説明

中低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、発泡粒子、発泡成形体及び発泡成形体の製造方法

【課題】高い融着率及び曲げ強度を有する中低倍の発泡成形体を与える中低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供することを課題とする。
【解決手段】発泡性ポリスチレン系樹脂粒子と、その表面の被覆層とを含み、30倍以下の中低倍発泡成形に使用される中低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であり、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が、ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを少なくとも含み、前記被覆層が、ヒドロキシ基を有する脂肪族アミド系化合物と脂肪族グリセリンエステル系化合物とを少なくとも含み、前記脂肪族アミド系化合物が、前記ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、0.01〜0.5質量部含まれ、前記脂肪族グリセリンエステル系化合物が、前記脂肪族アミド系化合物1質量部に対して、0.5〜5質量部含まれることを特徴とする中低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、発泡粒子、発泡成形体及び発泡成形体の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、高い融着率及び曲げ強度を有する中低倍の発泡成形体及びその製造方法、この発泡成形体を与える中低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子及び発泡粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系樹脂から構成される発泡成形体は、その用途に応じて低倍から高倍まで種々の発泡倍率のものが知られている。その内、30倍程度以下の中低倍の発泡成形体は、強度が必要な構造部材やパッキン材等に使用されている。中低倍の発泡成形体は、種々の文献で報告されているが、例えば、特許第3685619号(特許文献1)に記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3685619号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
中低倍の発泡成形体は、それを構成する発泡粒子表面の気泡膜が厚くなる。そのため、高倍の発泡成形体を得る条件で中低倍の発泡成形体を製造すると、発泡粒子同士の接着強度(融着性)が低くなることあった。接着強度が低くなると、曲げ強度等が低下することになり、強度が必要な用途で使用することが困難となる。
発泡粒子同士の接着強度を上げる方法として、発泡成形時の蒸気圧を高くすることが挙げられる。しかしながら、この方法では、蒸気圧を高くするために多量の蒸気が必要であるため、生産コストが上がるという問題がある。加えて、発泡成形後の発泡成形体を取り出すまでの冷却時間が長くなり、生産性が低下することによる生産コストが上がるという問題もある。
そのため、中低倍であっても、蒸気圧を高くすることなく接着強度が良好な発泡成形体を得ることが可能な発泡性スチレン系樹脂粒子を提供することが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者は、ヒドロキシ基を有する脂肪族アミド系化合物と脂肪族グリセリンエステル系化合物とを特定量で含む被覆層を備えた中低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が、発泡成形体を構成する発泡粒子相互の融着性を向上できることを見出し本発明に至った。
かくして本発明によれば、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子と、その表面の被覆層とを含み、30倍以下の中低倍発泡成形に使用される中低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であり、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が、ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを少なくとも含み、前記被覆層が、ヒドロキシ基を有する脂肪族アミド系化合物と脂肪族グリセリンエステル系化合物とを少なくとも含み、
前記脂肪族アミド系化合物が、前記ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、0.01〜0.5質量部含まれ、前記脂肪族グリセリンエステルが、前記脂肪族アミド系化合物1質量部に対して、0.5〜5質量部含まれることを特徴とする中低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が提供される。
【0006】
更に、本発明によれば、上記中低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を30倍以下の嵩発泡倍率に発泡させて得られた発泡粒子が提供される。
また、本発明によれば、上記発泡粒子を発泡成形させて得られた30倍以下の発泡倍率の発泡成形体が提供される。
更に、本発明によれば、上記中低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子又は発泡粒子を一対の金型内に充填し、0.05〜0.50MPaの水蒸気で加熱することにより、30倍以下の発泡倍率の発泡成形体を得ることを特徴とする発泡成形体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、発泡成形体を構成する発泡粒子相互の融着性及び曲げ強度を向上可能な中低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子及び発泡粒子を提供できる。
