材により規制している。このため、ハンドルと内輪とを確実に連結することができる。
【0011】
発明2に係る両軸受リールは、発明1に記載のリールにおいて、内輪は、ハンドル軸の外周側に配置される筒状部と、筒状部のハンドル側の第1端からハンドルに向けて軸方向に突出して形成された少なくとも一つの第1係合突起と、筒状部の第1端側の外周面に径方向に突出して形成された抜け止め突起と、を有する。
【0012】
この場合には、内輪の第1係合突起をハンドルに係合させることによりハンドルと一体回転可能になる。また、ハンドルに固定される規制部材に抜け止め突起を係合させることにより、内輪の軸方向の移動を規制でき、ハンドルと内輪とをさらに確実に連結することができる。
【0013】
発明3に係る両軸受リールは、発明2に記載のリールにおいて、抜け止め突起は、筒状部の外周面に環状に形成されている。この場合には、抜け止め突起が環状に形成されているので、規制部材により内輪を周方向に均一に抜け止めできる。
【0014】
発明4に係る両軸受リールは、発明2又は3に記載のリールにおいて、ハンドルは、第1面に設けられ、抜け止め突起を収容可能な突起収容部を有する。
【0015】
この場合には、抜け止め突起が突起収容部に収納されるので、ハンドル軸方向の長さが短くなり、ハンドルをリール本体にさらに近づけることができる。また、規制部材に抜け止め突起を収納しなくてよいので、規制部材の形状が簡素になる。
【0016】
発明5に係る両軸受リールは、発明2から4のいずれかに記載のリールにおいて、ハンドルは、貫通孔に設けられ第1係合突起に係合する第1係合凹部を有する。規制部材は、抜け止め突起に接触する抜け止め面を有する。
【0017】
この場合には、内輪とハンドルとの連結構造を凹凸嵌合という簡素な構成で実現できるとともに、ハンドルと内輪との軸方向の移動の規制を抜け止め突起と抜け止め面という簡素な構成で実現できる。
【0018】
発明6に係る両軸受リールは、発明2から5のいずれかに記載のリールにおいて、規制部材は、筒状部が通過可能な通過孔と、抜け止め面の径方向外方に設けられハンドルに固定される固定部と、をさらに有する。抜け止め面は、通過孔の径方向外方に形成されている。
【0019】
この場合には、通過孔の径方向外方で内輪の抜け止めし、さらにその径方向外方で規制部材を固定しているので、固定位置と抜け止め位置とが近くなりさらに確実に内輪の移動を規制できる。
【0020】
発明7に係る両軸受リールは、発明6に記載のリールにおいて、固定部には、固定用の複数のネジ部材が通過可能な複数のネジ挿通孔が形成される。ハンドルには、ネジ部材が螺合する雌ネジ部が形成される。ネジ部材は、ハンドルの第1面側から挿入される。
【0021】
この場合には、第1面側から挿入されたネジ部材により規制部材をハンドルに固定しているので、第2面側にネジ部材の頭部が露出しない。
【0022】
発明8に係る両軸受リールは、発明6に記載のリールにおいて、固定部には、固定用の複数のネジ部材が螺合する複数の雌ネジ部が形成される。ハンドルには、ネジ部材が通過可能な複数のネジ挿通孔が形成される。ハンドルの第2面においてネジ挿通孔に周囲には、ネジ部材の頭部を収容納可能な頭部収容部が形成される。ネジ部材は、ハンドルの第2面側から挿入される。
【0023】
この場合には、第2面側からネジ部材により規制部材をハンドルに固定しているので、ネジ部材の頭部が露出する。しかし、頭部が頭部収容部に収容されるので、頭部が第2面から突出しない。また、リールの外側面に位置する第2面側からネジ部材を挿入できるので、内輪及びハンドルを組み立てやすくなる。
【0024】
発明9に係る両軸受リールは、発明6に記載のリールにおいて、固定部は、ハンドルにカシメ固定されるカシメ突起を有する。ハンドルは、貫通孔にカシメ突起を挿通可能に設けられたカシメ凹部を有する。
【0025】
この場合には、アルミニウム等の変形させやすい金属を規制部材として用いることにより、固定用の別部材を用いることなくカシメにより規制部材をハンドルに固定できる。
発明10に係る両軸受リールは、発明2から9のいずれかに記載のリールにおいて、内輪は、筒状部の第2端から軸方向に突出して形成され、ドラグ座金に一体回転可能に連結される少なくとも一つの第2係合突起を有する。
【0026】
この場合には、内輪とドラグ座金とを、凹凸嵌合により簡素な構成で一体回転可能に連結できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ハンドルの回転がワンウェイクラッチの内輪に直接伝達されるため、ハンドルと内輪との間のガタツキが生じにくくなる。このため、ハンドルのガタツキを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態による両軸受リールの斜視図。
【図2】その縦断面図。
【図3】図2のドラグ機構部分の断面拡大図。
【図4】ドラグ機構のハンドル側の分解斜視図。
【図5】ドラグ機構のリール本体側の分解斜視図。
【図6】第2実施形態の図3に相当する図。
【図7】第3実施形態のハンドルの分解斜視図。
【図8】第4実施形態の図7に相当する図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<第1実施形態>
<リールの一般的な構成>
図1及び図2において、本発明の第1実施形態による両軸受リールは、ベイトキャスト用の丸形の両軸受リールである。両軸受リールは、リール本体1と、リール本体1の側方に配置されたスプール回転用のハンドル2と、ハンドル2のリール本体1側に配置されたドラグ調整部材としてのスタードラグ3と、リール本体1に回転自在に支持されたスプール12と、を備えている。
【0030】
<ハンドルの構成>
ハンドル2は、板状のハンドルアーム2aと、ハンドルアーム2aの両端に回転自在に装着された把手2bとを有するダブルハンドル形のものである。ハンドルアーム2aは、図2に示すように、リール本体1に回転自在に装着されたハンドル軸30の外周側にリール本体に接近して配置されている。
【0031】