更に、融着性が良好で、その結果、曲げ強度が高い中低倍の発泡成形体を提供できる。
また、脂肪族アミド系化合物が、1つのアミン化合物と、1つ又は2つのヒドロキシ基を有する脂肪酸とのアミドであり、脂肪酸が、4〜30の炭素数を有する酸である場合、より発泡成形体の融着性及び曲げ強度を向上可能な低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供できる。
更に、脂肪族アミド系化合物が、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−エチレン−ビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミドから選択される場合、より発泡成形体の融着性及び曲げ強度を向上可能な中低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供できる。
【0008】
また、脂肪族グリセリンエステル系化合物が、炭素数4〜30のアルキル基を備えた化合物である場合、より発泡成形体の融着性及び曲げ強度を向上可能な中低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供できる。
更に、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が、可塑剤を1000ppmより多く、6000ppm以下の量で含む場合、より発泡成形体の融着性及び曲げ強度を向上可能な中低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供できる。
また、上記中低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子又は発泡粒子を一対の金型内に充填し、0.05〜0.50MPaの水蒸気で加熱することにより、より低コストで融着性及び曲げ強度が向上した30倍以下の発泡倍率の発泡成形体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(中低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子)
中低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子(以下、中低倍発泡成形用発泡性樹脂粒子と称する)は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子(以下、発泡性樹脂粒子と称する)と、その表面の被覆層とを含む。発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が、ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを少なくとも含む。また、被覆層は、ヒドロキシ基を有する脂肪族アミド系化合物と脂肪族グリセリンエステル系化合物を少なくとも含む。
【0010】
(1)ヒドロキシ基を有する脂肪族アミド系化合物(以下、ヒドロキシ基含有アミド系化合物とも称する)
ヒドロキシ基含有アミド系化合物は、融着促進剤としての役割を有し、その分子中にヒドロキシ基を有していることを特徴としている。
ヒドロキシ基含有アミド系化合物には、例えば、1つのアミン化合物と1つのヒドロキシ基を有する脂肪酸とのアミド、1つのアミン化合物と、2つのヒドロキシ基を有する脂肪酸とのアミドを使用できる。前者は、ヒドロキシ基含有脂肪酸アミドであり、後者は、ヒドロキシ基含有脂肪酸ビスアミドである。
【0011】
ここで、脂肪酸は、4〜30の炭素数を有する酸から選択することが好ましい。炭素数が4より少ない場合、発泡性樹脂粒子の流動性が低下することがある。一方、炭素数が30より多い場合、発泡粒子間の接着強度が低下することがある。より好ましい炭素数は、10〜25である。具体的な脂肪酸としては、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸が挙げられる。脂肪酸は飽和脂肪酸であることが好ましい。
また、ヒドロキシ基は、脂肪酸中に少なくとも1つ存在している必要がある。ヒドロキシ基の数は、2つ以上であってもよいが、製造コストの観点から、1つであることが好ましい。ヒドロキシ基の位置は、特に限定されない。
【0012】
アミン化合物としては、アンモニア;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン等の1つのアミノ基有するアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン等の1つのアミノ基を有するアミン等の脂肪族第一アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン等の脂肪族第二アミン等の飽和脂肪族アミン;アリルアミン、ジアリルアミン等の不飽和脂肪族アミン;シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン等の飽和脂環族アミン;アニリン、メチルアニリン、ジメチルアニリン、フェニレンジアミン等の芳香族アミンが挙げられる。アミン化合物はアンモニア又は第一アミンであることが好ましい。
具体的な脂肪族アミド系化合物としては、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−エチレン−ビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド等が挙げられる。
【0013】
中低倍発泡成形用発泡性樹脂粒子中のヒドロキシ基を有する脂肪族アミド系化合物の含有量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、0.01〜0.5質量部である。0.01質量部未満の場合、融着性向上効果が得られないことがある。0.5質量部より多い場合、発泡性樹脂粒子表面からの剥離が多くなり、成形設備へ付着等の問題となることがある。より好ましい含有量は、0.01〜0.30質量部であり、更に好ましい含有量は、0.02〜0.20質量部である。
【0014】
(2)脂肪族グリセリンエステル系化合物
脂肪族グリセリンエステル系化合物は、ヒドロキシ基を有する脂肪族アミド系化合物が発泡性樹脂粒子の表面への付着性を向上させる役割を有している。
脂肪族グリセリンエステル系化合物は、脂肪族グリセリンのアルキルエステル(飽和脂肪酸エステル)を意味する。この化合物中のアルキル鎖の炭素数は、4〜30であることが好ましく、10〜25であることがより好ましい。アルキル鎖の具体例としては、オクチル(ペラルゴン酸対応)、ノニル(カプリン酸対応)、ウンデシル(ラウリン酸対応)、トリデシル(ミリスチン酸対応)、ペンタデシル(パルミチン酸対応)、ヘプタデシル(ステアリン酸対応)等が挙げられる。また、この化合物は、モノグリセライド、ジグリセライド、トリグリセライドのいずれの形態もとり得る。特に、トリグリセライドが好適である。
【0015】
具体的な脂肪族グリセリンエステル系化合物としては、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド、ステアリン酸トリグリセライド等の長鎖飽和脂肪酸トリグリセライド、中鎖飽和脂肪酸トリグリセライド等が挙げられる。なお、長鎖とは炭素数12以上のものを、中鎖とは炭素数8〜11のものを意味する。化合物の形態は固体、液体にこだわらない。
脂肪族グリセリンエステルの含有量は、脂肪族アミド系化合物1質量部に対して、0.5〜5質量部である。0.5質量部未満の場合、ヒドロキシ基を有する脂肪族アミド系化合物の発泡性樹脂粒子の表面への付着性の向上効果が得られないことがある。5質量部より多い場合、発泡性樹脂粒子表面からの剥離が多くなり、成形設備へ付着等の問題となる。より好ましい含有量は、1.0〜5.0質量部であり、更に好ましい含有量は、1.0〜4.0質量部である。
【0016】
(3)被覆層
被覆層は、発泡性樹脂粒子の表面全面に形成されていてもよく、一部に形成されていてもよい。一部に形成される場合、十分な融着性向上効果を得るために、被覆層での被覆割合が、発泡性樹脂粒子の表面の40%以上が好ましく、更に50%以上がより好ましい。
被覆層には必要に応じて、帯電防止剤、ブロッキング防止剤等の他の添加剤が含まれていてもよい。
帯電防止剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。ブロッキング防止剤としては、ステアリン酸亜鉛、エチレンビスステアリン酸アミド等が挙げられる。
【0017】
(4)ポリスチレン系樹脂
ポリスチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体等が挙げられる。
また、ポリスチレン系樹脂としては、スチレン系モノマーと、このスチレン系モノマーと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体も挙げられる。
【0018】
上記スチレン系モノマーと共重合可能なビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜8のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートの他、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート等の二官能性モノマー、無水マレイン酸、N−ビニルカルバゾール等が挙げられる。
【0019】
ポリスチレン系樹脂は、スチレン系モノマー由来の成分が主成分(50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは99.8質量%以上)を占めることが好ましい。更にポリスチレン系樹脂は、スチレン由来の成分を50質量%以上含有していることが好ましく、ポリスチレンのみからなることがより好ましい。
更に、ポリスチレン系樹脂のスチレン換算重量平均分子量は、20万〜50万が好ましい。20万より小さいと、低倍発泡成形用発泡性樹脂粒子を発泡させて得られる発泡成形体の機械的強度が低下することがある。一方、50万より大きいと、低倍発泡成形用発泡性樹脂粒子の発泡性が低下し、所望の倍率の発泡成形体を得ることができないことがある。より好ましい分子量は、22万〜40万である。
【0020】
(5)発泡剤
発泡剤は、発泡性樹脂粒子内に存在しており、沸点がポリスチレン系樹脂の軟化点以下であり、常圧でガス状又は液状の有機化合物が適している。例えばプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、シクロペンタジエン、ノルマルヘキサン、石油エーテル等の炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物、HCFC−141b、HCFC−142b、HCFC−124、HFC−134a、HFC−152a等のハロゲン含有炭化水素、炭酸ガス、窒素、アンモニア等の無機ガス等が挙げられる。これらの発泡剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。この内、炭化水素を使用するのが、オゾン層の破壊を防止する観点、及び空気と速く置換し、発泡成形体の経時変化を抑制する観点で好ましい。炭素水素の内、沸点が−45〜40℃の炭化水素がより好ましく、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン等が更に好ましい。
発泡剤の使用量は、発泡性樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは2.0〜9.0質量部、より好ましくは2.0〜7.0質量部である。
【0021】
(5)他の成分
発泡性樹脂粒子は、公知の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、可塑剤、発泡助剤、難燃剤、難燃助剤、酸化防止剤、気泡調整剤、充填剤、滑剤、着色剤等が挙げられる。