ハンドルアーム2aは、例えば、アルミニウム合金、及びマグネシウム合金のいずれかの軽合金製である。第1実施形態では、ハンドルアーム2aは、アルミニウム合金製であり、図2に示すように、リール本体1に近い第1面2cと、リール本体から遠い第2面2dと、貫通孔2eと、を有する概ね板状の部材である。ハンドルアーム2aは、図4に示すように、貫通孔2eの周囲に形成された第1係合凹部14aと、貫通孔2eの径方向外方に形成された一対のネジ挿通孔14bと、をさらに有している。貫通孔2eは、ハンドルアーム2aの長手方向の中心に形成されている。ハンドルアーム2aは、長手方向の中心部から両端に向かって先細りに形成されている。第1係合凹部14aは、ハンドルアーム2aの長手方向と直交する方向において、貫通孔2eの内周面から径方向外方に凹んで形成されている。ネジ挿通孔14bは、貫通孔2eを挟んでハンドルアーム2aの長手方向に一対配置されている。ネジ挿通孔14bの第2面2d側には、後述するネジ部材15の頭部15aを収容可能な頭部収容部14cがコーン形状に凹んで形成されている。ハンドルアーム2aの先細りの両端に把手2bが回転自在に支持されている。
【0032】
<リール本体の構成>
リール本体1は、図1及び図2に示すように、例えばアルミニウム合金やマグネシウム合金などの金属製の部材である。第1実施形態では、リール本体1は、アルミニウム合金製である。リール本体1は、フレーム5と、フレーム5の両側方に装着された第1側カバー6及び第2側カバー7とを有している。リール本体1の内部には糸巻用のスプール12がスプール軸20(図2)を介して回転自在に装着されている。第1側カバー6は、スプール軸方向外方から見て円形であり、第2側カバー7は、交差する一対の円で構成されている。
【0033】
第1側カバー6は、フレーム5に対して開閉自在に装着されている。この開閉時にフレーム5から軸方向外方に離反した後に旋回するように、第1側カバー6は、フレーム5に支持されている。第1側カバー6は、第2側カバー7に設けられた図示しないネジ部材の着脱により開閉する。第1側カバー6には、後述する調整つまみ43が配置される円形の開口部6aが形成されている。
【0034】
第2側カバー7は、フレーム5にネジ止め固定されている。第2側カバー7には、ハンドル軸30を回転自在に支持するための第1ボス部7aが設けられている。また、第2側カバー7には、後述するスプール軸20を回転自在に支持するための第2ボス部7bが第1ボス部7aと間隔を隔てて設けられている。
【0035】
フレーム5は、図1に示すように、所定の間隔をあけて互いに対向するように配置された第1側板8及び第2側板9と、第1側板8及び第2側板9を一体で連結する上連結部10a及び下連結部10bとを有している。第1側板8の中心部よりやや上方には、段差を有する円形の開口8a(図2)が形成されている。この開口8aには、リール本体1を構成するスプール支持部13がネジ止め固定されている。スプール支持部13とスプール12との間には、キャスティング時にスプールを制動するブレーキ機構25が設けられている。
【0036】
上連結部10aは、図1に示すように、第1側板8及び第2側板9の外形と同一面に配置されており、下連結部10bは、前後に1対設けられており、外形より内側に配置されている。下連結部10bには、リールを釣り竿に装着するための前後に長い、たとえばアルミニウム合金等の金属製の竿装着脚部4がリベット止めされている。
【0037】
フレーム5内には、図2に示すように、スプール12と、サミングを行う場合の親指の当てとなるクラッチレバー17と、スプール12内に均一に釣り糸を巻くためのレベルワインド機構18とが配置されている。またフレーム5と第2側カバー7との間には、図2に示すように、回転伝達機構19と、クラッチ機構21と、クラッチ制御機構22と、ドラグ機構23と、キャスティングコントロール機構24と、が配置されている。
【0038】
回転伝達機構19は、ハンドル2からの回転力をスプール12及びレベルワインド機構18に伝える。クラッチ機構21は、ハンドル2とスプール12とを連結及び遮断する。クラッチ制御機構22は、クラッチレバー17の操作に応じてクラッチ機構21をクラッチオン状態(連結状態)とクラッチオフ状態とに制御する。クラッチ機構21をクラッチオフ状態(遮断状態)にするとスプール12が自由回転可能状態になる。ドラグ機構23は、スプール12の糸繰り出し方向の回転を制動する。キャスティングコントロール機構24は、スプール12の回転時の抵抗力を調整する。
【0039】
<スプールの構成>
スプール12は、図2に示すように、両側部に皿状の一対のフランジ部12aを有しており、一対のフランジ部12aの間に筒状の糸巻胴部12bを有している。図2左側のフランジ部12aの外周面は、糸噛みを防止するために開口8aの内周側に僅かな隙間をあけて配置されている。スプール12は、糸巻胴部12bの内周側を貫通するスプール軸20にたとえばセレーション結合により回転不能に固定されている。この固定方法はセレーション結合に限定されず、キー結合やスプライン結合等の種々の結合方法を用いることができる。
【0040】
スプール軸20は、図2に示すように、たとえばSUS304等の非磁性金属製であり、ハンドル軸30と平行に配置されている。スプール軸20は、第2側板9を貫通して第2側カバー7の外方に延びている。その延びた一端は、第2側カバー7に外方に突出して装着された第2ボス部7bに第1軸受26aにより回転自在に支持されている。またスプール軸20の他端は第2軸受26bにより回転自在に支持されている。スプール軸20の中心には、大径部20aが形成されており、両端に第1軸受26a及び第2軸受26bに支持される第1小径部20b及び第2小径部20cが形成されている。
【0041】
さらに、図2左側の第2小径部20cと大径部20aとの間の両者の中間の外径を有する部分にブレーキ機構25の磁石62が装着されている。スプール軸20の大径部20aの右端は、第2側板9の貫通部分に配置されており、そこにはクラッチ機構21を構成する係合ピン29が固定されている。係合ピン29は、直径に沿って大径部20aを貫通しており、その両端が径方向に突出している。
【0042】
<回転伝達機構の構成>
回転伝達機構19は、図2に示すように、ハンドル軸30と、ハンドル軸30に固定されたドライブギア31と、ドライブギア31に噛み合う筒状のピニオンギア32と、第1ギア部材36a(図2)と、第2ギア部材36bと、を有している。ハンドル軸30は、第2側板9及び第2側カバー7に軸受16及びワンウェイクラッチ86により回転自在に装着されている。
【0043】
ハンドル軸30は、ローラ型のワンウェイクラッチ86により糸繰り出し方向の回転(逆転)が禁止されている。ハンドル軸30の外周面には、後述するドラグ座金51を一体回転可能に連結する回転連結部30aが形成されている。回転連結部30aは、ハンドル軸30の外周面に形成された平行な一対の平面により構成されている。ハンドル軸30の先端には、スタードラグ3の後述するナット部3bが螺合する雄ネジ部30bが形成されている。ハンドル軸30の先端面には、雌ネジ穴30cが形成されている。雌ネジ穴30cは、ハンドル軸30の先端面の中心に形成されている。ハンドル軸30の先端外周面には、小径の係止部30dが形成されている。係止部30dは、回転連結部30aより小さい概ね相似形の形状である。
【0044】
<ワンウェイクラッチの構成>
ワンウェイクラッチ86は、図3に示すように、第2側カバー7とハンドル軸30との間に装着されている。ワンウェイクラッチ86は、外輪86aと、内輪86bと、転動体86cと、を有している。外輪86aは、ステンレス合金を含む鉄系合金製であり、例えば、SUS440C製である。外輪86aは、第2側カバー7に外方に突出して装着された第1ボス部7aに回転不能に装着されている。
【0045】
内輪86bは、ステンレス合金を含む鉄系合金製であり、例えば、SUS440C製である。内輪86bは、ハンドル軸30に回転自在に装着されている。転動体86cは、ステンレス合金を含む鉄系合金製であり、例えば、SUS440C製である。転動体86cは、円筒コロであり、外輪86a及び内輪86bの間にくい込み可能に配置されている。これらの各部は、改質処理により表面の防錆性能を向上させている。なお、内輪をハンドル軸30に一体回転可能に装着してもよい。
【0046】
<内輪の構成>
内輪86bは、ハンドル2とドラグ機構23の後述するドラグ座金51との間に両者に接触して配置されている。内輪86bは、規制部材88により、ハンドルアーム2aの第1面2cに抜け止めされている。これにより、内輪86bは、ハンドル軸方向の移動が規制されている。内輪86bは、ハンドル軸30の外周側に配置される筒状部87aと、抜け止め突起87bと、一対の第1係合突起87cと、一対の第2係合突起87dと、を有している。抜け止め突起87bは、筒状部87aの第1端側(図3右端側)の外周面に環状に突出して形成されている。抜け止め突起87bは、ハンドルアーム2aの第1面2cに先端面が接触して配置されている。
【0047】
一対の第1係合突起87cは、抜け止め突起87bの外周側から軸方向にハンドルアーム2aに向けて突出して形成されている。第1係合突起87cは、ハンドルアーム2aの第1係合凹部14aに係合する。これにより、内輪86bとハンドルアーム2aとが一体回転可能に連結される。一対の第2係合突起87dは、筒状部87aの第2端側(図3左端側)から軸方向にドラグ座金51に向けて突出して形成されている。一対の第2係合突起87dは、ドラグ座金51に一体回転可能に係合する。第1実施形態では、第2係合突起87dは、第1係合突起87cと90度位相を変えて形成しているが、第2係合突起87dは、第1係合突起87cは、同じ位相に配置されてもよいし、異なる位相に配置されてもよい。ドラグ座金51は、後述するように、ハンドル軸30に一体回転可能に係合している。このため、内輪86bは、ドラグ座金51を介してハンドル軸30に一体回転可能に連結されている。また、内輪86bとハンドルアーム2aとが一体回転可能に直接連結されている。
【0048】
<規制部材の構成>
規制部材88は、図3及び図4に示すように、例えば、アルミニウム合金製の部材である。規制部材88は、ハンドルアーム2aの第1面2cにネジ部材15により固定され、内輪86bのハンドル軸30方向の移動を規制する。ここで、ネジ部材15は、ハンドルアーム2aの外側面である第2面2dから挿入される。規制部材88は、内輪86bの抜け止め突起87bの先端面と逆側の面に接触する抜け止め面88aを有する規制部88bと、筒状部87aが通過可能な通過孔88cと、ハンドルアーム2aに固定される固定部88dと、を有している。
【0049】
規制部88bは、ハンドルアーム2aの第1面2cに接触可能な円環状の端面88eを有している。抜け止め面88aは、端面88eの内周側に内輪86bの抜け止め突起87bを収納可能に円環状に凹んで形成されている。抜け止め面88aが形成されている端面88eからの深さは、抜け止め突起87bの厚みと同じかそれより僅かに小さい。通過孔88cは、規制部88bの内周面に形成されている。固定部88dは、規制部88bの外周部から幅が徐々に狭くなるように一対形成されている。固定部88dには、ネジ部材15が螺合する雌ネジ部88fがネジ挿通孔14bと対向可能な位置に形成されている。
【0050】
ドライブギア31は、ハンドル軸30に回転自在に装着されており、ハンドル軸30とドラグ機構23を介して摩擦結合されている。
【0051】
ピニオンギア32は、第2側板9の外方から内方に延び、中心にスプール軸20が貫通する筒状部材であり、スプール軸20に軸方向に移動自在に装着されている。また、ピニオンギア32の図2左端側は、軸受33により第2側板9に回転自在かつ軸方向移動自在に支持されている。ピニオンギア32の図2左端部には係合ピン29に噛み合う噛み合い溝32aが形成されている。この噛み合い溝32aと係合ピン29とによりクラッチ機構21が構成される。また中間部にはくびれ部32bが、右端部にはドライブギア31に噛み合うギア部32cがそれぞれ形成されている。
【0052】