可塑剤としては、スチレン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族有機化合物、メチルシクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素、酢酸ブチル、フタル酸エステル、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリントリステアレート、ジアセチル化グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル、ジイソブチルアジペートのようなアジピン酸エステル等が挙げられる。この内、スチレンが好ましい。スチレンの含有量は、1000〜6000ppmであることが好ましく、1000〜5000ppmであることがより好ましく、2000〜5000ppmであることが更に好ましい。スチレン含有量の調製は、スチレンモノマーの重合を調整することで行ってもよく、粒子への含浸量の調整で行ってもよい。
【0022】
発泡助剤としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、酢酸エチル、フタル酸ジオクチル、テトラクロロエチレン等が挙げられる。
難燃剤としては、例えば、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、トリスジブロモプロピルホスフェート、テトラブロモビスフェノールA等が挙げられる。
また、難燃助剤としては、例えば、ジクミルパーオキサイドのような有機過酸化物が挙げられる。
酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3’−ジチオプロピオネート等が挙げられる。
【0023】
(6)中低倍発泡成形用発泡性樹脂粒子の形状
中低倍発泡成形用発泡性樹脂粒子の形状は、特に限定されず、球形、円筒状、不定形等のいずれの形状も取りえる。この内、成形型内への充填性を考慮すると球形又は円筒状であることが好ましい。
中低倍発泡成形用発泡性樹脂粒子は、0.3〜1.5mmの間の平均粒子径を有していることが好ましい。平均粒子径が0.3mmよりも小さいと、経時による発泡性の低下が大きくなることがある。平均粒子径が1.5mmよりも大きいと、発泡粒子の粒子径が大きくなるため、成形型内への充填性が劣ることがある。より好ましい平均粒子径は、0.3〜1.0mmの間である。平均粒子径の調整は、所望する粒子径に対応する目開きの篩を用いて篩うことで行うことができる。
【0024】
(7)中低倍発泡成形用発泡性樹脂粒子の製造方法
中低倍発泡成形用発泡性樹脂粒子は、例えば、発泡性樹脂粒子をヒドロキシ基含有アミド系化合物と脂肪族グリセリンエステルと共に攪拌させることにより得ることができる。攪拌は、公知の攪拌機、例えば、スーパーミキサー、タンブラーミキサー、レディゲミキサー等を用いて行うことができる。
攪拌は、溶媒の存在下、又は不存在下で行うことができる。溶媒は、ヒドロキシ基含有アミド系化合物及び脂肪族グリセリンエステルを溶解可能な溶媒であっても、溶解しない溶媒であってもよい。溶媒の除去工程が不溶である観点から、溶媒の不存在下で攪拌を行うことが好ましい。溶媒の不存在下で行う攪拌を乾式法と称する。
なお、発泡性樹脂粒子は、ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させることにより得ることができる。
【0025】
上記ポリスチレン系樹脂粒子は、公知の方法で製造されたものを用いることができる。例えば、
(i)押出機で溶融混練したポリスチレン系樹脂をストランド状に押出し、ストランドをカットしてポリスチレン系樹脂粒子を製造する方法、
(ii)水性媒体、スチレン系モノマー及び重合開始剤をオートクレーブ内に供給し、オートクレーブ内において加熱、攪拌しながらスチレン系モノマーを懸濁重合させてポリスチレン系樹脂粒子を製造する懸濁重合法、
(iii)水性媒体及びポリスチレン系樹脂の種粒子をオートクレーブ内に供給し、種粒子を水性媒体中に分散させた後、オートクレーブ内を加熱、攪拌しながらスチレン系モノマーを連続的にあるいは断続的に供給して、種粒子にスチレン系モノマーを吸収させつつ重合開始剤の存在下にて重合させてポリスチレン系樹脂粒子を製造するシード重合法等により得られたポリスチレン系樹脂粒子が挙げられる。なお、種粒子は、上記(ii)の懸濁重合法により得られた粒子を分級することで入手できる。
【0026】
上記懸濁重合法及びシード重合法において用いられる重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、イソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシ−3,3,5トリメチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。これらは単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0027】
また、上記懸濁重合法又はシード重合法において、スチレン系モノマーを重合させる際に、スチレン系モノマーの液滴又は種粒子の分散性を安定させるために懸濁安定剤を用いてもよい。このような懸濁安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子や、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム等の難水溶性無機塩等が挙げられる。難水溶性無機塩を用いる場合には、アニオン界面活性剤が通常、併用される。
上記アニオン界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩、β−テトラヒドロキシナフタレンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホネート等が挙げられる。この内、アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましい。
【0028】
懸濁重合法又はシード重合法によって得られたポリスチレン系樹脂粒子を別途用意した水性媒体に懸濁させて水性懸濁液を形成する場合にも、ポリスチレン系樹脂粒子の分散性を安定させるために、上述の懸濁安定剤やアニオン界面活性剤を水性媒体中に添加してもよい。