<ドラグ機構の構成>
ドラグ機構23は、図3,図4及び図5に示すように、ハンドル軸30に装着されたスタードラグ3の操作位置に応じてドラグ力が調整され、スプール12の糸繰り出し方向の回転を調整可能に制動する。
【0053】
スタードラグ3は、ハンドル2を間に挟むようにハンドル軸30の先端に装着されている。スタードラグ3は、図3及び図4に示すように、外周面に凹凸を有する操作部本体3aと、操作部本体3aに一体回転可能かつ軸方向移動自在に装着されたナット部3bと、を有している。ナット部3bは、前述したように雄ネジ部30bに螺合している。このため、操作部本体3aが回転すると、ナット部3bはハンドル軸方向に移動可能である。ナット部3bと、操作部本体3aとの間には、操作部本体3aをハンドル軸30の先端側に付勢する付勢部材であるコイルバネ3cが圧縮状態で配置されている。操作部本体3aは、ハンドル軸30の先端面に形成された雌ネジ穴30cに螺合する固定ボルト28により抜け止めされている。固定ボルト28の頭部28aは、ハンドル軸30の先端部の外径より大きい。固定ボルト28は、スタードラグ3を介してハンドル2を抜け止めしている。操作部本体3aと固定ボルト28との間には、第1ワッシャ部材34が装着されている。第1ワッシャ部材34は、ハンドル軸30の先端に形成された小径の係止部30dに一体回転可能に装着されている。第1ワッシャ部材34には、コイルバネ3cにより押圧された操作部本体3aが常時接触している。
【0054】
操作部本体3aには、ナット部3bに加えて、ナット部3bに接触する第2ワッシャ部材39と、ドラグ機構23を構成する一対の皿バネ50と、スタードラグ発音機構54とが配置されている。第2ワッシャ部材39及び皿バネ50は、操作部本体3aの内部に配置されている。第2ワッシャ部材39は、ナット部3bの押圧力を皿バネ50に効率よく伝達するために設けられている。
【0055】
スタードラグ発音機構54は、スタードラグ3の回動操作に応じて発音する。スタードラグ発音機構54は、ハンドル2とスタードラグ3との間に配置されている。具体的には、皿バネ50とハンドルアーム2aとの間に配置されている。スタードラグ発音機構54は、伝達ワッシャ55と、音出し部材56と、打撃部材57と、を有している。伝達ワッシャ55は、ハンドル軸30の回転連結部30aに一体回転可能に連結されている。伝達ワッシャ55は、皿バネ50に接触して皿バネ50の力をハンドルアーム2aに伝達する。伝達ワッシャ55は、非円形の外周面55a及び係止部30dに係合する非円形の内周面55bを有している。
【0056】
音出し部材56は、伝達ワッシャ55の外周面に装着され、伝達ワッシャ55と一体回転可能に係合している。音出し部材56は、周方向に間隔を隔てて形成された音出し凹部56aをスタードラグ3側の面に有する環状の板状部材である。音出し部材56は、内周面に伝達ワッシャ55の非円形の外周面55aに係合する非円形の係合孔56bを有している。
【0057】
打撃部材57は、音出し部材56の音出し凹部56aに対して衝突を繰り返す。打撃部材57は、操作部本体3aのハンドル2側の端面に形成された装着凹部3eに進退自在に装着されている。打撃部材57は、装着凹部3e内に収納されたコイルバネ58により音出し部材56側に付勢されている。
【0058】
ドラグ機構23は、ハンドル軸30の周囲に設けられている。ドラグ機構23は、図3、図4、及び図5に示すように、スタードラグ3のナット部3bにより押圧される、前述した2枚の皿バネ50と、ドラグ座金51と、ドライブギア31を挟んで配置された第1ドラグディスク52及び第2ドラグディスク53と、を備えている。皿バネ50は、前述したようにナット部材3bによる押圧力を細かく調整可能にするために設けられている。具体的には、皿バネ50は、スタードラグ3とハンドル2との間に配置され、スタードラグ3の軸方向に移動により変化したバネ力を、ハンドル2および内輪86bを介してドラグ座金51に伝達する。また、皿バネ50は、スタードラグ3を緩めて操作部本体3aをハンドル軸30の先端側に移動させたとき、ハンドルアーム2aががたつかないようにするためにも設けられている。したがって、皿バネ50は、図3のハンドル軸芯Xの上側に示した最もドラグ力を弱くした状態(コイルバネ3cが最も収縮した状態)にスタードラグ3を操作して時にも、自由状態より圧縮した状態で配置されている。なお、ハンドル軸芯Xの下側には、ドラグ力を最も強くした状態を示している。
【0059】
ドラグ座金51は、ハンドル軸30に一体回転可能に連結されている。ドラグ座金51は、ハンドル軸30及び内輪86bに一体回転可能に連結される。ドラグ座金51は、図5に示すように、ハンドル軸30に一体回転可能に連結される第1連結部51aと、内輪86bが一体回転可能に連結される第2連結部51bと、を有している。第1連結部51aは、ドラグ座金51の内周部に形成され、平行に配置された一対の直線部51cと、一対の直線部51cの両端をつなぐ一対の接続部51dと、を有している。この一対の直線部51cがハンドル軸30の回転連結部30aの平面に係合して、ドラグ座金51の回転がハンドル軸30に伝達される。第2連結部51bは、接続部51dに凹んで形成された一対の第2係合凹部51eを有している。第2係合凹部51eには、内輪86bの第2係合突起87dが係合して、内輪86bの回転がドラグ座金51に伝達される。ドラグ座金51の回転がハンドル軸30に伝達され、ハンドル2の回転によりハンドル軸30が回転する。したがって、従来は、ハンドルの回転が直接ハンドル軸に伝達されていたが、本実施形態では、ハンドル2の回転が内輪86bに直接伝達され、内輪86b及びドラグ座金51を介してハンドル軸30に伝達される。ここでは、内輪86bがドラグ座金51を介してハンドル軸30に一体回転可能に連結されている。
【0060】
第1ドラグディスク52は、ドライブギア31とドラグ座金51との間に両者に接触して配置されている。第2ドラグディスク53は、ドライブギア31とラチェットホイール38とに接触して配置されている。第1ドラグディスク52及び第2ドラグディスク53は、ハンドル軸30に対して回転自在である。ラチェットホイール38は、ドラグ機構23としても機能する。ラチェットホイール38は、ハンドル軸30の外周面に大径に形成された鍔部30eに接触して配置されている。この鍔部30eによりスタードラグ3の押圧力を受けている。
【0061】
<その他の構成>
クラッチレバー17は、第1側板8及び第2側板9間の後部でスプール12の後方に配置されている。クラッチレバー17は第1側板8及び第2側板9の間で上下方向にスライドする。クラッチレバー17のハンドル装着側には、係合軸17aが第2側板9を貫通して一体形成されている。この係合軸17aは、クラッチ制御機構22に係合している。
【0062】
レベルワインド機構18は、図2に示すように、スプール12の前方で第1側板8及び第2側板9の間に配置され、外周面に交差する螺旋状溝46aが形成された螺軸46と、釣り糸案内部47と、を有している。釣り糸案内部47は、螺軸46によりスプール軸方向に往復移動して釣り糸を案内する。螺軸46の図2右端には、回転伝達機構19を構成する第1ギア部材36aが装着されており、第1ギア部材36aは、ハンドル軸30に一体回転可能に装着された第2ギア部材36bに噛み合っている。このような構成により、螺軸46は、ハンドル軸30の糸巻取方向の回転に連動して回転する。釣り糸案内部47は、螺軸46の回転によりスプール軸方向に往復移動する。
【0063】
クラッチ制御機構22は、図2に示すように、ピニオンギア32のくびれ部32bに係合してピニオンギア32をスプール軸20方向に沿って移動させるクラッチヨーク35を有している。クラッチヨーク35は、クラッチレバー17の回動位置によりクラッチオン位置とクラッチオン位置よりスプール軸方向外方のクラッチオフ位置とに移動する。
【0064】
キャスティングコントロール機構24は、図2に示すようにスプール軸20の両端を挟むように配置された複数の摩擦プレート48と、摩擦プレート48によるスプール軸20の挟持力を調節するための制動キャップ49とを有している。左側の摩擦プレート48は、スプール支持部13内に装着されている。制動キャップ49は、第2側カバー7の第2ボス部7bの外周面に螺合している。
【0065】
ブレーキ機構25は、図2に示すように、スプール12とリール本体1とに設けられたスプール制動ユニット40と、回転速度センサ(図示せず)と、調整つまみ43と、スプール制動ユニット40を調整つまみ43の操作位置に応じて電気的に制御するマイクロコンピュータからなるスプール制御ユニット(図示せず)と、を有している。スプール制動ユニット40は、スプール12を発電により制動する電気的に制御可能なものである。スプール制動ユニット40は、スプール軸20に回転方向に並べて配置された4つの磁石62を含む回転子61と、回転子61の外周側に対向して配置され直列接続されたたとえば4つのコイル63と、直列接続された複数のコイル63の両端が接続されたスイッチ素子(図示せず)とを備えている。回転速度センサは、スプール12の回転速度を検出して張力を算出するために設けられている。スプール制御ユニットは、スプール支持部13に固定された回路基板70を搭載されている。調整つまみ43は、スプール支持部13に回転自在に装着されている。
【0066】
<実釣時のリールの動作>
釣りを行うときは、まず、クラッチレバー17をクラッチオフ位置に操作し、クラッチ機構21をクラッチオフ状態にする。この状態でキャスティングを行い、釣り糸をスプール12から繰り出す。仕掛けが着水するとハンドル2を糸巻取方向に僅かに回転させる。すると、図示しないクラッチ戻し機構が動作してクラッチ機構21がクラッチオンする。このとき、クラッチレバー17もクラッチオン位置に戻る。
【0067】
この状態に仕掛けに魚が掛かるのを待つ。仕掛けに魚が掛かると、釣り人はハンドル2を糸巻取方向に回転させて掛かった魚を取り込む。ハンドル2が糸巻取方向に回転すると、内輪86bにその回転が伝達され、さらにドラグ座金51を介してハンドル軸30に回転が伝達される。ハンドル軸30が回転するドラグ機構23によりハンドル軸30に摩擦結合しているドライブギア31が回転し、その回転がピニオンギア32及びクラッチ機構21を介してスプール軸20に伝達され、スプール12が糸巻取方向に回転する。
【0068】
この巻き取り時にドラグ機構23のドラグ力が弱く設定されていると、従来のように、ハンドルの回転がハンドル軸に直接伝達されている構成では、ハンドル軸とドラグ座金との遊び(隙間)とドラグ座金と内輪との遊び(隙間)の影響を内輪が受ける。この結果、ハンドル2を巻き取り方向に回転させたり止めたりする、ジギング等の仕掛けに動作を与える操作を行うと、ハンドルの糸繰り出し方向にも遊び分だけ僅かに回転できるので、ハンドル2にガタツキが生じる。しかし、この実施形態では、ハンドル2の回転が直接内輪86bに伝達されるため、ハンドル2と内輪86bとの遊びが小さくなり、ハンドル2が糸繰り出し方向に回転しにくくなり、ガタツキが生じにくくなる。しかも、内輪86bがハンドルアーム2aに一体回転可能に連結され、かつハンドルアーム2aの第1面2cに固定された規制部材88により内輪86bの軸方向の移動が規制されている。このため、内輪86bのハンドル2への固定を確実に行える。
【0069】
<第2実施形態>
以降の説明では、第1実施形態と同じ構成については説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0070】
図6に示すように、第2実施形態では、ハンドル102のハンドルアーム102aは、内輪86bの抜け止め突起87aを収容可能な突起収容部114dを有している。突起収容部114dfは、ハンドルアーム102aの第1面102cの貫通孔102eの周囲に円形に凹んで形成されている。第2実施形態では、抜け止め突起87bが突起収容部114dに収容されるため、規制部材188の規制部188b及び固定部188dは、平板状の部材で構成される。このため、抜け止め面188aは、規制部188bのハンドルアーム102a側の端面の全体で構成される。通過孔188cは、規制部188bの内周面に形成されている。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0071】