この際、難水溶性無機塩の水性媒体中への添加量は、水性媒体100質量部に対して0.2〜2質量部であることが好ましい。0.2質量部より少ないと、水性媒体中におけるポリスチレン系樹脂粒子の分散性が低下し、ポリスチレン系樹脂粒子が塊状になってしまうことがある。2質量部より多いと、ポリスチレン系樹脂粒子を分散させてなる水性媒体の粘性が上昇して、ポリスチレン系樹脂粒子を水性媒体中に均一に分散できないことがある。
【0029】
発泡剤のポリスチレン系樹脂粒子への含浸は、水性媒体中にポリスチレン系樹脂粒子を分散させ、発泡剤をポリスチレン系樹脂粒子に含浸させる方法が使用できる。上記水性懸濁液は、懸濁重合法又はシード重合法による重合後の反応液を水性懸濁液として用いても、あるいは、上記懸濁重合法又はシード重合法によって得られたポリスチレン系樹脂粒子を反応液から分離し、このポリスチレン系樹脂粒子を別途用意した水性媒体に懸濁させて水性懸濁液を形成してもよい。水性媒体としては、特に限定されず、例えば、水、アルコール等が挙げられる。このなかでも水が好ましい。
【0030】
発泡剤の含浸は、スチレン系モノマーの重合後の粒子に行ってもよく、成長途上粒子に行ってもよい。重合の途中での含浸は、通常重合後期に行うことが好ましい。重合後の含浸は湿式含浸法か、又は媒体非存在下で含浸させる方法(乾式含浸法)により行うことができる。
重合後の発泡剤の含浸は、70〜120℃の加温下で1.0〜12.0時間行うことが好ましい。更に、必要に応じて加圧下で行ってもよい。
発泡性樹脂粒子は、発泡剤の含浸後に適宜洗浄される。ここで、製造工程中、分散安定剤に無機塩を使用している場合は塩酸等の強酸により、無機塩を水溶性の塩にして取り除くことが好ましい。
【0031】
更に、上記ポリスチレン系樹脂粒子への発泡剤の含浸による発泡性樹脂粒子の製法に代えて、水中カット法による製法も使用できる。
水中カット法には、例えば、次のような構成の装置を使用できる。即ち樹脂供給装置としての押出機と、押出機の先端に取り付けられた多数の小孔を有するダイと、押出機内に樹脂原料等を投入する原料供給ホッパーと、押出機内の溶融樹脂に発泡剤供給口を通して発泡剤を圧入する高圧ポンプと、ダイの小孔が穿設された樹脂吐出面に冷却水を接触させるように設けられ、室内に冷却水が循環供給されるカッティング室と、ダイの小孔から押し出された樹脂を切断できるようにカッティング室内に回転可能に設けられたカッターと、カッティング室から冷却水の流れに同伴して運ばれる発泡性粒子を冷却水と分離すると共に脱水乾燥して発泡性粒子を得る固液分離機能付き脱水乾燥機と、固液分離機能付き脱水乾燥機にて分離された冷却水を溜める水槽と、この水槽内の冷却水をカッティング室に送る高圧ポンプと、固液分離機能付き脱水乾燥機にて脱水乾燥された発泡性粒子を貯留する貯留容器とを備えて構成されている装置を使用できる。
【0032】
なお、押出機としては、スクリュを用いる押出機又はスクリュを用いない押出機のいずれも用いることができる。スクリュを用いる押出機としては、例えば、単軸式押出機、多軸式押出機、ベント式押出機、タンデム式押出機等が挙げられる。スクリュを用いない押出機としては、例えば、プランジャ式押出機、ギアポンプ式押出機等が挙げられる。また、いずれの押出機もスタティックミキサーを用いることができる。これらの押出機のうち、生産性の面からスクリュを用いた押出機が好ましい。また、カッターを収容したカッティング室も、樹脂の溶融押出による造粒方法において用いられている従来周知のものを用いることができる。
【0033】
(発泡粒子)
発泡粒子は、中低倍発泡成形用発泡性樹脂粒子を発泡させて得ることができる。発泡粒子は、発泡成形体の原料として使用され、通常、予備発泡粒子と称される。
発泡粒子は30倍以下の嵩倍率であることが好ましい。嵩倍率が30倍を上回ると、発泡粒子から得られる発泡成形体の強度が低下することがある。より好ましい嵩倍率は、2.0〜25.0倍の範囲である。
【0034】
(発泡成形体)
発泡成形体は、中低倍発泡成形用発泡性樹脂粒子又は発泡粒子を多数の小孔を有する閉鎖金型内に充填し、再び加圧水蒸気等で加熱発泡させ、粒子間の空隙を埋めると共に、粒子を相互に融着させることにより一体化させることで製造できる。
発泡成形体の製造条件は、倍率30倍以下の発泡成形体が得られさえすれば、特に限定されない。例えば、所望の金型に充填された中低倍発泡成形用発泡性樹脂粒子又は発泡粒子を、0.05〜0.50MPaの水蒸気で加熱することにより得ることができる。この加熱は、金型のクラッキングなしで行ってもよく、ありで行ってもよい。なお、本明細書では、倍率10〜30倍を中倍と称し、10倍未満を低倍と称する。
【0035】
得られた発泡成形体は、ヒドロキシ基含有アミド系化合物及び脂肪族グリセリンエステル系化合物の作用により、粒子相互の融着性が向上され、その結果、優れた曲げ強度を有している。このような発泡成形体は、強度が必要な構造部材やパッキン剤等の用途に特に好適に使用できる。特に、発泡成形体は、パッキン材の一形態である、推進工法における推進管間に設置される推力伝達材に好適に使用できる。推力伝達材の外形は、特に限定されず、推進管の形状に応じて適宜設定できる。一般的にリング状の外形を有している。
更に本発明により得られた発泡成形体は床暖房用断熱材としても好適に使用できる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例における各種測定法を下記する。
<平均粒子径>
平均粒子径とはD50で表現される値である。具体的には、ふるい目開き4.00mm、目開き3.35mm、目開き2.80mm、目開き2.36mm、目開き2.00mm、目開き1.70mm、目開き1.40mm、目開き1.18mm、目開き1.00mm、目開き0.85mm、目開き0.71mm、目開き0.60mm、目開き0.50mm、目開き0.425mm、目開き0.355mm、目開き0.300mm、目開き0.250mm、目開き0.212mm、目開き0.180mmのJIS標準ふるいで分級し、その結果から得られた累積重量分布曲線を元にして累積重量が50%となる粒子径を平均粒子径と称する。
【0037】
<重量平均分子量>
重量平均分子量は、以下の方法で測定されたスチレン換算重量平均分子量をいう。
即ち、ポリスチレン系樹脂30mgをTHF10ミリリットルで溶解する。得られた溶液を、非水系0.45μmのクロマトディスクで濾過した後、クロマトグラフを用いて平均分子量を下記条件にて測定する。
測定装置:HLC−8320GPC(東ソー社製)