このような構成の第2実施形態では、同形状の内輪86bを用いる場合は、突起収容部114dの深さだけ、ハンドルアーム102a及びスタードラグ3をリール本体1側に近づけることができる。また、規制部材188に抜け止め突起87bを収納しなくてよいので、規制部材188の形状が簡素になる。
【0072】
<第3実施形態>
図7に示すように、第3実施形態では、ネジ部材215をハンドルアーム202aの第1面202c側から挿入している。したがって、規制部材288の固定部288dには、雌ネジ部ではなくネジ挿通孔288gが、第1実施形態の雌ネジ部88fが形成された位置に形成されている。ネジ部材215が螺合する雌ネジ部214eは、ハンドル202のハンドルアーム202aの、第1実施形態のネジ挿通孔14bが形成された位置に形成されている。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0073】
このような構成の第2実施形態では、第1面202c側から挿入されたネジ部材215により規制部材288をハンドルアーム202aに固定しているので、第2面202d側にネジ部材215の頭部が露出しない。
【0074】
<第4実施形態>
図8に示すように、第4実施形態では、ネジ部材を用いずに、規制部材388をハンドル302のハンドルアーム302aにカシメ固定している。このため、ハンドルアーム302aの貫通孔302eの第1係合凹部314aと直交する位置に一対のカシメ凹部314fが形成されている。なお、第1実施形態と異なり、第1係合凹部314aは、ハンドルアーム302aの長手方向と直交する方向ではなく、長手方向に間隔を隔てて一対設けられている。したがって、カシメ凹部314fが長手方向と直交する方向に設けられている。
【0075】
内輪386bには、第1係合突起387cが、第1実施形態の第1係合突起87cと直交する位置に配置されている。
【0076】
規制部材388は、例えば、アルミニウム合金製の部材である。規制部材388は、内輪386bの抜け止め突起387bの先端面と逆側の面に接触する抜け止め面388aを有する規制部388bと、筒状部387aが通過可能な通過孔388cと、ハンドルアーム302aに固定される固定部388dと、を有している。
【0077】
固定部388dは、ハンドルアーム302aにカシメ固定されるカシメ突起388gを有している。カシメ突起388gは、規制部388bの端面にハンドルアーム302aに向けて突出して一対設けられている。カシメ突起388gの内周部は、カシメ処理時にカシメ突起388gを外周側に変形しやすくするために、テーパ形状に面取りされている。カシメ突起388gの突出長さはハンドルアーム302aの厚みより僅かに長い。したがって、カシメ突起388gの先端は、ハンドルアーム302aの第2面302dから突出する。このカシメ突起388gの先端部分をハンドルアーム302aの第2面302d側で適宜のカシメ治具により径方向外方に押圧することにより、規制部材388がハンドルアーム302aにカシメ固定され、内輪386bが軸方向の移動が規制された状態でハンドルアーム302aに一体回転可能に連結される。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0078】
このような構成の第3実施形態では、アルミニウム等の変形させやすい金属を規制部材として用いることにより、固定用の別部材を用いることなくカシメにより規制部材388をハンドルアーム302aに固定できる。
【0079】
<特徴>
上記実施形態は、下記のように表現可能である。なお、以降の説明では、第1実施形態から第4実施形態に共通な構成に対しては、第1実施形態の符号を付している。
【0080】
(A)両軸受リールは、リール本体1と、ハンドル軸30と、ワンウェイクラッチ86と、ドラグ機構23と、スタードラグ3と、ハンドル2と、規制部材88と、スプール12と、回転伝達機構19と、を備えている。ハンドル軸30は、リール本体1に回転自在に支持されている。ワンウェイクラッチ86は、外輪86aと、内輪86bと、転動体86cと、を有している。外輪86aは、リール本体1に回転不能に装着されている。内輪86bは、ハンドル軸30に一体回転可能に連結される。転動体86cは、外輪86aと内輪86bとの間に配置されている。ドラグ機構23は、ドラグ座金51を含んでいる。ドラグ座金51は、ハンドル軸30に一体回転可能に連結される。スタードラグ3は、ハンドル軸30に装着され、ドラグ機構23のドラグ力を調整するための部材である。ハンドル2は、スタードラグ3とリール本体1との間に配置されている。ハンドル2のハンドルアーム2aは、リール本体1に近い第1面2cと、リール本体1から遠い第2面2dと、ハンドル軸が貫通する貫通孔2eと、を有している。規制部材88は、ハンドルアーム2aの第1面2cに固定され、内輪86bのハンドル軸方向の移動を規制する。ハンドル2は、貫通孔2eの周囲で内輪に一体回転可能に連結される。スプール12は、リール本体1に回転自在に装着されている。回転伝達機構19は、ハンドル2の回転をスプール12に伝達する。
【0081】
この両軸受リールでは、ハンドル2とワンウェイクラッチ86の内輪86bとが貫通孔2eの周囲で一体回転可能に連結されている。また、内輪86bの軸方向の移動がハンドルアーム2aの第1面2cに固定された規制部材88により規制されている。このため、ハンドル2を回転させると、その回転がワンウェイクラッチ86の内輪86bに伝達され、内輪86bからドラグ座金51を介してハンドル軸30に伝達される。このとき、内輪86bの軸方向の移動がハンドルアーム2aの第1面2cに固定された規制部材88により規制されている。ここでは、ハンドル2の回転がワンウェイクラッチ86の内輪86bに直接伝達されるため、ハンドル2のガタツキを抑えることができる。また、内輪86bとハンドル2とを一体回転可能に連結し、かつ内輪86bのハンドル軸方向の移動をハンドル2に固定される規制部材88により規制している。このため、ハンドル2と内輪86bとを確実に連結することができる。