カラム :TSKgel SuperMultiporeHZ−M ×2
検出器 :HLC−8320GPC内蔵RI検出器/UV−8320
検出条件:Pol(+)、Res(0.5s)/λ(254nm)、Pol(+)、Res(0.5s)
濃度:0.2wt%
注入量:10μl
圧力:3.5Mpa
カラム温度:40℃
システム温度:40℃
溶離液:THF
流量:0.35ml/分
検量線用標準ポリスチレン:昭和電工社製商品名「shodex」重量平均分子量:1030000及び東ソー社製の重量平均分子量:5480000,3840000,355000,102000,37900,9100,2630,495のポリスチレン
【0038】
<可塑剤の含有量>
発泡性樹脂粒子中における芳香族有機化合物の含有量は下記の要領で測定される。即ち、発泡性樹脂粒子1gを精秤し、この精秤した発泡性樹脂粒子に、0.1体積%のシクロペンタノールを含有するジメチルホルムアミド溶液1ミリリットルを内部標準液として加えた後、更に、上記ジメチルホルムアミド溶液にジメチルホルムアミドを加えて25ミリリットルとして測定溶液を作製し、この測定溶液1.8マイクロリットルを230℃の試料気化室に供給してガスクロマトグラフから測定対象となる芳香族有機化合物のチャートを得、予め測定しておいた、測定対象となる芳香族有機化合物の検量線に基づいて、上記チャートから芳香族有機化合物量を算出する。
なお、発泡性樹脂粒子中における芳香族有機化合物の含有量は、ガスクロマトグラフ(島津製作所社製 商品名「GC−14A」)を用いて下記測定条件にて測定することができる。
【0039】
検出器:FID
カラム:ジーエルサイエンス社製(3mm径×2.5m)
液相:PEG−20M PT 25重量%
担体:Chromosorb W AW−DMCS
メッシュ:60/80
カラム温度:100℃
検出器温度:230℃
注入口温度:230℃
キャリアーガス:窒素
キャリアーガス流量:40ミリリットル/分
【0040】
<嵩倍数>
予備発泡粒子の嵩倍数は、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定する。具体的は、まず、予備発泡粒子を測定試料としてWg採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させる。メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積VmlをJIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定する。Wg及びVmlを下記式に代入することで、予備発泡粒子の嵩倍数を算出する。
予備発泡粒子の嵩倍数=測定試料の体積(V)/測定試料の質量(W)
【0041】
<発泡成形体の倍数>
発泡成形体(成形後、40℃で20時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(100×100×30mm)の質量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(b)/(a)により発泡成形体の倍数を求める。
【0042】
<発泡成形体の融着率>
発泡成形体にカッターナイフで深さ約1mmの切り込み線を入れる。この後、この切り込み線に沿って発泡成形体を手又はハンマーで二分割する。その破断面に露出した任意の100個の発泡粒子について、粒子内で破断している粒子の数(a)を数える。結果を、式(a)×100/100に代入して得られた値を融着率(%)とする。融着率80%以上を○、80%未満を×と評価する。
【0043】
<発泡成形体の曲げ強度>
JIS A−9511に準拠して曲げ強度を測定する。曲げ強度2.0MPa以上を○、2.0MPa未満を×と評価する。
【0044】
実施例1
(発泡性樹脂粒子の製造)
平均粒子径1.0mm、重量平均分子量約30万、可塑剤含有量約3000ppmのポリスチレン樹脂粒子(積水化成品工業社製)2000g、ドデシルベンセンスルホン酸ナトリウム0.2g、ピロリン酸マグネシウム10.0g、水2000gを反応器内で攪拌させることで懸濁液を得た。得られた懸濁液を90℃まで加熱し、次いで反応器内にブタン120gを圧入した。圧入後、120℃で5時間保持し、次いで常温(約25℃)まで冷却した後、発泡性スチレン樹脂粒子を取り出した。
【0045】
次に、発泡性スチレン樹脂粒子2000gをタンブラーミキサーに入れた。次いで、ミキサー中に、発泡性スチレン樹脂粒子100質量部に対し、12−ヒドロキシステアリン酸アミド0.05質量部と12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド0.10質量部とを添加した。添加後、攪拌することで、12−ヒドロキシステアリン酸アミドと12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライドとを含む被覆層を備えた中低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。得られた中低倍発泡成形用発泡性スチレン樹脂粒子中の可塑剤含有量は、2950ppmであった。また、添加量と同量の12−ヒドロキシステアリン酸アミドと12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライドが、中低倍発泡成形用発泡性スチレン樹脂粒子に含まれていることを確認した。
【0046】
次に、中低倍発泡成形用発泡性スチレン樹脂粒子を、回転翼を内蔵したバッチ型予備発泡機に投入した。投入後、嵩倍数10倍になるように、低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン樹脂粒子を水蒸気で均一に加熱発泡することで、発泡粒子を得た。得られた発泡粒子を、大気中、常温(約25℃)で12時間熟成及び乾燥させた。
【0047】
続いて、得られた発泡粒子を、成形機「ACE−30QS」(積水工機製作所社製)にセットした300mm×400mm×30mmの大きさのキャビティに充填した。充填後、発泡粒子を蒸気圧0.08MPa(ゲージ圧)で40秒間加熱した後、常温(約25℃)まで冷却することで倍数10倍の発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の融着率及び曲げ強度の測定結果を表1に示す。
【0048】
実施例2
12−ヒドロキシステアリン酸アミドに代えてN,N’−エチレン−ビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミドを使用すること以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
実施例3
12−ヒドロキシステアリン酸アミドに代えてヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミドを使用すること以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
実施例4
12−ヒドロキシステアリン酸アミドの添加量を0.02質量部に変更すること以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
実施例5
12−ヒドロキシステアリン酸アミドの添加量を0.45質量部、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライドの添加量を0.45質量部に変更すること以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
【0049】
実施例6
N,N’−エチレン−ビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミドを0.02質量部使用すること以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
実施例7
N,N’−エチレン−ビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミドの添加量を0.45質量部、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライドの添加量を0.30質量部に変更すること以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
実施例8
12−ヒドロキシステアリン酸アミドの添加量を0.02質量部とし、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライドに代えて0.03質量部のN,N’−エチレン−ビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミドを使用すること以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
【0050】
実施例9
基材樹脂としてポリスチレン樹脂(東洋スチレン社製、商品名「HRM−10N」)100質量部に対して、微粉末タルク0.3質量部を、予めタンブラーミキサーにて均一に混合したものを、時間当たり160kg/hrの割合で口径90mmの単軸押出機内へ供給し、樹脂を加熱溶融させた後、発泡剤として樹脂100質量部に対して6質量部のイソペンタンを押出機途中より圧入した。そして、押出機内で樹脂と発泡剤を混練しつつ、押出機先端部での樹脂温度が190℃となるように冷却しながら、押出機に連接したヒーターにより320℃に保持した、直径0.6mm、ランド長さ3.0mmのノズルを200個有する造粒用ダイスを通して、50℃の冷却水が循環するチャンバー内に押し出すと同時に、円周方向に10枚の刃を有する高速回転カッターをダイスに密着させて、毎分3000回転で切断し、脱水乾燥して球形の発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。得られた発泡性ポリスチレン樹脂粒子は変形、ヒゲ等の発生もなく、平均粒径は1.1mmであった。
【0051】
次に、上記発泡性スチレン樹脂粒子2000gをタンブラーミキサーに入れた。次いで、ミキサー中に、発泡性スチレン樹脂粒子100質量部に対し、12−ヒドロキシステアリン酸アミド0.02質量部と12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド0.01質量部とを添加した。次に、発泡性スチレン樹脂粒子を、回転翼を内蔵したバッチ型予備発泡機に投入した。投入後、嵩倍数10倍になるように、中低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン樹脂粒子を水蒸気で均一に加熱発泡することで、発泡粒子を得た。得られた発泡粒子を、大気中、常温(約25℃)で12時間熟成及び乾燥させた。
【0052】
続いて、得られた発泡粒子を、成形機「ACE−30QS」(積水工機製作所社製)にセットした300mm×400mm×30mmの大きさのキャビティに充填した。充填後、発泡粒子を蒸気圧0.08MPa(ゲージ圧)で40秒間加熱した後、常温(約25℃)まで冷却することで倍数10倍の発泡成形体を得た。
【0053】
比較例1
12−ヒドロキシステアリン酸アミドを使用しないこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
比較例2
12−ヒドロキシステアリン酸アミドに代えてエチレンビスステアリン酸アミド(花王社製花王ワックスEBFF)を0.05質量部使用し、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライドを使用しないこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
比較例3
12−ヒドロキシステアリン酸アミドに代えてエチレンビスステアリン酸アミド(花王社製花王ワックスEBFF)を0.05質量部使用し、かつ12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライドを0.10質量部使用すること以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
【0054】
比較例4