【0082】
(B)両軸受リールにおいて、内輪86bは、ハンドル軸30の外周側に配置される筒状部87aと、筒状部87aのハンドル2側の第1端からハンドル2に向けて軸方向に突出して形成された少なくとも一つの第1係合突起87cと、筒状部87aの第1端側の外周面に径方向に突出して形成された抜け止め突起87bと、を有する。
【0083】
この場合には、内輪86bの第1係合突起87cをハンドル2に係合させることによりハンドル2と一体回転可能になる。また、ハンドル2に固定される規制部材88に抜け止め突起87bを係合させることにより、内輪86bの軸方向の移動を規制でき、ハンドル2と内輪86bとをさらに確実に連結することができる。
【0084】
(C)両軸受リールにおいて、抜け止め突起87bは、筒状部87aの外周面に環状に形成されている。この場合には、抜け止め突起87aが環状に形成されているので、規制部材88により内輪86bを周方向に均一に抜け止めできる。
【0085】
(D)両軸受リールにおいて、ハンドル102のハンドルアーム102aは、第1面102cに設けられ、抜け止め突起87bを収容可能な突起収容部114dを有する。
【0086】
この場合には、抜け止め突起87bが突起収容部114dに収納されるので、ハンドル軸方向の長さが短くなり、ハンドル2をリール本体1にさらに近づけることができる。また、規制部材188に抜け止め突起87bを収納しなくてよいので、規制部材188の形状が簡素になる。
【0087】
(E)両軸受リールにおいて、ハンドル2のハンドルアーム2aは、貫通孔2eに設けられ第1係合突起87cに係合する第1係合凹部14aを有する。規制部材88は、抜け止め突起87bに接触する抜け止め面88aを有する。
【0088】
この場合には、内輪86bとハンドル2との連結構造を凹凸嵌合という簡素な構成で実現できるとともに、ハンドル2と内輪86bとの軸方向の移動の規制を抜け止め突起87bと抜け止め面88aという簡素な構成で実現できる。
【0089】
(F)両軸受リールにおいて、規制部材88は、筒状部87aが通過可能な通過孔88cと、抜け止め面88aの径方向外方に設けられハンドル2のハンドルアーム2aに固定される固定部88dと、をさらに有する。抜け止め面88aは、通過孔88cの径方向外方に形成されている。
【0090】
この場合には、通過孔88cの径方向外方で内輪86bの抜け止めし、さらにその径方向外方で規制部材88を固定しているので、固定位置と抜け止め位置とが近くなりさらに確実に内輪86bの移動を規制できる。
【0091】
(G)両軸受リールにおいて、固定部288dには、固定用の複数のネジ部材215が通過可能な複数のネジ挿通孔288gが形成される。ハンドル202のハンドルアーム202aには、ネジ部材215が螺合する雌ネジ部214eが形成される。ネジ部材215は、ハンドルの第1面202c側から挿入される。
【0092】
この場合には、第1面202c側から挿入されたネジ部材215により規制部材288をハンドル202に固定しているので、第2面202d側にネジ部材の頭部が露出しない。
【0093】
(H)両軸受リールにおいて、固定部には、固定用の複数のネジ部材が螺合する複数の雌ネジ部が形成される。ハンドルには、ネジ部材が通過可能な複数のネジ挿通孔が形成される。ハンドルの第2面においてネジ挿通孔に周囲には、ネジ部材の頭部を収容納可能な頭部収容部が形成される。ネジ部材は、ハンドルの第2面側から挿入される。
【0094】
この場合には、第2面側からネジ部材により規制部材をハンドルに固定しているので、ネジ部材の頭部が露出する。しかし、頭部が頭部収容部に収容されるので、頭部が第2面から突出しない。また、リールの外側面に位置する第2面側からネジ部材を挿入できるので、内輪及びハンドルを組み立てやすくなる。
【0095】
(I)両軸受リールにおいて、固定部388dは、ハンドル302のハンドルアーム302aにカシメ固定されるカシメ突起388gを有する。ハンドル302のハンドルアーム302aは、貫通孔302eにカシメ突起388gを挿通可能に設けられたカシメ凹部314fを有する。
【0096】
この場合には、アルミニウム等の変形させやすい金属を規制部材388として用いることにより、固定用の別部材を用いることなくカシメにより規制部材388をハンドル302のハンドルアーム302aに固定できる。
【0097】
(J)両軸受リールにおいて、内輪86bは、筒状部87aの第2端から軸方向に突出して形成され、第2連結部51bに一体回転可能に連結される少なくとも一つの第2係合突起87dを有する。
【0098】
この場合には、内輪86bとドラグ座金51とを、凹凸嵌合により簡素な構成で一体回転可能に連結できる。
【0099】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態および変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0100】
(a)前記実施形態では、ハンドルアームを例えば、アルミニウム合金、及びマグネシウム合金のいずれかの軽合金製としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ステンレス合金やカーボン繊維強化樹脂等の合成樹脂を用いてもよい。合成樹脂を用いる場合、ハンドルアームの中心に金属製のカラー部材をインサート成形又は接着等の適宜の固定手段により固定し、カラー部材に貫通孔及び第1係合凹部を設けるのが好ましい。また、さらに、雌ネジ孔又はネジ挿通孔をカラー部材に形成しても良い。
【0101】
(b)前記実施形態では、ハンドルアームの両端に把手を有するダブルハンドルを例に本発明の両軸受リールを説明したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、ハンドルアームの基端に内輪が一体回転可能に係合し、先端に把手を有するシングルハンドルであっても良い。
【0102】
(c)前記実施形態では、抜け止め突起を環状に形成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、少なくとも一つの抜け止め突起を内輪の外周面から突出して設けても良い。この場合、回転バランス及び抜け止めの効果を向上させるために、抜け止め突起を複数設けるのが好ましい。
【0103】
(d)前記実施形態では、内輪86bをドラグ座金51に一体回転可能に連結し、内輪86bを、ドラグ座金51を介してハンドル軸30に一体回転可能に連結した。しかし、本発明はこれに限定されない。例えば、内輪とドラグ座金とを連結せずに、内輪をハンドル軸に一体回転可能に直接連結しても良い。
【符号の説明】
【0104】
1 リール本体
2 ハンドル
2a ハンドルアーム
2c 第1面
2d 第2面
2e 貫通孔
3 スタードラグ(ドラグ調整部材の一例)
12 スプール
14a 第1係合凹部
14b ネジ挿通孔
14c 頭部収容部
19 回転伝達機構
23 ドラグ機構
30 ハンドル軸
30d 雌ネジ部
51 ドラグ座金
86 ワンウェイクラッチ
86a 外輪
86b 内輪
86c 転動体
87a 筒状部
87b 抜け止め突起
87c 第1係合突起
87d 第2係合突起
88 規制部材
88a 抜け止め面
88b 規制部
88c 通過孔
88d 固定部
88e 端面
88f 雌ネジ部
102 ハンドル
102a ハンドルアーム
102c 第1面
102e 貫通孔
114d 突起収容部
188 規制部材
188a 抜け止め面
188b 規制部
188c 通過孔
188d 固定部
202 ハンドル
202a ハンドルアーム
202c 第1面
202d 第2面
214e 雌ネジ部
288 規制部材
288d 固定部
288g ネジ挿通孔
302 ハンドル
302a ハンドルアーム
202e 貫通孔
314a 第1係合凹部
314f カシメ凹部
386b 内輪
387a 筒状部
387b 抜け止め突起
387c 第1係合突起
388 規制部材
388a 抜け止め面
388b 規制部
388c 通過孔
388d 固定部
388g カシメ突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体と、
前記リール本体に回転自在に支持されたハンドル軸と、
前記リール本体に回転不能に装着された外輪と、前記ハンドル軸に一体回転可能に連結される内輪と、前記外輪と前記内輪との間に配置された転動体と、を有するワンウェイクラッチと、
前記ハンドル軸に一体回転可能に連結されるドラグ座金を含むドラグ機構と、
前記ハンドル軸に装着され、前記ドラグ機構のドラグ力を調整するためのドラグ調整部材と、
前記ドラグ調整部材と前記リール本体との間に配置され、前記リール本体に近い第1面と、前記リール本体から遠い第2面と、前記ハンドル軸が貫通する貫通孔と、を有し、前記貫通孔の周囲で前記内輪に一体回転可能に連結されるハンドルと、
前記ハンドルの前記第1面に固定され、前記内輪の前記ハンドル軸方向の移動を規制する規制部材と、
前記リール本体に回転自在に装着されたスプールと、
前記ハンドルの回転を前記スプールに伝達する回転伝達機構と、
を備えた両軸受リール。
【請求項2】
前記内輪は、前記ハンドル軸の外周側に配置される筒状部と、前記筒状部の前記ハンドル側の第1端から前記ハンドルに向けて軸方向に突出して形成された少なくとも一つの第1係合突起と、前記筒状部の前記第1端側の外周面に径方向に突出して形成された抜け止め突起と、を有する、請求項1に記載の両軸受リール。
【請求項3】
前記抜け止め突起は、前記筒状部の外周面に環状に形成されている、請求項2に記載の両軸受リール。
【請求項4】
前記ハンドルは、前記第1面に設けられ、前記抜け止め突起を収容可能な突起収容部を有する、請求項2又は3に記載の両軸受リール。
【請求項5】
前記ハンドルは、前記貫通孔に設けられ前記第1係合突起に係合する第1係合凹部を有し、
前記規制部材は、前記抜け止め突起に接触する抜け止め面を有する、請求項2から4のいずれか1項に記載の両軸受リール。
【請求項6】
前記規制部材は、前記筒状部が通過可能な通過孔と、前記抜け止め面の径方向外方に設けられ前記ハンドルに固定される固定部と、をさらに有し、前記抜け止め面は、前記通過孔の径方向外方に形成されている、請求項2から5のいずれか1項に記載の両軸受リール。
【請求項7】
前記固定部には、固定用の複数のネジ部材が通過可能な複数のネジ挿通孔が形成され、
前記ハンドルには、前記ネジ部材が螺合する雌ネジ部が形成され、
前記ネジ部材は、前記ハンドルの前記第1面側から挿入される、請求項6に記載の両軸受リール。
【請求項8】
前記固定部には、固定用の複数のネジ部材が螺合する複数の雌ネジ部が形成され、
前記ハンドルには、前記ネジ部材が通過可能な複数のネジ挿通孔が形成され、
前記ハンドルの前記第2面において前記ネジ挿通孔に周囲には、前記ネジ部材の頭部を収容納可能な頭部収容部が形成され、
前記ネジ部材は、前記ハンドルの前記第2面側から挿入される、請求項6に記載の両軸受リール。
【請求項9】
前記固定部は、前記ハンドルにカシメ固定されるカシメ突起を有し、
前記ハンドルは、前記貫通孔に前記カシメ突起を挿通可能に設けられたカシメ凹部を有する、請求項6に記載の両軸受リール。
【請求項10】
前記内輪は、前記ハンドル軸に回転自在に装着され、前記筒状部の第2端から軸方向に突出して形成され、前記ドラグ座金に一体回転可能に連結される少なくとも一つの第2係合突起を有する、請求項2から9のいずれか1項に記載の両軸受リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−143202(P2012−143202A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5203(P2011−5203)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】