12−ヒドロキシステアリン酸アミドの添加量を0.005質量部とし、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライドを使用しないこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
比較例5
12−ヒドロキシステアリン酸アミドの添加量を0.005質量部、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライドの添加量を0.01質量部に変更すること以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
比較例6
12−ヒドロキシステアリン酸アミドの添加量を0.7質量部、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライドの添加量を0.4質量部に変更すること以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
比較例7
12−ヒドロキシステアリン酸アミドの添加量を0.05質量部、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライドの添加量を0.02質量部に変更すること以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
【0055】
【表1】

【0056】
表1中の記号
HSA:12−ヒドロキシステアリン酸アミド
EBHSA:N,N’−エチレン−ビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド
EBSA:エチレンビスステアリン酸アミド
HMBHSA:ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド
HST:12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド
【0057】
表1から、ヒドロキシ基含有アミド系化合物及び脂肪族グリセリンエステル系化合物の被覆層を備えた中低発泡成形用発泡性樹脂粒子から得られた発泡成形体は、優れた融着率と曲げ強度を有することが判る。なお、比較例2の発泡成形体は、ヒドロキシ基含有アミド系化合物が多すぎるため、この化合物により曲げ強度が低下している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子と、その表面の被覆層とを含み、30倍以下の中低倍発泡成形に使用される中低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であり、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が、ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを少なくとも含み、前記被覆層が、ヒドロキシ基を有する脂肪族アミド系化合物と脂肪族グリセリンエステル系化合物とを少なくとも含み、
前記脂肪族アミド系化合物が、前記ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、0.01〜0.5質量部含まれ、前記脂肪族グリセリンエステル系化合物が、前記脂肪族アミド系化合物1質量部に対して、0.5〜5質量部含まれることを特徴とする中低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項2】
前記脂肪族アミド系化合物が、1つのアミン化合物と、1つ又は2つのヒドロキシ基を有する脂肪酸とのアミドであり、前記脂肪酸が、4〜30の炭素数を有する酸である請求項1に記載の中低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項3】
前記脂肪族アミド系化合物が、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−エチレン−ビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミドから選択される請求項1又は2に記載の中低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項4】
前記脂肪族グリセリンエステル系化合物が、炭素数4〜30のアルキル基を備えた化合物である請求項1〜3のいずれか1つに記載の中低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項5】
前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が、可塑剤を1000ppmより多く、6000ppm以下の量で含む請求項1〜4のいずれか1つに記載の中低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の中低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を30倍以下の嵩発泡倍率に発泡させて得られた発泡粒子。
【請求項7】
請求項6に記載の発泡粒子を発泡成形させて得られた30倍以下の発泡倍率の発泡成形体。
【請求項8】
前記発泡成形体が、推進工法における推進管間に設置される推力伝達材である請求項7に記載の発泡成形体。
【請求項9】
床暖房用断熱材である請求項7に記載の発泡成形体。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の中低倍発泡成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子又は請求項6に記載の発泡粒子を一対の金型内に充填し、0.05〜0.50MPaの水蒸気で加熱することにより、30倍以下の発泡倍率の発泡成形体を得ることを特徴とする発泡成形体の製造方法。

【公開番号】特開2013−23565(P2013−23565A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159085(P2011−159085)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】